1 00:00:03,911 --> 00:00:07,381 (一同)乾杯。 2 00:00:07,381 --> 00:00:11,251 (はな)<せっかくの お祝いの会のはずが➡ 3 00:00:11,251 --> 00:00:18,025 喜びよりも 今後についての事で 頭がいっぱいの➡ 4 00:00:18,025 --> 00:00:21,325 すみれなのでした> 5 00:00:32,706 --> 00:00:35,375 <時は幕末 所はお江戸。➡ 6 00:00:35,375 --> 00:00:38,712 参勤交代で江戸に来た 酒田伴四郎。➡ 7 00:00:38,712 --> 00:00:40,747 江戸の暮らしも半年を過ぎ➡ 8 00:00:40,747 --> 00:00:47,247 相も変わらず暇ばかり と言いたいところですが…> 9 00:00:49,423 --> 00:00:56,263 ♬~ 10 00:00:56,263 --> 00:01:01,101 (叫び声) 11 00:01:01,101 --> 00:01:03,301 まずは お主が抜け。 12 00:01:04,938 --> 00:01:07,774 (伴四郎) お主が抜いたら 私も抜く。 13 00:01:07,774 --> 00:01:10,410 そんな暇 あろうはずがない。 14 00:01:10,410 --> 00:01:12,746 剣術で お主に負けた事があったか? 15 00:01:12,746 --> 00:01:15,782 抜けば たちまち お主はあの世。 16 00:01:15,782 --> 00:01:18,619 な… くっ…。 17 00:01:18,619 --> 00:01:23,090 幼き頃より よく遊んだな 伴四郎。 18 00:01:23,090 --> 00:01:27,427 川に落ちては泣き 野良犬に追われては泣き➡ 19 00:01:27,427 --> 00:01:31,865 叔父上に叱られては泣き…。 20 00:01:31,865 --> 00:01:35,702 すぐ泣く癖は 今も変わらん。 黙れ! 21 00:01:35,702 --> 00:01:38,739 お主が悪いのじゃ。 お主のせいじゃ。 22 00:01:38,739 --> 00:01:42,376 宇治井殿の庭の柿の木 覚えておるか? 23 00:01:42,376 --> 00:01:47,881 何度も その目を盗み もいで食おうとしたが かなわず。 24 00:01:47,881 --> 00:01:53,220 ハハハ 叔父上の柿への執着は 恐ろしかった。 25 00:01:53,220 --> 00:01:56,256 3年がかりで やっと盗み 一口食うたが…。 26 00:01:56,256 --> 00:02:00,560 渋柿で… あれには参った。 27 00:02:00,560 --> 00:02:07,560 柿一つすら与えんというのだから あの人の卑しさも筋金入りじゃ。 28 00:02:15,409 --> 00:02:19,079 ♬~ 29 00:02:19,079 --> 00:02:21,748 長いつきあいになったな。 30 00:02:21,748 --> 00:02:44,048 ♬~ 31 00:02:45,706 --> 00:02:49,876 「此度 馬回り組 青木様の供として➡ 32 00:02:49,876 --> 00:02:53,380 江戸に赴く事と相成りました。➡ 33 00:02:53,380 --> 00:02:57,250 久方ぶりに伴様のお顔を 見られるのを➡ 34 00:02:57,250 --> 00:03:00,053 楽しみにしております。 酒田すず」。 35 00:03:00,053 --> 00:03:04,725 読まんで下さい 惨助殿~。 お主が見せたのではないか。 36 00:03:04,725 --> 00:03:07,761 そんな声に出してまで もう~! 37 00:03:07,761 --> 00:03:10,530 このお江戸で すずに会えるとは…。 38 00:03:10,530 --> 00:03:14,401 臆面もなく のろけおって…。 何を臆する事がありましょう。 39 00:03:14,401 --> 00:03:18,238 我が妻 すずは 日ノ本一です! いけしゃあしゃあと。 40 00:03:18,238 --> 00:03:23,577 本当の事です! 殿には分からんでしょうな。 あっ。 41 00:03:23,577 --> 00:03:26,413 わしの妻は 三国一じゃ。 42 00:03:26,413 --> 00:03:30,250 それなら 我が妻 すずは この世一です! 43 00:03:30,250 --> 00:03:34,521 私は こ~んなにも すずを愛し…。 千代は もっとじゃよ! 44 00:03:34,521 --> 00:03:38,358 千代は あの世含めて一番じゃ! あの世… じゃあ すずは…。 45 00:03:38,358 --> 00:03:40,293 あらあら お二人とも➡ 46 00:03:40,293 --> 00:03:43,196 幼子のような事を おっしゃるのですね。 47 00:03:43,196 --> 00:03:49,002 愛とは 比べるものでは ありません。 ねえ~。 48 00:03:49,002 --> 00:03:53,302 (平三)伴四郎! 一大事じゃ! 49 00:03:56,743 --> 00:04:00,747 一大事とは? ご… ご… 五郎右衛門が…。 50 00:04:00,747 --> 00:04:06,386 何です? 逢い引きをしておった。 51 00:04:06,386 --> 00:04:11,258 へえ~。 五郎右衛門は独り身です。 そんなの やつの勝手でしょ。 52 00:04:11,258 --> 00:04:15,896 相手… 相手が…。 誰です? 53 00:04:15,896 --> 00:04:18,799 すずじゃ! えっ? 54 00:04:18,799 --> 00:04:23,799 五郎右衛門が お主の妻 すずと 逢い引きをしておったのじゃ。 55 00:04:25,572 --> 00:04:29,076 アハハハハ! バカな。 56 00:04:29,076 --> 00:04:32,679 すずが江戸に下るのは 10日以上も先の話です。 57 00:04:32,679 --> 00:04:35,182 確かか? お主に嘘を言い➡ 58 00:04:35,182 --> 00:04:37,684 数日早めて 江戸に下ったという事はないか? 59 00:04:37,684 --> 00:04:41,354 まさか…。 そもそも すずと五郎右衛門が➡ 60 00:04:41,354 --> 00:04:43,290 どう つながっておったと いうのです? 61 00:04:43,290 --> 00:04:47,694 文じゃ。 少し前に 五郎右衛門に届いた文があったろ。 62 00:04:47,694 --> 00:04:49,629 文…? 63 00:04:49,629 --> 00:04:54,367 伴四郎 この文 いつ届いた? 確か 2~3日前だったか。 64 00:04:54,367 --> 00:04:56,303 なぜ 早く知らせぬ!? 65 00:04:56,303 --> 00:04:59,239 あっ…。 あやつ 様子が おかしかったろ。 66 00:04:59,239 --> 00:05:04,878 確かに。 いや しかし 字が違います。 宛名の字が。 67 00:05:04,878 --> 00:05:10,217 そんなもの 宛名だけ 誰かに 代筆させれば済む。 そんな…。 68 00:05:10,217 --> 00:05:15,055 五郎右衛門は もともと すずに惚れておったしのう。 69 00:05:15,055 --> 00:05:18,055 どこで? どこで2人を? 70 00:05:23,230 --> 00:05:28,101 やはり もう よしましょう。 私は すずを信じております。 71 00:05:28,101 --> 00:05:31,938 もちろん 五郎右衛門も。 今更 何を言っておる。 72 00:05:31,938 --> 00:05:38,345 お主 疑いを晴らさぬままで 何事もなく夫婦でいられるか? 73 00:05:38,345 --> 00:05:43,683 確かに それは シコリが残るのう。 ついてきたのですか? 74 00:05:43,683 --> 00:05:47,020 どこも大変じゃのう。 面白がっておる…。 75 00:05:47,020 --> 00:05:49,020 来た! 76 00:05:54,895 --> 00:05:59,366 お待たせしました。 いえ。 77 00:05:59,366 --> 00:06:02,566 では あちらへ。 はい。 78 00:06:06,139 --> 00:06:09,042 追うぞ。 79 00:06:09,042 --> 00:06:14,242 伴四郎 追うのじゃ! 追うぞ。 追うぞ。 80 00:06:17,384 --> 00:06:20,384 (お菊) こんなとこで何してんだい? 81 00:06:23,557 --> 00:06:26,893 お菊さん…。 82 00:06:26,893 --> 00:06:29,396 <「おめえら 聞いてくれぇ…」。➡ 83 00:06:29,396 --> 00:06:32,666 「急に どうした? めそめそと みっともねえ」。➡ 84 00:06:32,666 --> 00:06:36,002 「うちのかかあが… うちのかかあが…」。➡ 85 00:06:36,002 --> 00:06:40,507 「逢い引きでもしたってぇのか?」。 「ピンピンしてやがる…」。➡ 86 00:06:40,507 --> 00:06:46,307 「あ~。 涙を拭けや」。 「俺らも同じよ」> 87 00:06:48,248 --> 00:06:51,248 酒を…。 (与一)へい! 88 00:06:54,020 --> 00:06:55,956 …って事は何かい? 89 00:06:55,956 --> 00:06:59,526 五郎右衛門様と すずさんが 逢い引きを? 90 00:06:59,526 --> 00:07:03,863 すずは そんな事しません! あんたが言ったんだろ。 91 00:07:03,863 --> 00:07:06,533 そうなんです…。 92 00:07:06,533 --> 00:07:11,705 情けないねぇ。 この世に女は一人じゃないだろ。 93 00:07:11,705 --> 00:07:13,640 私には すず一人です。 94 00:07:13,640 --> 00:07:16,042 でも その一人が フラついてんだろ? 95 00:07:16,042 --> 00:07:20,380 あんたじゃ満足できないってさ。 96 00:07:20,380 --> 00:07:23,283 このままじゃ すずさんだけじゃない。 97 00:07:23,283 --> 00:07:26,553 娘の はな坊まで 奪われちまうんだよ。 98 00:07:26,553 --> 00:07:28,853 それでもいいのかい? 99 00:07:38,999 --> 00:07:40,999 分かりました。 100 00:07:49,342 --> 00:07:53,013 (平三)話し声までは聞こえんな。 何を話しておるのか…。 101 00:07:53,013 --> 00:07:57,350 お待ちどおさまです。 (2人)おお~。 102 00:07:57,350 --> 00:08:00,020 これはこれは。 いい匂いじゃ。 103 00:08:00,020 --> 00:08:02,320 (2人)では 頂きます。 104 00:08:06,693 --> 00:08:09,195 うん。 う~ん。 105 00:08:09,195 --> 00:08:12,699 おい 惨助 お主は見張りを続けろ。 106 00:08:12,699 --> 00:08:16,569 いやいや 宇治井殿こそ 甥御のためでしょう。 107 00:08:16,569 --> 00:08:19,372 見張りは お任せ致します。 108 00:08:19,372 --> 00:08:24,044 思えば じかに 我々に関わる問題でもないしのう。 109 00:08:24,044 --> 00:08:26,044 確かに。 うん。 110 00:08:29,849 --> 00:08:33,320 しかし この牛の鍋というのは 絶品じゃのう。 111 00:08:33,320 --> 00:08:38,658 まして この香りが…。 う~ん。 う~ん。 112 00:08:38,658 --> 00:08:42,829 (笑い声) 113 00:08:42,829 --> 00:08:48,001 あやつらめ どこに行きおった? 114 00:08:48,001 --> 00:08:51,338 あっ あれだ。 115 00:08:51,338 --> 00:08:54,174 (平三)五郎右衛門とは 別れたようじゃのう。 116 00:08:54,174 --> 00:08:58,374 あやつら 何者? どこへ向かうのか? 117 00:09:06,686 --> 00:09:10,557 ≪ただいま戻りました。 118 00:09:10,557 --> 00:09:15,257 五郎右衛門 話がある。 119 00:09:19,699 --> 00:09:21,699 表へ。 120 00:09:26,573 --> 00:09:32,645 なぜ黙っておった? 気付いておったか。 121 00:09:32,645 --> 00:09:36,816 いつからだ? 思いだけは昔から持っていた。 122 00:09:36,816 --> 00:09:39,853 実際に動いたのは ここ数か月。 123 00:09:39,853 --> 00:09:43,323 江戸に来てから 始まったというのか? 124 00:09:43,323 --> 00:09:45,258 ああ。 125 00:09:45,258 --> 00:09:47,660 江戸の風に唆されたか。 126 00:09:47,660 --> 00:09:51,831 唆されたのではない。 これが正しい道だ。 127 00:09:51,831 --> 00:09:56,169 なっ… 何が正しいというのだ!? 128 00:09:56,169 --> 00:10:00,039 腹はくくった。 死ぬ覚悟もある。 129 00:10:00,039 --> 00:10:04,039 ならば この私が…。 130 00:10:09,682 --> 00:10:14,554 (叫び声) 131 00:10:14,554 --> 00:10:22,695 ♬~ 132 00:10:22,695 --> 00:10:26,566 ここは? 青海藩の藩邸じゃ。 133 00:10:26,566 --> 00:10:28,566 青海? 134 00:10:31,204 --> 00:10:37,877 平三殿 私は これで失礼致します。 急に 何じゃ? 135 00:10:37,877 --> 00:10:42,077 彼らから目を離さぬように。 136 00:10:46,586 --> 00:10:51,224 わしらが日ノ本を変える! 変わるか! 137 00:10:51,224 --> 00:10:53,726 お主の勝手な行動のせいで➡ 138 00:10:53,726 --> 00:11:00,233 私も娘のはなも 家の支えを失う事になるのだぞ! 139 00:11:00,233 --> 00:11:04,404 そこまで私の事を…。 お主の事ではない! すずの事だ! 140 00:11:04,404 --> 00:11:06,339 すず? 141 00:11:06,339 --> 00:11:11,339 この期に及んで まだ シラを切る気か? 142 00:11:15,048 --> 00:11:20,854 (笑い声) 笑うな。 143 00:11:20,854 --> 00:11:27,427 笑うな! あれは すずではない。 144 00:11:27,427 --> 00:11:33,233 あれは青海藩の者で 私には お松と名乗っておる。 145 00:11:33,233 --> 00:11:38,371 お松? (笑い声) 146 00:11:38,371 --> 00:11:40,671 確かに似ておるわ。 147 00:11:45,879 --> 00:11:48,379 (平三)ま… 待たれい。 148 00:11:50,216 --> 00:11:53,887 お主… すずではないのか? 149 00:11:53,887 --> 00:11:57,724 すず? どなたと お間違いでしょう? 150 00:11:57,724 --> 00:12:02,595 では どうして 矢沢五郎右衛門と 行動を共にしておる? 151 00:12:02,595 --> 00:12:06,733 先ほどの連中も 青海藩の者であろう? 152 00:12:06,733 --> 00:12:10,733 なぜ 矢沢五郎右衛門は あのような者たちと…。 153 00:12:13,406 --> 00:12:15,706 待てい! 154 00:12:18,278 --> 00:12:22,415 藩の垣根を越えて 交流があってはいけませんか? 155 00:12:22,415 --> 00:12:24,918 今どきは 珍しくないと思いますが。 156 00:12:24,918 --> 00:12:27,954 いや 悪い噂が 聞こえておるのじゃ。 157 00:12:27,954 --> 00:12:31,654 青海藩からは。 フンッ。 158 00:12:33,359 --> 00:12:39,232 (近道)その後 どうじゃ? 強い力士は見つかったか? 159 00:12:39,232 --> 00:12:42,869 もう一度 見たいのう お主の裸踊り。 160 00:12:42,869 --> 00:12:45,905 ふざけた事をぬかすな。 161 00:12:45,905 --> 00:12:49,205 財政も厳しく 相撲どころではないわ。 162 00:12:51,044 --> 00:12:54,914 茂照 青海藩の事を 聞き及んでおるか? 163 00:12:54,914 --> 00:12:59,552 何やら きな臭くなってるようじゃのう。 164 00:12:59,552 --> 00:13:03,389 青海藩は 攘夷派の急先鋒と呼ばれておる。 165 00:13:03,389 --> 00:13:07,060 やり方が 少々 道に外れておってな➡ 166 00:13:07,060 --> 00:13:12,932 最近では 他藩の人間に近づき 仲間に引き入れておるそうじゃ。 167 00:13:12,932 --> 00:13:15,568 家中に そのような者を出したら➡ 168 00:13:15,568 --> 00:13:19,368 幕府から きつく お咎めを受けるぞ。 169 00:13:26,913 --> 00:13:32,413 誰か おるか? ≪はっ。 お呼びでしょうか? 170 00:13:34,020 --> 00:13:39,192 私は このまま高野藩を出る。 脱藩じゃ。 171 00:13:39,192 --> 00:13:45,965 何だ 脱藩か~。 逢い引きではないなら安心した。 172 00:13:45,965 --> 00:13:49,902 すずへの思いなど とうの昔に消え去っておるわ。 173 00:13:49,902 --> 00:13:54,674 そうか 脱藩か。 だ… 脱藩!? 174 00:13:54,674 --> 00:13:56,609 声が でかい! 175 00:13:56,609 --> 00:14:00,880 どうして そんな…。 176 00:14:00,880 --> 00:14:09,055 私は もっと広く世の中が見たい。 177 00:14:09,055 --> 00:14:13,393 小林先生の私塾へ通い 見識を広げ➡ 178 00:14:13,393 --> 00:14:19,265 我が藩の殿の藩政改革にも賛同し 建白書まで提出した。 179 00:14:19,265 --> 00:14:26,906 それも全て 我が藩のみならず 日ノ本の将来を憂えての事。 180 00:14:26,906 --> 00:14:29,742 しかし 結果はどうだ? 181 00:14:29,742 --> 00:14:35,848 勘定方への役替えもままならず 建白書は突き返された。 182 00:14:35,848 --> 00:14:39,352 衣紋方として 高野藩で埋もれていろと➡ 183 00:14:39,352 --> 00:14:42,255 そう言われたのだ。 184 00:14:42,255 --> 00:14:44,691 このまま高野藩にとどまり➡ 185 00:14:44,691 --> 00:14:48,561 死ぬまで この思いを抱えて 生きるのは本意ではない。 186 00:14:48,561 --> 00:14:52,365 ならば いっそ…。 ≪(平三)ただいま戻った。 187 00:14:52,365 --> 00:14:59,539 叔父上! 五郎右衛門が…。 言うな! わしは 何も知らん。 188 00:14:59,539 --> 00:15:02,339 何も聞きとうない。 189 00:15:05,712 --> 00:15:07,912 叔父上! 190 00:15:10,883 --> 00:15:12,883 叔父上! 191 00:15:15,221 --> 00:15:18,057 引き止めようなどと思うな。 192 00:15:18,057 --> 00:15:23,730 全て 五郎右衛門の勝手な行動。 我々は 何も知らなかった。 193 00:15:23,730 --> 00:15:27,400 後に何を問われても 知らぬ存ぜぬで通すのじゃ。 194 00:15:27,400 --> 00:15:31,671 なぜです? 脱藩が どれほどの罪か分かっておろう? 195 00:15:31,671 --> 00:15:33,606 それを知りつつ➡ 196 00:15:33,606 --> 00:15:38,544 引き止められなかったと分かれば 我々も咎を受けるのだぞ。 197 00:15:38,544 --> 00:15:41,848 切腹もありうる。 引き止めれば済む話です。 198 00:15:41,848 --> 00:15:45,348 思いとどまるような男か? 199 00:15:51,023 --> 00:15:53,526 (戸が開く音) 200 00:15:53,526 --> 00:15:56,562 五郎右衛門。 201 00:15:56,562 --> 00:16:00,199 宇治井殿の言うとおりだ。 しかし…。 202 00:16:00,199 --> 00:16:04,399 伴四郎 承知してくれ。 203 00:16:11,544 --> 00:16:13,880 (ため息) 204 00:16:13,880 --> 00:16:18,751 やっぱり 五郎右衛門様は すずさんと…。 205 00:16:18,751 --> 00:16:23,890 いや 相手は すずじゃなかったんです。 206 00:16:23,890 --> 00:16:25,925 じゃあ よかったじゃないか! 207 00:16:25,925 --> 00:16:30,062 一つもよくない! 何なんだよ! 208 00:16:30,062 --> 00:16:34,062 言えません。 だったら帰っておくれよ。 209 00:16:40,673 --> 00:16:44,844 一つだけ 教えて下さい。 210 00:16:44,844 --> 00:16:50,016 去りゆく友を引き止めるには どうしたらよいのでしょう。 211 00:16:50,016 --> 00:16:55,688 好きにさせりゃいいだろ。 死ぬ訳じゃあるまいし。 212 00:16:55,688 --> 00:16:58,388 死ぬのです。 213 00:17:04,864 --> 00:17:09,702 我々の脱藩の旨 ここに記しておる。 214 00:17:09,702 --> 00:17:14,702 私に代わって 青海のお松に これを届けてくれ。 215 00:17:17,376 --> 00:17:21,376 心変わりはしておらんな? はい。 216 00:17:23,049 --> 00:17:26,919 (原田) 例の矢沢五郎右衛門の件は? 217 00:17:26,919 --> 00:17:29,922 (磯部)穏便に ケリをつけました。 218 00:17:29,922 --> 00:17:32,158 あの時は お主の建白書を➡ 219 00:17:32,158 --> 00:17:35,194 重役 原田の意向で もみ消したが➡ 220 00:17:35,194 --> 00:17:38,664 その志には感心させられた。 221 00:17:38,664 --> 00:17:44,837 共に戦うには お主こそが 心強い味方になると感じたのじゃ。 222 00:17:44,837 --> 00:17:47,137 もったいなきお言葉。 223 00:17:51,177 --> 00:17:53,679 (平三)五郎右衛門は? 224 00:17:53,679 --> 00:17:58,979 あの夜から戻っておりません。 そうか…。 225 00:18:03,856 --> 00:18:07,056 叔父上は 先ほどから 何を書かれておる…。 226 00:18:14,567 --> 00:18:18,704 叔父上 これは密告書では…。 そうじゃ。 227 00:18:18,704 --> 00:18:21,207 「そうじゃ」って。 何のつもりです? 228 00:18:21,207 --> 00:18:24,543 知らぬ存ぜぬで通すのでは なかったのですか? 229 00:18:24,543 --> 00:18:29,382 そうやって おびえておるより 五郎右衛門の事を お上に密告し➡ 230 00:18:29,382 --> 00:18:32,351 己の手柄にする方がよいと 考えたのじゃ。 231 00:18:32,351 --> 00:18:36,188 「手柄」って…。 藩に知れれば やつは 打ち首です。 232 00:18:36,188 --> 00:18:39,992 五郎右衛門の首を差し出してまで 出世したいと申すのですか? 233 00:18:39,992 --> 00:18:43,496 脱藩などしたら たちまち追っ手が来て殺される。 234 00:18:43,496 --> 00:18:47,996 同じ命ならば 無駄にするより 上司の出世の…。 235 00:18:49,669 --> 00:18:54,840 それは控えじゃ。 こちらが清書。 236 00:18:54,840 --> 00:18:58,511 しかし 以前 私が ここを出ようとした時➡ 237 00:18:58,511 --> 00:19:01,180 妻のすずが病気だからと 嘘の報告をして➡ 238 00:19:01,180 --> 00:19:03,849 守ってくれたではありませんか! 出来は悪いが➡ 239 00:19:03,849 --> 00:19:09,188 お主は 我が甥御じゃ。 しかし 五郎右衛門は違う。 240 00:19:09,188 --> 00:19:14,860 実は それも控えじゃ。 こちらが 本当の清書。 241 00:19:14,860 --> 00:19:19,699 こちらにも こちらにも こちらにも こちらにも…。 242 00:19:19,699 --> 00:19:24,370 もう よい! 見損ないましたぞ 叔父上! 243 00:19:24,370 --> 00:19:32,670 ♬~ 244 00:19:42,855 --> 00:19:45,658 何です? 一緒に来てもらおう。 245 00:19:45,658 --> 00:19:51,358 すず… お松。 お松! 246 00:19:54,333 --> 00:19:57,236 このまま 五郎右衛門に脱藩を許せば➡ 247 00:19:57,236 --> 00:20:00,506 私は 一生 後悔する。 248 00:20:00,506 --> 00:20:05,344 もし 五郎右衛門の脱藩にまつわる 念書 覚書などが➡ 249 00:20:05,344 --> 00:20:10,016 そちらに渡っておるなら 速やかに お返し願いたい! 250 00:20:10,016 --> 00:20:13,886 土下座までして それでも武士ですか? 251 00:20:13,886 --> 00:20:16,789 何が悪い? 252 00:20:16,789 --> 00:20:23,195 矢沢様は 死ぬ覚悟で 己の志を貫こうとしているのです。 253 00:20:23,195 --> 00:20:26,232 それを土下座までして 邪魔立てしようとするとは…。 254 00:20:26,232 --> 00:20:30,936 邪魔して当然ではないか! 五郎右衛門は 我が友。 255 00:20:30,936 --> 00:20:33,706 いや 兄弟も同じだ! 256 00:20:33,706 --> 00:20:37,576 随分 甘い言いぐさですね。 257 00:20:37,576 --> 00:20:41,580 あなたたち同士が その程度の覚悟でいるから➡ 258 00:20:41,580 --> 00:20:47,219 矢沢様は 高野藩に 愛想を 尽かしたんじゃありませんか? 259 00:20:47,219 --> 00:20:51,719 矢沢様の事は 諦めるんですね。 260 00:21:02,401 --> 00:21:05,304 (庄兵衛)断る! つれない事を言うな。 261 00:21:05,304 --> 00:21:09,275 わしと お主の仲ではないか。 どんな仲じゃ なれなれしい。 262 00:21:09,275 --> 00:21:13,775 書状なら 藩邸に 直接 持参すれば済む話。 263 00:21:16,749 --> 00:21:22,449 少々 物騒な書状でのう 騒ぎを大きくしたくないのじゃ。 264 00:21:24,090 --> 00:21:29,261 お主 五郎右衛門を 売ろうというのか? 265 00:21:29,261 --> 00:21:35,067 五郎右衛門は 甥御も同じではないか。 266 00:21:35,067 --> 00:21:40,267 いくらお主でも そこまで薄情には 思えんかったが…。 267 00:21:42,374 --> 00:21:49,148 あやつは 幼き頃から つまらん男でのう。 268 00:21:49,148 --> 00:21:54,386 たまに悪さもするが 要領が悪くて…。 269 00:21:54,386 --> 00:21:59,386 毎度 取っ捕まえては よ~く 説教くれてやったわ。 270 00:22:03,395 --> 00:22:09,695 そうじゃ あやつの要領の悪さは 昔から変わらん。 271 00:22:19,845 --> 00:22:25,645 [ 回想 ] (お松)矢沢様の事は 諦めるんですね。 272 00:22:28,921 --> 00:22:32,892 [ 心の声 ] 私が 五郎右衛門のために できる事は➡ 273 00:22:32,892 --> 00:22:39,192 それは うまい飯を作って やつの帰りを待つ事だけ。 274 00:22:46,705 --> 00:22:53,579 (笑い声) 275 00:22:53,579 --> 00:22:58,050 どうだ 伴四郎。 お主も行くか? これからは勉学の時代だぞ。 276 00:22:58,050 --> 00:23:01,554 確かに私は あのお羽に うつつを抜かしております。 277 00:23:01,554 --> 00:23:03,589 私は お主の事を思って…。 だから➡ 278 00:23:03,589 --> 00:23:06,058 それが気に障ると 言っておるのだ! 279 00:23:06,058 --> 00:23:09,358 何にせよ やっと目覚めたか! 280 00:23:13,732 --> 00:23:16,402 あっ。 281 00:23:16,402 --> 00:23:19,102 熱っ! 熱い 熱い。 282 00:23:20,739 --> 00:23:23,439 やってしまった…。 283 00:23:37,022 --> 00:23:39,925 (戸の開閉音) 284 00:23:39,925 --> 00:23:42,828 もう…。 285 00:23:42,828 --> 00:23:45,531 どうした? 286 00:23:45,531 --> 00:23:50,703 失敗しました。 焦がしてしまった。 287 00:23:50,703 --> 00:23:53,038 珍しいな。 288 00:23:53,038 --> 00:23:56,375 料理の腕も 江戸に来た時と比べれば➡ 289 00:23:56,375 --> 00:23:59,712 だいぶ マシになったと 思っておったが。 290 00:23:59,712 --> 00:24:04,383 まあ よい。 藩邸の炊事場で よいものをもらってきた。 291 00:24:04,383 --> 00:24:06,883 腹の足しにはなるじゃろう。 292 00:24:10,256 --> 00:24:12,725 矢沢殿の周囲も➡ 293 00:24:12,725 --> 00:24:16,895 騒がしくなってきている ようですね。 294 00:24:16,895 --> 00:24:20,399 面目ない。 ならば 決行を早めた方がよい。 295 00:24:20,399 --> 00:24:25,271 矢沢殿のお気持ちは お変わりありませんね? 296 00:24:25,271 --> 00:24:27,271 はい。 297 00:24:40,686 --> 00:24:44,356 ≪(平三)焦らん方が 実りの多い事もある。 298 00:24:44,356 --> 00:24:50,229 お主らが幼き頃に盗みに来た 渋柿➡ 299 00:24:50,229 --> 00:24:53,866 わしは こうして 干して食うておった。 300 00:24:53,866 --> 00:24:57,736 それで 分けてはくれなかったのですね。 301 00:24:57,736 --> 00:25:04,510 お主らは 甘柿でないと分かると 二度と盗みに来なかったが➡ 302 00:25:04,510 --> 00:25:10,316 干して じっと待てば 甘柿よりも甘くなる。 303 00:25:10,316 --> 00:25:14,720 理想と違うからと 耐えずに見切ってしまえば➡ 304 00:25:14,720 --> 00:25:17,756 干し柿の甘さは得られん。 305 00:25:17,756 --> 00:25:23,256 渋柿を信じ じっと待つ事も大事なんじゃ。 306 00:25:26,065 --> 00:25:29,735 手柄を焦る叔父上の言葉とは 思えませんが…。 307 00:25:29,735 --> 00:25:32,735 なっ… おま… ちゃかすな! 308 00:25:37,543 --> 00:25:42,681 柿泥棒を止めたのは 五郎右衛門です。 309 00:25:42,681 --> 00:25:47,553 渋柿だからではなく 衣紋方の修行が始まり➡ 310 00:25:47,553 --> 00:25:53,325 叔父上には 面倒はかけられないとの事でした。 311 00:25:53,325 --> 00:26:00,032 そもそも 柿泥棒も 私につきあっての事です。 312 00:26:00,032 --> 00:26:07,732 曲がった事が嫌いで 自分を曲げる事が何より嫌いで…。 313 00:26:15,881 --> 00:26:21,687 もっと早く 干し柿を食わせておくんだった。 314 00:26:21,687 --> 00:26:41,039 ♬~ 315 00:26:41,039 --> 00:26:47,839 やはりか… 矢沢五郎右衛門。 316 00:26:49,681 --> 00:26:52,351 どのように致しましょう。 317 00:26:52,351 --> 00:26:59,224 ♬~ 318 00:26:59,224 --> 00:27:02,861 (2人)ごちそうさまでした。 319 00:27:02,861 --> 00:27:06,198 ≪(戸が開く音) 320 00:27:06,198 --> 00:27:08,233 五郎右衛門! 321 00:27:08,233 --> 00:27:23,215 ♬~ 322 00:27:23,215 --> 00:27:27,715 伴四郎! もうよい。 追うな。 323 00:28:00,853 --> 00:28:04,189 矢沢五郎右衛門 上意である。 324 00:28:04,189 --> 00:28:07,389 上屋敷まで ご同行願おうか。 325 00:28:09,695 --> 00:28:12,995 神妙に…。 ≪しばし お待ちを! 326 00:28:15,367 --> 00:28:19,538 何かの間違いではありませんか? 下がれ。 下がりません。 327 00:28:19,538 --> 00:28:22,207 かばい立てすると お主も ただでは済まぬぞ。 328 00:28:22,207 --> 00:28:24,407 もういい 伴四郎! 329 00:28:26,378 --> 00:28:30,716 この期に及んで 逃げも隠れも致しませぬ。 330 00:28:30,716 --> 00:28:37,155 ♬~ 331 00:28:37,155 --> 00:28:41,660 五郎右衛門…。 待て 五郎右衛門! 332 00:28:41,660 --> 00:28:45,998 五郎右衛門! 五郎右衛門…。 333 00:28:45,998 --> 00:28:50,669 「拝啓 すず殿 はな坊。➡ 334 00:28:50,669 --> 00:28:56,008 江戸は憎い町です。➡ 335 00:28:56,008 --> 00:28:58,844 目まぐるしく人を変え➡ 336 00:28:58,844 --> 00:29:05,350 我が友 五郎右衛門を 奪っていきました」。 337 00:29:05,350 --> 00:29:13,225 ♬~ 338 00:29:13,225 --> 00:29:17,863 ♬~ 339 00:29:17,863 --> 00:29:22,701 ♬~ 340 00:29:22,701 --> 00:29:28,401 ♬~ 341 00:30:40,379 --> 00:30:45,617 戦争が終わり 新しい憲法が生まれた。 342 00:30:45,617 --> 00:30:49,221 それは 人々の希望だった。 343 00:30:49,221 --> 00:30:52,557 (一同)万歳! 344 00:30:52,557 --> 00:30:59,064 だが この憲法の成り立ちには いまだ謎も多い。