1 00:00:06,406 --> 00:00:09,109 (幸)これが 伊勢型紙…。 2 00:00:09,109 --> 00:00:12,412 (鉄助)へえ。 どないなもんか 見ていただきとうて➡ 3 00:00:12,412 --> 00:00:15,215 白子で手に入れてまいりました。 4 00:00:17,618 --> 00:00:21,288 あっ…。 5 00:00:21,288 --> 00:00:24,625 ♬~ 6 00:00:24,625 --> 00:00:26,960 ああ…。 7 00:00:26,960 --> 00:00:31,798 なんて きれいなもんやろか。 8 00:00:31,798 --> 00:00:34,835 わあ…。 9 00:00:34,835 --> 00:00:40,440 (鉄助)地紙は 美濃紙を三枚 柿渋で貼り合わせたもんだす。➡ 10 00:00:40,440 --> 00:00:42,376 これは 「錐彫り」いうて➡ 11 00:00:42,376 --> 00:00:45,646 刃先が半円の錐使て 穴 開けてます。 12 00:00:45,646 --> 00:00:48,548 錐だけで こないな模様 彫るんだすか? 13 00:00:48,548 --> 00:00:51,818 (お竹)えらい根気のいることだすなあ。 14 00:00:51,818 --> 00:00:54,454 (賢輔)梅松さんいう彫師さんの仕事だす。 15 00:00:54,454 --> 00:00:57,157 白雲屋さんに お力添えいただけなんだら➡ 16 00:00:57,157 --> 00:01:00,127 梅松さんに たどりつくことは できまへなんだ。 17 00:01:00,127 --> 00:01:02,963 白子では 型売り商の力が強うて➡ 18 00:01:02,963 --> 00:01:06,833 彫師と じかに やり取りするのは 難しおますのや。 19 00:01:06,833 --> 00:01:13,407 ご寮さん この型紙 一枚なんぼで 売られてると思わはります? 20 00:01:13,407 --> 00:01:18,779 あ… 手ぇの込んだ細工やし…➡ 21 00:01:18,779 --> 00:01:22,649 銀百匁ほどは するやろか? 22 00:01:22,649 --> 00:01:25,285 銀二匁だす。 23 00:01:25,285 --> 00:01:27,955 (3人)えっ!? (佐助)大工の一日の手間賃より➡ 24 00:01:27,955 --> 00:01:32,426 安いやおまへんか。 (鉄助) これだけの技に見合う額やおまへんな。 25 00:01:32,426 --> 00:01:35,929 あれ ご覧に入れなはれ。 へえ。 26 00:01:38,966 --> 00:01:44,638 こないに仕上がるよう 梅松さんにお頼みしてまいりました。 27 00:01:44,638 --> 00:01:48,976 はあ… 見事な柄だすなあ! 28 00:01:48,976 --> 00:01:52,846 少ぉし大きい鈴 交じってますのやな。 29 00:01:52,846 --> 00:01:57,451 ところどころ 大きめの鈴入れたんは 結さんの思いつきでおます。 30 00:01:57,451 --> 00:02:01,254 ああ…。 (結)うちは 何も…。 31 00:02:01,254 --> 00:02:04,257 型紙は 六枚重ねて彫るんだす。 32 00:02:04,257 --> 00:02:08,128 ほかに売られんよう 六枚とも買い取ることにいたしました。 33 00:02:08,128 --> 00:02:10,931 決して口外せんという 約定も取ってあります。 34 00:02:10,931 --> 00:02:13,400 へえ。 (鉄助)代銀は三十匁。 35 00:02:13,400 --> 00:02:18,605 無理言うて頼みましたよって 別に もう三十匁 先に払うてあります。 36 00:02:20,173 --> 00:02:25,412 ご相談もせず 勝手に 値ぇ 決めてしまいまして 堪忍しとくれやす。 37 00:02:25,412 --> 00:02:28,949 かめしまへん。 それで結構だす。 38 00:02:28,949 --> 00:02:31,284 アハハ…。 39 00:02:31,284 --> 00:02:35,155 受け取りは余裕を持って 十月の初亥の日。 40 00:02:35,155 --> 00:02:41,428 大坂に戻る途中 わてが受け取って 四日市から 飛脚で送りますよって…➡ 41 00:02:41,428 --> 00:02:43,363 二十日過ぎには届きますやろ。 42 00:02:43,363 --> 00:02:46,266 あ… おおきに。 フフッ。 43 00:02:46,266 --> 00:02:52,973 (お竹)これが型紙になって 小紋染めが出来るんだすな フフッ。 44 00:02:52,973 --> 00:02:58,278 何や 胸が躍りますな。 アハハ! うん。 45 00:03:08,255 --> 00:03:20,600 ♬~ 46 00:03:20,600 --> 00:03:24,905 今日は笹結びを お教えいたします。 47 00:03:27,374 --> 00:03:29,609 (お浜)おかみさんの妹さんかい? 48 00:03:29,609 --> 00:03:31,945 (お照)大坂から移ってきたんだって? 49 00:03:31,945 --> 00:03:36,416 へえ。 結と申します。 よろしゅうお頼申します。 50 00:03:36,416 --> 00:03:40,954 大坂では 結さんと一緒に お屋敷 回らせてもろてたんだす。 51 00:03:40,954 --> 00:03:45,792 (お仲)着る人がいいと 帯も引き立つもんねえ。(2人)うん! 52 00:03:45,792 --> 00:03:50,964 さあさあ おしゃべりは ここまで。 ほな 始めさせていただきます。 53 00:03:50,964 --> 00:03:52,899 お願いします。 54 00:03:52,899 --> 00:03:54,835 さあさあ さあさあ…。 55 00:03:54,835 --> 00:03:57,637 こちらなど どないだすやろ? 56 00:03:57,637 --> 00:03:59,573 きれいですねえ~。 57 00:03:59,573 --> 00:04:02,476 ようお似合いやと思いますよ。 ⚟(笑い声) 58 00:04:02,476 --> 00:04:05,378 今日は 随分 にぎやかですねえ。 59 00:04:05,378 --> 00:04:08,915 ああ 奥で 帯結びをお教えしておりますよって。 60 00:04:08,915 --> 00:04:11,818 よろしかったら ご案内いたします。 やってみようかしら。 61 00:04:11,818 --> 00:04:15,789 へえ。 結さんとお竹どん 息合うてますなあ。 62 00:04:15,789 --> 00:04:20,393 天満の頃を思い出して 懐かしおます。 ホンマに。 63 00:04:20,393 --> 00:04:24,764 結さんが来てくれはって 店の中が一段と明るうなりました。 64 00:04:24,764 --> 00:04:27,801 へえ! フフフ。 65 00:04:27,801 --> 00:04:30,270 ありがとさんでございます。 66 00:04:30,270 --> 00:04:34,941 (お照)結さん また頼みますよ。 フフフ。 (結)へえ! 67 00:04:34,941 --> 00:04:47,287 ♬~ 68 00:04:47,287 --> 00:04:51,291 天満とは勝手が違て… うち 役に立ったやろか? 69 00:04:51,291 --> 00:04:56,296 もちろんだす! 結さんに 帯結んで お見せしたら➡ 70 00:04:56,296 --> 00:04:59,299 分かりやすいて 皆さん 喜んではりました。 71 00:04:59,299 --> 00:05:04,371 アハハ ほな 結には毎月 帯結び指南 手伝うてもらいまひょな。 72 00:05:04,371 --> 00:05:08,909 ホンマに? うちでええのん? 頼みますで。 フフフ。 73 00:05:08,909 --> 00:05:13,580 へえ! 姉さん…。 何? 74 00:05:13,580 --> 00:05:17,083 江戸に呼んでくれて ホンマに おおきに。 75 00:05:17,083 --> 00:05:19,085 あ…。 76 00:05:20,754 --> 00:05:27,260 ⚟(虫の声) 77 00:05:27,260 --> 00:05:30,764 ⚟(鉄助)ご寮さん よろしおますか? へえ。 78 00:05:34,134 --> 00:05:38,271 結さんは? お竹どんと一緒に湯屋に行ったとこだす。 79 00:05:38,271 --> 00:05:40,974 あっ ほな 失礼します。 80 00:05:52,819 --> 00:05:56,656 実は 跡目のことで ご相談したいことがございます。 81 00:05:56,656 --> 00:05:59,426 わても話そう思てましたんや。 82 00:05:59,426 --> 00:06:02,729 女名前が許されるのは 今年いっぱいまでだす。 83 00:06:02,729 --> 00:06:04,664 あと ふたつき半しか おまへん。 84 00:06:04,664 --> 00:06:07,901 それが 惣ぼんさんが 江戸にいてはることが➡ 85 00:06:07,901 --> 00:06:11,571 かえって幸いするかもしれまへん。 えっ? 86 00:06:11,571 --> 00:06:14,608 呉服仲間の皆さんが案じておいでだす。 87 00:06:14,608 --> 00:06:17,444 養子取って 八代目据えたあとに➡ 88 00:06:17,444 --> 00:06:20,280 惣ぼんさんが 五鈴屋継ぎたいて 言うてきはったら➡ 89 00:06:20,280 --> 00:06:22,916 大騒ぎになるんやないかて。 90 00:06:22,916 --> 00:06:25,585 禍根を残したらいかん。 91 00:06:25,585 --> 00:06:28,255 惣ぼんさんが どこにいてはるか 分かるまで➡ 92 00:06:28,255 --> 00:06:30,590 八代目 立てるのは 待って➡ 93 00:06:30,590 --> 00:06:34,928 女名前を繰り延べしてはどないや いう話になったんだす。 94 00:06:34,928 --> 00:06:36,963 繰り延べ? へえ。 95 00:06:36,963 --> 00:06:41,401 せめて あと二年 ご寮さんが 店主でいていただけるよう➡ 96 00:06:41,401 --> 00:06:44,304 親旦那さんと治兵衛さんが 仲間に掛け合うてくれてはります。 97 00:06:44,304 --> 00:06:46,273 待っとくれやす。 98 00:06:46,273 --> 00:06:51,411 わては… 周助どんに 八代目 継いでもらうつもりでいてますのや。 99 00:06:51,411 --> 00:06:53,346 存じております。 100 00:06:53,346 --> 00:06:59,286 けど… 鈴の小紋は 糸口が見つかったばかりやおまへんか。 101 00:06:59,286 --> 00:07:03,356 世に出して売り広めるまでは 何としても➡ 102 00:07:03,356 --> 00:07:06,559 ご寮さんに 店主でいていただきとうおます。 103 00:07:06,559 --> 00:07:08,895 佐助どんも おんなじ思いだす。 104 00:07:08,895 --> 00:07:13,233 こっちの都合で先延ばしにしたら 周助どんが どない思います? 105 00:07:13,233 --> 00:07:15,568 ご寮さん。 106 00:07:15,568 --> 00:07:20,907 周助どんの望みは 五鈴屋の店主になることやございまへん。 107 00:07:20,907 --> 00:07:25,912 いつか 桔梗屋を再び興すことだす。 108 00:07:29,382 --> 00:07:33,920 ほな… 五鈴屋は どないしますのや? 109 00:07:33,920 --> 00:07:39,426 繰り延べが かのうたかて そのあとには 八代目 立てななりまへんのやで? 110 00:07:41,594 --> 00:07:47,100 これは まだ わて一人の考えだすけども➡ 111 00:07:47,100 --> 00:07:53,273 その時が来たら 賢輔どんは二十四… ええ年回りだす。 112 00:07:53,273 --> 00:07:55,208 えっ? 113 00:07:55,208 --> 00:07:59,946 小紋染めの段取りつけてるとこ見てて よう分かりました。 114 00:07:59,946 --> 00:08:05,352 賢輔どんは 五鈴屋の要石やった治兵衛さんの才を➡ 115 00:08:05,352 --> 00:08:07,887 確かに受け継いでます。 116 00:08:07,887 --> 00:08:12,892 八代目にふさわしいのは 賢輔どんやおまへんやろか。 117 00:08:19,499 --> 00:08:24,204 出過ぎたこと 申しまして… 堪忍しておくれやす。 118 00:08:26,272 --> 00:08:32,112 まずは あと二年 女名前を引き延ばせるよう努めます。 119 00:08:32,112 --> 00:08:38,585 そのあとのことは ゆっくり考えてみておくれやす。 120 00:08:38,585 --> 00:08:41,254 へえ…。 121 00:08:41,254 --> 00:08:45,458 ほな おやすみなさいませ。 122 00:08:51,598 --> 00:08:59,906 <思いがけない提案を残して 鉄助は 再び 伊勢へと旅立っていきました> 123 00:09:03,543 --> 00:09:08,415 <ところが 十月の末に着くはずの型紙は➡ 124 00:09:08,415 --> 00:09:13,219 十一月に入っても まだ届かなかったのです> 125 00:09:19,359 --> 00:09:22,562 (駆けてくる足音) 126 00:09:22,562 --> 00:09:25,365 ただいま。 お帰りやす。 127 00:09:25,365 --> 00:09:28,568 ありがとさんでございます。 あとは わてが。 128 00:09:28,568 --> 00:09:30,570 へえ。 129 00:09:34,374 --> 00:09:37,911 型紙 今日も届かへんのやね。 130 00:09:37,911 --> 00:09:40,747 白子で 何ぞ おましたんやろか? 131 00:09:40,747 --> 00:09:43,383 ひょっとして 鉄助どんに何かあったんや…。 132 00:09:43,383 --> 00:09:45,885 悪い方に考えたらあかん。 133 00:09:47,587 --> 00:09:50,623 ご寮さん わてを白子にやっておくれやす! 134 00:09:50,623 --> 00:09:52,926 どないなってるか 見てまいります。 135 00:09:52,926 --> 00:09:55,595 そんなん むちゃやわ! 行き違いになったらどないするのん? 136 00:09:55,595 --> 00:09:57,597 けど…! 137 00:09:59,399 --> 00:10:01,334 ⚟(お竹)ご寮さん! 138 00:10:01,334 --> 00:10:06,539 来ましたで! 四日市から飛脚だす。 あっ…。 139 00:10:25,525 --> 00:10:27,827 はあ…。 140 00:10:35,635 --> 00:10:40,974 ♬~ 141 00:10:40,974 --> 00:10:45,845 鈴の小紋… 見事だすなあ! 142 00:10:45,845 --> 00:10:48,648 梅松さんのお力だす。 143 00:10:48,648 --> 00:10:54,521 どんだけ精魂込めはったら こない美しいもんが出来るのやろか…。 144 00:10:54,521 --> 00:10:58,825 (佐助)だいぶと じらされましたけど 待ったかいありましたな! 145 00:10:58,825 --> 00:11:00,793 (笑い声) 146 00:11:00,793 --> 00:11:10,270 ♬~ 147 00:11:10,270 --> 00:11:12,972 ああ…。 148 00:11:16,943 --> 00:11:21,781 (お才)型紙が出来たんですか? へえ。 今し方 届いたとこだす。 149 00:11:21,781 --> 00:11:24,117 力造さんに見ていただきとうて…➡ 150 00:11:24,117 --> 00:11:26,052 遅くに申し訳ありまへんけど➡ 151 00:11:26,052 --> 00:11:29,289 今からお越しいただくわけには いきまへんやろか。 152 00:11:29,289 --> 00:11:33,293 あ… すいません あいにく 今夜は留守なんです。 153 00:11:33,293 --> 00:11:36,062 知り合いの婚礼に呼ばれてて。 154 00:11:36,062 --> 00:11:39,799 あ… あっ そうだすか…。 155 00:11:39,799 --> 00:11:43,970 戻ってきたら 私から よくよく話して聞かせます。 156 00:11:43,970 --> 00:11:47,440 えっ? 朝まで かかったって➡ 157 00:11:47,440 --> 00:11:50,977 あの人が 「うん」と言うまで。 158 00:11:50,977 --> 00:11:52,979 へえ。 159 00:11:55,648 --> 00:12:04,457 <翌朝早く お才は約束どおり 力造と共に 五鈴屋を訪ねてきたのですが…> 160 00:12:08,227 --> 00:12:12,599 あっ 力造さん お才さん! よう おいでくださいました。 161 00:12:12,599 --> 00:12:17,470 ありがとさんでございます。 162 00:12:17,470 --> 00:12:21,307 あ… 早う 力造さんに見ていただきとうて。 163 00:12:21,307 --> 00:12:23,276 (力造)待っておくんなせえ。➡ 164 00:12:23,276 --> 00:12:28,948 そん中のもん 見せねえでもらいてえ。 165 00:12:28,948 --> 00:12:33,820 俺は 二度と型染めやらねえ。 166 00:12:33,820 --> 00:12:37,624 いや… やっちゃならねえんです。 167 00:12:37,624 --> 00:12:41,294 力造さん…。 訳は嬶から聞いていなさるでしょう。 168 00:12:41,294 --> 00:12:46,165 俺が型染めに戻ったりしちゃあ 死んだ親父が浮かばれませんや。 169 00:12:46,165 --> 00:12:49,168 お前さん…。 黙ってろ! 170 00:12:49,168 --> 00:12:53,306 知り合いの型付け師を三人ばかり 名と所を書いてめえりやした。 171 00:12:53,306 --> 00:12:55,808 待っとくれやす! 172 00:12:55,808 --> 00:12:58,845 この型紙見てもろて 話は それから…。 173 00:12:58,845 --> 00:13:02,382 今日は これ 渡しに来ただけでさ。 174 00:13:02,382 --> 00:13:04,317 (お才)ちょっと…。 175 00:13:04,317 --> 00:13:14,927 ♬~ 176 00:13:14,927 --> 00:13:20,433 おかみさん… 申し訳ありません。 あ…。 177 00:13:22,802 --> 00:13:26,639 きっかけさえありゃ あの人 もういっぺん➡ 178 00:13:26,639 --> 00:13:30,943 型染めに戻れるんじゃないかって 思ってたんですよ。 179 00:13:30,943 --> 00:13:35,281 五鈴屋さんの作るものなら間違いない。 180 00:13:35,281 --> 00:13:38,584 うちの人も その気になるんじゃないかって。 181 00:13:41,954 --> 00:13:45,792 お騒がせして… かえって ご迷惑かけちまいましたね。 182 00:13:45,792 --> 00:13:49,295 迷惑やなんて…。 もういいんです。 183 00:13:49,295 --> 00:14:05,244 ♬~ 184 00:14:05,244 --> 00:14:08,247 そうね! ねっ これで商売ばっちりだぜ! 185 00:14:08,247 --> 00:14:10,750 あら あんたら…。 186 00:14:19,592 --> 00:14:23,262 ご寮さん そろそろ 型付け師を決めまへんと。 187 00:14:23,262 --> 00:14:26,599 あ…。 力造さんのお勧めだすよって➡ 188 00:14:26,599 --> 00:14:31,404 どの人も腕は確かや思います。 あとは お人柄だすな。➡ 189 00:14:31,404 --> 00:14:33,940 一人ずつ 会うてみまひょか。 190 00:14:33,940 --> 00:14:41,280 はあ… 何や まだ思い切られへんのだす。 191 00:14:41,280 --> 00:14:48,154 これさえ見てもろたら 力造さんの気ぃも 変わるかもしれまへんのに。 192 00:14:48,154 --> 00:14:51,424 お師匠さん ここですよ。 193 00:14:51,424 --> 00:14:54,961 あ…。 (佐助)おいでやす。(賢輔)おいでやす。 194 00:14:54,961 --> 00:14:57,864 (栄次郎)邪魔するよ。 まあ 栄次郎さん! 195 00:14:57,864 --> 00:15:00,767 えっ 菊瀬…!? 196 00:15:00,767 --> 00:15:04,070 酉の市の帰りがけさ。 ああ。 197 00:15:04,070 --> 00:15:08,908 あ~ 小ぶりだが 小ぎれいな いい店だな。 198 00:15:08,908 --> 00:15:11,811 ホンマに よう おいでやす。 さあさあ どうぞ。 199 00:15:11,811 --> 00:15:15,114 (吉二)お客さんを連れてきましたよ。 200 00:15:21,487 --> 00:15:25,925 お邪魔いたします。 中村富五郎でございます。 201 00:15:25,925 --> 00:15:28,394 (佐助)あっ…。あっ! (お竹)ああ~! あっ! 202 00:15:28,394 --> 00:15:32,265 あっ…。 まさか あの…? 203 00:15:32,265 --> 00:15:38,404 ああ…。 す… すんまへん! すんまへん…。 204 00:15:38,404 --> 00:15:40,473 <栄次郎が連れてきたのは➡ 205 00:15:40,473 --> 00:15:45,278 美貌と芸とを兼ね備えた 当代一の人気女形➡ 206 00:15:45,278 --> 00:15:48,948 中村富五郎だったのです> 207 00:15:48,948 --> 00:15:51,851 あ…。 フフフ…。 208 00:15:51,851 --> 00:15:56,823 吉二と おんなじ稽古着を 仕立てたいってんで連れてきたんだ。 209 00:15:56,823 --> 00:15:59,125 見立ててやってくれねえか。 210 00:15:59,125 --> 00:16:02,361 へえ! どうぞ上がっとくれやす。 211 00:16:02,361 --> 00:16:04,564 あっ…。 212 00:16:09,735 --> 00:16:12,572 もっと早く お願いに上がりたかったのですが➡ 213 00:16:12,572 --> 00:16:15,908 しばらく 上方を回っておりまして。 214 00:16:15,908 --> 00:16:19,779 あ… 大坂では 人形遣いの亀三さんに お目にかかりました。 215 00:16:19,779 --> 00:16:22,081 亀三さんに? 216 00:16:22,081 --> 00:16:27,954 「曽根崎心中」のお初を務めました時に 教えを請うたことがございまして➡ 217 00:16:27,954 --> 00:16:32,725 そのつながりで 五鈴屋さんのお話も 亀三さんから伺いました。 218 00:16:32,725 --> 00:16:35,928 あ… そないなご縁が。 219 00:16:35,928 --> 00:16:41,400 富五郎は 偉えもんだよ。 どれほど人気が出ても天狗にならず➡ 220 00:16:41,400 --> 00:16:46,272 人の教えにも 素直に耳を傾ける。 221 00:16:46,272 --> 00:16:51,143 吉二 おめえも 見習うがいいぜ。 222 00:16:51,143 --> 00:16:53,946 はい。 223 00:16:53,946 --> 00:16:58,784 京で踊った「娘道成寺」が 大当たりを取ったそうだな。 224 00:16:58,784 --> 00:17:02,221 おかげさまで 五日間 日延べをいたしました。 225 00:17:02,221 --> 00:17:06,893 まあ アハハ。 「道成寺」て 確か 安珍清姫の。 226 00:17:06,893 --> 00:17:09,228 ああ それだよ。 227 00:17:09,228 --> 00:17:14,901 惚れた男に逃げられた女が 大蛇に姿を変えて あとを追いかけ➡ 228 00:17:14,901 --> 00:17:19,572 ついには 男を焼き殺してしまうって話さ。 229 00:17:19,572 --> 00:17:21,507 恐ろしい…。 230 00:17:21,507 --> 00:17:27,446 恋の執念は恐ろしいもんよ。 だが 富五郎は 美しい娘になって➡ 231 00:17:27,446 --> 00:17:30,917 女心を踊ってみせるのさ。 232 00:17:30,917 --> 00:17:34,587 来年の二月には 中村座にかけるそうですね。 233 00:17:34,587 --> 00:17:38,758 ええ。 江戸で大入りを取れるかどうかが➡ 234 00:17:38,758 --> 00:17:42,962 私の役者としての正念場と 思っております。 235 00:17:44,931 --> 00:17:49,602 別の品もお持ちしまひょか。 236 00:17:49,602 --> 00:17:52,305 賢輔どん。 へえ。 237 00:17:54,473 --> 00:17:58,945 あれは… 伊勢の型紙ではありませんか? 238 00:17:58,945 --> 00:18:02,548 あ… 伊勢型紙 ご存じなんだすか? 239 00:18:02,548 --> 00:18:08,354 衣装をこしらえた時に 染め物のための 型紙を見たことがございます。 240 00:18:08,354 --> 00:18:10,289 ああ…。 241 00:18:10,289 --> 00:18:16,562 ぶしつけなお願いですが ちょっと 見せていただけませんでしょうか? 242 00:18:16,562 --> 00:18:21,233 あっ… 堪忍しておくれやす。 これは まだ お見せできんもんで…。 243 00:18:21,233 --> 00:18:23,569 かめしまへん。 244 00:18:23,569 --> 00:18:26,272 ご覧になっとくれやす。 245 00:18:36,582 --> 00:18:39,919 なんと見事な…。 フフッ…。 246 00:18:39,919 --> 00:18:46,392 この型紙は 栄次郎さんから授かった 教えで出来たもんでございます。 247 00:18:46,392 --> 00:18:50,262 俺が… 教えた? へえ。 248 00:18:50,262 --> 00:18:54,100 ちょっと見は 地味で よう見たら ぜいたく➡ 249 00:18:54,100 --> 00:18:58,604 それが 江戸の粋やて。 ああ…。 250 00:18:58,604 --> 00:19:03,042 しゃれた柄を 無地に見えるほど こまい小紋にしたら➡ 251 00:19:03,042 --> 00:19:06,345 江戸の人のお好みに かなうのやないかて➡ 252 00:19:06,345 --> 00:19:08,280 皆で知恵絞ったんだす。 253 00:19:08,280 --> 00:19:12,718 う~ん。 おっ 手に取っても構わねえか? 254 00:19:12,718 --> 00:19:15,221 あっ へえ どうぞ。 255 00:19:20,226 --> 00:19:26,565 なるほど。 鈴の小紋とは考えたな。 256 00:19:26,565 --> 00:19:30,236 うん… 確かに これは江戸っ子好みだ。 257 00:19:30,236 --> 00:19:32,905 ああ! フフッ。 258 00:19:32,905 --> 00:19:55,161 ♬~ 259 00:19:55,161 --> 00:19:58,397 五鈴屋さん お願いがございます。 260 00:19:58,397 --> 00:20:01,300 へえ 何でございましょう? 261 00:20:01,300 --> 00:20:07,773 これが染め上がりましたら 最初の一反を お譲りいただけませんでしょうか。 262 00:20:07,773 --> 00:20:09,708 えっ? 263 00:20:09,708 --> 00:20:15,948 柄といい 細工といい… 惚れ惚れいたします。 264 00:20:15,948 --> 00:20:19,418 その上 これは新しい。 265 00:20:19,418 --> 00:20:24,290 新しいものをご覧に入れ お客様に喜んでいただいてこそ➡ 266 00:20:24,290 --> 00:20:27,626 役者冥利。 267 00:20:27,626 --> 00:20:30,663 役者として勝負をかける時➡ 268 00:20:30,663 --> 00:20:36,802 この型紙で染めた小紋を 身にまといとうございます。 269 00:20:36,802 --> 00:20:57,990 ♬~ 270 00:20:57,990 --> 00:21:00,960 ⚟ごめんやす。➡ 271 00:21:00,960 --> 00:21:03,963 お才さん 五鈴屋だす。 272 00:21:10,569 --> 00:21:13,272 力造さんに これを。 273 00:21:18,611 --> 00:21:24,283 どないしても この型紙 見ていただきたいんだす。 274 00:21:24,283 --> 00:21:27,620 その気はねえと言ったはずですぜ。 275 00:21:27,620 --> 00:21:31,957 裃小紋にも お武家さんにも 二度と関わりとうない いうことは➡ 276 00:21:31,957 --> 00:21:34,627 よう分かってます。 277 00:21:34,627 --> 00:21:38,964 けど これは お武家さんのもんや あらしまへん。 278 00:21:38,964 --> 00:21:41,867 町人のための小紋だす。 279 00:21:41,867 --> 00:21:46,705 伊勢の白子の彫師が 精魂込めて彫った型紙だす。 280 00:21:46,705 --> 00:21:50,976 どうぞ 力造さんの目ぇで ご覧になっとくれやす。 281 00:21:50,976 --> 00:21:54,780 よしてくれ! お前さん! いいかげんにおしよ! 282 00:22:00,252 --> 00:22:04,123 型紙を見るのが そんなに怖いのかい? 283 00:22:04,123 --> 00:22:06,125 何? 284 00:22:06,125 --> 00:22:09,395 本当は小紋を染めたくて しかたないんだろ? 285 00:22:09,395 --> 00:22:14,600 だから 型付けの道具だって 後生大事に手入れしているんだろ? 286 00:22:14,600 --> 00:22:19,405 だったら やったらいいじゃないか! 287 00:22:19,405 --> 00:22:21,941 意気地なし! 288 00:22:21,941 --> 00:22:24,944 いつまで逃げ回るつもりだよ! 289 00:22:43,963 --> 00:22:48,167 さあ… ご覧よ! 290 00:23:18,264 --> 00:23:58,904 ♬~ 291 00:23:58,904 --> 00:24:03,575 おかみさん…➡ 292 00:24:03,575 --> 00:24:06,912 この型紙…➡ 293 00:24:06,912 --> 00:24:09,915 あっしに染めさせておくんなさい! 294 00:24:12,084 --> 00:24:18,390 これほどまでに仕上げた 彫師の精進に応えなくちゃならねえ! 295 00:24:18,390 --> 00:24:25,898 この腕で… きれいに染めてやりてえ! 296 00:24:29,601 --> 00:24:34,473 どうか… どうか…➡ 297 00:24:34,473 --> 00:24:37,176 お願い申します! 298 00:24:42,614 --> 00:24:45,951 お前さん…。 299 00:24:45,951 --> 00:24:49,822 (お才の泣き声) 300 00:24:49,822 --> 00:25:03,369 ♬~ 301 00:25:03,369 --> 00:25:08,741 <十二月十四日 この日 五鈴屋江戸店は➡ 302 00:25:08,741 --> 00:25:13,912 開店一周年を迎えました> 303 00:25:13,912 --> 00:25:16,382 姉さん。 うん? 304 00:25:16,382 --> 00:25:20,252 これ…。 あっ 鼻緒やないの。 どないしたん? 305 00:25:20,252 --> 00:25:23,255 買うてくれたお客さんに 差し上げたらどうやろか思て。 306 00:25:23,255 --> 00:25:25,591 あ… 結が こしらえたん? 307 00:25:25,591 --> 00:25:28,927 はぎれ集めて ちょっとずつ縫うてたんよ。 308 00:25:28,927 --> 00:25:31,397 お竹どんに手伝うてもろて。 309 00:25:31,397 --> 00:25:34,299 三十対おますのやけど 足りますやろか? 310 00:25:34,299 --> 00:25:39,605 いつもなら そこまでいきまへんけど 今日は おめでたい日ぃだすよって。 311 00:25:39,605 --> 00:25:44,276 かわいらしおますなあ。 お客さん きっと喜ばはります。 312 00:25:44,276 --> 00:25:46,211 あ… そやろか? 313 00:25:46,211 --> 00:25:50,149 こない ぎょうさん こしらえてくれてたの ちっとも気ぃ付けへんかったわ。 314 00:25:50,149 --> 00:25:53,619 フフフフ… 姉さんをびっくりさせよう思たんよ。 315 00:25:53,619 --> 00:25:58,957 あ… 結 お竹どん おおきに。 316 00:25:58,957 --> 00:26:01,727 うん。 317 00:26:01,727 --> 00:26:07,065 さあ 五鈴屋江戸店の 新しい一年の始まりだす。 318 00:26:07,065 --> 00:26:09,902 せえだい 気張っていきまひょ! 319 00:26:09,902 --> 00:26:11,904 (一同)へえ! 320 00:26:20,546 --> 00:26:26,051 (お竹)ここで… ぎゅっと 力入れて結んどくなはれ。 321 00:26:28,253 --> 00:26:31,757 もう一年か! 早いもんだねえ。 322 00:26:31,757 --> 00:26:36,628 帯結び指南も十二回目。 教え賃も取らずに よく続いてるよ。 323 00:26:36,628 --> 00:26:39,398 (お浜) 今日は ご祝儀に帯を買うつもりで➡ 324 00:26:39,398 --> 00:26:42,768 お足は ここに用意してきたんだ! 325 00:26:42,768 --> 00:26:44,803 (2人)あたしも! 326 00:26:44,803 --> 00:26:48,941 (笑い声) 327 00:26:48,941 --> 00:26:51,410 まあ 和三郎さん! 328 00:26:51,410 --> 00:26:55,280 (和三郎)今日は客として参りやした。 これ 嬶でさ。 329 00:26:55,280 --> 00:26:59,284 うちの人が お世話になりまして。 いいえ こちらこそ。 330 00:26:59,284 --> 00:27:02,554 たまには着物の一枚も こしれえてやらねえと➡ 331 00:27:02,554 --> 00:27:04,490 角が生えやすんで。 332 00:27:04,490 --> 00:27:06,425 いっ…。 まあ アハハ。 333 00:27:06,425 --> 00:27:10,629 (佐助)さあさあ どうぞ 中へ。 どないな品が お好みだすやろ? 334 00:27:15,234 --> 00:27:19,104 姉貴から聞きやした。 兄貴に 型染めを頼んでくだすったそうで。 335 00:27:19,104 --> 00:27:22,241 へえ。 なんとか引き受けていただけることに。 336 00:27:22,241 --> 00:27:25,577 兄貴 昔に戻ったように 張り切ってやすぜ。 337 00:27:25,577 --> 00:27:30,749 腕を振るえる仕事に巡り合えたんだ。 職人冥利ってやつでさあ! 338 00:27:30,749 --> 00:27:32,751 へえ。 339 00:27:37,256 --> 00:27:40,592 (鐘の音) 340 00:27:40,592 --> 00:27:44,463 こんなにすてきなもの頂いて…。 おおきに ありがとさんでございます。 341 00:27:44,463 --> 00:27:50,102 ありがとうございます。 すてきな鼻緒 ありがとうございます。 342 00:27:50,102 --> 00:27:54,406 また来ます。 どうぞ 使うとくれやす。 343 00:27:54,406 --> 00:28:10,722 ♬~ 344 00:28:10,722 --> 00:28:12,758 (結)お客さん 皆 帰らはったね。 345 00:28:12,758 --> 00:28:15,594 (お竹)鼻緒 三十対 ちょうど のうなったとこだす。 346 00:28:15,594 --> 00:28:18,463 (佐助)今日は ぎょうさん 買うていただきました。 347 00:28:18,463 --> 00:28:21,433 どなたも 店開いた日のこと覚えててくれはって。 348 00:28:21,433 --> 00:28:24,269 ええ一日になりましたなあ。 へえ! 349 00:28:24,269 --> 00:28:28,073 ほな そろそろ のれんしまいまひょか。 へえ! 350 00:28:29,908 --> 00:28:34,780 おおっと! 五鈴屋さんですね? 大坂からの文を届けに参りました。 351 00:28:34,780 --> 00:28:37,082 大坂から? 352 00:28:42,921 --> 00:28:49,595 ご寮さん 女名前の繰り延べが 決まりまして よろしゅうございましたな。 353 00:28:49,595 --> 00:28:53,465 繰り延べて… 何のことだす? 354 00:28:53,465 --> 00:28:57,102 あと二年 女名前を続けること➡ 355 00:28:57,102 --> 00:29:00,339 天満の呉服仲間から お許しを頂いたんだす。 356 00:29:00,339 --> 00:29:02,274 ああ…! (2人)えっ? 357 00:29:02,274 --> 00:29:07,045 はっきりするまで話さん方がええ思て 黙ってて堪忍だす。 358 00:29:07,045 --> 00:29:10,882 来年も再来年も 姉さんが店主やいうこと? 359 00:29:10,882 --> 00:29:15,053 年明けには お上から 正式なお許しが出るそうや。 360 00:29:15,053 --> 00:29:20,359 ああ… おめでとうさんでございます! 361 00:29:21,927 --> 00:29:27,232 けど まあ… ようお認めくださったもんだすなあ。 362 00:29:27,232 --> 00:29:32,571 惣ぼんさんが 江戸にいてはるおかげだすのや。 363 00:29:32,571 --> 00:29:36,074 八代目が決まったあとで もめ事が起きんよう➡ 364 00:29:36,074 --> 00:29:39,378 まずは 惣ぼんさん捜しなはれ いうことだす。 365 00:29:39,378 --> 00:29:43,582 けど もし惣ぼんさんが見つかったら どないなるの? 366 00:29:43,582 --> 00:29:45,517 五鈴屋 戻る言わはったら。 367 00:29:45,517 --> 00:29:51,089 それは…。 惣ぼんさんのご気性やったら➡ 368 00:29:51,089 --> 00:29:56,762 一度捨てた店に戻るようなことは ないように思いますけど…。 369 00:29:56,762 --> 00:30:00,599 そやろか? 高島店も江戸店も出来て➡ 370 00:30:00,599 --> 00:30:06,471 前より ずっと大きなった五鈴屋 見たら 欲しゅうなるんやないの? 371 00:30:06,471 --> 00:30:10,275 はあ… 今は案じても しかたありまへん。 372 00:30:10,275 --> 00:30:15,113 頂いた二年を 無駄にせんよう 皆で力合わせていきまひょな。 373 00:30:15,113 --> 00:30:17,149 (3人)へえ! 374 00:30:17,149 --> 00:30:20,419 (風の音) 375 00:30:20,419 --> 00:30:25,257 (惣次)ふ~ん… 妹まで江戸に出てきよったんか。 376 00:30:25,257 --> 00:30:29,628 (お杉)あか抜けてはったけど 確かに結さんでおました。 377 00:30:29,628 --> 00:30:35,801 お家さんも智蔵も のうなってしもて 身内は あの妹一人だけや。 378 00:30:35,801 --> 00:30:39,971 店は繁盛してるようだす。 お客さんが ひっきりなしで。 379 00:30:39,971 --> 00:30:44,810 今日は 店開いて一年の ご祝儀もあるのやろ。 380 00:30:44,810 --> 00:30:47,846 まだ分かりまへんで。 381 00:30:47,846 --> 00:30:54,319 江戸店出して 三年もたんと潰れた店 ぎょうさんあるさかいな。 382 00:30:54,319 --> 00:31:00,125 あそこが潰れたかて 取って代わる店 なんぼでも おますやろし。 383 00:31:00,125 --> 00:31:03,762 まあ そないなことならんよう➡ 384 00:31:03,762 --> 00:31:08,967 もう 何ぞ 手ぇ打ってるかもしれまへんけどなあ。 385 00:31:20,612 --> 00:31:27,619 <年が明けてすぐ 力造が 染め色の相談にやって来ました> 386 00:31:31,256 --> 00:31:36,628 「四十八茶百鼠」言うだけあって 渋い色が多おますな。 387 00:31:36,628 --> 00:31:39,965 はあ…。 388 00:31:39,965 --> 00:31:42,434 売り出しは春だすよって… あっ➡ 389 00:31:42,434 --> 00:31:46,138 少し明るい桜鼠か梅鼠では どないだすやろ? 390 00:31:46,138 --> 00:31:49,174 どなたにも似合いそうな ええ色だすな。 へえ。 391 00:31:49,174 --> 00:31:51,376 そやねえ。 392 00:31:57,649 --> 00:31:59,584 この色はどうでしょう?➡ 393 00:31:59,584 --> 00:32:01,520 江戸紫って いうんですが…。 394 00:32:01,520 --> 00:32:03,455 (佐助)あ… これだすか? 395 00:32:03,455 --> 00:32:08,760 差し色には よろしおますけど 着物には派手すぎるんと違いますやろか。 396 00:32:08,760 --> 00:32:14,566 けど これは 江戸ならではの色なんでさ。 (お竹)ああ…。 397 00:32:14,566 --> 00:32:17,569 江戸紫…。 398 00:32:21,473 --> 00:32:24,176 江戸の色…。 399 00:32:35,854 --> 00:32:38,623 この色が よろしおます。 400 00:32:38,623 --> 00:32:42,494 (3人)えっ? 華やかやし 品もある。 401 00:32:42,494 --> 00:32:47,799 最初の一反をお召しになるお方に 江戸紫は よう似合うはずだす。 402 00:32:47,799 --> 00:32:53,972 ああっ! へえ! あのお方には きっと よう映りますやろ! 403 00:32:53,972 --> 00:33:01,246 力造さん 鈴の小紋 江戸紫で染めとくれやす。 404 00:33:01,246 --> 00:33:03,181 へい! 405 00:33:03,181 --> 00:33:52,297 ♬~ 406 00:33:52,297 --> 00:33:57,435 最初に置くとこが少しでもずれると 後々 狂いが出ちまうんです。 407 00:33:57,435 --> 00:33:59,437 ああ…。 408 00:34:03,909 --> 00:34:06,611 (お才)あれは 目糊。 409 00:34:09,781 --> 00:34:13,618 (お才) 型紙の穴のとこだけ 生地に糊がついて➡ 410 00:34:13,618 --> 00:34:16,421 染まらずに白く残るんですよ。 411 00:34:23,094 --> 00:34:25,597 あっ 模様が…。 412 00:34:25,597 --> 00:34:30,402 (お才)糊の色です。 洗うと きれいに落ちちまいますから。 413 00:34:33,939 --> 00:34:38,810 (お才)ああやって型紙を何十回も送っては 型付けしていくんですよ。 414 00:34:38,810 --> 00:34:41,613 (佐助)よう ずれへんもんだすなあ! 415 00:34:41,613 --> 00:34:46,952 目印に小さな穴が開いていましたね それを頼りに送っていくんです。 416 00:34:46,952 --> 00:34:49,287 ああ…。 417 00:34:49,287 --> 00:34:57,162 ♬~ 418 00:34:57,162 --> 00:35:03,568 ああ… やっぱり いい腕だね。 419 00:35:03,568 --> 00:35:26,391 ♬~ 420 00:35:26,391 --> 00:35:29,761 佐助さん!へえ。 これ 干し場に上げるんだが➡ 421 00:35:29,761 --> 00:35:32,797 ちょいと手ぇ貸しておくんなさい。 へえ! 422 00:35:32,797 --> 00:35:35,934 その辺 こうやって持ってもらって。 へえ。 423 00:35:35,934 --> 00:35:38,837 いきますよ… よいしょ! 424 00:35:38,837 --> 00:35:56,254 ♬~ 425 00:35:56,254 --> 00:35:59,157 これが江戸紫…。 426 00:35:59,157 --> 00:36:04,729 きれいな紫を出すのは そりゃあ難しくって。 427 00:36:04,729 --> 00:36:09,067 お父っつぁんと二人 工夫に工夫を重ねてました。 428 00:36:09,067 --> 00:36:13,371 ああ…。 429 00:36:13,371 --> 00:36:15,440 おかみさん。 430 00:36:15,440 --> 00:36:23,448 うちの人を型染めの道に戻してくださって ありがとうございました。 431 00:36:29,387 --> 00:36:33,591 フフッ…。 フフッ…。 432 00:36:36,594 --> 00:36:38,530 (お照)ありがたいねえ! 433 00:36:38,530 --> 00:36:40,932 タダで富五郎が拝めるなんてさ! 434 00:36:40,932 --> 00:36:43,401 もっと いいかんざし挿してくりゃ よかった! 435 00:36:43,401 --> 00:36:47,605 あんたのかんざしなんて 富五郎の目に留まりゃしないよ! 436 00:36:47,605 --> 00:36:53,111 <その日 江戸の町は 朝から浮き立っていました。➡ 437 00:36:53,111 --> 00:36:59,784 明日 中村座で初日を迎える 「京風流娘道成寺」の披露目のために➡ 438 00:36:59,784 --> 00:37:05,356 富五郎が 堺町でお練りを行うのです> 439 00:37:05,356 --> 00:37:09,060 本日は おめでとうさんでございます。 440 00:37:09,060 --> 00:37:11,729 ありがとうございます。 441 00:37:11,729 --> 00:37:14,632 この度は ご無理をお願い申しました。 442 00:37:14,632 --> 00:37:19,070 仕立てまで お二人にお頼み申しまして。 443 00:37:19,070 --> 00:37:23,241 秘密を守るためとはいえ 手間をかけさせて すまなかった。 444 00:37:23,241 --> 00:37:25,744 何をおっしゃいます。 445 00:37:25,744 --> 00:37:28,780 まず ご覧になっとくれやす。 446 00:37:28,780 --> 00:37:39,491 ♬~ 447 00:37:49,934 --> 00:37:54,105 五鈴屋さん…➡ 448 00:37:54,105 --> 00:37:58,776 この富五郎が 役者人生をかける晴れの場に➡ 449 00:37:58,776 --> 00:38:02,747 これに勝る衣装はございません。 450 00:38:02,747 --> 00:38:04,883 ありがとうございました。 451 00:38:04,883 --> 00:38:06,885 あっ…。 452 00:38:12,757 --> 00:38:20,431 東西 東~西~! 453 00:38:20,431 --> 00:38:31,442 まずは四方 ごひいき様へ 厚く御礼申し上げ奉りまする! 454 00:38:33,244 --> 00:38:38,082 当代中村富五郎 上方表にても ごひいきにあずかり➡ 455 00:38:38,082 --> 00:38:43,888 ありがたき幸せながら この度 ご当地へお目見えのため➡ 456 00:38:43,888 --> 00:38:46,791 まかり下りましてございまする。 457 00:38:46,791 --> 00:38:51,930 ごひいき お取り立てのほど 隅から隅まで➡ 458 00:38:51,930 --> 00:38:59,604 こいねがい上げ奉りまする! 459 00:38:59,604 --> 00:39:03,208 いよっ 日本一! 大津屋!日本一! 460 00:39:03,208 --> 00:39:06,878 富五郎~! すてき~! 461 00:39:06,878 --> 00:39:10,348 (富五郎)ごひいきの 皆々様のおかげをもちまして➡ 462 00:39:10,348 --> 00:39:16,721 当月 中村座にて 「京風流娘道成寺」を 務めさせていただくことと➡ 463 00:39:16,721 --> 00:39:21,559 相成りましてござりまする。 464 00:39:21,559 --> 00:39:31,069 にぎにぎしいご来場のほどを 隅から隅まで ずい~っと➡ 465 00:39:31,069 --> 00:39:41,579 こいねがい上げ奉りまする! 466 00:39:45,383 --> 00:39:48,586 富五郎よ! 富五郎~! 467 00:39:48,586 --> 00:39:51,389 富五郎様~! 468 00:39:51,389 --> 00:39:55,593 よっ 当代一! 469 00:39:55,593 --> 00:39:59,397 見てごらん 鈴の模様だよ。 本当だ! 470 00:39:59,397 --> 00:40:02,600 鈴の柄って… ひょっとして!? 471 00:40:02,600 --> 00:40:04,535 (2人)五鈴屋さん!? 472 00:40:04,535 --> 00:40:06,471 あっ! ええっ うそ!? 473 00:40:06,471 --> 00:40:10,275 え~ 本当に? 474 00:40:10,275 --> 00:40:20,418 ♬~ 475 00:40:20,418 --> 00:40:23,921 江戸紫だ! 江戸っ子の色だねえ。 476 00:40:26,624 --> 00:40:29,527 お師匠さん… おいらも いつかきっと➡ 477 00:40:29,527 --> 00:40:32,130 こんなふうに 江戸の町を沸かせてみせますよ! 478 00:40:32,130 --> 00:40:36,968 ハハハハ まあ せいぜい精進するこった。 479 00:40:36,968 --> 00:40:41,139 いい色だねえ! 富五郎によく似合ってるよ。 480 00:40:41,139 --> 00:40:44,242 鈴の小紋なんて初めてだ。 なあ! 481 00:40:48,880 --> 00:40:54,986 今日は 富五郎のお練りだけじゃねえ 五鈴屋の小紋の お披露目だよ。 482 00:40:54,986 --> 00:40:59,824 へえ こない華やかな お披露目させてもろて➡ 483 00:40:59,824 --> 00:41:03,628 鈴の小紋は果報もんだす。 484 00:41:10,935 --> 00:41:14,272 幸か…。 485 00:41:14,272 --> 00:41:19,777 役者のお練りとは ええとこに目ぇつけたなあ。 486 00:41:19,777 --> 00:41:23,614 これで五鈴屋の名ぁも上がるやろ。 487 00:41:23,614 --> 00:41:28,486 旦那さま そろそろ…。 ああ 行こか。へい。 488 00:41:28,486 --> 00:41:34,625 ♬~ 489 00:41:34,625 --> 00:41:41,132 <富五郎の「娘道成寺」は 初日から満員御礼の大盛況となり➡ 490 00:41:41,132 --> 00:41:46,437 三月に売り出された 五鈴屋特製 鈴小紋は➡ 491 00:41:46,437 --> 00:41:49,974 富五郎のお練りの衣装として評判を呼び➡ 492 00:41:49,974 --> 00:41:57,448 五鈴屋の見世先は 今までにないほどの にぎわいを見せたのです。➡ 493 00:41:57,448 --> 00:42:01,452 ところが…。➡ 494 00:42:01,452 --> 00:42:06,924 四月になって 命定めといわれる麻疹が はやり始めると➡ 495 00:42:06,924 --> 00:42:11,229 病は瞬く間に江戸中に広まって…> 496 00:42:14,799 --> 00:42:18,102 小さなお棺…。 497 00:42:18,102 --> 00:42:21,606 また お子だすな。 498 00:42:21,606 --> 00:42:24,642 <江戸の町は火が消えたようになり➡ 499 00:42:24,642 --> 00:42:30,448 五鈴屋の客足も ぱたりと途絶えてしまったのです> 500 00:42:35,787 --> 00:42:39,123 千五百両!? 江戸で商いを続けたければ➡ 501 00:42:39,123 --> 00:42:42,627 借りてでも用意なさい。 上納金て…。 502 00:42:42,627 --> 00:42:45,530 皆 ご寮さんが束ねる 一つの五鈴屋やおまへんか! 503 00:42:45,530 --> 00:42:47,498 一番ええ道…。 504 00:42:47,498 --> 00:42:50,368 鉢巻きだす。 しんどうて かなわん…。 505 00:42:50,368 --> 00:42:53,137 悪いやつほど あほのふりがうまいよって。 506 00:42:53,137 --> 00:42:55,339 悪いやつ?