1 00:00:05,530 --> 00:00:07,690 <正月二日。→ 2 00:00:07,690 --> 00:00:09,850 華やかに飾り立てた初荷が→ 3 00:00:09,850 --> 00:00:14,590 天満の通りを景気よく行き交います> 4 00:00:14,590 --> 00:00:17,590 ・ めでたいや めでたやな 5 00:00:20,990 --> 00:00:33,780 ・~ 6 00:00:33,780 --> 00:00:35,470 ほな 始めまひょか。 7 00:00:35,470 --> 00:00:37,820 へえ。 8 00:00:37,820 --> 00:00:51,300 ・~ 9 00:00:51,300 --> 00:00:55,660 今日は いよいよ 浜羽二重のお披露目だす。 10 00:00:55,660 --> 00:01:00,050 (鉄助)旦那さん ご寮さん おめでとうさんでございます! 11 00:01:00,050 --> 00:01:02,740 (手代たち)おめでとうさんでございます! 12 00:01:02,740 --> 00:01:05,100 皆で力合わせて売っていきまひょな。 13 00:01:05,100 --> 00:01:09,810 (一同)へえ! ほな いて参じます! 14 00:01:09,810 --> 00:01:12,500 (丁稚たち)お早うお帰りやす。 15 00:01:12,500 --> 00:01:17,560 <初売りの品は 五鈴屋特製の浜羽二重です。→ 16 00:01:17,560 --> 00:01:21,590 それは 江州の小さな村と組んで→ 17 00:01:21,590 --> 00:01:26,310 一から作り出した特別な織物でした> 18 00:01:26,310 --> 00:01:30,350 五鈴屋の浜羽二重 きっと評判になりますで。 19 00:01:30,350 --> 00:01:33,710 へえ。 20 00:01:33,710 --> 00:01:35,060 旦那さん→ 21 00:01:35,060 --> 00:01:39,770 今年は 五鈴屋の勝負の年だす。 22 00:01:39,770 --> 00:02:00,650 ・~ 23 00:02:00,650 --> 00:02:04,360 追加の注文 半月足らずで こないに入ってますのか。 24 00:02:04,360 --> 00:02:09,080 ええ! 五反 十反と まとめて欲しい言う お方も おいでだす。 25 00:02:09,080 --> 00:02:14,450 <初売りの浜羽二重は 狙いどおりの評判を呼び→ 26 00:02:14,450 --> 00:02:20,520 用意した五百反は 全て 数日のうちに買い手がつきました> 27 00:02:20,520 --> 00:02:25,230 波村とは ふたつきごとに 百反 納めてもらう約束だすけど→ 28 00:02:25,230 --> 00:02:28,260 これやと足りまへんな…。 29 00:02:28,260 --> 00:02:30,290 なんとか数増やしてもらうことは できまへんやろか? 30 00:02:30,290 --> 00:02:35,660 村も もう手いっぱいで 織子さん 増やさんならん言うてはったけど…。 31 00:02:35,660 --> 00:02:39,370 あ…。 旦那さん 松橋屋さんがお見えだす。 32 00:02:39,370 --> 00:02:42,740 急ぎの御用やそうで。 松橋屋さん? 33 00:02:42,740 --> 00:02:45,760 (松橋屋)ああ… ああ…。 34 00:02:45,760 --> 00:02:48,130 あっ… どないしはったんだす? まあ 上がっとくれやす。 35 00:02:48,130 --> 00:02:51,500 何をのんきなこと言うてますのや! あんさんとこの羽二重に→ 36 00:02:51,500 --> 00:02:56,880 盗品の疑いがかかってますのやで? 盗品? 何の話だす? 37 00:02:56,880 --> 00:03:01,260 大坂北組の呉服屋の手代が 越前から仕入れた白羽二重 横流しして→ 38 00:03:01,260 --> 00:03:03,610 逃げてしもたんやそうだす! 39 00:03:03,610 --> 00:03:05,970 けど うちと何の関わりがおますのや? 40 00:03:05,970 --> 00:03:10,350 五鈴屋さん 羽二重 何反 仕入れはりましたんや? 41 00:03:10,350 --> 00:03:12,030 五百反だす。 42 00:03:12,030 --> 00:03:16,080 盗まれたんも 五百反だす。 大坂会所に旦那衆が集まって→ 43 00:03:16,080 --> 00:03:18,430 訴えるやなんやって騒いではりまっせ! 44 00:03:18,430 --> 00:03:21,120 いや 数が同じやいうだけで 盗品扱いだすか? 45 00:03:21,120 --> 00:03:24,830 申し開きは会所でしなはれ。 さあ 早う! けど…。 46 00:03:24,830 --> 00:03:28,190 旦那さん やましいことは 何もあらしまへん。 47 00:03:28,190 --> 00:03:31,230 会所へ行って 疑い 晴らしてもらいまひょ。 48 00:03:31,230 --> 00:03:37,230 そやな… 幸も一緒に来てんか? へえ。 支度してきます。 49 00:03:40,320 --> 00:03:44,320 あっ 五鈴屋さんをお連れしましたで。 50 00:03:53,110 --> 00:03:57,110 天満の五鈴屋でございます。 お初にお目にかかります。 51 00:04:03,550 --> 00:04:05,900 伏見屋さん…。 52 00:04:05,900 --> 00:04:11,960 大坂北組月行事の小倉屋でございます。 53 00:04:11,960 --> 00:04:15,960 わざわざ 天満から ご苦労さんだす。 54 00:04:17,020 --> 00:04:26,100 こちらの真澄屋さんから 羽二重 五百反 盗まれたいう訴えがございましてな。 55 00:04:26,100 --> 00:04:29,130 (真澄屋)ここにあるのが…→ 56 00:04:29,130 --> 00:04:34,520 盗まれたんとおんなじ羽二重だす。→ 57 00:04:34,520 --> 00:04:41,520 田舎絹とはいえ 越前で織らせた 上物だすで。 旦那さん… これ。 58 00:04:44,620 --> 00:04:47,660 手に取らせてもろても よろしおますか? 59 00:04:47,660 --> 00:05:16,270 ・~ 60 00:05:16,270 --> 00:05:20,980 五鈴屋の浜羽二重は これでございます。 61 00:05:20,980 --> 00:05:30,750 ・~ 62 00:05:30,750 --> 00:05:35,750 別物だすなあ…。 艶が違てますわ。 63 00:05:47,250 --> 00:05:50,280 重さも違うとります。 64 00:05:50,280 --> 00:05:54,650 同じ品とは 思えまへんな。 65 00:05:54,650 --> 00:06:00,050 何人もの手で織るのやさかい どれも同じには仕上がりまへんやろ?→ 66 00:06:00,050 --> 00:06:06,770 たまたま 差の大きいのが2反 並んだだけと違いまっか? 67 00:06:06,770 --> 00:06:13,510 五鈴屋さん あんさんとこに 反物が納められたの いつのことだす? 68 00:06:13,510 --> 00:06:16,870 去年の閏十二月だす。 (真澄屋)それ見なはれ! 69 00:06:16,870 --> 00:06:22,260 うちの反物が盗まれたんも 去年の閏十二月や。 ええっ? 70 00:06:22,260 --> 00:06:24,290 数も同じ 五百反。 71 00:06:24,290 --> 00:06:30,350 うちに来るはずの品が そっちの蔵に納まったとしか思えまへん。 72 00:06:30,350 --> 00:06:35,730 何言わはるんだす? この浜羽二重は わてらが産地に通って 一から…。 73 00:06:35,730 --> 00:06:40,440 産地て どこだす? 74 00:06:40,440 --> 00:06:44,150 江州長浜いうても広うおまっせ? 75 00:06:44,150 --> 00:06:54,580 どこの村の 何という織屋で織ったもんか 聞かせてもらいまひょか。 76 00:06:54,580 --> 00:06:57,620 それは…。 松橋屋さん! (松橋屋)あっ えっ…? 77 00:06:57,620 --> 00:07:02,000 あんさんら天満のお仲間は どこで織ったのか知ってはりますのんか? 78 00:07:02,000 --> 00:07:06,700 (松橋屋)あ~ 存じまへん! 誰も知らんうちに そない上物の羽二重→ 79 00:07:06,700 --> 00:07:10,080 どこで織らせたんやろて 天満でも うわさになってますわ。 80 00:07:10,080 --> 00:07:15,800 何で そないに隠しますねや? 81 00:07:15,800 --> 00:07:18,830 あ~ 分かった。 82 00:07:18,830 --> 00:07:29,270 越前の絹に 浜羽二重て名ぁ付けて 売り出したんと違いますのんか? 83 00:07:29,270 --> 00:07:31,630 そないなこと 五鈴屋がするはずおまへん! 84 00:07:31,630 --> 00:07:36,000 奉公人が口出すとこやない! 85 00:07:36,000 --> 00:07:40,040 (小倉屋)まあまあ 落ち着きなはれ。 86 00:07:40,040 --> 00:07:47,450 五鈴屋さん この際や どこで織らせたのか 明かしたらどないどす?→ 87 00:07:47,450 --> 00:07:53,170 産地が分かれば 疑いも晴れますやろ。 88 00:07:53,170 --> 00:07:58,560 村の名は… 明かせまへん。 89 00:07:58,560 --> 00:08:03,280 小さい村だす。 織子も 少のうおますよって→ 90 00:08:03,280 --> 00:08:05,630 うちの注文だけで手いっぱいだすのや。 91 00:08:05,630 --> 00:08:08,660 よそには渡さんいうことかいな。 92 00:08:08,660 --> 00:08:13,050 産地が荒らされんように守るのも わてらの役目でおます。 93 00:08:13,050 --> 00:08:18,090 天満組風情が… 何を偉そうに。 94 00:08:18,090 --> 00:08:22,470 あとになって 産地偽ってたて分かったら→ 95 00:08:22,470 --> 00:08:26,850 天満のお仲間が 責めを負うことになりますで。 96 00:08:26,850 --> 00:08:32,570 そない むちゃな! 五鈴屋さん どないしますのや!? 97 00:08:32,570 --> 00:08:35,600 待っとくれやす! 98 00:08:35,600 --> 00:08:41,660 五鈴屋の浜羽二重が ホンマに 長浜の絹やいう証しがございます。 99 00:08:41,660 --> 00:08:48,660 ハッ 奉公人の次は 女子の差し出口かいな。 100 00:08:58,160 --> 00:09:01,190 これ…→ 101 00:09:01,190 --> 00:09:03,210 ご覧いただけまへんやろか。 102 00:09:03,210 --> 00:09:10,950 ハッ 何だす? この 糸くずの 寄せ集めみたいなもんは。 ハハハハ…。 103 00:09:10,950 --> 00:09:14,650 (伏見屋為右衛門)その糸…→ 104 00:09:14,650 --> 00:09:16,650 見せてもらいまひょか。 105 00:09:28,800 --> 00:09:34,800 手に取らしてもろてよろしいか? へえ どうぞ。 106 00:09:41,590 --> 00:09:47,320 なるほど… これは確かな証しだすな。 107 00:09:47,320 --> 00:09:53,380 ええ? 伏見屋さん ただの糸くずが 何の証しになる言わはるんだす? 108 00:09:53,380 --> 00:09:57,080 ただの糸くずやあらしまへんで。 109 00:09:57,080 --> 00:10:02,800 織り残しの経糸つないだ 「結び糸」でごあすな。 110 00:10:02,800 --> 00:10:04,150 へえ。 111 00:10:04,150 --> 00:10:08,520 お蚕さんの命を頂いて紡いだ糸やさかい→ 112 00:10:08,520 --> 00:10:12,230 一つも無駄にはできんて 聞いております。 113 00:10:12,230 --> 00:10:22,660 この結び糸を持ってはるのは 長浜の織屋に足運んでる証しだす。→ 114 00:10:22,660 --> 00:10:27,380 五鈴屋さんの反物は…→ 115 00:10:27,380 --> 00:10:32,760 浜羽二重に相違ごあへん。 け… けど…。 116 00:10:32,760 --> 00:10:36,470 (為右衛門)産地の詮議も もう ここまででよろしいな? 117 00:10:36,470 --> 00:10:41,470 まあ 証しが立つなら よろしおますやろ。 118 00:10:43,210 --> 00:10:51,950 ・~ 119 00:10:51,950 --> 00:10:56,670 ほな 皆さん… 散会にしまひょか。 120 00:10:56,670 --> 00:10:59,670 おおきに… ありがとさんでございます。 121 00:11:02,390 --> 00:11:04,390 ありがとさんでございます。 ありがとさんでございます。 122 00:11:07,450 --> 00:11:10,450 こざかしい女子やで。 123 00:11:12,160 --> 00:11:15,190 (風の音) 124 00:11:15,190 --> 00:11:18,230 あ~ さぶっ。 やまへんなあ…。 125 00:11:18,230 --> 00:11:24,950 (雷鳴) 126 00:11:24,950 --> 00:11:29,670 おそろいで。 何ぞ ええことでもおましたんか? 127 00:11:29,670 --> 00:11:31,030 フッ… へえ。 128 00:11:31,030 --> 00:11:35,730 あっ 早太郎~ 元気そやな。 129 00:11:35,730 --> 00:11:37,080 いや~ よう降りますなあ。 130 00:11:37,080 --> 00:11:40,440 へえ~ 早太郎いうんだすか。 ええ。 131 00:11:40,440 --> 00:11:43,810 強そな名やな。 フフッ うん。 132 00:11:43,810 --> 00:11:47,850 むかしむかし それは勇ましい犬がおって→ 133 00:11:47,850 --> 00:11:50,870 村を荒らす悪いヒヒを 退治したんやそうだす。 134 00:11:50,870 --> 00:11:52,560 早太郎いいますんや。 135 00:11:52,560 --> 00:11:55,590 へえ~! 立派なお犬さんやなあ。 ええ。 136 00:11:55,590 --> 00:11:57,290 早太郎って名ぁ付けたん ご寮さんやで。 137 00:11:57,290 --> 00:12:01,320 初めて この天満に来た日やったなあ。 138 00:12:01,320 --> 00:12:03,670 へえ。 ハハハ! 139 00:12:03,670 --> 00:12:07,380 勇ましいことにかけては うちのご寮さんも負けてまへんで。 140 00:12:07,380 --> 00:12:14,120 悪いヒヒがおったかて 一歩も引かへん。 ええ 今日もお勇ましゅうございましたな。 141 00:12:14,120 --> 00:12:16,470 (笑い声) 142 00:12:16,470 --> 00:12:20,470 何笑てはるんだす? 悪いヒヒて…。 143 00:12:24,880 --> 00:12:29,270 あっ ハハ… よう似てはる。 (笑い声) 144 00:12:29,270 --> 00:12:31,620 何やろ? 3人して。 145 00:12:31,620 --> 00:12:34,990 まあ 「笑う門には福来たる」や。 146 00:12:34,990 --> 00:12:38,360 五鈴屋さん 今年は ええ年になりますで~。 147 00:12:38,360 --> 00:12:40,710 へえ。 なっ? (鳴き声) 148 00:12:40,710 --> 00:12:43,740 (お勢)おっ! (笑い声) 149 00:12:43,740 --> 00:12:45,100 いて参じます~。 150 00:12:45,100 --> 00:12:49,800 <今年は一歩も引けない勝負の年。→ 151 00:12:49,800 --> 00:12:54,180 最初の山を なんとか乗り越えた五鈴屋でしたが…> 152 00:12:54,180 --> 00:12:57,880 (佐七)すぐに五反欲しい言われてな… せわしいて かなんわ! 153 00:12:57,880 --> 00:13:01,880 (末七)羽二重の売れん日は 一日もおまへんさかいな。 ハハハ…。 154 00:13:08,320 --> 00:13:11,690 これは あかん…。 155 00:13:11,690 --> 00:13:15,390 (治兵衛)浜羽二重 評判よろしおますな。 156 00:13:15,390 --> 00:13:22,800 おかげさんで新しいお客さんも増えて 売り上げも 去年より伸ばせそうだす。 157 00:13:22,800 --> 00:13:26,500 けど…。 158 00:13:26,500 --> 00:13:28,860 (治兵衛)どないしはりました? 159 00:13:28,860 --> 00:13:34,910 へえ… あんまり せわしいて 手ぇが足りまへん。 160 00:13:34,910 --> 00:13:36,940 留七っとんと伝七っとんが辞めてから→ 161 00:13:36,940 --> 00:13:40,310 少ない人数で やりくりしてきましたけど→ 162 00:13:40,310 --> 00:13:43,010 それも もう厳しなって…。 うん…。 163 00:13:43,010 --> 00:13:47,380 それに… 羽二重のほかは→ 164 00:13:47,380 --> 00:13:51,420 縮緬も 紬も 思たほどには売れてまへん。 165 00:13:51,420 --> 00:13:54,450 蔵の在庫が増えてしもて…。 166 00:13:54,450 --> 00:14:01,180 忙しさにかまけて 手ぇが回ってへんせいや思います。 167 00:14:01,180 --> 00:14:04,220 大当たり出したあというのは→ 168 00:14:04,220 --> 00:14:08,920 どこの店でも 似たようなことが起きるもんだすな。 169 00:14:08,920 --> 00:14:10,950 えっ? 170 00:14:10,950 --> 00:14:16,330 今が肝心だす。 171 00:14:16,330 --> 00:14:26,430 この先 まだまだ売り伸ばしていけるか いっとき当てただけで終わってしまうか。 172 00:14:26,430 --> 00:14:30,140 ご寮さんの 知恵の絞りどころだすな。 173 00:14:30,140 --> 00:14:32,140 へえ。 174 00:14:35,860 --> 00:14:38,860 (お染)どうぞ。 おおきに。 175 00:14:42,260 --> 00:14:46,640 あ… 香ばしい! 176 00:14:46,640 --> 00:14:50,640 何のお茶やと思わはります? あ…。 177 00:14:53,370 --> 00:14:56,070 何だすやろ? ほんのり甘い。 178 00:14:56,070 --> 00:15:00,110 紅花だす。 紅花? 179 00:15:00,110 --> 00:15:03,810 あの 赤い色染める紅花だすか? 180 00:15:03,810 --> 00:15:08,520 ほら これ。 珍しおますやろ? 181 00:15:08,520 --> 00:15:12,900 叔父の茂作が 行商先から送ってきましたんや。 182 00:15:12,900 --> 00:15:16,940 確か… 近江商人や言うてはりましたな。 183 00:15:16,940 --> 00:15:23,340 フッ… 出羽の米沢まで 長浜の蚊帳 売りに行きますのや。 184 00:15:23,340 --> 00:15:28,720 蚊帳だすか? あない かさばるもんを そない遠くまで…。 185 00:15:28,720 --> 00:15:33,440 近江商人いうのは 商いのためやったら→ 186 00:15:33,440 --> 00:15:37,810 天秤棒担いで千里を行きますさかいな。 187 00:15:37,810 --> 00:15:39,170 ああ…。 188 00:15:39,170 --> 00:15:50,940 ・~ 189 00:15:50,940 --> 00:15:55,330 いて参じました! ご苦労はんだす。 首尾はどないや? 190 00:15:55,330 --> 00:16:00,040 はあ~ あきまへん。 口入れ屋に引き合わせてもろた3人→ 191 00:16:00,040 --> 00:16:02,400 元の奉公先が店前売りだすのや。 192 00:16:02,400 --> 00:16:07,110 お屋敷回って売る五鈴屋の商い 勤まるとは思えまへん。 193 00:16:07,110 --> 00:16:10,810 はあ… そうか。 194 00:16:10,810 --> 00:16:15,810 新しい奉公人雇うのも難しいもんやな。 (鉄助)ええ…。 195 00:16:19,900 --> 00:16:25,630 幸 どないしたんや? 頭 痛いんか? 196 00:16:25,630 --> 00:16:27,980 旦那さん… あ…→ 197 00:16:27,980 --> 00:16:33,710 奉公人増やす代わりに 外の人に頼んで 売り歩いてもらうのは どないだすやろ? 198 00:16:33,710 --> 00:16:37,710 外の人て 何の話 してますのや? 199 00:16:41,450 --> 00:16:45,150 行商だす。 天秤棒担いで売ってもらうんだす。 200 00:16:45,150 --> 00:16:47,850 えっ…。 棒手振りはあきまへん! 201 00:16:47,850 --> 00:16:52,560 幸 何言うてますのや? そやありまへん。 近江商人だす。 202 00:16:52,560 --> 00:16:56,600 お…? 近江商人は 天秤棒を担いで→ 203 00:16:56,600 --> 00:16:58,960 千里を歩く言いますやろ。 204 00:16:58,960 --> 00:17:02,660 お染さんの叔父さん 出羽まで蚊帳売りに行かはるそうだす。 205 00:17:02,660 --> 00:17:04,010 (智蔵 鉄助)蚊帳? 206 00:17:04,010 --> 00:17:10,010 旦那さん 五鈴屋の浜羽二重なら 出羽でも売れるのやありまへんやろか。 207 00:17:15,460 --> 00:17:18,150 きれいやなあ… 上手 上手。 208 00:17:18,150 --> 00:17:20,850 ふき玉や~ さぼん玉~。 209 00:17:20,850 --> 00:17:25,560 <お染の叔父が行商から戻って 五鈴屋を訪ねてきたのは→ 210 00:17:25,560 --> 00:17:29,560 梅雨が明けてすぐのことでした> 211 00:17:32,290 --> 00:17:36,290 (鉄助)こちらだす。 (茂作)失礼します。 212 00:17:43,410 --> 00:17:47,110 賢吉っとんの大叔父さんやてな。 213 00:17:47,110 --> 00:17:51,150 年いってはるけど男前やわ。 214 00:17:51,150 --> 00:17:55,520 お梅どん! 行儀悪い。 のぞきなはんな。 215 00:17:55,520 --> 00:17:58,890 男前…? 216 00:17:58,890 --> 00:18:04,610 こない上等の羽二重やったら 売り先に なんぼでも心当たりがありますわ。 217 00:18:04,610 --> 00:18:06,970 ホンマだすか? 米沢辺りでは→ 218 00:18:06,970 --> 00:18:08,990 古手が好まれますのんやけど→ 219 00:18:08,990 --> 00:18:12,700 ええ反物で 一から仕立てたいいう お客さんも いやはりますわ。 220 00:18:12,700 --> 00:18:15,060 あ…。 221 00:18:15,060 --> 00:18:21,110 一度で運べるのは何反ほどだすやろ? うちの浜羽二重は重うおますけど…→ 222 00:18:21,110 --> 00:18:26,170 十反はいけますやろか? 何じゃ? 十反? 223 00:18:26,170 --> 00:18:29,530 ハハハハ…! ハハハ… えっ えっ えっ…? 224 00:18:29,530 --> 00:18:34,910 そない細かい商いしゃあしまへん。 あっ けど 米沢まで担いで運ぶのに→ 225 00:18:34,910 --> 00:18:36,270 ぎょうさんは無理だすやろ? 226 00:18:36,270 --> 00:18:41,310 かさばるもんは 船と馬使て 米沢の定宿に先に送ってしまいます。 227 00:18:41,310 --> 00:18:46,370 天秤棒に提げていくのは 見本の品と 身の回りのもんだけや。 228 00:18:46,370 --> 00:18:50,410 はあ~ なるほど。 商いの相手は 地元の小売りやさけ→ 229 00:18:50,410 --> 00:18:56,140 近江商人いうんは 店を構えん問屋や思てもろたらよろしい。 230 00:18:56,140 --> 00:19:01,850 店を構えん問屋…。 (茂作)どやろな まず…。 231 00:19:01,850 --> 00:19:04,220 (鉄助)んっ んっ んっ…? えっ? んっ? 232 00:19:04,220 --> 00:19:08,920 百反 任せてもらえんやろか。 えっ? えっ 百反だすか!? 233 00:19:08,920 --> 00:19:11,950 掛け売りやのうて 現銀で買わせてもらいます。 234 00:19:11,950 --> 00:19:14,980 あっ いや…。 そのかわり 値ぇは なんぼか→ 235 00:19:14,980 --> 00:19:16,340 まけてくらいさ。 236 00:19:16,340 --> 00:19:20,040 旦那さん 天満では 現銀売りは御法度だすけど…。 237 00:19:20,040 --> 00:19:24,420 そやな…。 238 00:19:24,420 --> 00:19:27,110 どないしたもんやろ? 239 00:19:27,110 --> 00:19:34,840 店前現銀売りはあきまへんけど 茂作さんは 店を構えへん問屋だす。 240 00:19:34,840 --> 00:19:38,220 問屋に卸すいうことなら 店前売りには あたらへんのと違いますか? 241 00:19:38,220 --> 00:19:40,910 (膝を打つ音) ああ! それやったら 筋が通りますわ! 242 00:19:40,910 --> 00:19:44,280 ほなら 話は決まりちゅうことで ええですかいの? 243 00:19:44,280 --> 00:19:46,640 (2人)へえ! 244 00:19:46,640 --> 00:19:51,640 (笑い声) 245 00:19:57,410 --> 00:20:01,110 再来月には 百反 きっとお届けいたします。 246 00:20:01,110 --> 00:20:04,110 秋のうちに まるっぽ売り切ってまうでの。 247 00:20:08,520 --> 00:20:12,560 賢輔かいな… 賢吉っとんやったな! 248 00:20:12,560 --> 00:20:16,260 (賢吉)へえ。 フフフ… 大きゅうなったな おい! 249 00:20:16,260 --> 00:20:20,980 ええお店で奉公させてもうてよ 幸せもんやのう。 250 00:20:20,980 --> 00:20:24,680 へえ! 気張りや。 251 00:20:24,680 --> 00:20:27,040 よっ! ああ…。 ほな! 252 00:20:27,040 --> 00:20:31,410 よろしゅうお頼申します。 よろしゅうに。 253 00:20:31,410 --> 00:20:37,410 <こうして 五鈴屋は 新しい売り方を 一つ 手に入れたのでした> 254 00:20:42,860 --> 00:20:48,580 <富久の新盆を終えた七月の末のこと> 255 00:20:48,580 --> 00:20:50,580 この辺りのはずやけど…。 256 00:20:55,990 --> 00:20:57,010 おおきに~。 ありがとさんでございます。 257 00:20:57,010 --> 00:21:00,010 またお待ちしとります。 258 00:21:05,090 --> 00:21:09,460 幸! フフフ…。 まあ! 259 00:21:09,460 --> 00:21:11,460 えっ? (笑い声) 260 00:21:13,840 --> 00:21:21,580 昔 天神さんの境内で話したとおり 紅屋の袋物で 店 開きましたで。 261 00:21:21,580 --> 00:21:25,290 へえ。 もうすぐ 一年になりますわ。 262 00:21:25,290 --> 00:21:28,650 ああ ご繁盛で何よりだす。 263 00:21:28,650 --> 00:21:33,030 紅屋さんの袋物は 美しゅうて 値は手ごろで→ 264 00:21:33,030 --> 00:21:36,390 えらい評判やて聞いてます。 265 00:21:36,390 --> 00:21:38,750 おかげさんで。 266 00:21:38,750 --> 00:21:44,480 (笑い声) 267 00:21:44,480 --> 00:21:49,870 五鈴屋さんの浜羽二重 大層な人気やなあ! 268 00:21:49,870 --> 00:21:56,930 商いに見向きもせんかったあの智ぼんが 今では立派な六代目や。 269 00:21:56,930 --> 00:21:58,280 へえ。 270 00:21:58,280 --> 00:22:02,660 軍師は… 幸だすやろ? 271 00:22:02,660 --> 00:22:10,660 フフッ。 ええなあ 智ぼんは 聞く耳持ってはって。 272 00:22:12,430 --> 00:22:15,460 はあ… この店…→ 273 00:22:15,460 --> 00:22:20,500 作ったのも 切り盛りしてるのも わてだす。 274 00:22:20,500 --> 00:22:24,210 けど 店主は 紅屋本店の兄で→ 275 00:22:24,210 --> 00:22:29,590 ご機嫌とらな ひとっつも 動いてくれまへんのや。 276 00:22:29,590 --> 00:22:32,590 はあ… 難儀やわあ。 277 00:22:35,990 --> 00:22:42,720 大坂には 女名前禁止のおきてが ありますよってなあ。 278 00:22:42,720 --> 00:22:46,760 女は 店主にも家持ちにも なられしまへん。 279 00:22:46,760 --> 00:22:49,800 へえ…。 280 00:22:49,800 --> 00:22:56,860 ホンマは 商いに男も女もないはずやのに。 281 00:22:56,860 --> 00:23:00,900 お家さんかて このおきてさえ なかったら…→ 282 00:23:00,900 --> 00:23:04,610 店主になってはったんやないやろか。 283 00:23:04,610 --> 00:23:09,330 そうだすなあ… お家さんなら。 284 00:23:09,330 --> 00:23:14,710 あ… そういうたら 幸…→ 285 00:23:14,710 --> 00:23:21,450 あんなあ… 留七っとんと伝七っとんには もう会うた? 286 00:23:21,450 --> 00:23:24,140 あ… 店辞めてから いっぺんも会うてまへん。 287 00:23:24,140 --> 00:23:27,170 2人に何か? 288 00:23:27,170 --> 00:23:34,570 去年 両替商の山崎屋が潰れましたやろ? あの あおり食うて→ 289 00:23:34,570 --> 00:23:37,600 奉公先の呉服屋が潰れてしもたんだす。 290 00:23:37,600 --> 00:23:41,310 えっ? 店じまいのあとで ばったり会うてなあ→ 291 00:23:41,310 --> 00:23:46,690 五鈴屋に戻ったらて 声かけてみたんやけど…→ 292 00:23:46,690 --> 00:23:49,390 今更 合わす顔がない言わはって。 293 00:23:49,390 --> 00:23:52,760 あ… 合わす顔がないのは五鈴屋の方だす。 294 00:23:52,760 --> 00:23:56,800 暇銀も取らずに辞めてしもて…。 295 00:23:56,800 --> 00:24:01,850 (菊栄)なんとか 2人の身ぃが立つように できたらええけど…→ 296 00:24:01,850 --> 00:24:07,850 うちは小さい店やし 手ぇも足りてるしなあ…。 297 00:24:14,310 --> 00:24:17,680 幸? 298 00:24:17,680 --> 00:24:24,410 菊栄さん お力をお借りしたいことがございます。 299 00:24:24,410 --> 00:24:32,150 ・(せみの声) はあ~ いつまでも暑いわ。 300 00:24:32,150 --> 00:24:37,880 (お竹)ああっ! お梅 旦那さんとご寮さん 呼んできて! 301 00:24:37,880 --> 00:24:40,570 ん…。 302 00:24:40,570 --> 00:24:45,620 何だす? 大きな声出して。 303 00:24:45,620 --> 00:24:48,320 あんさんら 戻ってきたんか!?→ 304 00:24:48,320 --> 00:24:51,320 旦那さん! ご寮さん! 305 00:24:53,040 --> 00:24:58,750 (留七)紅屋のおかみさんから 申しつかって参りました。 306 00:24:58,750 --> 00:25:03,130 大事な話があるさかい 必ず伺うようにて。 307 00:25:03,130 --> 00:25:06,830 よう来てくれたな。 308 00:25:06,830 --> 00:25:08,180 話いうのはな…→ 309 00:25:08,180 --> 00:25:12,900 2人にまた 五鈴屋の反物 売ってほしいのや。 310 00:25:12,900 --> 00:25:15,930 (留七)それは堪忍しておくれやす。 311 00:25:15,930 --> 00:25:23,330 お言葉はありがたいことでおます。 けど… 2人で話し合うたんだす。 312 00:25:23,330 --> 00:25:28,050 もう 奉公は やめて 古手屋でも始めようかて。 313 00:25:28,050 --> 00:25:32,420 今日は そのこと お伝えに上がったんだす。 314 00:25:32,420 --> 00:25:34,110 (伝七)今更 出戻るわけにはまいりまへん。 315 00:25:34,110 --> 00:25:39,830 待った。 奉公人に戻ってほしいとは 言うてまへんで。 316 00:25:39,830 --> 00:25:43,200 近頃 浜羽二重ばかり よう売れて→ 317 00:25:43,200 --> 00:25:46,900 縮緬や紬が売れ残って 弱ってますのや。 318 00:25:46,900 --> 00:25:52,900 2人に何十反か預けるさかい 大坂の外で売ってもらえまへんか? 319 00:25:54,640 --> 00:25:58,010 奉公やありまへん。 店を構えん 背負い売りやけど→ 320 00:25:58,010 --> 00:26:00,710 それぞれが主いうことや。 321 00:26:00,710 --> 00:26:03,070 なっ? 幸。 へえ。 322 00:26:03,070 --> 00:26:09,120 それは… 酷な話だす。 323 00:26:09,120 --> 00:26:13,170 反物仕入れようにも 元手になる蓄えがございまへん。 324 00:26:13,170 --> 00:26:17,200 元手は要りまへん。 (2人)えっ? 325 00:26:17,200 --> 00:26:20,230 蔵の反物は お貸ししますよって。 326 00:26:20,230 --> 00:26:25,950 せやなあ… まずは半年と期限切って→ 327 00:26:25,950 --> 00:26:29,660 売れた分は 元値に少し利を乗せて払てもらいます。 328 00:26:29,660 --> 00:26:33,360 売れ残ったら蔵に戻してもろたらええ。 329 00:26:33,360 --> 00:26:37,740 いくらの値ぇで売って なんぼ もうけを出すかは→ 330 00:26:37,740 --> 00:26:41,450 それぞれの裁量次第だす。 331 00:26:41,450 --> 00:26:46,160 けど お借りするにしたかて カタが要りますやろ? 332 00:26:46,160 --> 00:26:49,190 カタも要りまへん。 それは なんぼなんでも…。 333 00:26:49,190 --> 00:26:52,550 高価な反物を何十反も…→ 334 00:26:52,550 --> 00:26:55,920 わてらが ネコババしたら どないするおつもりだす? 335 00:26:55,920 --> 00:27:01,310 2人に限って そないなことするはずがおまへん。 336 00:27:01,310 --> 00:27:05,020 店辞めた時のことは聞いてます。 337 00:27:05,020 --> 00:27:12,020 四代目が 売り上げ ネコババしようとして 皆の気持ち くじいてしもたんやてな。 338 00:27:15,120 --> 00:27:17,800 今日の売り上げが! ああ…! 339 00:27:17,800 --> 00:27:23,800 おい! あんさんら ネコババするんやないで! 340 00:27:26,230 --> 00:27:30,230 ホンマに すまんことやった。 341 00:27:32,290 --> 00:27:37,670 けどな… 四代目は 仏さんにならはったんやさかい→ 342 00:27:37,670 --> 00:27:39,670 もう許したってな。 343 00:27:44,410 --> 00:27:47,440 (鉄助)旦那さん ご寮さん! 344 00:27:47,440 --> 00:27:49,790 見本が届きましたで。 345 00:27:49,790 --> 00:27:51,790 ささ…。 346 00:27:58,880 --> 00:28:02,920 背負い売りには これ 使てほしいんだす。 347 00:28:02,920 --> 00:28:07,310 (鉄助)へえ。 まっ 前 失礼しますで。→ 348 00:28:07,310 --> 00:28:10,670 ほ~れ! 349 00:28:10,670 --> 00:28:15,390 この大きいのは 反箱包んで しょった時に 一番ええところに→ 350 00:28:15,390 --> 00:28:20,440 店の名と鈴の柄が来るように出来てます。 351 00:28:20,440 --> 00:28:24,140 こっちは 荷物包んでもええし→ 352 00:28:24,140 --> 00:28:29,140 お客さんに お土産として差し上げても 喜ばれるんやないかて。 353 00:28:31,550 --> 00:28:37,270 のれんと… 同じ色や。 354 00:28:37,270 --> 00:28:44,680 これ 背負って歩いてもろたら 五鈴屋の名が広まってありがたいわ。 355 00:28:44,680 --> 00:28:50,680 知らん土地で ツテもなしに売り歩くんは えらいことや思います。 356 00:28:53,090 --> 00:28:57,810 これ… 紅屋の菊栄さんから。 357 00:28:57,810 --> 00:28:59,810 ほれ。 358 00:29:02,190 --> 00:29:06,560 伊勢のお得意さん 教えてもろたんだす。 359 00:29:06,560 --> 00:29:11,940 紅屋の名ぁ出したら 話だけは聞いてくれるやろて。 360 00:29:11,940 --> 00:29:18,680 せやけど 買うていただけるかどうかは 2人の腕次第やで。 361 00:29:18,680 --> 00:29:22,680 どないやろ? 引き受けてもらえまへんか? 362 00:29:29,120 --> 00:29:32,120 ここまで していただいて…。 363 00:29:38,210 --> 00:29:45,280 背負い売り やらせていただきとうおます! 364 00:29:45,280 --> 00:29:49,280 わても… お頼申します! 365 00:29:52,360 --> 00:29:59,090 五鈴屋ののれんを汚さんよう 正直な商いして→ 366 00:29:59,090 --> 00:30:02,120 ぎょうさん売ってまいります! 367 00:30:02,120 --> 00:30:17,600 ・~ 368 00:30:17,600 --> 00:30:23,600 <そして 秋風が立ち始めた ある日> 369 00:30:26,030 --> 00:30:30,730 2人とも その姿 よう似合うてますで。 370 00:30:30,730 --> 00:30:32,090 気ぃ付けて行っといでやす。 371 00:30:32,090 --> 00:30:34,090 (2人)へえ! 372 00:30:38,480 --> 00:30:40,170 (お竹)これ。 373 00:30:40,170 --> 00:30:44,870 荷物になるやろけど おむすびや。 374 00:30:44,870 --> 00:30:47,900 ぎょうさん作っておいたで。 375 00:30:47,900 --> 00:30:51,900 無事に戻ってきてな。 待ってますで。 376 00:30:54,640 --> 00:30:57,640 ぼちぼち行こか。 へえ。 377 00:31:01,050 --> 00:31:04,070 (せきばらい) 378 00:31:04,070 --> 00:31:22,250 ・~ 379 00:31:22,250 --> 00:31:24,940 (2人)いて参じます! 380 00:31:24,940 --> 00:31:28,650 (手代たち)お早うお帰りやす! 381 00:31:28,650 --> 00:31:32,690 <8年前 失意のうちに店を去った2人が→ 382 00:31:32,690 --> 00:31:38,410 この日は 意気揚々と 新しい商いの道に 踏み出していきました> 383 00:31:38,410 --> 00:31:40,770 お早うお帰りやす! 384 00:31:40,770 --> 00:31:48,770 <それは 五鈴屋が販路を拡大するための 新たな挑戦でもあったのです> 385 00:32:07,370 --> 00:32:10,400 (結)うちらは よそ行きも木綿やねんね。 386 00:32:10,400 --> 00:32:14,770 姉さんは 絹物ばっかり ぎょうさん持ってはるのに…。 387 00:32:14,770 --> 00:32:18,770 (お房)呉服屋のご寮さんと比べて どないするんや。 388 00:32:21,510 --> 00:32:23,860 木綿は ええもんや。 389 00:32:23,860 --> 00:32:27,570 夏は 汗 吸うてくれるし 冬は暖かい。 390 00:32:27,570 --> 00:32:31,940 木綿が一番やわ。 391 00:32:31,940 --> 00:32:33,940 そやね。 392 00:32:36,660 --> 00:32:43,660 けど いっぺん 着てみたいわ… やらかい絹の着物。 393 00:32:55,180 --> 00:33:01,240 (風の音) 394 00:33:01,240 --> 00:33:04,270 竹~。 いて参じます! 395 00:33:04,270 --> 00:33:06,960 煤竹~。 お早うお帰りやす。 396 00:33:06,960 --> 00:33:15,380 <師走に入り 富久の一周忌を 身内で済ませた その翌日のこと> 397 00:33:15,380 --> 00:33:19,420 暮れの忙しい時に ありがとさんでございます。 398 00:33:19,420 --> 00:33:27,500 (桔梗屋孫六)な~に… ヘヘッ お家さんに 胸の内 聞いてもろたんだす。 399 00:33:27,500 --> 00:33:34,230 わてなあ… 桔梗屋の主をのいて 隠居しよう思てますねん。 400 00:33:34,230 --> 00:33:37,270 えっ? 年が明けたら 古希だす。 401 00:33:37,270 --> 00:33:41,640 体もえらいし ここら辺りが潮時だすわ。 402 00:33:41,640 --> 00:33:46,020 まだまだ早いように思いますけど。 フフ… まあ…→ 403 00:33:46,020 --> 00:33:50,400 未練がない言うたら ウソになるけども→ 404 00:33:50,400 --> 00:33:55,790 お家さんに聞いてもろたら それも もう さっぱりしましたわ。 405 00:33:55,790 --> 00:33:59,820 そうだすか。 406 00:33:59,820 --> 00:34:01,180 跡目は どなたに? 407 00:34:01,180 --> 00:34:07,900 うん… ご存じやろうけど 息子2人に先立たれてしもてなあ→ 408 00:34:07,900 --> 00:34:11,950 別家 立てたもんも体悪うしてて うちが助けてやらんと→ 409 00:34:11,950 --> 00:34:18,680 どないもならん ありさまや。 養子取るしかないと思てたとこに→ 410 00:34:18,680 --> 00:34:22,390 助け船が来たんだす。 助け船? 411 00:34:22,390 --> 00:34:26,430 桔梗屋の名ぁも商いも変えずに→ 412 00:34:26,430 --> 00:34:31,480 奉公人らも そのままで 店を買いたいいう人が現れましたんや。 413 00:34:31,480 --> 00:34:36,520 お店 売らはるんだすか? うん! 船場の呉服屋に→ 414 00:34:36,520 --> 00:34:39,890 買い上げてもらいます。 ええ具合に話が進んで→ 415 00:34:39,890 --> 00:34:43,590 手付け 受け取ったとこや。 ハハハ…。 416 00:34:43,590 --> 00:34:51,010 あとのことは 真澄屋さんに任せて 心安う 隠居させてもらいますわ。 417 00:34:51,010 --> 00:34:54,700 真澄屋さん? 418 00:34:54,700 --> 00:34:59,760 船場の店は 現銀売りやさかい 屋敷売りには苦労しはるやろう。 419 00:34:59,760 --> 00:35:06,760 うちの奉公人らが役に立ちますわ。 ハハハ…。 420 00:35:12,210 --> 00:35:15,910 何やて? 桔梗屋さんが あの真澄屋はんに? 421 00:35:15,910 --> 00:35:20,630 へえ。 それ… ホンマに ええ話やろか。 422 00:35:20,630 --> 00:35:25,350 羽二重の時のこと思たら 信用できんお人のように思いますけどな。 423 00:35:25,350 --> 00:35:30,400 わてもだす。 ただ 買い上げの約束に ウソはないようやし→ 424 00:35:30,400 --> 00:35:34,440 よそのもんが口を出すのも 筋が違うようで。 425 00:35:34,440 --> 00:35:37,130 そやな…。 426 00:35:37,130 --> 00:35:41,170 ほんなら 何ぞ うわさになってへんか 気ぃ付けてみますわ。 427 00:35:41,170 --> 00:35:43,520 あ… 売り渡しは いつごろやろ? 428 00:35:43,520 --> 00:35:47,570 手付けは済んだ言うてはりましたさかい 年明け早々やないかと。 429 00:35:47,570 --> 00:35:49,590 ・(鉄助)旦那さん ご寮さん よろしおますか? 430 00:35:49,590 --> 00:35:52,590 お入り。 ・(鉄助)へい。 431 00:36:00,030 --> 00:36:02,050 これ… ご覧いただきとうて。 432 00:36:02,050 --> 00:36:05,050 何ぞ ありましたんか? 433 00:36:06,760 --> 00:36:09,790 あっ…。 これは…。 434 00:36:09,790 --> 00:36:12,490 まだ師走の掛け取りが残ってますけど→ 435 00:36:12,490 --> 00:36:16,190 今年の売り上げ 銀二百九十貫を超えそうだす! 436 00:36:16,190 --> 00:36:20,900 あ… 二百九十? 去年は確か 百…。 437 00:36:20,900 --> 00:36:23,260 百三十八貫だす。 438 00:36:23,260 --> 00:36:26,290 去年の倍… いや 倍以上やがな! 439 00:36:26,290 --> 00:36:30,990 ええ! 浜羽二重が売れに売れたおかげだす! 440 00:36:30,990 --> 00:36:34,040 来年は ここに 留七っとんらの売り上げも乗りまっせ! 441 00:36:34,040 --> 00:36:38,410 あ…。 何や 今 震えが来たわ! 442 00:36:38,410 --> 00:36:40,760 うう~…! 443 00:36:40,760 --> 00:36:43,460 よっ おっ はっ! あっ 武者震いだすな。 444 00:36:43,460 --> 00:36:46,490 (笑い声) 皆の精進のおかげだす。 445 00:36:46,490 --> 00:36:50,190 あっ いや…。 それと…。 446 00:36:50,190 --> 00:36:53,900 五代目の惣次兄さんの力やな。 447 00:36:53,900 --> 00:36:57,600 へえ…。 448 00:36:57,600 --> 00:37:00,300 (惣次)皆 よう見てみ。→ 449 00:37:00,300 --> 00:37:05,010 波村の糸 使て 五鈴屋のために織り上げた→ 450 00:37:05,010 --> 00:37:08,010 これが 最初の一反や! 451 00:37:12,410 --> 00:37:16,790 わてらは 兄さんの残した土俵で相撲とって→ 452 00:37:16,790 --> 00:37:18,790 勝たせてもろたようなもんや。 453 00:37:21,180 --> 00:37:24,540 ホンマの勝負は ここからだすな。 454 00:37:24,540 --> 00:37:28,240 へえ! へえ! 455 00:37:28,240 --> 00:37:31,610 <ところが…。→ 456 00:37:31,610 --> 00:37:33,960 商家が門松を立てる→ 457 00:37:33,960 --> 00:37:36,660 師走二十八日になって→ 458 00:37:36,660 --> 00:37:42,380 天満の呉服仲間から 急な呼び出しがかかったのです> 459 00:37:42,380 --> 00:37:46,420 何だすやろ? こない暮れも押し詰まってから…。 460 00:37:46,420 --> 00:37:50,120 やっかいごとかもしれん。 幸も一緒に来た方がええんと違うか? 461 00:37:50,120 --> 00:37:54,160 けど 会所に女房連れいうのは…。 462 00:37:54,160 --> 00:37:56,860 餅差し入れに来たいうことにしたら よろしいわ。 463 00:37:56,860 --> 00:37:59,560 あ… そうだすな。 ほな 重箱にお餅詰めます。 464 00:37:59,560 --> 00:38:01,910 へえ。 465 00:38:01,910 --> 00:38:06,910 ・大小柱暦 巻暦~! 466 00:38:11,000 --> 00:38:14,710 そない勝手な話が おますかいな! 467 00:38:14,710 --> 00:38:19,420 ん? あんさん 桔梗屋の名は…。 468 00:38:19,420 --> 00:38:22,110 何の騒ぎだす? 469 00:38:22,110 --> 00:38:26,150 大坂北組の真澄屋さんが 桔梗屋さんを 買い上げる言うんだすけどな→ 470 00:38:26,150 --> 00:38:30,860 蓋開けてみたら 聞いてたのとは 話が違てるそうだす。 471 00:38:30,860 --> 00:38:35,240 せやから 桔梗屋の名ぁは残します。 472 00:38:35,240 --> 00:38:41,970 ただ 事情が変わって 店前現銀売りすることになりましたんや。 473 00:38:41,970 --> 00:38:46,690 屋敷売りしか したことない奉公人に 勤まるもんやおまへん。 474 00:38:46,690 --> 00:38:51,400 現銀売りて何や? 天満では 許されまへんで! 475 00:38:51,400 --> 00:38:55,440 皆さん そうだすやろ!? (松橋屋)桔梗屋さんの言うとおりだす。 476 00:38:55,440 --> 00:38:59,150 現銀売りする言うなら 天満の仲間には入れまへんで。 477 00:38:59,150 --> 00:39:01,500 そんなら それでよろしおま。 478 00:39:01,500 --> 00:39:05,870 本店は大坂北組だす。 479 00:39:05,870 --> 00:39:08,570 入り用なもんは そっちから調達しますさかい。 480 00:39:08,570 --> 00:39:10,930 な… 何やて!? 勝手な…。 481 00:39:10,930 --> 00:39:15,310 ああ… 大事な話 言い忘れてたわ。 482 00:39:15,310 --> 00:39:24,740 大坂の呉服仲間と天満の仲間と いよいよ一つにするいう うわさでっせ。 483 00:39:24,740 --> 00:39:31,140 大坂三郷がまとまったら 天満だけ現銀売りはあかんとは→ 484 00:39:31,140 --> 00:39:34,170 言えんのと ちゃいますか? だまし討ちやないか! 485 00:39:34,170 --> 00:39:38,200 あんたのような人に 桔梗屋は売りまへん! 486 00:39:38,200 --> 00:39:40,900 (真澄屋)売らんも何も…→ 487 00:39:40,900 --> 00:39:47,290 手付けの銀二十貫 もう そっちに渡しましたで。→ 488 00:39:47,290 --> 00:39:51,000 その金 返せるんだすか? 489 00:39:51,000 --> 00:39:54,370 (孫六)何…!? (真澄屋)あの金…→ 490 00:39:54,370 --> 00:39:58,400 まだ お手元にありまっか? 491 00:39:58,400 --> 00:40:04,470 別家に用立てるとか言うてはったけど…。 492 00:40:04,470 --> 00:40:07,490 事情を知ってて…。 493 00:40:07,490 --> 00:40:12,210 売らん言うなら 銀二十貫→ 494 00:40:12,210 --> 00:40:19,280 金に直したら 三百三十両や 今すぐ 返してもらいまひょ。 495 00:40:19,280 --> 00:40:22,280 うう~! 496 00:40:25,670 --> 00:40:27,030 あかん! (周助)旦那さん! 497 00:40:27,030 --> 00:40:30,720 どないしはりました? (孫六)うう…。 498 00:40:30,720 --> 00:40:34,430 えらい具合悪そうや。 (孫六)ようも… だましてくれたな! 499 00:40:34,430 --> 00:40:37,460 動いたらあきまへん! 横になっとくれやす! 500 00:40:37,460 --> 00:40:39,820 どなたか 医者… お医者さんをお願いします! 501 00:40:39,820 --> 00:40:42,850 わてが呼んできます。 ここを頼むで。 502 00:40:42,850 --> 00:40:48,570 えらい具合 悪そやなあ。 今日は ここまでにして→ 503 00:40:48,570 --> 00:40:51,570 あとは日改めまひょか。 504 00:40:53,960 --> 00:40:59,020 買い上げの話… 今 ここで 反故にせんことには…→ 505 00:40:59,020 --> 00:41:01,370 死んでも死に切れん! 506 00:41:01,370 --> 00:41:04,400 動いたらあきまへん! やめなはれ 無理したらあかん! 507 00:41:04,400 --> 00:41:08,440 もう 決まったこっちゃ! 508 00:41:08,440 --> 00:41:11,470 反故には でけまへんで。 509 00:41:11,470 --> 00:41:15,170 ほな わては いなしてもらいます。 510 00:41:15,170 --> 00:41:18,540 真澄屋さん 待っとくれやす。 511 00:41:18,540 --> 00:41:23,540 五鈴屋のご寮さん 何の用だす? 512 00:41:26,280 --> 00:41:30,000 皆さんに お伺いしたいことがございます。 513 00:41:30,000 --> 00:41:38,000 新しく 桔梗屋さんの買い上げを望む者が 現れたら どないなりますやろ? 514 00:41:40,100 --> 00:41:44,800 桔梗屋さんの商い守って 奉公人も皆 引き受けるいう買い手が→ 515 00:41:44,800 --> 00:41:50,860 ほかにいたら どないなるか 教えとくれやす。 516 00:41:50,860 --> 00:41:55,910 手付け渡した言うても まだ買い上げが済んだわけやなし→ 517 00:41:55,910 --> 00:42:00,910 どっちが買うか真澄屋さんと 争ういうことになりますやろな。 518 00:42:11,070 --> 00:42:18,470 主不在のため 女房が代わって お願い申し上げます。 519 00:42:18,470 --> 00:42:21,840 桔梗屋さんの買い上げに→ 520 00:42:21,840 --> 00:42:25,540 五鈴屋が 名乗りを 上げさせていただきとうございます。 521 00:42:25,540 --> 00:42:27,540 何やて!? 522 00:42:30,930 --> 00:42:33,930 よろしゅうお頼申します。 523 00:42:35,640 --> 00:42:38,670 思い切った戦 しはりましたな。 524 00:42:38,670 --> 00:42:41,370 ふたつの五鈴屋が力を合わせて… 出陣や。 525 00:42:41,370 --> 00:42:45,080 あかん…。 目安は 銀一千貫でおます。 526 00:42:45,080 --> 00:42:48,440 ゾクッとして 肌 あわだってきたわ。 527 00:42:48,440 --> 00:42:50,460 (鳴き声) 江戸の町に五鈴屋ののれんが→ 528 00:42:50,460 --> 00:42:52,480 翻るとこを見とうおます。 529 00:42:52,480 --> 00:42:54,480 江戸… 江戸!?