1 00:01:33,019 --> 00:01:37,023 (メガネさん)「スコッチウィスキー ホワイトヘザー」 2 00:01:37,023 --> 00:01:41,027 「アベラワーをキーモルトとして ブレンドされた その味は 3 00:01:41,027 --> 00:01:43,029 辛口で剛健」 4 00:01:43,029 --> 00:01:49,029 「野性味ある仕上がりは まさに男の酒と言えるだろう」 5 00:01:52,038 --> 00:01:59,045 「俺は この酒を見るたび ある男の生き様を思い出す」 6 00:01:59,045 --> 00:02:03,045 「今から 5年前の話だ」 7 00:02:11,057 --> 00:02:13,057 (マスター)どうぞ。 8 00:02:25,071 --> 00:02:28,074 フゥ…。 9 00:02:28,074 --> 00:02:34,074 「そいつは 酒を注文する以外 一言もしゃべらない男だった」 10 00:02:36,016 --> 00:02:41,021 「レモンには 月に一 二度 来る程度だろうか」 11 00:02:41,021 --> 00:02:45,025 「男について 俺たち常連が 知っていることと言えば 12 00:02:45,025 --> 00:02:48,028 風呂敷を常に持ち歩き 13 00:02:48,028 --> 00:02:54,028 飲む酒は ホワイトヘザーの ストレートダブルということだけだった」 14 00:02:57,037 --> 00:03:00,040 「俺たちは 無駄に話しかけないし 15 00:03:00,040 --> 00:03:04,044 男もまた 話しかけてはこない」 16 00:03:04,044 --> 00:03:08,048 「そんな男が 初めて 声をかけてきたきっかけは 17 00:03:08,048 --> 00:03:11,048 たわいない世間のニュースだった」 18 00:03:15,055 --> 00:03:17,057 賄賂で逮捕か。 19 00:03:17,057 --> 00:03:22,062 何で こう日本は 出る杭を打つんだろうねぇ。 20 00:03:22,062 --> 00:03:28,068 少しばかりの金を着服しようが 仕事ができれば いいじゃねえか。 21 00:03:28,068 --> 00:03:30,068 ですかねえ。 22 00:03:32,005 --> 00:03:34,005 ルールだからですよ。 23 00:03:37,010 --> 00:03:42,015 それが 正義に反する行為だからです。 24 00:03:42,015 --> 00:03:45,018 初めてお話ししますね。 25 00:03:45,018 --> 00:03:49,022 お名前をお伺いしても よろしいですか? 26 00:03:49,022 --> 00:03:55,028 安藤です すいません 何か意見なんてしてしまって。 27 00:03:55,028 --> 00:03:59,028 いや よろしく。 28 00:04:04,037 --> 00:04:06,039 ところで 安藤さん。 29 00:04:06,039 --> 00:04:10,039 あんたの言う 正義って何だ? 30 00:04:13,046 --> 00:04:16,049 別にケンカを売るつもりはないが 31 00:04:16,049 --> 00:04:21,054 俺は 正義と気安く言うやつが 嫌いでね。 32 00:04:21,054 --> 00:04:24,057 チャップリンのせりふにも あっただろ。 33 00:04:24,057 --> 00:04:31,064 人を1人殺せば人殺しだが 数千人殺せば英雄であるって。 34 00:04:31,064 --> 00:04:34,964 正義なんて それぐらい 曖昧なものじゃないのか。 35 00:04:38,004 --> 00:04:40,006 そうですね。 36 00:04:40,006 --> 00:04:45,011 しかし 私は どんな世界であれ 37 00:04:45,011 --> 00:04:52,018 決められたルールに反した行為は 悪だと思ってます。 38 00:04:52,018 --> 00:04:59,025 あなたは 山口良忠という人を ご存じですか? 39 00:04:59,025 --> 00:05:01,025 いいや。 40 00:05:05,031 --> 00:05:08,034 昭和初期の裁判官です。 41 00:05:08,034 --> 00:05:12,038 終戦後の食糧難の時代に 42 00:05:12,038 --> 00:05:20,046 闇市の闇米を拒否して 栄養失調で餓死しました。 43 00:05:20,046 --> 00:05:25,051 違法である闇米を食べなければ 生きていけないのに 44 00:05:25,051 --> 00:05:30,056 それを取り締まる自分が 闇米を食べてはいけないと 45 00:05:30,056 --> 00:05:35,995 当時 悪法といわれた 食糧管理法に殉じ 46 00:05:35,995 --> 00:05:38,998 死んでいったんです。 47 00:05:38,998 --> 00:05:43,002 バカ真面目すぎる生き方だな。 48 00:05:43,002 --> 00:05:46,005 私は立派だと思います。 49 00:05:46,005 --> 00:05:50,009 当時も 賛否両論あったそうです。 50 00:05:50,009 --> 00:05:58,017 ただ 人間が集団で生活を営む以上 法律という名のルールがなければ 51 00:05:58,017 --> 00:06:02,021 人は安心して暮らすことが できません。 52 00:06:02,021 --> 00:06:06,025 ルールを乱した者に ペナルティーを与えなければ成立しない。 53 00:06:06,025 --> 00:06:10,029 スポーツの試合と同じです。 54 00:06:10,029 --> 00:06:15,034 だから 山口は そのルールの大切さを 55 00:06:15,034 --> 00:06:19,038 身をもって 訴えたかったのでしょう。 56 00:06:19,038 --> 00:06:22,038 何が正義かということを。 57 00:06:24,043 --> 00:06:27,046 なるほどね。 58 00:06:27,046 --> 00:06:30,046 人には それぞれの正義が ありますから。 59 00:06:50,003 --> 00:06:53,003 ありがとうございました。 60 00:07:09,022 --> 00:07:12,025 マスター 俺にもホワイトヘザーを。 61 00:07:12,025 --> 00:07:15,028 飲み方は ストレートダブルですか? 62 00:07:15,028 --> 00:07:18,028 そうだな。 かしこまりました。 63 00:07:31,978 --> 00:07:33,980 どうぞ。 64 00:07:33,980 --> 00:07:37,984 しかし 安藤さん 65 00:07:37,984 --> 00:07:40,987 どうして ホワイトヘザーしか 飲まれないんでしょうかね? 66 00:07:40,987 --> 00:07:42,987 さあな。 67 00:07:46,993 --> 00:07:48,993 いらっしゃいませ。 68 00:07:51,998 --> 00:07:54,000 すいません 少し よろしいですか? 69 00:07:54,000 --> 00:07:57,000 どうぞ お掛けください。 70 00:08:04,010 --> 00:08:06,012 お飲み物は どうなさいますか? 71 00:08:06,012 --> 00:08:08,014 あっ いえ。 72 00:08:08,014 --> 00:08:12,014 私 こういう者です。 73 00:08:15,021 --> 00:08:19,025 新聞記者さんですか。 74 00:08:19,025 --> 00:08:22,028 私に何か聞きたいことでも? はい。 75 00:08:22,028 --> 00:08:25,031 検事のことです。 検事? 76 00:08:25,031 --> 00:08:27,033 とぼけても無駄です。 77 00:08:27,033 --> 00:08:30,036 先ほどまで ここにいらっしゃいましたよね。 78 00:08:30,036 --> 00:08:33,973 あの風呂敷包みは間違いなく 安藤検事でした。 79 00:08:33,973 --> 00:08:36,973 ええ!? あの男 検事なのか。 80 00:08:38,978 --> 00:08:42,982 安藤検事は 記事の汚職事件について 81 00:08:42,982 --> 00:08:45,985 何か言ってませんでしたか? えっ いやあ…。 82 00:08:45,985 --> 00:08:47,987 いや どんな事でもいいんです! 83 00:08:47,987 --> 00:08:49,989 鬼検事だといわれた あの人が 84 00:08:49,989 --> 00:08:52,992 どんな真相を追い 何をつかんでいたのか。 85 00:08:52,992 --> 00:08:54,994 どうしても知りたいんです。 86 00:08:54,994 --> 00:09:01,000 でも お名前を伺ったのも 今日が初めてですからね。 87 00:09:01,000 --> 00:09:05,004 ホントに 何も知らないんですか? 88 00:09:05,004 --> 00:09:09,008 まさかな この事件を担当してたとはな。 89 00:09:09,008 --> 00:09:12,011 まあ しかし 仮に知っていたとしても 90 00:09:12,011 --> 00:09:14,013 マスターの口は 貝より かたいぜ。 91 00:09:14,013 --> 00:09:18,017 ホントに何も知りませんから! 92 00:09:18,017 --> 00:09:20,017 そうですか。 93 00:09:24,023 --> 00:09:29,028 じゃあ当然 検事を辞職された訳も 聞いてませんよね? 94 00:09:29,028 --> 00:09:31,964 検事をお辞めになったんですか? はい。 95 00:09:31,964 --> 00:09:34,967 今日 突然。 なぜ? 96 00:09:34,967 --> 00:09:39,972 それを聞きに 私は ここに来たんです。 97 00:09:39,972 --> 00:09:42,975 今回の事件は 政界のトップクラスまで 98 00:09:42,975 --> 00:09:44,977 捜査の手がのびると いわれていました。 99 00:09:44,977 --> 00:09:47,980 中心となって動いていた 安藤検事が 100 00:09:47,980 --> 00:09:49,982 何らかの圧力に 屈したのではないかと 101 00:09:49,982 --> 00:09:51,984 私は にらんでいます。 102 00:09:51,984 --> 00:09:53,986 ただ…。 103 00:09:53,986 --> 00:09:58,991 もし そうだとしたら とても残念で。 104 00:09:58,991 --> 00:10:01,991 どういうことですか? 105 00:10:03,996 --> 00:10:09,001 私 あの人を尊敬していたんです。 106 00:10:09,001 --> 00:10:12,004 普段は物静かなのに 法廷となれば 107 00:10:12,004 --> 00:10:16,008 鬼のような形相で 決して悪を許さない。 108 00:10:16,008 --> 00:10:18,010 立場が違えど 109 00:10:18,010 --> 00:10:22,014 私も そういうふうになりたいと 思ってました。 110 00:10:22,014 --> 00:10:27,014 それなのに こうもあっさり 身を引くなんて。 111 00:10:32,024 --> 00:10:35,027 マスター 一杯いただいても いいですか? 112 00:10:35,027 --> 00:10:37,029 何にいたしましょう? 113 00:10:37,029 --> 00:10:40,029 じゃ ハイボールを。 はい。 114 00:10:48,040 --> 00:10:52,044 「その日以来 ホワイトヘザーを愛するあの男が 115 00:10:52,044 --> 00:10:56,044 レモンを訪れることは 二度となかった」 116 00:11:00,052 --> 00:11:02,054 いらっしゃいませ。 こんにちは。 117 00:11:02,054 --> 00:11:05,057 「安藤検事に何があったのか」 118 00:11:05,057 --> 00:11:09,061 「記者の彼は しばらく その行方を追ったそうだが 119 00:11:09,061 --> 00:11:15,067 結局 消息すらつかむことは できなかったという」 120 00:11:15,067 --> 00:11:19,071 「そして その記憶は 時間がたった水割りのように 121 00:11:19,071 --> 00:11:24,076 俺たちの中で 徐々に薄まっていった」 122 00:11:24,076 --> 00:11:27,079 「唯一 残ったものを あげるとするならば 123 00:11:27,079 --> 00:11:30,082 あの男と入れ替わるように 記者の彼が 124 00:11:30,082 --> 00:11:34,082 この店の常連となったこと ぐらいだろう」 125 00:11:47,033 --> 00:11:51,033 「そして 5年がたった ある日のこと」 126 00:11:54,040 --> 00:11:58,044 (沢村)メガネさん この間の記事 見てくれました? 127 00:11:58,044 --> 00:12:03,049 アイドルのマニャマニャと アントニオ金剛の密会デート。 128 00:12:03,049 --> 00:12:07,053 いや 人の恋愛に まるで興味はないからな。 129 00:12:07,053 --> 00:12:10,056 もう 松田さんは すぐに連絡くれましたけど。 130 00:12:10,056 --> 00:12:15,061 沢村さん スポーツ紙の芸能部に 異動してから何年になりました? 131 00:12:15,061 --> 00:12:17,063 ことしで3年ですね。 132 00:12:17,063 --> 00:12:20,066 あっ この間 社長賞いただきました。 133 00:12:20,066 --> 00:12:22,068 おお! それは凄い! 134 00:12:22,068 --> 00:12:24,070 ありがとうございます。 いや おめでとうございます。 135 00:12:24,070 --> 00:12:27,073 いやいや… 賞状くれただけなんですけどね。 136 00:12:27,073 --> 00:12:29,075 えっ それだけなんですか? それだけなんですよ。 137 00:12:29,075 --> 00:12:31,075 いらっしゃいませ…。 138 00:12:34,013 --> 00:12:36,013 安藤さん。 139 00:12:51,030 --> 00:12:53,032 お久しぶりです。 140 00:12:53,032 --> 00:12:57,032 マスターも お元気そうですね。 はい。 141 00:13:07,046 --> 00:13:10,046 こちらで よろしいですか? 142 00:13:12,051 --> 00:13:14,051 ええ。 143 00:13:32,004 --> 00:13:34,006 お待たせしました。 144 00:13:34,006 --> 00:13:37,006 ホワイトヘザー ストレートダブルです。 145 00:13:41,013 --> 00:13:43,013 ありがとう。 146 00:14:00,032 --> 00:14:02,034 懐かしい。 147 00:14:02,034 --> 00:14:07,039 ここで この酒を飲むのは 5年ぶりです。 148 00:14:07,039 --> 00:14:10,042 今は どちらに? 149 00:14:10,042 --> 00:14:13,045 福島の山奥で 一人静かに暮らしてます。 150 00:14:13,045 --> 00:14:15,047 はあ。 151 00:14:15,047 --> 00:14:17,049 やめておけ。 152 00:14:17,049 --> 00:14:20,049 今の君の仕事とは 関係ないだろう。 153 00:14:24,056 --> 00:14:26,058 安藤検事。 おい! 154 00:14:26,058 --> 00:14:30,062 元政治部にいた 新聞記者の沢村です。 155 00:14:30,062 --> 00:14:32,999 かつて あなたが担当していた 事件を追っていました。 156 00:14:32,999 --> 00:14:36,002 沢村さん 安藤さんは 静かに飲みたいんです。 157 00:14:36,002 --> 00:14:39,005 今は その話をすべきでは ありません。 158 00:14:39,005 --> 00:14:43,009 マスター 私は構いません。 159 00:14:43,009 --> 00:14:45,009 安藤さん。 160 00:14:47,013 --> 00:14:53,019 確か君は 私がここに来た最後の日 161 00:14:53,019 --> 00:14:58,024 店の前で隠れていた 記者さんかな? 162 00:14:58,024 --> 00:15:01,027 えっ。 163 00:15:01,027 --> 00:15:03,029 当たりだね。 164 00:15:03,029 --> 00:15:09,035 検事という商売柄 辞めても記憶力だけは良くてね。 165 00:15:09,035 --> 00:15:12,038 無論 マスターには かないませんが。 166 00:15:12,038 --> 00:15:14,040 いやいや 私は そんな…。 167 00:15:14,040 --> 00:15:17,043 何も告げてないのに 168 00:15:17,043 --> 00:15:21,047 この酒を 出してくれたじゃないですか。 169 00:15:21,047 --> 00:15:23,049 うれしかったです。 170 00:15:23,049 --> 00:15:25,051 何で急に引退されたんですか? 171 00:15:25,051 --> 00:15:29,051 やはり 何か 圧力があったんでしょうか? 172 00:15:31,991 --> 00:15:35,995 君は 何か勘違いしてるようだ。 173 00:15:35,995 --> 00:15:37,995 勘違い? 174 00:17:59,104 --> 00:18:01,106 何で急に引退されたんですか? 175 00:18:01,106 --> 00:18:03,106 やはり 何か 圧力があったんでしょうか? 176 00:18:05,110 --> 00:18:10,115 君は 何か勘違いしてるようだ。 177 00:18:10,115 --> 00:18:12,115 勘違い? 178 00:18:14,119 --> 00:18:22,127 最後に ここへ訪れた 1週間くらい前だったでしょうか。 179 00:18:22,127 --> 00:18:24,129 法廷の帰りに 180 00:18:24,129 --> 00:18:30,135 いつものように ここへ寄り 一杯ひっかけて帰りました。 181 00:18:30,135 --> 00:18:34,139 すると うちの中に 泥棒がいたんです。 182 00:18:34,139 --> 00:18:37,142 泥棒!? ええ。 183 00:18:37,142 --> 00:18:39,144 私は剣道をやってましたから 184 00:18:39,144 --> 00:18:43,148 玄関に立てかけてあった 木刀を抜いて 185 00:18:43,148 --> 00:18:47,152 面! と泥棒にやってやりました。 186 00:18:47,152 --> 00:18:52,157 そしたら相手は たわいもなく目を回してしまった。 187 00:18:52,157 --> 00:18:58,097 フッ 検事の家に泥棒に入るなんて 不運なやつだな。 188 00:18:58,097 --> 00:19:05,104 目を回した泥棒をよく見ると 黒人の青年でした。 189 00:19:05,104 --> 00:19:10,109 正気に戻った彼に 話を聞いてみると 190 00:19:10,109 --> 00:19:15,114 アメリカにいる母親が病気で 帰りたい。 しかし金が無い。 191 00:19:15,114 --> 00:19:18,117 それで泥棒に入ったと言うんです。 192 00:19:18,117 --> 00:19:22,117 それで どうなさったんですか? 193 00:19:24,123 --> 00:19:29,128 金をやって 国へ帰してやりました。 194 00:19:29,128 --> 00:19:34,133 鬼検事といわれた人が 泥棒を逃がして金をやるって! 195 00:19:34,133 --> 00:19:38,137 そんな… 同情を買って 許してもらおうとする 196 00:19:38,137 --> 00:19:41,140 その… つくり話だったかも しれないじゃないですか! 197 00:19:41,140 --> 00:19:46,145 私も最初は そう思いました。 198 00:19:46,145 --> 00:19:49,148 でも…。 199 00:19:49,148 --> 00:19:55,154 涙ながらに懇願する青年を 見ているうちに 200 00:19:55,154 --> 00:19:59,091 私の中のルールが 変わってしまった。 201 00:19:59,091 --> 00:20:03,091 彼の未来に 賭けてみようと思ったんだ。 202 00:20:06,098 --> 00:20:11,098 これが 私が検事を辞めた理由です。 203 00:20:13,105 --> 00:20:17,109 そんな事で… ですか。 204 00:20:17,109 --> 00:20:24,116 仮にも検事とあろう者が 泥棒の現行犯を逃がしたんだ。 205 00:20:24,116 --> 00:20:26,118 引退するしかないでしょう。 206 00:20:26,118 --> 00:20:29,118 フッ 安藤さんらしいな。 207 00:20:36,128 --> 00:20:41,133 記事にもならない話を聞かされて がっかりしたかな。 208 00:20:41,133 --> 00:20:44,136 あ… いえ。 209 00:20:44,136 --> 00:20:51,136 安藤さん あなたは 私が思う以上に正義の人でした。 210 00:20:58,083 --> 00:21:00,085 あの…。 211 00:21:00,085 --> 00:21:03,088 私からも 一つお伺いしていいですか? 212 00:21:03,088 --> 00:21:05,090 ええ。 213 00:21:05,090 --> 00:21:11,096 安藤さんは なぜ ホワイトヘザーしか 飲まれないんでしょう? 214 00:21:11,096 --> 00:21:15,096 これ あの… バーマンとしての 興味なんですけど。 215 00:21:17,102 --> 00:21:24,109 そうですね 味が気に入ってるのと このネーミングです。 216 00:21:24,109 --> 00:21:28,113 白は正義の色と思ってましたから。 217 00:21:28,113 --> 00:21:34,119 ああ いかにも検事さんらしい お酒のチョイスですね。 218 00:21:34,119 --> 00:21:39,124 ホワイトヘザーは 骨太の味から 男の酒ともいわれている。 219 00:21:39,124 --> 00:21:43,128 安藤さんほど その酒の似合う男はいないな。 220 00:21:43,128 --> 00:21:46,131 持ち上げすぎですよ それは。 221 00:21:46,131 --> 00:21:50,135 私からも 知ったかぶりを お話ししてもよろしいですか? 222 00:21:50,135 --> 00:21:52,137 ええ! 223 00:21:52,137 --> 00:21:55,140 ヘザーというのは花の名前です。 224 00:21:55,140 --> 00:21:57,159 日本では ヒースといわれます。 225 00:21:57,159 --> 00:22:00,078 スコットランドでは ヘザーと呼ばれてるんです。 226 00:22:00,078 --> 00:22:05,083 実は スコットランドの丘に咲く ヘザーの花は 227 00:22:05,083 --> 00:22:08,086 ほとんどが紫色なんです。 228 00:22:08,086 --> 00:22:11,089 じゃあ なぜ ホワイトと? 229 00:22:11,089 --> 00:22:16,094 極まれに 白い花が咲くそうです。 230 00:22:16,094 --> 00:22:18,096 それを見つけたときは 231 00:22:18,096 --> 00:22:21,099 日本で言う四つ葉のクローバーを 見つけたときと同じように 232 00:22:21,099 --> 00:22:25,103 幸運の印なんですよ。 233 00:22:25,103 --> 00:22:28,106 そういう意味で このウィスキーは 234 00:22:28,106 --> 00:22:32,106 ホワイトヘザーと名付けられたと 私は思ってます。 235 00:22:36,114 --> 00:22:40,118 幸運の白い花。 236 00:22:40,118 --> 00:22:45,118 それじゃ 今夜の幸運は こいつのおかげかもしれない。 237 00:22:48,126 --> 00:22:50,126 それは どういう意味ですか? 238 00:22:52,130 --> 00:22:55,133 実は アメリカから エアメールがあって 239 00:22:55,133 --> 00:22:58,070 あの青年が もう一度会って お礼がしたいと 240 00:22:58,070 --> 00:23:01,073 今夜 この店で 会う約束をしてるんです。 241 00:23:01,073 --> 00:23:03,075 そうだったんですか! 242 00:23:03,075 --> 00:23:07,079 母親は 彼の帰国後すぐ 亡くなったそうですが 243 00:23:07,079 --> 00:23:10,082 看病できたのは ユーのおかげだって 244 00:23:10,082 --> 00:23:16,082 今は 立派に働いて 家族も養ってるそうです。 245 00:23:18,090 --> 00:23:20,092 そろそろ来る頃だと思うんですが。 246 00:23:20,092 --> 00:23:22,092 はい。 247 00:23:27,099 --> 00:23:30,099 (ドアの開く音) いらっしゃいませ。 248 00:26:53,138 --> 00:26:55,138 (マスター)いらっしゃいませ。 249 00:26:59,144 --> 00:27:01,144 どうぞ。 ああ…。 250 00:27:09,154 --> 00:27:11,156 何に致しましょうか? 251 00:27:11,156 --> 00:27:14,156 ああ… そうですね…。 252 00:27:19,164 --> 00:27:23,168 とにかく 安くて強い酒を 一杯だけ 頂けますか? 253 00:27:23,168 --> 00:27:25,168 かしこまりました。 254 00:27:29,107 --> 00:27:31,107 ハァー。 255 00:27:52,130 --> 00:27:56,130 お待たせしました。 どうも。 256 00:28:04,142 --> 00:28:06,142 マスター。 257 00:28:08,146 --> 00:28:11,149 神様って 不公平だと思いませんか? 258 00:28:11,149 --> 00:28:13,151 はっ? 259 00:28:13,151 --> 00:28:15,153 実は 僕 双子なんですけどね。 はい。 260 00:28:15,153 --> 00:28:20,158 不思議なことに 兄弟で ココがまるで違うんですよ。 261 00:28:20,158 --> 00:28:24,162 片方は秀才。 片方は鈍才。 262 00:28:24,162 --> 00:28:27,098 僕は どっちだと思いますか? 263 00:28:27,098 --> 00:28:29,100 秀才… ですか? 264 00:28:29,100 --> 00:28:31,102 ピンポン! 265 00:28:31,102 --> 00:28:34,105 …なわけ ないでしょう。 266 00:28:34,105 --> 00:28:36,107 ハァー。 267 00:28:36,107 --> 00:28:42,113 兄貴はね 幼稚園から高校まで ずーっと名門私立で 268 00:28:42,113 --> 00:28:44,115 東大出て 一流企業に就職。 269 00:28:44,115 --> 00:28:47,118 今や 海外勤務の幹部候補ですわ。 270 00:28:47,118 --> 00:28:51,122 エリート街道まっしぐらって やつです。 271 00:28:51,122 --> 00:28:54,125 それに比べて僕ときたら 272 00:28:54,125 --> 00:28:58,129 小中高と並の学校にしか入れず 273 00:28:58,129 --> 00:29:02,133 当然 大学も三流。 274 00:29:02,133 --> 00:29:06,137 二十歳ん時 親と大喧嘩しましてね 275 00:29:06,137 --> 00:29:09,140 家を飛び出したは いいものの 276 00:29:09,140 --> 00:29:13,144 だらしなく プータローになって 結局は実家に舞い戻る。 277 00:29:13,144 --> 00:29:17,148 で 親のスネを かじり続けて 今に至るって訳です。 278 00:29:17,148 --> 00:29:19,150 まあ エリート街道ならぬ 279 00:29:19,150 --> 00:29:21,152 ニート街道まっしぐらって やつですね! 280 00:29:21,152 --> 00:29:23,152 ハハハ…。 281 00:29:26,174 --> 00:29:30,095 ハァー。 親から 何度 言われた事か。 282 00:29:30,095 --> 00:29:35,100 どうして 二郎は お兄ちゃんとは違うんだ?って。 283 00:29:35,100 --> 00:29:39,104 ったく… それを言いたいのは こっちですよ。 284 00:29:39,104 --> 00:29:43,108 兄貴とは 元から 頭の出来が 全然違うんですからね。 285 00:29:43,108 --> 00:29:47,108 まったく不公平ですよ。 神様ってヤツは。 286 00:29:50,115 --> 00:29:52,115 ハァー。 287 00:29:55,120 --> 00:30:00,091 (メガネさん)つまり 「生まれつき頭の悪い人間は損だ」 288 00:30:00,091 --> 00:30:02,127 そういう事か? メガネさん ちょっと…。 289 00:30:02,127 --> 00:30:07,132 その通りですよ! 僕みたいにね! ハハハ…。 290 00:30:07,132 --> 00:30:12,137 お前は そういう考えだから プータローまっしぐらなんだよ。 291 00:30:12,137 --> 00:30:15,140 何だよ。 292 00:30:15,140 --> 00:30:20,145 お前 藤井の息子だろ。 293 00:30:20,145 --> 00:30:22,145 そうだけど。 294 00:30:24,149 --> 00:30:26,117 もしかして メガネのおじさん? 295 00:30:26,117 --> 00:30:27,986 お知り合いだったんですか? 296 00:30:27,986 --> 00:30:29,988 昔 こいつの親父と ちょっとな。 297 00:30:29,988 --> 00:30:32,991 その縁で ガキの頃から知ってんだ。 298 00:30:32,991 --> 00:30:35,994 久しぶりだな 二郎。 299 00:30:35,994 --> 00:30:38,997 どうも。 300 00:30:38,997 --> 00:30:44,997 確か お前ら兄弟が 中学生の時だったかな…。 301 00:30:47,005 --> 00:30:53,005 そう。 あれは まだ ほの暗い 夜も明けてない早朝の事だった。 302 00:30:55,013 --> 00:30:59,017 俺は 汗だくで 新聞配達をしている一郎 303 00:30:59,017 --> 00:31:02,020 お前の兄貴に会ったんだ。 304 00:31:02,020 --> 00:31:04,022 何ですか 急に。 305 00:31:04,022 --> 00:31:08,026 俺は 一郎に聞いた。 金に困ってんのか? 306 00:31:08,026 --> 00:31:10,028 だが 一郎は 「そうじゃない」と。 307 00:31:10,028 --> 00:31:12,030 俺は 聞いたよ。 308 00:31:12,030 --> 00:31:15,033 それなら なんで 新聞配達なんか やってるんだ? 309 00:31:15,033 --> 00:31:17,035 フッ。 310 00:31:17,035 --> 00:31:20,038 そしたら 一郎が 何て答えたと思う? 311 00:31:20,038 --> 00:31:25,043 はあ? 知りませんよ そんなの。 312 00:31:25,043 --> 00:31:29,080 責任感と早起きの習慣を つけたいから。 313 00:31:29,080 --> 00:31:35,086 そう言ったんだよ お前の兄貴は。 ハハハハ…。 314 00:31:35,086 --> 00:31:39,090 お前の兄貴はな 雨の日も雪の日も 315 00:31:39,090 --> 00:31:43,094 一日も欠かさず 新聞配達を やってたんだ! 316 00:31:43,094 --> 00:31:45,096 その間 お前 何してた? 317 00:31:45,096 --> 00:31:47,098 ふとんの中で ぬくぬく 寝てただけだろ! 318 00:31:47,098 --> 00:31:49,098 そうだろ!? 319 00:31:51,102 --> 00:31:56,107 そんなお前が 「生まれつき 頭の悪い人間は損だ」? 320 00:31:56,107 --> 00:31:59,110 ハッ ちゃんちゃら おかしいと 思わねえか? 321 00:31:59,110 --> 00:32:04,115 僕だってねぇ 頭が良ければ やる気ぐらい起きましたよ! 322 00:32:04,115 --> 00:32:08,119 二郎 一つ いい事を教えてやろう。 323 00:32:08,119 --> 00:32:12,123 一流企業が 何で 東大出を採るか 分かるか? 324 00:32:12,123 --> 00:32:16,127 決まってるでしょ。 頭がいい人間を欲しいからだ。 325 00:32:16,127 --> 00:32:18,129 もちろん それもある。 326 00:32:18,129 --> 00:32:20,131 だが それは 一面にすぎない。 327 00:32:20,131 --> 00:32:24,135 えっ? 考えてもみろ。 東大は狭き門。 328 00:32:24,135 --> 00:32:28,073 入るには すさまじい努力と やり抜く根性が必要だ。 329 00:32:28,073 --> 00:32:37,082 企業側はな 頭の良さより その強い精神力に ほれてんだよ。 330 00:32:37,082 --> 00:32:41,086 お説教は もう たくさんです。 マスター お勘定。 331 00:32:41,086 --> 00:32:43,088 ちょっと! 332 00:32:43,088 --> 00:32:47,092 マスター こいつに グレンフィディックを出してやってくれ。 333 00:32:47,092 --> 00:32:50,095 えっ? 334 00:32:50,095 --> 00:32:52,095 かしこまりました。 335 00:33:10,115 --> 00:33:13,115 グレンフィディック ストレートです。 336 00:33:16,121 --> 00:33:18,121 飲んでみろ。 337 00:33:20,125 --> 00:33:22,127 この酒が 何だって言うんですか。 338 00:33:22,127 --> 00:33:25,127 俺の おごりだ。 飲んだら帰っていい。 339 00:33:28,066 --> 00:33:30,066 ハァー。 340 00:33:32,070 --> 00:33:34,070 一杯だけですからね。 341 00:33:42,080 --> 00:33:46,080 どうだ? うまいだろ。 342 00:33:48,086 --> 00:33:51,089 そいつは 世界で一番売れてる シングルモルト。 343 00:33:51,089 --> 00:33:54,089 いわば 酒の中のエリートだ。 344 00:33:56,094 --> 00:33:59,097 エリート…。 345 00:33:59,097 --> 00:34:03,101 だがな グレンフィディックだって 346 00:34:03,101 --> 00:34:06,104 一朝一夕で エリートになった訳じゃない。 347 00:34:06,104 --> 00:34:09,107 そうだろ? マスター。 はい。 348 00:34:09,107 --> 00:34:12,110 創業は 1887年。 349 00:34:12,110 --> 00:34:16,114 二度の世界大戦と 世界恐慌などの影響で 350 00:34:16,114 --> 00:34:19,117 多くの蒸留所が 閉鎖に追い込まれていく中 351 00:34:19,117 --> 00:34:23,121 地道な努力によって 生産を伸ばしたのが 352 00:34:23,121 --> 00:34:26,121 このグレンフィディック蒸留所です。 353 00:34:28,059 --> 00:34:32,063 当時はブレンデッド専用だった このシングルモルトを 354 00:34:32,063 --> 00:34:36,067 世界で初めて プレミアムブランドとして 売り出した時も 355 00:34:36,067 --> 00:34:40,071 飲みにくいシングルモルトが 売れる訳はないと 356 00:34:40,071 --> 00:34:43,071 周囲から 失笑を買っていたそうですよ。 357 00:34:45,076 --> 00:34:48,079 それでも 地道に美味い酒を つくり続け 358 00:34:48,079 --> 00:34:51,082 必死に広告キャンペーンを 張り続けた事で 359 00:34:51,082 --> 00:34:54,085 世界一になったんだ。 360 00:34:54,085 --> 00:34:57,088 もちろん 今なお その努力は 続いてる。 361 00:34:57,088 --> 00:35:01,088 だからこそ エリートであり続けられるんだ。 362 00:35:03,094 --> 00:35:06,097 人間も酒も同じさ。 363 00:35:06,097 --> 00:35:11,097 水をやり続ける努力をしなきゃ 花は咲かないんだ。 364 00:35:14,105 --> 00:35:16,105 あっ…。 365 00:35:23,114 --> 00:35:29,053 今のお前に この酒を飲む資格はない。 366 00:35:29,053 --> 00:35:31,053 よく考えるんだな。 367 00:38:34,105 --> 00:38:36,107 (松ちゃん)へ~ そんなことが あったんだ。 368 00:38:36,107 --> 00:38:38,109 はい。 あの メガネさんが? 369 00:38:38,109 --> 00:38:40,111 ちょっと やり過ぎなんですけどね。 370 00:38:40,111 --> 00:38:44,111 でも メガネさんらしいよね。 ハハハ…。 371 00:38:49,120 --> 00:38:52,123 ああ 二郎さん いらっしゃい。 372 00:38:52,123 --> 00:38:55,126 こないだはどうも。 何か すいませんでした。 373 00:38:55,126 --> 00:38:57,128 いやいや こちらこそ。 374 00:38:57,128 --> 00:38:59,130 申し訳ありませんでした。 375 00:38:59,130 --> 00:39:03,134 メガネさん 普段は 無口な人なんですけどね…。 376 00:39:03,134 --> 00:39:06,137 君が 二郎君? 377 00:39:06,137 --> 00:39:08,139 あっ はい。 僕が 二郎です。 378 00:39:08,139 --> 00:39:10,141 双子のダメな方の。 379 00:39:10,141 --> 00:39:12,143 (2人)アハハハ…。 二郎さん。 380 00:39:12,143 --> 00:39:14,145 まあ でも あんまり 気にしないほうがいいよ。 381 00:39:14,145 --> 00:39:17,148 大体 メガネさんだって 東大 出てる訳じゃないんだから。 382 00:39:17,148 --> 00:39:19,150 そうなんですかね。 えっ? 383 00:39:19,150 --> 00:39:23,154 いや メガネのおじさんの 言うとおりです。 384 00:39:23,154 --> 00:39:26,157 ガツンとやられて 目が覚めました。 385 00:39:26,157 --> 00:39:28,159 いつまでもニートのままじゃ ダメだ。 386 00:39:28,159 --> 00:39:32,180 僕も兄貴のようになろうと 決心したんです! 387 00:39:32,180 --> 00:39:35,099 その意気ですよ。 388 00:39:35,099 --> 00:39:38,102 と そこまでは よかったんですがね。 389 00:39:38,102 --> 00:39:43,107 兄貴のような人間になるには もう 手遅れでした。 390 00:39:43,107 --> 00:39:46,110 いやいや そんなことは…。 いやいや そうなんです! 391 00:39:46,110 --> 00:39:49,113 僕なんかが 今から いくら努力したところで 392 00:39:49,113 --> 00:39:51,115 兄貴のようなエリートに なれる道は 393 00:39:51,115 --> 00:39:54,118 とっくの昔に 閉ざされてる。 394 00:39:54,118 --> 00:39:57,121 その現実が分かったんですよ。 395 00:39:57,121 --> 00:40:00,124 そんな事すら知らなかった 自分のバカさ加減に 396 00:40:00,124 --> 00:40:03,127 ビックリですけどね! アハハハ…。 397 00:40:03,127 --> 00:40:07,131 ハァー。 やっぱり こんな僕が頑張ったところで 398 00:40:07,131 --> 00:40:12,136 兄貴のような グレンフィディックのような男に 399 00:40:12,136 --> 00:40:14,138 なれるわけないんですよ。 400 00:40:14,138 --> 00:40:18,142 どうせ僕なんて その程度の男なんです。 401 00:40:18,142 --> 00:40:22,146 まっ よかったじゃない。 頑張り始める前に気付けてさ! 402 00:40:22,146 --> 00:40:25,149 これで また 悠々自適な ニート生活に戻れるわけだしね! 403 00:40:25,149 --> 00:40:27,151 ハハハハ…。 松ちゃん。 404 00:40:27,151 --> 00:40:29,151 あ… ごめん。 405 00:40:31,155 --> 00:40:34,091 ハァー。 406 00:40:34,091 --> 00:40:36,093 二郎さん。 407 00:40:36,093 --> 00:40:40,097 はい。 ここは バーです。 408 00:40:40,097 --> 00:40:44,097 人生を考えるには ピッタリの場所ですよ。 409 00:40:46,103 --> 00:40:48,105 お酒と時間は たっぷり ありますから。 410 00:40:48,105 --> 00:40:50,107 まあ とりあえず 一杯飲んで 411 00:40:50,107 --> 00:40:54,111 じっくりと 考えようじゃありませんか。 412 00:40:54,111 --> 00:40:57,114 はあ…。 413 00:40:57,114 --> 00:40:59,116 あ ちょっと! 414 00:40:59,116 --> 00:41:01,118 僕 グレンフィディックは 飲めませんよ。 415 00:41:01,118 --> 00:41:03,120 メガネさんに 怒られちゃいますから。 416 00:41:03,120 --> 00:41:07,124 今日 お出しするのは 弟のほうです。 417 00:41:07,124 --> 00:41:09,124 弟? 418 00:41:13,130 --> 00:41:16,130 こちら バルヴェニーです。 419 00:41:20,137 --> 00:41:23,140 バルヴェニーは グレンフィディックの隣にある 420 00:41:23,140 --> 00:41:27,144 第二蒸留所で作られている シングルモルトウィスキーなんですよ。 421 00:41:27,144 --> 00:41:30,144 第二だから 弟か。 422 00:41:47,098 --> 00:41:50,101 どうぞ。 423 00:41:50,101 --> 00:41:52,101 松ちゃんも どうぞ。 ありがとう。 424 00:41:56,107 --> 00:41:58,109 グレンフィディックと同じ原料 425 00:41:58,109 --> 00:42:01,112 同じ仕込み水を 使ってるんですけども 426 00:42:01,112 --> 00:42:03,114 製造方法の違いなどから 427 00:42:03,114 --> 00:42:05,116 全く違ったタイプのモルトに なってんですよ。 428 00:42:05,116 --> 00:42:08,119 グレンフィディックってのは 聞いたことあるけど 429 00:42:08,119 --> 00:42:10,121 バルヴェニーってのは 聞いたことないな。 430 00:42:10,121 --> 00:42:12,123 せっかくだから グレンフィディックも 頂戴よ。 431 00:42:12,123 --> 00:42:14,123 はいはい。 432 00:42:17,128 --> 00:42:19,130 グレンフィディックに比べると 433 00:42:19,130 --> 00:42:22,133 バルヴェニーは 生産量も少ないですし 434 00:42:22,133 --> 00:42:26,133 知名度は そう高いとは いえませんね。 435 00:42:32,159 --> 00:42:34,078 はい どうぞ。 436 00:42:34,078 --> 00:42:39,083 ハァー 世界一のグレンフィディックが 兄貴の一郎で 437 00:42:39,083 --> 00:42:43,087 地味なバルヴェニーが 弟の僕って訳ですか。 438 00:42:43,087 --> 00:42:48,092 フッ なるほど。 僕に ピッタリの酒だ。 439 00:42:48,092 --> 00:42:51,092 まっ とにかく 飲んでみてください。 440 00:42:53,097 --> 00:42:56,097 どうせ グレンフィディックより まずいんでしょ? 441 00:43:04,108 --> 00:43:06,108 おいしいでしょう? 442 00:43:08,112 --> 00:43:11,115 グレンフィディックのほうが 軽くて飲みやすかったです。 443 00:43:11,115 --> 00:43:15,119 でも この バルヴェニーのほうが 深みとコクがある気がします。 444 00:43:15,119 --> 00:43:17,121 おいしい…。 445 00:43:17,121 --> 00:43:21,121 どれどれ…。 グレンフィディック。 446 00:43:25,129 --> 00:43:27,129 うん うん。 447 00:43:33,070 --> 00:43:38,075 うん! 確かに グレンフィディックも おいしいけど 448 00:43:38,075 --> 00:43:40,077 バルヴェニーも 全然 負けてないよ! 449 00:43:40,077 --> 00:43:42,079 どっちも おいしい。 450 00:43:42,079 --> 00:43:45,082 常に脚光を浴びてきた 華々しい兄に比べると 451 00:43:45,082 --> 00:43:48,085 バルヴェニーは 物静かで目立たない 452 00:43:48,085 --> 00:43:52,089 まあ 地味な弟と いえるかもしれません。 453 00:43:52,089 --> 00:43:56,093 でも 「真の愛好家は バルヴェニーこそ 愛す」 454 00:43:56,093 --> 00:44:00,093 と言う人がいるほど とても愛されてる酒なんですよ。 455 00:44:09,106 --> 00:44:13,110 きっと 偉大な兄の真似事じゃなく 456 00:44:13,110 --> 00:44:18,110 別の頂を目指したからこそ 辿り着けた境地なんだろうね。 457 00:44:20,117 --> 00:44:24,121 さすがは 松ちゃん たまには いい事 言いますね。 458 00:44:24,121 --> 00:44:26,121 「たまには」は 余計でしょ。 459 00:44:28,125 --> 00:44:30,125 そうか…。 460 00:44:32,146 --> 00:44:36,066 なにも 兄貴のようなエリートに ならなくていい。 461 00:44:36,066 --> 00:44:39,069 僕は 僕だ。 462 00:44:39,069 --> 00:44:41,071 僕にしかなれない人間に なればいい。 463 00:44:41,071 --> 00:44:44,074 そういうことですね! 464 00:44:44,074 --> 00:44:46,074 はい。 465 00:44:54,084 --> 00:44:56,086 決めました。 466 00:44:56,086 --> 00:44:58,088 僕は 僕にしかなれない人間 467 00:44:58,088 --> 00:45:02,092 バルヴェニーのような人間に 必ず なってみせます! 468 00:45:02,092 --> 00:45:04,094 その意気ですよ。 469 00:45:04,094 --> 00:45:08,098 ハハハ… よ~し そうと決まれば 今日は乾杯だ! 470 00:45:08,098 --> 00:45:11,101 とことん 飲もうよ! 飲み過ぎないでくださいよ。 471 00:45:11,101 --> 00:45:13,103 今日は いいの。 はいはい もう一杯 飲もうよ。 472 00:45:13,103 --> 00:45:15,105 いただきます! ついで ついで! 473 00:45:15,105 --> 00:45:18,108 よ~し! 今日は 僕が二郎さんに おごっちゃう! 474 00:45:18,108 --> 00:45:20,110 (二郎)いいんですか!? うん! 475 00:45:20,110 --> 00:45:24,114 (二郎)ありがとうございます! でも… 3… 4杯までね 4杯。 476 00:45:24,114 --> 00:45:26,116 (二郎)はい。 はい。 いただきます! 477 00:45:26,116 --> 00:45:28,118 (二郎)ありがとうございます! よ~し 乾杯 乾杯! 478 00:45:28,118 --> 00:45:30,118 (二郎)はい。 479 00:45:43,067 --> 00:45:46,067 早いねえ。 もう 桜の季節か。 480 00:45:48,072 --> 00:45:52,076 出会いと別れ そして旅立ちの季節だな。 481 00:45:52,076 --> 00:45:55,079 ですよねぇ…。 482 00:45:55,079 --> 00:45:59,083 何 にやにやしてんの? 気持ち悪いよ。 483 00:45:59,083 --> 00:46:04,088 実は 今日 二郎さんから 届け物があったんですよ。 484 00:46:04,088 --> 00:46:08,088 二郎さんって 双子のダメな弟のほう? 485 00:46:23,107 --> 00:46:25,109 これです。 486 00:46:25,109 --> 00:46:28,112 これって…。 ぐい飲みか…。 487 00:46:28,112 --> 00:46:32,132 はい。 何? どういうこと? 488 00:46:32,132 --> 00:46:35,132 同封されてた手紙を 読みますね。 489 00:46:39,056 --> 00:46:44,061 マスター 松田さん そしてメガネのおじさん 490 00:46:44,061 --> 00:46:46,063 お元気ですか? 491 00:46:46,063 --> 00:46:51,068 今 僕は 九州にいます。 九州!? 492 00:46:51,068 --> 00:46:56,073 皆さんのお陰で ようやく 自分が 夢中になれるものを…。 493 00:46:56,073 --> 00:46:58,075 (二郎)見つけることが できました。 494 00:46:58,075 --> 00:47:02,075 それは 焼き物だったのです。 495 00:47:04,081 --> 00:47:09,086 毎日 泥と汗にまみれながら 必死に頑張っています。 496 00:47:09,086 --> 00:47:13,090 やっぱり 僕には そういうのが 合ってたみたいです。 497 00:47:13,090 --> 00:47:18,095 ここに来て 改めて分かった事があります。 498 00:47:18,095 --> 00:47:24,101 どんなに見事な焼き物も 最初は ただの泥にすぎません。 499 00:47:24,101 --> 00:47:28,105 あの頃の僕と同じように。 500 00:47:28,105 --> 00:47:31,108 あの時 メガネさんが 強引に 501 00:47:31,108 --> 00:47:34,108 泥の中から 引っ張り上げてくれなければ…。 502 00:47:41,051 --> 00:47:46,051 松田さんが 優しく練り上げてくれなければ…。 503 00:47:51,061 --> 00:47:54,064 そして マスターが 504 00:47:54,064 --> 00:47:58,064 繊細かつ あたたかいタッチで 形作ってくれなければ…。 505 00:48:08,078 --> 00:48:14,084 僕は今もまだ ただの泥のままだったと思います。 506 00:48:14,084 --> 00:48:19,089 お送りしたのは 僕が初めて焼いた ぐい飲みです。 507 00:48:19,089 --> 00:48:22,092 僕と同じで まだ不格好ですが 508 00:48:22,092 --> 00:48:26,096 末永く愛して頂けたら 嬉しいです。 509 00:48:26,096 --> 00:48:33,103 それでは皆さん また会う日まで。 二郎より。 510 00:48:33,103 --> 00:48:37,103 ついに見つけたか。 あいつのバルヴェニーを。 511 00:48:43,113 --> 00:48:47,117 マスター。 はい バルヴェニーですね? 512 00:48:47,117 --> 00:48:50,117 僕も! はい。 513 00:49:11,141 --> 00:49:13,143 どうぞ。 514 00:49:13,143 --> 00:49:15,143 どうぞ。 515 00:49:17,147 --> 00:49:19,149 それでは 皆さん。 516 00:49:19,149 --> 00:49:22,152 二郎さんの旅立ちを祝って。 517 00:49:22,152 --> 00:49:24,152 (3人)乾杯! 518 00:49:31,161 --> 00:49:33,097 焼き物とウィスキーって 合うんだね。 519 00:49:33,097 --> 00:49:36,097 合いますね。 うまい。 520 00:49:55,119 --> 00:49:58,122 今夜も BAR レモンハートに お越しいただき 521 00:49:58,122 --> 00:50:00,124 ありがとうございました。 522 00:50:00,124 --> 00:50:05,124 では 今夜 登場したお酒を あらためて ご紹介いたします。 523 00:50:08,132 --> 00:50:12,136 スコットランド グラスゴーにある ホワイトヘザー社が製造する 524 00:50:12,136 --> 00:50:15,139 ブレンデッドウィスキーです。 525 00:50:15,139 --> 00:50:17,141 ヘザーとは 526 00:50:17,141 --> 00:50:20,144 夏になると スコットランドの丘一面に咲く 527 00:50:20,144 --> 00:50:22,146 紫色の花のこと。 528 00:50:22,146 --> 00:50:26,150 その中に まれに 白い花が咲くことから 529 00:50:26,150 --> 00:50:32,172 幸運の印として ホワイトヘザーと 名付けられたと言われています。 530 00:50:32,172 --> 00:50:36,093 味は 至って辛口で剛健。 531 00:50:36,093 --> 00:50:42,099 野性味ある仕上がりで 通好みのスコッチウィスキーです。 532 00:50:42,099 --> 00:50:46,103 こよい 咲き誇るヘザーの花を 思い浮かべながら 533 00:50:46,103 --> 00:50:52,109 骨太の酒を一杯やるのも また一興です。 534 00:50:52,109 --> 00:50:54,111 では また 次回。 535 00:50:54,111 --> 00:50:57,111 BAR レモンハートで お待ちしております。 536 00:51:49,099 --> 00:51:53,103 3人揃って…。 (3人)バカの木トリオで~す! 537 00:51:53,103 --> 00:51:56,106 青春時代を懐かしむ同級生。 ところが…。 538 00:51:56,106 --> 00:51:58,108 何だよ どういうことだよ。 539 00:51:58,108 --> 00:52:00,110 酒おんちの松ちゃんに 言われたくないね。 540 00:52:00,110 --> 00:52:02,112 お前らも同じようなもんだろ! 541 00:52:02,112 --> 00:52:07,117 では ここで それに決着をつけてみませんか? 542 00:52:07,117 --> 00:52:10,120 突如 始まったソムリエ決定戦。 543 00:52:10,120 --> 00:52:12,122 勝つのは いったい誰なのか? 544 00:52:12,122 --> 00:52:14,122 衝撃の結末は 次回 「バカの木トリオ」で。