1 00:00:26,627 --> 00:00:30,231 {\an8}(加代) まきさまのことなら 何でも 分かるんですのよ。 2 00:00:30,564 --> 00:00:34,502 {\an8}(大造) この人は 本当に 藤塚 剛太郎なのか→ 3 00:00:34,568 --> 00:00:36,504 {\an8}疑念を 抱いたのではないかね? 4 00:00:36,570 --> 00:00:40,508 {\an8}(照) 私の顔 つぶすようなことは しないでくださいね。 5 00:00:40,574 --> 00:00:45,513 {\an8}(まき) この前 主人から届いた 絵はがきです。→ 6 00:00:45,579 --> 00:00:50,584 {\an8}ロンドンの町並みに立つ 私と すみれを 描いたものなんですって。 7 00:00:53,587 --> 00:00:56,524 {\an8}(雄介)《里子に 見せたいものが あるんだ》 8 00:00:56,590 --> 00:00:59,460 {\an8}(里子)《雄介さん。 スランプ 抜け出せたの?》 9 00:00:59,527 --> 00:01:02,530 {\an8}(雄介)《うん。 もう 大丈夫そうだ》 10 00:01:04,532 --> 00:01:06,467 {\an8}(まき) どうかなさいました? 11 00:01:06,534 --> 00:01:11,472 {\an8}(里子) 私の 亡くなった主人が 描いた タッチと→ 12 00:01:11,539 --> 00:01:17,478 {\an8}とても 似ていたものですから 少し 驚きました。 13 00:01:17,545 --> 00:01:20,481 {\an8}(まき) そうですか。→ 14 00:01:20,548 --> 00:01:25,486 {\an8}亡くなられた ご主人は 確か 絵描きさんでしたわね? 15 00:01:25,553 --> 00:01:29,490 {\an8}(里子) ええ。 スランプになって→ 16 00:01:29,557 --> 00:01:33,494 {\an8}私の赴任した 学校で 非常勤講師を していたんです。→ 17 00:01:33,561 --> 00:01:37,498 {\an8}そのときに 出会って 結婚をして。 18 00:01:37,565 --> 00:01:41,502 {\an8}(まき) 春子ちゃんを 産んだんですね。 19 00:01:41,569 --> 00:01:44,505 {\an8}(里子) はい。 (まき) 里子さんは→ 20 00:01:44,572 --> 00:01:49,510 恋愛結婚か。 すてきだなぁ。 (里子) まきさんは? 21 00:01:49,577 --> 00:01:53,514 (まき) 私は 枝川流の 後援会の方の ご紹介が縁で→ 22 00:01:53,581 --> 00:01:58,452 主人と出会ったの。 だから お見合い結婚みたいなものね。 23 00:01:58,519 --> 00:02:03,457 (里子) 私 まきさんの ご主人って とても すてきな方だと 思います。 24 00:02:03,524 --> 00:02:06,460 (まき) どうして? (里子) 出張先から→ 25 00:02:06,527 --> 00:02:08,462 絵はがきを 送ってきたり→ 26 00:02:08,529 --> 00:02:12,466 出張が 長引くって 連絡を くれたりして。 27 00:02:12,533 --> 00:02:16,470 きっと いっつも まきさんと すみれちゃんのことを→ 28 00:02:16,537 --> 00:02:18,472 考えている証拠だと 思うから。 29 00:02:18,539 --> 00:02:22,476 (まき) ありがとう。 そう 言ってくれて。 30 00:02:22,543 --> 00:02:30,484 私 10年前に 剛太郎さんと 出会っていなかったら→ 31 00:02:30,551 --> 00:02:34,488 どうなっていたか 分かりません。 32 00:02:34,555 --> 00:02:41,495 私 事故に遭って 母を亡くし 失明をして→ 33 00:02:41,562 --> 00:02:46,500 8年間 自分の殻に 閉じこもっていて。 34 00:02:46,567 --> 00:02:51,505 生きていても 生きている実感を 感じたことが なかったんです。 35 00:02:51,572 --> 00:02:54,508 (里子) 8年間? 36 00:02:54,575 --> 00:03:02,449 (まき) 最初の 1年間は 私も 病院で 生死の境を さまよい→ 37 00:03:02,516 --> 00:03:07,454 やっと 生きていけるまでに 回復しました。 38 00:03:07,521 --> 00:03:13,460 2年後 絶望の現実を 目の前にして→ 39 00:03:13,527 --> 00:03:18,465 「死にたい」 そのことばかりを 考えていました。 40 00:03:18,532 --> 00:03:22,536 でも 死ぬ気力も ありませんでした。 41 00:03:24,538 --> 00:03:29,476 5年目。 この年が 一番 つらかった。 42 00:03:29,543 --> 00:03:33,480 (里子) 何が あったのですか? 43 00:03:33,547 --> 00:03:39,486 (まき) 一生懸命 訓練をして 家の中 枝川会館の中を→ 44 00:03:39,553 --> 00:03:43,490 不自由なく 生活できるまでに なったのですが→ 45 00:03:43,557 --> 00:03:48,495 ちゃんと 生活できる 自信が 出てきたのと 引き換えに→ 46 00:03:48,562 --> 00:03:54,501 私の未来は どうなってしまうのだろう。 47 00:03:54,568 --> 00:03:59,440 このまま 一生 一人で 生きていくのか。 48 00:03:59,506 --> 00:04:06,447 そんなとき お父さまが 「まきを 絶対に 幸せにする」 49 00:04:06,513 --> 00:04:09,450 「結婚相手を 見つけだす。 だから 安心しなさい」って→ 50 00:04:09,516 --> 00:04:11,452 おっしゃってくださったんです。 51 00:04:11,518 --> 00:04:17,458 私は お父さまを信じて 待ちました。 52 00:04:17,524 --> 00:04:23,464 失明をして 6年。 7年。 53 00:04:23,530 --> 00:04:27,468 8年が 過ぎようとしていた ある日→ 54 00:04:27,534 --> 00:04:33,474 お父さまが 剛太郎さんとの縁談を 決めてくださったのです。 55 00:04:33,540 --> 00:04:40,547 私 お父さまを信じて 生きて よかったって 思いました。 56 00:04:42,549 --> 00:04:49,490 ですが 剛太郎さん。 私と出会う 直前に→ 57 00:04:49,556 --> 00:04:55,496 事故に遭って 記憶喪失に。 (里子) 記憶喪失!? 58 00:04:55,562 --> 00:04:58,432 (まき) 10年前の事故で→ 59 00:04:58,499 --> 00:05:03,437 それより前の記憶が 全て 失われてしまったんです。 60 00:05:03,504 --> 00:05:07,441 (里子) 10年前に 記憶を 失ってしまったと いうことは→ 61 00:05:07,508 --> 00:05:12,446 生まれてから そのときまでの 記憶が ないってことですか? 62 00:05:12,513 --> 00:05:14,448 (まき) ええ。 63 00:05:14,515 --> 00:05:19,453 (里子) 話したり 計算したり 記憶以外の 能力はあるのに→ 64 00:05:19,520 --> 00:05:24,458 記憶だけが ないってことですか? (まき) ええ。 65 00:05:24,525 --> 00:05:26,460 (里子) そんなことって あるんですか? 66 00:05:26,527 --> 00:05:30,464 (まき) 私も 最初は そう 考えました。 悪いことを→ 67 00:05:30,531 --> 00:05:33,467 たくらんでいるんじゃ ないかとも 考えました。 68 00:05:33,534 --> 00:05:38,472 でも 一緒に 暮らしているうちに→ 69 00:05:38,539 --> 00:05:45,479 こういうことって ホントに あるんだなって 分かったんです。 70 00:05:45,546 --> 00:05:49,483 それどころか 目の見えない 私には→ 71 00:05:49,550 --> 00:05:52,486 ものすごく よく 理解できるように なったんです。 72 00:05:52,553 --> 00:05:58,425 (里子) どういうふうにですか? (まき) 私 目が見えなくなってから→ 73 00:05:58,492 --> 00:06:07,434 他の能力。 例えば 触感や 聴覚が ものすごく 敏感になったんです。 74 00:06:07,501 --> 00:06:12,439 剛太郎さんの 記憶喪失も きっと→ 75 00:06:12,506 --> 00:06:16,443 人間の不思議の 一つだなって 感じましたの。 76 00:06:16,510 --> 00:06:19,513 (里子) そうですね きっと。 77 00:06:21,515 --> 00:06:27,454 (まき) 私 剛太郎さんと 出会えて すみれを授かることが できて→ 78 00:06:27,521 --> 00:06:34,461 これから 生きていく人生に 勇気を持つことが できたんです。 79 00:06:34,528 --> 00:06:36,463 (里子) まきさんにとって ご主人は→ 80 00:06:36,530 --> 00:06:40,467 まきさんの命 そのものなのかも しれませんね。 81 00:06:40,534 --> 00:06:42,536 (まき) ええ。 82 00:06:44,538 --> 00:06:49,476 もし 万が一 剛太郎さんを 失うようなことが あったら→ 83 00:06:49,543 --> 00:06:53,480 私は 絶対に 生きていくことが できないと 思います。 84 00:06:53,547 --> 00:06:58,418 (里子) 本当に 掛け替えのない ご夫婦なんですね。 85 00:06:58,485 --> 00:07:01,421 (まき) はい。 86 00:07:01,488 --> 00:07:04,425 (里子) すてきだわ。 そう 言い切れるなんて。 87 00:07:04,491 --> 00:07:06,426 (まき) ありがとう。 88 00:07:06,493 --> 00:07:11,431 (すみれ) そう。 宮崎先生 スランプなんですか。 89 00:07:11,498 --> 00:07:14,434 (春子) だから 招き猫 作ってるの。 90 00:07:14,501 --> 00:07:19,439 (すみれ) でも 招き猫も 常滑焼です。 ですから→ 91 00:07:19,506 --> 00:07:23,443 枝川会館で 皆さんで 招き猫を 作るのは どうでしょうか? 92 00:07:23,510 --> 00:07:27,447 (春子) はい。 いいと思います。 93 00:07:27,514 --> 00:07:29,449 (すみれ) それでは そう いたしましょう。 94 00:07:29,516 --> 00:07:35,455 (春子) あっ。 ねっ。 学校って 宿題 たくさん 出るの? 大変? 95 00:07:35,522 --> 00:07:40,461 (春子) 例えば あしたまでに 歴史 全部 覚えなさいとか。 96 00:07:40,527 --> 00:07:42,462 (すみれ) そんなことは ないわ。 97 00:07:42,529 --> 00:07:44,464 (すみれ) でも 今日は 私が 生まれたときの→ 98 00:07:44,531 --> 00:07:47,467 お母さまの気持ちを 作文にしなさいっていう→ 99 00:07:47,534 --> 00:07:52,473 宿題が出たの。 お食事のときに お母さまに お聞きして→ 100 00:07:52,539 --> 00:07:56,543 今日中に 作文に まとめて 提出しないと いけないの。 101 00:07:58,478 --> 00:08:01,481 \(戸の開閉音) 102 00:08:06,486 --> 00:08:11,425 (九兵衛) 本気を出そうと してるようだな。 103 00:08:11,491 --> 00:08:13,427 (宮崎) 九兵衛先生。 いらしてたんですか? 104 00:08:13,493 --> 00:08:20,434 (九兵衛) お前に お父さんの話を してしまって→ 105 00:08:20,500 --> 00:08:26,440 本当に よかったのか どうか 気になって 仕方なくてな。 106 00:08:26,507 --> 00:08:29,443 (宮崎) お話しいただけて ありがたかったです。 107 00:08:29,509 --> 00:08:32,446 ホントは 先生が おみえになられた あの日→ 108 00:08:32,513 --> 00:08:35,449 陶芸家を やめようか 迷い始めとったんです。 109 00:08:35,515 --> 00:08:40,454 (九兵衛) そうだったのか。 それで 今は どうなんだ? 110 00:08:40,520 --> 00:08:42,456 石に かじりついてでも→ 111 00:08:42,522 --> 00:08:46,460 一人前の陶芸家に なるまで 頑張ります。 112 00:08:46,526 --> 00:08:51,465 それが 私を育ててくれた 親父への供養だと 思うとります。 113 00:08:51,532 --> 00:08:55,469 そうか。 その言葉を聞いて 安心した。 114 00:08:55,535 --> 00:08:59,406 ですから 基本中の基本。 粘土の菊練りから→ 115 00:08:59,473 --> 00:09:01,408 やり直しを していたところだったんです。 116 00:09:01,475 --> 00:09:07,414 (九兵衛) そうか。 それなら わしが 菊練りを やってみせる。→ 117 00:09:07,481 --> 00:09:10,417 もう一度 よく 見ておきなさい。 118 00:09:10,484 --> 00:09:14,421 (九兵衛) わしの菊練りは こうだ。→ 119 00:09:14,488 --> 00:09:18,425 左手を こう 使って。 土を 練りこむ。 120 00:09:18,492 --> 00:09:24,498 すると キクの輪が 二重になって 2輪の キクの花が できる。 121 00:09:26,900 --> 00:09:29,836 (大造) それじゃ 始めるとしようか。 122 00:09:31,104 --> 00:09:33,040 (春子) いただきます! (大造) はい。 123 00:09:33,106 --> 00:09:35,042 (一同) いただきます。 124 00:09:35,676 --> 00:09:38,612 (春子) お母さん。 フォークと ナイフは こうやって 持つんだよ。→ 125 00:09:38,679 --> 00:09:43,617 ナイフは 右手。 フォークは 左手。 (里子) 春子。 すごいじゃない。 126 00:09:43,684 --> 00:09:46,620 こないだ お伺いしたとき 教えていただいたのね? 127 00:09:46,687 --> 00:09:48,622 (春子) うん。 でも 全然。 128 00:09:48,689 --> 00:09:51,625 それじゃ おいしく 食べられないから→ 129 00:09:51,692 --> 00:09:53,627 しょぼんって していたら 大造先生が→ 130 00:09:53,694 --> 00:09:57,564 「好きなように おいしく 食べていいよ」って 言ってくれたの。 131 00:09:57,631 --> 00:09:59,566 (里子) そう。 (春子) うん。 だから→ 132 00:09:59,633 --> 00:10:03,570 フォークだけで 食べる。 いいですよね? 大造先生? 133 00:10:03,637 --> 00:10:05,572 (大造) ああ。 いいとも。 春子ちゃんが→ 134 00:10:05,639 --> 00:10:08,575 おいしいと思う 方法で 食べなさい。 135 00:10:08,642 --> 00:10:11,578 春子ちゃんが おいしそうに 食べるのを見てると→ 136 00:10:11,645 --> 00:10:14,581 私も うれしいし 食欲が湧く。 137 00:10:14,648 --> 00:10:17,584 (すみれ) 私もですわ おじいさま。→ 138 00:10:17,651 --> 00:10:19,586 お母さま。 (まき) うん? 139 00:10:19,653 --> 00:10:21,588 (すみれ) お聞きしても いいかしら? 140 00:10:21,655 --> 00:10:23,590 (まき) 何を お聞きに なりたいんですか? 141 00:10:23,657 --> 00:10:27,594 (すみれ) 今日 学校の宿題で 私が生まれたときの→ 142 00:10:27,661 --> 00:10:30,597 お母さまの お気持ちを 作文に まとめるように→ 143 00:10:30,664 --> 00:10:33,600 先生が おっしゃられたのですけれど→ 144 00:10:33,667 --> 00:10:36,603 お母さまが すみれを 産んでくださったときのことを→ 145 00:10:36,670 --> 00:10:38,605 教えてください。 146 00:10:38,672 --> 00:10:41,608 (春子) 私も。 お母さんから 聞きたい。→ 147 00:10:41,675 --> 00:10:46,680 いいでしょ? お母さん。 私を産んだときのこと 教えて。 148 00:10:48,682 --> 00:10:51,618 (春子) いいでしょう?→ 149 00:10:51,685 --> 00:10:53,620 春に 生まれたから 春子って→ 150 00:10:53,687 --> 00:10:56,623 私に 名前を付けてくれたんだよね? 151 00:10:56,690 --> 00:10:58,558 (里子) そうよ。 (春子) お父さん→ 152 00:10:58,625 --> 00:11:01,561 絵描きさんだったんでしょ? お父さんと 出会って→ 153 00:11:01,628 --> 00:11:05,565 私が 生まれたころの話を 聞きたい。 154 00:11:05,632 --> 00:11:09,569 (里子) お母さん 子供のころから 学校の先生に なりたくて→ 155 00:11:09,636 --> 00:11:11,571 先生に なったの。 156 00:11:11,638 --> 00:11:14,574 先生になって その学校で→ 157 00:11:14,641 --> 00:11:17,577 春子の お父さんになる人と 出会ったんだ。 158 00:11:17,644 --> 00:11:20,580 お父さん。 絵描きを していたんじゃ なかったの? 159 00:11:20,647 --> 00:11:23,583 (里子) そう。 絵描きさんだったの。 160 00:11:23,650 --> 00:11:28,588 でも スランプになって そのときは 学校の先生をしていたの。 161 00:11:28,655 --> 00:11:31,591 (春子) そうだったんだ。 162 00:11:31,658 --> 00:11:36,596 (里子) ものすごく 正直な人で 誰にでも 優しい人だったわ。 163 00:11:36,663 --> 00:11:38,598 春子の お父さん。 真っすぐな目で→ 164 00:11:38,665 --> 00:11:41,601 「結婚してください」って 言ってくれたの。 165 00:11:41,668 --> 00:11:44,604 お母さんも お父さんのこと 大好きだったから→ 166 00:11:44,671 --> 00:11:48,608 「よろしく お願いします」って 言って 結婚したのよ。 167 00:11:48,675 --> 00:11:51,611 それじゃ お父さんと お母さん。→ 168 00:11:51,678 --> 00:11:56,616 出会って すぐに 結婚したんだ? (里子) そうよ。 169 00:11:56,683 --> 00:12:01,555 それから 1年して 春子を おなかの中に 授かったの。 170 00:12:01,621 --> 00:12:05,559 春子。 おなかの中で じっとしてた? 171 00:12:05,625 --> 00:12:08,562 (里子) 5カ月くらいまでは おとなしかったわよ。 172 00:12:08,628 --> 00:12:10,564 いい子にしてたんだ。 173 00:12:10,630 --> 00:12:12,566 (里子) でも 6カ月を 過ぎたあたりから→ 174 00:12:12,632 --> 00:12:15,569 おなかの中で 蹴り始めるようになって。 175 00:12:15,635 --> 00:12:19,573 1年間の約束で 学校を お休みしたの。 176 00:12:19,639 --> 00:12:23,577 ようやく 春子らしく なってきたぞ。 それで? 177 00:12:23,643 --> 00:12:25,579 (里子) 春子を 出産するまでの間→ 178 00:12:25,645 --> 00:12:29,583 おなかの中の 春子に いっつも 話し掛けてたのよ。 179 00:12:29,649 --> 00:12:31,585 (春子) 何て? 180 00:12:31,651 --> 00:12:35,589 (里子) そうね。 朝 起きたら 「おはよう」 181 00:12:35,655 --> 00:12:39,593 朝の空気が 気持ちよかったら 「気持ちのいい 朝だね」って。 182 00:12:39,659 --> 00:12:41,595 思い付いたことは 何でも 話し掛けてたわ。 183 00:12:41,661 --> 00:12:44,598 そうだったんだ。 184 00:12:44,664 --> 00:12:47,601 それで 私が 生まれてきたときは どうだったの? 185 00:12:47,667 --> 00:12:50,604 (里子) 陣痛が起きて すぐに 生まれてきてくれたわ。 186 00:12:50,670 --> 00:12:52,606 安産だったわよ。 187 00:12:52,672 --> 00:12:57,544 きっと お母さんに 痛い思いを させないように したんだね。 188 00:12:57,611 --> 00:13:01,548 (里子) 春子が 生まれて もう 100日は 過ぎていたんだけど→ 189 00:13:01,615 --> 00:13:03,550 春子の おじいさんが→ 190 00:13:03,617 --> 00:13:07,554 お食い初めの儀式を するぞって 言いだして 儀式をしたの。 191 00:13:07,621 --> 00:13:11,558 そのときは よく泣く 赤ちゃんだったわ。 192 00:13:11,625 --> 00:13:13,560 (壮一)《これから 石原 春子ちゃんの→ 193 00:13:13,627 --> 00:13:18,565 お食い初めの儀式を 始めます。 はいはい》 194 00:13:18,632 --> 00:13:20,567 (弘江)《はい》 (壮一)《お母さん》→ 195 00:13:20,634 --> 00:13:23,570 《まだ 食べられないんだから 食べさせる ふりで いいからな》 196 00:13:23,637 --> 00:13:25,639 (壮一)《ふりで いいからな》 (雄介)《おいちい おいちい》 197 00:13:27,641 --> 00:13:30,577 (里子) 楽しかった 思い出。 198 00:13:30,644 --> 00:13:34,581 (春子) 私 そんなに泣いてたんだ? (里子) うん。 199 00:13:34,648 --> 00:13:38,585 (すみれ) お母さま。 今度は 私の お父さまと 出会ったときから→ 200 00:13:38,652 --> 00:13:43,657 私が 生まれたころまでの話を お聞かせください。 201 00:13:46,660 --> 00:13:49,663 (すみれ) お母さま。 教えてください。 202 00:13:51,665 --> 00:13:54,668 お母さま? 203 00:13:58,605 --> 00:14:02,609 (まき) すみれさん。 (すみれ) はい。 お母さま。 204 00:14:10,617 --> 00:14:16,556 (まき) お母さまが お父さまと 出会ったのは→ 205 00:14:16,623 --> 00:14:21,561 枝川流の 西アメリカ支部の方の ご紹介だったの。 206 00:14:21,628 --> 00:14:24,564 (すみれ) お父さまは アメリカに いらしたんですね? 207 00:14:24,631 --> 00:14:29,569 (まき) そうよ。 お父さまは アメリカから→ 208 00:14:29,636 --> 00:14:32,572 心のこもった エアメールを たくさん 下さったの。 209 00:14:32,639 --> 00:14:37,577 (すみれ) エアメールですか? (まき) そう。 そのエアメールを→ 210 00:14:37,644 --> 00:14:43,583 お母さま。 おじいさまに 読んでいただいたのよ。 211 00:14:43,650 --> 00:14:46,586 そうでしたわよね? お父さま。 212 00:14:46,653 --> 00:14:51,591 ああ。 そうだったとも。 剛太郎君の人柄が 表れた→ 213 00:14:51,658 --> 00:14:55,595 心のこもった エアメールだったことを覚えてる。 214 00:14:55,662 --> 00:15:01,534 (まき) お母さま。 お父さまに エアメールで プロポーズしていただいたのよ。 215 00:15:01,601 --> 00:15:06,539 エアメールで プロポーズだなんて 何だか すてき。 216 00:15:06,606 --> 00:15:09,542 それでは お父さまと お母さまは→ 217 00:15:09,609 --> 00:15:13,546 一度も会わずに 結婚を なさったのですか? 218 00:15:13,613 --> 00:15:17,550 (まき) お父さまは お母さまを 高校生のときに→ 219 00:15:17,617 --> 00:15:21,554 通学の電車の中で 見掛けて 覚えてくださっていたの。 220 00:15:21,621 --> 00:15:25,558 >> お母さまは? (まき) お母さまは…。 221 00:15:25,625 --> 00:15:29,562 10年前は もう 目が 見えなかったから→ 222 00:15:29,629 --> 00:15:35,568 お会いしなくても お父さまの お人柄が分かる エアメールだけで→ 223 00:15:35,635 --> 00:15:38,571 十分だったのよ。 >> お母さまは→ 224 00:15:38,638 --> 00:15:42,575 お父さまと 一度も会わずに 結婚されたなんて。 225 00:15:42,642 --> 00:15:45,578 すみれ。 ものすごく ロマンチックな お話だと思います。 226 00:15:45,645 --> 00:15:51,584 (まき) そうね。 剛太郎さんが エアメールどおりの→ 227 00:15:51,651 --> 00:15:56,589 誠実で 優しい方で 本当に よかったわ。 228 00:15:56,656 --> 00:15:59,526 すみれが お母さまの おなかの中に いたときは→ 229 00:15:59,592 --> 00:16:02,529 どうでしたの? 春子ちゃんと 同じように→ 230 00:16:02,595 --> 00:16:06,533 お母さまの おなかの中を 蹴ったりしましたか? 231 00:16:06,599 --> 00:16:09,536 (まき) そんなことは なかったわ。 232 00:16:09,602 --> 00:16:12,539 それでは おとなしかったのですか? 233 00:16:12,605 --> 00:16:15,542 (まき) そう。 おとなしかったわ。 234 00:16:15,608 --> 00:16:19,612 すみれを 初めて 抱いたときは どうでしたか? 235 00:16:21,614 --> 00:16:30,557 (まき)《藤塚さん。 初めまして。 私 枝川まきと 申します》 236 00:16:30,623 --> 00:16:32,559 (剛太郎)《初めまして》 237 00:16:32,625 --> 00:16:36,563 (まき)《お手紙 下さったこと 覚えていらっしゃいますか?》 238 00:16:36,629 --> 00:16:40,567 (雄介)《すいません》 239 00:16:40,633 --> 00:16:45,572 《過去の記憶が 分からなくて》 240 00:16:45,638 --> 00:16:49,576 (まき)《私の夫に なっていただくのよ》 241 00:16:49,642 --> 00:16:55,582 《そして 私は この すみれさんの お母さんに なるの》 242 00:16:55,648 --> 00:17:04,524 すみれ。 お母さま あなたの お母さんに なるんだなって 思った。 243 00:17:04,591 --> 00:17:09,529 すみれを 絶対に 幸せにするって 誓ったのよ。 244 00:17:09,596 --> 00:17:11,598 お母さま。 245 00:17:13,600 --> 00:17:20,540 (まき) すみれは お母さまに 育てられて 幸せ? 246 00:17:20,607 --> 00:17:23,543 はい。 お母さま。 247 00:17:23,610 --> 00:17:26,546 (春子) すみれちゃんも お母さんに 愛されて 生まれてきて→ 248 00:17:26,613 --> 00:17:29,549 よかったね。 (すみれ) はい。 249 00:17:29,616 --> 00:17:32,552 (春子) それじゃあ ビフテキ お代わり。 250 00:17:32,619 --> 00:17:36,556 (里子) みんな 真剣に聞いてたのに 春子だけ 食べてたの!? 251 00:17:36,623 --> 00:17:39,559 (春子) うん。 だって このビフテキ おいしいんだもん。→ 252 00:17:39,626 --> 00:17:42,562 お代わりしたい。 いいでしょ? お母さん。 253 00:17:42,629 --> 00:17:45,565 (大造) ハハッ。 食欲旺盛なのは いいことだ。→ 254 00:17:45,632 --> 00:17:47,567 いくらでも 食べなさい。 255 00:17:47,634 --> 00:17:51,638 (春子) それじゃ 2人前 お代わり。 (里子) 春子! 256 00:18:02,015 --> 00:18:04,951 \(ドアの開く音) 257 00:18:04,951 --> 00:18:06,886 (順子) おかえり。 (里子) ただいま。 258 00:18:06,953 --> 00:18:11,891 遅くなって ごめんね。 (順子) 楽しんできたようね。 259 00:18:11,958 --> 00:18:14,894 (春子) 春子ね ビフテキ 2人分 お代わりしたんだよ。→ 260 00:18:14,961 --> 00:18:18,898 だから 今 おなか ぱんぱん。 それにね 運転手さんに→ 261 00:18:18,965 --> 00:18:21,901 自動車で 送ってもらったんだ。 すごいでしょ! 262 00:18:21,968 --> 00:18:24,904 (順子) すごいね。 春子ちゃん。 (里子) 春子ったら 欲張って→ 263 00:18:24,971 --> 00:18:27,841 2人分 お代わりしたのに 少し 残しそうになって。 264 00:18:27,907 --> 00:18:29,843 (春子) お母さん。 食べてたじゃないか。 265 00:18:29,909 --> 00:18:33,847 (里子) 残したら 申し訳ないでしょ! (順子) 相当 楽しんできたようね。 266 00:18:33,913 --> 00:18:35,849 それにね 今日 お母さんから→ 267 00:18:35,915 --> 00:18:40,854 私の お父さんと 私が 生まれたときの話 聞いたんだ。 268 00:18:40,920 --> 00:18:42,856 ホントに!? 269 00:18:42,922 --> 00:18:45,925 順子ちゃん。 そんなに 驚くこと? 270 00:18:47,927 --> 00:18:50,864 いや。 私も 聞いたこと なかったから→ 271 00:18:50,930 --> 00:18:54,868 知りたいなって 思ったの。 (春子) 教えてあげないよ。 272 00:18:54,934 --> 00:18:57,871 何だか 急に 眠くなってきた。→ 273 00:18:57,937 --> 00:19:01,875 今日は 歯 磨いて 寝る。 いいでしょ? お母さん。 274 00:19:01,941 --> 00:19:05,879 (里子) いいわよ 春子。 おやすみ。 (春子) おやすみなさい。 275 00:19:05,945 --> 00:19:08,948 (順子) おやすみ。 276 00:19:12,619 --> 00:19:15,955 ごめん。 (里子) いいのよ。 277 00:19:21,327 --> 00:19:23,897 \(大造)私だ。 入っても いいかね? 278 00:19:23,963 --> 00:19:26,966 (まき) はい。 お父さま。 279 00:19:35,909 --> 00:19:39,913 先ほどは よく 我慢した。 280 00:19:41,915 --> 00:19:48,855 (まき) お父さま。 すみれに 本当のことを 言っては いけませんか? 281 00:19:48,922 --> 00:19:52,859 まきは すみれに→ 282 00:19:52,926 --> 00:19:56,863 嘘を つき続けていることが 苦しいのです。 283 00:19:56,930 --> 00:19:59,866 お前は 自分に 正直な人間だ。 284 00:19:59,933 --> 00:20:04,871 だから その苦しみは 私も 理解しているつもりだ。 285 00:20:04,938 --> 00:20:08,942 (まき) それならば お父さま。 286 00:20:13,947 --> 00:20:17,884 10年前にも 話したとおり→ 287 00:20:17,951 --> 00:20:24,891 枝川流は 十七代目の私まで 一子相伝を 守ってきた。 288 00:20:24,958 --> 00:20:29,829 一子相伝を 守ってきたからこそ 分裂もせず→ 289 00:20:29,896 --> 00:20:34,834 3万人の門弟を 擁するまでの 流派に 成長した。 290 00:20:34,901 --> 00:20:40,840 すみれ 誕生の知らせも あの子が 3歳になるまで→ 291 00:20:40,907 --> 00:20:42,842 「未熟児で 生まれてきたので→ 292 00:20:42,909 --> 00:20:45,845 ちゃんと 生きることが できるように なるまで→ 293 00:20:45,912 --> 00:20:51,851 知らせずにいた」と 理由をつけて 遅らせた。 294 00:20:51,918 --> 00:20:56,856 結婚の時期も 誕生の時期も 曖昧にしたので→ 295 00:20:56,923 --> 00:21:00,860 誰も そのことに 気付く人間は 今まで 現れなかった。 296 00:21:00,927 --> 00:21:06,866 (まき) でも 葉山流の 加代さんが 今日→ 297 00:21:06,933 --> 00:21:11,871 計算上 臨月のころの 私を 見掛けたと。 298 00:21:11,938 --> 00:21:14,874 「まるで 妊娠なんか していないかのような→ 299 00:21:14,941 --> 00:21:16,876 プロポーションだった」と おっしゃっていたの。 300 00:21:16,943 --> 00:21:22,882 それで? すみれは まきの 子ではないと 言い張ったのか? 301 00:21:22,949 --> 00:21:27,820 (まき) いいえ。 >> そうだろう。 302 00:21:27,887 --> 00:21:31,824 幼い すみれに 事実を話し→ 303 00:21:31,891 --> 00:21:36,829 すみれにも 一子相伝のために 嘘を つかせる方が→ 304 00:21:36,896 --> 00:21:41,834 残酷だと 思わんかね? 305 00:21:41,901 --> 00:21:45,838 私が 死んだ後も 枝川流。 306 00:21:45,905 --> 00:21:52,845 そして まき。 すみれ。 剛太郎君が→ 307 00:21:52,912 --> 00:21:56,849 永遠に 輝き続けて いられるためには→ 308 00:21:56,916 --> 00:22:01,721 全てを 今のままに しておく方が いいと思う。 309 00:22:03,356 --> 00:22:09,929 まきも いいな? (まき) はい。