1 00:00:04,280 --> 00:00:10,000 (幸)主不在のため 女房が代わってお願い申し上げます。 2 00:00:10,000 --> 00:00:13,540 桔梗屋さんの買い上げに→ 3 00:00:13,540 --> 00:00:17,580 五鈴屋が 名乗りを 上げさせていただきとうございます。 4 00:00:17,580 --> 00:00:19,940 (真澄屋)何やて!? 5 00:00:19,940 --> 00:00:22,960 よろしゅうお頼申します。 6 00:00:22,960 --> 00:00:25,660 大きく出よって…! 7 00:00:25,660 --> 00:00:31,040 フン… 桔梗屋さんは 天満でも 指折りの老舗だっせ。→ 8 00:00:31,040 --> 00:00:33,740 店構えかて あんさんとこの 倍はあるわ。 9 00:00:33,740 --> 00:00:40,460 格下の分際で 買い上げるやなんて よう言えたもんやな!→ 10 00:00:40,460 --> 00:00:42,830 五鈴屋さんは どないなってますねん。 11 00:00:42,830 --> 00:00:48,890 店主のおらん隙に 女房の一存で 店一軒買う言うんか!? 12 00:00:48,890 --> 00:00:51,920 (智蔵)待っとくれやす! 13 00:00:51,920 --> 00:00:53,920 こちらだす! ああ…。 14 00:00:59,660 --> 00:01:04,710 女房が申し上げたことは 皆 わての考えでおます。 15 00:01:04,710 --> 00:01:08,410 何? 桔梗屋さんの商い→ 16 00:01:08,410 --> 00:01:11,440 継がせていただきとうございます! 17 00:01:11,440 --> 00:01:14,470 (桔梗屋孫六)うっ… 頼む…。 18 00:01:14,470 --> 00:01:16,500 頼む! 動いたらあかん! 19 00:01:16,500 --> 00:01:21,200 卒中風や。 何やて!? 20 00:01:21,200 --> 00:01:22,560 (周助)旦那さん! 旦那さん! 21 00:01:22,560 --> 00:01:28,620 <桔梗屋が病に倒れ 五鈴屋と真澄屋の どちらが店を買い上げるか→ 22 00:01:28,620 --> 00:01:33,330 その決着は持ち越しとなったのです> 23 00:01:33,330 --> 00:01:45,330 ・~ 24 00:01:49,160 --> 00:01:53,160 (鉄助)銀二十貫の手形でおます。 25 00:02:01,620 --> 00:02:03,970 確かに。 26 00:02:03,970 --> 00:02:07,000 いよいよだすな。 27 00:02:07,000 --> 00:02:12,380 うちと真澄屋はん どっちに 軍配が上がるか 勝負の日でおます。 28 00:02:12,380 --> 00:02:15,410 けど 真澄屋はんのことやさかい→ 29 00:02:15,410 --> 00:02:18,110 今日まで 手ぇこまねいてたとは 思えまへん。 30 00:02:18,110 --> 00:02:22,830 陰で こそこそ 天満の旦那衆に 何か 根回ししてはったようだっせ。 31 00:02:22,830 --> 00:02:25,180 (真澄屋)お願いしますわ…。 32 00:02:25,180 --> 00:02:28,550 (鉄助) 大坂三郷の呉服仲間が一つになったら→ 33 00:02:28,550 --> 00:02:36,290 何かと便宜図れまっせ~とか何とか言うて 触れ回ってはったようで…。 34 00:02:36,290 --> 00:02:39,320 ホンマに 油断のならんお人だす。 35 00:02:39,320 --> 00:02:40,670 買い上げが決まったら決まったで→ 36 00:02:40,670 --> 00:02:44,040 残金の工面やらで 苦労をかけることになるけど→ 37 00:02:44,040 --> 00:02:47,070 それは覚悟しといてな。 へえ! 38 00:02:47,070 --> 00:02:50,770 すんまへん わてが言いだしたことで…。 39 00:02:50,770 --> 00:02:53,460 はあ… 何言うてますんや。 40 00:02:53,460 --> 00:02:55,830 あの場で よう言うてくれたて 感心してますのや。 41 00:02:55,830 --> 00:02:59,530 (鉄助)お店が二軒になるのは 夢のような話だす。 42 00:02:59,530 --> 00:03:04,240 うれしい苦労は 苦労のうちに入りまへん。 フッ…。 43 00:03:04,240 --> 00:03:05,590 おおきに。 44 00:03:05,590 --> 00:03:09,630 桔梗屋さんのためにも 今日は一歩も引けまへん。 45 00:03:09,630 --> 00:03:12,660 ほな 出陣や。 46 00:03:12,660 --> 00:03:14,660 へえ! 47 00:03:18,370 --> 00:03:21,400 (入江屋)皆さん おそろいのところで→ 48 00:03:21,400 --> 00:03:25,110 昨年来 持ち越しの 桔梗屋さん 買い上げの件→ 49 00:03:25,110 --> 00:03:26,800 決めとう存じます。 50 00:03:26,800 --> 00:03:30,170 (松橋屋)まだ役者が そろてまへんで。 肝心のお人がいてまへん。 51 00:03:30,170 --> 00:03:33,530 真澄屋さんやったら 待っても現れまへん。 52 00:03:33,530 --> 00:03:37,580 えっ? (入江屋)最前 使いが来ましたんや。 53 00:03:37,580 --> 00:03:40,600 手付けの銀二十貫が戻るなら→ 54 00:03:40,600 --> 00:03:44,980 買い上げの話 反故にしてもええそうだす。 55 00:03:44,980 --> 00:03:48,350 (2人)えっ…? どないなっとんのや…。 56 00:03:48,350 --> 00:03:51,710 戦わずして逃げたいうことでおますか? 57 00:03:51,710 --> 00:03:55,080 まあ そないなとこだすやろ。 58 00:03:55,080 --> 00:03:57,780 ちょろちょろ 立ち回ってはったようだすけど→ 59 00:03:57,780 --> 00:04:04,850 天満の呉服仲間には 甘言に釣られる者は おらんかったいうことや。→ 60 00:04:04,850 --> 00:04:09,890 改めて 五鈴屋さんにお尋ねします。 61 00:04:09,890 --> 00:04:17,300 手付けの銀二十貫 真澄屋さんに払て 桔梗屋さんを買い上げる心積もりに→ 62 00:04:17,300 --> 00:04:18,650 変わりおまへんか? 63 00:04:18,650 --> 00:04:20,650 へえ! 64 00:04:24,710 --> 00:04:39,870 ・~ 65 00:04:39,870 --> 00:04:43,570 商いも奉公人も 皆 引き継がせていただき→ 66 00:04:43,570 --> 00:04:50,570 桔梗屋さんの名ぁと のれん守って 精進させていただく覚悟でござります。 67 00:04:56,350 --> 00:05:00,350 銀二十貫の手形に 相違おまへん。 68 00:05:05,450 --> 00:05:07,810 皆さんにお尋ねします。 69 00:05:07,810 --> 00:05:15,810 天満の呉服仲間として こたびの買い上げ 認めてもよろしおますやろか? 70 00:05:24,300 --> 00:05:31,710 ・~ 71 00:05:31,710 --> 00:05:33,740 (入江屋)決まりだすな! 72 00:05:33,740 --> 00:05:39,450 五鈴屋さん おめでとうさんでございます。 73 00:05:39,450 --> 00:05:43,840 (一同)おめでとうさんでございます。 74 00:05:43,840 --> 00:05:49,900 おおきに ありがとさんでございます。 75 00:05:49,900 --> 00:05:52,900 ありがとさんでございます。 76 00:05:54,950 --> 00:06:02,020 <開いて置かれた扇子は 天満の旦那衆の賛同を示すものでした。→ 77 00:06:02,020 --> 00:06:10,020 この日 満場一致で 五鈴屋の 桔梗屋買い上げが認められたのです> 78 00:06:16,150 --> 00:06:18,520 <八日は おととしの暮れに亡くなった→ 79 00:06:18,520 --> 00:06:21,520 富久の月命日です> 80 00:06:23,570 --> 00:06:25,590 ご寮さん。 81 00:06:25,590 --> 00:06:28,590 あっ 治兵衛さん! 82 00:06:34,000 --> 00:06:38,040 (治兵衛) 長いこと 手ぇ合わせてはりましたな。 83 00:06:38,040 --> 00:06:43,420 お家さんに聞いてほしいこと ぎょうさんあって。 84 00:06:43,420 --> 00:06:46,450 桔梗屋さんのことだすな。 85 00:06:46,450 --> 00:06:48,820 ご存じやったんだすか? 86 00:06:48,820 --> 00:06:55,820 旦那さんのお見舞いに 何べんか伺わせてもろてます。 87 00:06:57,570 --> 00:07:03,630 思い切った戦 しはりましたなあ。 フッ。 あっ…。 88 00:07:03,630 --> 00:07:10,020 敵陣から 桔梗屋さんを 奪い返さはったんは→ 89 00:07:10,020 --> 00:07:13,020 商いの大戦だす。 90 00:07:15,750 --> 00:07:23,490 迷わず名乗りを上げはったんは ええ策だした。 91 00:07:23,490 --> 00:07:26,190 浜羽二重で もうけが出たおかげだす。 92 00:07:26,190 --> 00:07:30,900 茂作さんにも 出羽で ぎょうさん売っていただいて。 93 00:07:30,900 --> 00:07:36,630 けど… まだ よう分からへんのだす。 94 00:07:36,630 --> 00:07:42,630 二軒の店 一つにまとめていくには どないしたらええのんか…。 95 00:07:48,400 --> 00:07:50,770 ご寮さん。 96 00:07:50,770 --> 00:07:56,500 あさって 桔梗屋の旦那さんから…→ 97 00:07:56,500 --> 00:07:59,500 ある申し出がおますやろ。 98 00:08:03,900 --> 00:08:06,930 迷わず 受けなはれや。 99 00:08:06,930 --> 00:08:10,630 申し出って どないなことだす? 100 00:08:10,630 --> 00:08:15,630 商いいうのは 時には酷なもんだす。 101 00:08:18,040 --> 00:08:24,040 主従の区別は はっきりさせなあきまへん。 102 00:08:27,130 --> 00:08:33,190 こたびの件では 買い上げる五鈴屋が主で→ 103 00:08:33,190 --> 00:08:38,240 買われる桔梗屋は従だす。 104 00:08:38,240 --> 00:08:44,300 主従のけじめつけて その上で…→ 105 00:08:44,300 --> 00:08:47,330 情け かけなはれ。 106 00:08:47,330 --> 00:08:50,030 情け? 107 00:08:50,030 --> 00:08:53,060 そろそろ行きまひょか。 108 00:08:53,060 --> 00:08:58,060 遅なると 女房が案じますわ。 109 00:09:01,470 --> 00:09:03,830 お代 ここ 置きますで。 110 00:09:03,830 --> 00:09:06,830 ・へえ。 おおきに! 111 00:09:10,570 --> 00:09:14,940 ・ 正一位稲荷大明神 112 00:09:14,940 --> 00:09:19,320 ・ お稲荷さんのことなら どこまでも 113 00:09:19,320 --> 00:09:25,040 ええ お天気だすな。 へえ。 さい先のええことで。 ハハハ。 114 00:09:25,040 --> 00:09:28,410 <桔梗屋と契約を結ぶ今日は→ 115 00:09:28,410 --> 00:09:33,410 物事を始めるのによいとされる 初午の日です> 116 00:09:35,140 --> 00:09:37,140 <ところが…> 117 00:09:49,280 --> 00:09:53,320 お待ち申しておりました。 118 00:09:53,320 --> 00:09:54,670 今日は よろしゅう頼んます。 119 00:09:54,670 --> 00:09:58,720 さあ… どうぞ 奥へ。 へえ。 120 00:09:58,720 --> 00:10:04,100 何や 様子がおかしおますな。 へえ…。 121 00:10:04,100 --> 00:10:16,220 ・~ 122 00:10:16,220 --> 00:10:18,920 <桔梗屋が提示した額は 相場よりも安く→ 123 00:10:18,920 --> 00:10:25,650 買い上げの手続きは 順調に進んでいきました> 124 00:10:25,650 --> 00:10:27,650 確かに。 125 00:10:31,710 --> 00:10:35,710 万事うまく調って 一安心でおます。 126 00:10:40,800 --> 00:10:44,840 買い上げるいうても 店の名ぁも のれんも変わりまへんよって→ 127 00:10:44,840 --> 00:10:47,840 皆 安心しておくれやす。 128 00:10:49,560 --> 00:10:52,920 あかん! 129 00:10:52,920 --> 00:10:57,640 桔梗屋の名ぁも… のれんも…→ 130 00:10:57,640 --> 00:11:01,000 もう使たら あきまへん。 131 00:11:01,000 --> 00:11:04,370 何言わはりますのや。 屋号も のれんも そのまま引き継ぐいう約束…。 132 00:11:04,370 --> 00:11:07,390 いいや! はあ…。 133 00:11:07,390 --> 00:11:13,450 桔梗屋ののれんは 外さなあきまへん! 134 00:11:13,450 --> 00:11:16,450 ぐっ… ううっ…。 135 00:11:20,190 --> 00:11:24,910 主に代わって 申し上げます。 136 00:11:24,910 --> 00:11:32,660 屋号も のれんも残るて聞いて 奉公人 皆 喜んでおりましたんや。 137 00:11:32,660 --> 00:11:40,060 これからも 桔梗屋のために働けるて。 138 00:11:40,060 --> 00:11:42,410 けど…。 139 00:11:42,410 --> 00:11:44,770 政七っとん 政七っとん! 何や? 140 00:11:44,770 --> 00:11:48,470 今までどおり 桔梗屋の奉公人として 働けるんやな。 141 00:11:48,470 --> 00:11:50,840 あ… ホンマに安堵したで。 ああ。 142 00:11:50,840 --> 00:11:54,200 格下の店の奉公人には なりとうないさかい。 143 00:11:54,200 --> 00:11:57,910 ホンマやな。 勘弁してほしいわ ホンマに。 恥ずかしいて奉公できんわ。 144 00:11:57,910 --> 00:11:59,930 やってられへん。 145 00:11:59,930 --> 00:12:05,650 (周助)旦那さんは これではあかんて 思わはったんだす。→ 146 00:12:05,650 --> 00:12:14,390 店主も奉公人も 心一つにして 同じ のれん背負ってこそ→ 147 00:12:14,390 --> 00:12:16,760 店は繁盛するのやて。 148 00:12:16,760 --> 00:12:21,470 せやから…→ 149 00:12:21,470 --> 00:12:26,530 桔梗屋の屋号も のれんも…→ 150 00:12:26,530 --> 00:12:31,530 なくしてしまおうて… 決めはったんだす。 151 00:12:34,940 --> 00:12:38,650 けど それは あんまりだす。 152 00:12:38,650 --> 00:12:41,000 天満から 桔梗屋ののれんが消えるやなんて…。 153 00:12:41,000 --> 00:12:50,420 ええねや。 桔梗の花は枯らしてしもて→ 154 00:12:50,420 --> 00:12:54,420 鈴になって長らえたら それでええ。 155 00:12:57,160 --> 00:13:00,870 桔梗屋の旦那さんから…→ 156 00:13:00,870 --> 00:13:03,870 ある申し出がおますやろ。 157 00:13:06,600 --> 00:13:10,600 迷わず 受けなはれや。 158 00:13:13,320 --> 00:13:16,320 このことやったんや…。 159 00:13:18,040 --> 00:13:22,040 屋号と のれん…。 160 00:13:24,770 --> 00:13:26,770 どないしたもんやろな? 161 00:13:30,490 --> 00:13:34,190 そんなら…。 162 00:13:34,190 --> 00:13:37,220 かまへん。 何でも言うてみなはれ。 163 00:13:37,220 --> 00:13:39,590 へえ。 この際…→ 164 00:13:39,590 --> 00:13:42,950 桔梗屋の旦那さんの仰せのとおり→ 165 00:13:42,950 --> 00:13:50,350 屋号も のれんも 五鈴屋に 改めさせてもろたら どないだすやろ? 166 00:13:50,350 --> 00:13:53,730 けど それは あんまり…。 167 00:13:53,730 --> 00:13:59,790 そのかわり お願いがございます。 168 00:13:59,790 --> 00:14:06,520 周助さんをはじめ 奉公人の皆さんが 五鈴屋を勤め上げて→ 169 00:14:06,520 --> 00:14:11,230 別家 立てはる時には→ 170 00:14:11,230 --> 00:14:13,260 桔梗屋さんの屋号と のれん→ 171 00:14:13,260 --> 00:14:17,260 引き継ぐことを お許しいただけまへんやろか? 172 00:14:21,000 --> 00:14:25,710 なるほど… その手がおましたな! 173 00:14:25,710 --> 00:14:31,440 どないだす? お聞き届けいただけますやろか? 174 00:14:31,440 --> 00:14:36,500 願ってもないことや…。 175 00:14:36,500 --> 00:14:41,880 おおきに… おおきに! 176 00:14:41,880 --> 00:14:46,250 おおきに… おおきに…。 177 00:14:46,250 --> 00:14:49,620 桔梗の花 いずれ また咲かせますさかい→ 178 00:14:49,620 --> 00:14:52,650 安心して養生しておくれやす。 179 00:14:52,650 --> 00:15:10,160 (すすり泣き) 180 00:15:10,160 --> 00:15:15,880 <この日から 桔梗屋は 五鈴屋高島店と名を変え→ 181 00:15:15,880 --> 00:15:23,620 孫六を親旦那さん 周助を高島店支配人と 呼ぶことが決まりました。→ 182 00:15:23,620 --> 00:15:29,350 そして 元の五鈴屋は 五鈴屋本店となり→ 183 00:15:29,350 --> 00:15:35,410 この機に 安吉と辰吉が手代に昇進。→ 184 00:15:35,410 --> 00:15:42,470 名を安七 辰七と改めたのです。→ 185 00:15:42,470 --> 00:15:47,530 高島店からは 丁稚が一人 本店に移ってきました> 186 00:15:47,530 --> 00:15:51,530 (佐七)これ 見世に持ってってんか。 へえ! 187 00:15:54,940 --> 00:15:58,640 ・(お梅)ええ匂いや。→ 188 00:15:58,640 --> 00:16:01,340 今日は アジの煮つけだすな! 189 00:16:01,340 --> 00:16:04,360 (お竹)ショウガも たっぷり入ってますで。 190 00:16:04,360 --> 00:16:08,070 おいしそうやなあ。 191 00:16:08,070 --> 00:16:14,810 お竹どん 高島店でも 一日と十五日には お膳に お魚つけてはるやろか? 192 00:16:14,810 --> 00:16:21,540 あ~ どやろな? お魚は 前のご寮さんが始めはったことやよって。 193 00:16:21,540 --> 00:16:26,250 わてな ひょっとしたら 旦那さんとご寮さん→ 194 00:16:26,250 --> 00:16:29,280 あっちに移らはるんやないかて 案じてたんだす。 195 00:16:29,280 --> 00:16:32,300 ああ…。 そないなったら わてらも→ 196 00:16:32,300 --> 00:16:34,330 お供せんならんのやないかて。 197 00:16:34,330 --> 00:16:41,740 無理や! この台所の寸法で 体動くようにできてますのやで。 198 00:16:41,740 --> 00:16:47,120 今更 よそに行って働けますかいなあ。 199 00:16:47,120 --> 00:16:49,830 (賢吉) 今日は お昼のお膳に お魚つきますで。 200 00:16:49,830 --> 00:16:55,540 ホンマだすか!? お祭りの日みたいだすな。 201 00:16:55,540 --> 00:17:00,250 よそ見したらあきまへん。 へえ! 202 00:17:00,250 --> 00:17:30,220 ・~ 203 00:17:30,220 --> 00:17:34,220 旦那さん… これを。 204 00:17:35,270 --> 00:17:40,320 これは 一旦 預からせてもらいますで。 205 00:17:40,320 --> 00:17:46,380 けど あんさんらが別家 立てる時には 元手銀と一緒に→ 206 00:17:46,380 --> 00:17:50,380 この のれん 引き継いでもらいますよってな。 207 00:17:50,770 --> 00:18:00,530 それまでは 本店も 高島店も 心一つにして 盛大 気張っておくれやす。 208 00:18:00,530 --> 00:18:02,530 (一同)へえ! 209 00:18:09,620 --> 00:18:11,970 (風の音) 210 00:18:11,970 --> 00:18:18,710  回想 (富久)五鈴屋を 百年続く店にしておくれやす。→ 211 00:18:18,710 --> 00:18:20,710 頼みますで。 212 00:18:23,080 --> 00:18:29,080 へえ。 お家さん… 必ず。 213 00:18:31,840 --> 00:18:37,220 (虫の声) (お勢)アハハ ええ声やなあ。 214 00:18:37,220 --> 00:18:39,590 早太郎 もう秋やで。 215 00:18:39,590 --> 00:18:41,940 (鳴き声) 216 00:18:41,940 --> 00:18:47,330 <五鈴屋が 二軒になってから半年ほどが過ぎて…> 217 00:18:47,330 --> 00:18:48,680 (鳴き声) 218 00:18:48,680 --> 00:18:54,390 堪忍しておくれやす! このとおりでおます! 219 00:18:54,390 --> 00:18:56,760 心一つに励むはずが 手代二人も辞めてしもて…。 220 00:18:56,760 --> 00:19:02,820 はあ… 何が不足で 暇取ったんだす? 221 00:19:02,820 --> 00:19:06,520 それが その…。 222 00:19:06,520 --> 00:19:12,240 来年から 五節季ごとに掛け取りするのが 嫌や言うて。 223 00:19:12,240 --> 00:19:16,960 何だすて!? ホンマは この秋からでも 五節季払いに変えたいところ→ 224 00:19:16,960 --> 00:19:19,980 先延ばししたいうのに! すんまへん! 225 00:19:19,980 --> 00:19:23,700 (せきばらい) 桔梗屋さんは新町郭や寺相手に→ 226 00:19:23,700 --> 00:19:26,730 高い品 売り買いしてはったよってに→ 227 00:19:26,730 --> 00:19:30,760 五鈴屋の地道な商い 侮ってはるんやおまへんか!? 228 00:19:30,760 --> 00:19:34,130 そないなことは決して…! ホンマ すまんことだす! 229 00:19:34,130 --> 00:19:39,850 まあまあ。 長いこと 年に一度の 大節気払いで やってきはったんや。 230 00:19:39,850 --> 00:19:44,230 ついてこられへんもんも おるやろ。 すんまへん。 231 00:19:44,230 --> 00:19:49,950 五節季払いは 品物が安う売れる上に 現銀が早う手元に入りますよって→ 232 00:19:49,950 --> 00:19:55,340 店の資金繰りが楽になるんだす。 へえ。 233 00:19:55,340 --> 00:19:59,370 至らんことばかりで…。 234 00:19:59,370 --> 00:20:05,440 せめて 高島店の商い 隅から隅まで よう見ていただけるよう→ 235 00:20:05,440 --> 00:20:09,140 こないなもん こしらえてみたんだすけど。 236 00:20:09,140 --> 00:20:15,540 年末までの売り上げと仕入れの目安 それと損益の見当も書いてあります。 237 00:20:15,540 --> 00:20:18,910 はあ~…。 238 00:20:18,910 --> 00:20:23,630 これは よう出来てますなあ。 どこと どれだけ取り引きあるか→ 239 00:20:23,630 --> 00:20:26,660 これなら 一目で分かりますわ。 ホンマやな。 240 00:20:26,660 --> 00:20:34,060 残り まだ よつきありますよって 少し上下するかもしれまへんけど…→ 241 00:20:34,060 --> 00:20:37,760 これが 今年一年の売り上げの見込みだす。 242 00:20:37,760 --> 00:20:42,140 えっ…! 銀四百貫…? へえ。 243 00:20:42,140 --> 00:20:44,840 大したもんやな。 244 00:20:44,840 --> 00:20:47,190 鉄助どん。 へえ。 245 00:20:47,190 --> 00:20:49,210 本店は今年の売り上げ なんぼになりますやろ? 246 00:20:49,210 --> 00:20:55,950 あ~ 今のところ… 去年より六十貫増えて 銀三百五十貫を見込んでおります。 247 00:20:55,950 --> 00:21:02,330 高島店が銀四百貫 本店が三百五十貫…。 248 00:21:02,330 --> 00:21:08,070 合わせて 銀七百五十貫や。 えらい額やな。 249 00:21:08,070 --> 00:21:12,440 何や ゾクッとして 肌 あわだってきたわ。 250 00:21:12,440 --> 00:21:17,830 けど こうしてみると 本店と高島店の 客筋が違うてるんが よう分かります。 251 00:21:17,830 --> 00:21:23,210 これなら 食い合うことはおまへんな。 はあ~ そやな。 252 00:21:23,210 --> 00:21:27,260 競い合わず 足りんとこは補っていけるのやさかい→ 253 00:21:27,260 --> 00:21:31,260 二軒の五鈴屋は ホンマに ええ組み合わせや。 254 00:21:35,330 --> 00:21:36,690 どないしたんや? 255 00:21:36,690 --> 00:21:39,720 まだ… 足りまへん。 えっ? 256 00:21:39,720 --> 00:21:45,770 足らん? 幸は なんぼの売り上げ望んでますのや? 257 00:21:45,770 --> 00:21:48,800 目安は…→ 258 00:21:48,800 --> 00:21:51,840 銀一千貫でおます。 259 00:21:51,840 --> 00:21:54,530 いや…! えっ…! 260 00:21:54,530 --> 00:22:07,530 ・~ 261 00:22:12,370 --> 00:22:16,080 一千貫て… そない大層な額を…。 262 00:22:16,080 --> 00:22:22,130 これから 二百五十貫 売り伸ばすのは たやすいことやありまへん! 263 00:22:22,130 --> 00:22:24,500 何で 一千貫を望まはるんだす? 264 00:22:24,500 --> 00:22:28,880 売り上げが 銀一千貫に届いたら→ 265 00:22:28,880 --> 00:22:31,570 江戸に店出したいて思てますのや。 266 00:22:31,570 --> 00:22:34,600 江戸… 江戸!? 267 00:22:34,600 --> 00:22:37,290 いきなり 何を言うてますのや。 268 00:22:37,290 --> 00:22:41,330 すんまへん。 けど 前から考えてたことでおます。 269 00:22:41,330 --> 00:22:45,710 もしや… 惣次兄さんの…? 270 00:22:45,710 --> 00:22:54,120 (惣次)わては 五年で 五鈴屋の新店を江戸に出す。 271 00:22:54,120 --> 00:22:57,490 この国で一番 呉服が売れるのは 江戸だす。 272 00:22:57,490 --> 00:23:02,200 けど わては 売り上げで 日本一になりたいのやおまへん。 273 00:23:02,200 --> 00:23:03,550 そんなら 何で? 274 00:23:03,550 --> 00:23:07,930 お家さんとの約束を果たすためだす。 275 00:23:07,930 --> 00:23:13,310 五鈴屋を 百年続く店にするためだす。 276 00:23:13,310 --> 00:23:16,340 なにも江戸まで出張らいでも→ 277 00:23:16,340 --> 00:23:21,060 この天神さんのお膝元で地道に商いして 店 守ってったらよろしいやないか。 278 00:23:21,060 --> 00:23:25,430 守てるだけではあきまへん。 えっ…? 279 00:23:25,430 --> 00:23:31,160 新しい手 次々に打っていかんことには 商いは いずれ細っていきますやろ。 280 00:23:31,160 --> 00:23:35,870 財と力のある店が こぞって 江戸店 出しはるのは そのためや思います。 281 00:23:35,870 --> 00:23:40,600 そういうたら あの真澄屋はんも 近々 江戸に出るて聞いてますわ。 282 00:23:40,600 --> 00:23:45,640 茂作さんの卸売りで 出羽にも お客さんができて→ 283 00:23:45,640 --> 00:23:50,350 留七っとんと伝七っとんは 西に売り広めてくれてます。 284 00:23:50,350 --> 00:23:54,390 この先 江戸にも ぎょうさんお得意さん作れたら→ 285 00:23:54,390 --> 00:23:58,440 五鈴屋は もっともっと 強うなれるのやおまへんか? 286 00:23:58,440 --> 00:24:02,140 何より わては→ 287 00:24:02,140 --> 00:24:06,170 江戸の町に五鈴屋ののれんが 翻るとこを見とうおます。 288 00:24:06,170 --> 00:24:10,220 江戸に 鈴の のれん… ええ眺めだすやろな! 289 00:24:10,220 --> 00:24:12,910 へえ! 290 00:24:12,910 --> 00:24:14,910 旦那さん…。 291 00:24:22,340 --> 00:24:26,340 いや… あきまへん。 292 00:24:28,400 --> 00:24:33,110 桔梗屋さんの買い上げで だいぶと無理もしたんだす。 293 00:24:33,110 --> 00:24:38,170 この上 江戸店 出すやなんて 身の丈に合わんことするもんやおまへん。 294 00:24:38,170 --> 00:24:42,170 けど…。 この話は もう しまいや。 295 00:24:44,220 --> 00:24:47,220 えっ… ちょっ 旦那さん? 296 00:24:55,340 --> 00:25:03,080 すすきや~ すすき~! 297 00:25:03,080 --> 00:25:06,780 すすきや~! 298 00:25:06,780 --> 00:25:09,140 ・すすき~! 299 00:25:09,140 --> 00:25:12,520 (お梅)旦那さんとご寮さん 仲たがいしはったんやろか? 300 00:25:12,520 --> 00:25:15,880 めったなこと言うもんやない。 301 00:25:15,880 --> 00:25:20,930 せやけど ここんとこ あんまり 口きいてはらへんで? 302 00:25:20,930 --> 00:25:24,960 お店二軒も抱えてはるんや。 303 00:25:24,960 --> 00:25:28,670 黙って考えんならんことが ぎょうさん おありやろ。 304 00:25:28,670 --> 00:25:31,360 そうやろか…。 305 00:25:31,360 --> 00:25:34,740 ・お竹どん お梅どん 今 戻ったで! あっ! 306 00:25:34,740 --> 00:25:40,120 (伝七)変わりないか? まあ まあ まあ! ようお戻りになって。 307 00:25:40,120 --> 00:25:44,840 はあ… 達者そうで何よりや。 308 00:25:44,840 --> 00:25:48,540 おお… 戻ったんか! 309 00:25:48,540 --> 00:25:50,540 (2人)いて参じました! 310 00:25:52,580 --> 00:25:55,940 一反も残さず売り切るとは えらいもんだすな。 311 00:25:55,940 --> 00:26:01,330 ええ! あとで帳面とつきあわせて 支払いしてもらいまひょな。 312 00:26:01,330 --> 00:26:05,710 2人とも 損のない商いして しっかり稼いでますのんか? 313 00:26:05,710 --> 00:26:08,060 へえ。 おかげはんで。 314 00:26:08,060 --> 00:26:10,080 背負い売りも二度目だすよって。 315 00:26:10,080 --> 00:26:13,450 風呂敷と この顔 覚えてくれはったお客さんもいてます。 316 00:26:13,450 --> 00:26:16,140 ああ もうお得意さんやな! 317 00:26:16,140 --> 00:26:18,490 (留七)紅屋のおかみさんのおかげで→ 318 00:26:18,490 --> 00:26:20,860 伊勢のお客さんには 大層ごひいきにあずかってます。 319 00:26:20,860 --> 00:26:24,570 五鈴屋の初代が 伊勢から大坂に出はったいう話 したら→ 320 00:26:24,570 --> 00:26:29,270 余計 かわいがってくれはって…。 (鉄助)おお…。 321 00:26:29,270 --> 00:26:33,990 わてら 背負い売り 続けさしていただきとうおます。 322 00:26:33,990 --> 00:26:37,990 また反物 お貸しいただけますやろか? 323 00:26:41,740 --> 00:26:46,440 ん? え… 旦那さん?→ 324 00:26:46,440 --> 00:26:48,810 旦那さん! ん? 325 00:26:48,810 --> 00:26:51,840 ああ もちろんや! 326 00:26:51,840 --> 00:26:55,540 あんさんらのおかげで 五鈴屋の名が遠くまで広がりますわ。 327 00:26:55,540 --> 00:26:58,570 うん! おおきにな。 328 00:26:58,570 --> 00:27:00,570 (2人)へえ! 329 00:27:04,630 --> 00:27:07,630 <その夜のことでした> 330 00:27:18,770 --> 00:27:21,770 ええ お月さんだすな。 331 00:27:33,240 --> 00:27:37,290 幸。 332 00:27:37,290 --> 00:27:39,650 ちょっと ここ お座り。 333 00:27:39,650 --> 00:27:41,650 へえ。 334 00:27:50,410 --> 00:27:58,410 わてな お家さんから 大事なものを二つ 受け継ぎましたやろ。 335 00:28:00,530 --> 00:28:05,530 幸と… この五鈴屋と。 336 00:28:09,950 --> 00:28:12,650 商いの才のない男やけど→ 337 00:28:12,650 --> 00:28:17,650 一つだけ 心に決めてたことがおます。 338 00:28:21,390 --> 00:28:24,420 どないなことがあったかて→ 339 00:28:24,420 --> 00:28:29,420 わての代で 五鈴屋の身代 傾けたらあかんて。 340 00:28:33,180 --> 00:28:39,180 そやから… 恐ろしおますのや。 341 00:28:41,600 --> 00:28:50,010 江戸に出て もしも のれん 下ろさんならんことになったら…→ 342 00:28:50,010 --> 00:28:52,010 どないしようて。 343 00:28:55,740 --> 00:29:01,740 けど… それは心得違いやった。 344 00:29:07,520 --> 00:29:10,890 五鈴屋は…→ 345 00:29:10,890 --> 00:29:16,620 初代が 伊勢から大坂に出て 古手売りから始めた店や。 346 00:29:16,620 --> 00:29:23,620 知らん土地に打って出て 勝負してきたんや。 347 00:29:27,050 --> 00:29:30,080 幸も知ってますやろ? 348 00:29:30,080 --> 00:29:35,810 五鈴屋の屋号と のれんの色は 伊勢の五十鈴川から頂いたものやて。 349 00:29:35,810 --> 00:29:37,810 へえ。 350 00:29:41,190 --> 00:29:42,540 (ため息) 351 00:29:42,540 --> 00:29:45,910 どこへ 店 出したかて→ 352 00:29:45,910 --> 00:29:51,290 お伊勢さんに恥じへん まっとうな商いしてたら→ 353 00:29:51,290 --> 00:29:54,290 道 間違うことはおまへんな。 354 00:29:58,700 --> 00:30:05,090 わて… 腹決めましたで。 355 00:30:05,090 --> 00:30:09,130 銀一千貫の売り上げが立ったら…→ 356 00:30:09,130 --> 00:30:11,130 江戸に店出します。 357 00:30:14,180 --> 00:30:15,540 旦那さん…。 358 00:30:15,540 --> 00:30:22,540 二つの五鈴屋が力合わせて 鈴の のれん 江戸に掲げまひょ。 359 00:30:25,640 --> 00:30:30,340 まずは 一千貫の売り上げやな。 360 00:30:30,340 --> 00:30:32,340 へえ! 361 00:30:34,050 --> 00:30:38,100 ホンマに 幸には びっくりさせられてばっかりだすわ。 362 00:30:38,100 --> 00:30:41,800 フフッ… すんまへん。 363 00:30:41,800 --> 00:30:43,820 はあ…。 364 00:30:43,820 --> 00:30:54,600 ・~ 365 00:30:54,600 --> 00:31:00,650 もう知ってるやろけどな…→ 366 00:31:00,650 --> 00:31:05,710 わては心底 幸に惚れてますのや。 367 00:31:05,710 --> 00:31:08,710 フフ… 旦那さん…。 368 00:31:12,100 --> 00:31:14,450 あっ。 369 00:31:14,450 --> 00:31:29,270 ・~ 370 00:31:29,270 --> 00:31:34,990 (雷鳴) 371 00:31:34,990 --> 00:31:41,390 <知らせが届いたのは 十一月九日の未明のことでした> 372 00:31:41,390 --> 00:31:45,770 津門村の彦太夫さんから飛脚だす。 373 00:31:45,770 --> 00:31:47,770 わざわざ 飛脚て…。 374 00:31:56,880 --> 00:32:00,880 幸…。 ・(雷鳴) 375 00:32:03,280 --> 00:32:06,980 すぐに 津門村にたちますで。 376 00:32:06,980 --> 00:32:11,690 お竹どん 幸の支度 手伝うたって。 へえ。 377 00:32:11,690 --> 00:32:18,090 <彦太夫からの文は 母の急死を知らせるものでした> 378 00:32:18,090 --> 00:32:28,190 ・~ 379 00:32:28,190 --> 00:32:31,190 結! (結)姉さん…。 380 00:32:34,930 --> 00:32:37,960 姉さん…。 381 00:32:37,960 --> 00:32:41,320 母さんが…。 382 00:32:41,320 --> 00:32:49,320 (泣き声) 383 00:32:51,420 --> 00:32:56,820 (彦太夫)これ… 僅かやけど 形見の品や。 384 00:32:56,820 --> 00:32:59,820 ありがとさんでございます。 385 00:33:05,580 --> 00:33:11,290 あとは この子のことやな。→ 386 00:33:11,290 --> 00:33:17,340 小さい頃から うちにおったさかい 娘のようなもんや。 387 00:33:17,340 --> 00:33:21,390 このまま うちで働いてもろてもかまへん。 388 00:33:21,390 --> 00:33:25,090 長々なお世話 ホンマにありがたいて思てます。 389 00:33:25,090 --> 00:33:29,820 けど… 女房の たった一人の身内だすさかい→ 390 00:33:29,820 --> 00:33:34,530 引き取って うちで世話しよう思てます。 391 00:33:34,530 --> 00:33:36,880 そうか…。→ 392 00:33:36,880 --> 00:33:42,260 惜しいけども まあ しゃあない。 393 00:33:42,260 --> 00:33:45,970 よろしゅう頼みます。 394 00:33:45,970 --> 00:33:49,330 へえ。 395 00:33:49,330 --> 00:33:54,330 ほんなら 明日 天満に連れて帰ります。 396 00:34:26,370 --> 00:34:36,470 ・~ 397 00:34:36,470 --> 00:34:37,820 母さん…。 398 00:34:37,820 --> 00:34:52,980 ・~ 399 00:34:52,980 --> 00:34:59,360 (すすり泣き) 400 00:34:59,360 --> 00:35:18,570 ・~ 401 00:35:18,570 --> 00:35:20,590 ただいま戻りました。 402 00:35:20,590 --> 00:35:25,970 あっ 旦那さん ご寮さん お帰りやす。 403 00:35:25,970 --> 00:35:29,340 ご苦労はんだす。 404 00:35:29,340 --> 00:35:34,380 あ…。 あっ 幸の妹の結や。 405 00:35:34,380 --> 00:35:37,410 賢吉と申します。 406 00:35:37,410 --> 00:35:39,410 結と申します。 407 00:35:41,120 --> 00:35:45,160 離れ使うていただけるように してあります。 408 00:35:45,160 --> 00:35:48,530 旦那さんとご寮さんのものも 半分残ってますけど…。 409 00:35:48,530 --> 00:35:52,530 おおきに。 おいおい 母屋に移しますわ。 へえ。 410 00:35:54,590 --> 00:35:57,590 さあ こちらだす。 411 00:36:08,390 --> 00:36:10,390 お着替えは こちらに。 412 00:36:13,440 --> 00:36:17,150 荷物解くの手伝いまひょか? あっ ええんだす。 413 00:36:17,150 --> 00:36:19,840 あとは わてが やりますよって。 414 00:36:19,840 --> 00:36:22,840 ほな お茶いれてまいります。 おおきに。 415 00:36:28,250 --> 00:36:31,970 なんて立派な部屋やろか…。 416 00:36:31,970 --> 00:36:36,330 こんな部屋で暮らすやなんて 罰当たるわ。 417 00:36:36,330 --> 00:36:39,360 あ… 何言うてるの。 418 00:36:39,360 --> 00:36:44,360 母屋より離れの方が いくらか伸び伸びできるやろ。 419 00:36:49,140 --> 00:36:52,840 これ… 紬やんね? 420 00:36:52,840 --> 00:36:58,230 お家さんから頂いて わてが ずっと着てたもんだす。 421 00:36:58,230 --> 00:37:01,230 結に似合いそうや思て。 422 00:37:07,310 --> 00:37:12,310 絹の着物なんて… 初めてや。 423 00:37:14,720 --> 00:37:21,720 絹の着物… 母さん 一枚も持ってへんかった。 424 00:37:25,160 --> 00:37:30,210 まだ信じられへんの。 425 00:37:30,210 --> 00:37:35,210 母さん… もう どこにもいてへんのやね…。 426 00:37:41,320 --> 00:37:47,380 <突然の別れと あまりに大きな境遇の変化。→ 427 00:37:47,380 --> 00:37:54,380 妹が ここでやっていけるのか 幸は ふと 不安を覚えたのです> 428 00:38:00,170 --> 00:38:03,550 <新年に奉公人に渡す お仕着せを縫うのは→ 429 00:38:03,550 --> 00:38:08,550 幸が 富久から受け継いだ 大事な役目でした> 430 00:38:11,280 --> 00:38:18,020 ご寮さん よろしおますか? へえ。 何だす? 431 00:38:18,020 --> 00:38:21,050 結さんのことなんだすけど…。 432 00:38:21,050 --> 00:38:23,050 結が何か? 433 00:38:27,790 --> 00:38:31,500 これ 見とくなはれ。 434 00:38:31,500 --> 00:38:34,530 お守り袋? 435 00:38:34,530 --> 00:38:40,240 着物 少し直しましたやろ? その時に出た はぎれ使て→ 436 00:38:40,240 --> 00:38:45,640 結さんが縫うたんだす。 あ… かいらしい。 437 00:38:45,640 --> 00:38:51,350 ご寮さん 結さんに はぎれ お渡しして→ 438 00:38:51,350 --> 00:38:55,740 何なと好きなもん作ってもろたら どないだすやろ? 439 00:38:55,740 --> 00:39:01,790 縫いもんしてたら 少しは気ぃも紛れますやろ。 440 00:39:01,790 --> 00:39:06,170 時々 目ぇ赤うしてはるんだす。 441 00:39:06,170 --> 00:39:11,900 泣いたん気付かれんようにしてはるんが 何や いじらしいて…。 442 00:39:11,900 --> 00:39:15,260 お竹どん… おおきに。 443 00:39:15,260 --> 00:39:17,950 やめとくなはれ! 444 00:39:17,950 --> 00:39:22,330 ご寮さんが 女衆に気安うに 頭下げるもんやありまへん! 445 00:39:22,330 --> 00:39:24,700 へえ… すんまへん。 あっ。 446 00:39:24,700 --> 00:39:29,070 フフフ… すんまへん。 447 00:39:29,070 --> 00:39:31,070 フフフ…。 448 00:39:35,800 --> 00:39:41,860 結ちゃん すまんな 店忙しいて ほったらかしにしてしもて。 449 00:39:41,860 --> 00:39:45,230 年明けたら 浄瑠璃にでも行きまひょな。 450 00:39:45,230 --> 00:39:48,250 へえ…。 451 00:39:48,250 --> 00:39:51,630 おおきに。 すんまへん。 また そないなこと。 452 00:39:51,630 --> 00:39:56,630 女衆に遠慮したらあきまへん。 へえ…。 453 00:40:05,420 --> 00:40:11,150 結。 ほったらかしのおわびに 渡すものがおますのや。 454 00:40:11,150 --> 00:40:13,150 何? 455 00:40:14,520 --> 00:40:16,520 開けてごらん。 456 00:40:23,270 --> 00:40:25,640 それで 好きなもん作ってええよ。 457 00:40:25,640 --> 00:40:30,680 ホンマに? 皆 結のやで。 458 00:40:30,680 --> 00:40:33,710 ああ… うれしいわ! 459 00:40:33,710 --> 00:40:38,090 おおきに おおきに! 460 00:40:38,090 --> 00:40:42,800 結ちゃんには 小物作りの才がおますのやな。 461 00:40:42,800 --> 00:40:45,800 ほな 頂きまひょ。 462 00:40:51,890 --> 00:40:53,890 うっ…。 463 00:40:55,260 --> 00:40:56,610 すんまへん。 464 00:40:56,610 --> 00:40:58,970 (倒れる音) ご寮さん! 465 00:40:58,970 --> 00:41:01,320 ご寮さん! 幸 どないしたんや? 466 00:41:01,320 --> 00:41:05,360 姉さん? あかん… 医者や! 道善先生を早う! 467 00:41:05,360 --> 00:41:06,710 へえ! 468 00:41:06,710 --> 00:41:20,170 ・~ 469 00:41:20,170 --> 00:41:23,200 先生… どないだす? 470 00:41:23,200 --> 00:41:26,910 ああ…。 471 00:41:26,910 --> 00:41:34,310 今日は わしの出番やないようや。 472 00:41:34,310 --> 00:41:37,010 えっ? 473 00:41:37,010 --> 00:41:40,720 ご寮さん…→ 474 00:41:40,720 --> 00:41:44,080 おめでたや~。 475 00:41:44,080 --> 00:41:48,800 えっ? (道善)ああ。 ええっ!? 476 00:41:48,800 --> 00:41:53,170 ああっ… あっ…! すぐに産婆さん 呼んできます! 477 00:41:53,170 --> 00:41:58,900 ハハハ…。 478 00:41:58,900 --> 00:42:04,950 あ… 幸… やや子やて。 479 00:42:04,950 --> 00:42:07,310 わてらの子やて。 480 00:42:07,310 --> 00:42:08,660 へえ…。 481 00:42:08,660 --> 00:42:11,020 姉さん…。 482 00:42:11,020 --> 00:42:14,730 幸…。 あ… フフッ。 483 00:42:14,730 --> 00:42:19,430 幸 大事にせなあきまへんで。 484 00:42:19,430 --> 00:42:21,430 へえ! 485 00:42:24,150 --> 00:42:27,180 <別ればかり続いていた五鈴屋に→ 486 00:42:27,180 --> 00:42:32,180 新しい命が誕生することになったのです> 487 00:42:35,770 --> 00:42:38,790 ご寮さん… ご寮さん! 488 00:42:38,790 --> 00:42:42,830 今度ばかりは してやられましたなあ…。 えっ…? 489 00:42:42,830 --> 00:42:45,200 五鈴屋は 帯の真澄屋の 二番煎じやないかて→ 490 00:42:45,200 --> 00:42:47,220 笑われてしもたんだす。 むごいわ。 491 00:42:47,220 --> 00:42:51,260 あ~ もう! 姉さんは 何でも手に入れてしまうんやね。 492 00:42:51,260 --> 00:42:54,260 2人で一緒に 江戸に行きまひょな。