1 00:00:12,235 --> 00:00:16,005 [ 回想 ] (栄輔)やっぱり あなたは…➡ 2 00:00:16,005 --> 00:00:20,705 人の心が分からん人や。 3 00:00:32,689 --> 00:00:35,725 <時は幕末 所はお江戸。➡ 4 00:00:35,725 --> 00:00:38,862 参勤交代で江戸に来た 酒田伴四郎。➡ 5 00:00:38,862 --> 00:00:41,898 殿様のお召し物を支度する 衣紋方ではありますが➡ 6 00:00:41,898 --> 00:00:44,734 仕事は少なく 暇ばかり。➡ 7 00:00:44,734 --> 00:00:48,571 今日は どんな事件に 巻き込まれるやら…> 8 00:00:48,571 --> 00:00:50,874 (お羽)ちょっと 熱いかもしれませんけど➡ 9 00:00:50,874 --> 00:00:54,377 大丈夫ですか? (五郎右衛門)え~? 10 00:00:54,377 --> 00:00:57,714 (お羽)はい あ~ん。 あ~ん。 11 00:00:57,714 --> 00:01:03,052 熱い! 熱い 熱いよ。 う~ん うんうん。 12 00:01:03,052 --> 00:01:05,388 (お羽)あ~ん。 あ~ん。 13 00:01:05,388 --> 00:01:11,895 ♬~ 14 00:01:11,895 --> 00:01:16,065 (平三)しょっぱい汁じゃのう。 (伴四郎)全くです! 15 00:01:16,065 --> 00:01:18,902 お主が作ったのじゃ。 はい。 16 00:01:18,902 --> 00:01:21,404 飯は やわいし 干物は焦げておるし。 17 00:01:21,404 --> 00:01:23,339 どうして こうなる? 18 00:01:23,339 --> 00:01:25,275 指南書どおりに 作っておらんのか? 19 00:01:25,275 --> 00:01:27,277 指南書など当てにしておりません。 当てにせい! 20 00:01:27,277 --> 00:01:32,015 嫌です! 指南書の味は 我が妻 すずの味。 21 00:01:32,015 --> 00:01:35,351 不用意に開けば 家族を思い出してしまう。 22 00:01:35,351 --> 00:01:38,254 しかし 見ろ。 そのせいで 五郎右衛門は➡ 23 00:01:38,254 --> 00:01:40,857 長屋に 寄り付かなくなってしまった。 24 00:01:40,857 --> 00:01:43,693 飯のせいではありません! 25 00:01:43,693 --> 00:01:47,363 邪魔するぞ。 おう 惨助。 どうした? 26 00:01:47,363 --> 00:01:51,234 本日は 矢沢五郎右衛門殿に 会いに来ました。 27 00:01:51,234 --> 00:01:53,236 五郎右衛門? 28 00:01:53,236 --> 00:01:59,542 五郎右衛門 邪魔するぞ。 (五郎右衛門のふりで)おう 入れ。 29 00:01:59,542 --> 00:02:01,742 では 失礼して。 30 00:02:05,348 --> 00:02:07,283 これは…。 31 00:02:07,283 --> 00:02:09,283 うわ~…。 32 00:02:15,992 --> 00:02:18,292 お羽だ。 33 00:02:19,929 --> 00:02:24,234 はい あ~ん。 お羽。 はい あ~ん。 34 00:02:24,234 --> 00:02:27,070 お羽。 お羽 お羽。 はい あ~ん。 お羽。 35 00:02:27,070 --> 00:02:34,177 ♬~ 36 00:02:34,177 --> 00:02:37,680 こんな所で 何をしておるのです? 何をしておるのじゃ こんな所で。 37 00:02:37,680 --> 00:02:39,616 なんという「あ~ん」だ。 38 00:02:39,616 --> 00:02:44,020 いやはや 堂々たる 「あ~ん」でしたな。 39 00:02:44,020 --> 00:02:48,358 やめろ! この「あ~ん」には 事情があるのだ。 40 00:02:48,358 --> 00:02:52,358 五郎右衛門様 どうかされましたか? 41 00:02:56,232 --> 00:03:10,232 ♬~ 42 00:03:12,048 --> 00:03:15,918 なぜ ここが分かったのです? 43 00:03:15,918 --> 00:03:19,789 これじゃ! やめろ! 44 00:03:19,789 --> 00:03:22,558 女子に うつつを 抜かしておる場合か 五郎右衛門。 45 00:03:22,558 --> 00:03:24,558 説明せい。 46 00:03:27,897 --> 00:03:32,735 確かに私は あのお羽に うつつを抜かしております。 47 00:03:32,735 --> 00:03:36,606 やはりか。 かわいそうな娘なんです。 48 00:03:36,606 --> 00:03:39,509 先代の店主だった父親を亡くし➡ 49 00:03:39,509 --> 00:03:43,346 見よう見まねで しゃも鍋屋を 続けるも 評判は下がる一方。 50 00:03:43,346 --> 00:03:46,683 このままでは 番付も…。 番付? 51 00:03:46,683 --> 00:03:49,719 江戸の料理屋を格付けした 番付表です。 52 00:03:49,719 --> 00:03:53,556 以前の「きじや」は 確か… 小結。 53 00:03:53,556 --> 00:03:56,859 このままでは 番付に名を残す事すら難しい。 54 00:03:56,859 --> 00:03:59,859 それで こうやって試作を…。 55 00:04:03,733 --> 00:04:06,869 ああ… これじゃ 番付入りは無理だろ。 56 00:04:06,869 --> 00:04:09,205 だからこそ努力しておるのだ。 57 00:04:09,205 --> 00:04:13,042 先代が残した虎の巻に 味の調合は記してある。 58 00:04:13,042 --> 00:04:17,380 そのとおり作れれば 逃げてた客も戻ってくるはず。 59 00:04:17,380 --> 00:04:21,050 そんなにうまくいくかのう。 成功させてみせます。 60 00:04:21,050 --> 00:04:24,887 「きじや」の再建は 私の腕にかかっております。 61 00:04:24,887 --> 00:04:28,725 しかし 矢沢殿は 藩に仕える武士でありましょう? 62 00:04:28,725 --> 00:04:33,725 悠長に しゃも鍋屋の手助けなど しておる場合でしょうか。 63 00:04:35,832 --> 00:04:42,171 この世は武士だけのものではない。 町民も農民も➡ 64 00:04:42,171 --> 00:04:45,208 おのおのが おのおのなりの 工夫をして生きておる。 65 00:04:45,208 --> 00:04:49,846 それを学べる機会だと思えば これもまた有意義よ。 66 00:04:49,846 --> 00:04:54,684 ほう なるほど。 物は言いようじゃの。 67 00:04:54,684 --> 00:04:57,720 (お菊)聞いたかい? (与一)へい。 68 00:04:57,720 --> 00:05:01,557 小娘と素人が切り盛りする 「きじや」なんて➡ 69 00:05:01,557 --> 00:05:05,395 もはや商売敵として 恐るるに足らないね。 へい。 70 00:05:05,395 --> 00:05:11,134 うちの番付が脅かされる事も なさそうですね。 ハハハハ。 71 00:05:11,134 --> 00:05:15,071 あら? お菊さん。 「きじや」の偵察ですか? 72 00:05:15,071 --> 00:05:18,374 そんな事するまでもなく 「きじや」の評判は➡ 73 00:05:18,374 --> 00:05:24,374 地に落ちてんだろ? では こちらの偵察ですかな? 74 00:05:26,716 --> 00:05:31,320 ここへ来て お羽の番付が急上昇し お菊さんは降格。 75 00:05:31,320 --> 00:05:34,991 こんな くだらないもん 最初から気にしちゃいないよ! 76 00:05:34,991 --> 00:05:39,691 ほう~ 美人番付まであるとは。 77 00:05:46,502 --> 00:05:51,174 似てるんだよねぇ。 何か? 78 00:05:51,174 --> 00:05:53,209 こっちの話さ。 行くよ 与一。 79 00:05:53,209 --> 00:05:55,209 へい。 80 00:05:58,915 --> 00:06:03,352 殿 年貢を昨年より2割増徴し➡ 81 00:06:03,352 --> 00:06:07,690 その増徴分を 城の石垣の修繕に 充ててはどうかと。 82 00:06:07,690 --> 00:06:11,360 敵襲などがある訳でもなし そのままでよい。 83 00:06:11,360 --> 00:06:15,360 ですが 殿…。 もっとマシな案はないのか? 84 00:06:18,701 --> 00:06:25,001 財政に関しては この者の方が よほど学んでおる。 85 00:06:26,876 --> 00:06:29,912 衣紋方は矢沢五郎右衛門。 86 00:06:29,912 --> 00:06:34,317 このまま 衣紋方に とどめておくのは惜しい人材。 87 00:06:34,317 --> 00:06:38,517 勘定方として登用するよう 申しつけろ。 88 00:06:40,189 --> 00:06:43,493 私が… 勘定方へ? 89 00:06:43,493 --> 00:06:47,830 極めて異例ではあるが 財政についてはもちろん➡ 90 00:06:47,830 --> 00:06:51,334 そのほかの どのような意見や 提案も歓迎するというのが➡ 91 00:06:51,334 --> 00:06:57,507 殿の方針じゃ。 特に お主のような 優秀な男なら なおさら。 92 00:06:57,507 --> 00:07:01,344 是非! 藩のため 殿のため 全身全霊で…。 93 00:07:01,344 --> 00:07:06,849 ただし その建白書は このままではいかん。 94 00:07:06,849 --> 00:07:14,190 一部 実情と かけ離れておった。 速やかに訂正し 改めてほしい。 95 00:07:14,190 --> 00:07:18,861 修正が済み次第 改めて 殿に目を通して頂き➡ 96 00:07:18,861 --> 00:07:24,061 了承を得た後 正式な役替えという段取りじゃ。 97 00:07:26,369 --> 00:07:29,272 な… 何じゃ? 承知しました。 98 00:07:29,272 --> 00:07:35,177 殿の期待に応えられるよう 直ちに修正致します! 99 00:07:35,177 --> 00:07:38,948 (せきばらい) おお そうか。 100 00:07:38,948 --> 00:07:41,851 では 頼んだぞ。 はっ。 101 00:07:41,851 --> 00:07:48,991 ♬~ 102 00:07:48,991 --> 00:07:51,827 殿は見ていてくれたのだ。 103 00:07:51,827 --> 00:07:55,998 五郎右衛門 出世は目前じゃ。 気を抜くなよ。 104 00:07:55,998 --> 00:07:58,334 さすが 殿だ。 105 00:07:58,334 --> 00:08:04,006 お主には わしこと宇治井平三の 持てる技 知性の全てを➡ 106 00:08:04,006 --> 00:08:06,909 厳しくたたき込んだ。 今のお主があるのは➡ 107 00:08:06,909 --> 00:08:09,512 わしこと宇治井平三のおかげと 言っても…。 108 00:08:09,512 --> 00:08:15,012 集中します。 一人にして下さい。 アハハハ もちろんじゃ! 109 00:08:18,854 --> 00:08:26,028 そうしていると 殿様には見えませんね。 そうか? 110 00:08:26,028 --> 00:08:29,365 あれから 矢沢は どうしておる? 111 00:08:29,365 --> 00:08:32,635 脇目も振らず 建白書の修正をしております。 112 00:08:32,635 --> 00:08:36,806 う~ん やる気を見せておるか。 113 00:08:36,806 --> 00:08:42,612 しかし やつの建白書など 文言が難しすぎて…。 114 00:08:42,612 --> 00:08:47,984 かみ砕いて言うと 何が優れていると言うのです? 115 00:08:47,984 --> 00:08:50,486 青いのだ。 116 00:08:50,486 --> 00:08:53,522 矢沢は よく学んでおる。 117 00:08:53,522 --> 00:09:01,197 藩の現状を踏まえ 他藩との比較や 幕府の今後にまで見識が及ぶ➡ 118 00:09:01,197 --> 00:09:05,034 見事な建白書であった。 119 00:09:05,034 --> 00:09:11,874 しかし何より やつの持つ若さや 生意気や野望が➡ 120 00:09:11,874 --> 00:09:18,174 あの建白書には あふれておる。 それが青いと? 121 00:09:22,551 --> 00:09:24,687 承知した。 122 00:09:24,687 --> 00:09:26,722 そういう事なら この矢沢五郎右衛門➡ 123 00:09:26,722 --> 00:09:30,026 一肌脱ごうではないか。 「きじや」のために。 124 00:09:30,026 --> 00:09:32,294 本当ですか? ならん! 125 00:09:32,294 --> 00:09:34,230 しかし 「きじや」には➡ 126 00:09:34,230 --> 00:09:36,465 五郎右衛門様のお助けが 必要なんです。 127 00:09:36,465 --> 00:09:38,401 ならん ならん ならん! 128 00:09:38,401 --> 00:09:40,970 五郎右衛門は 今 大事な時なのじゃ。➡ 129 00:09:40,970 --> 00:09:42,905 しゃも鍋屋になど構っていたら➡ 130 00:09:42,905 --> 00:09:45,307 出世の話など たちまち立ち消えになる。 131 00:09:45,307 --> 00:09:47,977 それは 確かに。 五郎右衛門様! 132 00:09:47,977 --> 00:09:51,313 承知した! 五郎右衛門! 133 00:09:51,313 --> 00:09:54,350 いや あの… 参りましたな。 134 00:09:54,350 --> 00:09:59,188 ただいま。 おお… お羽か。 どうした? 135 00:09:59,188 --> 00:10:02,925 料理番付の評定日が決まり それまでに 五郎右衛門様に➡ 136 00:10:02,925 --> 00:10:05,828 しゃも鍋の仕上げを してほしいんです。 137 00:10:05,828 --> 00:10:08,731 その日は 建白書の 締め切り日ではないか! 138 00:10:08,731 --> 00:10:11,231 それどころではない。 帰れ! 139 00:10:17,339 --> 00:10:20,339 なんとかしよう! 本当ですか!? 140 00:10:26,682 --> 00:10:29,351 この伴四郎が。 えっ また? 141 00:10:29,351 --> 00:10:34,223 おお なるほど。 それはよい。 お主 どうせ暇じゃろ。 はぁ? 142 00:10:34,223 --> 00:10:39,361 お主が承知してくれれば 私は 建白書の修正に専念できる。 143 00:10:39,361 --> 00:10:41,297 頼む 伴四郎! 144 00:10:41,297 --> 00:10:44,200 五郎右衛門の出世が かかっておるのじゃぞ。 145 00:10:44,200 --> 00:10:46,869 え~? 146 00:10:46,869 --> 00:10:49,371 お願いします! 147 00:10:49,371 --> 00:10:51,671 …うん。 148 00:10:55,044 --> 00:11:00,216 これが 父の残してくれた 作り方です。 149 00:11:00,216 --> 00:11:04,053 これがあるなら 誰が作っても同じだと思うが…。 150 00:11:04,053 --> 00:11:05,988 そのはずなんですが➡ 151 00:11:05,988 --> 00:11:10,392 調味の品を入れる順番が悪いのか 火を入れる加減が悪いのか➡ 152 00:11:10,392 --> 00:11:16,265 なかなか昔の味にはならなくて…。 う~ん…。 153 00:11:16,265 --> 00:11:23,572 ♬~ 154 00:11:23,572 --> 00:11:28,244 何です? あっ いや…。 155 00:11:28,244 --> 00:11:33,849 建白書の締め切りは明日。 間に合うよな? 156 00:11:33,849 --> 00:11:36,519 どうした? 厠か? 157 00:11:36,519 --> 00:11:40,689 気が散って しかたがありません。 少々 散歩に出てきます。 158 00:11:40,689 --> 00:11:44,560 おお そうか。 そうじゃな。 根を詰め過ぎてもいかん。 159 00:11:44,560 --> 00:11:46,862 うんうん 行け行け。 うん。 160 00:11:46,862 --> 00:11:50,699 うまい! お羽も食うか? 飲ませてあげようか? 161 00:11:50,699 --> 00:11:52,635 恥ずかしい。 162 00:11:52,635 --> 00:11:56,335 いいなぁ…。 163 00:11:58,374 --> 00:12:02,244 あら いい男。 164 00:12:02,244 --> 00:12:04,544 あら 恥ずかしい。 165 00:12:10,085 --> 00:12:13,389 あれ? どこかで見たような…。 166 00:12:13,389 --> 00:12:17,059 伴四郎様 すご~い! 父の味に近いです。 167 00:12:17,059 --> 00:12:21,730 だいぶ近づいております。 火加減も何も 勘だったんだが…。 168 00:12:21,730 --> 00:12:24,633 おお… やっておるか 2人とも。 169 00:12:24,633 --> 00:12:27,069 五郎右衛門 建白書の方はいいのか? 170 00:12:27,069 --> 00:12:30,940 ん? うん いや… 「きじや」が気になっての。 171 00:12:30,940 --> 00:12:33,876 では 私も手伝おうかの。 172 00:12:33,876 --> 00:12:40,616 ♬~ 173 00:12:40,616 --> 00:12:46,616 私は独り身ゆえ 国元にいる頃から 料理はしておったから。 174 00:12:49,191 --> 00:12:52,027 痛っ。 大丈夫ですか? 175 00:12:52,027 --> 00:12:54,930 心配はいらん。 「きじや」の再建は目前。 176 00:12:54,930 --> 00:12:58,230 共に 成し遂げようではないか。 177 00:12:59,902 --> 00:13:02,037 熱っ。 178 00:13:02,037 --> 00:13:06,208 あの~ お店の方は 伴四郎様の 助けで なんとかします。 179 00:13:06,208 --> 00:13:09,245 建白書に集中して頂いた方が いいのではないでしょうか。 180 00:13:09,245 --> 00:13:12,982 そうじゃ 無理をするな。 役に立つ訳でもなし。 181 00:13:12,982 --> 00:13:17,386 貴様… ちょっと うまくいったからと生意気な! 182 00:13:17,386 --> 00:13:20,289 貴様など 料理以外 からきしではないか! 183 00:13:20,289 --> 00:13:22,558 からきし? そうじゃ。 184 00:13:22,558 --> 00:13:26,729 勤めでは いつも私の足手まとい。 勉学に励む気概もなし。 185 00:13:26,729 --> 00:13:29,064 長屋では寝てばかりだろ この 鼻ちょうちんが! 186 00:13:29,064 --> 00:13:32,034 鼻ちょうちん…。 貴様 心の中では そうやって➡ 187 00:13:32,034 --> 00:13:34,870 バカにしておったのだな? だとしたら 何なのだ? 188 00:13:34,870 --> 00:13:38,173 貴様など 鼻ちょうちんで 飛んでいけ! 飛べるか! 189 00:13:38,173 --> 00:13:40,209 大体 お主は いつもそうだ。 190 00:13:40,209 --> 00:13:43,345 何事も ひと事のようにさりげなく それでいて➡ 191 00:13:43,345 --> 00:13:46,015 よいところは いつも 持っていくではないか! 192 00:13:46,015 --> 00:13:52,315 あの時だって…。 あの時? あの時とは何だ? 193 00:13:53,889 --> 00:13:55,889 何でもない! 194 00:14:07,202 --> 00:14:12,708 こう見られていては 集中できんなぁ お羽。 195 00:14:12,708 --> 00:14:18,380 どうじゃ? 2人とも。 順調に進んでおるか? 196 00:14:18,380 --> 00:14:22,718 わしも手伝おうか? (五郎右衛門 伴四郎)いりません。 197 00:14:22,718 --> 00:14:25,554 そうか? ≪(戸が開く音) 198 00:14:25,554 --> 00:14:28,891 あら? お客様? 199 00:14:28,891 --> 00:14:33,891 申し訳ありません。 「きじや」は しばらくお休みを…。 200 00:14:37,499 --> 00:14:42,371 ♬~ 201 00:14:42,371 --> 00:14:47,171 何をしておる!? やめんか! 奥へ 奥へ。 202 00:14:49,845 --> 00:14:51,780 どけ! 203 00:14:51,780 --> 00:14:56,352 何じゃ あいつら。 ヘヘヘ。 ハハハハ。 204 00:14:56,352 --> 00:15:02,224 ♬~ 205 00:15:02,224 --> 00:15:05,694 (平三)待てい! 206 00:15:05,694 --> 00:15:10,566 待て待て! 待て~い! 待て~い! 待て~い! 207 00:15:10,566 --> 00:15:14,703 待て 待て~い! 待て! 待て~!➡ 208 00:15:14,703 --> 00:15:17,373 待て 待て~い! 209 00:15:17,373 --> 00:15:23,245 お前ら 何者だ! 名乗るほどのもんじゃねえよ! 210 00:15:23,245 --> 00:15:31,245 ♬~ 211 00:15:41,697 --> 00:15:45,334 気が付いたか 五郎右衛門。 212 00:15:45,334 --> 00:15:49,004 あいつらは? 知らん。 213 00:15:49,004 --> 00:15:54,676 好き勝手 暴れて さっさと出ていってしまった。 214 00:15:54,676 --> 00:15:56,676 お羽は? 215 00:16:00,015 --> 00:16:02,684 (泣き声) 216 00:16:02,684 --> 00:16:08,684 (泣き声) 217 00:16:39,988 --> 00:16:47,288 あやつら 建白書まで…。 苦労が水の泡だ。 218 00:16:49,698 --> 00:16:55,003 もう一度 最初から やり直しだ! やり直しなどきかん! 219 00:16:55,003 --> 00:16:58,841 締め切りは明日だぞ。 間に合うはずがない。 220 00:16:58,841 --> 00:17:03,345 簡単に諦めるな。 五郎右衛門 お主ならできる…。 221 00:17:03,345 --> 00:17:05,848 お主こそ簡単に言うな! 222 00:17:05,848 --> 00:17:08,517 お主に 私の気持ちが分かって たまるか! 223 00:17:08,517 --> 00:17:11,420 私は お主の事を思って…。 だから➡ 224 00:17:11,420 --> 00:17:16,024 それが気に障ると 言っておるのだ! 225 00:17:16,024 --> 00:17:20,724 分かった。 もう知らん。 勝手にしろ! 226 00:17:26,668 --> 00:17:31,507 おお 無事じゃったか? 心配しておったのじゃぞ。 227 00:17:31,507 --> 00:17:36,311 心配するような人が 我先に逃げたりはせんでしょう。 228 00:17:36,311 --> 00:17:41,150 逃げてなどおらん。 助けを呼びに出たのじゃ。 229 00:17:41,150 --> 00:17:45,320 五郎右衛門は どうしておる? 「きじや」は どうなった? 230 00:17:45,320 --> 00:17:50,492 調理具から調味の品 全て壊されてしまいました。 231 00:17:50,492 --> 00:17:53,328 もう 諦めるしかないでしょう。 232 00:17:53,328 --> 00:17:59,328 そもそも やつの恋路など 私には関係のない話です。 233 00:18:03,972 --> 00:18:09,272 またか。 やつも哀れな男よ。 234 00:18:12,014 --> 00:18:18,687 何年前じゃったか 五郎右衛門は嫁を取り損ねておる。 235 00:18:18,687 --> 00:18:24,359 嫁を? とある娘と見合いをした 五郎右衛門は➡ 236 00:18:24,359 --> 00:18:29,698 その娘に べた惚れよ。 しかし 悪い事に➡ 237 00:18:29,698 --> 00:18:35,470 娘の方には 心に決めた相手が ほかにおったのじゃ。 238 00:18:35,470 --> 00:18:38,807 押し切ってしまえばいいものを➡ 239 00:18:38,807 --> 00:18:42,311 あやつは その相手が分かった途端➡ 240 00:18:42,311 --> 00:18:46,311 まとまりかけた縁談を 蹴りおった。 241 00:18:48,817 --> 00:18:52,317 その相手というのは? 242 00:18:55,591 --> 00:18:58,527 お主じゃ。 243 00:18:58,527 --> 00:19:06,235 えっ? では その縁談の相手というのは…。 244 00:19:06,235 --> 00:19:12,341 すずの事よ。 五郎右衛門は かつて すずに惚れておった。 245 00:19:12,341 --> 00:19:16,641 しかし お主のために 身を引いたのじゃ。 246 00:19:20,215 --> 00:19:22,515 お断りだよ! 247 00:19:24,353 --> 00:19:27,022 「きじや」は うちの商売敵じゃないか。 248 00:19:27,022 --> 00:19:31,193 何で そんな店のために 大事な調理具やら調味の品を? 249 00:19:31,193 --> 00:19:33,128 ほかに頼れる人がいないのです。 250 00:19:33,128 --> 00:19:36,031 また愛する妻の指南書にでも 頼ればいいだろ? 251 00:19:36,031 --> 00:19:40,636 その指南書も 鍋や醤油がなければ 役に立たず…。 252 00:19:40,636 --> 00:19:44,506 そんな時 心に浮かんだのが お菊さんだったんです。 253 00:19:44,506 --> 00:19:49,206 調子のいい嘘を お言いでないよ。 嘘ではありません! 254 00:19:58,053 --> 00:20:04,326 例の矢沢五郎右衛門の件は? 255 00:20:04,326 --> 00:20:08,163 穏便に ケリをつけました。 256 00:20:08,163 --> 00:20:14,936 現実を知らぬ衣紋方があげた 建白書など しょせん 絵空事。 257 00:20:14,936 --> 00:20:18,236 フフフ アハハハ。 258 00:20:21,176 --> 00:20:27,049 五郎右衛門様 これでは もう 明日の評定には 間に合いません。 259 00:20:27,049 --> 00:20:29,351 建白書の執筆に お戻り下さい。 260 00:20:29,351 --> 00:20:35,223 いや 建白書の締め切りも明朝。 こちらも もう手遅れよ。 261 00:20:35,223 --> 00:20:39,423 お羽 料理を続けるぞ。 262 00:20:43,865 --> 00:20:47,736 伴四郎様 お気持ちは ありがたいのですが 店は もう…。 263 00:20:47,736 --> 00:20:51,606 まだ諦めてはいかん。 この店を立て直すのだろう? 264 00:20:51,606 --> 00:20:54,576 しかし…。 しゃも鍋は諦め➡ 265 00:20:54,576 --> 00:20:57,379 新しい献立で勝負する。 266 00:20:57,379 --> 00:21:02,079 恩返しがしたいのだ 五郎右衛門に。 267 00:21:04,052 --> 00:21:09,725 やつは 不器用な男だ。 何の面白みもなく➡ 268 00:21:09,725 --> 00:21:15,397 ガキの頃から一緒にいるが 冗談の一つも聞いた事がない。 269 00:21:15,397 --> 00:21:20,736 生真面目なばかりか 時に えらく面倒くさい。 270 00:21:20,736 --> 00:21:23,071 そのくせ 本人は不器用で➡ 271 00:21:23,071 --> 00:21:27,943 結局は 人の助けを 当てにするところがある。 272 00:21:27,943 --> 00:21:35,350 しかし それでも私は 五郎右衛門という男が好きだ。 273 00:21:35,350 --> 00:21:39,020 本当は 出世などされては さみしくて しかたがない。 274 00:21:39,020 --> 00:21:43,892 仲が よろしいのですね。 腐れ縁じゃ。 275 00:21:43,892 --> 00:21:48,697 この料理は 「きじや」だけではない。 276 00:21:48,697 --> 00:21:54,369 五郎右衛門のために作る 料理なのだ。 277 00:21:54,369 --> 00:21:59,241 お羽は 売り場の方の準備を頼む。 はい。 278 00:21:59,241 --> 00:22:06,948 ♬~ 279 00:22:06,948 --> 00:22:13,755 お羽 店は伴四郎に任せた。 280 00:22:13,755 --> 00:22:19,594 私は帰って 建白書を書かねば ならん。 失礼する。 281 00:22:19,594 --> 00:22:21,596 はい。 282 00:22:21,596 --> 00:22:43,185 ♬~ 283 00:22:43,185 --> 00:22:48,385 よ~く 手で もみ込んで 衣を着させて下さいね。 284 00:22:51,693 --> 00:22:56,865 優しく形を整えて下さいね。 285 00:22:56,865 --> 00:22:59,901 空気に触れさせると カラッと揚がります。 286 00:22:59,901 --> 00:23:02,671 たまには 浮世の風も 悪くないでしょ? 287 00:23:02,671 --> 00:23:18,253 ♬~ 288 00:23:18,253 --> 00:23:22,553 出来た。 いい匂い。 289 00:23:25,727 --> 00:23:33,835 すず 一つ聞きたい事がある。 どうしました? 290 00:23:33,835 --> 00:23:38,006 五郎右衛門と見合いをした話…➡ 291 00:23:38,006 --> 00:23:41,843 どうして 私に 黙っておったのだ? 292 00:23:41,843 --> 00:23:45,680 フフフ 妬いているのですか? 293 00:23:45,680 --> 00:23:49,380 いや そういう訳では…。 294 00:23:51,353 --> 00:23:53,353 いい匂い。 295 00:23:59,094 --> 00:24:04,294 どうかなさいました? いや 何も。 296 00:24:16,044 --> 00:24:18,044 終わった。 297 00:24:20,882 --> 00:24:24,219 矢沢五郎右衛門からの 建白書でありますが➡ 298 00:24:24,219 --> 00:24:29,724 まだ届かぬとの報告がありました。 そうか。 299 00:24:29,724 --> 00:24:36,164 矢沢の役替えは 見送った方がよいかと。 300 00:24:36,164 --> 00:24:40,964 矢沢の建白書とは この事であろう? 301 00:24:45,840 --> 00:24:50,712 今朝ほど 勘定方ではなく➡ 302 00:24:50,712 --> 00:24:58,019 なぜか 賄方を通して わしのもとへ届けられた。 303 00:24:58,019 --> 00:25:02,190 話によると 書きかけの建白書が➡ 304 00:25:02,190 --> 00:25:05,694 一度 暴漢の手によって 奪われたという。 305 00:25:05,694 --> 00:25:10,532 それゆえ 信頼のおける賄方を通して➡ 306 00:25:10,532 --> 00:25:15,203 確実に わしの手に届けたとの事。 307 00:25:15,203 --> 00:25:19,874 暴漢とは物騒な話じゃ。 のう。 308 00:25:19,874 --> 00:25:21,810 原田よ。 はっ。 309 00:25:21,810 --> 00:25:27,048 何か聞いてはおらんか? いえ… 私は何も。 310 00:25:27,048 --> 00:25:30,385 なら よい。 311 00:25:30,385 --> 00:25:33,288 もし 万が一にも➡ 312 00:25:33,288 --> 00:25:40,829 矢沢のような若い芽を 摘もうとする力が働いたのなら➡ 313 00:25:40,829 --> 00:25:44,329 ゆゆしき事じゃのう。 314 00:25:55,176 --> 00:26:00,348 役替え見送りとは なぜじゃ? どうしてじゃ? 315 00:26:00,348 --> 00:26:03,251 力が及ばなかったのでしょう。 316 00:26:03,251 --> 00:26:06,154 一度でも機会を頂けただけで ありがたい。 317 00:26:06,154 --> 00:26:11,354 そんな… 出世が…。 318 00:26:14,863 --> 00:26:18,363 五郎右衛門 少し歩こう。 319 00:26:28,043 --> 00:26:30,712 うまいなぁ。 おお…。 320 00:26:30,712 --> 00:26:33,314 おお 繁盛してるようじゃ。 おお。 321 00:26:33,314 --> 00:26:36,351 お羽の腕で すずのカピタンが作れるか 心配だったが…。 322 00:26:36,351 --> 00:26:39,187 いらっしゃいませ。 おお お羽。 323 00:26:39,187 --> 00:26:44,187 あれ? お羽が ここに おるという事は 誰が カピタンを…。 324 00:26:50,665 --> 00:26:55,336 あの男は…。 許婚です。 325 00:26:55,336 --> 00:26:57,372 しばらく修行に出てたのですが➡ 326 00:26:57,372 --> 00:27:00,208 父が亡くなったのを機に 戻ってきてくれて。 327 00:27:00,208 --> 00:27:05,513 何? お羽 お前 許婚がおったのか? はい。 328 00:27:05,513 --> 00:27:09,713 なぜ それをもっと早く 言わんのだ。 329 00:27:17,225 --> 00:27:20,925 お羽さん お幸せに。 330 00:27:25,366 --> 00:27:29,366 五郎右衛門! あっ…。 331 00:27:35,643 --> 00:27:39,343 伴四郎…。 332 00:27:42,417 --> 00:27:47,255 女子に うつつなど抜かすと ろくな事がないのう。 333 00:27:47,255 --> 00:27:51,993 もう一度 一から勉学のやり直しじゃ…。 334 00:27:51,993 --> 00:28:01,002 ♬~ 335 00:28:01,002 --> 00:28:02,937 矢沢は どうしておる? 336 00:28:02,937 --> 00:28:06,674 これまで以上に 勉学に励んでおります。 337 00:28:06,674 --> 00:28:12,347 しかし なぜ やつの建白書は 却下されたのでしょう。 338 00:28:12,347 --> 00:28:16,017 五郎右衛門の何が 至らなかったのです? 339 00:28:16,017 --> 00:28:18,920 建白書は完璧なものだった。 340 00:28:18,920 --> 00:28:23,892 もちろん 矢沢の資質にも 不足はない。 341 00:28:23,892 --> 00:28:29,531 ただ… 情けない話だが➡ 342 00:28:29,531 --> 00:28:36,304 我が藩には まだ矢沢を受け入れる 度量が足りてはおらんのじゃ。 343 00:28:36,304 --> 00:28:38,239 度量? 344 00:28:38,239 --> 00:28:42,110 今 矢沢を藩の中枢に 迎え入れたとて➡ 345 00:28:42,110 --> 00:28:47,916 一筋縄ではいかぬ重役衆にもまれ はじき出されて しまいよ。 346 00:28:47,916 --> 00:28:52,916 若き才能を受け入れるのは 先の話になりそうじゃ。 347 00:28:56,624 --> 00:29:00,995 なるほど。 348 00:29:00,995 --> 00:29:02,931 中間風情が➡ 349 00:29:02,931 --> 00:29:07,335 まるで殿様であるかのような 口ぶりですなぁ。 やめい。 350 00:29:07,335 --> 00:29:11,206 (笑い声) 351 00:29:11,206 --> 00:29:28,206 ♬~ 352 00:30:33,288 --> 00:30:36,691 号外です。 はい 号外です。 353 00:30:36,691 --> 00:30:41,191 それは 歴史的な倒産劇だった。 354 00:30:44,198 --> 00:30:48,369 巨大証券会社の 突然の破たん。 355 00:30:48,369 --> 00:30:54,242 負債総額は 戦後最大となる 3兆5,000億円。 356 00:30:54,242 --> 00:30:59,042 グループ社員1万人以上が職を失った。