1 00:00:06,394 --> 00:00:08,330 こんばんは 宮本亜門です。 2 00:00:08,330 --> 00:00:12,133 最近 私は ある作家たちの 運命について➡ 3 00:00:12,133 --> 00:00:14,069 考えるようになりました。 4 00:00:14,069 --> 00:00:18,473 それは 三島由紀夫と川端康成。 5 00:00:18,473 --> 00:00:21,173 2人についての運命です。 6 00:00:24,813 --> 00:00:27,113 <半世紀前の…> 7 00:00:29,150 --> 00:00:31,086 <日本人で初めて➡ 8 00:00:31,086 --> 00:00:37,492 ノーベル文学賞を受賞した 川端康成。➡ 9 00:00:37,492 --> 00:00:45,367 同じく 世界的作家と評されていた 三島由紀夫。➡ 10 00:00:45,367 --> 00:00:52,067 日本を代表する2人の文豪は 深い師弟関係で結ばれていました> 11 00:00:57,178 --> 00:01:01,516 <しかし 川端の受賞から2年後➡ 12 00:01:01,516 --> 00:01:05,216 三島は 自衛隊の駐屯地で…> 13 00:01:11,793 --> 00:01:13,728 <さらに 2年後➡ 14 00:01:13,728 --> 00:01:20,028 後を追うかのように 川端も 突然 ガス自殺します> 15 00:01:24,806 --> 00:01:27,106 <2人は…> 16 00:01:37,385 --> 00:01:42,357 <関わりのあった人たちに話を聞くと 2人の間には➡ 17 00:01:42,357 --> 00:01:45,126 複雑な感情もあったことが➡ 18 00:01:45,126 --> 00:01:47,426 分かってきました> 19 00:02:12,120 --> 00:02:17,792 <さらに2人は 小説家として どう生きれば良いか➡ 20 00:02:17,792 --> 00:02:21,129 死の直前まで 葛藤していたことも➡ 21 00:02:21,129 --> 00:02:23,829 見えてきました> 22 00:02:54,829 --> 00:02:58,700 <三島由紀夫と川端康成➡ 23 00:02:58,700 --> 00:03:02,170 作家として命を燃やした2人の➡ 24 00:03:02,170 --> 00:03:07,170 知られざる運命の物語をたどります> 25 00:03:20,455 --> 00:03:22,390 <こよい 皆さんと➡ 26 00:03:22,390 --> 00:03:26,690 2人の人生をひもとくのは 私 宮本亜門です> 27 00:03:34,469 --> 00:03:40,169 <2人の作品に魅せられ 多くの舞台も手がけてきました> 28 00:03:42,143 --> 00:03:44,479 <今年 私は がんと宣告され➡ 29 00:03:44,479 --> 00:03:49,150 生きることの意味を 改めて考えるようになりました。➡ 30 00:03:49,150 --> 00:03:53,021 同じ創作の世界に身を置く人間として➡ 31 00:03:53,021 --> 00:03:57,021 2人の大先輩が どう生きたのか 知りたいと思いました> 32 00:04:01,496 --> 00:04:03,831 ここか~。 33 00:04:03,831 --> 00:04:09,831 <私が まず向かったのは 三島の最期の場所となった…> 34 00:04:16,411 --> 00:04:22,317 <1970年11月 三島は このバルコニーから➡ 35 00:04:22,317 --> 00:04:26,317 憲法改正のためのクーデターを 呼びかけました> 36 00:04:54,482 --> 00:04:57,819 <日本刀を手に 幹部を拘束した三島。➡ 37 00:04:57,819 --> 00:05:03,519 クーデターが失敗に終わると 割腹自殺を遂げたのです> 38 00:05:25,446 --> 00:05:30,785 <自決の前夜 三島は すでに死を覚悟していました。➡ 39 00:05:30,785 --> 00:05:35,123 三島が 最後の晩さんに選んだ店です> 40 00:05:35,123 --> 00:05:38,026 あ~ どうも。 いらっしゃいませ。 41 00:05:38,026 --> 00:05:39,994 ありがとうございます。 ようこそ。 お邪魔いたします。 42 00:05:39,994 --> 00:05:42,294 これが ちょうど… 43 00:06:01,816 --> 00:06:04,419 …という お部屋でございますね これが。 44 00:06:04,419 --> 00:06:07,088 <三島は 共に事件を起こす➡ 45 00:06:07,088 --> 00:06:11,788 楯の会のメンバー4人を 連れてきたといいます> 46 00:06:14,429 --> 00:06:17,429 <その様子を間近で見ていた…> 47 00:06:42,457 --> 00:06:45,359 …っていうような感じを受けました。 48 00:06:45,359 --> 00:06:47,359 お部屋に入ったときは… 49 00:06:58,806 --> 00:07:03,806 <幼いころから 家族と何度も この店に通っていた三島> 50 00:07:08,616 --> 00:07:10,752 <最後に食べたのは➡ 51 00:07:10,752 --> 00:07:15,452 いつも注文していた この鳥鍋だったといいます> 52 00:07:30,438 --> 00:07:33,438 私が ただ 普通に… 53 00:07:50,124 --> 00:07:53,124 でも こういう… そのときはの話ですよ。 54 00:08:23,424 --> 00:08:26,327 <「仮面の告白」や「金閣寺」など➡ 55 00:08:26,327 --> 00:08:31,027 戦後を代表する傑作を生み出した 三島由紀夫> 56 00:08:35,770 --> 00:08:41,108 <「伊豆の踊子」や「雪国」など 日本の美の伝統を➡ 57 00:08:41,108 --> 00:08:44,445 叙情的に描いた作品で知られる➡ 58 00:08:44,445 --> 00:08:46,745 川端康成> 59 00:08:49,784 --> 00:08:54,455 <2人の文豪は 一体 どんな人物だったのか。➡ 60 00:08:54,455 --> 00:08:59,155 その素顔をよく知る人を訪ねました> 61 00:09:03,798 --> 00:09:05,798 はじめまして。 ようこそ いらっしゃいました。 62 00:09:07,668 --> 00:09:10,968 <2人を直接知る 数少ない一人です> 63 00:09:16,077 --> 00:09:18,412 <まずは 三島について。➡ 64 00:09:18,412 --> 00:09:23,751 出会ったのは お互い20代のころ。 三島は 3歳年下でしたが➡ 65 00:09:23,751 --> 00:09:28,051 すでに文壇で 華々しく 注目を集めていたそうです> 66 00:09:54,715 --> 00:09:56,715 やりとりが始まった…。 67 00:10:02,790 --> 00:10:07,490 ハハハハ…! そんなこと 三島さん…。 68 00:10:45,833 --> 00:10:48,833 お顔の印象は どんな…? 69 00:10:59,380 --> 00:11:01,680 獣の目? 70 00:11:08,456 --> 00:11:11,792 <一方 川端については…。➡ 71 00:11:11,792 --> 00:11:13,728 <ノーベル賞受賞後➡ 72 00:11:13,728 --> 00:11:17,728 京都に来るたびに 連絡があったといいます> 73 00:11:25,806 --> 00:11:28,506 はあ? 若い きれいな女の子がね。 74 00:11:49,497 --> 00:11:51,497 はっきり… 75 00:11:55,169 --> 00:11:57,169 そこまで はっきりなさってる? 76 00:12:09,116 --> 00:12:11,786 <人間味あふれるエピソードを聞き➡ 77 00:12:11,786 --> 00:12:17,486 私は 2人の小説家としての原点を 知りたくなりました> 78 00:12:30,805 --> 00:12:34,141 三島由紀夫と川端康成。 79 00:12:34,141 --> 00:12:40,815 26歳も離れた 2人の交流は 三島の才能を川端が見いだし➡ 80 00:12:40,815 --> 00:12:44,815 文壇デビューを後押ししたことが きっかけでした。 81 00:12:54,361 --> 00:12:59,166 一方で 2人の作家としての原点は➡ 82 00:12:59,166 --> 00:13:01,466 全く異なるものでした。 83 00:13:05,439 --> 00:13:10,111 三島は 大正末期の1925年生まれ。 84 00:13:10,111 --> 00:13:16,111 父 祖父ともに官僚で 裕福な家庭に育ちました。 85 00:13:19,787 --> 00:13:21,722 祖母に かわいがられ➡ 86 00:13:21,722 --> 00:13:27,422 外遊びをせず 家で 折り紙や ままごとばかりしていた三島。 87 00:13:33,134 --> 00:13:38,434 病弱で かぼそかった少年時代の あだ名は… 88 00:13:40,007 --> 00:13:44,478 一方で 幼いころから 小説を読みふけり➡ 89 00:13:44,478 --> 00:13:51,178 歌舞伎や詩にも親しんだ 三島は 10代のころから文才を発揮します。 90 00:13:55,122 --> 00:14:00,027 1945年 昭和20年。 91 00:14:00,027 --> 00:14:05,727 三島は 二十歳で召集令状を受けますが… 92 00:14:13,641 --> 00:14:16,777 この戦争に行かなかった経験が➡ 93 00:14:16,777 --> 00:14:23,117 小説家としての三島の生き方を 決定づけたという指摘があります。 94 00:14:23,117 --> 00:14:26,417 独自の三島論を執筆している… 95 00:14:32,459 --> 00:14:36,130 国家から「健康ではない男子」と…。 96 00:14:36,130 --> 00:14:39,466 「国家の役に立たない男子」というような➡ 97 00:14:39,466 --> 00:14:42,136 レッテルを貼られてしまったってことが➡ 98 00:14:42,136 --> 00:14:45,039 やっぱり 彼の人生の中で 非常に大きかったと思いますね。 99 00:14:45,039 --> 00:14:47,474 まず やっぱり「仮面の告白」に➡ 100 00:14:47,474 --> 00:14:51,145 象徴的に その問題が表れていると思いますね。 101 00:14:51,145 --> 00:14:55,482 というのは 戦争に… あの主人公は何を悩んでるかっていうと➡ 102 00:14:55,482 --> 00:14:59,353 戦争に行かずに済んだわけですよね 結果的に。 103 00:14:59,353 --> 00:15:03,357 そうすると 行かずに済んだ その時間を➡ 104 00:15:03,357 --> 00:15:05,292 何か それに見合うような➡ 105 00:15:05,292 --> 00:15:09,430 充実した使い方をしなきゃいけないと その時間を。 106 00:15:09,430 --> 00:15:12,099 ということを 非常に思い詰めて➡ 107 00:15:12,099 --> 00:15:15,970 そこで 何か 激しい恋愛 個人的な「生」が➡ 108 00:15:15,970 --> 00:15:20,441 戦争と見合うぐらい 非常に強い生の実感を➡ 109 00:15:20,441 --> 00:15:23,777 与えてくれるっていうことを 主人公は期待して➡ 110 00:15:23,777 --> 00:15:27,114 恋愛を通じて それを成就させようとするわけですね。 111 00:15:27,114 --> 00:15:30,451 ところが 主人公は…。 112 00:15:30,451 --> 00:15:33,354 ホモセクシャルっていう設定で あるために➡ 113 00:15:33,354 --> 00:15:36,790 女性との恋愛っていうのが なかなか うまくいかないと。 114 00:15:36,790 --> 00:15:40,127 そうすると 戦争に行った人にとっては➡ 115 00:15:40,127 --> 00:15:45,799 のどから手が出るほど欲しい 自由な時間っていうものを➡ 116 00:15:45,799 --> 00:15:49,136 結局 全く有効に 使うことができないまま➡ 117 00:15:49,136 --> 00:15:51,071 無為に 過ごしてしまってるっていうことに➡ 118 00:15:51,071 --> 00:15:53,474 追い詰められていくわけですね。 119 00:15:53,474 --> 00:15:59,813 三島は やっぱり 戦後社会に生きていく中で➡ 120 00:15:59,813 --> 00:16:03,113 生き残った者として… 121 00:16:06,420 --> 00:16:09,720 …ということを かなり考えたと思います。 122 00:16:18,432 --> 00:16:21,101 一方の川端。 123 00:16:21,101 --> 00:16:25,439 1899年 明治32年に➡ 124 00:16:25,439 --> 00:16:29,139 大阪の医者の家庭に生まれました。 125 00:16:34,114 --> 00:16:38,786 しかし 2歳までに両親を亡くし➡ 126 00:16:38,786 --> 00:16:44,124 7歳のとき 祖母が…。 127 00:16:44,124 --> 00:16:48,996 10歳のとき 姉が この世を去り…。 128 00:16:48,996 --> 00:16:54,134 14歳で 祖父も他界。 129 00:16:54,134 --> 00:16:57,834 ついに 天涯孤独の身となります。 130 00:17:01,475 --> 00:17:05,346 文学に生きる道を求めた 川端。 131 00:17:05,346 --> 00:17:09,083 祖父が亡くなる直前の日々をつづった➡ 132 00:17:09,083 --> 00:17:11,418 「十六歳の日記」や➡ 133 00:17:11,418 --> 00:17:15,289 次々に 肉親を失った体験を振り返る➡ 134 00:17:15,289 --> 00:17:17,758 「葬式の名人」など➡ 135 00:17:17,758 --> 00:17:22,458 自らの境遇をもとにした作品を 発表していきます。 136 00:17:27,768 --> 00:17:31,468 川端の文学を深く読み込んできた… 137 00:17:34,441 --> 00:17:38,112 川端は書くことで 幼少期の体験を➡ 138 00:17:38,112 --> 00:17:42,112 乗り越えようとしていたのではないかと 指摘します。 139 00:17:43,984 --> 00:17:47,788 今まさに 自分が 天涯孤独になろうとしている➡ 140 00:17:47,788 --> 00:17:53,127 その状態を 祖父の様子を通して書くというのが➡ 141 00:17:53,127 --> 00:17:56,029 尋常じゃないのかもしれませんけれども➡ 142 00:17:56,029 --> 00:17:59,466 でも 私は そのこと自体が➡ 143 00:17:59,466 --> 00:18:03,337 非常に 川端の作家たる➡ 144 00:18:03,337 --> 00:18:07,074 要するに「業」みたいなものは感じますね。 145 00:18:07,074 --> 00:18:12,413 川端の まだ少年というか➡ 146 00:18:12,413 --> 00:18:15,082 青年になりきれないぐらいのときの➡ 147 00:18:15,082 --> 00:18:18,952 孤独とか精神状態みたいなものを➡ 148 00:18:18,952 --> 00:18:23,757 自らを書くということで 救っていたのではないかなというふうに➡ 149 00:18:23,757 --> 00:18:25,757 私は感じました。 150 00:18:29,430 --> 00:18:36,130 原点は違えど 共に書くことに 生きる意味を見いだした2人。 151 00:18:40,441 --> 00:18:45,312 三島の結婚式の媒酌人を 川端が務めるなど➡ 152 00:18:45,312 --> 00:18:48,012 親交を深めていきました。 153 00:18:51,452 --> 00:18:58,752 しかし 2人は 次第に 対照的な道を歩み始めるのです。 154 00:19:17,411 --> 00:19:20,314 三島は 30代に入ると➡ 155 00:19:20,314 --> 00:19:25,014 文学と同時に 「武の道」を追求するようになりました。 156 00:19:26,753 --> 00:19:29,656 コンプレックスを克服するかのように➡ 157 00:19:29,656 --> 00:19:32,656 肉体の鍛錬に のめり込みます。 158 00:19:36,763 --> 00:19:43,463 変化していく三島の姿を 間近で見ていた人がいます。 159 00:19:51,778 --> 00:19:54,478 それ 真冬ですよ。 160 00:20:41,495 --> 00:20:46,833 40代に入ると 小説にも変化があらわれます。 161 00:20:46,833 --> 00:20:53,507 二・二六事件や特攻隊を題材にした 「英霊の聲」など➡ 162 00:20:53,507 --> 00:20:58,807 小説の中でも 武の道を 追求するようになっていきました。 163 00:21:05,118 --> 00:21:09,990 一方 川端は 日本ペンクラブの会長として➡ 164 00:21:09,990 --> 00:21:14,990 反戦・平和を訴えるメッセージを 世界に発信。 165 00:21:18,131 --> 00:21:23,804 広島や長崎にも足を運び 被爆者と対話するなど➡ 166 00:21:23,804 --> 00:21:28,804 常に 苦しむ人に 寄り添い続けていました。 167 00:21:38,819 --> 00:21:43,819 沖縄にある ハンセン病療養所… 168 00:21:45,492 --> 00:21:49,162 川端は 1958年➡ 169 00:21:49,162 --> 00:21:55,162 ハンセン病への差別が激しかった時代に ここを訪れていました。 170 00:21:58,839 --> 00:22:01,508 宮本と申します。 171 00:22:01,508 --> 00:22:05,112 元入所者の… 172 00:22:05,112 --> 00:22:09,783 14歳のとき ここで川端と対面。 173 00:22:09,783 --> 00:22:12,452 川端にかけられた言葉に 感銘を受け➡ 174 00:22:12,452 --> 00:22:15,452 その後 作家になりました。 175 00:22:19,793 --> 00:22:23,130 伊波さんが患っていたハンセン病は➡ 176 00:22:23,130 --> 00:22:28,130 当時 感染力の強い不治の病だと 誤解されていました。 177 00:22:33,140 --> 00:22:39,813 患者と接する際には 医者でさえ 予防服を着ていた時代。 178 00:22:39,813 --> 00:22:41,748 しかし 川端は➡ 179 00:22:41,748 --> 00:22:46,048 ふだんと変わらない いでたちで 現れました。 180 00:23:13,447 --> 00:23:16,147 このぐらい近いんですか。 そう。 181 00:23:31,465 --> 00:23:34,367 2人が話題にした北條民雄は➡ 182 00:23:34,367 --> 00:23:38,805 自らのハンセン病の体験を 小説に書き➡ 183 00:23:38,805 --> 00:23:42,105 川端から才能を見いだされた作家でした。 184 00:23:44,144 --> 00:23:50,144 伊波さんは 北條のある言葉を 心に留めていました。 185 00:23:59,693 --> 00:24:02,393 ああ… 「生きるか死ぬか 文学するよりも大切だった」。 186 00:24:37,364 --> 00:24:40,333 「君には分かっています」って言われた。 187 00:24:40,333 --> 00:24:44,333 「人間が信じられるなら耐えて」…。 「耐えて」…。 188 00:25:02,823 --> 00:25:09,095 それからまもなく 川端は 自身の小説や児童文学など➡ 189 00:25:09,095 --> 00:25:13,395 90冊以上の本を この施設に届けました。 190 00:26:00,146 --> 00:26:06,419 対照的な道を歩み始めていた 三島と川端。 191 00:26:06,419 --> 00:26:13,119 その2人の関係に ノーベル賞が 影を落とすようになるのです。 192 00:26:34,447 --> 00:26:42,147 日本人作家へのノーベル文学賞に 期待が高まっていた 1960年代。 193 00:26:44,124 --> 00:26:50,124 2人の関係に 変化が生じてきたという指摘があります。 194 00:26:55,468 --> 00:27:00,340 川端が受賞する前年の1967年。 195 00:27:00,340 --> 00:27:05,078 三島が 京都の仙洞御所について書いた 随筆。 196 00:27:05,078 --> 00:27:08,078 奇妙な一節がありました。 197 00:28:16,416 --> 00:28:19,753 2人の間にノーベル賞をめぐる➡ 198 00:28:19,753 --> 00:28:25,053 生々しい やりとりがあったという 証言にも たどりつきました。 199 00:28:28,428 --> 00:28:32,128 どうも はじめまして。 はじめまして ですよね。 200 00:28:35,301 --> 00:28:40,001 三島が手がけた舞台の多くで 主演を務めてきました。 201 00:28:42,776 --> 00:28:46,446 家族ぐるみで 親交を深める中➡ 202 00:28:46,446 --> 00:28:50,746 三島の母から聞いたという話を 打ち明けました。 203 00:29:32,959 --> 00:29:37,430 後に公開された ノーベル賞の選考資料によると➡ 204 00:29:37,430 --> 00:29:41,101 当時 4人の日本人作家が➡ 205 00:29:41,101 --> 00:29:43,401 候補となっていました。 206 00:29:45,438 --> 00:29:50,110 三島と川端の作品は 海外でも翻訳され➡ 207 00:29:50,110 --> 00:29:54,410 共に最終候補にも 名前が挙がっていました。 208 00:30:00,120 --> 00:30:06,793 そして 1968年 最終的に選ばれたのは➡ 209 00:30:06,793 --> 00:30:08,793 川端でした。 210 00:30:25,478 --> 00:30:29,778 三島は すぐに お祝いに駆けつけます。 211 00:30:34,154 --> 00:30:37,824 しかし 三島と家族は➡ 212 00:30:37,824 --> 00:30:42,162 ノーベル賞を逃したことに 強く落胆していたと➡ 213 00:30:42,162 --> 00:30:45,162 寂聴さんは言います。 214 00:30:59,512 --> 00:31:02,812 それで… 215 00:31:17,797 --> 00:31:24,137 ♬~(演奏) 216 00:31:24,137 --> 00:31:28,007 1968年12月に行われた➡ 217 00:31:28,007 --> 00:31:32,007 ノーベル賞の授与式。 218 00:31:35,481 --> 00:31:45,181 (拍手) 219 00:31:47,093 --> 00:31:52,498 川端に招かれ 授与式に同席した人がいます。 220 00:31:52,498 --> 00:31:56,798 ≪いらっしゃいませ。 はじめまして。 宮本と申します。 221 00:32:00,373 --> 00:32:07,373 映画「雪国」で主役を演じた縁で 交流がありました。 222 00:32:11,985 --> 00:32:15,722 川端は授与式に向け➡ 223 00:32:15,722 --> 00:32:20,660 スピーチの原稿を 3日間 徹夜で書き続けていました。 224 00:32:20,660 --> 00:32:23,129 しかし 岸さんから見て➡ 225 00:32:23,129 --> 00:32:27,829 賞の重圧は感じられなかったといいます。 226 00:32:55,495 --> 00:32:57,795 ああ そうですか。 227 00:33:09,042 --> 00:33:11,444 えっ? 下駄をつっかけていく? 228 00:33:11,444 --> 00:33:14,144 それは ちょっと表現が…。 229 00:33:20,787 --> 00:33:25,658 ノーベル賞のあと 川端と三島の手紙のやりとりは➡ 230 00:33:25,658 --> 00:33:30,129 ほとんど なくなりました。 231 00:33:30,129 --> 00:33:36,829 そして 2人の運命は 結末へと向かっていくのです。 232 00:33:57,156 --> 00:34:04,764 <川端の受賞決定と同じ 1968年10月➡ 233 00:34:04,764 --> 00:34:13,106 三島は 民間防衛組織 「楯の会」を結成します。➡ 234 00:34:13,106 --> 00:34:15,775 学生100人を集め➡ 235 00:34:15,775 --> 00:34:20,475 自衛隊への体験入隊を 繰り返していました> 236 00:34:28,354 --> 00:34:33,326 <当時 日本では 学生運動がピークを迎え➡ 237 00:34:33,326 --> 00:34:39,326 各地で 警察との衝突が 繰り広げられていました> 238 00:34:41,801 --> 00:34:49,475 <楯の会は 共産主義勢力の運動を 警察が抑えきれなくなったとき➡ 239 00:34:49,475 --> 00:34:54,175 治安維持の一翼を担う としていました> 240 00:35:02,822 --> 00:35:05,091 宮本と申します どうも。 241 00:35:05,091 --> 00:35:07,026 本多さんでいらっしゃいますか? ああ どうも どうも。 242 00:35:07,026 --> 00:35:10,430 <楯の会の元幹部に 会うことができました。➡ 243 00:35:10,430 --> 00:35:14,430 結成時からの メンバーの一人…> 244 00:35:16,102 --> 00:35:18,802 はじめまして。 どうも 本多と申します。 245 00:35:20,773 --> 00:35:26,773 <三島の死の直前まで 行動を共にしていました> 246 00:35:51,471 --> 00:35:55,141 <本多さんは 三島のある言葉が➡ 247 00:35:55,141 --> 00:35:58,841 強く印象に残っているといいます> 248 00:36:21,100 --> 00:36:24,003 <三島が最後の瞬間まで➡ 249 00:36:24,003 --> 00:36:26,973 小説家で あり続けようとした姿を➡ 250 00:36:26,973 --> 00:36:31,444 目の当たりにした人がいます。➡ 251 00:36:31,444 --> 00:36:33,779 編集者の小島千加子さん。➡ 252 00:36:33,779 --> 00:36:36,449 三島が自決する その日の朝➡ 253 00:36:36,449 --> 00:36:40,149 自宅へ 原稿を受け取りに行きました> 254 00:37:33,105 --> 00:37:36,442 起きちゃったんです。 255 00:37:36,442 --> 00:37:42,114 <原稿は 三島が 自らの集大成として執筆していた➡ 256 00:37:42,114 --> 00:37:48,454 4部作「豊饒の海」の最終回でした。➡ 257 00:37:48,454 --> 00:37:51,791 壮大な輪廻転生を描き➡ 258 00:37:51,791 --> 00:37:56,091 自身の哲学や宗教観を注ぎ込んだ…> 259 00:38:02,435 --> 00:38:09,742 <最後の1ページを書ききり 自らの文学を完結させた三島。➡ 260 00:38:09,742 --> 00:38:15,442 楯の会のメンバーと 自衛隊の市ヶ谷駐屯地へと向かいました> 261 00:38:20,086 --> 00:38:25,758 <その日 三島は 日ごろから 親しくしていた自衛隊幹部に➡ 262 00:38:25,758 --> 00:38:31,097 自慢の日本刀「関ノ孫六」を見せる という約束を➡ 263 00:38:31,097 --> 00:38:33,797 取りつけていました> 264 00:38:36,435 --> 00:38:41,135 <日本刀を手に 幹部を拘束した三島> 265 00:38:44,110 --> 00:38:48,981 <駐屯地にいた800人の隊員を広場に集め➡ 266 00:38:48,981 --> 00:38:51,981 クーデターを呼びかけました> 267 00:38:53,786 --> 00:38:58,086 <三島由紀夫 最期の言葉> 268 00:40:06,125 --> 00:40:11,797 <三島自決の直後 川端は現場に駆けつけます。➡ 269 00:40:11,797 --> 00:40:17,797 三島の死は 川端にとっても 大きな衝撃でした> 270 00:40:20,806 --> 00:40:27,506 <川端は 三島の死に直面した心情を こうつづっています> 271 00:41:01,447 --> 00:41:05,317 ああ 自分の考えを横に置いてでも➡ 272 00:41:05,317 --> 00:41:08,120 三島を失いたくなかったという➡ 273 00:41:08,120 --> 00:41:12,420 後悔の念が にじみ出てる文章ですね。 274 00:41:18,764 --> 00:41:22,668 <そして 三島の死から2年後➡ 275 00:41:22,668 --> 00:41:26,968 川端も突然 自殺したのです> 276 00:41:36,816 --> 00:41:41,816 <なぜ 川端は死を選んだのか?> 277 00:41:43,489 --> 00:41:50,189 <晩年の川端は ある症状に苦しめられていました> 278 00:41:51,831 --> 00:41:55,531 <1964年…> 279 00:42:16,455 --> 00:42:21,126 <渡辺さんは 滞在中の旅館での出来事が➡ 280 00:42:21,126 --> 00:42:25,826 今でも忘れられないといいます> 281 00:43:27,793 --> 00:43:31,664 あっ どうも。 どうぞ 入って。 282 00:43:31,664 --> 00:43:33,666 <川端の睡眠障害は➡ 283 00:43:33,666 --> 00:43:39,805 創作にも影響を及ぼしていたという 指摘もあります。➡ 284 00:43:39,805 --> 00:43:42,805 晩年の…> 285 00:44:26,318 --> 00:44:30,456 <69歳でノーベル賞を受賞したあとも➡ 286 00:44:30,456 --> 00:44:34,326 小説を書き続けていた川端。➡ 287 00:44:34,326 --> 00:44:40,132 しかし 最後の長編小説「たんぽぽ」は➡ 288 00:44:40,132 --> 00:44:42,832 未完に終わりました> 289 00:44:47,006 --> 00:44:49,475 <瀬戸内寂聴さんは➡ 290 00:44:49,475 --> 00:44:54,146 川端に 短い文章の執筆を依頼しましたが➡ 291 00:44:54,146 --> 00:44:59,846 1年たっても 仕上がらなかったといいます> 292 00:45:24,777 --> 00:45:29,114 <自ら死を選んだ 三島と川端。➡ 293 00:45:29,114 --> 00:45:34,453 それは 小説家として生ききったうえでの 選択だったと➡ 294 00:45:34,453 --> 00:45:37,753 寂聴さんは考えています> 295 00:45:53,138 --> 00:45:55,838 どうして 文学のために…? 296 00:46:08,620 --> 00:46:11,620 彼らは… 私も。 297 00:46:17,329 --> 00:46:21,629 だから それは 自分の… 298 00:46:40,652 --> 00:46:44,423 …と思って嫌ですよ。 299 00:46:44,423 --> 00:46:47,723 あえて 聞かせていただくと… 300 00:47:27,432 --> 00:47:31,303 <文学に 命を燃やし続けた➡ 301 00:47:31,303 --> 00:47:36,003 三島由紀夫と川端康成> 302 00:47:40,979 --> 00:47:46,451 <私は 2人の人生を深く知ったことで➡ 303 00:47:46,451 --> 00:47:51,751 創作に打ち込む覚悟を新たにしました> 304 00:48:02,801 --> 00:48:07,406 2人に共通しているのは… 305 00:48:07,406 --> 00:48:11,743 死を恐れるなかれ という考え方だと思います。 306 00:48:11,743 --> 00:48:14,646 それだけに 彼らは生きている間に➡ 307 00:48:14,646 --> 00:48:17,416 青春にも似た ほとばしるような➡ 308 00:48:17,416 --> 00:48:19,751 生の実感とでも言うんでしょうか。 309 00:48:19,751 --> 00:48:23,422 それを 求めてきたのではないかと思います。 310 00:48:23,422 --> 00:48:26,325 人として生きるには 多くの矛盾があります。 311 00:48:26,325 --> 00:48:32,764 弱さ 老い そして 変わっていく社会 時代の変化。 312 00:48:32,764 --> 00:48:36,101 しかし 2人は それに流されることを否定し➡ 313 00:48:36,101 --> 00:48:41,440 文学者として 最期を迎えたかったのだと思います。 314 00:48:41,440 --> 00:49:00,440 ♬~