1 00:00:06,358 --> 00:00:08,694 (足立)はい! 2 00:00:08,694 --> 00:00:15,367 (拍手) 3 00:00:15,367 --> 00:00:24,067 <こうして 少しずつ キアリスの空気が 変わり始めました> 4 00:00:40,693 --> 00:00:44,363 <ある夏のこと 私は 大学の友人である➡ 5 00:00:44,363 --> 00:00:46,699 甲田伸太郎に➡ 6 00:00:46,699 --> 00:00:49,034 夏休みを遊び暮そうと誘われ➡ 7 00:00:49,034 --> 00:00:54,373 甲田ほどは 親しくなかったけれど やはり大学の同窓で➡ 8 00:00:54,373 --> 00:00:57,710 彼の親友 結城弘一の家に➡ 9 00:00:57,710 --> 00:01:00,410 半月ばかり 逗留した> 10 00:01:10,055 --> 00:01:14,393 <結城家には 一人の美しい女性がいた。➡ 11 00:01:14,393 --> 00:01:18,693 志摩子さんといって…> 12 00:01:32,678 --> 00:01:35,347 <のんきな学生生活に お別れの夏を➡ 13 00:01:35,347 --> 00:01:39,685 弘一君たちは パラソルの下で笑い興じた。➡ 14 00:01:39,685 --> 00:01:43,985 実に自由で のびやかな日々だった> 15 00:01:51,297 --> 00:01:54,033 <弘一君の家は お金持ちで➡ 16 00:01:54,033 --> 00:01:57,703 ある晩 少将の誕生祝いがあった。➡ 17 00:01:57,703 --> 00:02:03,403 宴は終って 夏の夜の興を 惜んで 座に残っていた> 18 00:02:27,399 --> 00:02:30,069 ≪(大きな音) 19 00:02:30,069 --> 00:02:35,069 ≪(甲田) 誰か来て下さい! 大変です! 弘一君が 大変です! 20 00:03:06,906 --> 00:03:09,906 どうしたんだ!? 21 00:03:30,062 --> 00:03:32,331 弘一。 22 00:03:32,331 --> 00:03:36,001 <弾丸が 足首を射ぬいていた> 23 00:03:36,001 --> 00:03:38,701 (結城夫人)弘一…。 24 00:04:04,029 --> 00:04:05,965 (うめき声) 25 00:04:05,965 --> 00:04:12,705 <意識を取りもどした弘一君は 病院へ。➡ 26 00:04:12,705 --> 00:04:18,377 警察署から 波多野警部が到着した。➡ 27 00:04:18,377 --> 00:04:22,047 賊は 書斎にあった 金製の置時計➡ 28 00:04:22,047 --> 00:04:25,918 万年ペン 懐中時計 煙草セット➡ 29 00:04:25,918 --> 00:04:29,918 つまり 金製品を ことごとく奪い去った> 30 00:04:33,325 --> 00:04:36,228 (波多野)賊は金製品を 盗み集めているところへ➡ 31 00:04:36,228 --> 00:04:43,228 弘一君が ひょっこり入ったので 恐怖のあまり ピストルを発射した。 32 00:05:04,289 --> 00:05:09,228 <好奇心の強い私は 警部のあとを追った。➡ 33 00:05:09,228 --> 00:05:12,998 邪魔者は 私一人でなかった。➡ 34 00:05:12,998 --> 00:05:16,998 やはり 誕生祝いに呼ばれた 赤井さんであった> 35 00:05:27,379 --> 00:05:31,984 <結城家に泊り込んだ二日目 赤井さんと弘一君が➡ 36 00:05:31,984 --> 00:05:37,984 犯罪学や探偵談の書物が 並んでいる書斎で話していた> 37 00:05:51,336 --> 00:05:56,675 <彼等は いずれおとらぬ探偵通で 赤井さんが事件に興味をもち➡ 38 00:05:56,675 --> 00:06:02,347 足跡を見に来たのは 無理もないことである> 39 00:06:02,347 --> 00:06:07,686 おやおや? 犯人は 井戸の中へ飛び込んだのかしら。 40 00:06:07,686 --> 00:06:10,386 足跡を踏まぬように! 41 00:06:16,028 --> 00:06:19,364 <信じがたいことであった。➡ 42 00:06:19,364 --> 00:06:23,664 警部は現場の見取図を書きつけた> 43 00:07:02,908 --> 00:07:07,346 その時 君は 賊の姿を見なかったのですね? 44 00:07:07,346 --> 00:07:09,281 見ませんでした。 45 00:07:09,281 --> 00:07:11,683 <志摩子さんは> 46 00:07:11,683 --> 00:07:15,354 思い違いかもしれませんけど 私の書斎へも➡ 47 00:07:15,354 --> 00:07:19,354 誰か入った者が あるらしいのでございます。 48 00:07:33,305 --> 00:07:38,177 <例の足跡を見直そうと 五時に床を出た。➡ 49 00:07:38,177 --> 00:07:40,979 又しても 赤井さんである。➡ 50 00:07:40,979 --> 00:07:46,318 彼は 建物に身をかくして 北よりの方角を 覗いている> 51 00:07:46,318 --> 00:07:49,988 ああ~! 52 00:07:49,988 --> 00:07:54,660 やあ 松村さんでしたか。 53 00:07:54,660 --> 00:07:59,360 <私は 彼を つきのけるように 北の方をながめたが…> 54 00:08:07,239 --> 00:08:12,239 <其後 結城邸に いとまを告げた私は…> 55 00:08:19,351 --> 00:08:24,690 <彼は有福らしい家を出て 逃げるように スタスタと行く。➡ 56 00:08:24,690 --> 00:08:27,025 私も後を追った。➡ 57 00:08:27,025 --> 00:08:31,725 表札を見ると 「琴野三右衛門」とあった> 58 00:08:34,299 --> 00:08:40,172 <一丁ばかりで追いついた> 59 00:08:40,172 --> 00:08:43,172 やあ。 60 00:08:48,313 --> 00:08:50,249 <わけを たずねても…> 61 00:08:50,249 --> 00:08:53,249 何 ちょっと。 62 00:08:57,322 --> 00:08:59,658 ピストルの音がした時➡ 63 00:08:59,658 --> 00:09:02,561 あなたは どこにおいでになったのですか? 64 00:09:02,561 --> 00:09:08,261 ちょうど タバコが切れていたので 買いに出かけていたのですよ。 65 00:09:18,010 --> 00:09:21,010 (ノック) 66 00:09:23,348 --> 00:09:29,048 松村君 よく来てくれたね。 67 00:09:36,628 --> 00:09:41,328 <彼は うれしそうに手を差し出した> 68 00:09:49,641 --> 00:09:52,311 不思議な事件だね。 69 00:09:52,311 --> 00:09:54,980 事によると これは 皆が考えているよりも➡ 70 00:09:54,980 --> 00:09:56,915 ずっと恐ろしい犯罪だよ。 71 00:09:56,915 --> 00:09:59,318 ただの泥棒ではないと 言うのかね? 72 00:09:59,318 --> 00:10:02,618 泥棒なんて なまやさしい犯罪ではない。 73 00:10:04,990 --> 00:10:08,327 第一の不思議は 古井戸から発し終わっている➡ 74 00:10:08,327 --> 00:10:11,663 内輪に歩く足跡だね。 75 00:10:11,663 --> 00:10:15,334 僕は 波多野さんに 現場の 見取り図を見せてもらったが➡ 76 00:10:15,334 --> 00:10:20,005 行きと帰りの足跡が 不自然に離れていた。 77 00:10:20,005 --> 00:10:25,877 ああした場合 2点間の最短距離を 歩くはずではないだろうか。 78 00:10:25,877 --> 00:10:31,016 第二の不思議は 盗難品が 金製品に限られていた点だ。 79 00:10:31,016 --> 00:10:35,354 それを聞いた時 僕は すぐ思い当たった人物がある。 80 00:10:35,354 --> 00:10:37,289 その人物が 犯人だというのかい? 81 00:10:37,289 --> 00:10:41,226 盗まれた金製品で 一番大きいのは 何だと思う?➡ 82 00:10:41,226 --> 00:10:45,697 恐らく置き時計だ。 83 00:10:45,697 --> 00:10:51,370 君 花瓶を この窓から 力いっぱい投げてくれないか。 84 00:10:51,370 --> 00:10:54,370 早く 早く! 85 00:10:56,241 --> 00:10:59,044 (割れる音) 86 00:10:59,044 --> 00:11:04,916 よしよし それでいいんだよ。 ありがとう。 87 00:11:04,916 --> 00:11:08,387 ところで 常爺やの妙な挙動だがね➡ 88 00:11:08,387 --> 00:11:11,723 これが 最も有力な 手がかりになると思うよ。 89 00:11:11,723 --> 00:11:15,394 その翌朝 常爺やが何をしていたか 考えてみたまえ。➡ 90 00:11:15,394 --> 00:11:19,264 あすこには 今 花なんてないし 種をまく時節でもない。➡ 91 00:11:19,264 --> 00:11:23,564 結論は たった一つ。 92 00:11:33,879 --> 00:11:37,349 君 これから すぐ うずめた場所に行って➡ 93 00:11:37,349 --> 00:11:39,684 その品物を 持ってきてくれないだろうか。 94 00:11:39,684 --> 00:11:43,021 行ってもいいがね。 君は さっき➡ 95 00:11:43,021 --> 00:11:46,892 ただの泥棒の仕業ではなくて 悪魔の所業だと言ったね。 96 00:11:46,892 --> 00:11:50,695 何か根拠があるのかい? 97 00:11:50,695 --> 00:11:55,395 今は聞かないでくれたまえ。 98 00:11:59,371 --> 00:12:04,671 シェルシェ・ラ・ファンム。 99 00:12:24,596 --> 00:12:29,367 やっぱり… 恐ろしい事だ。 100 00:12:29,367 --> 00:12:33,067 あいつが そんな事を…。 101 00:12:35,006 --> 00:12:37,006 (ドアが開く音) 102 00:12:39,344 --> 00:12:43,344 だいぶ元気なようですね。 103 00:12:50,355 --> 00:12:55,694 え? 犯人が? 104 00:12:55,694 --> 00:12:59,030 琴野三右衛門という あの辺りの 地主を知ってますか? 105 00:12:59,030 --> 00:13:03,368 (弘一)ええ 知ってます。 その光雄という息子が➡ 106 00:13:03,368 --> 00:13:07,239 金色のものに 非常な 執着を持っている黄金狂で➡ 107 00:13:07,239 --> 00:13:11,539 部屋中が 仏壇みたいに金ピカなんです。 108 00:13:22,387 --> 00:13:28,059 まだです。 しかし なお十分調べさせるつもりです。 109 00:13:28,059 --> 00:13:33,865 フフフ… なるほど なるほど。 110 00:13:33,865 --> 00:13:37,869 ところで 例の井戸から発して 井戸で終わっている足跡を➡ 111 00:13:37,869 --> 00:13:40,338 何と ご解釈になりました? 112 00:13:40,338 --> 00:13:44,338 目下 取り調べ中です。 113 00:13:49,347 --> 00:13:52,017 警察が見当違いでも やっているとでも➡ 114 00:13:52,017 --> 00:13:54,686 言われるのですか? そうです。 115 00:13:54,686 --> 00:13:58,023 琴野光雄逮捕は とんでもない見当違いです。 116 00:13:58,023 --> 00:14:00,723 何ですって!? 117 00:14:02,360 --> 00:14:05,697 <赤井さん!> 118 00:14:05,697 --> 00:14:09,568 例の現場見取り図を お持ちでしょうか? 119 00:14:09,568 --> 00:14:13,868 <弘一君は 波多野警部に…> 120 00:14:21,046 --> 00:14:26,384 すると あの足跡は 犯人が 外部から来たと見せかけるトリック➡ 121 00:14:26,384 --> 00:14:30,684 つまり… 122 00:14:41,333 --> 00:14:44,235 (弘一)僕は最初から そう思っていたのです。 123 00:14:44,235 --> 00:14:48,673 次に やつは なぜ 金製品ばかりを目がけたか。 124 00:14:48,673 --> 00:14:52,344 賊が 琴野光雄の仕業らしく 装うためだったでしょう。 125 00:14:52,344 --> 00:14:57,215 だが もう一つ それはね➡ 126 00:14:57,215 --> 00:15:03,215 あの金製品類の大きさに 関係があるのですよ。 127 00:15:14,032 --> 00:15:18,703 松村君 花瓶を投げてもらったのはね➡ 128 00:15:18,703 --> 00:15:21,606 盗まれた置き時計と同じぐらいの 重さだと思ったので➡ 129 00:15:21,606 --> 00:15:24,576 どれほど遠くまで投げられるか 試したのだよ。 130 00:15:24,576 --> 00:15:28,046 しかし なぜ 犯人は そんなまねを…。 131 00:15:28,046 --> 00:15:31,316 何が犯人の真の目的だったと おっしゃるのですか? 132 00:15:31,316 --> 00:15:34,616 分かりきっているじゃ ありませんか。 133 00:15:36,655 --> 00:15:39,991 えっ あなたを殺す? 134 00:15:39,991 --> 00:15:43,862 たかが 金製品を盗んで あの発砲は 非常に不自然です。 135 00:15:43,862 --> 00:15:46,665 泥棒の方は見せかけで➡ 136 00:15:46,665 --> 00:15:50,001 真の目的は 殺人だったのじゃないかとね。 137 00:15:50,001 --> 00:15:52,904 君を恨んでいた人物でも あるのですか? 138 00:15:52,904 --> 00:15:54,873 足跡が贋物だとしたら➡ 139 00:15:54,873 --> 00:15:57,342 賊は廊下伝いに 逃げるしかありませんが➡ 140 00:15:57,342 --> 00:15:59,678 廊下には 甲田君が通りかかっていた。 141 00:15:59,678 --> 00:16:02,013 逃げる事は不可能です。 とすると➡ 142 00:16:02,013 --> 00:16:08,713 残るは 被害者の僕と 発見者の甲田君の2人。 143 00:16:15,360 --> 00:16:20,231 そうです。 彼は 被害者の親友で 最初の発見者という➡ 144 00:16:20,231 --> 00:16:24,369 隠れみのに隠れていたのです。 145 00:16:24,369 --> 00:16:29,669 まさか あの甲田君が…。 146 00:16:31,176 --> 00:16:34,646 確かな証拠でもあるのですか? 147 00:16:34,646 --> 00:16:38,946 松村君。 148 00:16:40,518 --> 00:16:44,989 そういえば… 149 00:16:44,989 --> 00:16:48,989 もっと確かなものがあります。 150 00:16:56,601 --> 00:17:00,538 爺やが なぜ隠したか。 151 00:17:00,538 --> 00:17:04,342 松村君は どうして あれに気が付かなかったかなあ。➡ 152 00:17:04,342 --> 00:17:08,042 毎日 一緒に海へ行ってたくせに。 153 00:17:36,641 --> 00:17:39,544 だが サックが落ちていたからといって➡ 154 00:17:39,544 --> 00:17:41,980 どうして あの爺さんは そう簡単に➡ 155 00:17:41,980 --> 00:17:45,316 甲田を疑ったのでしょう? 156 00:17:45,316 --> 00:17:51,016 <弘一君は 少し云いにくそうに話しはじめる> 157 00:18:00,331 --> 00:18:06,204 恥ずかしい話をすると 僕らは よく口論した。 158 00:18:06,204 --> 00:18:09,340 取っ組み合いさえやった。 159 00:18:09,340 --> 00:18:14,012 一番いけないのは 志摩子さんの曖昧な態度。 160 00:18:14,012 --> 00:18:16,347 そこで 甲田君にすれば➡ 161 00:18:16,347 --> 00:18:19,017 許嫁という強みを持っている僕を 殺してしまえば➡ 162 00:18:19,017 --> 00:18:21,686 という気になったのかも しれません。➡ 163 00:18:21,686 --> 00:18:24,355 いがみ合いを知っていた 常爺やは➡ 164 00:18:24,355 --> 00:18:30,055 甲田君所持のサックを見ると 意味を悟ったのでしょう。 165 00:18:39,003 --> 00:18:44,642 <警察へ届け出たものがあった。➡ 166 00:18:44,642 --> 00:18:47,545 泥まみれの赤井さんであった。➡ 167 00:18:47,545 --> 00:18:51,516 盗難品を取出すため 池へ はいったのであった。➡ 168 00:18:51,516 --> 00:18:57,222 彼を犯人ではと疑ったが とんだ思い違いだった。➡ 169 00:18:57,222 --> 00:19:03,922 靴足袋は 重い灰皿といっしょに ハンカチに包んであった> 170 00:19:16,007 --> 00:19:20,678 <だが 彼は いかに責められても なかなか 実を吐かない。➡ 171 00:19:20,678 --> 00:19:25,978 いくら強情を張ったところで 証拠が そろい過ぎている> 172 00:19:43,635 --> 00:19:46,537 <赤井さんが たずねて来た。➡ 173 00:19:46,537 --> 00:19:50,508 この人には とんだ疑いをかけて 済まなく思っていたので➡ 174 00:19:50,508 --> 00:19:56,214 以前よりは親しく話しかけた。➡ 175 00:19:56,214 --> 00:20:00,914 志摩子さんは…> 176 00:20:06,858 --> 00:20:13,998 <私たちは 志摩子さんを誘って 海岸へ散歩に出た> 177 00:20:13,998 --> 00:20:20,698 ほら 見たまえ ほら。 ちょっと 危ないわよ。 178 00:20:28,012 --> 00:20:31,349 何を そんなに 笑っていらっしゃるのよ。 179 00:20:31,349 --> 00:20:36,349 いえね つまらない事なんですよ。 180 00:20:41,025 --> 00:20:42,961 <それが ほどけ…> 181 00:20:42,961 --> 00:20:46,661 結んであげましょうか? 182 00:20:49,367 --> 00:20:54,667 結城さん すみませんが。 183 00:21:50,028 --> 00:21:52,363 どこに行っちまったんだろう? 184 00:21:52,363 --> 00:21:55,266 まさか 迷子にもなりますまい。 185 00:21:55,266 --> 00:21:59,037 それよりも ここで 一休みしようじゃありませんか。 186 00:21:59,037 --> 00:22:02,707 あ… よいしょ。 187 00:22:02,707 --> 00:22:05,376 実はね 内密で お話ししたい事があったのですよ。 188 00:22:05,376 --> 00:22:07,311 何です? 189 00:22:07,311 --> 00:22:10,048 あなたは 甲田君が真犯人だと➡ 190 00:22:10,048 --> 00:22:13,048 本当に 信じていらっしゃるのですか? 191 00:22:14,919 --> 00:22:18,219 実はね… 192 00:22:24,395 --> 00:22:27,065 甲田君は ピストルの音を聞いた時➡ 193 00:22:27,065 --> 00:22:29,967 志摩子さんの日記帳を 盗み読みしていたんです。 194 00:22:29,967 --> 00:22:31,903 ピストルで驚いて飛び出したから➡ 195 00:22:31,903 --> 00:22:34,872 日記帳が そのまま 机に放り出してあった。 196 00:22:34,872 --> 00:22:41,012 つまり 彼が発射したのでは ない事になります。 197 00:22:41,012 --> 00:22:44,882 何のために 日記帳を 読んでいたというのでしょう。 198 00:22:44,882 --> 00:22:50,021 彼は 恋人の志摩子さんの 本当の心を判じかねたのです。 199 00:22:50,021 --> 00:22:55,359 日記帳を見たら それが分かりはしないかと。 200 00:22:55,359 --> 00:22:59,697 で… 201 00:22:59,697 --> 00:23:04,035 いや。 甲田君には 不利な証拠が そろい過ぎていますからね。 202 00:23:04,035 --> 00:23:06,370 そうでしょうとも。 203 00:23:06,370 --> 00:23:09,707 いや~ ところが 僕は反面➡ 204 00:23:09,707 --> 00:23:13,044 有利な証拠も いくらか あるような気がするのです。 205 00:23:13,044 --> 00:23:15,713 第一に あなたを殺すのが目的なら➡ 206 00:23:15,713 --> 00:23:19,050 なぜ 生死を確かめないで 人を呼んだか。 207 00:23:19,050 --> 00:23:22,386 第二には 足跡の重なる事を避けたほど➡ 208 00:23:22,386 --> 00:23:25,723 綿密な彼が 自分の足癖を そのまま内輪につけておいた➡ 209 00:23:25,723 --> 00:23:28,059 というのも信じ難い事です。 210 00:23:28,059 --> 00:23:31,329 第三の反証ですが それは 例のハンカチの結び目です。 211 00:23:31,329 --> 00:23:35,666 それは 俗に縦結びという 結び端が十文字に見えるような➡ 212 00:23:35,666 --> 00:23:38,002 子供のよくやる結び方なのです。 213 00:23:38,002 --> 00:23:41,339 僕は早速 甲田君の家を訪問して 探してもらったところ➡ 214 00:23:41,339 --> 00:23:44,008 帳面のとじ糸や 甲田君が結んだものが➡ 215 00:23:44,008 --> 00:23:46,677 例外なく 普通の結び方なのです。 216 00:23:46,677 --> 00:23:51,549 甲田君が あのハンカチの結び方にまで 欺瞞をやったとは考えられない。 217 00:23:51,549 --> 00:23:53,551 結び目なんかよりも ずっと危険な➡ 218 00:23:53,551 --> 00:23:59,257 頭字の入ったハンカチを 平気で使ったぐらいですからね。 219 00:23:59,257 --> 00:24:05,029 フフフ ハハハ…。 220 00:24:05,029 --> 00:24:09,700 それから 第四の 最も大切な反証はね➡ 221 00:24:09,700 --> 00:24:15,039 ウフフフフフフ…。 222 00:24:15,039 --> 00:24:18,376 池の底から出た靴足袋がね➡ 223 00:24:18,376 --> 00:24:24,715 滑稽な事に 甲田君の足には 小さすぎて合わないのですよ。 224 00:24:24,715 --> 00:24:28,052 アハハハハ…。 225 00:24:28,052 --> 00:24:32,323 証拠の羅列は もうたくさんです。 結論を言って下さい。 226 00:24:32,323 --> 00:24:34,659 あなたは 一体 誰が犯人だと おっしゃるのですか? 227 00:24:34,659 --> 00:24:37,995 それは あなたです。 228 00:24:37,995 --> 00:24:41,866 アハハハハ…。 フフフフフ…。 229 00:24:41,866 --> 00:24:44,869 冗談はよして下さい。 どこの世界に➡ 230 00:24:44,869 --> 00:24:47,338 自分で自分に 発砲したりする やつがありましょう。 231 00:24:47,338 --> 00:24:50,241 びっくりさせないで下さい。 232 00:24:50,241 --> 00:24:55,941 犯人は あなたです。 233 00:24:57,982 --> 00:25:01,886 本気ですか? 234 00:25:01,886 --> 00:25:07,186 何を証拠に? 何の理由で? 235 00:25:09,594 --> 00:25:16,701 二から一引く 一。 236 00:25:16,701 --> 00:25:20,037 簡単な算術の問題にすぎません。 237 00:25:20,037 --> 00:25:24,909 甲田君が犯人でなかったら 残る あなたが犯人です。 238 00:25:24,909 --> 00:25:27,712 あなたの帯の結び目➡ 239 00:25:27,712 --> 00:25:30,381 さっき結んでもらいました この包帯。 240 00:25:30,381 --> 00:25:33,284 やっぱり 十字型の間違った結び方です。 241 00:25:33,284 --> 00:25:38,990 これも 一つの 有力な証拠にはなりませんかね。 242 00:25:38,990 --> 00:25:42,326 だが 僕は なぜ自分自身を➡ 243 00:25:42,326 --> 00:25:45,026 撃たなければ ならなかったのです? 244 00:25:51,002 --> 00:25:53,904 この事件では 全ての人が➡ 245 00:25:53,904 --> 00:25:56,674 「被害者は 同時に 加害者ではありえない」という➡ 246 00:25:56,674 --> 00:26:00,344 催眠術にかかっています。 実に考えた犯罪です。 247 00:26:00,344 --> 00:26:04,215 しかし 小説家の空想ですね。 248 00:26:04,215 --> 00:26:08,686 サックを現場に捨てたのも 金製品を 池に投げ込んだのも➡ 249 00:26:08,686 --> 00:26:13,357 足跡をつけたのも 言うまでもなく あなたです。 250 00:26:13,357 --> 00:26:15,293 志摩子さんの書斎で➡ 251 00:26:15,293 --> 00:26:18,029 甲田君が 日記帳を読んでいる 機会を利用し➡ 252 00:26:18,029 --> 00:26:21,699 隣室の甲田君が その物音で 飛んでくる事を予知し➡ 253 00:26:21,699 --> 00:26:26,399 足首を撃った。 アハハハハハ。 254 00:26:29,373 --> 00:26:32,643 なるほど なるほど! 255 00:26:32,643 --> 00:26:36,981 一応は 筋の通ったお考えですね! 256 00:26:36,981 --> 00:26:38,916 だが 甲田君を 陥れるぐらいのために➡ 257 00:26:38,916 --> 00:26:41,852 不具者になるというのは 少し変ですね。 258 00:26:41,852 --> 00:26:46,324 甲田君を罪に落とすのも 目的には相違なかったが➡ 259 00:26:46,324 --> 00:26:49,226 本当の目的は 別にあったのです。 260 00:26:49,226 --> 00:26:52,526 では 言いましょう。 261 00:27:01,339 --> 00:27:04,241 あなたが 学生時代 近眼鏡をかけて➡ 262 00:27:04,241 --> 00:27:07,011 目を悪くしようと試みた事を 探り出しました。 263 00:27:07,011 --> 00:27:08,946 あなたは 軍人の子です。 264 00:27:08,946 --> 00:27:11,349 こそくな手段は 発覚のおそれがある。 265 00:27:11,349 --> 00:27:14,685 そこで思い切った方法を選んだ。 266 00:27:14,685 --> 00:27:17,685 しかも それは… 267 00:27:23,027 --> 00:27:25,696 (銃声) 268 00:27:25,696 --> 00:27:28,032 しっかりなさい。 269 00:27:28,032 --> 00:27:30,701 僕は 君を警察へ 突き出す気はありません。 270 00:27:30,701 --> 00:27:35,306 ただ 僕の推理が正しいかどうかを 確かめたかったのです。 271 00:27:35,306 --> 00:27:41,606 それに 君は もう何より恐ろしい 処罰を受けてしまったのです。 272 00:27:46,917 --> 00:27:57,995 ♬~ 273 00:27:57,995 --> 00:28:00,898 では 僕は これでお別れします。 274 00:28:00,898 --> 00:28:04,668 お別れする前に 僕の本名を 申し上げておきましょう。 275 00:28:04,668 --> 00:28:09,368 僕はね 君が 日頃 軽蔑していた… 276 00:28:12,009 --> 00:28:14,345 お父様のご依頼を受けて➡ 277 00:28:14,345 --> 00:28:16,680 陸軍の ある秘密事件を調べるために➡ 278 00:28:16,680 --> 00:28:20,551 お宅へ出入りしていたのです。 あなたは 明智小五郎は➡ 279 00:28:20,551 --> 00:28:22,553 理屈っぽいばかりだと おっしゃった。 280 00:28:22,553 --> 00:28:26,023 だが その私でも 小説家の空想よりは➡ 281 00:28:26,023 --> 00:28:31,629 実際的だという事が お分かりになりましたか。 282 00:28:31,629 --> 00:28:36,300 では さようなら。 283 00:28:36,300 --> 00:29:26,000 ♬~ 284 00:30:33,150 --> 00:30:37,054 こんばんは。 三宅弘城です。 285 00:30:37,054 --> 00:30:39,757 今 夜の10時です。 286 00:30:39,757 --> 00:30:43,193 そして ここが どこかといいますと…➡ 287 00:30:43,193 --> 00:30:47,064 恵比寿! 恵比寿駅前です。 288 00:30:47,064 --> 00:30:49,967 今日は恵比寿を➡ 289 00:30:49,967 --> 00:30:53,604 ちょっと さんぽしてみたいと 思うんですが➡ 290 00:30:53,604 --> 00:30:57,908 そのさんぽのお供が もうすぐ…。 291 00:30:57,908 --> 00:31:02,008 あ~あ… 恵比寿に溶け込んでませんね。