1 00:00:02,330 --> 00:00:04,940 佐清 頭巾を取っておやり。 2 00:00:07,320 --> 00:00:09,320 ああ!? 3 00:00:16,050 --> 00:00:20,120 それは 日本の エンターテインメントを変える 4 00:00:20,120 --> 00:00:22,480 革命だった。 5 00:00:44,700 --> 00:00:52,430 殺された男が 湖で発見される この映画を象徴するシーン。 6 00:00:52,430 --> 00:00:55,470 当時の子供たちが こぞって まねをするほど 7 00:00:55,470 --> 00:00:59,470 日本中に大ブームを 巻き起こしました。 8 00:01:02,200 --> 00:01:04,200 映画… 9 00:01:06,910 --> 00:01:09,910 よれよれの袴姿で現れた 名探偵… 10 00:01:13,990 --> 00:01:16,350 犬神家の莫大な遺産を めぐって起こる 11 00:01:16,350 --> 00:01:21,350 凄惨な連続殺人事件の解決に 乗り出します。 12 00:01:22,410 --> 00:01:26,410 この事件のキーマンとなるのは マスク姿の… 13 00:01:27,120 --> 00:01:30,150 公開から 40年以上たった今でも 14 00:01:30,150 --> 00:01:34,860 語りぐさとなっている キャラクターです。 15 00:01:34,860 --> 00:01:37,550 映画は空前の大ヒットとなり 16 00:01:37,550 --> 00:01:41,600 当時としては異例の 16億円。 17 00:01:41,600 --> 00:01:43,290 その映画の作り方は 18 00:01:43,290 --> 00:01:47,290 それまでの日本映画には ないものでした。 19 00:01:50,350 --> 00:01:54,390 ご遺言状ならば お預かりいたしております。 20 00:01:56,740 --> 00:02:02,800 舞台は 古い因習が残る山あいの村。 21 00:02:02,800 --> 00:02:05,170 大富豪の一族に 遺産相続をめぐる 22 00:02:05,170 --> 00:02:08,200 殺人事件が 巻き起こる。 23 00:02:08,200 --> 00:02:17,200 古めかしい題材を扱った映画に なぜ 日本中が熱狂したのか? 24 00:02:19,640 --> 00:02:22,670 まず 映像美。 25 00:02:22,670 --> 00:02:27,730 日本の土俗的な文化を 美しく切り取った。 26 00:02:27,730 --> 00:02:34,730 そこに ショッキングな映像が 挿入されていく。 27 00:02:35,140 --> 00:02:38,140 おい もう一度 水につけろ。 28 00:02:44,890 --> 00:02:48,590 すばらしいアート性があるよね。 芸術性がね。 29 00:02:48,590 --> 00:02:52,300 そして サスペンスとは 対照的な 30 00:02:52,300 --> 00:02:54,320 ユーモラスな キャラクター。 31 00:02:54,320 --> 00:02:56,320 よし 分かった! 32 00:03:06,780 --> 00:03:11,490 監督を務めた 市川 崑には 33 00:03:11,490 --> 00:03:16,490 名だたる映像作家たちが オマージュを ささげている。 34 00:03:37,420 --> 00:03:42,470 映画は 歴史に残る大ヒット。 35 00:03:42,470 --> 00:03:48,470 公開1週目の観客動員数は 世界一を記録した。 36 00:03:50,210 --> 00:03:56,210 そのヒットの陰には 数々のドラマが隠されていた。 37 00:04:00,320 --> 00:04:03,320 運命の分岐点は… 38 00:04:10,090 --> 00:04:17,480 東京・日比谷の映画館で 「犬神家の一族」が封切られた日です。 39 00:04:17,480 --> 00:04:21,860 おびただしい数の観客が 劇場前に列を成す様子を 40 00:04:21,860 --> 00:04:25,230 1人の男が見つめていました。 41 00:04:25,230 --> 00:04:28,230 その男が 第1の視点。 42 00:04:32,970 --> 00:04:34,330 当時 34歳。 43 00:04:34,330 --> 00:04:40,330 映画界とは無縁の 中堅出版社の2代目若社長でした。 44 00:04:44,090 --> 00:04:48,790 しかし 映画に関して 素人であるはずの男は 45 00:04:48,790 --> 00:04:51,490 この有名なシーンに 自ら登場するほど 46 00:04:51,490 --> 00:04:54,520 製作に入れ込みます。 47 00:04:54,520 --> 00:04:58,230 男にとって 映画をヒットさせること。 48 00:04:58,230 --> 00:05:03,610 それは 人生をかけた戦いだったのです。 49 00:05:03,610 --> 00:05:08,660 そして 次々と奇抜なアイデアが 飛び出します。 50 00:05:08,660 --> 00:05:11,030 常識と戦い続けた男。 51 00:05:11,030 --> 00:05:14,030 「闘争」の アナザーストーリー。 52 00:05:18,760 --> 00:05:25,170 全ての始まりは 1人の男の途方もない野望だった。 53 00:05:25,170 --> 00:05:30,880 おはようございます。 本日は よろしくお願いいたします。 54 00:05:30,880 --> 00:05:33,880 カリスマと呼ばれた男… 55 00:05:36,940 --> 00:05:43,940 77歳の老境にある今なお その信念に揺るぎはない。 56 00:05:55,460 --> 00:06:02,460 初めて取り組む映画製作に 不安はなかったのかと尋ねても…。 57 00:06:26,440 --> 00:06:30,480 これは かつて角川が 58 00:06:30,480 --> 00:06:35,870 「時代の寵児」としてドキュメンタリーの 取材を受けた時の映像。 59 00:06:35,870 --> 00:06:39,900 質問に こう答えている。 60 00:06:39,900 --> 00:06:42,270 多分ね 戦いだろうと思うんですね。 61 00:06:42,270 --> 00:06:45,300 いろんなことを 何回も何回も繰り返しながらも 62 00:06:45,300 --> 00:06:48,670 いろんなことを やりながらも 絶えず それが入り口になってる。 63 00:06:48,670 --> 00:06:52,040 終わったら入り口。 入り口が出口みたいなね。 64 00:06:52,040 --> 00:06:54,720 戦いだと思いますね。 65 00:06:54,720 --> 00:07:03,470 彼が父親から引き継いだ角川書店は 当時 辞書や教科書を手がける 66 00:07:03,470 --> 00:07:07,470 中堅の出版社に すぎなかった。 67 00:07:09,870 --> 00:07:12,900 そんな会社を躍進させるために 68 00:07:12,900 --> 00:07:17,900 斬新な戦略を次々生み出した。 69 00:07:19,970 --> 00:07:27,710 例えば 書店に行くと必ず目にする この風景。 70 00:07:27,710 --> 00:07:32,770 書棚の下に売れ筋の本が 平積みにされている。 71 00:07:32,770 --> 00:07:38,770 この売り方を最初に始めたのは 角川。 72 00:07:40,180 --> 00:07:44,180 時代を先取りしていた。 73 00:07:49,940 --> 00:07:51,940 逆に どういうことか といえば… 74 00:07:53,310 --> 00:07:59,040 そして 爆発的ヒットを ねらって 角川が乗り出したのが 75 00:07:59,040 --> 00:08:05,040 誰も目を付けていない 新たな鉱脈の開拓だった。 76 00:08:13,850 --> 00:08:17,880 他の出版社の息が かからず 77 00:08:17,880 --> 00:08:23,610 それでいて革命的なフィーバーを起こせる 作家は いないか? 78 00:08:23,610 --> 00:08:30,610 浮かんだのは ある老作家だった。 79 00:08:32,360 --> 00:08:40,360 この時から遡ること 20年ほど前 終戦直後に人気作家だった… 80 00:08:43,480 --> 00:08:47,510 だが既に小説は書いておらず 81 00:08:47,510 --> 00:08:51,510 忘れられた存在となっていた。 82 00:08:55,270 --> 00:09:01,270 そのタイトルは どれも おどろおどろしい。 83 00:09:04,680 --> 00:09:07,680 横溝さんに目を付けたというのは… 84 00:09:22,530 --> 00:09:28,530 当時ですね オカルト小説… 85 00:09:36,000 --> 00:09:39,700 その一種の怪奇的なものと 86 00:09:39,700 --> 00:09:46,110 それから 土俗的なものと ミステリーという3つの要素。 87 00:09:46,110 --> 00:09:51,820 この要素の作家は誰だろうと 考えた時に 88 00:09:51,820 --> 00:09:54,850 横溝正史さんだったんですよね。 89 00:09:54,850 --> 00:10:00,910 当時 20代だった角川は 思い立つなり 90 00:10:00,910 --> 00:10:04,910 勇み足気味に横溝家に向かったらしい。 91 00:10:08,000 --> 00:10:12,040 横溝の次女 野本瑠美は 92 00:10:12,040 --> 00:10:17,040 その様子を 笑い話として聞いている。 93 00:10:34,580 --> 00:10:37,580 そうしたら母が出てきて その次に… 94 00:10:49,400 --> 00:10:52,400 …とかってね 後々言ってらしたしね。 95 00:10:57,480 --> 00:11:01,190 幽霊扱いされたのも無理はない。 96 00:11:01,190 --> 00:11:08,930 なにせ横溝は 始終 事件のトリックを考えるのに夢中。 97 00:11:08,930 --> 00:11:15,930 本の売れ行きにも関心がないような 世間離れした男だった。 98 00:11:22,060 --> 00:11:24,060 常に ストーリー。 99 00:11:39,570 --> 00:11:44,570 そんな横溝に 角川は…。 100 00:11:47,320 --> 00:11:49,340 …と持ちかける。 101 00:11:49,340 --> 00:11:52,340 すると…。 102 00:12:00,110 --> 00:12:02,110 でも 現実は… 103 00:12:10,550 --> 00:12:17,550 角川には この時 明確なアイデアが浮かんでいた。 104 00:12:19,630 --> 00:12:27,630 それは横溝の おどろおどろしい本を 文庫本で売り出すこと。 105 00:12:29,400 --> 00:12:37,400 ヒントになったのは アメリカ旅行で目にした ある光景。 106 00:13:05,090 --> 00:13:08,090 日本の場合だと それは… 107 00:13:11,820 --> 00:13:19,820 角川は文庫本そのものに革命を 起こそうと もくろんだのだ。 108 00:13:21,260 --> 00:13:27,980 当時の文庫本は 難しいものが大半。 109 00:13:27,980 --> 00:13:32,980 それを逆手に取り 思い切った策を仕掛けた。 110 00:13:35,060 --> 00:13:42,060 表紙に ド派手なイラストが描かれた カバーをつけた。 111 00:13:44,150 --> 00:13:51,150 この 文庫本にカバーをつけたのも 角川が初めて。 112 00:13:53,900 --> 00:13:59,640 当時 角川の側近だった 井上泰一は 113 00:13:59,640 --> 00:14:05,640 次々 下される常識破りの戦略に 目を丸くした。 114 00:14:24,220 --> 00:14:29,220 あの平台っていうのも 角川が仕掛けたようなものなんですね。 115 00:14:52,500 --> 00:14:59,230 結果 忘れられた作家だった 横溝正史の人気に 116 00:14:59,230 --> 00:15:02,230 再び火が付き始める。 117 00:15:04,950 --> 00:15:13,040 しかし 角川が思い描くヒットは こんなものではなかった。 118 00:15:13,040 --> 00:15:17,740 「圧倒的なPRを行いたい」。 119 00:15:17,740 --> 00:15:22,740 そこで ひらめいたのが 映画作りだった。 120 00:15:32,890 --> 00:15:35,930 だから 映画は本を売るために 121 00:15:35,930 --> 00:15:39,930 巨大なコマーシャルと 考えればいいという。 122 00:15:55,790 --> 00:15:59,790 最初に映画化を もくろんだのは… 123 00:16:03,880 --> 00:16:11,880 戦前 岡山県で実際に起きた 衝撃的な殺人事件がモチーフだ。 124 00:16:15,650 --> 00:16:18,020 事件が ミステリアスであればあるほど 125 00:16:18,020 --> 00:16:23,070 人は興味を惹かれる。 126 00:16:23,070 --> 00:16:27,070 まさに 怖いもの見たさ。 127 00:16:28,460 --> 00:16:36,460 しかし 「八つ墓村」の製作は 映画会社と製作費で折り合わず… 128 00:16:39,890 --> 00:16:41,890 納得できなくて。 129 00:16:54,380 --> 00:16:59,380 角川が この小説を選んだ理由は やはり…。 130 00:17:28,390 --> 00:17:35,390 そして 一世一代の冒険が始まった。 131 00:17:43,540 --> 00:17:47,910 製作発表の記者会見。 132 00:17:47,910 --> 00:17:52,290 大勢のマスコミを前に 製作費は破格の… 133 00:17:52,290 --> 00:17:56,340 2億2,000万円と 発表された。 134 00:17:56,340 --> 00:18:02,720 集めたキャストも 絢爛豪華。 135 00:18:02,720 --> 00:18:06,770 昭和の名優たちから 人気アイドルまで 136 00:18:06,770 --> 00:18:10,770 妥協のないキャスティングが なされた。 137 00:18:38,420 --> 00:18:42,790 角川が見せた圧倒的な自信。 138 00:18:42,790 --> 00:18:49,790 ただし 製作に当たるスタッフたちは 半信半疑だった。 139 00:18:50,880 --> 00:18:55,260 助監督を務めた 浅田英一は 140 00:18:55,260 --> 00:18:59,960 その微妙な空気を覚えている。 141 00:18:59,960 --> 00:19:01,960 ひと言でいえば… 142 00:19:03,000 --> 00:19:06,370 …っていう気持ちは もちろん現場の 143 00:19:06,370 --> 00:19:10,370 映画の世界の人たちは みんな思ってたと思いますね。 144 00:19:16,470 --> 00:19:18,470 映画のスタッフとしては… 145 00:19:26,560 --> 00:19:29,930 だが いぶかるスタッフに 146 00:19:29,930 --> 00:19:35,990 角川は こんな先制パンチを放ってきた。 147 00:19:35,990 --> 00:19:39,990 これね 「犬神家の一族」の台本です。 148 00:19:42,060 --> 00:19:49,060 普通は真っ白い表紙に 映画のタイトル 製作会社が入ってるだけ。 149 00:19:52,160 --> 00:19:56,160 僕らは 台本は派手じゃなくていいわけ。 派手じゃなくてね。 150 00:20:06,970 --> 00:20:13,970 角川が示した気合いは 意外なところにも及んでいる。 151 00:20:28,520 --> 00:20:30,870 今までの映画を。 152 00:20:30,870 --> 00:20:33,230 「犬神家の一族」は 153 00:20:33,230 --> 00:20:38,230 映画界が見落としてるっていうか 関心を示さない… 154 00:20:40,640 --> 00:20:47,640 それまでは 映画の音楽費用というのは 50万円だったんですよ 1本。 155 00:20:52,090 --> 00:20:55,090 抜擢されたのが… 156 00:20:57,810 --> 00:21:03,870 後に 「ルパン三世」のテーマ曲で 有名になる大野は 157 00:21:03,870 --> 00:21:07,870 映画音楽を担当するのは初めてだった。 158 00:21:17,350 --> 00:21:22,390 要するに 革新を起こしてやろうと 思ってる人だから。 159 00:21:22,390 --> 00:21:27,440 その思いに応えて 大野は 160 00:21:27,440 --> 00:21:30,140 日本では まず 目にすることのない 161 00:21:30,140 --> 00:21:36,530 ヨーロッパの民族楽器で 主旋律を奏でた。 162 00:21:36,530 --> 00:21:41,250 そうして生まれたのが あのメロディーだ。 163 00:22:07,840 --> 00:22:11,880 この時 角川は大野に 164 00:22:11,880 --> 00:22:16,880 むちゃとしか言いようのない 要望を出している。 165 00:22:27,040 --> 00:22:34,780 サントラは編集された映像を見ながら 最終的に作り上げていく。 166 00:22:34,780 --> 00:22:40,780 映画が出来ていない以上 作れるはずはなかったが…。 167 00:23:07,440 --> 00:23:12,820 実は 大野に出した この要求にこそ 168 00:23:12,820 --> 00:23:19,820 一気に爆発的なヒットを生むカギが 隠されていた。 169 00:23:28,320 --> 00:23:34,380 角川の ねらいは 映画公開と同時にサントラを発売 170 00:23:34,380 --> 00:23:40,380 更に 文庫本でもフェアを仕掛ける メディアミックス。 171 00:23:43,130 --> 00:23:47,510 あらゆる媒体で多面的にPRを仕掛け 172 00:23:47,510 --> 00:23:52,510 一気に相乗効果を ねらう 戦略だった。 173 00:23:56,600 --> 00:24:01,980 文庫本に帯をつけ 宣伝コピーを入れたのは 174 00:24:01,980 --> 00:24:05,350 この時の角川が初めて。 175 00:24:05,350 --> 00:24:07,350 その結果…。 176 00:24:10,400 --> 00:24:16,130 映画は思惑どおり 15億6,000万円という 177 00:24:16,130 --> 00:24:20,130 当時としては大ヒットを記録した。 178 00:24:22,190 --> 00:24:25,190 角川社長 忘れてるかも知れないけど… 179 00:24:26,230 --> 00:24:30,230 …と言ったことありますよ。 僕らも。 180 00:24:32,290 --> 00:24:35,290 …という言葉ですよね。 181 00:24:42,390 --> 00:24:45,420 書籍も軒並み大ヒット。 182 00:24:45,420 --> 00:24:51,480 「犬神家の一族」を含む 横溝正史シリーズは 183 00:24:51,480 --> 00:24:56,480 1,800万部を突破する 大ブームとなった。 184 00:24:59,560 --> 00:25:05,620 そして角川書店は 地味な出版社から 185 00:25:05,620 --> 00:25:10,620 その名が 日本中に知れ渡る存在となる。 186 00:25:24,150 --> 00:25:28,850 ところが 角川というだけで モテるようになったんです 社員が。 187 00:25:28,850 --> 00:25:31,850 これが 一番端的な変化でしたね。 188 00:25:33,240 --> 00:25:40,240 カリスマと呼ばれる男は 事もなげに成功を振り返った。 189 00:25:47,700 --> 00:25:52,430 1人の若きカリスマ社長の熱意によって もたらされた大ヒット。 190 00:25:52,430 --> 00:25:58,490 しかし その熱意に応えた 巨匠の存在がなければ 191 00:25:58,490 --> 00:26:02,530 この映画は生まれなかったはずです。 192 00:26:02,530 --> 00:26:07,530 第2の視点は 監督 市川 崑。 193 00:26:10,600 --> 00:26:15,650 この映画作りは 市川にとっても まさに戦い。 194 00:26:15,650 --> 00:26:18,680 新しい日本映画とは何か。 195 00:26:18,680 --> 00:26:24,680 「犬神家の一族」に 自らの映像表現 技術を全て注ぎました。 196 00:26:26,430 --> 00:26:31,430 映像美を追い求め続けた男の アナザーストーリーです。 197 00:26:43,270 --> 00:26:49,270 「犬神家の一族」の撮影は ここから始まった。 198 00:26:51,010 --> 00:26:55,390 今から行くというかね 紹介する第8ステージが 199 00:26:55,390 --> 00:26:59,760 「犬神家」のメインのセットが 建ったとこですね。 200 00:26:59,760 --> 00:27:05,820 一番広いので 大きなセットが作れる ということで ここを使ってました。 201 00:27:05,820 --> 00:27:12,550 日本一とも称された この巨大なスタジオに 202 00:27:12,550 --> 00:27:15,550 犬神御殿のセットが建てられ…。 203 00:27:16,270 --> 00:27:24,340 劇中 何度も登場する大広間のシーンから 撮影が始まるはずだった。 204 00:27:24,340 --> 00:27:30,400 キャストが勢ぞろいする 荘厳なシーン。 205 00:27:30,400 --> 00:27:38,150 ところが撮影初日 中止の号令が かかる。 206 00:27:38,150 --> 00:27:41,850 くわえ煙草の この男が 207 00:27:41,850 --> 00:27:46,850 セットの襖を見るなり こう漏らしたからだ。 208 00:28:01,050 --> 00:28:05,420 金ぱくで あの襖とかなんかが 出来てたんですけど 209 00:28:05,420 --> 00:28:08,420 それが 市川さんがね… 210 00:28:12,480 --> 00:28:15,850 僕らは肉眼ではね 金に見えなくもないよねって。 211 00:28:15,850 --> 00:28:19,560 ただ あの人は もうほんとにね 独特の感性だから 212 00:28:19,560 --> 00:28:22,590 フィルムになった時にね 光ってるか 光ってないかっていうのが 213 00:28:22,590 --> 00:28:25,590 多分ね 分かるんだと思うんですよ。 214 00:28:29,650 --> 00:28:31,340 市川さんはね。 215 00:28:31,340 --> 00:28:33,340 聞きしに勝る巨匠ですよね。 216 00:28:35,050 --> 00:28:43,050 そのころ市川は 当時の映画界について こう語っている。 217 00:29:09,390 --> 00:29:15,390 「映画の信用」とは 一体何か? 218 00:29:19,490 --> 00:29:23,190 まずは こちらを ご覧頂きたい。 219 00:29:23,190 --> 00:29:29,190 全て 市川 崑の映画の手法を 研究した書物。 220 00:29:31,280 --> 00:29:34,980 名だたる表現者たちが 221 00:29:34,980 --> 00:29:38,980 憧れを隠そうともしない。 222 00:29:43,390 --> 00:29:49,390 なぜ彼は 「国民的巨匠」と 呼ばれるまでに至ったのか。 223 00:29:52,160 --> 00:29:58,210 市川は 1948年に デビューして以来 224 00:29:58,210 --> 00:30:03,210 他に類を見ない独自の 存在感を放っていた。 225 00:30:05,950 --> 00:30:10,330 当時の映画界は 人気スターを主役に据え 226 00:30:10,330 --> 00:30:13,330 短期間で映画を撮る… 227 00:30:18,080 --> 00:30:25,820 その中で市川は 徹底的に映像に こだわり続けた。 228 00:30:25,820 --> 00:30:33,820 例えば 現代の若いクリエイターにも 支持されている 「黒い十人の女」。 229 00:30:35,250 --> 00:30:40,300 男が 10人もの女性と不倫し 復讐される映画でも 230 00:30:40,300 --> 00:30:44,340 ドロドロした描写はない。 231 00:30:44,340 --> 00:30:51,340 陰影を駆使したクールな映像で 人間模様を客観的に見つめた。 232 00:30:54,100 --> 00:30:59,490 常に新しい手法を 探し求めてきた市川は 233 00:30:59,490 --> 00:31:04,490 出演したテレビ番組で こんなふうに紹介されている。 234 00:31:23,390 --> 00:31:31,390 そんな市川が 直後 空前の論争を巻き起こすことになる。 235 00:31:37,870 --> 00:31:40,870 1964年の… 236 00:31:43,930 --> 00:31:48,310 騒動の火種は 市川が 監督を任された 237 00:31:48,310 --> 00:31:53,310 この国民的行事の記録映画だった。 238 00:32:00,770 --> 00:32:08,510 最先端の技術を駆使して ねらったのは 超人的なアスリートたちの躍動。 239 00:32:08,510 --> 00:32:14,900 誰もが熱狂した日本人の活躍や 勝敗に こだわらず 240 00:32:14,900 --> 00:32:18,900 肉体の美しさを切り取った。 241 00:32:23,000 --> 00:32:30,000 しかし 1人の政治家が 市川の手法を批判した。 242 00:33:11,810 --> 00:33:15,510 今おっしゃった中の「哀しみ」というのは 例えば どういうことですかね? 243 00:33:15,510 --> 00:33:17,510 ですから やはり… 244 00:33:33,360 --> 00:33:39,750 映画の作り方をめぐって 日本を二分する論争を呼び 245 00:33:43,130 --> 00:33:48,130 作り直すという事態にまで発展する。 246 00:33:50,190 --> 00:33:56,190 だが皮肉にも 市川が手がけた映画は未曽有の… 247 00:33:59,620 --> 00:34:05,620 しかし 騒動に巻き込まれた市川は こう語っている。 248 00:34:15,120 --> 00:34:20,500 市川は しばし 映画界から距離を置き 249 00:34:20,500 --> 00:34:26,500 テレビやCMなど 新しいメディアに進出する。 250 00:34:28,580 --> 00:34:31,940 そして生まれた傑作が 251 00:34:31,940 --> 00:34:37,940 日本の土俗的な文化と 現代的な精神を 掛け合わせたテレビドラマ… 252 00:34:43,060 --> 00:34:48,780 一切の組織から逃れ さすらう男。 253 00:34:48,780 --> 00:34:55,520 その主題歌は 当時 働きづめだった サラリーマンたちの共感を呼んだ。 254 00:35:21,770 --> 00:35:27,830 絶望の中でも 一縷の希望を信じて さすらう魂。 255 00:35:31,210 --> 00:35:39,210 それは 一人挑戦を続ける 市川の姿にも重なって見える。 256 00:35:43,320 --> 00:35:48,050 その実験的な試みは CM制作にも引き継がれ 257 00:35:48,050 --> 00:35:55,050 土俗的な風景を舞台に 最先端の編集を融合させていく。 258 00:36:09,590 --> 00:36:13,290 <僕は 若者らしい 緊張した旅に出たいと思う> 259 00:36:17,000 --> 00:36:21,000 <厳しさ。 永平寺には それがあるんだ> 260 00:36:26,430 --> 00:36:29,120 どう読んでいいか分からない 問題の…。 261 00:36:29,120 --> 00:36:35,850 長年 市川作品の編集を担当した 長田千鶴子は 262 00:36:35,850 --> 00:36:43,850 生き生きと自らの映像表現に 磨きをかけていた姿を思い出す。 263 00:37:02,450 --> 00:37:05,480 テレビって何やろ みたいなことで きっと 264 00:37:05,480 --> 00:37:08,510 自分から飛び込んで 知ってる人を つてにして 265 00:37:08,510 --> 00:37:12,550 作られてたんじゃないかと 思うんですよね。 266 00:37:12,550 --> 00:37:16,550 そんな市川の前に突如 現れたのが… 267 00:37:22,650 --> 00:37:26,650 市川の第一印象は こうだ。 268 00:37:32,750 --> 00:37:36,790 従来の映画界の 作法を無視した 269 00:37:36,790 --> 00:37:40,790 角川の話に乗ってみることにした。 270 00:37:53,960 --> 00:37:55,960 お話があった時には。 271 00:37:57,670 --> 00:38:05,670 日本映画を新たな時代に導く 奇跡のタッグの誕生だった。 272 00:38:07,100 --> 00:38:10,460 20歳以上 年の離れた2人は 273 00:38:10,460 --> 00:38:15,460 精力的なロケハンを 共に おこなっている。 274 00:38:33,020 --> 00:38:38,080 再び映画の第一線に舞い戻った市川は 275 00:38:38,080 --> 00:38:43,080 培った技術の全てを注ぎ込んでいく。 276 00:38:48,510 --> 00:38:53,510 陰影を 最大限に生かした画づくり。 277 00:38:55,240 --> 00:38:59,280 市川さん 光と影の専門家ですから 278 00:38:59,280 --> 00:39:01,280 とにかくライティングを凝って なおかつ… 279 00:39:11,740 --> 00:39:13,740 ごしごし ごしごし。 280 00:39:21,500 --> 00:39:25,880 テレビやCMで磨き上げた編集技術は 281 00:39:25,880 --> 00:39:29,880 旧態依然とした映画界を仰天させた。 282 00:39:32,610 --> 00:39:34,970 遺言状の精神は 一字一句の間違いなしに…。 283 00:39:34,970 --> 00:39:38,010 真実の娘が相続の対象にならないなんて そんなの遺言でも何でもないわ! 284 00:39:38,010 --> 00:39:41,010 あなた! それでも弁護士!? 285 00:40:05,950 --> 00:40:09,950 やっぱり今までにない映像を 作るということでしょうね。 286 00:40:12,680 --> 00:40:15,710 一生懸命だったんじゃないでしょうかね。 287 00:40:15,710 --> 00:40:19,410 そして 特に こだわったのが 288 00:40:19,410 --> 00:40:23,410 この極端なキャラクター造形。 289 00:40:25,480 --> 00:40:32,210 マスクを作った 特殊美術担当の 安丸信行は 290 00:40:32,210 --> 00:40:35,210 さんざん苦労させられた。 291 00:41:05,540 --> 00:41:08,910 ようやくOKが出たマスクは 292 00:41:08,910 --> 00:41:12,910 頬がピクリと動くのも 分かるほど。 293 00:41:14,630 --> 00:41:21,630 そのこだわりについて 市川は当時 こんな言葉を残している。 294 00:41:47,960 --> 00:41:51,670 その格闘のせいで 大変な目に遭ったのが 295 00:41:51,670 --> 00:41:56,390 ロケ現場近くで林業を営む 遠藤さん。 296 00:41:56,390 --> 00:42:04,390 急に声を掛けられ 出演を依頼されたのが あの役だった。 297 00:42:35,450 --> 00:42:39,450 映画は 完成した。 298 00:42:42,840 --> 00:42:47,840 劇場を幾重にも取り巻いた 観客の行列。 299 00:42:49,580 --> 00:42:52,280 その光景を目の当たりにした興奮を 300 00:42:52,280 --> 00:42:58,280 角川の側近だった井上は 今も忘れない。 301 00:43:20,220 --> 00:43:28,220 映画を見終わった観客の様子を ある映画研究家は こう語っている。 302 00:43:48,510 --> 00:43:52,880 映画で観客を魅了する。 303 00:43:52,880 --> 00:43:58,880 市川は確かに 映画への信頼を取り戻したのだ。 304 00:44:04,670 --> 00:44:12,670 さまざまな人の力の結集で 日本映画の 金字塔となった 「犬神家の一族」。 305 00:44:15,110 --> 00:44:19,820 私も 市川 崑監督ご自身がリメイクされた 306 00:44:19,820 --> 00:44:24,530 「犬神家の一族」に 出演させて頂きました。 307 00:44:24,530 --> 00:44:28,240 監督の映像への こだわりを そばで実感できたことは 308 00:44:28,240 --> 00:44:31,240 とても貴重な体験となりました。 309 00:44:34,300 --> 00:44:37,330 登場人物の中でも 日本中に愛されたのが 310 00:44:37,330 --> 00:44:41,370 名探偵 金田一耕助。 311 00:44:41,370 --> 00:44:45,410 その人気によって 金田一が活躍するシリーズは 312 00:44:45,410 --> 00:44:52,140 映画 テレビ合わせて 延べ87作品が作られました。 313 00:44:52,140 --> 00:44:56,140 第3の視点は 金田一耕助を演じた男。 314 00:44:59,220 --> 00:45:03,930 よれよれの袴に ボサボサ頭。 315 00:45:03,930 --> 00:45:07,930 原作どおりのキャラクターを 初めて演じたのは… 316 00:45:08,970 --> 00:45:13,350 そこには数々の試行錯誤がありました。 317 00:45:13,350 --> 00:45:19,350 名探偵 金田一耕助誕生の アナザーストーリーです。 318 00:45:27,830 --> 00:45:30,830 ロケが行われた… 319 00:45:33,890 --> 00:45:40,890 犬神一族の御殿として登場する 築200年の旧家。 320 00:45:41,310 --> 00:45:47,310 その塀の前を 金田一耕助は駆け抜けた。 321 00:45:55,770 --> 00:45:58,800 家主である飯田さんは 322 00:45:58,800 --> 00:46:05,800 金田一耕助を演じた 石坂浩二との 思い出を今も大切にしている。 323 00:46:25,410 --> 00:46:28,770 しかし 当の本人は…。 324 00:46:28,770 --> 00:46:30,120 どうも よろしくお願いします。 325 00:46:30,120 --> 00:46:34,120 撮影中 ずっと悩み続けていたという。 326 00:46:36,850 --> 00:46:40,220 金田一耕助の役作りに関する 327 00:46:40,220 --> 00:46:47,290 市川監督の 謎めいた要望があったからだ。 328 00:46:47,290 --> 00:46:54,030 監督は 探偵というのは この横溝さんの作品においては 329 00:46:54,030 --> 00:46:58,030 「天使」みたいなもんだと。 「神様」みたいなもん。 330 00:47:04,130 --> 00:47:07,490 どうしようかなと思ってたんですけどね。 331 00:47:07,490 --> 00:47:10,490 最初は 「はあ… じゃあ 人間じゃないんですか」って。 332 00:47:19,950 --> 00:47:24,000 そもそも 映画の中の金田一耕助は 333 00:47:24,000 --> 00:47:30,050 勇猛果敢な名探偵としては 描かれていない。 334 00:47:30,050 --> 00:47:34,100 次々に起きる殺人事件に 驚きながら 335 00:47:34,100 --> 00:47:38,140 頭を 掻き掻き 走り回る。 336 00:47:38,140 --> 00:47:43,860 とぼけた雰囲気で どこか憎めない。 337 00:47:43,860 --> 00:47:50,860 それが 石坂演じる金田一耕助の 最大の魅力だった。 338 00:47:52,940 --> 00:47:55,310 しかし ご存じだろうか。 339 00:47:55,310 --> 00:48:00,690 これ以前の金田一は 時代劇の大御所 340 00:48:00,690 --> 00:48:06,690 片岡千恵蔵が重厚なスーパーヒーロー として演じていた。 341 00:48:08,440 --> 00:48:15,840 反対に 石坂はスマートで 時に頼りない若者を演じることが多く 342 00:48:15,840 --> 00:48:22,840 片岡には遠く及ばないと 当初は出演を断ったという。 343 00:48:52,210 --> 00:48:57,210 原作では金田一は こう かかれている。 344 00:49:18,470 --> 00:49:27,220 そもそも 金田一を生み出した 横溝の姿を見てほしい。 345 00:49:27,220 --> 00:49:30,930 もじゃもじゃ頭に 着物姿。 346 00:49:30,930 --> 00:49:35,930 どことなく似てはいないだろうか。 347 00:49:43,050 --> 00:49:45,050 何を言っても父ですよ。 348 00:49:50,130 --> 00:49:54,130 もう 何ていうんですかね… 349 00:50:06,610 --> 00:50:11,000 頭 これこそ それこそ フケなんて そりゃしないですけれども 350 00:50:11,000 --> 00:50:16,000 お風呂入るの大嫌い。 アハハハハ。 351 00:50:18,410 --> 00:50:22,440 更に 監督の市川は 352 00:50:22,440 --> 00:50:29,510 金田一像に もう一つ 独自の解釈を付け加えていた。 353 00:50:29,510 --> 00:50:34,560 それが 「天使」という解釈。 354 00:50:34,560 --> 00:50:40,560 だが 演じる石坂には まるで見当がつかなかった。 355 00:50:42,970 --> 00:50:46,350 やむなく手探りで役作りを始めた。 356 00:50:46,350 --> 00:50:50,050 まずは 着物や持ち物。 357 00:50:50,050 --> 00:50:58,460 実はトレードマークにもなっている トランクは 石坂の私物だ。 358 00:50:58,460 --> 00:51:01,460 神戸へ行ったらば 骨とう品を買うんですけど… 359 00:51:20,360 --> 00:51:26,360 そのトランクは 今も東宝撮影所に保管されている。 360 00:51:30,460 --> 00:51:34,460 わあ… いいねえ。 361 00:51:55,040 --> 00:52:03,040 ところどころに 戦前のものとおぼしき 旅行先のステッカーが貼られている。 362 00:52:07,150 --> 00:52:10,860 横溝の原作には こうある。 363 00:52:10,860 --> 00:52:15,860 金田一は 東京の大学に通っていたが… 364 00:52:27,020 --> 00:52:30,380 石坂が見つけてきたトランクは 365 00:52:30,380 --> 00:52:35,380 原作にある「旅人」という イメージに ピタリと重なった。 366 00:52:37,790 --> 00:52:43,520 そんな ある日 石坂の背中を押してくれる人が現れた。 367 00:52:43,520 --> 00:52:48,230 ちょい役で出演するため 現場にいた横溝。 368 00:52:48,230 --> 00:52:53,230 そこで ボヤ騒ぎが起きた時。 369 00:53:10,450 --> 00:53:14,450 「それ どういうことですか?」 って言ったら… 370 00:53:16,180 --> 00:53:21,560 石坂は なおも考える。 371 00:53:21,560 --> 00:53:27,560 旅人のような金田一は 犬神家と どう向き合うべきか。 372 00:53:29,310 --> 00:53:34,030 そもそも 犬神家とは どんな家なのか? 373 00:53:34,030 --> 00:53:39,740 犬神家は 当主・佐兵衛が 374 00:53:39,740 --> 00:53:45,740 戦争に乗じて巨万の富を得た いわくつきの家。 375 00:53:46,480 --> 00:53:53,550 その富を巡って 一族に ドロドロの連続殺人事件が起きていく。 376 00:53:53,550 --> 00:54:00,550 やがて石坂は こんな解釈に至る。 377 00:54:06,680 --> 00:54:13,750 それは 戦争に手を染めてるというか 378 00:54:13,750 --> 00:54:18,800 戦争になれば もうかるという 商売に手を染めている。 379 00:54:18,800 --> 00:54:21,800 そして それで成り上がった。 380 00:54:48,770 --> 00:54:57,190 巨万の富が生んだ欲望の渦と 複雑に絡み合った血縁関係。 381 00:54:57,190 --> 00:55:01,560 金田一という 「天使」の存在があるからこそ 382 00:55:01,560 --> 00:55:06,940 観客は 客観的に見ることができる。 383 00:55:06,940 --> 00:55:09,640 だからこそ 一歩下がって 384 00:55:09,640 --> 00:55:12,640 ほんとに… 385 00:55:21,100 --> 00:55:28,830 そして天使が 呪われた殺人事件を全て見届けた時 386 00:55:28,830 --> 00:55:31,830 物語は終わった。 387 00:55:44,990 --> 00:55:50,720 浄化され 最後には未来を感じる。 388 00:55:50,720 --> 00:55:57,720 その後味は 見事に極上の エンターテインメントになっていた。 389 00:55:59,810 --> 00:56:05,870 既に過去の作品の一つとなっていた 小説から 大ヒット映画が生まれ 390 00:56:05,870 --> 00:56:11,930 それによって 小説にも再び光が当たり 爆発的に売れる。 391 00:56:11,930 --> 00:56:17,990 まさにメディアミックス 新しいヒットの方程式の誕生です。 392 00:56:17,990 --> 00:56:21,690 時代が変わる。 393 00:56:21,690 --> 00:56:24,050 その渦の中心にあるのは いつも 394 00:56:24,050 --> 00:56:29,050 常識を超えようとする人たちの 情熱なのです。 395 00:56:31,460 --> 00:56:36,460 金田一耕助の人気は 今も健在だ。 396 00:56:38,870 --> 00:56:46,270 横溝正史の世界をモチーフにした 昭和初期を感じさせる喫茶店。 397 00:56:46,270 --> 00:56:52,000 金田一を愛してやまない人々が 今も訪れる。 398 00:56:52,000 --> 00:56:55,000 やっぱり 何といっても 金田一耕助の魅力ですかね。 399 00:57:00,750 --> 00:57:02,750 …みたいなのが 私 すごい好きで。 400 00:57:16,910 --> 00:57:20,280 「犬神家の一族」のヒットにより 401 00:57:20,280 --> 00:57:26,280 金田一を生み出した 横溝正史の晩年も変わった。 402 00:57:28,030 --> 00:57:35,760 一度は筆を折っていた横溝は ブームを機に執筆を再開。 403 00:57:35,760 --> 00:57:41,760 好きな探偵小説を 亡くなる前年まで書き続けた。 404 00:57:42,510 --> 00:57:48,510 ヒットの秘密を聞かれた時に こう答えている。 405 00:58:24,930 --> 00:58:31,660 寝食を忘れて 事件のトリックを考え続ける日々。 406 00:58:31,660 --> 00:58:37,660 それは横溝にとって 何よりの幸せだった。 407 00:58:41,760 --> 00:58:48,160 金田一耕助シリーズ 全77作品。 408 00:58:48,160 --> 00:58:52,870 いまだ 新たなファンを生み続けている。