1 00:00:02,169 --> 00:00:05,297 (天久鷹央(あめく たかお)) それから 数日が過ぎました 2 00:00:05,381 --> 00:00:06,841 お母さんは 静かに— 3 00:00:06,924 --> 00:00:08,676 ベッドに 横たわっています 4 00:00:09,260 --> 00:00:12,513 女の子は お母さんの手を握りました 5 00:00:12,596 --> 00:00:15,266 “ありがとうございます 神様” 6 00:00:15,641 --> 00:00:19,478 お母さんのもとに 天使様が現れました 7 00:00:19,729 --> 00:00:22,481 “さあ 旅立ちのときです” 8 00:00:22,565 --> 00:00:25,234 天使様が手を差し伸べます 9 00:00:25,735 --> 00:00:28,779 お母さんは その手を取りました 10 00:00:29,155 --> 00:00:33,075 天使様に導かれ 幸せそうにほほえみ— 11 00:00:33,159 --> 00:00:36,871 お母さんは 天国へ昇っていきました 12 00:00:37,663 --> 00:00:39,081 (鷹央)おしまい 13 00:00:39,623 --> 00:00:42,209 (三木健太(みき けんた)) 子どもの先生も天使だよね? 14 00:00:42,460 --> 00:00:43,461 え? 15 00:00:43,544 --> 00:00:46,922 (健太)病気を治して 僕を助けてくれるんだもん 16 00:01:00,603 --> 00:01:07,610 ♪~ 17 00:02:22,142 --> 00:02:29,149 ~♪ 18 00:02:33,279 --> 00:02:35,239 (熊川(くまかわ)大二郎) この心電図を見ると— 19 00:02:35,322 --> 00:02:38,951 淳(あつし)君は昨夜 間違いなく心停止をしている 20 00:02:39,034 --> 00:02:41,787 そして すぐ 心臓マッサージを開始して— 21 00:02:41,871 --> 00:02:44,832 その後 心拍が再開したことが 分かります 22 00:02:45,124 --> 00:02:46,792 (山田(やまだ))いったい何が… 23 00:02:46,876 --> 00:02:50,504 淳君は 心停止を起こすような 病状なんかじゃなかったんです 24 00:02:51,338 --> 00:02:53,257 (鷹央)そのとおりだ (熊川たち)あっ 25 00:02:53,340 --> 00:02:55,301 (鷹央)まさか こんなミスを犯すなんて— 26 00:02:55,384 --> 00:02:57,761 正直 想像していなかったよ 27 00:02:58,178 --> 00:02:59,597 (小鳥遊 優(たかなし ゆう))鷹央先生 28 00:02:59,680 --> 00:03:02,224 (鷹央)今回の件は 私の責任だ 29 00:03:02,308 --> 00:03:03,475 (小鳥遊たち)え? 30 00:03:03,559 --> 00:03:04,727 どういうことだ? 31 00:03:04,977 --> 00:03:07,730 大丈夫 これは そんな大ごとじゃない 32 00:03:07,980 --> 00:03:09,440 (山田)大ごとじゃない? 33 00:03:09,523 --> 00:03:11,442 患者が心停止してるんだぞ! 34 00:03:11,734 --> 00:03:14,778 心停止したのは 単にミスしたからだ 35 00:03:14,862 --> 00:03:16,739 私じゃなく犯人がな 36 00:03:16,822 --> 00:03:18,866 (小鳥遊) やっぱり犯人がいるんですか? 37 00:03:19,074 --> 00:03:20,826 ああ もちろんだ 38 00:03:20,910 --> 00:03:22,453 昨日の件だけじゃなく— 39 00:03:22,536 --> 00:03:25,414 これまでの3人の急変 そして天使も— 40 00:03:25,497 --> 00:03:27,124 同じ犯人がやったことだ 41 00:03:27,207 --> 00:03:29,835 (小鳥遊)えっ! (鴻ノ池 舞(こうのいけ まい))えっ 天使の件もですか? 42 00:03:29,919 --> 00:03:32,880 (熊川)鷹(たか)ちゃん その犯人っていうのは誰なんだ? 43 00:03:32,963 --> 00:03:34,214 (鷹央)ハァ… 44 00:03:35,466 --> 00:03:39,136 このナゾ 私が診断してやる 45 00:03:40,679 --> 00:03:45,225 (冬本(ふゆもと) 淳たちの話し声) 46 00:03:45,309 --> 00:03:46,393 (淳たち)ん? 47 00:03:46,602 --> 00:03:48,771 (淳)な… 何だよ 急に 48 00:03:50,105 --> 00:03:52,066 (鷹央)退院だ (3人)えっ 49 00:03:52,149 --> 00:03:55,486 (熊川・舞・小鳥遊)えっ? (鷹央)お前たちは3人とも治っている 50 00:03:55,986 --> 00:03:59,156 (鷹央)そうだな いろいろ準備もあるだろうから— 51 00:03:59,239 --> 00:04:00,407 あしたでいいだろう 52 00:04:00,491 --> 00:04:01,951 (淳)おい ちょっと待てよ 53 00:04:02,034 --> 00:04:04,161 俺 昨日 心臓止まったんだぞ 54 00:04:04,536 --> 00:04:08,749 (小鳥遊)鷹央先生 いくら何でも淳君まで退院なんて 55 00:04:08,832 --> 00:04:11,085 (鷹央)こいつらは もう急変なんてしない 56 00:04:11,168 --> 00:04:12,753 家に帰れば安全だ 57 00:04:12,836 --> 00:04:14,421 (熊川)鷹ちゃん さすがに説明を… 58 00:04:14,505 --> 00:04:17,049 いいから 退院ったら退院なんだよ! 59 00:04:17,341 --> 00:04:19,301 私は この病院の副院長だ 60 00:04:19,385 --> 00:04:22,054 私が退院させると言ったら 退院するんだ 61 00:04:24,515 --> 00:04:26,183 (引き戸が閉まる音) 62 00:04:26,266 --> 00:04:27,935 何なんだよ 63 00:04:41,156 --> 00:04:42,783 鷹央先生 64 00:04:55,421 --> 00:04:57,756 (看護師A)私は 点滴交換してくるので— 65 00:04:57,840 --> 00:05:01,468 706号室と705号室の配膳 お願いしますね 66 00:05:01,552 --> 00:05:02,761 (看護師B)はい 67 00:05:18,110 --> 00:05:21,113 (鷹央)きっと この時間に来ると思っていた 68 00:05:22,489 --> 00:05:25,492 この時間なら スタッフステーションが 空になりやすいし 69 00:05:25,576 --> 00:05:27,327 (舞)えっ? (鷹央)夜まで待ってたら— 70 00:05:27,411 --> 00:05:29,872 間に合わない可能性があるからな 71 00:05:30,122 --> 00:05:32,499 まさか… どうして? 72 00:05:33,375 --> 00:05:39,131 (鷹央)この病棟で急変を繰り返させ そのうえ 天使を作り出した犯人 73 00:05:39,214 --> 00:05:42,134 こいつが すべての事件の首謀者 74 00:05:43,010 --> 00:05:44,845 冬本淳だ 75 00:05:46,138 --> 00:05:48,015 (舞)ちょっと待ってください 76 00:05:48,223 --> 00:05:50,059 淳君たちが急変したのは— 77 00:05:50,142 --> 00:05:52,561 自分たちで わざとやったってことですか? 78 00:05:52,644 --> 00:05:56,231 (鷹央)ああ 関原勝次(せきはら かつじ) 作田雄一(さくた ゆういち) 79 00:05:56,607 --> 00:05:59,193 2人は こいつの共犯者だ 80 00:05:59,276 --> 00:06:01,820 (舞)でも どうやって そんなことを? 81 00:06:01,904 --> 00:06:04,698 淳君は心停止までしたんですよ 82 00:06:05,199 --> 00:06:07,367 さっき盗もうとした これだ 83 00:06:07,868 --> 00:06:12,456 アデノシン三リン酸 通称 ATPの注射液だよ 84 00:06:13,040 --> 00:06:17,669 点滴に混ぜて ゆっくり投与すれば めまいなどに効果のある薬だが— 85 00:06:18,087 --> 00:06:20,547 もう一つ 特殊な効果がある 86 00:06:20,631 --> 00:06:22,132 (舞)もう一つ? 87 00:06:22,216 --> 00:06:25,803 僅かなあいだ 心臓の動きが完全に静止するんだ 88 00:06:25,886 --> 00:06:27,054 (小鳥遊・熊川)あっ! 89 00:06:27,262 --> 00:06:31,225 発作性上室頻拍に対する 急速静注ですね 90 00:06:31,308 --> 00:06:32,476 ああ 91 00:06:32,559 --> 00:06:36,146 不整脈に静脈注射する治療法として 知られている 92 00:06:36,230 --> 00:06:40,651 心臓が静止って… そんなことして大丈夫なんですか? 93 00:06:40,943 --> 00:06:42,236 (鷹央)大丈夫だよ 94 00:06:42,319 --> 00:06:45,906 基本的に安全性は 極めて高いとされている薬だ 95 00:06:46,115 --> 00:06:49,618 (舞)けど 数秒でも 心臓 止まるんですよね? 96 00:06:49,701 --> 00:06:51,912 (鷹央)ああ 安全ではあるが— 97 00:06:51,995 --> 00:06:55,916 強い胸部の不快感があって 嘔吐(おうと)する場合も少なくない 98 00:06:56,333 --> 00:06:58,585 ぜんそくの既往がある患者なら— 99 00:06:58,669 --> 00:07:01,922 ぜんそく発作のような状態を 引き起こすこともある 100 00:07:02,005 --> 00:07:03,924 ハッ それって… 101 00:07:04,258 --> 00:07:05,384 そうだ 102 00:07:05,467 --> 00:07:09,012 この3人に起きた症状 それは すべて— 103 00:07:09,096 --> 00:07:12,975 アデノシン三リン酸の 急速投与によって説明できる 104 00:07:14,184 --> 00:07:18,480 冬本淳は WPW症候群で入院していた 105 00:07:18,730 --> 00:07:22,651 これまで頻繁に 発作性上室頻拍を起こしていたはずだ 106 00:07:23,193 --> 00:07:24,695 そして たびたび— 107 00:07:24,778 --> 00:07:28,407 アデノシン三リン酸の 急速静注を受けていた 108 00:07:29,700 --> 00:07:31,493 だから知っていたんだ 109 00:07:31,577 --> 00:07:33,745 これを一気に注射することで— 110 00:07:33,829 --> 00:07:38,000 危険なく急変したように 見せかけることができるってな 111 00:07:39,501 --> 00:07:41,336 (熊川)ちょっと待ってくれ 112 00:07:41,420 --> 00:07:45,632 昨日の淳君が起こした心停止は 数秒なんてもんじゃない 113 00:07:45,716 --> 00:07:49,553 20秒以上は心臓の動きが 完全に止まっていたんだぞ 114 00:07:49,761 --> 00:07:52,181 ああ それがミスだったんだ 115 00:07:52,264 --> 00:07:54,558 (熊川)ミス? いったい何の? 116 00:07:55,058 --> 00:07:58,896 (鷹央)昨日の夜 冬本淳は ナースコールをしたあと— 117 00:07:58,979 --> 00:08:03,317 シリンジに入れて用意しておいた アデノシン三リン酸の注射液を— 118 00:08:03,734 --> 00:08:06,945 点滴ラインの側管から 一気に注入した 119 00:08:07,362 --> 00:08:10,991 使ったシリンジは 共犯の2人が処分したんだろう 120 00:08:11,575 --> 00:08:14,912 そうして 一時的に心停止した冬本淳は— 121 00:08:14,995 --> 00:08:17,080 計画どおり倒れた 122 00:08:17,456 --> 00:08:22,294 けれど こいつは注射するべき薬を 取り違えていたんだ 123 00:08:22,669 --> 00:08:25,172 こいつが昨日 自分に投与した薬は— 124 00:08:25,255 --> 00:08:26,381 こっちだった 125 00:08:26,965 --> 00:08:29,384 同じアデノシン三リン酸だが— 126 00:08:29,468 --> 00:08:32,304 もう一つのアンプルとは 違いがある 127 00:08:32,554 --> 00:08:34,139 それは濃度だ 128 00:08:34,598 --> 00:08:36,266 これまで その3人は— 129 00:08:36,350 --> 00:08:40,020 通常使う10ミリグラムを 自分たちに打っていた 130 00:08:40,354 --> 00:08:43,899 けれど 昨日は間違えて 40ミリグラム— 131 00:08:43,982 --> 00:08:46,902 つまり 通常の4倍量が 投与されたんだ 132 00:08:46,985 --> 00:08:48,111 (舞)えっ! (小鳥遊)4倍? 133 00:08:48,195 --> 00:08:49,613 (熊川)なるほど 134 00:08:49,696 --> 00:08:53,033 当然 それだけ長く心停止が起きた 135 00:08:53,242 --> 00:08:55,285 まっ あと数秒 待っていれば— 136 00:08:55,369 --> 00:08:58,622 心拍が再開して 意識が戻っただろうけどな 137 00:08:59,623 --> 00:09:03,335 淳君 今までの話は本当かい? 138 00:09:05,629 --> 00:09:08,131 (舞)それじゃあ 天使は? 139 00:09:08,632 --> 00:09:11,927 おい お前 もう全部バレてるんだ 140 00:09:12,010 --> 00:09:14,972 そろそろ種明かしをしても いい頃だろ 141 00:09:15,847 --> 00:09:17,432 分かったよ 142 00:09:28,235 --> 00:09:31,280 (鷹央)それが 天使の正体だ 143 00:09:31,363 --> 00:09:34,241 (舞)懐中電灯と紙コップ? 144 00:09:34,324 --> 00:09:36,618 (鷹央)隣の病室から 絵本が盗まれて— 145 00:09:36,702 --> 00:09:39,579 バラバラに切り刻まれた ってことがあったんだろ? 146 00:09:40,122 --> 00:09:44,793 お前たちが疑っていたとおり その犯人は こいつらだったんだ 147 00:09:47,129 --> 00:09:48,213 (舞・小鳥遊)あっ 148 00:09:49,965 --> 00:09:52,801 (鷹央)これが 今回の事件の真相だ 149 00:09:53,593 --> 00:09:54,845 (スイッチを切る音) 150 00:09:56,805 --> 00:10:01,518 (熊川)だけど鷹ちゃん どうして淳君たちは こんなことを? 151 00:10:02,019 --> 00:10:06,106 (鷹央)こいつらは 自分たちに 薬を打って心臓を止めてでも— 152 00:10:06,189 --> 00:10:10,110 退院を引き延ばして 天使を見せないといけなかったんだ 153 00:10:11,320 --> 00:10:12,696 健太にな 154 00:10:13,405 --> 00:10:16,450 (舞)わざわざ健太君に いやがらせするために? 155 00:10:16,658 --> 00:10:19,536 (鷹央)違う いやがらせじゃない 156 00:10:20,203 --> 00:10:22,497 これは 贖罪(しょくざい)だ 157 00:10:22,581 --> 00:10:23,874 くっ… 158 00:10:24,708 --> 00:10:26,209 (小鳥遊)贖罪? 159 00:10:26,501 --> 00:10:28,879 (鷹央)こいつらは 2週間ほど前に— 160 00:10:28,962 --> 00:10:32,049 健太の髪の毛がないことを からかった 161 00:10:32,132 --> 00:10:34,968 それが何を意味するかも知らず 162 00:10:35,469 --> 00:10:39,389 おそらく あとから誰かが こいつらに教えたんだろう 163 00:10:39,598 --> 00:10:44,227 あの頭が白血病と必死に闘ってきた 結果だってことを 164 00:10:44,686 --> 00:10:49,149 そして 健太に残された時間が 少ないことをな 165 00:10:50,400 --> 00:10:52,277 説明を聞いて— 166 00:10:52,361 --> 00:10:56,239 ようやく自分たちが どれだけ ひどいことをしたかに気付いた 167 00:10:56,323 --> 00:10:59,451 そして 贖罪しようと決めたんだ 168 00:11:00,202 --> 00:11:03,330 健太は天使が 自分を守ってくれると— 169 00:11:03,413 --> 00:11:04,915 そして いつかは— 170 00:11:04,998 --> 00:11:08,168 天国へ連れていってくれると 信じていた 171 00:11:09,211 --> 00:11:11,838 だから この3人は 絵本を盗み出し— 172 00:11:12,214 --> 00:11:16,259 天使を切り取って 懐中電灯で照らし出すことで— 173 00:11:16,343 --> 00:11:20,389 健太の病室に天使を出現させた 174 00:11:22,724 --> 00:11:26,770 (熊川)今 天久先生が言ったことは 本当なのかい? 175 00:11:26,978 --> 00:11:31,942 (淳)俺たち… あいつが そんなに悪いなんて 思ってなくて 176 00:11:32,692 --> 00:11:35,070 けど なんで あんなことまでして— 177 00:11:35,153 --> 00:11:37,739 退院を引き延ばす必要が あったんだ? 178 00:11:39,032 --> 00:11:43,495 こいつらは 健太の… 臨終の際に— 179 00:11:43,578 --> 00:11:47,624 隣の病室に天使を出現させようと 思っていたんだ 180 00:11:48,708 --> 00:11:53,046 健太が それを見れば 安らかに逝けると思ってな 181 00:11:53,630 --> 00:11:58,260 だから それまでは 3人とも 退院するわけにはいかなかった 182 00:12:00,345 --> 00:12:02,931 私は真相に気付いていたが— 183 00:12:03,014 --> 00:12:05,058 そのことを黙っていた 184 00:12:05,725 --> 00:12:09,020 それで健太の苦しみが 少しでも薄れるなら— 185 00:12:09,104 --> 00:12:11,773 それもいいんじゃないかと 思ったんだ 186 00:12:12,065 --> 00:12:13,733 (小鳥遊)鷹央先生 187 00:12:15,527 --> 00:12:19,990 私は たぶん この件の真相を話さないことで— 188 00:12:20,073 --> 00:12:23,410 健太に対して 何かしてやった気になっていたんだ 189 00:12:26,037 --> 00:12:30,459 私自身が 何かやったわけでもないのに 190 00:12:33,003 --> 00:12:37,007 私は… 卑怯者(ひきょうもの)だ 191 00:12:43,847 --> 00:12:47,559 (小鳥遊)あれから淳君たち 健太君のお母さんに— 192 00:12:47,642 --> 00:12:51,480 自分たちのやったことを説明して 謝罪したそうですよ 193 00:12:54,441 --> 00:12:57,861 彼らは今日 退院することになりました 194 00:12:58,195 --> 00:13:02,949 健太君には 今回のことは 黙っておくことにしたそうです 195 00:13:05,327 --> 00:13:11,583 (着信音) 196 00:13:13,293 --> 00:13:16,338 はい 統括診断部医局です 197 00:13:20,550 --> 00:13:22,636 ああ 分かった 198 00:13:23,803 --> 00:13:25,805 伝えてくれて助かったよ 199 00:13:30,393 --> 00:13:32,604 鴻ノ池から連絡がありました 200 00:13:32,979 --> 00:13:35,857 健太君の血圧が 下がり始めたそうです 201 00:13:36,816 --> 00:13:38,485 かなり厳しい状態で— 202 00:13:38,568 --> 00:13:40,987 あしたまでは もたないかもしれません 203 00:13:41,279 --> 00:13:43,323 もう ご家族はそろっています 204 00:13:43,532 --> 00:13:48,703 ただ 健太君本人が 鷹央先生に会いたいと言っていて 205 00:13:48,995 --> 00:13:51,289 ご家族も 一目でよいから 会いに来てほしいと— 206 00:13:51,373 --> 00:13:53,083 望んでいるみたいです 207 00:13:56,878 --> 00:13:58,255 (鷹央)でも… 208 00:13:58,463 --> 00:14:00,340 (小鳥遊)行くだけでいいんです 209 00:14:00,590 --> 00:14:04,469 ただ健太君と会うだけで 健太君は満足するはずです 210 00:14:05,470 --> 00:14:08,098 (鷹央)私は空気が読めないから 211 00:14:08,390 --> 00:14:12,602 とんでもないことを口走って 健太を苦しめるかも 212 00:14:12,936 --> 00:14:14,646 何 言ってるんですか! 213 00:14:14,729 --> 00:14:19,234 先生が来てくれないことが 健太君にとって一番つらいはずです 214 00:14:27,033 --> 00:14:28,702 先に行っています 215 00:14:29,160 --> 00:14:31,121 落ち着いたら来てください 216 00:14:35,542 --> 00:14:37,002 待ってますから 217 00:14:38,503 --> 00:14:41,756 (ドアの開閉音) 218 00:14:46,720 --> 00:14:49,806 (心電図モニターの音) 219 00:14:51,182 --> 00:14:56,313 (健太) ハア… ハア… ハア… ハア… 220 00:15:09,659 --> 00:15:15,373 ハア… ハア… ハア… ハア… 221 00:15:23,757 --> 00:15:27,761 ハア… ハア… ハア… 222 00:15:29,054 --> 00:15:31,723 あ… 天使… 223 00:15:31,806 --> 00:15:33,183 (三木景子(けいこ))えっ… (健太の父)あっ 224 00:15:45,487 --> 00:15:50,408 天使が… 見えるよ 225 00:15:51,826 --> 00:15:54,162 (景子)うっ… ううっ 226 00:15:54,245 --> 00:15:56,414 (景子の泣き声) (健太の父)景子… 227 00:15:56,790 --> 00:15:58,917 (景子の泣き声) 228 00:16:00,293 --> 00:16:01,378 あっ 229 00:16:14,808 --> 00:16:16,851 (健太)ハア… ハア… 230 00:16:40,542 --> 00:16:41,960 (鷹央)健太 231 00:16:45,130 --> 00:16:46,214 (健太)あ… 232 00:16:48,133 --> 00:16:51,845 子どもの… 先生? 233 00:16:52,387 --> 00:16:56,057 何度も言ってるだろ? 子どもの先生じゃない 234 00:16:56,141 --> 00:16:57,976 私は天久鷹央だ 235 00:16:58,727 --> 00:17:03,022 わあ… 子どもの先生だ 236 00:17:22,751 --> 00:17:25,920 ねえ 子どもの先生 237 00:17:26,254 --> 00:17:30,049 さっきね 天使が来てくれたんだよ 238 00:17:30,300 --> 00:17:31,551 あっ 239 00:17:36,014 --> 00:17:39,434 そうか 天使が来たのか 240 00:17:39,851 --> 00:17:41,060 (健太)うん 241 00:17:41,144 --> 00:17:46,399 きっと僕を 天国に連れていってくれるの 242 00:17:47,150 --> 00:17:48,735 (鷹央)そうだな 243 00:17:49,778 --> 00:17:51,863 お前はいい子だから— 244 00:17:51,946 --> 00:17:54,949 きっと天国に 連れていってもらえるよな 245 00:17:58,787 --> 00:18:04,125 ねえ… また絵本 読んでくれる? 246 00:18:06,127 --> 00:18:07,670 ああ もちろんだ 247 00:18:15,887 --> 00:18:21,434 ある町に 小さな女の子と お母さんが住んでいました 248 00:18:22,477 --> 00:18:27,982 お母さんは病気がちで ほとんど 外に出ることができませんでした 249 00:18:28,691 --> 00:18:33,446 女の子とお母さんは ちっぽけなパンを分け合い— 250 00:18:34,030 --> 00:18:36,991 “ありがとうございます 神様”— 251 00:18:37,867 --> 00:18:43,790 “ありがとうございます 神様”と 神様に祈りました 252 00:18:44,666 --> 00:18:47,710 毎日 か… 欠かすことなく— 253 00:18:47,961 --> 00:18:49,754 祈っていました 254 00:18:50,755 --> 00:18:52,549 ある日のこと 255 00:18:52,882 --> 00:18:56,719 女の子は 売れ残りをもらうため— 256 00:18:57,220 --> 00:18:59,681 近所のパン屋に向かいました 257 00:19:00,682 --> 00:19:02,433 近所の子どもたちが… 258 00:19:02,517 --> 00:19:07,522 (心電図モニターの音) 259 00:19:16,698 --> 00:19:20,410 (レコード:クリスマスソング) 260 00:19:20,493 --> 00:19:21,661 (ノックする音) 261 00:19:21,744 --> 00:19:24,247 (小鳥遊)鷹央先生 入りますよ 262 00:19:24,330 --> 00:19:26,875 (ドアの開閉音) 263 00:19:29,252 --> 00:19:30,628 (鷹央)何の用だよ 264 00:19:30,879 --> 00:19:33,298 いえ 何といいますか 265 00:19:34,090 --> 00:19:36,885 ちょっと様子を見に といいますか… 266 00:19:38,845 --> 00:19:40,305 なあ 小鳥(ことり) 267 00:19:40,388 --> 00:19:41,556 (小鳥遊)はい 268 00:19:42,682 --> 00:19:45,143 私は うまくできたか? 269 00:19:45,643 --> 00:19:49,939 健太は私のせいで 苦しんだりしなかったか? 270 00:19:50,189 --> 00:19:53,151 ええ うまくできていました 271 00:19:53,610 --> 00:19:56,529 健太君は先生に会えて 喜んでいましたよ 272 00:19:56,613 --> 00:20:00,158 (鷹央)けれど 私は何もできなかった 273 00:20:00,450 --> 00:20:03,036 ただ絵本を読んでやっただけで… 274 00:20:03,494 --> 00:20:07,540 (小鳥遊)健太君にとっては それで十分だったんですよ 275 00:20:07,749 --> 00:20:12,337 きっと 先生に絵本を読んでもらえて 幸せだったはずです 276 00:20:13,546 --> 00:20:15,048 本当か? 277 00:20:15,423 --> 00:20:16,758 本当です 278 00:20:23,139 --> 00:20:28,686 (鷹央)なんで健太は 8歳で 死なないといけなかったんだろうな 279 00:20:29,270 --> 00:20:31,648 あんなにいい子だったのに 280 00:20:39,530 --> 00:20:43,451 小鳥 私は無力だな 281 00:20:44,243 --> 00:20:46,120 みんな 無力ですよ 282 00:20:46,955 --> 00:20:48,373 でも たぶん— 283 00:20:48,623 --> 00:20:52,752 医者は自分が無力であることを 知らないといけないんだと思います 284 00:20:52,835 --> 00:20:57,632 そうして初めて 患者さんに 真摯に向き合えるんじゃないですか 285 00:21:01,511 --> 00:21:02,971 そうだな 286 00:21:04,305 --> 00:21:07,058 ああ そのとおりだ 287 00:21:08,518 --> 00:21:13,982 (すすり泣く声) 288 00:21:14,065 --> 00:21:18,653 (鷹央の泣き声) 289 00:21:18,736 --> 00:21:21,114 (レコードのボリュームが上がる音) 290 00:21:21,197 --> 00:21:28,204 (鷹央の泣き声) 291 00:21:28,579 --> 00:21:30,415 (鷹央の泣き声) 292 00:21:30,498 --> 00:21:34,460 (小鳥遊) メリークリスマス 鷹央先生 293 00:21:40,633 --> 00:21:42,093 (ノックする音) 294 00:21:42,176 --> 00:21:43,511 (小鳥遊)失礼します 295 00:21:43,594 --> 00:21:45,638 (ドアの開閉音) 296 00:21:45,722 --> 00:21:47,265 おう 小鳥 297 00:21:47,515 --> 00:21:49,767 おはようございます 鷹央先生 298 00:21:49,851 --> 00:21:52,937 (鷹央)んっ んん! もう こんな時間か 299 00:21:53,021 --> 00:21:54,814 そろそろ行かないとな 300 00:21:54,897 --> 00:21:56,107 (小鳥遊)はい 301 00:21:56,607 --> 00:21:57,608 あっ 302 00:21:57,859 --> 00:21:59,485 その帽子 303 00:22:00,445 --> 00:22:02,697 (鷹央)昨日 健太の母親が来て— 304 00:22:02,780 --> 00:22:05,450 “ありがとうございます” とか言って置いてったんだよ 305 00:22:06,034 --> 00:22:10,747 いくら私の頭が小さくても さすがにかぶれないのにな 306 00:22:11,122 --> 00:22:18,129 ♪~ 307 00:22:18,921 --> 00:22:21,549 さて 行くぞ 小鳥 308 00:22:21,632 --> 00:22:23,926 (小鳥遊) ええ 行きましょう 309 00:22:24,010 --> 00:22:26,429 (ドアの開閉音) 310 00:23:31,285 --> 00:23:38,292 ~♪