1 00:00:03,937 --> 00:00:09,810 (幸)主不在のため 女房が代わってお願い申し上げます。 2 00:00:09,810 --> 00:00:13,614 桔梗屋さんの買い上げに➡ 3 00:00:13,614 --> 00:00:17,417 五鈴屋が 名乗りを 上げさせていただきとうございます。 4 00:00:17,417 --> 00:00:19,953 (真澄屋)何やて!? 5 00:00:19,953 --> 00:00:22,856 よろしゅうお頼申します。 6 00:00:22,856 --> 00:00:25,425 大きく出よって…! 7 00:00:25,425 --> 00:00:30,264 フン… 桔梗屋さんは 天満でも 指折りの老舗だっせ。➡ 8 00:00:30,264 --> 00:00:33,634 店構えかて あんさんとこの 倍はあるわ。 9 00:00:33,634 --> 00:00:39,506 格下の分際で 買い上げるやなんて よう言えたもんやな!➡ 10 00:00:39,506 --> 00:00:42,342 五鈴屋さんは どないなってますねん。 11 00:00:42,342 --> 00:00:48,649 店主のおらん隙に 女房の一存で 店一軒買う言うんか!? 12 00:00:48,649 --> 00:00:51,551 (智蔵)待っとくれやす! 13 00:00:51,551 --> 00:00:53,854 こちらだす! ああ…。 14 00:00:59,326 --> 00:01:04,131 女房が申し上げたことは 皆 わての考えでおます。 15 00:01:04,131 --> 00:01:07,401 何? 桔梗屋さんの商い➡ 16 00:01:07,401 --> 00:01:10,103 継がせていただきとうございます! 17 00:01:10,103 --> 00:01:13,607 (桔梗屋孫六)うっ… 頼む…。 18 00:01:13,607 --> 00:01:16,410 頼む! 動いたらあかん! 19 00:01:16,410 --> 00:01:20,280 卒中風や。 何やて!? 20 00:01:20,280 --> 00:01:22,215 (周助)旦那さん! 旦那さん! 21 00:01:22,215 --> 00:01:28,422 <桔梗屋が病に倒れ 五鈴屋と真澄屋の どちらが店を買い上げるか➡ 22 00:01:28,422 --> 00:01:32,793 その決着は持ち越しとなったのです> 23 00:01:32,793 --> 00:01:45,005 ♬~ 24 00:01:48,976 --> 00:01:52,679 (鉄助)銀二十貫の手形でおます。 25 00:02:01,922 --> 00:02:03,857 確かに。 26 00:02:03,857 --> 00:02:06,760 いよいよだすな。 27 00:02:06,760 --> 00:02:11,598 うちと真澄屋はん どっちに 軍配が上がるか 勝負の日でおます。 28 00:02:11,598 --> 00:02:14,501 けど 真澄屋はんのことやさかい➡ 29 00:02:14,501 --> 00:02:17,270 今日まで 手ぇこまねいてたとは 思えまへん。 30 00:02:17,270 --> 00:02:22,943 陰で こそこそ 天満の旦那衆に 何か 根回ししてはったようだっせ。 31 00:02:22,943 --> 00:02:24,878 (真澄屋)お願いしますわ…。 32 00:02:24,878 --> 00:02:28,115 (鉄助) 大坂三郷の呉服仲間が一つになったら➡ 33 00:02:28,115 --> 00:02:35,288 何かと便宜図れまっせ~とか何とか言うて 触れ回ってはったようで…。 34 00:02:35,288 --> 00:02:38,291 ホンマに 油断のならんお人だす。 35 00:02:38,291 --> 00:02:40,427 買い上げが決まったら決まったで➡ 36 00:02:40,427 --> 00:02:43,964 残金の工面やらで 苦労をかけることになるけど➡ 37 00:02:43,964 --> 00:02:46,867 それは覚悟しといてな。 へえ! 38 00:02:46,867 --> 00:02:50,137 すんまへん わてが言いだしたことで…。 39 00:02:50,137 --> 00:02:52,806 はあ… 何言うてますんや。 40 00:02:52,806 --> 00:02:55,842 あの場で よう言うてくれたて 感心してますのや。 41 00:02:55,842 --> 00:02:59,312 (鉄助)お店が二軒になるのは 夢のような話だす。 42 00:02:59,312 --> 00:03:03,583 うれしい苦労は 苦労のうちに入りまへん。 フッ…。 43 00:03:03,583 --> 00:03:05,619 おおきに。 44 00:03:05,619 --> 00:03:09,923 桔梗屋さんのためにも 今日は一歩も引けまへん。 45 00:03:09,923 --> 00:03:12,826 ほな 出陣や。 46 00:03:12,826 --> 00:03:14,828 へえ! 47 00:03:17,397 --> 00:03:20,300 (入江屋)皆さん おそろいのところで➡ 48 00:03:20,300 --> 00:03:24,171 昨年来 持ち越しの 桔梗屋さん 買い上げの件➡ 49 00:03:24,171 --> 00:03:26,139 決めとう存じます。 50 00:03:26,139 --> 00:03:29,976 (松橋屋)まだ役者が そろてまへんで。 肝心のお人がいてまへん。 51 00:03:29,976 --> 00:03:33,413 真澄屋さんやったら 待っても現れまへん。 52 00:03:33,413 --> 00:03:37,617 えっ? (入江屋)最前 使いが来ましたんや。 53 00:03:37,617 --> 00:03:40,420 手付けの銀二十貫が戻るなら➡ 54 00:03:40,420 --> 00:03:44,958 買い上げの話 反故にしてもええそうだす。 55 00:03:44,958 --> 00:03:47,994 (2人)えっ…? どないなっとんのや…。 56 00:03:47,994 --> 00:03:51,431 戦わずして逃げたいうことでおますか? 57 00:03:51,431 --> 00:03:54,968 まあ そないなとこだすやろ。 58 00:03:54,968 --> 00:03:57,637 ちょろちょろ 立ち回ってはったようだすけど➡ 59 00:03:57,637 --> 00:04:04,744 天満の呉服仲間には 甘言に釣られる者は おらんかったいうことや。➡ 60 00:04:04,744 --> 00:04:09,249 改めて 五鈴屋さんにお尋ねします。 61 00:04:09,249 --> 00:04:16,389 手付けの銀二十貫 真澄屋さんに払て 桔梗屋さんを買い上げる心積もりに➡ 62 00:04:16,389 --> 00:04:18,325 変わりおまへんか? 63 00:04:18,325 --> 00:04:20,327 へえ! 64 00:04:24,131 --> 00:04:39,946 ♬~ 65 00:04:39,946 --> 00:04:43,817 商いも奉公人も 皆 引き継がせていただき➡ 66 00:04:43,817 --> 00:04:50,123 桔梗屋さんの名ぁと のれん守って 精進させていただく覚悟でござります。 67 00:04:55,295 --> 00:04:59,100 銀二十貫の手形に 相違おまへん。 68 00:05:04,905 --> 00:05:07,941 皆さんにお尋ねします。 69 00:05:07,941 --> 00:05:15,749 天満の呉服仲間として こたびの買い上げ 認めてもよろしおますやろか? 70 00:05:23,290 --> 00:05:31,131 ♬~ 71 00:05:31,131 --> 00:05:33,934 (入江屋)決まりだすな! 72 00:05:33,934 --> 00:05:38,805 五鈴屋さん おめでとうさんでございます。 73 00:05:38,805 --> 00:05:43,944 (一同)おめでとうさんでございます。 74 00:05:43,944 --> 00:05:49,749 おおきに ありがとさんでございます。 75 00:05:49,749 --> 00:05:52,452 ありがとさんでございます。 76 00:05:54,955 --> 00:06:01,761 <開いて置かれた扇子は 天満の旦那衆の賛同を示すものでした。➡ 77 00:06:01,761 --> 00:06:09,569 この日 満場一致で 五鈴屋の 桔梗屋買い上げが認められたのです> 78 00:06:15,575 --> 00:06:18,612 <八日は おととしの暮れに亡くなった➡ 79 00:06:18,612 --> 00:06:21,414 富久の月命日です> 80 00:06:23,316 --> 00:06:25,919 ご寮さん。 81 00:06:25,919 --> 00:06:28,622 あっ 治兵衛さん! 82 00:06:33,260 --> 00:06:37,264 (治兵衛) 長いこと 手ぇ合わせてはりましたな。 83 00:06:37,264 --> 00:06:42,402 お家さんに聞いてほしいこと ぎょうさんあって。 84 00:06:42,402 --> 00:06:45,305 桔梗屋さんのことだすな。 85 00:06:45,305 --> 00:06:48,942 ご存じやったんだすか? 86 00:06:48,942 --> 00:06:55,148 旦那さんのお見舞いに 何べんか伺わせてもろてます。 87 00:06:57,617 --> 00:07:03,423 思い切った戦 しはりましたなあ。 フッ。 あっ…。 88 00:07:03,423 --> 00:07:09,062 敵陣から 桔梗屋さんを 奪い返さはったんは➡ 89 00:07:09,062 --> 00:07:12,265 商いの大戦だす。 90 00:07:15,235 --> 00:07:22,108 迷わず名乗りを上げはったんは ええ策だした。 91 00:07:22,108 --> 00:07:25,578 浜羽二重で もうけが出たおかげだす。 92 00:07:25,578 --> 00:07:30,450 茂作さんにも 出羽で ぎょうさん売っていただいて。 93 00:07:30,450 --> 00:07:36,923 けど… まだ よう分からへんのだす。 94 00:07:36,923 --> 00:07:42,929 二軒の店 一つにまとめていくには どないしたらええのんか…。 95 00:07:47,100 --> 00:07:50,937 ご寮さん。 96 00:07:50,937 --> 00:07:56,409 あさって 桔梗屋の旦那さんから…➡ 97 00:07:56,409 --> 00:07:59,612 ある申し出がおますやろ。 98 00:08:03,049 --> 00:08:06,553 迷わず 受けなはれや。 99 00:08:06,553 --> 00:08:10,223 申し出って どないなことだす? 100 00:08:10,223 --> 00:08:15,729 商いいうのは 時には酷なもんだす。 101 00:08:17,564 --> 00:08:23,370 主従の区別は はっきりさせなあきまへん。 102 00:08:26,072 --> 00:08:32,579 こたびの件では 買い上げる五鈴屋が主で➡ 103 00:08:32,579 --> 00:08:37,384 買われる桔梗屋は従だす。 104 00:08:37,384 --> 00:08:43,590 主従のけじめつけて その上で…➡ 105 00:08:43,590 --> 00:08:46,493 情け かけなはれ。 106 00:08:46,493 --> 00:08:49,462 情け? 107 00:08:49,462 --> 00:08:52,766 そろそろ行きまひょか。 108 00:08:52,766 --> 00:08:57,971 遅なると 女房が案じますわ。 109 00:09:00,206 --> 00:09:03,543 お代 ここ 置きますで。 110 00:09:03,543 --> 00:09:06,846 ⚟へえ。 おおきに! 111 00:09:10,316 --> 00:09:14,554 ♬ 正一位稲荷大明神 112 00:09:14,554 --> 00:09:18,892 ♬ お稲荷さんのことなら どこまでも 113 00:09:18,892 --> 00:09:24,764 ええ お天気だすな。 へえ。 さい先のええことで。 ハハハ。 114 00:09:24,764 --> 00:09:27,901 <桔梗屋と契約を結ぶ今日は➡ 115 00:09:27,901 --> 00:09:32,605 物事を始めるのによいとされる 初午の日です> 116 00:09:34,374 --> 00:09:36,576 <ところが…> 117 00:09:48,588 --> 00:09:52,392 お待ち申しておりました。 118 00:09:52,392 --> 00:09:54,327 今日は よろしゅう頼んます。 119 00:09:54,327 --> 00:09:58,932 さあ… どうぞ 奥へ。 へえ。 120 00:09:58,932 --> 00:10:03,269 何や 様子がおかしおますな。 へえ…。 121 00:10:03,269 --> 00:10:15,281 ♬~ 122 00:10:15,281 --> 00:10:18,952 <桔梗屋が提示した額は 相場よりも安く➡ 123 00:10:18,952 --> 00:10:25,425 買い上げの手続きは 順調に進んでいきました> 124 00:10:25,425 --> 00:10:27,427 確かに。 125 00:10:31,631 --> 00:10:35,935 万事うまく調って 一安心でおます。 126 00:10:40,640 --> 00:10:44,444 買い上げるいうても 店の名ぁも のれんも変わりまへんよって➡ 127 00:10:44,444 --> 00:10:47,447 皆 安心しておくれやす。 128 00:10:49,315 --> 00:10:52,652 あかん! 129 00:10:52,652 --> 00:10:57,824 桔梗屋の名ぁも… のれんも…➡ 130 00:10:57,824 --> 00:11:00,159 もう使たら あきまへん。 131 00:11:00,159 --> 00:11:03,596 何言わはりますのや。 屋号も のれんも そのまま引き継ぐいう約束…。 132 00:11:03,596 --> 00:11:06,099 いいや! はあ…。 133 00:11:06,099 --> 00:11:12,405 桔梗屋ののれんは 外さなあきまへん! 134 00:11:12,405 --> 00:11:15,208 ぐっ… ううっ…。 135 00:11:19,779 --> 00:11:24,951 主に代わって 申し上げます。 136 00:11:24,951 --> 00:11:32,825 屋号も のれんも残るて聞いて 奉公人 皆 喜んでおりましたんや。 137 00:11:32,825 --> 00:11:39,966 これからも 桔梗屋のために働けるて。 138 00:11:39,966 --> 00:11:41,901 けど…。 139 00:11:41,901 --> 00:11:44,437 政七っとん 政七っとん! 何や? 140 00:11:44,437 --> 00:11:47,807 今までどおり 桔梗屋の奉公人として 働けるんやな。 141 00:11:47,807 --> 00:11:50,843 あ… ホンマに安堵したで。 ああ。 142 00:11:50,843 --> 00:11:53,980 格下の店の奉公人には なりとうないさかい。 143 00:11:53,980 --> 00:11:57,850 ホンマやな。 勘弁してほしいわ ホンマに。 恥ずかしいて奉公できんわ。 144 00:11:57,850 --> 00:11:59,852 やってられへん。 145 00:11:59,852 --> 00:12:05,925 (周助)旦那さんは これではあかんて 思わはったんだす。➡ 146 00:12:05,925 --> 00:12:13,099 店主も奉公人も 心一つにして 同じ のれん背負ってこそ➡ 147 00:12:13,099 --> 00:12:16,936 店は繁盛するのやて。 148 00:12:16,936 --> 00:12:20,807 せやから…➡ 149 00:12:20,807 --> 00:12:26,613 桔梗屋の屋号も のれんも…➡ 150 00:12:26,613 --> 00:12:31,417 なくしてしまおうて… 決めはったんだす。 151 00:12:34,954 --> 00:12:38,424 けど それは あんまりだす。 152 00:12:38,424 --> 00:12:40,960 天満から 桔梗屋ののれんが消えるやなんて…。 153 00:12:40,960 --> 00:12:49,302 ええねや。 桔梗の花は枯らしてしもて➡ 154 00:12:49,302 --> 00:12:54,007 鈴になって長らえたら それでええ。 155 00:12:56,976 --> 00:13:00,747 桔梗屋の旦那さんから…➡ 156 00:13:00,747 --> 00:13:03,950 ある申し出がおますやろ。 157 00:13:06,919 --> 00:13:10,723 迷わず 受けなはれや。 158 00:13:12,792 --> 00:13:15,795 このことやったんや…。 159 00:13:17,563 --> 00:13:21,768 屋号と のれん…。 160 00:13:24,337 --> 00:13:26,839 どないしたもんやろな? 161 00:13:29,609 --> 00:13:33,279 そんなら…。 162 00:13:33,279 --> 00:13:36,182 かまへん。 何でも言うてみなはれ。 163 00:13:36,182 --> 00:13:39,619 へえ。 この際…➡ 164 00:13:39,619 --> 00:13:42,655 桔梗屋の旦那さんの仰せのとおり➡ 165 00:13:42,655 --> 00:13:49,295 屋号も のれんも 五鈴屋に 改めさせてもろたら どないだすやろ? 166 00:13:49,295 --> 00:13:53,633 けど それは あんまり…。 167 00:13:53,633 --> 00:13:59,439 そのかわり お願いがございます。 168 00:13:59,439 --> 00:14:06,212 周助さんをはじめ 奉公人の皆さんが 五鈴屋を勤め上げて➡ 169 00:14:06,212 --> 00:14:10,083 別家 立てはる時には➡ 170 00:14:10,083 --> 00:14:12,985 桔梗屋さんの屋号と のれん➡ 171 00:14:12,985 --> 00:14:16,489 引き継ぐことを お許しいただけまへんやろか? 172 00:14:20,259 --> 00:14:25,131 なるほど… その手がおましたな! 173 00:14:25,131 --> 00:14:30,903 どないだす? お聞き届けいただけますやろか? 174 00:14:30,903 --> 00:14:36,809 願ってもないことや…。 175 00:14:36,809 --> 00:14:41,547 おおきに… おおきに! 176 00:14:41,547 --> 00:14:45,485 おおきに… おおきに…。 177 00:14:45,485 --> 00:14:49,622 桔梗の花 いずれ また咲かせますさかい➡ 178 00:14:49,622 --> 00:14:52,425 安心して養生しておくれやす。 179 00:14:52,425 --> 00:15:09,575 (すすり泣き) 180 00:15:09,575 --> 00:15:15,248 <この日から 桔梗屋は 五鈴屋高島店と名を変え➡ 181 00:15:15,248 --> 00:15:23,122 孫六を親旦那さん 周助を高島店支配人と 呼ぶことが決まりました。➡ 182 00:15:23,122 --> 00:15:28,795 そして 元の五鈴屋は 五鈴屋本店となり➡ 183 00:15:28,795 --> 00:15:34,600 この機に 安吉と辰吉が手代に昇進。➡ 184 00:15:34,600 --> 00:15:41,107 名を安七 辰七と改めたのです。➡ 185 00:15:41,107 --> 00:15:47,413 高島店からは 丁稚が一人 本店に移ってきました> 186 00:15:47,413 --> 00:15:51,217 (佐七)これ 見世に持ってってんか。 へえ! 187 00:15:54,954 --> 00:15:58,424 ⚟(お梅)ええ匂いや。➡ 188 00:15:58,424 --> 00:16:00,893 今日は アジの煮つけだすな! 189 00:16:00,893 --> 00:16:03,796 (お竹)ショウガも たっぷり入ってますで。 190 00:16:03,796 --> 00:16:07,366 おいしそうやなあ。 191 00:16:07,366 --> 00:16:14,740 お竹どん 高島店でも 一日と十五日には お膳に お魚つけてはるやろか? 192 00:16:14,740 --> 00:16:21,514 あ~ どやろな? お魚は 前のご寮さんが始めはったことやよって。 193 00:16:21,514 --> 00:16:25,384 わてな ひょっとしたら 旦那さんとご寮さん➡ 194 00:16:25,384 --> 00:16:28,287 あっちに移らはるんやないかて 案じてたんだす。 195 00:16:28,287 --> 00:16:31,190 ああ…。 そないなったら わてらも➡ 196 00:16:31,190 --> 00:16:33,593 お供せんならんのやないかて。 197 00:16:33,593 --> 00:16:41,334 無理や! この台所の寸法で 体動くようにできてますのやで。 198 00:16:41,334 --> 00:16:46,272 今更 よそに行って働けますかいなあ。 199 00:16:46,272 --> 00:16:49,942 (賢吉) 今日は お昼のお膳に お魚つきますで。 200 00:16:49,942 --> 00:16:55,114 ホンマだすか!? お祭りの日みたいだすな。 201 00:16:55,114 --> 00:16:59,285 よそ見したらあきまへん。 へえ! 202 00:16:59,285 --> 00:17:29,081 ♬~ 203 00:17:29,081 --> 00:17:33,286 旦那さん… これを。 204 00:17:34,887 --> 00:17:39,592 これは 一旦 預からせてもらいますで。 205 00:17:39,592 --> 00:17:45,398 けど あんさんらが別家 立てる時には 元手銀と一緒に➡ 206 00:17:45,398 --> 00:17:49,201 この のれん 引き継いでもらいますよってな。 207 00:17:50,937 --> 00:18:00,212 それまでは 本店も 高島店も 心一つにして 盛大 気張っておくれやす。 208 00:18:00,212 --> 00:18:02,214 (一同)へえ! 209 00:18:09,221 --> 00:18:11,557 (風の音) 210 00:18:11,557 --> 00:18:18,431  回想 (富久)五鈴屋を 百年続く店にしておくれやす。➡ 211 00:18:18,431 --> 00:18:20,733 頼みますで。 212 00:18:22,568 --> 00:18:28,574 へえ。 お家さん… 必ず。 213 00:18:31,243 --> 00:18:36,382 (虫の声) (お勢)アハハ ええ声やなあ。 214 00:18:36,382 --> 00:18:39,919 早太郎 もう秋やで。 215 00:18:39,919 --> 00:18:41,854 (鳴き声) 216 00:18:41,854 --> 00:18:46,792 <五鈴屋が 二軒になってから半年ほどが過ぎて…> 217 00:18:46,792 --> 00:18:48,928 (鳴き声) 218 00:18:48,928 --> 00:18:53,099 堪忍しておくれやす! このとおりでおます! 219 00:18:53,099 --> 00:18:56,936 心一つに励むはずが 手代二人も辞めてしもて…。 220 00:18:56,936 --> 00:19:02,541 はあ… 何が不足で 暇取ったんだす? 221 00:19:02,541 --> 00:19:06,412 それが その…。 222 00:19:06,412 --> 00:19:11,884 来年から 五節季ごとに掛け取りするのが 嫌や言うて。 223 00:19:11,884 --> 00:19:16,555 何だすて!? ホンマは この秋からでも 五節季払いに変えたいところ➡ 224 00:19:16,555 --> 00:19:19,058 先延ばししたいうのに! すんまへん! 225 00:19:19,058 --> 00:19:23,929 (せきばらい) 桔梗屋さんは新町郭や寺相手に➡ 226 00:19:23,929 --> 00:19:26,932 高い品 売り買いしてはったよってに➡ 227 00:19:26,932 --> 00:19:30,236 五鈴屋の地道な商い 侮ってはるんやおまへんか!? 228 00:19:30,236 --> 00:19:33,572 そないなことは決して…! ホンマ すまんことだす! 229 00:19:33,572 --> 00:19:39,445 まあまあ。 長いこと 年に一度の 大節気払いで やってきはったんや。 230 00:19:39,445 --> 00:19:43,582 ついてこられへんもんも おるやろ。 すんまへん。 231 00:19:43,582 --> 00:19:49,455 五節季払いは 品物が安う売れる上に 現銀が早う手元に入りますよって➡ 232 00:19:49,455 --> 00:19:54,593 店の資金繰りが楽になるんだす。 へえ。 233 00:19:54,593 --> 00:19:58,397 至らんことばかりで…。 234 00:19:58,397 --> 00:20:04,603 せめて 高島店の商い 隅から隅まで よう見ていただけるよう➡ 235 00:20:04,603 --> 00:20:08,474 こないなもん こしらえてみたんだすけど。 236 00:20:08,474 --> 00:20:15,114 年末までの売り上げと仕入れの目安 それと損益の見当も書いてあります。 237 00:20:15,114 --> 00:20:18,150 はあ~…。 238 00:20:18,150 --> 00:20:23,823 これは よう出来てますなあ。 どこと どれだけ取り引きあるか➡ 239 00:20:23,823 --> 00:20:26,826 これなら 一目で分かりますわ。 ホンマやな。 240 00:20:26,826 --> 00:20:33,966 残り まだ よつきありますよって 少し上下するかもしれまへんけど…➡ 241 00:20:33,966 --> 00:20:37,436 これが 今年一年の売り上げの見込みだす。 242 00:20:37,436 --> 00:20:41,974 えっ…! 銀四百貫…?へえ。 243 00:20:41,974 --> 00:20:44,643 大したもんやな。 244 00:20:44,643 --> 00:20:46,579 鉄助どん。 へえ。 245 00:20:46,579 --> 00:20:48,981 本店は今年の売り上げ なんぼになりますやろ? 246 00:20:48,981 --> 00:20:55,654 あ~ 今のところ… 去年より六十貫増えて 銀三百五十貫を見込んでおります。 247 00:20:55,654 --> 00:21:01,093 高島店が銀四百貫 本店が三百五十貫…。 248 00:21:01,093 --> 00:21:07,867 合わせて 銀七百五十貫や。 えらい額やな。 249 00:21:07,867 --> 00:21:11,804 何や ゾクッとして 肌 あわだってきたわ。 250 00:21:11,804 --> 00:21:17,643 けど こうしてみると 本店と高島店の 客筋が違うてるんが よう分かります。 251 00:21:17,643 --> 00:21:22,281 これなら 食い合うことはおまへんな。 はあ~ そやな。 252 00:21:22,281 --> 00:21:26,785 競い合わず 足りんとこは補っていけるのやさかい➡ 253 00:21:26,785 --> 00:21:30,489 二軒の五鈴屋は ホンマに ええ組み合わせや。 254 00:21:34,293 --> 00:21:36,228 どないしたんや? 255 00:21:36,228 --> 00:21:39,431 まだ… 足りまへん。 えっ? 256 00:21:39,431 --> 00:21:45,137 足らん? 幸は なんぼの売り上げ望んでますのや? 257 00:21:45,137 --> 00:21:48,040 目安は…➡ 258 00:21:48,040 --> 00:21:51,443 銀一千貫でおます。 259 00:21:51,443 --> 00:21:54,313 いや…! えっ…! 260 00:21:54,313 --> 00:22:07,326 ♬~ 261 00:22:11,397 --> 00:22:15,267 一千貫て… そない大層な額を…。 262 00:22:15,267 --> 00:22:21,073 これから 二百五十貫 売り伸ばすのは たやすいことやありまへん! 263 00:22:21,073 --> 00:22:24,610 何で 一千貫を望まはるんだす? 264 00:22:24,610 --> 00:22:28,948 売り上げが 銀一千貫に届いたら➡ 265 00:22:28,948 --> 00:22:31,617 江戸に店出したいて思てますのや。 266 00:22:31,617 --> 00:22:34,520 江戸… 江戸!? 267 00:22:34,520 --> 00:22:36,488 いきなり 何を言うてますのや。 268 00:22:36,488 --> 00:22:40,793 すんまへん。 けど 前から考えてたことでおます。 269 00:22:40,793 --> 00:22:45,431 もしや… 惣次兄さんの…? 270 00:22:45,431 --> 00:22:53,172 (惣次)わては 五年で 五鈴屋の新店を江戸に出す。 271 00:22:53,172 --> 00:22:56,809 この国で一番 呉服が売れるのは 江戸だす。 272 00:22:56,809 --> 00:23:01,080 けど わては 売り上げで 日本一になりたいのやおまへん。 273 00:23:01,080 --> 00:23:03,115 そんなら 何で? 274 00:23:03,115 --> 00:23:07,253 お家さんとの約束を果たすためだす。 275 00:23:07,253 --> 00:23:12,591 五鈴屋を 百年続く店にするためだす。 276 00:23:12,591 --> 00:23:15,394 なにも江戸まで出張らいでも➡ 277 00:23:15,394 --> 00:23:20,766 この天神さんのお膝元で地道に商いして 店 守ってったらよろしいやないか。 278 00:23:20,766 --> 00:23:24,103 守てるだけではあきまへん。 えっ…? 279 00:23:24,103 --> 00:23:30,276 新しい手 次々に打っていかんことには 商いは いずれ細っていきますやろ。 280 00:23:30,276 --> 00:23:35,147 財と力のある店が こぞって 江戸店 出しはるのは そのためや思います。 281 00:23:35,147 --> 00:23:40,919 そういうたら あの真澄屋はんも 近々 江戸に出るて聞いてますわ。 282 00:23:40,919 --> 00:23:45,124 茂作さんの卸売りで 出羽にも お客さんができて➡ 283 00:23:45,124 --> 00:23:49,295 留七っとんと伝七っとんは 西に売り広めてくれてます。 284 00:23:49,295 --> 00:23:53,299 この先 江戸にも ぎょうさんお得意さん作れたら➡ 285 00:23:53,299 --> 00:23:58,003 五鈴屋は もっともっと 強うなれるのやおまへんか? 286 00:23:58,003 --> 00:24:01,373 何より わては➡ 287 00:24:01,373 --> 00:24:05,077 江戸の町に五鈴屋ののれんが 翻るとこを見とうおます。 288 00:24:05,077 --> 00:24:09,581 江戸に 鈴の のれん… ええ眺めだすやろな! 289 00:24:09,581 --> 00:24:12,251 へえ! 290 00:24:12,251 --> 00:24:14,453 旦那さん…。 291 00:24:21,393 --> 00:24:25,898 いや… あきまへん。 292 00:24:27,599 --> 00:24:32,271 桔梗屋さんの買い上げで だいぶと無理もしたんだす。 293 00:24:32,271 --> 00:24:37,776 この上 江戸店 出すやなんて 身の丈に合わんことするもんやおまへん。 294 00:24:37,776 --> 00:24:41,580 けど…。 この話は もう しまいや。 295 00:24:43,282 --> 00:24:46,285 えっ… ちょっ 旦那さん? 296 00:24:54,893 --> 00:25:02,368 すすきや~ すすき~! 297 00:25:02,368 --> 00:25:06,238 すすきや~! 298 00:25:06,238 --> 00:25:08,574 ⚟すすき~! 299 00:25:08,574 --> 00:25:12,911 (お梅)旦那さんとご寮さん 仲たがいしはったんやろか? 300 00:25:12,911 --> 00:25:15,948 めったなこと言うもんやない。 301 00:25:15,948 --> 00:25:20,652 せやけど ここんとこ あんまり 口きいてはらへんで? 302 00:25:20,652 --> 00:25:24,256 お店二軒も抱えてはるんや。 303 00:25:24,256 --> 00:25:28,127 黙って考えんならんことが ぎょうさん おありやろ。 304 00:25:28,127 --> 00:25:30,596 そうやろか…。 305 00:25:30,596 --> 00:25:34,933 ⚟お竹どん お梅どん 今 戻ったで! あっ! 306 00:25:34,933 --> 00:25:39,772 (伝七)変わりないか? まあ まあ まあ! ようお戻りになって。 307 00:25:39,772 --> 00:25:44,943 はあ… 達者そうで何よりや。 308 00:25:44,943 --> 00:25:48,414 おお… 戻ったんか! 309 00:25:48,414 --> 00:25:50,716 (2人)いて参じました! 310 00:25:52,618 --> 00:25:55,654 一反も残さず売り切るとは えらいもんだすな。 311 00:25:55,654 --> 00:26:00,893 ええ! あとで帳面とつきあわせて 支払いしてもらいまひょな。 312 00:26:00,893 --> 00:26:05,230 2人とも 損のない商いして しっかり稼いでますのんか? 313 00:26:05,230 --> 00:26:07,166 へえ。 おかげはんで。 314 00:26:07,166 --> 00:26:09,568 背負い売りも二度目だすよって。 315 00:26:09,568 --> 00:26:12,905 風呂敷と この顔 覚えてくれはったお客さんもいてます。 316 00:26:12,905 --> 00:26:15,374 ああ もうお得意さんやな! 317 00:26:15,374 --> 00:26:17,309 (留七)紅屋のおかみさんのおかげで➡ 318 00:26:17,309 --> 00:26:20,746 伊勢のお客さんには 大層ごひいきにあずかってます。 319 00:26:20,746 --> 00:26:24,917 五鈴屋の初代が 伊勢から大坂に出はったいう話 したら➡ 320 00:26:24,917 --> 00:26:28,387 余計 かわいがってくれはって…。 (鉄助)おお…。 321 00:26:28,387 --> 00:26:33,258 わてら 背負い売り 続けさしていただきとうおます。 322 00:26:33,258 --> 00:26:37,262 また反物 お貸しいただけますやろか? 323 00:26:41,934 --> 00:26:45,604 ん? え… 旦那さん?➡ 324 00:26:45,604 --> 00:26:48,640 旦那さん! ん? 325 00:26:48,640 --> 00:26:51,944 ああ もちろんや! 326 00:26:51,944 --> 00:26:55,814 あんさんらのおかげで 五鈴屋の名が遠くまで広がりますわ。 327 00:26:55,814 --> 00:26:58,417 うん! おおきにな。 328 00:26:58,417 --> 00:27:00,719 (2人)へえ! 329 00:27:04,223 --> 00:27:07,526 <その夜のことでした> 330 00:27:18,737 --> 00:27:21,540 ええ お月さんだすな。 331 00:27:32,284 --> 00:27:36,588 幸。 332 00:27:36,588 --> 00:27:39,925 ちょっと ここ お座り。 333 00:27:39,925 --> 00:27:41,927 へえ。 334 00:27:49,401 --> 00:27:57,409 わてな お家さんから 大事なものを二つ 受け継ぎましたやろ。 335 00:28:00,712 --> 00:28:05,217 幸と… この五鈴屋と。 336 00:28:09,354 --> 00:28:12,724 商いの才のない男やけど➡ 337 00:28:12,724 --> 00:28:17,529 一つだけ 心に決めてたことがおます。 338 00:28:20,899 --> 00:28:23,802 どないなことがあったかて➡ 339 00:28:23,802 --> 00:28:29,007 わての代で 五鈴屋の身代 傾けたらあかんて。 340 00:28:32,377 --> 00:28:38,183 そやから… 恐ろしおますのや。 341 00:28:41,920 --> 00:28:49,261 江戸に出て もしも のれん 下ろさんならんことになったら…➡ 342 00:28:49,261 --> 00:28:51,263 どないしようて。 343 00:28:55,934 --> 00:29:01,940 けど… それは心得違いやった。 344 00:29:07,212 --> 00:29:10,048 五鈴屋は…➡ 345 00:29:10,048 --> 00:29:16,922 初代が 伊勢から大坂に出て 古手売りから始めた店や。 346 00:29:16,922 --> 00:29:23,128 知らん土地に打って出て 勝負してきたんや。 347 00:29:26,365 --> 00:29:29,067 幸も知ってますやろ? 348 00:29:29,067 --> 00:29:35,741 五鈴屋の屋号と のれんの色は 伊勢の五十鈴川から頂いたものやて。 349 00:29:35,741 --> 00:29:37,743 へえ。 350 00:29:40,379 --> 00:29:42,314 (ため息) 351 00:29:42,314 --> 00:29:45,751 どこへ 店 出したかて➡ 352 00:29:45,751 --> 00:29:50,389 お伊勢さんに恥じへん まっとうな商いしてたら➡ 353 00:29:50,389 --> 00:29:53,392 道 間違うことはおまへんな。 354 00:29:58,130 --> 00:30:04,269 わて… 腹決めましたで。 355 00:30:04,269 --> 00:30:08,273 銀一千貫の売り上げが立ったら…➡ 356 00:30:08,273 --> 00:30:10,776 江戸に店出します。 357 00:30:13,278 --> 00:30:15,614 旦那さん…。 358 00:30:15,614 --> 00:30:22,821 二つの五鈴屋が力合わせて 鈴の のれん 江戸に掲げまひょ。 359 00:30:25,624 --> 00:30:29,294 まずは 一千貫の売り上げやな。 360 00:30:29,294 --> 00:30:31,296 へえ! 361 00:30:33,165 --> 00:30:37,969 ホンマに 幸には びっくりさせられてばっかりだすわ。 362 00:30:37,969 --> 00:30:41,840 フフッ… すんまへん。 363 00:30:41,840 --> 00:30:43,842 はあ…。 364 00:30:43,842 --> 00:30:54,519 ♬~ 365 00:30:54,519 --> 00:31:00,225 もう知ってるやろけどな…➡ 366 00:31:00,225 --> 00:31:05,931 わては心底 幸に惚れてますのや。 367 00:31:05,931 --> 00:31:08,934 フフ… 旦那さん…。 368 00:31:11,269 --> 00:31:13,205 あっ。 369 00:31:13,205 --> 00:31:28,286 ♬~ 370 00:31:28,286 --> 00:31:34,159 (雷鳴) 371 00:31:34,159 --> 00:31:40,298 <知らせが届いたのは 十一月九日の未明のことでした> 372 00:31:40,298 --> 00:31:45,437 津門村の彦太夫さんから飛脚だす。 373 00:31:45,437 --> 00:31:47,939 わざわざ 飛脚て…。 374 00:31:56,448 --> 00:32:00,252 幸…。 ⚟(雷鳴) 375 00:32:02,587 --> 00:32:06,258 すぐに 津門村にたちますで。 376 00:32:06,258 --> 00:32:11,129 お竹どん 幸の支度 手伝うたって。 へえ。 377 00:32:11,129 --> 00:32:17,269 <彦太夫からの文は 母の急死を知らせるものでした> 378 00:32:17,269 --> 00:32:27,279 ♬~ 379 00:32:27,279 --> 00:32:30,982 結! (結)姉さん…。 380 00:32:34,953 --> 00:32:37,856 姉さん…。 381 00:32:37,856 --> 00:32:40,292 母さんが…。 382 00:32:40,292 --> 00:32:48,600 (泣き声) 383 00:32:50,302 --> 00:32:56,641 (彦太夫)これ… 僅かやけど 形見の品や。 384 00:32:56,641 --> 00:32:59,344 ありがとさんでございます。 385 00:33:05,917 --> 00:33:10,589 あとは この子のことやな。➡ 386 00:33:10,589 --> 00:33:16,094 小さい頃から うちにおったさかい 娘のようなもんや。 387 00:33:16,094 --> 00:33:20,398 このまま うちで働いてもろてもかまへん。 388 00:33:20,398 --> 00:33:24,269 長々なお世話 ホンマにありがたいて思てます。 389 00:33:24,269 --> 00:33:29,941 けど… 女房の たった一人の身内だすさかい➡ 390 00:33:29,941 --> 00:33:34,613 引き取って うちで世話しよう思てます。 391 00:33:34,613 --> 00:33:36,548 そうか…。➡ 392 00:33:36,548 --> 00:33:41,386 惜しいけども まあ しゃあない。 393 00:33:41,386 --> 00:33:45,257 よろしゅう頼みます。 394 00:33:45,257 --> 00:33:48,293 へえ。 395 00:33:48,293 --> 00:33:53,098 ほんなら 明日 天満に連れて帰ります。 396 00:34:25,397 --> 00:34:35,607 ♬~ 397 00:34:35,607 --> 00:34:37,542 母さん…。 398 00:34:37,542 --> 00:34:52,958 ♬~ 399 00:34:52,958 --> 00:34:58,296 (すすり泣き) 400 00:34:58,296 --> 00:35:18,617 ♬~ 401 00:35:18,617 --> 00:35:20,919 ただいま戻りました。 402 00:35:20,919 --> 00:35:25,757 あっ 旦那さん ご寮さん お帰りやす。 403 00:35:25,757 --> 00:35:28,793 ご苦労はんだす。 404 00:35:28,793 --> 00:35:33,098 あ…。 あっ 幸の妹の結や。 405 00:35:33,098 --> 00:35:36,401 賢吉と申します。 406 00:35:36,401 --> 00:35:38,603 結と申します。 407 00:35:40,271 --> 00:35:44,275 離れ使うていただけるように してあります。 408 00:35:44,275 --> 00:35:48,013 旦那さんとご寮さんのものも 半分残ってますけど…。 409 00:35:48,013 --> 00:35:52,717 おおきに。 おいおい 母屋に移しますわ。 へえ。 410 00:35:54,619 --> 00:35:57,922 さあ こちらだす。 411 00:36:07,198 --> 00:36:09,901 お着替えは こちらに。 412 00:36:13,004 --> 00:36:16,574 荷物解くの手伝いまひょか? あっ ええんだす。 413 00:36:16,574 --> 00:36:19,244 あとは わてが やりますよって。 414 00:36:19,244 --> 00:36:22,947 ほな お茶いれてまいります。 おおきに。 415 00:36:27,385 --> 00:36:31,756 なんて立派な部屋やろか…。 416 00:36:31,756 --> 00:36:35,393 こんな部屋で暮らすやなんて 罰当たるわ。 417 00:36:35,393 --> 00:36:38,296 あ… 何言うてるの。 418 00:36:38,296 --> 00:36:43,101 母屋より離れの方が いくらか伸び伸びできるやろ。 419 00:36:48,773 --> 00:36:52,944 これ… 紬やんね? 420 00:36:52,944 --> 00:36:57,782 お家さんから頂いて わてが ずっと着てたもんだす。 421 00:36:57,782 --> 00:37:00,985 結に似合いそうや思て。 422 00:37:06,491 --> 00:37:11,196 絹の着物なんて… 初めてや。 423 00:37:14,232 --> 00:37:21,539 絹の着物… 母さん 一枚も持ってへんかった。 424 00:37:24,876 --> 00:37:29,380 まだ信じられへんの。 425 00:37:29,380 --> 00:37:34,886 母さん… もう どこにもいてへんのやね…。 426 00:37:40,592 --> 00:37:46,397 <突然の別れと あまりに大きな境遇の変化。➡ 427 00:37:46,397 --> 00:37:53,204 妹が ここでやっていけるのか 幸は ふと 不安を覚えたのです> 428 00:37:59,277 --> 00:38:03,715 <新年に奉公人に渡す お仕着せを縫うのは➡ 429 00:38:03,715 --> 00:38:08,520 幸が 富久から受け継いだ 大事な役目でした> 430 00:38:10,488 --> 00:38:17,061 ご寮さん よろしおますか? へえ。 何だす? 431 00:38:17,061 --> 00:38:20,565 結さんのことなんだすけど…。 432 00:38:20,565 --> 00:38:22,867 結が何か? 433 00:38:27,238 --> 00:38:31,910 これ 見とくなはれ。 434 00:38:31,910 --> 00:38:34,813 お守り袋? 435 00:38:34,813 --> 00:38:39,784 着物 少し直しましたやろ? その時に出た はぎれ使て➡ 436 00:38:39,784 --> 00:38:45,924 結さんが縫うたんだす。 あ… かいらしい。 437 00:38:45,924 --> 00:38:50,795 ご寮さん 結さんに はぎれ お渡しして➡ 438 00:38:50,795 --> 00:38:55,934 何なと好きなもん作ってもろたら どないだすやろ? 439 00:38:55,934 --> 00:39:01,539 縫いもんしてたら 少しは気ぃも紛れますやろ。 440 00:39:01,539 --> 00:39:05,877 時々 目ぇ赤うしてはるんだす。 441 00:39:05,877 --> 00:39:11,749 泣いたん気付かれんようにしてはるんが 何や いじらしいて…。 442 00:39:11,749 --> 00:39:14,886 お竹どん… おおきに。 443 00:39:14,886 --> 00:39:17,355 やめとくなはれ! 444 00:39:17,355 --> 00:39:21,893 ご寮さんが 女衆に気安うに 頭下げるもんやありまへん! 445 00:39:21,893 --> 00:39:24,929 へえ… すんまへん。 あっ。 446 00:39:24,929 --> 00:39:28,666 フフフ… すんまへん。 447 00:39:28,666 --> 00:39:30,668 フフフ…。 448 00:39:35,440 --> 00:39:41,746 結ちゃん すまんな 店忙しいて ほったらかしにしてしもて。 449 00:39:41,746 --> 00:39:44,782 年明けたら 浄瑠璃にでも行きまひょな。 450 00:39:44,782 --> 00:39:47,385 へえ…。 451 00:39:47,385 --> 00:39:51,923 おおきに。 すんまへん。 また そないなこと。 452 00:39:51,923 --> 00:39:56,628 女衆に遠慮したらあきまへん。 へえ…。 453 00:40:04,502 --> 00:40:10,275 結。 ほったらかしのおわびに 渡すものがおますのや。 454 00:40:10,275 --> 00:40:12,277 何? 455 00:40:14,612 --> 00:40:16,614 開けてごらん。 456 00:40:22,787 --> 00:40:25,823 それで 好きなもん作ってええよ。 457 00:40:25,823 --> 00:40:30,428 ホンマに? 皆 結のやで。 458 00:40:30,428 --> 00:40:33,631 ああ… うれしいわ! 459 00:40:33,631 --> 00:40:37,969 おおきに おおきに! 460 00:40:37,969 --> 00:40:42,640 結ちゃんには 小物作りの才がおますのやな。 461 00:40:42,640 --> 00:40:45,443 ほな 頂きまひょ。 462 00:40:51,149 --> 00:40:53,151 うっ…。 463 00:40:54,986 --> 00:40:56,921 すんまへん。 464 00:40:56,921 --> 00:40:58,856 (倒れる音) ご寮さん! 465 00:40:58,856 --> 00:41:00,792 ご寮さん! 幸 どないしたんや? 466 00:41:00,792 --> 00:41:04,395 姉さん? あかん… 医者や! 道善先生を早う! 467 00:41:04,395 --> 00:41:06,331 へえ! 468 00:41:06,331 --> 00:41:19,277 ♬~ 469 00:41:19,277 --> 00:41:22,280 先生… どないだす? 470 00:41:22,280 --> 00:41:26,951 ああ…。 471 00:41:26,951 --> 00:41:33,291 今日は わしの出番やないようや。 472 00:41:33,291 --> 00:41:36,961 えっ? 473 00:41:36,961 --> 00:41:40,431 ご寮さん…➡ 474 00:41:40,431 --> 00:41:43,968 おめでたや~。 475 00:41:43,968 --> 00:41:48,639 えっ? (道善)ああ。ええっ!? 476 00:41:48,639 --> 00:41:52,977 ああっ… あっ…! すぐに産婆さん 呼んできます! 477 00:41:52,977 --> 00:41:58,850 ハハハ…。 478 00:41:58,850 --> 00:42:04,255 あ… 幸… やや子やて。 479 00:42:04,255 --> 00:42:06,190 わてらの子やて。 480 00:42:06,190 --> 00:42:08,126 へえ…。 481 00:42:08,126 --> 00:42:10,762 姉さん…。 482 00:42:10,762 --> 00:42:14,932 幸…。 あ… フフッ。 483 00:42:14,932 --> 00:42:18,603 幸 大事にせなあきまへんで。 484 00:42:18,603 --> 00:42:20,605 へえ! 485 00:42:23,474 --> 00:42:26,778 <別ればかり続いていた五鈴屋に➡ 486 00:42:26,778 --> 00:42:31,983 新しい命が誕生することになったのです> 487 00:42:35,486 --> 00:42:38,389 ご寮さん… ご寮さん! 488 00:42:38,389 --> 00:42:42,293 今度ばかりは してやられましたなあ…。 えっ…? 489 00:42:42,293 --> 00:42:45,129 五鈴屋は 帯の真澄屋の 二番煎じやないかて➡ 490 00:42:45,129 --> 00:42:47,432 笑われてしもたんだす。 むごいわ。 491 00:42:47,432 --> 00:42:51,135 あ~ もう! 姉さんは 何でも手に入れてしまうんやね。 492 00:42:51,135 --> 00:42:54,639 2人で一緒に 江戸に行きまひょな。