1 00:01:40,163 --> 00:01:43,166 (マスター)何を描かれてるんですか? 2 00:01:43,166 --> 00:01:47,170 えっ? あっ… すいません 3 00:01:47,170 --> 00:01:50,173 初めて入った お店なのに 勝手なことしてしまって。 4 00:01:50,173 --> 00:01:52,175 あっ いやいやいや 好きに なさってていいんですよ。 5 00:01:52,175 --> 00:01:55,175 あの ただ ちょっと 興味があったもんですから。 6 00:01:58,181 --> 00:02:00,181 これです。 7 00:02:03,186 --> 00:02:05,188 大して うまくありませんが。 8 00:02:05,188 --> 00:02:11,194 いや~。 これは うまく描けてますね。 9 00:02:11,194 --> 00:02:14,197 (松ちゃん)マスター。 僕にも見して。 10 00:02:14,197 --> 00:02:17,200 よろしいですか? ええ。 11 00:02:17,200 --> 00:02:21,204 ほら。 あ~ すてきですね。 12 00:02:21,204 --> 00:02:25,208 (メガネさん)うん。 よく描けてる。 ありがとうございます。 13 00:02:25,208 --> 00:02:29,212 プロの 絵描きの方ですか? いえ そんな大したものじゃ。 14 00:02:29,212 --> 00:02:34,150 昔は 確かに 風景画家に なりたいと思っていましたが 15 00:02:34,150 --> 00:02:37,153 今は 小さな広告会社の 16 00:02:37,153 --> 00:02:39,155 下請けデザイン事務所で 働いています。 17 00:02:39,155 --> 00:02:43,159 もし よかったら 雑誌の編集長 紹介しましょうか? 18 00:02:43,159 --> 00:02:46,162 ちょうど 連載小説の挿絵 描く人 探してるんですよ。 19 00:02:46,162 --> 00:02:48,164 えっ 本当ですか? 20 00:02:48,164 --> 00:02:50,166 この人 フリーライターなんですよ。 21 00:02:50,166 --> 00:02:53,169 よろしく お願いします! 私 谷川といいます。 22 00:02:53,169 --> 00:02:55,171 僕は 松田です。 23 00:02:55,171 --> 00:02:59,175 じゃあ 谷川さん 空いてる日 幾つか 教えてもらえますか? 24 00:02:59,175 --> 00:03:01,175 はい。 25 00:03:06,182 --> 00:03:10,186 あら アナログですね。 そうなんです。 26 00:03:10,186 --> 00:03:14,190 えっと 来週… 来週いいですか? そうですね。 来週… はい。 27 00:03:14,190 --> 00:03:20,196 えっと 水曜か 金曜日…。 水曜 金曜か~。 28 00:03:20,196 --> 00:03:23,199 暇です。 あっ よかったです。 29 00:03:23,199 --> 00:03:27,199 セツコというのは 君の恋人か? 30 00:03:29,205 --> 00:03:33,205 妻です。 えっ? 31 00:03:35,144 --> 00:03:37,146 へえ~。 32 00:03:37,146 --> 00:03:39,148 こんなふうに 奥さん モデルに するなんて 33 00:03:39,148 --> 00:03:43,152 仲いいんですね。 ハハッ。 うらやましい。 34 00:03:43,152 --> 00:03:47,152 ええ。 奇麗な方ですね。 35 00:03:51,160 --> 00:03:56,160 ホントは もっと 奇麗でした…。 36 00:04:44,147 --> 00:04:46,149 すいません 編集長。 37 00:04:46,149 --> 00:04:51,154 約束は 8時だったんですけど…。 何やってんだよ。 38 00:04:51,154 --> 00:04:55,158 電話にも出ないし。 39 00:04:55,158 --> 00:04:57,160 絵描きの彼が来ないのか? 40 00:04:57,160 --> 00:05:02,165 約束を破るような人じゃないと 思うんですけどね。 41 00:05:02,165 --> 00:05:04,165 何か あったんですかね? 42 00:05:08,171 --> 00:05:12,175 あっ 谷川君です。 すいません。 43 00:05:12,175 --> 00:05:15,175 もしもし? 何やってんのよ。 44 00:05:17,180 --> 00:05:19,180 えっ? 45 00:05:21,184 --> 00:05:23,186 そっか。 46 00:05:23,186 --> 00:05:26,189 ああ 大丈夫。 うん。 47 00:05:26,189 --> 00:05:29,189 うん。 じゃあ お大事に。 48 00:05:34,130 --> 00:05:39,130 奥さんの具合が 急に悪くなって 来れなくなったそうです。 49 00:05:41,137 --> 00:05:43,137 すいません。 50 00:06:02,158 --> 00:06:05,161 不機嫌そうな顔してるな。 51 00:06:05,161 --> 00:06:09,165 編集長の前で メンツをつぶされて 怒ってるのか? 52 00:06:09,165 --> 00:06:14,170 そんなわけないでしょ。 事情が 事情なんだから。 53 00:06:14,170 --> 00:06:19,175 ただ 彼が 運を逃さなきゃいいなと思って。 54 00:06:19,175 --> 00:06:21,177 才能が あっても 55 00:06:21,177 --> 00:06:24,177 チャンスを つかめず 消えていく人 たくさん いるから。 56 00:06:26,182 --> 00:06:31,182 そろそろ 看板の明かりを 消させてもらいますね。 57 00:06:36,125 --> 00:06:38,127 本当に才能のあるやつは 58 00:06:38,127 --> 00:06:43,132 どんなことが あっても 世間が ほっとかないさ。 59 00:06:43,132 --> 00:06:45,132 そうだといいけど。 60 00:06:56,145 --> 00:06:58,145 谷川さん。 61 00:07:07,156 --> 00:07:10,156 ホントに 申し訳ございませんでした。 62 00:07:13,162 --> 00:07:16,165 もういいって ほら。 頭 上げて。 63 00:07:16,165 --> 00:07:19,168 それより 奥さんは大丈夫なの? 64 00:07:19,168 --> 00:07:23,172 はい。 薬を飲んで だいぶ落ち着きましたし 65 00:07:23,172 --> 00:07:25,174 今は ぐっすり眠っていますので。 66 00:07:25,174 --> 00:07:29,178 奥さんの病気というのは? 67 00:07:29,178 --> 00:07:32,115 心の方です。 68 00:07:32,115 --> 00:07:35,118 僕が出掛けようとしたら 急に 不安に なったらしくて。 69 00:07:35,118 --> 00:07:39,122 あ~ そうだったんですか。 大変でしたね。 70 00:07:39,122 --> 00:07:41,124 いえ。 71 00:07:41,124 --> 00:07:43,126 仕事の方は大丈夫だから。 72 00:07:43,126 --> 00:07:45,128 あの絵 見て 編集長も 興味 示してたから。 73 00:07:45,128 --> 00:07:47,130 ホントですか? うん。 74 00:07:47,130 --> 00:07:50,133 今度 また 会えるように セッティングするよ。 75 00:07:50,133 --> 00:07:54,137 座って。 ありがとうございます。 76 00:07:54,137 --> 00:07:56,139 風景画の挿絵 ということだったので 77 00:07:56,139 --> 00:07:58,141 自信のあるもの 幾つか用意したんです。 78 00:07:58,141 --> 00:08:01,144 よかったら これを 編集長に 見せていただけますか? 79 00:08:01,144 --> 00:08:06,149 じゃあ 拝見します。 はい。 80 00:08:06,149 --> 00:08:10,153 あ~。 あ~。 81 00:08:10,153 --> 00:08:14,157 ん~ すごい いいね。 82 00:08:14,157 --> 00:08:16,157 うん。 83 00:08:18,161 --> 00:08:21,164 前に 君のスケッチを 見せてもらったが 84 00:08:21,164 --> 00:08:24,164 俺は こういう絵の方が 断然 好きだ。 85 00:08:26,169 --> 00:08:29,172 これなら 自信を持って 編集長に 紹介できるよ。 86 00:08:29,172 --> 00:08:31,190 よかった。 87 00:08:31,190 --> 00:08:34,110 松ちゃん。 俺にも見せてくれ。 うん。 88 00:08:34,110 --> 00:08:37,113 私にも見せてください。 ああ。 89 00:08:37,113 --> 00:08:39,115 はい すいません。 90 00:08:39,115 --> 00:08:45,121 いや~ 見てるだけで 笑顔に なれますね。 91 00:08:45,121 --> 00:08:48,124 うん。 これ 場所は どこですか? 92 00:08:48,124 --> 00:08:55,131 僕と妻の 故郷です。 はあ~ すてきな所ですね。 93 00:08:55,131 --> 00:09:00,136 自然以外 何も ありませんが。 いや 奇麗な空があります。 94 00:09:00,136 --> 00:09:03,136 こんな空 東京には ありませんから。 95 00:09:08,144 --> 00:09:11,147 どうしました? 96 00:09:11,147 --> 00:09:15,151 以前 妻にも 同じことを言われたんです。 97 00:09:15,151 --> 00:09:18,154 そうなんですか。 ええ。 98 00:09:18,154 --> 00:09:22,158 僕らが 東京へ来たのは 2年半前のことです。 99 00:09:22,158 --> 00:09:24,160 それから 1年ほど たったころでしょうか。 100 00:09:24,160 --> 00:09:29,165 僕が あんな場所へ帰っても 何もないと言ったら 101 00:09:29,165 --> 00:09:32,101 妻に言われたんです。 102 00:09:32,101 --> 00:09:36,101 何もないけど 大きな空があったって。 103 00:09:39,108 --> 00:09:41,108 そうか。 104 00:09:44,113 --> 00:09:51,120 そのときぐらいから 妻は 覇気がなくなったというか 105 00:09:51,120 --> 00:09:54,123 日に日に 元気が なくなっていったんです。 106 00:09:54,123 --> 00:09:56,123 そうだったんですか。 107 00:09:58,127 --> 00:10:01,130 あどけない話みたいだな。 108 00:10:01,130 --> 00:10:05,134 智恵子抄だね。 東京には 空がないっていう。 109 00:10:05,134 --> 00:10:07,136 そのとおりです。 110 00:10:07,136 --> 00:10:11,136 僕らは ずっと 広い空の下で育ちましたから。 111 00:10:13,142 --> 00:10:18,147 過疎化が進む 山間の小さな村でした。 112 00:10:18,147 --> 00:10:22,151 総勢 5人しか いない 同級生の中から結ばれたのが 113 00:10:22,151 --> 00:10:24,153 僕と 節子です。 114 00:10:24,153 --> 00:10:28,153 何でも分かり合える 幼なじみでした。 115 00:10:30,159 --> 00:10:37,166 その後 僕は 県内の大学を卒業し 母校の小学校教師となりました。 116 00:10:37,166 --> 00:10:40,169 節子は 村役場で働き 117 00:10:40,169 --> 00:10:44,173 運動会などは 村中総出で 盛り上がるんです。 118 00:10:44,173 --> 00:10:48,173 僕らの結婚も 村中の人が祝ってくれました。 119 00:10:51,180 --> 00:10:55,184 このまま この村に住み続けたい。 120 00:10:55,184 --> 00:11:01,190 大好きな絵を 好きなだけ描いていたい。 121 00:11:01,190 --> 00:11:04,190 ずっと そう思っていました。 122 00:11:12,201 --> 00:11:16,205 それが どうして 東京へ? 123 00:11:16,205 --> 00:11:19,208 学校が廃校となったんです。 124 00:11:19,208 --> 00:11:23,212 それで 隣町の学校へ 赴任することに なったのですが 125 00:11:23,212 --> 00:11:26,215 そのとき たまたま出していた デザイン展に 126 00:11:26,215 --> 00:11:28,217 入賞したものですから。 127 00:11:28,217 --> 00:11:33,155 それを機に 思い切って 東京で 勝負しようと思ったんです。 128 00:11:33,155 --> 00:11:39,161 そのとき 奥さんは 何と? 129 00:11:39,161 --> 00:11:41,161 あなたが決めたことならと。 130 00:11:52,174 --> 00:11:57,179 けど 内心は 不安だったんだと思います。 131 00:11:57,179 --> 00:12:01,183 旅行以外 村から出たことがなかったし。 132 00:12:01,183 --> 00:12:06,188 だから 僕を支えなきゃいけない という 責任感と 133 00:12:06,188 --> 00:12:09,191 慣れない都会暮らしのはざまで 134 00:12:09,191 --> 00:12:12,191 心のバランスを 崩したんだと思います。 135 00:12:17,199 --> 00:12:21,203 それは 節子さん? ええ。 136 00:12:21,203 --> 00:12:25,207 前に見た絵と ずいぶん 印象が違うね。 137 00:12:25,207 --> 00:12:30,207 田舎に いたころは 元気だけが 取りえのような 女性でしたから。 138 00:12:33,149 --> 00:12:37,153 あっ ごめんなさい。 何だか 暗くさせてしまって。 139 00:12:37,153 --> 00:12:39,155 節子のことを考えたら 140 00:12:39,155 --> 00:12:43,159 田舎に戻った方が いいのかもしれませんが 141 00:12:43,159 --> 00:12:47,163 僕も 大志を抱いて 東京へ出てきたんです。 142 00:12:47,163 --> 00:12:53,169 大した仕事もしないで このまま帰るのは 心残りですし 143 00:12:53,169 --> 00:13:01,177 だから 結果を出せば 彼女の不安も和らぐと思うんです。 144 00:13:01,177 --> 00:13:03,179 ですから 松田さん。 145 00:13:03,179 --> 00:13:07,179 くれぐれも 編集長には よろしく お伝えください。 146 00:13:09,185 --> 00:13:11,187 うん。 147 00:13:11,187 --> 00:13:13,189 すいません マスター。 148 00:13:13,189 --> 00:13:16,192 喉が渇いたので 1杯だけ頂いても よろしいですか? 149 00:13:16,192 --> 00:13:18,194 ええ。 150 00:13:18,194 --> 00:13:20,196 ホワイトホースの水割り お願いします。 151 00:13:20,196 --> 00:13:22,198 ラベルの白い馬が 152 00:13:22,198 --> 00:13:25,201 東山 魁夷先生の絵に 描かれてる馬に似ていて 153 00:13:25,201 --> 00:13:27,201 好きなんです。 154 00:13:30,206 --> 00:13:34,143 谷川さん。 はい。 155 00:13:34,143 --> 00:13:36,145 今夜は それでは なく 156 00:13:36,145 --> 00:13:40,149 私が出す お酒を 飲んでいただけませんか? 157 00:13:40,149 --> 00:13:42,151 はい? 158 00:13:42,151 --> 00:13:45,154 ぜひ 谷川さんに 飲んでいただきたい 159 00:13:45,154 --> 00:13:47,154 ワインがあるんです。 160 00:13:49,158 --> 00:13:51,158 ええ。 161 00:14:07,176 --> 00:14:12,176 こちら トカイ・アスー・エッセンシアです。 162 00:17:07,556 --> 00:17:09,556 どうぞ。 163 00:17:15,564 --> 00:17:17,564 いただきます。 はい。 164 00:17:27,576 --> 00:17:32,581 甘い。 でも 香りが すごく ふくよかだ。 165 00:17:32,581 --> 00:17:34,583 喜んでいただけましたか? 166 00:17:34,583 --> 00:17:38,587 はい。 お酒には あまり詳しくありませんが 167 00:17:38,587 --> 00:17:40,522 こんなに飲みやすいワインは 初めてです。 168 00:17:40,522 --> 00:17:44,526 ワインといっても これは 食事が終わった後 169 00:17:44,526 --> 00:17:48,530 おしまいに飲む 甘口の デザートワインなんです。 170 00:17:48,530 --> 00:17:50,532 デザートワイン? はい。 171 00:17:50,532 --> 00:17:54,536 トカイ・アスー・エッセンシアは 貴腐ブドウという 172 00:17:54,536 --> 00:17:58,540 糖度が 極めて高いブドウから 造られてます。 173 00:17:58,540 --> 00:18:01,543 ハンガリーの トカイ地方で製造される 174 00:18:01,543 --> 00:18:04,546 有名な デザートワインなんです。 175 00:18:04,546 --> 00:18:06,548 ハンガリー産のワインなんですね。 はい。 176 00:18:06,548 --> 00:18:13,555 そこで造られる トカイ・ワインは 別名 帝王の酒とも呼ばれるんだ。 177 00:18:13,555 --> 00:18:15,557 なぜですか? 178 00:18:15,557 --> 00:18:19,561 ヨーロッパの王宮で 大変 人気があったからです。 179 00:18:19,561 --> 00:18:21,563 オーストリアの皇帝は 180 00:18:21,563 --> 00:18:26,568 ビクトリア女王の誕生日に 毎年 年齢分だけ 181 00:18:26,568 --> 00:18:29,571 ダースで贈っていたと いわれています。 182 00:18:29,571 --> 00:18:33,575 それから 18世紀の 帝政ロシアを支配した 183 00:18:33,575 --> 00:18:35,577 女帝 エカテリーナも。 184 00:18:35,577 --> 00:18:38,580 それから 同じく ロシアの ピョートル大帝も 185 00:18:38,580 --> 00:18:40,516 これを好んで 飲んでいたと いわれます。 186 00:18:40,516 --> 00:18:44,520 へえ~。 まさしく 帝王の酒だね。 187 00:18:44,520 --> 00:18:47,520 これだけ おいしいんですから 納得です。 188 00:18:51,527 --> 00:18:55,531 その おいしい トカイ・ワインを飲んだ 偉い人たちは 189 00:18:55,531 --> 00:18:59,535 その後 どうしたか分かりますか? 190 00:18:59,535 --> 00:19:03,539 えっ? 答えは 簡単だ。 191 00:19:03,539 --> 00:19:05,541 トカイ・ワインの ブドウの木を 手に入れて 192 00:19:05,541 --> 00:19:09,545 自分の国で 同じ物を造ろうとしたのさ。 193 00:19:09,545 --> 00:19:13,549 なるほど。 それなら 好きなだけ飲めますもんね。 194 00:19:13,549 --> 00:19:16,552 まず フランスの ある お坊さんが 195 00:19:16,552 --> 00:19:20,556 トカイ・ワインと同じ フルミント種の ブドウの木を 196 00:19:20,556 --> 00:19:23,559 自国へ持ち帰って 移植しました。 197 00:19:23,559 --> 00:19:28,564 でも 成功には至らなかったと いわれています。 198 00:19:28,564 --> 00:19:30,566 そして ドイツでも 199 00:19:30,566 --> 00:19:35,571 王様の指示で ライン川のほとりに ブドウの木を移植しました。 200 00:19:35,571 --> 00:19:42,511 でも 完成したワインは 平凡な味だったといわれます。 201 00:19:42,511 --> 00:19:45,514 帝政ロシアは もっと すごいぞ。 202 00:19:45,514 --> 00:19:47,516 ブドウの木だけじゃなくて 203 00:19:47,516 --> 00:19:51,520 ハンガリーから 技術者を招いて トカイ・ワインを造ったんだ。 204 00:19:51,520 --> 00:19:54,523 それなら 成功しますよね? 205 00:19:54,523 --> 00:19:56,525 ところが そこまでしても 206 00:19:56,525 --> 00:20:00,525 どうしても トカイ・ワインと同じ味には ならなかったんです。 207 00:20:03,532 --> 00:20:05,532 谷川さん。 208 00:20:07,536 --> 00:20:11,540 どんなに おんなじものを持ってきても 209 00:20:11,540 --> 00:20:16,545 土地や気候 そして 環境が変わると 210 00:20:16,545 --> 00:20:23,545 絶対に 同じワインには ならない ということなんですよ。 211 00:20:40,502 --> 00:20:44,506 マスターが このワインを 僕に薦めた理由が 212 00:20:44,506 --> 00:20:46,506 ようやく分かりました。 213 00:20:51,513 --> 00:20:54,516 彼女が笑うには 214 00:20:54,516 --> 00:20:57,516 あの土地じゃなければ 駄目なんでしょうね。 215 00:21:02,524 --> 00:21:05,527 君だって 同じだろ。 216 00:21:05,527 --> 00:21:07,529 えっ? 217 00:21:07,529 --> 00:21:09,531 君が 自信作と言って 持ってきた絵には 218 00:21:09,531 --> 00:21:12,531 全て 節子さんが描かれている。 219 00:21:22,544 --> 00:21:28,550 君の絵にとって 節子さんの笑顔は 220 00:21:28,550 --> 00:21:31,550 なくては ならないものじゃないのか? 221 00:21:42,497 --> 00:21:45,497 そのとおりです。 222 00:21:47,502 --> 00:21:50,505 昔から そうでした。 223 00:21:50,505 --> 00:21:52,507 僕が 絵を描くと 224 00:21:52,507 --> 00:21:57,507 節子は 必ず 上手ねって 笑顔で 褒めてくれたんです。 225 00:22:00,515 --> 00:22:02,515 なのに…。 226 00:22:04,519 --> 00:22:09,519 東京へ来てからは 全然 笑わなくなって…。 227 00:22:13,528 --> 00:22:19,534 僕も 全然 満足がいく作品が 描けなくなって。 228 00:22:19,534 --> 00:22:24,539 全部 僕が悪いんです。 229 00:22:24,539 --> 00:22:29,539 変な意地を張って 節子を苦しめて。 230 00:22:31,546 --> 00:22:37,546 僕は ただ 節子を喜ばせたかっただけなのに。 231 00:22:59,508 --> 00:23:02,511 谷川さん。 232 00:23:02,511 --> 00:23:05,511 あっ すいません。 233 00:23:07,516 --> 00:23:14,523 今日は このワインを 持って帰ってください。 234 00:23:14,523 --> 00:23:20,529 これから どうしたらいいか 私にできるアドバイスは 235 00:23:20,529 --> 00:23:25,534 奥さんと 2人で このワインを飲みながら 236 00:23:25,534 --> 00:23:32,534 ゆっくりと考えてください ということだけです。 237 00:23:42,484 --> 00:23:46,488 仕事のことは 奥さんとの話が まとまってからでいいから。 238 00:23:46,488 --> 00:23:48,488 はい。 239 00:23:53,495 --> 00:23:58,500 皆さん 本当に ありがとうございました。 240 00:23:58,500 --> 00:24:00,502 東京へ来てからは 241 00:24:00,502 --> 00:24:04,506 いいことが あんまり ありませんでしたが 242 00:24:04,506 --> 00:24:06,508 今日の この日だけは 243 00:24:06,508 --> 00:24:10,508 一生 忘れられない日に なりそうな気がします。 244 00:24:45,480 --> 00:24:49,484 へえ~。 谷川君から 絵手紙が届いたんだ。 245 00:24:49,484 --> 00:24:53,488 ええ。 故郷で 仕事を見つけたそうですよ。 246 00:24:53,488 --> 00:24:56,491 奥さんの体調も ずいぶんと良くなったそうで。 247 00:24:56,491 --> 00:24:58,491 そいつは よかった。 248 00:25:00,495 --> 00:25:03,498 そうだ マスター。 あの日のこと ちょっと 聞いてもいいかな? 249 00:25:03,498 --> 00:25:06,501 何です? あのとき 谷川君に 250 00:25:06,501 --> 00:25:09,504 トカイ・ワインを飲みながら 考えてって言ったよね? 251 00:25:09,504 --> 00:25:12,507 あれって どういう意味だったの? 252 00:25:12,507 --> 00:25:16,511 実は トカイ・ワインは おいしいだけではなく 253 00:25:16,511 --> 00:25:20,515 その ふくよかな香りを嗅ぐと 故郷を離れてる人は 254 00:25:20,515 --> 00:25:25,520 望郷の念に駆られる っていう言い伝えがあるんですよ。 255 00:25:25,520 --> 00:25:27,522 そうなんだ。 256 00:25:27,522 --> 00:25:30,525 せっかくだから 松ちゃんも 飲ませてもらったらどうだ? 257 00:25:30,525 --> 00:25:32,527 いやいやいや… 遠慮しとく。 258 00:25:32,527 --> 00:25:35,527 今 田舎に帰っちゃったら 締め切り 間に合わないもん。 259 00:25:38,533 --> 00:25:41,469 谷川君 幸せそうですね。 260 00:25:41,469 --> 00:25:47,469 ええ。 そんな奇麗な空 東京には ありませんからね。 261 00:28:46,421 --> 00:28:49,424 (松ちゃん) どっかに金のなる木はないかな。 262 00:28:49,424 --> 00:28:52,427 (マスター)何ですか やぶから棒に。 263 00:28:52,427 --> 00:28:54,427 今月 金欠でさ。 264 00:28:56,431 --> 00:29:00,435 メガネさん 100%当たる 万馬券ってないかな? 265 00:29:00,435 --> 00:29:04,439 (メガネさん)ケッ。 そんなの俺が知りたいぐらいだ。 266 00:29:04,439 --> 00:29:06,439 ハァ…。 267 00:29:11,446 --> 00:29:14,449 あっ 社長 ここにいたしましょう。 268 00:29:14,449 --> 00:29:16,451 えっ? 269 00:29:16,451 --> 00:29:18,453 おいおい 何か しみったれてんな。 270 00:29:18,453 --> 00:29:21,456 なっ 銀座 行こう。 271 00:29:21,456 --> 00:29:24,459 もうちょっとで落ちそうな チーママがいるんだよ。 272 00:29:24,459 --> 00:29:26,459 社長! 273 00:29:29,464 --> 00:29:31,464 ハァ…。 274 00:29:33,401 --> 00:29:35,401 いらっしゃいませ。 275 00:29:37,405 --> 00:29:40,408 なかなか 良いお店ですね。 どうぞ。 276 00:29:40,408 --> 00:29:45,413 色気も何にもないのね。 277 00:29:45,413 --> 00:29:47,415 そこが良いんです。 278 00:29:47,415 --> 00:29:50,418 余分な金を支払わずに済みます。 279 00:29:50,418 --> 00:29:52,420 何を お飲みになりますか? 280 00:29:52,420 --> 00:29:56,424 そうね じゃあ レミーマルタンのルイ13世…。 281 00:29:56,424 --> 00:29:59,427 安い酒を下さい。 え? 282 00:29:59,427 --> 00:30:01,429 この店で一番安い酒です。 283 00:30:01,429 --> 00:30:03,431 駄目でしょうか? いいえ。 284 00:30:03,431 --> 00:30:06,434 では 究極に安い酒を お願いします。 285 00:30:06,434 --> 00:30:08,436 おい おい おい! 286 00:30:08,436 --> 00:30:10,438 みっともないから おやめなさいよ。 287 00:30:10,438 --> 00:30:13,441 なぜですか? ここでの領収書は 接待費で落ちませんよ。 288 00:30:13,441 --> 00:30:15,443 いや そういうこと 言ってんじゃないんだよ。 289 00:30:15,443 --> 00:30:19,447 何だか面白そうな人たちだね。 フフッ。 290 00:30:19,447 --> 00:30:24,452 こいつはね うちの会社の経理でね。 291 00:30:24,452 --> 00:30:29,457 私が銀座で飲み歩いていることが 気に入らないんですよ。 292 00:30:29,457 --> 00:30:33,394 気に入らない訳ではありません。 無駄だと申し上げているんです。 293 00:30:33,394 --> 00:30:36,397 一夜で30万円以上のお金を 高級クラブで使うことに 294 00:30:36,397 --> 00:30:40,401 会社として どんな意味があるんですか。 295 00:30:40,401 --> 00:30:42,403 俺の会社だ! 296 00:30:42,403 --> 00:30:48,409 金を どう使おうが 俺の勝手だ。 フン。 297 00:30:48,409 --> 00:30:51,412 かしこまりました。 え? 298 00:30:51,412 --> 00:30:54,415 お酒の価値は値段ではありません。 299 00:30:54,415 --> 00:30:57,418 それに お客さまのご希望に できるだけ お応えするのが 300 00:30:57,418 --> 00:30:59,420 バーマンの務めです。 301 00:30:59,420 --> 00:31:02,423 今夜は うちにある中で 302 00:31:02,423 --> 00:31:05,426 究極に安いお酒を 選ばせていただきます。 303 00:31:05,426 --> 00:31:07,428 よろしくお願いします。 304 00:31:07,428 --> 00:31:09,430 勝手にしろ。 305 00:31:09,430 --> 00:31:14,435 えー 一番安いお酒…。 306 00:31:14,435 --> 00:31:18,439 やっぱり これですかね。 307 00:31:18,439 --> 00:31:20,441 こちら…。 308 00:31:20,441 --> 00:31:22,443 トリスです。 やっぱり! 309 00:31:22,443 --> 00:31:25,446 (斎藤)え? すいません。 310 00:31:25,446 --> 00:31:28,449 究極に安い酒って聞いて ちょっと気になっちゃって。 311 00:31:28,449 --> 00:31:30,451 うちの常連の方々です。 312 00:31:30,451 --> 00:31:32,470 どうも。 どうも。 313 00:31:32,470 --> 00:31:35,390 で 飲み方は いかがなされますか? 314 00:31:35,390 --> 00:31:38,393 その前に 一つ質問をしても よろしいでしょうか? 315 00:31:38,393 --> 00:31:40,395 はい どうぞ。 316 00:31:40,395 --> 00:31:43,398 何を基準に トリスを お選びになったんですか? 317 00:31:43,398 --> 00:31:47,402 安いお酒ということでしたので 安さを基準に選びました。 318 00:31:47,402 --> 00:31:51,406 トリスは 小売価格が900円です。 319 00:31:51,406 --> 00:31:54,409 他の候補は? お出ししましょうか? 320 00:31:54,409 --> 00:31:56,411 お願いします。 はい。 321 00:31:56,411 --> 00:32:01,416 えーと うちにある中で 安い部類といいますと…。 322 00:32:01,416 --> 00:32:06,421 まず ハイニッカ 1200円。 323 00:32:06,421 --> 00:32:09,424 角が 1414円。 324 00:32:09,424 --> 00:32:13,428 ホワイトが 1174円。 325 00:32:13,428 --> 00:32:17,432 レッドが 884円です。 326 00:32:17,432 --> 00:32:21,436 あれ? トリスより レッドの方が安い。 327 00:32:21,436 --> 00:32:25,440 1ミリリットルの値段ですね。 さすが。 そのとおりです。 328 00:32:25,440 --> 00:32:28,443 え? 入ってる量が違うだろ。 329 00:32:28,443 --> 00:32:33,381 トリスは 700ミリリットル。 レッドは 640ミリリットルだ。 330 00:32:33,381 --> 00:32:36,384 ああ なるほど。 1ミリリットルの価も 331 00:32:36,384 --> 00:32:39,384 明確に出しましょうか? ならば 私が。 332 00:32:43,391 --> 00:32:47,395 おい! およしなさいよ。 こんな所で電卓たたくのは。 333 00:32:47,395 --> 00:32:50,398 すぐに終わります。 334 00:32:50,398 --> 00:32:55,398 (斎藤)ハイニッカ 720ミリリットル 1200円。 335 00:32:58,406 --> 00:33:02,410 (斎藤)1ミリリットル 1.6円。 336 00:33:02,410 --> 00:33:06,414 角… 2.0円。 337 00:33:06,414 --> 00:33:10,418 (斎藤)ホワイト… 1.8円。 338 00:33:10,418 --> 00:33:16,424 レッド… 1.3円。 339 00:33:16,424 --> 00:33:22,430 トリス… 1.2円。 なるほど。 340 00:33:22,430 --> 00:33:27,435 つまり 安さの順に並べると…。 341 00:33:27,435 --> 00:33:29,437 こうなります。 342 00:33:29,437 --> 00:33:32,457 あー やっぱり トリスが一番安いんだ。 343 00:33:32,457 --> 00:33:34,375 さすが マスター。 344 00:33:34,375 --> 00:33:37,378 大したことじゃありませんよ。 いや 大したもんだ。 345 00:33:37,378 --> 00:33:41,382 普通のバーじゃ この手の酒は なかなか置いてないからな。 346 00:33:41,382 --> 00:33:45,386 懐かしがって たまに飲みたがる お客さんがいらっしゃるんですよ。 347 00:33:45,386 --> 00:33:49,390 だいたいね この辺のお酒の 上にくるのがダルマ。 348 00:33:49,390 --> 00:33:53,394 その さらに上にくるのが ローヤルだ。 349 00:33:53,394 --> 00:34:00,401 あのころはな 出世するたびに 酒を替えたもんだ。 350 00:34:00,401 --> 00:34:03,404 こちらですね。 351 00:34:03,404 --> 00:34:05,406 お~! 352 00:34:05,406 --> 00:34:10,411 懐かしいねえ。 ハハハ。 353 00:34:10,411 --> 00:34:13,414 その形からダルマって 呼ばれてるんですよね。 354 00:34:13,414 --> 00:34:15,416 関西じゃ たぬきと呼ぶ人もいるらしい。 355 00:34:15,416 --> 00:34:18,419 へぇ~。 マスター ロックで。 356 00:34:18,419 --> 00:34:20,421 駄目です 社長。 357 00:34:20,421 --> 00:34:23,424 トリスを二つ。 ロックでお願いします。 358 00:34:23,424 --> 00:34:26,427 よろしいですか? 359 00:34:26,427 --> 00:34:28,429 はーい。 360 00:34:28,429 --> 00:34:30,431 かしこまりました。 361 00:34:30,431 --> 00:34:33,367 角か。 思い出でもあるのか? 362 00:34:33,367 --> 00:34:37,371 駆け出しのころ 打ち合わせが いつも 新宿のゴールデン街であって 363 00:34:37,371 --> 00:34:40,374 そこで出てきたのが いつも 角だったんだよ。 364 00:34:40,374 --> 00:34:42,376 酔っぱらうと 先輩が 365 00:34:42,376 --> 00:34:47,381 「角は いつか見た男の青空です」 って。 366 00:34:47,381 --> 00:34:51,385 井上陽水のCMですね。 そう! カッコ良かった~。 367 00:34:51,385 --> 00:34:54,388 CMでいえば 俺はホワイトだな。 368 00:34:54,388 --> 00:34:58,392 サミー・デイヴィスJr.が カッコ良かったんだ。 369 00:34:58,392 --> 00:35:00,394 へぇ~。 370 00:35:00,394 --> 00:35:03,397 お待たせしました。 371 00:35:03,397 --> 00:35:06,400 トリス ロックです。 372 00:35:06,400 --> 00:35:10,404 ちょっと待ってください。 え? 373 00:35:10,404 --> 00:35:13,407 作っていただいたのに 大変 恐縮なんですが 374 00:35:13,407 --> 00:35:17,411 先ほどの計算で 大切なことを 見落としておりました。 375 00:35:17,411 --> 00:35:19,413 と言いますと? 376 00:35:19,413 --> 00:35:21,415 アルコール度数です。 377 00:35:21,415 --> 00:35:27,421 あー お酒ですから アルコール度数を 無視するわけにはいきませんよね。 378 00:35:27,421 --> 00:35:32,443 やはり。 それでは この際ですから 焼酎なども範疇に入れてみては。 379 00:35:32,443 --> 00:35:36,364 おい! 俺は ウイスキーしか飲まんぞ。 おい これでいい。 380 00:35:36,364 --> 00:35:40,368 でも 究極に安いお酒というのが ご希望ですから 381 00:35:40,368 --> 00:35:42,370 それが はっきりしないと…。 382 00:35:42,370 --> 00:35:45,373 え…。 383 00:35:45,373 --> 00:35:48,376 少々 お待ちください。 あー くそっ! 384 00:35:48,376 --> 00:35:50,376 では これは…。 あっ あっ。 385 00:35:53,381 --> 00:35:56,384 で アルコール度数は どういう風に計算しましょうかね? 386 00:35:56,384 --> 00:35:58,386 あっ それは簡単です。 387 00:35:58,386 --> 00:36:01,389 まずは ボトル1本の アルコール量をもとめ 388 00:36:01,389 --> 00:36:04,392 その後で 1ショット 30ミリリットルの単価を出します。 389 00:36:04,392 --> 00:36:06,394 はあ…。 390 00:36:06,394 --> 00:36:10,398 アルコール量は 酒の容量 掛ける アルコール度数で算出できます。 391 00:36:10,398 --> 00:36:14,398 1ショットの単価は…。 392 00:36:19,407 --> 00:36:23,407 さあ 始めましょう。 はあ。 393 00:39:04,472 --> 00:39:06,474 (斎藤)出ました。 はい。 394 00:39:06,474 --> 00:39:09,477 アルコール度数を考慮した 1ショットの値段。 395 00:39:09,477 --> 00:39:12,477 端数 切り捨てです。 はい。 396 00:39:25,493 --> 00:39:27,493 そして トリス。 397 00:39:29,497 --> 00:39:33,501 レッドの逆転だ! はい。 398 00:39:33,501 --> 00:39:36,501 ということで 順番は…。 399 00:39:39,507 --> 00:39:42,510 このようになります。 400 00:39:42,510 --> 00:39:46,514 では マスター レッドを二つ お願いいたします。 401 00:39:46,514 --> 00:39:50,518 いやあ お見それいたしました。 402 00:39:50,518 --> 00:39:52,518 ああ。 403 00:39:56,524 --> 00:40:02,463 お待たせしました。 究極に安いお酒 レッドです。 404 00:40:02,463 --> 00:40:05,463 (丸山)はいはい。 ありがとうございます。 405 00:40:13,474 --> 00:40:15,476 いかがですか? 406 00:40:15,476 --> 00:40:20,548 いやいや いかがですかって レッドはレッドだよ。 407 00:40:20,548 --> 00:40:23,484 問題ありません 酒の味がします。 408 00:40:23,484 --> 00:40:29,490 レッドは かつて赤札というふうに 呼ばれていたのはご存じですか? 409 00:40:29,490 --> 00:40:31,492 赤札? はい。 410 00:40:31,492 --> 00:40:34,495 それに対して 白札がホワイトだ。 411 00:40:34,495 --> 00:40:37,498 さすがは社長 お詳しいですね。 412 00:40:37,498 --> 00:40:39,500 親父に聞かされたよ。 413 00:40:39,500 --> 00:40:41,502 昭和4年に サントリーが 414 00:40:41,502 --> 00:40:45,506 国産ウイスキー 第一号として 造ったのが このホワイト。 415 00:40:45,506 --> 00:40:50,511 社長のおっしゃるとおり 当時は白札という名前でした。 416 00:40:50,511 --> 00:40:53,514 ところが この白札は ピート臭が強すぎて 417 00:40:53,514 --> 00:40:55,516 不評に終わってしまいます。 418 00:40:55,516 --> 00:41:01,455 で 翌年に ブレンドを変えた弟 レッド。 419 00:41:01,455 --> 00:41:03,457 つまり 赤札が発売されました。 420 00:41:03,457 --> 00:41:07,461 ところが この赤札も 急場しのぎに造ったために 421 00:41:07,461 --> 00:41:12,466 消費者の不評を買って 結局は 製造中止になってしまいます。 422 00:41:12,466 --> 00:41:16,470 製造を再開したのは 確か 昭和39年。 423 00:41:16,470 --> 00:41:19,473 東京オリンピックの年だったかな。 はい。 424 00:41:19,473 --> 00:41:21,475 当時 ニッカウヰスキーが 425 00:41:21,475 --> 00:41:24,478 500円でハイニッカを 発売したんですよ。 426 00:41:24,478 --> 00:41:27,481 それで ライバルのサントリーは これに対抗して 427 00:41:27,481 --> 00:41:32,486 同価格帯でレッドを復活させたと いわれています。 428 00:41:32,486 --> 00:41:35,489 ホワイトの弟がレッドで 429 00:41:35,489 --> 00:41:38,492 レッドとハイニッカは ライバルなのか。 430 00:41:38,492 --> 00:41:40,494 面白い。 ハハッ。 431 00:41:40,494 --> 00:41:44,498 社長もレッドの世代なんじゃ ないんですか? 432 00:41:44,498 --> 00:41:46,498 さあね。 433 00:41:57,511 --> 00:42:00,531 マスター。 434 00:42:00,531 --> 00:42:03,450 お代わり。 はい。 いいんですか? レッドで。 435 00:42:03,450 --> 00:42:06,453 ああ。 こいつが うるさいからね。 436 00:42:06,453 --> 00:42:10,457 ハハハ。 酔われてしまったようですね。 437 00:42:10,457 --> 00:42:15,462 ああ こいつは もともと酒が弱いんだよ。 438 00:42:15,462 --> 00:42:19,466 たった一杯で つぶれやがって。 439 00:42:19,466 --> 00:42:24,471 お前はね 安上がりな男だよ。 440 00:42:24,471 --> 00:42:26,471 ん~。 441 00:42:28,475 --> 00:42:36,483 お酒の高い安いは ご本人の体質も 関わるみたいですよね。 442 00:42:36,483 --> 00:42:39,483 それは あるね。 フフフ。 443 00:42:42,489 --> 00:42:44,491 どうぞ。 あっ ありがとうございます。 444 00:42:44,491 --> 00:42:46,493 おいおい ちょっ… お前じゃないよ。 445 00:42:46,493 --> 00:42:48,495 お前じゃない。 446 00:42:48,495 --> 00:42:53,500 えー? 私だってね まだまだ飲めます。 447 00:42:53,500 --> 00:42:55,502 マスター。 タクシー タクシー。 分かりました。 448 00:42:55,502 --> 00:42:58,505 タクシー!? そんな ぜいたくなもん…。 449 00:42:58,505 --> 00:43:01,442 おい ちょっと お前 そんなこと 言ったって歩けないだろ。 450 00:43:01,442 --> 00:43:04,445 歩けますよ! だって ほら こうやって…。 451 00:43:04,445 --> 00:43:06,447 あー あー 危ない。 452 00:43:06,447 --> 00:43:10,451 ああ…。 何で タクシーなんて そんな ぜいたくなもん。 453 00:43:10,451 --> 00:43:14,455 だいたいね 社長は ぜいたくが過ぎるんですよ! 454 00:43:14,455 --> 00:43:18,459 分かった 分かった。 あのね 特に酒。 455 00:43:18,459 --> 00:43:20,527 酒が ひどい。 456 00:43:20,527 --> 00:43:25,466 世の中で一番高いお酒が 何だか教えてあげましょうか。 457 00:43:25,466 --> 00:43:30,471 それはね ホステスにねだられて 入れるボトルですよ! 458 00:43:30,471 --> 00:43:35,476 そして最後に振られたら それは計算できない高い酒だ! 459 00:43:35,476 --> 00:43:38,479 分かるか!? この どスケベ エロ社長が! 460 00:43:38,479 --> 00:43:40,481 何ぃ!? ああ まあまあ…。 461 00:43:40,481 --> 00:43:43,481 あの… 腰掛けてください。 462 00:43:47,488 --> 00:43:49,490 アハッ いただきます。 463 00:43:49,490 --> 00:43:51,492 あああ… おいおい! おい やめとけ。 464 00:43:51,492 --> 00:43:59,500 あー うまい。 あー うまいな! 安い酒 最高! アハハハハ! 465 00:43:59,500 --> 00:44:04,438 アーハハハ。 あら…。 466 00:44:04,438 --> 00:44:06,440 おい。 467 00:44:06,440 --> 00:44:08,442 斎藤。 468 00:44:08,442 --> 00:44:10,444 おい! 469 00:44:10,444 --> 00:44:12,446 ハァ…。 470 00:44:12,446 --> 00:44:15,449 ん? 何? うるさいよ。 471 00:44:15,449 --> 00:44:17,451 あのね! 472 00:44:17,451 --> 00:44:27,461 私はね 会社を すごーく愛して ながーく愛して 473 00:44:27,461 --> 00:44:33,461 愛して 愛して 愛して…。 474 00:44:43,477 --> 00:44:46,477 ハァ…。 475 00:44:48,482 --> 00:44:51,485 お代わり いかがですか? 476 00:44:51,485 --> 00:44:55,489 お願いします。 はい。 477 00:44:55,489 --> 00:44:57,491 ハァ…。 478 00:44:57,491 --> 00:45:01,428 あっ 皆さん お騒がせして すいませんでした。 479 00:45:01,428 --> 00:45:03,430 ああ いやいや。 いやいや。 480 00:45:03,430 --> 00:45:05,432 ハァ…。 481 00:45:05,432 --> 00:45:11,432 それより 社長の会社は安泰ですね。 482 00:45:13,440 --> 00:45:17,444 フッ。 ええ そうですね。 483 00:45:17,444 --> 00:45:20,447 ハハッ。 ハッハッハッ。 484 00:45:20,447 --> 00:45:22,449 マスター。 はい。 485 00:45:22,449 --> 00:45:26,453 一つ頼んでもいいですか? はい 何でしょう? 486 00:45:26,453 --> 00:45:28,455 いや あの…。 487 00:45:28,455 --> 00:45:34,461 ちょっとね 懐かしい飲み方を 思い出しちゃったもんだから。 488 00:45:34,461 --> 00:45:39,466 もし良かったら 爆弾やらせてもらえないかな。 489 00:45:39,466 --> 00:45:42,469 あ~! 490 00:45:42,469 --> 00:45:44,471 爆弾って何? 491 00:45:44,471 --> 00:45:46,473 ビールとウイスキーの ちゃんぽんさ。 492 00:45:46,473 --> 00:45:48,475 日本じゃ爆弾だが カクテルにも 493 00:45:48,475 --> 00:45:52,479 ビールとバーボンを合わせた ボイラーメーカーっていうのがあるんだ。 494 00:45:52,479 --> 00:45:56,483 いやいやいや われわれのはね そんな高尚なもんじゃないんだ。 495 00:45:56,483 --> 00:46:01,422 それにね まあ ちょこっとした 流儀があるんですよ。 496 00:46:01,422 --> 00:46:04,425 へぇ 何か よく分かんないけど マスター 僕も それ頂戴。 497 00:46:04,425 --> 00:46:06,427 じゃ 俺もだ。 498 00:46:06,427 --> 00:46:09,430 そうですね もう お客さまは 皆さんだけですし 499 00:46:09,430 --> 00:46:16,437 今夜は一つ 社長に爆弾のやり方を 教えてもらおうじゃありませんか。 500 00:46:16,437 --> 00:46:19,440 あっ じゃあね お騒がせしたお詫びに 501 00:46:19,440 --> 00:46:23,440 奢らせてください。 やった! ヘヘッ。 502 00:46:29,450 --> 00:46:32,453 まずは ウイスキーの入った ショットグラスを 503 00:46:32,453 --> 00:46:36,457 グラスの上に掲げる。 504 00:46:36,457 --> 00:46:40,461 そして 落とす。 505 00:46:40,461 --> 00:46:44,465 うわ~! はい。 506 00:46:44,465 --> 00:46:47,468 うっ。 ハハハ! 507 00:46:47,468 --> 00:46:50,468 そして 飲む。 508 00:46:57,478 --> 00:46:59,480 あ~。 509 00:46:59,480 --> 00:47:04,418 きく! これが爆弾!? ん~ 秩序のない味だ。 510 00:47:04,418 --> 00:47:06,420 だろう? ハハハ。 511 00:47:06,420 --> 00:47:11,425 実はね こいつが初めて うちの会社 訪ねてきたときもね 512 00:47:11,425 --> 00:47:13,427 これで歓迎してやったんだ。 ハハッ。 513 00:47:13,427 --> 00:47:16,430 もちろん 一杯 飲まないうちに バタンキューだ これ。 514 00:47:16,430 --> 00:47:19,430 そうだったんですか。 ハッハッハッ! 515 00:47:22,436 --> 00:47:28,442 あの頃はな 会社を 起こしたばかりで 金がなくてね。 516 00:47:28,442 --> 00:47:34,448 まあ 手っ取り早く酔うために こんな飲み方してたんだけどさ 517 00:47:34,448 --> 00:47:39,453 みんなでね これこそが サラリーマンの正しい飲み方だ! 518 00:47:39,453 --> 00:47:44,458 とか何とか盛り上げちゃって。 ハッハッハッ! 519 00:47:44,458 --> 00:47:52,466 そうだな。 あんときもレッドだったね。 520 00:47:52,466 --> 00:47:59,473 もう少し高い酒を 飲ませてやりたかった。 521 00:47:59,473 --> 00:48:05,412 だから 安い酒は嫌いだ。 522 00:48:05,412 --> 00:48:09,412 あの頃の事なんか 思い出したくもない。 523 00:48:12,419 --> 00:48:15,422 でも それが彼にとっては 524 00:48:15,422 --> 00:48:18,422 良い思い出だったんじゃ ないですかね。 525 00:48:24,431 --> 00:48:26,433 そうだね。 526 00:48:26,433 --> 00:48:31,438 酔っぱらっても あの頃のCMの話してやがった。 527 00:48:31,438 --> 00:48:37,444 長く愛して 少し愛してか。 528 00:48:37,444 --> 00:48:41,444 ん? 逆か? まあ いいか。 529 00:48:47,454 --> 00:48:52,454 あ~。 うん。 530 00:48:54,461 --> 00:48:57,464 でも どうして みんな お金を持つと 531 00:48:57,464 --> 00:48:59,466 高いお酒を 飲むようになるのかな? 532 00:48:59,466 --> 00:49:06,473 それはですね 高いお酒は 女性に見立てるんですよ。 533 00:49:06,473 --> 00:49:10,477 金のかかる ちょいと良い女。 534 00:49:10,477 --> 00:49:15,482 飲む飲まないの判断は 自分がつけるんです。 535 00:49:15,482 --> 00:49:17,484 そりゃ飲むしかないね。 536 00:49:17,484 --> 00:49:20,554 まあな。 537 00:49:20,554 --> 00:49:25,492 じゃ金欠の僕は しばらく安い酒だな。 538 00:49:25,492 --> 00:49:28,495 金のかからない女も いないけどな。 539 00:49:28,495 --> 00:49:31,498 それは言わないでよ! 540 00:49:31,498 --> 00:49:34,501 もう…。 541 00:49:34,501 --> 00:49:36,503 マスター。 はい。 542 00:49:36,503 --> 00:49:39,506 もう一杯! 543 00:49:39,506 --> 00:49:42,509 僕も。 はい かしこまりました。 544 00:49:42,509 --> 00:49:45,512 飲むぞ~! 545 00:49:45,512 --> 00:49:50,512 良い女だ! ハッハッハッ! 546 00:49:57,524 --> 00:50:00,544 今夜も BAR レモンハートに お越しいただき 547 00:50:00,544 --> 00:50:02,462 ありがとうございました。 548 00:50:02,462 --> 00:50:08,468 では 今夜 登場した お酒を あらためて ご紹介いたします。 549 00:50:08,468 --> 00:50:10,468 まずは…。 550 00:50:12,472 --> 00:50:14,474 ハンガリー北東部 551 00:50:14,474 --> 00:50:18,478 ワインの名産地である トカイ地方で生産される 552 00:50:18,478 --> 00:50:22,482 甘口の デザートワインです。 553 00:50:22,482 --> 00:50:28,488 貴腐ブドウと呼ばれる 非常に 糖度が高いブドウを原料に造られ 554 00:50:28,488 --> 00:50:35,495 その特徴は 蜂蜜を思わせるほどに 濃厚な 香りと甘味。 555 00:50:35,495 --> 00:50:40,500 一度 飲んだら 忘れられない 究極のデザートともいえる 556 00:50:40,500 --> 00:50:43,503 超 甘口ワイン。 557 00:50:43,503 --> 00:50:49,503 食後の一杯や 食前酒として ぜひ お楽しみください。 558 00:50:51,511 --> 00:50:53,513 続いては 559 00:50:53,513 --> 00:50:59,519 およそ80年の歴史がある 日本を代表する国産ウイスキーです。 560 00:50:59,519 --> 00:51:02,456 発売後 消費者の不評を買い 561 00:51:02,456 --> 00:51:06,460 一時 製造中止に追い込まれた レッド。 562 00:51:06,460 --> 00:51:11,465 しかし 家庭でも手軽に 本格的なウイスキーを提供したいと 563 00:51:11,465 --> 00:51:14,468 サントリーが改良を重ね 564 00:51:14,468 --> 00:51:20,474 昭和39年に 低価格の 500円で復活させました。 565 00:51:20,474 --> 00:51:23,477 不遇の歴史を乗り越え 566 00:51:23,477 --> 00:51:27,481 日本のサラリーマンに愛されてきた ウッディーな風味。 567 00:51:27,481 --> 00:51:34,488 ジャパニーズ ウイスキーの味わいを 今夜 堪能してみては? 568 00:51:34,488 --> 00:51:39,488 では また BAR レモンハートで お待ちしております。