1 00:00:03,170 --> 00:00:08,141 (今井)ハァ… ハァ… ハァ…。 2 00:00:08,141 --> 00:00:11,278 ハァ…。 3 00:00:11,278 --> 00:00:13,280 ハァ~…。➡ 4 00:00:13,280 --> 00:00:15,282 御免! 5 00:00:20,420 --> 00:00:23,290 (幸)今井様。 ああ!お待たせいたしました。 6 00:00:23,290 --> 00:00:27,628 いやいや…。 はあ…。 7 00:00:27,628 --> 00:00:30,664 あっ 何ぞ お急ぎのご用でございますか? 8 00:00:30,664 --> 00:00:34,401 お呼び出しいただけましたら お屋敷に参じましたものを。 9 00:00:34,401 --> 00:00:38,972 あ~ いや その…。 ご注文いただいた ご婚礼の品➡ 10 00:00:38,972 --> 00:00:42,442 10日もいたしましたら 船荷で届く手はずでございます。 11 00:00:42,442 --> 00:00:45,646 うん…。 もうしばらくお待ちになっとくれやす。 12 00:00:45,646 --> 00:00:47,848 いや~ その…。 13 00:00:49,816 --> 00:00:51,752 嫁荷のことなのだがな…。 14 00:00:51,752 --> 00:00:55,455 へえ。 15 00:00:55,455 --> 00:00:57,991 なかったことにしてもらいたい。 16 00:00:57,991 --> 00:01:00,260 えっ? (佐助)えっ? 17 00:01:00,260 --> 00:01:03,764 あ… あの… こちらに 何ぞ 落ち度でもございましたやろか? 18 00:01:03,764 --> 00:01:05,699 いや 落ち度はない。 19 00:01:05,699 --> 00:01:08,402 (佐助)あっ もしや ご縁組みが破談…? 20 00:01:08,402 --> 00:01:10,771 何を申すか! 破談などと縁起でもない。 21 00:01:10,771 --> 00:01:15,108 へえ! あっ… ほな 何故でございましょう? 22 00:01:15,108 --> 00:01:17,044 訳をお教えいただけまへんやろか? 23 00:01:17,044 --> 00:01:20,781 いや 詳しいことは話せぬが…➡ 24 00:01:20,781 --> 00:01:25,619 今回ばかりは… 諦めて 引き下がってもらうしかない。 25 00:01:25,619 --> 00:01:27,955 はあ~…。 26 00:01:27,955 --> 00:01:31,825 (賢輔)今になって 何で 断り言うてきはったんだす? 27 00:01:31,825 --> 00:01:34,728 訳は教えていただけまへなんだ。 28 00:01:34,728 --> 00:01:40,300 (壮太)いくら お旗本とはいえ それでは あまりに勝手がすぎるというものです。 29 00:01:40,300 --> 00:01:46,640 (お竹)初めての嫁荷 ホンマに ありがたいと思ってましたのになあ。 30 00:01:46,640 --> 00:01:51,645 (長介)せっかくの よりすぐりの品が 無駄になるとは…。 31 00:01:53,513 --> 00:01:58,819 皆 何言うてますのや。 一つも無駄にはなりまへんで。 32 00:01:58,819 --> 00:02:01,788 どれも 店で売れるもんばかりだす。 33 00:02:01,788 --> 00:02:07,527 五鈴屋自慢の品 一反一反 大事に売っていきまひょな。 34 00:02:07,527 --> 00:02:09,529 (一同)へえ! 35 00:02:13,934 --> 00:02:16,403 けど 妙だすなあ…。 36 00:02:16,403 --> 00:02:21,942 祝言まで みつきもない いうのに… 嫁荷 どないしはりますのやろ? 37 00:02:21,942 --> 00:02:23,944 へえ…。 38 00:02:25,812 --> 00:02:39,359 ♬~ 39 00:02:39,359 --> 00:02:45,966 <浅草呉服太物仲間が 下野で 綿作りの支援を始めて2年がたち➡ 40 00:02:45,966 --> 00:02:48,869 生産量は順調に伸びていました。➡ 41 00:02:48,869 --> 00:02:50,837 しかし…> 42 00:02:50,837 --> 00:02:53,440 (恵比寿屋)これが 下野で織ったもの。 43 00:02:53,440 --> 00:02:57,978 こちらの摂津の木綿と並べてみれば 白さの違いが はっきり分かります。 44 00:02:57,978 --> 00:03:02,749 (丸屋)なるほど… これは一目瞭然ですな。 うん…。 45 00:03:02,749 --> 00:03:05,652 ちょっと触らしてもろても かめしまへんやろか? 46 00:03:05,652 --> 00:03:08,388 ええ どうぞ。 47 00:03:08,388 --> 00:03:10,390 すんまへん。 48 00:03:18,398 --> 00:03:23,770 あ… 下野のは 手触りも粗うおます。 49 00:03:23,770 --> 00:03:26,106 綿の実ぃが違うせいだすやろか? 50 00:03:26,106 --> 00:03:29,409 (和泉屋)いや さらしのやり方が違うのでしょう。 51 00:03:29,409 --> 00:03:33,113 真っ白く仕上げるには 水につけたり 天日に干したりして➡ 52 00:03:33,113 --> 00:03:35,782 油や汚れを 落とさなければなりませんが…。 53 00:03:35,782 --> 00:03:40,954 下野では 人手も足りず さらしの技にたけた者もおりません。 54 00:03:40,954 --> 00:03:44,291 はあ… 2年もかけたというのに…➡ 55 00:03:44,291 --> 00:03:46,960 これでは まだまだ売り物にならない! 56 00:03:46,960 --> 00:03:51,431 (河内屋)恵比寿屋さん 焦りは禁物。➡ 57 00:03:51,431 --> 00:03:55,969 2年で ここまで来ただけでも 大したものですよ。➡ 58 00:03:55,969 --> 00:04:03,076 産地を育てるのは 子を育てるのも同じ。 59 00:04:03,076 --> 00:04:07,380 じっくり知恵を出し合いましょう。 60 00:04:07,380 --> 00:04:09,916 はい。 61 00:04:09,916 --> 00:04:12,252 (松見屋) いい さらしの職人を探しましょう! 62 00:04:12,252 --> 00:04:15,756 (大和屋)あ~ 江戸では 難しいかもしれませんねえ。 63 00:04:15,756 --> 00:04:21,261 (和泉屋)伊勢 松坂辺りがよいのでは? (河内屋)おお~ ごもっとも。 64 00:04:21,261 --> 00:04:23,263 (笑い声) 65 00:04:29,936 --> 00:04:33,807 (和三郎)こいつは 一体 何でごぜえやす? 66 00:04:33,807 --> 00:04:36,710 (菊栄)笄だす。 67 00:04:36,710 --> 00:04:41,414 (和三郎)笄ってえと 女が髪に挿してるやつですかい? 68 00:04:41,414 --> 00:04:45,619 へえ! これに 髪 巻きつけて➡ 69 00:04:45,619 --> 00:04:48,522 こないして挿しておくんだす。 70 00:04:48,522 --> 00:04:52,392 それなら 嬶に頼まれて 作ったことがありやす。 71 00:04:52,392 --> 00:04:56,263 けど 木っ端を削った まっつぐな棒っ切れみたいなもんで➡ 72 00:04:56,263 --> 00:04:59,966 こんな形のは 見たことがごぜえやせん。 73 00:04:59,966 --> 00:05:04,938 わてが考えたもんだすよって ほかには ありまへんやろなあ。➡ 74 00:05:04,938 --> 00:05:09,376 中ほどは 髪を巻きつけやすいように細うして➡ 75 00:05:09,376 --> 00:05:15,081 両端は 髷の外に出ますよって 飾りがあったら楽しおますやろ。 76 00:05:15,081 --> 00:05:19,953 なるほど! こいつは 嬶に見せたら欲しがりそうだ。 ヘッ。 77 00:05:19,953 --> 00:05:27,794 木でこしらえて 塗りも何も施さんと つつましい仕上げにするつもりでごあす。 78 00:05:27,794 --> 00:05:30,397 ぜいたくな かんざしと違て➡ 79 00:05:30,397 --> 00:05:35,268 どなたさんにも 手軽に 買うていただけるもんにしよう思てます。 80 00:05:35,268 --> 00:05:38,772 そういうことなら 腕のいい木彫師を 連れてめえりやしょう! 81 00:05:38,772 --> 00:05:45,946 そや ありまへん。 この細工は 和三郎さんにお頼みしとうごあす。 82 00:05:45,946 --> 00:05:47,881 あっしに? へえ。 83 00:05:47,881 --> 00:05:51,618 そいつは いけねえ! 細けえ細工は得手じゃねえんで。 84 00:05:51,618 --> 00:05:55,789 こういう仕事に慣れたもんの方が…。 まだ世にないもんを作るんだす。 85 00:05:55,789 --> 00:06:00,126 これぞいうもんが でけるまでには 時もかかるし 根気もいります。 86 00:06:00,126 --> 00:06:02,729 誰にでも お願いできることやあらしまへん。 87 00:06:02,729 --> 00:06:06,600 せやさかい わては 和三郎さんにお願いしたい思てますのや。 88 00:06:06,600 --> 00:06:11,071 いや… けど…! お人柄と腕を見込んでのお願いだす。 89 00:06:11,071 --> 00:06:15,375 わてと一緒に新しい笄 作っておくれやす。 90 00:06:15,375 --> 00:06:18,078 どうぞ お頼み申します! 91 00:06:18,078 --> 00:06:21,915 いけねえ! 頭 上げておくんなせえ。 92 00:06:21,915 --> 00:06:26,219 あ~ 弱ったなあ…。 93 00:06:28,255 --> 00:06:39,866 ⚟(鳥の鳴き声) 94 00:06:39,866 --> 00:06:44,604 ようがす! 95 00:06:44,604 --> 00:06:51,478 おかみさんがいいと思う物が出来るまで この腕 使ってやっておくんなせえ。 96 00:06:51,478 --> 00:06:54,948 ああ… おおきに! 97 00:06:54,948 --> 00:06:57,284 ほな 一緒に気張りまひょな! 98 00:06:57,284 --> 00:06:59,219 へえ! 99 00:06:59,219 --> 00:07:06,359 <菊栄は 新しく小間物屋を開くために 店の出物を探し始めていました。➡ 100 00:07:06,359 --> 00:07:13,133 図案に仕上げた笄は 菊栄の店の主力商品となる品でした> 101 00:07:13,133 --> 00:07:16,903 (栄次郎)ふ~ん 菊栄さんが小間物屋を。 102 00:07:16,903 --> 00:07:21,574 へえ。 来年の暮れまでには 店 開くおつもりで➡ 103 00:07:21,574 --> 00:07:25,745 方々 回って 売りに出てる店 探してはります。 104 00:07:25,745 --> 00:07:29,382 (吉之丞) だったら お力になりたいものですね。 105 00:07:29,382 --> 00:07:35,755 そうよなあ… よし 芝居小屋には出入りの商人が多い。 106 00:07:35,755 --> 00:07:37,791 出物がねえか 声をかけてみるよ。 107 00:07:37,791 --> 00:07:41,928 ああ… ありがとさんでございます。 108 00:07:41,928 --> 00:07:45,398 (栄次郎) そのかわりっていうわけじゃねえが…➡ 109 00:07:45,398 --> 00:07:47,767 一つ 頼みてえことがあるんだ。 110 00:07:47,767 --> 00:07:49,703 何でございましょう? 111 00:07:49,703 --> 00:07:55,942 江戸紫の鈴の小紋 あれを染めた職人に 引き合わせちゃもらえねえかい? 112 00:07:55,942 --> 00:08:00,780 えっ? 「鷺娘」が大当たりを取って➡ 113 00:08:00,780 --> 00:08:05,051 衣装と同じ白綸子を 日本橋の枡吾屋が➡ 114 00:08:05,051 --> 00:08:08,088 「吉之丞の白無垢」って名で売り出したろ? 115 00:08:08,088 --> 00:08:15,362 白無垢のお衣装が ようお似合いで 役者絵も飛ぶように売れてましたな。 116 00:08:15,362 --> 00:08:18,264 それも 善しあしでねえ…。 117 00:08:18,264 --> 00:08:22,569 おかげで 吉之丞に色がついちまった。➡ 118 00:08:22,569 --> 00:08:26,906 白って色がね。 (吉之丞)はい…。 119 00:08:26,906 --> 00:08:30,777 (栄次郎)白って色は 死を思わせる。 120 00:08:30,777 --> 00:08:34,581 生身の人間が そうそう身につけるもんじゃねえ。 121 00:08:34,581 --> 00:08:39,386 「鷺娘」も人ではなく 鷺の化身ですから。 122 00:08:39,386 --> 00:08:43,923 そこで まだ どこにもねえ新しい色を➡ 123 00:08:43,923 --> 00:08:46,593 おめえさんのところの職人に 作ってもらいてえ。 124 00:08:46,593 --> 00:08:50,397 えっ? 色を作るんだすか? 125 00:08:50,397 --> 00:08:53,266 (栄次郎)吉之丞の色さ。 126 00:08:53,266 --> 00:08:59,139 その色を見たら 誰もが 吉之丞の芸を思い浮かべて➡ 127 00:08:59,139 --> 00:09:05,345 菊瀬吉之丞の名前とともに 末永く ごひいきにあずかれる➡ 128 00:09:05,345 --> 00:09:09,549 そんな色を作ってもらいてえ。 129 00:09:09,549 --> 00:09:14,254 五鈴屋さん お願い申します。 130 00:09:16,222 --> 00:09:19,926 末永う 好まれる色…。 131 00:09:22,562 --> 00:09:25,899 お話 よう分かりました。 132 00:09:25,899 --> 00:09:28,234 頼んだよ。 へえ。 133 00:09:28,234 --> 00:09:35,108 吉之丞の色が出来たら おいら きっと 江戸中に はやらせてみせますよ。 134 00:09:35,108 --> 00:09:37,610 まあ… フフフ…。 135 00:09:41,247 --> 00:09:46,119 (せみの声) 136 00:09:46,119 --> 00:09:53,827 <本田家の用人が再び五鈴屋に現れたのは 7月も半ばのこと> 137 00:09:53,827 --> 00:09:56,262 (今井)御免!➡ 138 00:09:56,262 --> 00:09:58,598 頼み事というのは ほかでもない➡ 139 00:09:58,598 --> 00:10:03,937 ひとつき前に断りを入れた嫁荷 あれをもう一度 調えてもらいたい。 140 00:10:03,937 --> 00:10:06,606 えっ? 頼む! このとおり! 141 00:10:06,606 --> 00:10:08,541 何をなさいます!? 142 00:10:08,541 --> 00:10:11,111 今更 頼めた義理ではないが➡ 143 00:10:11,111 --> 00:10:15,949 こと ここに至って ほかに頼る当てもなく…。 144 00:10:15,949 --> 00:10:19,786 どないな訳か お教えいただけまへんやろか? 145 00:10:19,786 --> 00:10:24,624 実は… 嫁荷は よその呉服屋に頼むようにと➡ 146 00:10:24,624 --> 00:10:26,960 勧めるお方があったのだ。 147 00:10:26,960 --> 00:10:31,431 よその呉服屋に…。 どなた様が そないなことを? 148 00:10:31,431 --> 00:10:37,971 本田家は 三河以来のお家柄なれど 今は 無役の小普請組でな➡ 149 00:10:37,971 --> 00:10:41,307 殿様は なんとか 御番入りを果たそうと➡ 150 00:10:41,307 --> 00:10:46,145 小普請組 御支配 間宮様のお屋敷に 通っておいでだった。 151 00:10:46,145 --> 00:10:53,453 その間宮様から 懇意の呉服屋に 嫁荷を 任せてはどうかというお話があってな…。 152 00:10:53,453 --> 00:10:57,323 ああ…。 それゆえ 筋の通らぬことながら➡ 153 00:10:57,323 --> 00:11:01,761 一旦 任せた品物を 断ることになったのだが…➡ 154 00:11:01,761 --> 00:11:06,399 はっ… ここに来て 事情が変わった。 155 00:11:06,399 --> 00:11:09,269 間宮様は お酒が めっぽうお好きで➡ 156 00:11:09,269 --> 00:11:12,939 酒の上の間違いから お勤めをしくじってしまわれたのだ。 157 00:11:12,939 --> 00:11:16,409 まあ…。 今は お役目を解かれ➡ 158 00:11:16,409 --> 00:11:19,312 屋敷に籠もって 謹慎の身の上。 159 00:11:19,312 --> 00:11:22,282 関わりを恐れる者は皆 離れていき➡ 160 00:11:22,282 --> 00:11:27,954 くだんの呉服屋も 嫁荷は請け負えぬと 断りを言うてきたのだ。 161 00:11:27,954 --> 00:11:29,889 あ…。 162 00:11:29,889 --> 00:11:33,826 このゴタゴタは 婚家には知られておらぬ。 163 00:11:33,826 --> 00:11:39,132 嫁荷一式 いま一度 そろえてもらえまいか!? 164 00:11:41,501 --> 00:11:46,139 祝言の日取りは 9月1日で お変わりございまへんか? 165 00:11:46,139 --> 00:11:49,976 (今井)変わりはない。 166 00:11:49,976 --> 00:11:56,849 承知いたしました。 では 改めまして 五鈴屋で一式 調えさせていただきます。 167 00:11:56,849 --> 00:11:58,985 まことか! 168 00:11:58,985 --> 00:12:01,955 お嬢様のために そろえた品でございます。 169 00:12:01,955 --> 00:12:06,793 お求めいただけますなら こない ありがたいことはございまへん。 170 00:12:06,793 --> 00:12:10,396 幸い 蔵に収めたままの品もございますし➡ 171 00:12:10,396 --> 00:12:18,104 売れてしもた分は すぐに手はず整えて 8月の… 23日には お納めいたします。 172 00:12:18,104 --> 00:12:21,407 それで よろしおますな? へえ! すぐに。 173 00:12:21,407 --> 00:12:24,310 (今井)かたじけない! なんと礼を申してよいか…。 174 00:12:24,310 --> 00:12:26,779 何を仰せでございます。 175 00:12:26,779 --> 00:12:29,816 おめでたい嫁荷 請け負わせていただけますのは➡ 176 00:12:29,816 --> 00:12:32,285 呉服屋の誉れでございます。 177 00:12:32,285 --> 00:12:34,587 はあ~…。 フフッ。 178 00:12:37,624 --> 00:12:40,960 枡吾屋とは えらい違いだ。 179 00:12:40,960 --> 00:12:44,631 えっ? 枡吾屋? 180 00:12:44,631 --> 00:12:49,302 (今井)間宮様に取り入って 嫁荷を横取りしようとしたのは➡ 181 00:12:49,302 --> 00:12:53,973 日本橋の枡吾屋という店なのだ。 182 00:12:53,973 --> 00:12:56,976 また あのお人らが…。 183 00:13:01,581 --> 00:13:05,385 <本田家の嫁荷を請け負って以来 五鈴屋には➡ 184 00:13:05,385 --> 00:13:11,190 大身旗本の奥向きや 裕福な商人の客が増えていました> 185 00:13:11,190 --> 00:13:14,927 (賢輔)ご注文いただいたお品 すぐ お届けにあがります。 186 00:13:14,927 --> 00:13:17,263 よろしく頼みます。 187 00:13:17,263 --> 00:13:20,266 評判にたがわぬ よい品ばかりでした。 188 00:13:20,266 --> 00:13:22,769 また 寺参りの帰りに寄らせてもらいます。 189 00:13:22,769 --> 00:13:25,271 へえ! お待ちしております。 190 00:13:25,271 --> 00:13:27,206 おおきに ありがとさんでございます。 191 00:13:27,206 --> 00:13:29,709 ありがとさんでございます。 192 00:13:35,415 --> 00:13:37,483 (お浜)ご覧よ 立派なお駕籠だねえ。 193 00:13:37,483 --> 00:13:40,787 (お照)ご大身の奥様だよ。 間違いない! うん! 194 00:13:40,787 --> 00:13:45,425 (お仲)武家のお客は 前から いたけど さすがに格が違うねえ…。 195 00:13:45,425 --> 00:13:47,960 (3人)ねえ~。 196 00:13:47,960 --> 00:13:49,962 あっ…。 197 00:13:56,636 --> 00:14:00,907 どうぞ。 おいでやす。 198 00:14:00,907 --> 00:14:04,744 あんな立派な お駕籠が止まってちゃ 入りにくくてさあ。 199 00:14:04,744 --> 00:14:08,247 一緒に買い物して ご無礼があったら いけないからねえ。 200 00:14:08,247 --> 00:14:13,386 あ~ 五鈴屋さんは 私らが気安く入れる 店じゃなくなっちまったんだねえ。 201 00:14:13,386 --> 00:14:16,289 そない さみしいこと 言わんといとくれやす。 202 00:14:16,289 --> 00:14:21,761 お気遣いさしてしもて 堪忍しとくれやす。 ああ… 謝らないでおくんなさいよ。 203 00:14:21,761 --> 00:14:25,264 上客が増えるのは お店にとっちゃ 結構なことなんだから。 204 00:14:25,264 --> 00:14:27,767 すんまへん ごめんやっしゃ。 (3人)アハハハ…。 205 00:14:27,767 --> 00:14:30,403 すんまへん。 おや? 206 00:14:30,403 --> 00:14:32,939 今日は 壮太さんも長介さんも いないのかい? 207 00:14:32,939 --> 00:14:35,975 へえ お客さんのお屋敷に 伺わせてもろてます。 208 00:14:35,975 --> 00:14:38,111 すんまへん! おお…。 209 00:14:38,111 --> 00:14:41,013 ご寮さん ほな お品物届けに いて参じます。 210 00:14:41,013 --> 00:14:42,982 よろしゅう頼んます。 へえ! 211 00:14:42,982 --> 00:14:45,785 (3人)あ…。 212 00:14:45,785 --> 00:14:49,655 あっ おいでやす。 さあ どうぞ 奥へ。 213 00:14:49,655 --> 00:14:52,959 今 お茶をお持ちします。 214 00:14:52,959 --> 00:14:55,862 すんまへん。 (3人)アハハハ…。 215 00:14:55,862 --> 00:15:00,133 今日は 14日だけど この様子じゃ 帯結び指南は…。 216 00:15:00,133 --> 00:15:03,903 無理 無理。 出直そうよ。 あっ 行こう 行こう…。 217 00:15:03,903 --> 00:15:05,838 あ… あの…。 218 00:15:05,838 --> 00:15:09,842 あちらも見せてくれるかい? あっ… へえ。 219 00:15:12,912 --> 00:15:20,386 14日の日ぃに 帯結び指南が でけへんかったんは初めてのことだす。 220 00:15:20,386 --> 00:15:25,925 壮太どんに長介どん 賢輔どんにまで 店 空けられてしもたら➡ 221 00:15:25,925 --> 00:15:28,594 さっぱり わやだすで。 222 00:15:28,594 --> 00:15:31,497 すんまへん。 223 00:15:31,497 --> 00:15:36,469 けど お屋敷に来てほしいて頼まれたら 断るわけにもいきまへんで。 224 00:15:36,469 --> 00:15:41,107 何せ お旗本の奥向きは 寺参りのついででもないと➡ 225 00:15:41,107 --> 00:15:43,409 店には おいでになれまへんよって。 226 00:15:43,409 --> 00:15:46,946 (賢輔) 屋敷売り まだまだ増えますやろか?➡ 227 00:15:46,946 --> 00:15:50,750 そないなったら もう 手が足りまへんな。 228 00:15:57,423 --> 00:16:04,230 ⚟(鳥の鳴き声) 229 00:16:07,900 --> 00:16:10,203 ⚟(鳥の鳴き声) 230 00:16:12,238 --> 00:16:14,173 ⚟(鳥の鳴き声) 231 00:16:14,173 --> 00:16:19,579 <翌年 元号が 宝暦から明和に変わった6月> 232 00:16:19,579 --> 00:16:29,589 あ… ハハハ! 江戸本店 大きゅうなったなあ ハハッ! 233 00:16:29,589 --> 00:16:33,392 (お梅)あ… 大番頭さん!? 234 00:16:33,392 --> 00:16:35,928 (鉄助)お梅どん 久しぶりだすな。 235 00:16:35,928 --> 00:16:38,831 えっ… ご ご… ご寮さん! 236 00:16:38,831 --> 00:16:41,400 あ~ ほたえな ほたえな もう! 237 00:16:41,400 --> 00:16:43,336 (壮太)遠いところ ご苦労さまです。 238 00:16:43,336 --> 00:16:46,606 8年ぶりだすな。 へえ。 さあ どうぞ どうぞ! 239 00:16:46,606 --> 00:16:52,478 <鉄助が三人の手代を連れて 江戸にやって来たのです> 240 00:16:52,478 --> 00:16:55,948 ほな ご挨拶しなはれ。 へえ! 241 00:16:55,948 --> 00:16:58,985 豆七と申します。 よろしゅうお頼申します。 242 00:16:58,985 --> 00:17:02,221 お初にお目にかかります 鶴七と申します。 243 00:17:02,221 --> 00:17:05,124 亀七と申します。 よろしゅうお頼申します。 244 00:17:05,124 --> 00:17:11,564 まあ まあ あの豆吉っとんかいな。 大きなったなあ! 245 00:17:11,564 --> 00:17:17,069 (鉄助)三人とも 八代目が 江戸本店で お役に立つと見込んだ者でございます。 246 00:17:17,069 --> 00:17:19,372 よう仕込んでやっておくれやす。 247 00:17:19,372 --> 00:17:22,241 よう来ておくれやしたなあ。 248 00:17:22,241 --> 00:17:26,245 これから よろしゅう頼んますで。 (3人)へえ! 249 00:17:26,245 --> 00:17:29,582 フフッ。 (せきばらい) 250 00:17:29,582 --> 00:17:33,252 それから… 文で お知らせしましたとおり➡ 251 00:17:33,252 --> 00:17:36,923 昨年の暮れに 所帯を持たせていただきました。 252 00:17:36,923 --> 00:17:39,592 その節には 過分なお祝いを頂戴いたしまして➡ 253 00:17:39,592 --> 00:17:41,527 ありがとさんでございます! 254 00:17:41,527 --> 00:17:44,931 おめでとうさんでございます。 (一同)おめでとうさんでございます。 255 00:17:44,931 --> 00:17:46,866 あっ… ハハハ…。 256 00:17:46,866 --> 00:17:49,602 紙屋の娘さんやそうだすなあ。 フフッ。 257 00:17:49,602 --> 00:17:53,406 ええご縁に恵まれて ホンマに よろしおました。 258 00:17:53,406 --> 00:17:56,309 大番頭さんの一目惚れやて聞いてますで。 259 00:17:56,309 --> 00:17:58,611 ちょちょ ちょちょ… てんご言わんといておくれやす! 260 00:17:58,611 --> 00:18:01,213 もう ええ年して お恥ずかしい! (佐助)ハハハハ…。 261 00:18:01,213 --> 00:18:06,085 うん? 佐助どん 次は あんさんの番だすで! 262 00:18:06,085 --> 00:18:08,554 (せきばらい) 263 00:18:08,554 --> 00:18:14,360 さあ お客さんがお見えになる時分だす。 忙しい 忙しい… ハハハ。 264 00:18:14,360 --> 00:18:19,231 賢輔どん 三人に店の中 見せてやってな。 (賢輔)へえ。 265 00:18:19,231 --> 00:18:22,568 (佐助)ほな…。 (鉄助)フフッ。➡ 266 00:18:22,568 --> 00:18:26,372 あっ 佐助どん ちょっと。 へえ。 267 00:18:26,372 --> 00:18:29,241 ご寮さんも よろしおますか? へえ。 268 00:18:29,241 --> 00:18:33,079 綿買いの文次郎さんから 言づてを預かってきたんだす。 269 00:18:33,079 --> 00:18:36,115 文次郎さんから? 270 00:18:36,115 --> 00:18:38,884 (せきばらい) 271 00:18:38,884 --> 00:18:41,587 (小声で)四年前の繰綿の騒ぎだすけど➡ 272 00:18:41,587 --> 00:18:45,391 買い占めたんは 伊勢屋吉兵衛いう者やったそうだす。 273 00:18:45,391 --> 00:18:49,762 伊勢屋? ようある名ぁだすなあ。 どこのお人だす? 274 00:18:49,762 --> 00:18:53,933 分かりまへん。 どうやら 偽の名ぁらしいて。 275 00:18:53,933 --> 00:18:57,603 偽の名ぁて… 謀書謀判いうことだすか? 276 00:18:57,603 --> 00:19:00,339 それやったら 重い罪になりますで。 277 00:19:00,339 --> 00:19:02,408 文次郎さんが言わはるには➡ 278 00:19:02,408 --> 00:19:05,711 いつ また 似たようなことが起こるか 分かりまへんよって➡ 279 00:19:05,711 --> 00:19:11,050 万が一にも巻き込まれることのないよう くれぐれも ご用心をと。へえ。 280 00:19:11,050 --> 00:19:15,888 ご寮さん… あの時の繰綿の買い占めて➡ 281 00:19:15,888 --> 00:19:18,224 枡吾屋はんが関わってたんと 違いますやろか。 282 00:19:18,224 --> 00:19:20,159 えっ… 枡吾屋はんが? 283 00:19:20,159 --> 00:19:22,895 確かなことは分かりまへん。 284 00:19:22,895 --> 00:19:26,766 枡吾屋さんほどの大店が 偽の名ぁ使うような➡ 285 00:19:26,766 --> 00:19:29,468 危ないまね しはるやろか? 286 00:19:31,904 --> 00:19:36,242 (笑い声) 287 00:19:36,242 --> 00:19:40,246 店の中に小間物屋が出来てて びっくりしましたやろ? 288 00:19:40,246 --> 00:19:44,116 いいえ。 話に聞いてましたよって。 ご繁盛で何よりだす。 289 00:19:44,116 --> 00:19:47,386 フフッ… へえ おかげさんで。 フフッ。 290 00:19:47,386 --> 00:19:50,756 いや~ 江戸本店は 大きゅうなりましたなあ。 291 00:19:50,756 --> 00:19:56,929 初めて ここ来た時 こないな小さな店や 思たんが 遠い昔のことのようだす。 292 00:19:56,929 --> 00:20:00,766 うん? ホンマに ず~っと昔のことだすわ。 293 00:20:00,766 --> 00:20:06,405 わても こないに白髪が増えて。 (笑い声) 294 00:20:06,405 --> 00:20:10,276 ほな わては ぼちぼち。 明日 蔵前屋さんにお供させていただきます。 295 00:20:10,276 --> 00:20:13,112 へえ。 よろしゅうお頼申します。 296 00:20:13,112 --> 00:20:15,147 ほな 失礼いたします。 297 00:20:15,147 --> 00:20:19,885 (笑い声) もう…。 298 00:20:19,885 --> 00:20:26,292 はあ… せっかく大きゅうしたお店に いつまでも小間物屋が間借りしてたら➡ 299 00:20:26,292 --> 00:20:30,629 商いの邪魔になりますしなあ。 何をおっしゃいます。 300 00:20:30,629 --> 00:20:33,666 今年の暮れまでには なんとかしますよってな。 301 00:20:33,666 --> 00:20:36,802 ええ出物 見つかりそうだすか? 302 00:20:36,802 --> 00:20:39,705 う~ん…。 303 00:20:39,705 --> 00:20:45,444 実は 今日… 話 あったんだす。 まあ! 304 00:20:45,444 --> 00:20:47,980 早速 見てきましたんやけどな➡ 305 00:20:47,980 --> 00:20:52,151 末広屋さんいうて 中村座に出入りの おしろい屋さんだす。 306 00:20:52,151 --> 00:20:54,820 ほな 栄次郎さんの口利きだすか? 307 00:20:54,820 --> 00:20:58,691 へえ。 ただ じかに おつきあいはないそうで➡ 308 00:20:58,691 --> 00:21:02,628 ええも悪いも わての目で 確かめることになりましたんや。 309 00:21:02,628 --> 00:21:08,267 店主が里に帰らはるんで 奉公人も一緒に 居抜きで売りたいいうお話だした。 310 00:21:08,267 --> 00:21:10,770 それは よろしおますなあ! 311 00:21:10,770 --> 00:21:14,640 店に慣れた奉公人がいてくれたら 助かります。 312 00:21:14,640 --> 00:21:21,480 ただなあ… ちょっと大きい。 えっ? 313 00:21:21,480 --> 00:21:28,120 間口が 十間もあって 奉公人も 七人いてます。 314 00:21:28,120 --> 00:21:33,425 間口 十間? 探してはるのは 五間間口のお店だすやろ? 315 00:21:33,425 --> 00:21:40,966 へえ。 ホンマは すぐ断らなあきまへんのやけど…。 316 00:21:40,966 --> 00:21:45,971 幸 これ 見とくれやす。 317 00:21:48,641 --> 00:21:53,946 今朝 和三郎さんから 受け取ってきましたんや。 318 00:21:56,515 --> 00:22:00,252 何べんも何べんも やり直してもろて➡ 319 00:22:00,252 --> 00:22:04,590 ようやっと出来上がった 柘植の笄だす。 320 00:22:04,590 --> 00:22:08,394 ああ… きれいだすなあ! 321 00:22:08,394 --> 00:22:11,931 この彫りもん 南天だすやろか? 322 00:22:11,931 --> 00:22:17,803 へえ! 南天は 「難を転ずる」に通じるて言いますやろ? 323 00:22:17,803 --> 00:22:21,640 髪に挿したら お守りにもなります。 324 00:22:21,640 --> 00:22:26,779 これが出来た日に 末広屋さんの話が降って湧いて➡ 325 00:22:26,779 --> 00:22:34,420 この笄を早う 店 開いて売りとうて つい 断り損ねてしもた。 326 00:22:34,420 --> 00:22:41,627 けど… 身の丈に合わん店では どもなりまへんなあ。 327 00:22:41,627 --> 00:22:46,498 早々に断り言うて また次の店 探します。 328 00:22:46,498 --> 00:22:56,976 ♬~ 329 00:22:56,976 --> 00:23:00,246 (蔵前屋) お待たせして申し訳ございません。 330 00:23:00,246 --> 00:23:05,918 8年ぶりに江戸に出てまいりましたんで ご挨拶に寄らせていただきました。 331 00:23:05,918 --> 00:23:09,755 お取り込みのところに お邪魔してしもたようで…。 332 00:23:09,755 --> 00:23:16,095 今日に限ったことではございません。 先日 宝暦から明和に改まりまして➡ 333 00:23:16,095 --> 00:23:19,598 証文の日付を確かめるのに 追われております。 334 00:23:19,598 --> 00:23:22,268 あ… それは ご苦労さんでございます。 335 00:23:22,268 --> 00:23:27,606 まあ これは 手間がかかるだけのことですが…➡ 336 00:23:27,606 --> 00:23:32,778 来年 新しい銀が出ましたら➡ 337 00:23:32,778 --> 00:23:35,681 どうなりますことやら…。 338 00:23:35,681 --> 00:23:38,584 銀の改鋳でございますか? 339 00:23:38,584 --> 00:23:43,489 まだ ご内密に願いたいのですが…➡ 340 00:23:43,489 --> 00:23:46,959 新しい銀貨でございます。 341 00:23:46,959 --> 00:23:49,428 新しい… 銀貨? 342 00:23:49,428 --> 00:23:51,363 はい。 343 00:23:51,363 --> 00:23:54,967 これまでのように目方を量るのではなく➡ 344 00:23:54,967 --> 00:23:59,805 一枚五匁と定まったものになるそうです。 345 00:23:59,805 --> 00:24:01,774 ええっ!? あっ…。 346 00:24:01,774 --> 00:24:06,779 (蔵前屋) 両替商は 皆 頭を抱えておりますよ。 347 00:24:08,514 --> 00:24:10,916 <新しい五匁銀は➡ 348 00:24:10,916 --> 00:24:15,087 十二枚が 金一両相当と固定されるため➡ 349 00:24:15,087 --> 00:24:18,590 相場の変動で もうけてきた両替商にとっては➡ 350 00:24:18,590 --> 00:24:21,493 大きな痛手となるものだったのです> 351 00:24:21,493 --> 00:24:26,098 う~ん… わてには まだ訳が分かりまへん。 352 00:24:26,098 --> 00:24:30,969 丁銀でも小粒銀でも みんな 目方 量って使てますのに➡ 353 00:24:30,969 --> 00:24:35,107 金と同じように 枚数で 勘定することになりますのやろか? 354 00:24:35,107 --> 00:24:40,913 へえ。 そないなりますのやろな。 う~ん…。 355 00:24:40,913 --> 00:24:43,282 ハハハハ…。 356 00:24:43,282 --> 00:24:51,957 (風鈴の音) 357 00:24:51,957 --> 00:24:55,294 (枡吾屋忠兵衛) これはこれは 五鈴屋さん! 358 00:24:55,294 --> 00:25:01,567 久しくお目にかかりませんでしたが 相変わらず お美しい。 359 00:25:01,567 --> 00:25:05,437 おうわさは よう伺うとります。 360 00:25:05,437 --> 00:25:09,908 それは よいうわさでございましょうな? アッハハハハ…。 361 00:25:09,908 --> 00:25:13,112 (結)旦那さん? どないしはったんだす…。 362 00:25:15,381 --> 00:25:19,251 まあ… 珍しいお二人連れだすな。 363 00:25:19,251 --> 00:25:21,587 結さん…。 364 00:25:21,587 --> 00:25:24,390 ほな… このお人が? 365 00:25:27,459 --> 00:25:30,162 (鉄助)惣ぼんさん! 366 00:25:33,932 --> 00:25:37,269 (惣次)ひょんなとこで お目にかかるもんだすなあ。 367 00:25:37,269 --> 00:25:40,939 何ぞ こっちの方に ご用でも? 368 00:25:40,939 --> 00:25:43,409 へえ… ちょっと。 369 00:25:43,409 --> 00:25:47,279 ふ~ん。 ほな わては これで。 370 00:25:47,279 --> 00:25:50,182 そこまで ご一緒いたします。 371 00:25:50,182 --> 00:26:01,560 (ヒグラシの声) 372 00:26:01,560 --> 00:26:08,434 いつも ええお人らが そばにいてはって お幸せだすなあ。 373 00:26:08,434 --> 00:26:10,903 へえ。 374 00:26:10,903 --> 00:26:18,644 けど… 世の中 信用してええ人ばかりと 違いますよって➡ 375 00:26:18,644 --> 00:26:23,348 足すくわれんよう気ぃ付けておくれやす。 376 00:26:27,453 --> 00:26:30,589 何ちゅう言いぐさだすやろか。 377 00:26:30,589 --> 00:26:35,260 一番信用ならんのは 結さんと惣ぼんさんだす! 378 00:26:35,260 --> 00:26:41,266 惣ぼんさん… 何で 枡吾屋さんと…。 379 00:26:43,602 --> 00:26:47,272 こうして ご一緒している時に 五鈴屋さんに会うとは➡ 380 00:26:47,272 --> 00:26:50,609 これも ご縁というものですかねえ。 381 00:26:50,609 --> 00:26:53,645 とっくに縁は切れてますけどなあ。 382 00:26:53,645 --> 00:27:00,419 いえいえ 井筒屋さんと うちの女房とは 本を正せば 義理の兄妹。 383 00:27:00,419 --> 00:27:03,188 私どもは いわば親戚同然。 384 00:27:03,188 --> 00:27:06,892 これまで深いおつきあいがなかったのが 不思議なほどですよ。 385 00:27:06,892 --> 00:27:10,229 井筒屋さん 今後とも よしなに。 386 00:27:10,229 --> 00:27:14,099 (惣次)へえ。 来年 五匁銀が出回ったら➡ 387 00:27:14,099 --> 00:27:18,904 これまでのように 相場で もうけるんは難しゅうなります。 388 00:27:18,904 --> 00:27:24,243 ええもうけ話があったら いつでも乗らせてもらいます。 389 00:27:24,243 --> 00:27:31,116 (手を打つ音) これは話せる。 ハハハハ…。 390 00:27:31,116 --> 00:27:54,406 ♬~ 391 00:27:56,175 --> 00:28:01,547 (菊栄)えっ? 末広屋を 幸が一緒に買う 言うんだすか? 392 00:28:01,547 --> 00:28:06,718 呉服町の店 鉄助どんと見てまいりました。 393 00:28:06,718 --> 00:28:11,056 間口十間の店を二つに分けて 五間ずつなら➡ 394 00:28:11,056 --> 00:28:13,892 ちょうどええ大きさや思います。 395 00:28:13,892 --> 00:28:16,228 (菊栄)それは あきまへん。➡ 396 00:28:16,228 --> 00:28:19,898 幸に迷惑かけてまで 店開こうとは思てまへん。 397 00:28:19,898 --> 00:28:22,568 迷惑やなんて とんでもない。 398 00:28:22,568 --> 00:28:26,905 そろそろ 新店 開かなならんて 前から考えてましたんや。 399 00:28:26,905 --> 00:28:28,840 えっ? 400 00:28:28,840 --> 00:28:31,777 ご大家のお客さんも大切だすけど➡ 401 00:28:31,777 --> 00:28:36,915 前からのお客さんに 肩身の狭い思い さしてしもてます。 402 00:28:36,915 --> 00:28:39,585 このままでは あきまへんよって➡ 403 00:28:39,585 --> 00:28:44,389 もう一軒 店持って 五鈴屋の商いを二つに分けたいて➡ 404 00:28:44,389 --> 00:28:47,292 鉄助どんとも相談してましたんや。 405 00:28:47,292 --> 00:28:52,931 江戸本店では 手ごろな値の品を店前現銀売りで➡ 406 00:28:52,931 --> 00:28:56,401 新店では よりすぐりの呉服を屋敷売りで➡ 407 00:28:56,401 --> 00:28:59,771 それぞれ分けて受け持ついうお話だす。 408 00:28:59,771 --> 00:29:03,041 高価な友禅をお求めになる お客さんにも➡ 409 00:29:03,041 --> 00:29:06,545 手ごろな浴衣を買うてくださる お客さんにも➡ 410 00:29:06,545 --> 00:29:12,217 気兼ねのう買い物を楽しんでいただきたい 思てのことだす。 411 00:29:12,217 --> 00:29:16,221 菊栄さんのお話に 半分乗らせていただくこと➡ 412 00:29:16,221 --> 00:29:20,092 わての方から お頼み申します。 413 00:29:20,092 --> 00:29:22,728 幸…。 414 00:29:22,728 --> 00:29:26,898 立地も よろしおますし 店の周りも こぎれいにしてて➡ 415 00:29:26,898 --> 00:29:29,735 奉公人も よう働いてるようだす。 416 00:29:29,735 --> 00:29:32,237 ええ出物や思います。 417 00:29:36,375 --> 00:29:41,747 おおきに… ありがとさんでございます。 418 00:29:41,747 --> 00:29:46,251 これで 小間物屋 菊栄が開けます。 419 00:29:46,251 --> 00:29:48,186 きくえい? 420 00:29:48,186 --> 00:29:53,759 へえ! 店の名は 菊栄と書いて きくえいだす。 421 00:29:53,759 --> 00:29:57,596 覚えやすうて ええ名ぁだすやろ? へえ! 422 00:29:57,596 --> 00:30:00,499 うん! これで決まりだすな。 423 00:30:00,499 --> 00:30:03,402 五鈴屋が 江戸に 二軒も店持つやなんて➡ 424 00:30:03,402 --> 00:30:06,605 ホンマに 夢のような話だす。 へえ! 425 00:30:06,605 --> 00:30:09,641 豆七っとんらは 屋敷売りに慣れてますよって➡ 426 00:30:09,641 --> 00:30:12,477 新店でお役に立ちますやろ。 427 00:30:12,477 --> 00:30:16,114 これで わても安心して大坂へ帰れます。 428 00:30:16,114 --> 00:30:20,285 (笑い声) 429 00:30:20,285 --> 00:30:25,157 (菊栄)おおきに! フフフ…。 430 00:30:25,157 --> 00:30:30,429 <幸と菊栄が折半して 末広屋を買い上げる話は➡ 431 00:30:30,429 --> 00:30:33,332 とんとん拍子に 進んで…➡ 432 00:30:33,332 --> 00:30:36,802 手続きが煩雑になるのを避けるために➡ 433 00:30:36,802 --> 00:30:43,675 売り渡し証文の沽券状の名義は 菊栄一人とすることが決まりました> 434 00:30:43,675 --> 00:30:48,313 (末広屋)ご存じのように 沽券状は 五人組と名主のお許しを得て➡ 435 00:30:48,313 --> 00:30:51,216 判をついていただかなければなりません。 436 00:30:51,216 --> 00:30:54,119 手間のかかることでございますので➡ 437 00:30:54,119 --> 00:30:59,324 お差し支えなければ そこまでの手はずは 私どもで整えるようにいたしますが。 438 00:30:59,324 --> 00:31:02,260 あ…。 439 00:31:02,260 --> 00:31:06,398 呉服町でお顔の利く末広屋さんに お願いできましたら➡ 440 00:31:06,398 --> 00:31:08,767 大助かりでございます。 441 00:31:08,767 --> 00:31:14,406 では 間違いのないよう 進めさせていただきます。 アハハハ…。 442 00:31:14,406 --> 00:31:18,276 それから 奉公人のことでございますが…。 443 00:31:18,276 --> 00:31:24,416 わての方で 番頭さんと手代さん二人 小僧さん二人の➡ 444 00:31:24,416 --> 00:31:28,286 合わせて五人 お引き受けさせていただきます。 445 00:31:28,286 --> 00:31:34,159 手代さんと小僧さん 一人ずつ 五鈴屋がお引き受けさせていただきます。 446 00:31:34,159 --> 00:31:40,866 なんと… 七人 皆? ああ… ありがたい! ハハハ。 447 00:31:40,866 --> 00:31:44,736 これで安心して 私も生国に戻れます。 448 00:31:44,736 --> 00:31:48,440 番頭さん お前からもお礼を。 はっ。 449 00:31:48,440 --> 00:31:51,309 なんと お礼を申し上げてよいやら…。 450 00:31:51,309 --> 00:31:54,312 一所懸命 ご奉公させていただきます。 451 00:31:54,312 --> 00:31:57,115 よろしゅうお頼申します。 452 00:31:59,651 --> 00:32:03,255 末広屋さん お国は どちらでございますか? 453 00:32:03,255 --> 00:32:08,760 信州でございます。 連れ合いに先立たれ 後を託す子もおりませんので➡ 454 00:32:08,760 --> 00:32:11,663 もう 何の欲もございません。 フフッ。 455 00:32:11,663 --> 00:32:17,936 あとは 静かに… ハハッ 余生を過ごすつもりでおります。 456 00:32:17,936 --> 00:32:23,275 ほな 証文取り交わす日取り いつが よろしゅうございますやろ? 457 00:32:23,275 --> 00:32:28,613 (末広屋)名主や五人組への根回しに 時がかかりますので…➡ 458 00:32:28,613 --> 00:32:31,283 10月15日では いかがでしょう? 459 00:32:31,283 --> 00:32:35,153 それまでに 代金を お支払いいただくことになりますが。 460 00:32:35,153 --> 00:32:38,623 それで よろしおますか? へえ。 461 00:32:38,623 --> 00:32:42,494 ほな 10月15日に。 462 00:32:42,494 --> 00:32:45,964 年の瀬までには引き移りたい 思てますのやけど➡ 463 00:32:45,964 --> 00:32:48,300 証文の取り交わしが済みましたら➡ 464 00:32:48,300 --> 00:32:51,303 大工仕事に入らせていただいても よろしゅうごあすか? 465 00:32:51,303 --> 00:32:54,306 ええ そうなさってください。 466 00:32:59,444 --> 00:33:04,082 <末広屋に一任した 名主や五人組との交渉は➡ 467 00:33:04,082 --> 00:33:08,286 その後 滞りなく進んだ様子で…> 468 00:33:10,589 --> 00:33:14,759 <沽券状の受け渡しが行われたのは 約束どおり➡ 469 00:33:14,759 --> 00:33:18,263 10月15日のことでした> 470 00:33:19,931 --> 00:33:22,267 (豆七)いて参じます~! 471 00:33:22,267 --> 00:33:24,202 わあ! 472 00:33:24,202 --> 00:33:29,040 <11月 大坂から移ってきた三人の手代も➡ 473 00:33:29,040 --> 00:33:31,409 江戸の商いに すっかり慣れて…> 474 00:33:31,409 --> 00:33:33,478 どうも! 475 00:33:33,478 --> 00:33:37,782 <江戸に もう一つ店が出来ることが 励みとなり➡ 476 00:33:37,782 --> 00:33:42,621 五鈴屋の商いには ますます弾みがついたのです> 477 00:33:42,621 --> 00:33:45,290 ありがとさんでございます。 478 00:33:45,290 --> 00:33:52,297 (力造)おかみさん 菊栄さん ご注文の品 ようやく染め上がりやした。 479 00:34:04,576 --> 00:34:06,611 ああ…。 480 00:34:06,611 --> 00:34:19,925 ♬~ 481 00:34:19,925 --> 00:34:22,227 いかがでございやしょう? 482 00:34:25,797 --> 00:34:32,103 「御小間物所 菊栄」。 483 00:34:36,274 --> 00:34:38,276 力造さん…。 484 00:34:40,145 --> 00:34:48,954 こない きれいに染めていただいて おおきに ありがとさんでございます。 485 00:34:51,623 --> 00:34:55,493 (お才)五鈴屋さん 菊栄さん➡ 486 00:34:55,493 --> 00:34:57,963 おめでとうございます。 487 00:34:57,963 --> 00:35:00,565 へえ…。 488 00:35:00,565 --> 00:35:06,905 染めていただいた この のれん 末永う受け継いでいけますよう➡ 489 00:35:06,905 --> 00:35:09,808 せえだい気張らせてもらいます。 490 00:35:09,808 --> 00:35:15,246 五鈴屋の のれんの色も ホンマに見事だす。 491 00:35:15,246 --> 00:35:19,250 おおきに ありがとさんでございます。 492 00:35:19,250 --> 00:35:22,587 よかった。 ハハハ…。 493 00:35:22,587 --> 00:35:29,094 これで 肩の荷を片方だけ下ろせやした。 片方? 494 00:35:29,094 --> 00:35:33,264 もう一方は まだ ずっしり載ってましてねえ。 495 00:35:33,264 --> 00:35:37,135 ああ… 栄次郎さんからの頼まれ事だすな。 496 00:35:37,135 --> 00:35:40,605 吉之丞さんの色を作る話。 497 00:35:40,605 --> 00:35:47,379 吉之丞さんに お目にかかって あっしは どぎもを抜かれちまいました。➡ 498 00:35:47,379 --> 00:35:52,117 器量がいいってだけじゃねえ まるで➡ 499 00:35:52,117 --> 00:35:55,920 身の内から光を放ってるようで。 500 00:36:00,225 --> 00:36:06,731 あのお人に どんな色がふさわしいか 俺には まだ 見当がつかねえんで…。 501 00:36:11,836 --> 00:36:17,375 こぉとな色が 似合いますやろな…。 502 00:36:17,375 --> 00:36:22,747 こぉと? あっ… 大坂の言葉だす。 503 00:36:22,747 --> 00:36:27,252 江戸では どない言うたらええんだすやろ…➡ 504 00:36:27,252 --> 00:36:35,760 地味やけど 品と深みがある言うたら ええんだすやろか? 505 00:36:35,760 --> 00:36:38,563 こぉとな… 色…。 506 00:36:42,934 --> 00:36:45,837 ⚟来年の大小…。 507 00:36:45,837 --> 00:36:50,809 <その年の暮れ 末広屋の改築も無事に終わって➡ 508 00:36:50,809 --> 00:36:56,114 菊栄は予定どおり 呉服町の店に移ることとなりました> 509 00:36:56,114 --> 00:36:58,149 はあ~…。 510 00:36:58,149 --> 00:37:02,353 菊栄さん 何ぞ お手伝いいたしまひょか? 511 00:37:02,353 --> 00:37:06,891 いえ 荷物は あらかた 運んでしまいましたよって➡ 512 00:37:06,891 --> 00:37:11,362 明日 身ぃ一つで ここ出るだけだす。 513 00:37:11,362 --> 00:37:14,232 幸… ちょっと。 514 00:37:14,232 --> 00:37:16,234 へえ。 515 00:37:19,571 --> 00:37:25,243 長いこと 居候させてもろて ありがとさんでございました。 516 00:37:25,243 --> 00:37:27,579 居候やなんて…。 517 00:37:27,579 --> 00:37:35,920 店を大きゅうできたんは 菊栄さんが お隣を買い上げてくださったおかげだす。 518 00:37:35,920 --> 00:37:40,725 これなあ… 幸に渡そう思て…。 519 00:37:45,597 --> 00:37:51,102 和三郎さんに頼んで 特別に こしらえてもらいましたんや。 520 00:37:51,102 --> 00:37:56,407 南天と… 鈴? 521 00:37:56,407 --> 00:38:03,181 別れる時に髪の飾りを渡すの これが三度目だすなあ。 522 00:38:03,181 --> 00:38:08,553 へえ。 最初は わてが江戸に出る時に。 523 00:38:08,553 --> 00:38:14,058 これは お守り代わりや。 お互い 気張りまひょ。 524 00:38:14,058 --> 00:38:15,994 へえ。 525 00:38:15,994 --> 00:38:21,566 二度目は 江戸に出る覚悟を 幸に打ち明けた時。 526 00:38:21,566 --> 00:38:26,905 このかんざしは 必ず江戸に出るいう覚悟の証しだす。 527 00:38:26,905 --> 00:38:29,741 幸が持ってておくれやす。 528 00:38:29,741 --> 00:38:37,048 三度目は 二人の店を二軒並べて開く 今だす。 529 00:38:42,921 --> 00:38:46,758 ああ…。 いつか一緒に➡ 530 00:38:46,758 --> 00:38:50,595 面白いことやろう言うてたのが➡ 531 00:38:50,595 --> 00:38:55,466 ようやっと ホンマになりそうだすな! 532 00:38:55,466 --> 00:38:58,937 へえ! 533 00:38:58,937 --> 00:39:05,343 まだまだ 難儀なことは続きますやろけど➡ 534 00:39:05,343 --> 00:39:10,548 「難を転じて福となす」や。 535 00:39:10,548 --> 00:39:15,253 はあ… 難を転じて…。 536 00:39:16,888 --> 00:39:25,230 どないな苦労も あんさんの名のとおり 幸いに変えておくれやす。 537 00:39:25,230 --> 00:39:30,101 へえ… 必ず! 538 00:39:30,101 --> 00:39:33,371 フフッ…。 539 00:39:33,371 --> 00:39:37,575 ああ…。 (2人)フフフ…。 540 00:39:37,575 --> 00:39:40,912 <翌年 明和2年1月> 541 00:39:40,912 --> 00:39:44,749 いて参じます~!いて参じます~! 542 00:39:44,749 --> 00:39:48,620 <五鈴屋 呉服町店と 小間物屋 菊栄が➡ 543 00:39:48,620 --> 00:39:52,824 二軒並んで 店を開けました> 544 00:39:54,459 --> 00:40:00,932 <屋敷売りをする呉服町店には 豆七 鶴七 亀七のほかに➡ 545 00:40:00,932 --> 00:40:05,770 末広屋の手代の清一と 小僧の平太が加わり➡ 546 00:40:05,770 --> 00:40:11,976 しばらくは 賢輔も通ってきて 指揮を執ることとなりました> 547 00:40:15,480 --> 00:40:17,482 いらっしゃいませ。 548 00:40:17,482 --> 00:40:20,285 吉之丞の鈴のかんざし こちらで買えるんですか? 549 00:40:20,285 --> 00:40:25,623 はい こちらにございます。 550 00:40:25,623 --> 00:40:27,659 へえ~。 551 00:40:27,659 --> 00:40:30,962 どうぞ お手に取って 見ておくれやす。 552 00:40:30,962 --> 00:40:33,798 へえ~! おいくらですか? 553 00:40:33,798 --> 00:40:38,670 銀三匁でございます。 銀三匁? 本当に? 554 00:40:38,670 --> 00:40:41,306 安いねえ! これなら買えるよ! 555 00:40:41,306 --> 00:40:46,444 <手ごろな値をつけた笄は評判を呼んで 次々と売れ➡ 556 00:40:46,444 --> 00:40:50,648 二つ並んだ店は 上々の滑り出しを見せたのです> 557 00:40:50,648 --> 00:40:53,551 小間物の菊栄でございます。 558 00:40:53,551 --> 00:40:58,823 小鈴のかんざしに 柘植の笄 袋物も取りそろえてございます。 559 00:40:58,823 --> 00:41:01,626 どうぞ見ていっておくれやす! 560 00:41:03,795 --> 00:41:07,532 <開店から ひとつきほど過ぎて…> 561 00:41:07,532 --> 00:41:20,411 (風の音) 562 00:41:20,411 --> 00:41:22,947 もし… 何ぞ ご用でございますか? 563 00:41:22,947 --> 00:41:30,288 ああ… いや 浜羽二重を買いたいんだが 店前現銀売りはしてるのかい? 564 00:41:30,288 --> 00:41:33,191 いえ… 屋敷売りだけでございます。 565 00:41:33,191 --> 00:41:36,160 浅草の本店でしたら 現銀でお売りしてますよって➡ 566 00:41:36,160 --> 00:41:39,430 よろしければ ご案内させていただきます。 567 00:41:39,430 --> 00:41:42,967 いや… ほんなら ええ。 行こか。 568 00:41:42,967 --> 00:41:44,902 へい。 569 00:41:44,902 --> 00:41:49,841 (風の音) 570 00:41:49,841 --> 00:41:53,344 (菊栄)豆七っとん? へえ。 571 00:41:55,146 --> 00:41:59,450 (鳥の鳴き声) 572 00:41:59,450 --> 00:42:02,920 あの黒羽織…。 573 00:42:02,920 --> 00:42:06,257 惣ぼんさんやろか? 574 00:42:06,257 --> 00:42:10,128 呉服屋も小間物屋も どっちも繁盛してるようやな。 575 00:42:10,128 --> 00:42:15,266 はい。 品ぞろえも 客あしらいもよいと 評判でございます。 576 00:42:15,266 --> 00:42:19,604 ふ~ん… 結構なこっちゃ。 577 00:42:19,604 --> 00:42:23,775 まあ… しばらく様子見よか。 578 00:42:23,775 --> 00:42:25,710 へい。 579 00:42:25,710 --> 00:42:34,952 ♬~ 580 00:42:34,952 --> 00:42:38,289 惣ぼんさんが? お前さんたちは…。 581 00:42:38,289 --> 00:42:40,291 偽物? あんさんへの嫉妬や。 582 00:42:40,291 --> 00:42:42,960 まだまだ知恵を…。知恵を借りてえ。 583 00:42:42,960 --> 00:42:44,896 枡吾屋さんが… 捕まりました。 584 00:42:44,896 --> 00:42:46,831 枡吾屋忠兵衛の女房だす。 585 00:42:46,831 --> 00:42:49,133 火元が近うおます! 一人では危のうおます! 586 00:42:49,133 --> 00:42:52,970 ご寮さん! 金と銀… 金を守らなあきまへんで。 587 00:42:52,970 --> 00:42:55,673 腕が鳴りまさあ!