1 00:00:02,135 --> 00:00:07,074 (蔦屋重三郎)身上半減って…。 一体 何やったんですか? 2 00:00:07,074 --> 00:00:09,209 (須原屋市兵衛)うん? 3 00:00:09,209 --> 00:00:15,082 うん まぁな 林 子平先生のな 「三国通覧図説」➡ 4 00:00:15,082 --> 00:00:18,919 まぁ それを出したからっていってよ。 5 00:00:18,919 --> 00:00:24,057 「海国兵談」書いた人ですよね? こないだ 絶版食らった。 6 00:00:24,057 --> 00:00:25,993 おう そうそう。 7 00:00:25,993 --> 00:00:31,231 オロシャが 江戸の港を攻めてくるって そう書いたんだよな。 8 00:00:31,231 --> 00:00:33,567 須原屋さん…。 9 00:00:33,567 --> 00:00:40,440 「海国」にはな みんなが知っていた方が いいなってことが書いてあったからさ。➡ 10 00:00:40,440 --> 00:00:44,578 いや オロシャが 江戸に攻め込んでくる っていうことがあっても➡ 11 00:00:44,578 --> 00:00:48,248 おかしかねえってことだよな。 12 00:00:48,248 --> 00:00:50,584 なあ 蔦重。 13 00:00:50,584 --> 00:00:55,389 知らねえってことはな 怖えことなんだよ。 14 00:00:55,389 --> 00:01:01,194 物事知らねえとな 知ってるやつに いいようにされちまうんだ。 15 00:01:01,194 --> 00:01:05,032 本屋ってのはな➡ 16 00:01:05,032 --> 00:01:10,537 正しい世の中のために いいことを知らせてやるっていう➡ 17 00:01:10,537 --> 00:01:12,573 つとめがあるんだよ。 18 00:01:12,573 --> 00:01:18,879 平賀源内風に言えばな 「書をもって 世を耕す」。 19 00:01:18,879 --> 00:01:21,081 これなんだよ。 20 00:01:24,551 --> 00:01:28,055 須原屋さん。 (須原屋)うん? 21 00:01:28,055 --> 00:01:30,891 目にもの見せてやりましょう。 22 00:01:30,891 --> 00:01:34,227 身上半減なんてしたって無駄だ。 23 00:01:34,227 --> 00:01:36,897 俺たちゃ んなことで へこたれねえ。 24 00:01:36,897 --> 00:01:39,566 何度でも よみがえるって。 25 00:01:39,566 --> 00:01:41,501 合点承知! 26 00:01:41,501 --> 00:01:44,371 …と まぁ そう言いてえところだがな➡ 27 00:01:44,371 --> 00:01:51,578 俺ゃ この辺りで 跡を譲ろうかと思ってるんだ。 28 00:01:51,578 --> 00:01:53,513 え…? 29 00:01:53,513 --> 00:02:01,188 実のところな 近頃は 本を読むのも一苦労なんだ。 30 00:02:01,188 --> 00:02:03,190 蔦重。 31 00:02:03,190 --> 00:02:06,059 頼むぜ。 32 00:02:06,059 --> 00:02:10,864 俺ゃ 死ぬ前に もう一度…。 33 00:02:14,735 --> 00:02:18,205 もう一度 見てえんだよ。 34 00:02:18,205 --> 00:02:24,011 浮かれて 華やいだ江戸の町をな。 35 00:02:24,011 --> 00:02:26,913 合点承知にございます。 36 00:02:26,913 --> 00:02:28,915 蔦重…。 37 00:02:28,915 --> 00:02:32,052 (みの吉)年明けに 新作を山ほど出すってんですか? 38 00:02:32,052 --> 00:02:38,825 ああ。 狂歌本も黄表紙も ずらっと並べて 暖簾も直して 畳も入れて➡ 39 00:02:38,825 --> 00:02:41,728 身上半減なんて 何のその➡ 40 00:02:41,728 --> 00:02:45,065 蔦屋は何度でもよみがえるって 見せつけてやんだ。 41 00:02:45,065 --> 00:02:47,567 (みの吉)再印本の黄表紙を 諸国の本屋に売り広めて➡ 42 00:02:47,567 --> 00:02:49,503 稼ぐってことですか? 43 00:02:49,503 --> 00:02:54,241 それも そうだけど ひとつ 自前の書物も当てようと思ってる。 44 00:02:54,241 --> 00:02:56,243 (滝沢瑣吉)自前の書物か! それは いい! 45 00:02:56,243 --> 00:02:58,245 ハハハハハハ! ああ。 46 00:02:58,245 --> 00:03:00,680 ってことで➡ 47 00:03:00,680 --> 00:03:04,851 おていさん 頼むぜ。 48 00:03:04,851 --> 00:03:09,690 (てい)私に 書物の案を出せと? おう。 49 00:03:09,690 --> 00:03:11,625 無理です。 50 00:03:11,625 --> 00:03:15,195 無理です 無理です 無理です 無理です 無理です 無理です 無理です 無理です➡ 51 00:03:15,195 --> 00:03:17,130 無理です 無理です 無理です 無理です…。 頼むよ。 52 00:03:17,130 --> 00:03:20,333 うちで 書物に親しんでるのは おていさんしか いねえんだ。 53 00:03:20,333 --> 00:03:24,538 案ずるな 女将 俺が力になってやろう。 54 00:03:24,538 --> 00:03:28,408 まず 30本 考えるだけ考えてみてくれ。 55 00:03:28,408 --> 00:03:30,410 選ぶのは 俺だ。 56 00:03:30,410 --> 00:03:33,046 30本か。 よし! 57 00:03:33,046 --> 00:03:36,883 瑣吉は 求板する再印本を選んでほしい。 58 00:03:36,883 --> 00:03:40,353 然様な つまらぬ仕事 手代に任せればよかろう…。 59 00:03:40,353 --> 00:03:42,289 お前も手代なんだよ! 60 00:03:42,289 --> 00:03:44,224 瑣吉先生。 61 00:03:44,224 --> 00:03:48,895 俺ゃ 瑣吉先生は とびきりの作者になると見込んでんだ。 62 00:03:48,895 --> 00:03:54,701 その目で 安くて面白え黄表紙を 見つけてほしい。 63 00:03:54,701 --> 00:03:56,636 任せろ! 64 00:03:56,636 --> 00:03:58,605 案ずるな 手代! 65 00:03:58,605 --> 00:04:01,475 (みの吉)お前も手代だろ! (瑣吉)ハハハハハ! 66 00:04:01,475 --> 00:04:07,280 (たか)大事ありませんか? 横になられますか? 67 00:04:07,280 --> 00:04:10,684 医者 呼ぶか? 68 00:04:10,684 --> 00:04:13,320 (つよ)いいよ 大したことないから。 69 00:04:13,320 --> 00:04:16,189 年も年だし 大事見てよ。 70 00:04:16,189 --> 00:04:20,193 案ずるなら これ以上 頭痛の種を 増やさないどくれ! 71 00:04:20,193 --> 00:04:23,330 合点承知だ! 72 00:04:23,330 --> 00:04:27,200 こうして 不死鳥のごとき復活を目指し➡ 73 00:04:27,200 --> 00:04:30,203 蔦重は 走りだしたのでございます。 74 00:04:32,873 --> 00:05:26,092 ♬~ 75 00:05:26,092 --> 00:06:59,085 ♬~ 76 00:07:07,294 --> 00:07:09,829 (喜多川歌麿)「浮気の相」➡ 77 00:07:09,829 --> 00:07:12,666 「面白き相」➡ 78 00:07:12,666 --> 00:07:15,669 「浄き相」。 79 00:07:18,171 --> 00:07:22,509 (歌麿)いいんじゃねえか? 色も綺麗に出てるし。 80 00:07:22,509 --> 00:07:26,179 けど いまひとつ 地味じゃねえか? 81 00:07:26,179 --> 00:07:28,114 ちょいと ちょいと。 82 00:07:28,114 --> 00:07:32,852 こういった淡い色を柔らかく出してえって 注文だと こうなりまさね。 83 00:07:32,852 --> 00:07:34,788 色 変えるかい? 84 00:07:34,788 --> 00:07:36,790 いやぁ…。 85 00:07:41,561 --> 00:07:46,866 これ… 周りを雲母摺にすると どうなります? 86 00:07:46,866 --> 00:07:49,536 雲母 使うの? ああ。 87 00:07:49,536 --> 00:07:51,471 周りが キラキラすりゃあ➡ 88 00:07:51,471 --> 00:07:54,207 この淡い色目が 面白くなりませんかね? 89 00:07:54,207 --> 00:07:57,711 贅沢な気分にもなってくるし➡ 90 00:07:57,711 --> 00:08:01,681 雲母は 金銀ほど 値も張らねえでしょ? 91 00:08:01,681 --> 00:08:06,820 そりゃ そうですが 錦絵で雲母摺なんて 聞いたことねえですよ。 92 00:08:06,820 --> 00:08:08,755 いいじゃねえか! 93 00:08:08,755 --> 00:08:13,259 誰も見たことがねえもんに なるってことだ。 94 00:08:14,995 --> 00:08:16,930 いらっしゃいませ! いらっしゃいませ! 95 00:08:16,930 --> 00:08:20,300 じゃあ 上がったら また知らせるな。 おう。 96 00:08:20,300 --> 00:08:23,837 嫌だったか? キラキラすんの。 97 00:08:23,837 --> 00:08:25,872 感心してんだよ。 98 00:08:25,872 --> 00:08:29,509 相変わらず よく考えつくなって。 ああ…。 99 00:08:29,509 --> 00:08:34,014 「十躰」は 江戸がひっくり返るほどの バカ売れ狙うからよ。 100 00:08:34,014 --> 00:08:36,683 畳 入れたいから? 101 00:08:36,683 --> 00:08:39,185 畳も入れてえし➡ 102 00:08:39,185 --> 00:08:44,858 お前を当代一の絵師にして 蔦屋の名もあげてえし➡ 103 00:08:44,858 --> 00:08:47,761 江戸を沸き返らせてえ。 104 00:08:47,761 --> 00:08:50,730 江戸を沸き返らせたい? ああ。 105 00:08:50,730 --> 00:08:55,502 皆が楽しんでいた 田沼様の頃の江戸にしてえんだよ。 106 00:08:55,502 --> 00:08:58,705 蔦重は変わんねえな。 107 00:08:58,705 --> 00:09:01,474 どうした? 瑣吉。 108 00:09:01,474 --> 00:09:04,277 んだよ? 109 00:09:08,815 --> 00:09:11,117 あ? 110 00:09:16,489 --> 00:09:19,993 やはり そうだと思うのだがなぁ。 111 00:09:19,993 --> 00:09:22,829 (歌麿)何がだい? 112 00:09:22,829 --> 00:09:27,333 お主… 男色ではないのか? 113 00:09:31,304 --> 00:09:35,008 もしくは 両刀。 114 00:09:35,008 --> 00:09:36,943 (足音) 115 00:09:36,943 --> 00:09:39,846 (たたく音) あっ! 何をするオババ! 116 00:09:39,846 --> 00:09:41,881 無礼だろ! 親しくもない相手に いきなり! 117 00:09:41,881 --> 00:09:44,517 (瑣吉)町人の分際で どっちが無礼だ! 118 00:09:44,517 --> 00:09:49,689 すまねえ。 瑣吉は 無礼で思い込みの激しいやつで。 119 00:09:49,689 --> 00:09:51,724 俺➡ 120 00:09:51,724 --> 00:09:54,027 両刀だよ 瑣吉さん。 121 00:09:54,027 --> 00:09:55,962 (瑣吉)おおっ! 122 00:09:55,962 --> 00:09:58,198 (歌麿)俺は 男も女も好きさ。 123 00:09:58,198 --> 00:10:01,701 やはり! やはり そうか! ハハハハ! 124 00:10:01,701 --> 00:10:04,537 けど 瑣吉さんは違うのかい? 125 00:10:04,537 --> 00:10:08,208 俺は 筋金入りの女好きだ。 女も 俺を好きだしな。 126 00:10:08,208 --> 00:10:10,210 ハハハハハハハハ! そうかい。 127 00:10:10,210 --> 00:10:14,080 でも 蔦重と おつよさんだったら どっちが好きだい? 128 00:10:14,080 --> 00:10:16,883 そりゃ 蔦重に決まってる! 129 00:10:16,883 --> 00:10:22,222 筋金入りの女好きなのに 女より好きな男がいるのかい? 130 00:10:22,222 --> 00:10:24,157 …ん? 131 00:10:24,157 --> 00:10:28,895 俺は そもそも 男か女かで 人を分けたりしねえんだよ。 132 00:10:28,895 --> 00:10:33,366 俺は 「好きな人」と「それ以外」で 分けてるもんでさ。 133 00:10:33,366 --> 00:10:38,238 その「好きな人」は 男のこともありゃ 女のこともある。 134 00:10:38,238 --> 00:10:44,010 まぁ 世間様の物差しに当てりゃあ 両刀ってことになる。 135 00:10:44,010 --> 00:10:49,749 実は 瑣吉さんも そうってことはねえのかい? 136 00:10:49,749 --> 00:10:54,587 う~ん… ん? んん~? 137 00:10:54,587 --> 00:10:57,090 じゃあな。 138 00:10:59,926 --> 00:11:02,695 瑣吉を追い出せって…。 139 00:11:02,695 --> 00:11:04,731 あんなの うちに置いといたって しょうがないだろ! 140 00:11:04,731 --> 00:11:09,569 お客の目の前にも出せないし 大飯食らい 余計なことしか言わないし! 141 00:11:09,569 --> 00:11:11,704 まぁな。 142 00:11:11,704 --> 00:11:14,541 けど 変に見どころあんだよ。 143 00:11:14,541 --> 00:11:17,043 大化けする気もしてよぉ。 144 00:11:17,043 --> 00:11:20,880 だったら よそに置いて 黄表紙だけ頼めばいいだろ! 145 00:11:20,880 --> 00:11:23,716 けど 歌に やり込められてたし➡ 146 00:11:23,716 --> 00:11:26,619 一皮むけるかもしんねえぞ? 147 00:11:26,619 --> 00:11:32,926 あんた あれ 歌が平気で言ってたと思うのかい? 148 00:11:39,732 --> 00:11:41,668 歌から 何か聞いたのか? 149 00:11:41,668 --> 00:11:44,370 見てりゃ 大抵の察しはつくよ! 150 00:11:44,370 --> 00:11:47,574 昔 いろいろ あったんだろうなってことぐらいは! 151 00:11:47,574 --> 00:11:51,377 あんなの置いといたら 次は 歌に 何言いだすか分かったもんじゃ…。 152 00:11:51,377 --> 00:11:55,081 いった…! おい ババア ほんとに医者呼ぶか? 153 00:11:55,081 --> 00:11:59,752 もう あんたと話してると 頭 痛くなってくるよ! 154 00:11:59,752 --> 00:12:05,191 とにかくさ あんたは ろくに 口もきいてもらえなかったんだから➡ 155 00:12:05,191 --> 00:12:07,193 もっと 歌を大事にしないと➡ 156 00:12:07,193 --> 00:12:10,029 そのうち ほんとに捨てられるよ! 157 00:12:10,029 --> 00:12:12,332 いっつ…。 158 00:12:19,205 --> 00:12:21,908 つ~…。 159 00:12:30,717 --> 00:12:35,054 おていさん 一度 医者 呼んで 診てもらってくれよ。 160 00:12:35,054 --> 00:12:38,057 かしこまりました。 161 00:12:52,238 --> 00:12:58,378 あの これ 書物の。 162 00:12:58,378 --> 00:13:04,083 おお できましたか 30本。 163 00:13:07,020 --> 00:13:09,322 「枯れ木も山の賑わい」と申します。 164 00:13:09,322 --> 00:13:14,027 どうか そのくらいのお心持ちで ご覧いただけると。 165 00:13:18,031 --> 00:13:21,234 かしこまりました。 166 00:13:27,340 --> 00:13:51,531 ♬~ 167 00:13:51,531 --> 00:13:53,599 うん…。 168 00:13:53,599 --> 00:14:08,514 ♬~ 169 00:14:08,514 --> 00:14:12,518 先生 ご無沙汰しております。 170 00:14:14,387 --> 00:14:18,524 艶二郎の折には お世話になりまして。 171 00:14:18,524 --> 00:14:21,561 いやいや こちらこそ。 172 00:14:21,561 --> 00:14:26,199 あの 艶二郎のもとになった「手拭合」の絵 先生の手なんだよ。 173 00:14:26,199 --> 00:14:28,534 存じ上げております。➡ 174 00:14:28,534 --> 00:14:30,470 加藤千蔭先生。➡ 175 00:14:30,470 --> 00:14:37,710 賀茂真淵先生の門下筆頭の和学者 和歌の名手 書家としてもご高名で➡ 176 00:14:37,710 --> 00:14:41,581 流麗な「千蔭流」の書は 皆の憧れにございます。 177 00:14:41,581 --> 00:14:46,419 憧れ? いやぁ てれるねぇ。 178 00:14:46,419 --> 00:14:50,056 先生 さあさあさあ。 179 00:14:50,056 --> 00:14:52,759 悪いね。 いえいえ。 180 00:14:55,561 --> 00:15:02,068 ちなみに この千蔭先生も田沼派で 閉門を受けた方です。 181 00:15:03,669 --> 00:15:09,475 で 先生に 書物問屋蔦屋のお披露目の作を お願いしたいんです。 182 00:15:09,475 --> 00:15:12,378 千蔭流の美しい書物の本を。 183 00:15:12,378 --> 00:15:14,380 女子にも受けそうな。 184 00:15:14,380 --> 00:15:17,683 女子に? 書物でかい? 185 00:15:17,683 --> 00:15:19,619 はい。 186 00:15:19,619 --> 00:15:23,322 美しい書は 眺めるだけで楽しいですし➡ 187 00:15:23,322 --> 00:15:27,860 世には 趣あふれる書を書きたい女子は 大勢おります。 188 00:15:27,860 --> 00:15:31,731 更に言えば 本当は学問をなしたい女子は➡ 189 00:15:31,731 --> 00:15:34,534 数多おるのではないかと考えました。 190 00:15:34,534 --> 00:15:39,205 けど 書物ってなぁ どうも 女子には入りにくい。 191 00:15:39,205 --> 00:15:42,542 せっかく うちが書物をやるんです。 192 00:15:42,542 --> 00:15:47,213 女子の客を取りにいくってなぁ 悪くねえと思いまして。 193 00:15:47,213 --> 00:15:52,084 どうか お願い申し上げます。 194 00:15:52,084 --> 00:15:56,222 (せみの声) 195 00:15:56,222 --> 00:16:02,495 (足音) 196 00:16:02,495 --> 00:16:06,365 (つよ)こないだ 悪かったね。 197 00:16:06,365 --> 00:16:09,669 瑣吉が おかしなこと言いだして。 198 00:16:09,669 --> 00:16:14,507 なかなか うまく返しただろ? 199 00:16:14,507 --> 00:16:17,009 …うまかったよ。 200 00:16:17,009 --> 00:16:21,881 旦那様は 何一つ気付かないほどにね。 201 00:16:21,881 --> 00:16:23,883 フッ…。 202 00:16:29,188 --> 00:16:34,060 このままじゃ あの子は 一生 これっぽっちも➡ 203 00:16:34,060 --> 00:16:37,864 あんたの気持ちに気付かないよ。 204 00:16:37,864 --> 00:16:41,667 あんたは それでいいのかい? 205 00:16:52,211 --> 00:17:01,020 (せみの声) 206 00:17:01,020 --> 00:17:05,291 気付かれたとこで…➡ 207 00:17:05,291 --> 00:17:10,129 いいことなんて 何もねえじゃねえか。 208 00:17:10,129 --> 00:17:14,667 蔦重が 同じ気持ちなわけもねえし➡ 209 00:17:14,667 --> 00:17:19,005 仕事もやりにくくなるだけだし。 210 00:17:19,005 --> 00:17:22,875 耐えられんのかい? それで。 211 00:17:22,875 --> 00:17:30,716 (せみの声) 212 00:17:30,716 --> 00:17:35,021 俺の今の望みは➡ 213 00:17:35,021 --> 00:17:41,327 綺麗な抜け殻だけが 残ることさ。➡ 214 00:17:41,327 --> 00:17:47,867 せみは どんな気持ちだったか 分かんないけど➡ 215 00:17:47,867 --> 00:17:55,541 抜け殻だけは ずらずら残ってて。 216 00:17:55,541 --> 00:17:58,878 それは➡ 217 00:17:58,878 --> 00:18:07,586 とびきり綺麗だったり 面白かったりして➡ 218 00:18:07,586 --> 00:18:14,360 誰かの心を癒やす。 219 00:18:14,360 --> 00:18:21,834 2人で いい抜け殻だけを残せんなら➡ 220 00:18:21,834 --> 00:18:26,539 俺は 今 それだけでいいんだ。 221 00:18:32,178 --> 00:18:35,514 それにさ➡ 222 00:18:35,514 --> 00:18:43,856 この気持ちも いつかは 消えてなくなんじゃねえかとも思うんだ。 223 00:18:43,856 --> 00:18:46,525 おきよがいた時は➡ 224 00:18:46,525 --> 00:18:51,030 ほんとに忘れてたわけだし。 225 00:18:53,399 --> 00:18:57,870 はあ… ごめんねぇ 歌。 226 00:18:57,870 --> 00:19:00,639 おつよさんが 謝るようなことじゃねえだろ。 227 00:19:00,639 --> 00:19:04,844 私が悪いよ! あんな朴念仁に生んじまって! 228 00:19:06,445 --> 00:19:15,154 おつよさんが悪いわけでも 蔦重が悪いわけでもねえし➡ 229 00:19:15,154 --> 00:19:19,659 ありがてえよ。 230 00:19:19,659 --> 00:19:28,467 聞いてもらえるってなぁ 心が軽くなるもんだな。 231 00:19:37,176 --> 00:19:41,313 私 来るよ もっと。 232 00:19:41,313 --> 00:19:43,849 いいよ。 忙しいだろ? 店。 233 00:19:43,849 --> 00:19:48,154 遠慮してんじゃないよ! おっかさんの前で! 234 00:19:52,324 --> 00:19:55,227 あんたは あの子の義理の弟。 235 00:19:55,227 --> 00:19:58,697 だったら➡ 236 00:19:58,697 --> 00:20:02,501 あんたも 私の息子さ。 237 00:20:09,208 --> 00:20:12,711 …じゃあ➡ 238 00:20:12,711 --> 00:20:16,882 よろしく頼むよ おっかさん。 239 00:20:16,882 --> 00:20:19,085 フフフフ…。 240 00:20:21,053 --> 00:20:22,988 (つよ)フフフ。 241 00:20:22,988 --> 00:20:24,924 (足音) 242 00:20:24,924 --> 00:20:28,360 おや どうしたんだい? 243 00:20:28,360 --> 00:20:30,896 旦那様が お戻りくださいって。 244 00:20:30,896 --> 00:20:33,365 できれば 歌さんも一緒に。 245 00:20:33,365 --> 00:20:36,168 俺も? はい。 246 00:20:42,108 --> 00:20:47,379 (てい)行きましょう。 (つよ)医者は… 医者はいいって。 247 00:20:47,379 --> 00:20:51,584 ほんとに 大事ないから! 何ともない… 何ともないって! 248 00:20:51,584 --> 00:20:54,487 怖くない。 怖くない! 249 00:20:54,487 --> 00:20:56,489 怖いよ…。 250 00:21:02,528 --> 00:21:05,564 もう 大変でしたよ。 251 00:21:05,564 --> 00:21:07,700 ですよね。 252 00:21:07,700 --> 00:21:10,202 こんな錦絵 見たことねえです。 253 00:21:10,202 --> 00:21:15,541 まぁ えれえもんが生まれちまいましたよ。 254 00:21:15,541 --> 00:21:17,476 歌。 255 00:21:17,476 --> 00:21:20,212 こうすっと もっと すごいんだぜ。 256 00:21:20,212 --> 00:21:22,515 ん? ちょいと。 257 00:21:26,552 --> 00:21:29,054 わあ…。 258 00:21:29,054 --> 00:21:30,990 な? 259 00:21:30,990 --> 00:21:34,793 (歌麿)まるで 浮き上がって見えるよ。 260 00:21:37,229 --> 00:21:42,067 あとは どう売るかだなぁ。 261 00:21:42,067 --> 00:21:44,737 どう売るかって? 262 00:21:44,737 --> 00:21:51,544 えれえもんには えれえもんに ふさわしい お披露目があるってもんだ。 263 00:21:59,251 --> 00:22:02,521 (松平定信) 本多らが一派を作り始めておる? 264 00:22:02,521 --> 00:22:06,325 (水野為長)はっ。 「海国兵談」を絶版としたことをタネに➡ 265 00:22:06,325 --> 00:22:11,197 殿に任せておくと 本当に 江戸の海に オロシャの船が入ってきて➡ 266 00:22:11,197 --> 00:22:13,199 国が滅びてしまう。 267 00:22:13,199 --> 00:22:17,336 殿は 間違った判断ばかりなさると。 268 00:22:17,336 --> 00:22:22,041 もっと 冷や飯を食わされたいというのか! 269 00:22:22,041 --> 00:22:25,077 本多様は 一橋様に近づいているという➡ 270 00:22:25,077 --> 00:22:27,847 噂もございます。 271 00:22:27,847 --> 00:22:30,216 一橋に? 272 00:22:30,216 --> 00:22:33,886 (為長)殿が 今のように 思うままに政ができるのは➡ 273 00:22:33,886 --> 00:22:36,722 「将軍補佐」であることが 大きゅうございます。➡ 274 00:22:36,722 --> 00:22:41,227 しかしながら それは 上様が幼いが故に作られたお役目。 275 00:22:41,227 --> 00:22:46,565 殿が「将軍補佐」のお役目を御免となる日も そう遠くはない。➡ 276 00:22:46,565 --> 00:22:53,272 恐れながら 何か手を打たれた方が よろしいのではございませぬか? 277 00:22:55,241 --> 00:23:01,013 本日は 弊屋へお運びいただき 光栄の至り。 278 00:23:01,013 --> 00:23:03,682 厚く御礼申し上げます。 279 00:23:03,682 --> 00:23:07,553 (徳川宗睦) そなたに 折り入ってと言われてはな。➡ 280 00:23:07,553 --> 00:23:09,555 話とは何じゃ? 281 00:23:09,555 --> 00:23:13,025 はっ。 以前より ご相談いただいておりました➡ 282 00:23:13,025 --> 00:23:15,060 米切手の件。 283 00:23:15,060 --> 00:23:18,898 御公儀より 正式に 発行を許す運びと相成りましたので➡ 284 00:23:18,898 --> 00:23:21,200 お知らせいたしたく。 285 00:23:21,200 --> 00:23:23,135 はあ…。 286 00:23:23,135 --> 00:23:26,705 まこと ありがたい。 287 00:23:26,705 --> 00:23:30,342 当家も なかなかに財政が厳しくてな。 288 00:23:30,342 --> 00:23:36,548 正しき世に戻すのは 苦難の道のりにございます。 289 00:23:46,926 --> 00:23:53,899 私としては すぐにも お認めしたかったのでございますが➡ 290 00:23:53,899 --> 00:23:58,237 一橋様が 横槍を入れてこられ➡ 291 00:23:58,237 --> 00:24:01,140 いささか 時が かかり。 292 00:24:01,140 --> 00:24:03,075 一橋が? 293 00:24:03,075 --> 00:24:10,816 私が 「将軍補佐」をお役御免になる日も そう遠くはございません。 294 00:24:10,816 --> 00:24:16,021 さすれば かように事を決することも 難しくなりますゆえ。 295 00:24:20,859 --> 00:24:27,333 そのころ 城中では 家斉様のご嫡男 竹千代様がご誕生。 296 00:24:27,333 --> 00:24:34,106 ご嫡男誕生とのこと まことに おめでとうございます! 297 00:24:34,106 --> 00:24:36,075 (徳川家斉)うむ。 298 00:24:36,075 --> 00:24:41,714 大名たちは 我先にと駆けつけ 祝いの品を贈っておりました。 299 00:24:41,714 --> 00:24:45,584 (一橋治済)おお これは 越中守。➡ 300 00:24:45,584 --> 00:24:49,588 忙しいのに 嬉しいことじゃ。 301 00:24:49,588 --> 00:24:52,224 無理をせずとも よかったのだぞ。 302 00:24:52,224 --> 00:24:59,565 徳川にとりまして また 私にとりまして これほどの喜びがございますまい。 303 00:24:59,565 --> 00:25:05,004 上様 一橋様。 304 00:25:05,004 --> 00:25:11,176 此度は お世継ぎのご誕生 まこと おめでとうございます。 305 00:25:11,176 --> 00:25:18,317 (せみの声) 306 00:25:18,317 --> 00:25:23,155 こちらが 私よりのお祝いの品にございます。 307 00:25:23,155 --> 00:25:27,326 越中 それは? 308 00:25:27,326 --> 00:25:30,028 辞職願にございます。 309 00:25:30,028 --> 00:25:33,332 (家斉)…まことか? 310 00:25:33,332 --> 00:25:40,539 将軍補佐と奥勤め 更に 勝手掛のお役目を免じていただきたく。 311 00:25:43,542 --> 00:25:46,044 そうか。 312 00:25:46,044 --> 00:25:48,881 しかし 何故 急に? 313 00:25:48,881 --> 00:25:54,753 これ以降は 老中のお役目に つとめとうございます。 314 00:25:54,753 --> 00:25:59,591 正直に申せば 少々 疲れておるところもございます。 315 00:25:59,591 --> 00:26:02,294 (家斉)分かった。 では…。 316 00:26:02,294 --> 00:26:06,298 (宗睦)上様 お待ちくだされ。 317 00:26:14,673 --> 00:26:19,545 恐れながら 申し上げます。 318 00:26:19,545 --> 00:26:24,850 市中の風紀や朝廷 武家の心得の徹底➡ 319 00:26:24,850 --> 00:26:29,021 いまだ 先行きの見えぬものは 数多ございます。➡ 320 00:26:29,021 --> 00:26:35,694 加えて 先年より 異国の船が諸国の沿岸に 姿を現すようになっており➡ 321 00:26:35,694 --> 00:26:40,032 国の守りも見直さなければならぬところ。 322 00:26:40,032 --> 00:26:46,338 越中のほかの誰が この難しい形勢を乗り切れるかと。 323 00:26:46,338 --> 00:26:50,209 尾張としては 承服しかねまする。 324 00:26:50,209 --> 00:26:53,712 しかし 越中は疲れたと言うておる。 325 00:26:53,712 --> 00:26:57,349 然様な越中守の甘え➡ 326 00:26:57,349 --> 00:27:00,152 聞き入れずとも よろしいかと。 327 00:27:00,152 --> 00:27:03,989 しかし 奥勤めだけは 解いてやってもよいのではないか?➡ 328 00:27:03,989 --> 00:27:06,992 奥は 難しい形勢には関わりなかろう! 329 00:27:08,660 --> 00:27:11,163 (宗睦)見事な読みであったな。 330 00:27:11,163 --> 00:27:15,667 奥勤めだけは外せと仰せとは。 331 00:27:17,669 --> 00:27:23,008 私が 大奥に口を出すのが よほど お嫌なのでございましょう。 332 00:27:23,008 --> 00:27:26,845 しかし そこは外されて まこと 大事ないのか? 333 00:27:26,845 --> 00:27:31,316 老中による奥勤めそのものを 廃する向きで進めましょうかと。 334 00:27:31,316 --> 00:27:39,024 すると そなたのみが「将軍補佐」として ただ一人 奥に関われるということか。 335 00:27:39,024 --> 00:27:40,959 はい。 336 00:27:40,959 --> 00:27:46,765 此度のご尽力 心より御礼申し上げまする。 337 00:27:55,574 --> 00:27:58,577 よろしくお願いします。 338 00:28:00,279 --> 00:28:03,815 では。 一方 市中では➡ 339 00:28:03,815 --> 00:28:06,485 「人相見」なるものが大流行り。 340 00:28:06,485 --> 00:28:09,521 これに目を付けた蔦重は…。 341 00:28:09,521 --> 00:28:13,225 人相見か。 はあ~! 342 00:28:16,161 --> 00:28:19,998 さあさあ 皆様 いらっしゃいませ! 343 00:28:19,998 --> 00:28:21,934 今 評判の人相見➡ 344 00:28:21,934 --> 00:28:25,304 大当開運先生は こちらにございます! 人相見だってよ! 345 00:28:25,304 --> 00:28:27,239 いらっしゃいませ いらっしゃいませ! 346 00:28:27,239 --> 00:28:29,841 開運先生が来るってよ! どうぞ お並びくだせえ! 347 00:28:29,841 --> 00:28:31,877 (みの吉)お帰りなさい。 おう。 348 00:28:31,877 --> 00:28:34,680 こちらへ お並びくだせえ。 349 00:28:34,680 --> 00:28:36,615 何だい? これ。 350 00:28:36,615 --> 00:28:40,485 旦那様が頼み込んで 評判の人相見を呼んできたんでさ。 351 00:28:40,485 --> 00:28:44,022 そうすりゃ おのず 店先に列が出来る。➡ 352 00:28:44,022 --> 00:28:48,527 並んでんのは そもそも 相学に興味がある連中。 353 00:28:48,527 --> 00:28:52,331 開運先生 お願いします。 (大当開運)おう。 354 00:28:52,331 --> 00:28:54,833 お願いします。 355 00:28:56,535 --> 00:28:59,338 いかがでしたか? 福相でした! 356 00:28:59,338 --> 00:29:02,341 お~ そりゃ めでてえ! ありがとうございます! 357 00:29:02,341 --> 00:29:05,811 おていさん 「浄き相」。 358 00:29:05,811 --> 00:29:09,147 そんな あなたには 「浄き相」。 359 00:29:09,147 --> 00:29:12,050 ああ 綺麗ですね! でしょう? 360 00:29:12,050 --> 00:29:15,287 必ず買いそうな客を 根こそぎ並ばせたってこと? 361 00:29:15,287 --> 00:29:19,791 へえ。 次の売り出しの折にも また いらしていただきます。 362 00:29:21,493 --> 00:29:24,830 (みの吉)「涼やかな相」「じれったい相」も お楽しみに! 363 00:29:24,830 --> 00:29:26,865 来たか。 364 00:29:26,865 --> 00:29:29,167 どうだ? このお披露目。 365 00:29:29,167 --> 00:29:31,670 たまげた駒下駄東下駄だよ。 366 00:29:31,670 --> 00:29:35,173 人相見に いくら払ったのさ? そんな払っちゃいねえよ。 367 00:29:35,173 --> 00:29:38,076 面白がってくれてよ。 368 00:29:38,076 --> 00:29:40,846 お前も働いてくんねえか? え? 369 00:29:40,846 --> 00:29:44,516 歌麿に会えるってなりゃ 客も大喜び➡ 370 00:29:44,516 --> 00:29:48,220 評判になるってもんだ! ほら! 371 00:29:50,022 --> 00:29:54,526 さあ 皆様! 喜多川歌麿先生がいらっしゃいました! 372 00:29:54,526 --> 00:29:56,461 おおっ! ちょいと…。 373 00:29:56,461 --> 00:29:59,698 今日は特別に 絵をお求めくださった皆様に➡ 374 00:29:59,698 --> 00:30:02,734 直筆で 名入れしてくださるそうですよ! 375 00:30:02,734 --> 00:30:05,570 えっ! 376 00:30:05,570 --> 00:30:08,707 (歌麿)ほんと 蔦重は 商い うまいよなぁ。 377 00:30:08,707 --> 00:30:13,045 所詮 それしかできませんからねぇ。 378 00:30:13,045 --> 00:30:16,081 文も書けなきゃ 絵も描けねえ。 379 00:30:16,081 --> 00:30:21,553 俺にできんのは 作っていただいた品を 目いっぱい 広めることだけ。 380 00:30:21,553 --> 00:30:26,224 そこは 十二分に 払わせてもらいますんで。 381 00:30:26,224 --> 00:30:30,095 じゃあ ありがたく。 おう。 382 00:30:30,095 --> 00:30:33,732 でな もう一つ 話があんだけど。 383 00:30:33,732 --> 00:30:37,569 「十躰」は そのまま続けてくとして➡ 384 00:30:37,569 --> 00:30:42,074 もう一つ 揃いもんを始めるってなぁ ありやなしや? 385 00:30:42,074 --> 00:30:44,009 まだ三躰しか出てねえけど…。 386 00:30:44,009 --> 00:30:46,945 今 市中の美人ってのが流行ってんだよ。 387 00:30:46,945 --> 00:30:52,584 水茶屋とか煎餅屋 あちこちに評判の美人ってのがいて➡ 388 00:30:52,584 --> 00:30:55,087 その娘たちの絵は 間違いなく売れる。 389 00:30:55,087 --> 00:30:57,122 「十躰」 終わってからでいいんじゃねえの? 390 00:30:57,122 --> 00:31:02,894 そうだけど 娘たちを描きゃ その店は大繁盛 市中は活気づく。 391 00:31:02,894 --> 00:31:06,198 こりゃ 江戸のためになるってもんだ。 392 00:31:06,198 --> 00:31:08,867 どうせ もう 入銀 取り付けてんだろ? 393 00:31:08,867 --> 00:31:13,739 バレたか。 仕方中橋。 いつから出してえんだよ? 394 00:31:13,739 --> 00:31:19,211 おっ。 まず 一発目は 新作年明けに どんと出してえんだよ! 395 00:31:19,211 --> 00:31:21,880 どうかしたのかい? 396 00:31:21,880 --> 00:31:30,055 お茶でもと思ったのですが きっと今は お邪魔ですね。 397 00:31:30,055 --> 00:31:31,990 その顔は…。 398 00:31:31,990 --> 00:31:34,226 もういいよ 早く描きてえよ。 399 00:31:34,226 --> 00:31:37,929 描きてえよな? …描きてえのか? 400 00:31:43,735 --> 00:31:47,539 背景…。 401 00:31:54,913 --> 00:31:57,916 背景…。 402 00:32:03,622 --> 00:32:08,560 (千蔭)背景は黒 文字は白で? 403 00:32:08,560 --> 00:32:14,399 はい。 その方が 文字が より鮮やかに彫り出せますかと。 404 00:32:14,399 --> 00:32:17,702 それは 石摺みたいにってことかい? 405 00:32:17,702 --> 00:32:21,206 けど 余計に金はかかんねえかい? 406 00:32:21,206 --> 00:32:27,546 いや 多少かかっても その方がいいんじゃねえでしょうか? 407 00:32:27,546 --> 00:32:30,048 近頃 見ねえですし。 408 00:32:30,048 --> 00:32:32,884 ありがとう存じます。 409 00:32:32,884 --> 00:32:36,555 けど よく思いついたねぇ。 410 00:32:36,555 --> 00:32:40,358 雲母摺を見て 思いつきまして。 411 00:32:40,358 --> 00:32:44,729 歌さんと旦那様の錦絵の おかげにございます。 412 00:32:44,729 --> 00:32:47,365 はあ そうだったか。 413 00:32:47,365 --> 00:32:50,569 歌に 礼 言わねえとな。 414 00:32:50,569 --> 00:32:53,472 はい。 415 00:32:53,472 --> 00:32:59,911 程なくして 「源氏物語」の文を抜粋した 千蔭先生の書の本➡ 416 00:32:59,911 --> 00:33:02,180 「ゆきかひふり」も出来上がり➡ 417 00:33:02,180 --> 00:33:04,182 蔦重は それを手に➡ 418 00:33:04,182 --> 00:33:10,689 尾張の書物問屋 永楽屋に 交渉に向かうこととなりました。 419 00:33:10,689 --> 00:33:24,035 ♬~ 420 00:33:24,035 --> 00:33:27,038 ちょいと。 421 00:33:29,341 --> 00:33:32,711 髪結い直した方がよくないかい? 422 00:33:32,711 --> 00:33:36,014 そうか? 423 00:33:42,354 --> 00:33:46,224 考えてみりゃ 初めてだな。 424 00:33:46,224 --> 00:33:50,562 あんた いつも 髪結床に行っちまうからね。 425 00:33:50,562 --> 00:33:54,232 あそこに行きゃ 世間が知れっからな。 426 00:33:54,232 --> 00:33:59,537 まぁ… おとっつあんと おんなじ頭の形だよ。 427 00:34:10,515 --> 00:34:13,852 なあ。 うん? 428 00:34:13,852 --> 00:34:18,723 あれは 嘘なのか? あれって? 429 00:34:18,723 --> 00:34:21,593 昔 夫婦喧嘩したあげく➡ 430 00:34:21,593 --> 00:34:25,030 「てめえは 俺の子じゃねえ」 「私の子じゃねえ」って➡ 431 00:34:25,030 --> 00:34:27,699 2人して 出てったろ? 432 00:34:27,699 --> 00:34:32,337 駿河屋さんから まだ聞かされてないのかい? 433 00:34:32,337 --> 00:34:38,143 まだ? 口が堅いねぇ。 さすがだよ。 434 00:34:38,143 --> 00:34:41,713 …んだよ? 435 00:34:41,713 --> 00:34:47,218 あんたの おとっつあんはさ ちょいと間抜けなとこがあって➡ 436 00:34:47,218 --> 00:34:52,357 博打で タチの悪い借金作っちまったのさ。 437 00:34:52,357 --> 00:34:54,893 で このままじゃ まずいってんで➡ 438 00:34:54,893 --> 00:34:57,796 江戸から 逃げようっていうことになってさ。 439 00:34:57,796 --> 00:35:00,298 うん…。 440 00:35:00,298 --> 00:35:05,503 でも 逃げた先で どんな暮らしになるとも分からない。 441 00:35:05,503 --> 00:35:12,277 あんたは吉原で育ててもらった方が いいんじゃないかって話になって➡ 442 00:35:12,277 --> 00:35:18,783 駿河屋さんに引き取ってもらえるよう 頼み込んだのさ。 443 00:35:21,319 --> 00:35:29,060 でも 借金取りたちは あんた目がけて 吉原まで来ないとも限らない。 444 00:35:29,060 --> 00:35:36,334 で 口が裂けても あれが親だなんて言いたくないように➡ 445 00:35:36,334 --> 00:35:43,208 おとっつあんも色に狂って 私も色に狂ったってことにして➡ 446 00:35:43,208 --> 00:35:46,711 子捨てしたのさ。 447 00:35:48,546 --> 00:35:53,718 …んだよ そんな話だったのかよ。 448 00:35:53,718 --> 00:35:59,057 どんな話だと思ってたんだい? ああ? 449 00:35:59,057 --> 00:36:06,798 俺ゃ 公方様の隠し子で 2人は隠密で… とか➡ 450 00:36:06,798 --> 00:36:10,669 桃太郎だったんじゃねえかとか。 フフ…。 451 00:36:10,669 --> 00:36:14,539 ハッ… ガキの頃だぜ。 452 00:36:14,539 --> 00:36:19,010 こんな しょぼくれた話で悪かったねぇ。 453 00:36:19,010 --> 00:36:22,514 いや いい話だ。 454 00:36:22,514 --> 00:36:25,817 俺が考えてたより よほど いい。 455 00:36:28,386 --> 00:36:30,689 …そうかい。 456 00:36:30,689 --> 00:36:32,891 ああ。 457 00:36:38,863 --> 00:36:41,366 柯理。 458 00:36:46,738 --> 00:36:50,341 あんたは 強い子だよ。 459 00:36:50,341 --> 00:36:53,711 でも 何で そんなに強いかっていったら➡ 460 00:36:53,711 --> 00:36:57,715 そりゃ やっぱり 私が捨てたせいでさ。 461 00:37:00,485 --> 00:37:02,520 ありがた山です。 462 00:37:02,520 --> 00:37:05,156 せいぜい 拝みまさぁ。 463 00:37:05,156 --> 00:37:08,827 ごめんね。 464 00:37:08,827 --> 00:37:13,498 …んだよ 調子狂うじゃねえか。 465 00:37:13,498 --> 00:37:20,271 裏を返しゃ あんたは強くならなきゃ 生きてけなかったんだ。 466 00:37:20,271 --> 00:37:24,175 下を向くな 前を向け➡ 467 00:37:24,175 --> 00:37:32,684 泣いてる暇があったら 人様を笑わせることを考えろって。 468 00:37:32,684 --> 00:37:35,720 それで ここまでやってきて➡ 469 00:37:35,720 --> 00:37:40,191 そりゃ もう あんたは立派だよ。 470 00:37:40,191 --> 00:37:42,694 でもね➡ 471 00:37:42,694 --> 00:37:49,567 大抵の人は そんなに強くもなれなくて 強がるんだ。 472 00:37:49,567 --> 00:37:52,871 口では 平気だって言っても➡ 473 00:37:52,871 --> 00:37:57,375 実のところ 平気じゃなくてね。 474 00:38:08,153 --> 00:38:14,826 そこんとこ もうちょっと気付けて ありがた~く思えるようになったら➡ 475 00:38:14,826 --> 00:38:19,164 もう一段 男っぷりも上がるってもんさ。 476 00:38:19,164 --> 00:38:21,099 はい。 477 00:38:21,099 --> 00:38:25,036 んだよ ババア 親らしいこと言うじゃねえか。 478 00:38:25,036 --> 00:38:31,042 そうかい? じゃあ あんたも 息子らしいことしなよ。 479 00:38:33,678 --> 00:38:37,515 んじゃ 土産 買ってきてやるよ。 480 00:38:37,515 --> 00:38:40,552 尾張の土産 何がいい? 481 00:38:40,552 --> 00:38:46,024 そういや おとっつあんも 尾張の出だったねぇ。 482 00:38:46,024 --> 00:38:50,895 その辺 うろついてたら 土産に頼むよ。 483 00:38:50,895 --> 00:38:53,765 合点承知! 484 00:38:53,765 --> 00:38:58,203 フフッ。 よし! じゃあ 行ってくらぁ。 485 00:38:58,203 --> 00:39:10,281 ♬~ 486 00:39:10,281 --> 00:39:13,151 (せきばらい) 487 00:39:13,151 --> 00:39:16,154 おっかさん。 488 00:39:18,656 --> 00:39:20,858 フッ…。 489 00:39:22,994 --> 00:39:28,867 頼んだよ 重三郎。 490 00:39:28,867 --> 00:39:31,669 おう! 491 00:39:31,669 --> 00:39:57,328 ♬~ 492 00:39:57,328 --> 00:40:00,531 蔦重が西に向かい旅立った そのころ。 493 00:40:00,531 --> 00:40:04,402 帝が 父なる君に「太上天皇」の尊号を➡ 494 00:40:04,402 --> 00:40:06,404 我らに お諮りもなきまま➡ 495 00:40:06,404 --> 00:40:09,040 贈りあそばされる ということにございますか? 496 00:40:09,040 --> 00:40:12,076 閑院宮さんの御病が…。 497 00:40:12,076 --> 00:40:14,912 朝廷が 幕府に断りもなく➡ 498 00:40:14,912 --> 00:40:20,051 「尊号」の一件を 推し進めようとしていたことが発覚。 499 00:40:20,051 --> 00:40:25,356 一橋さんを通じ 将軍さんに おたずねしたところ➡ 500 00:40:25,356 --> 00:40:36,367 越中守も此度は 認めるであろうとの お返事でございました。 501 00:40:38,736 --> 00:40:41,072 尊号の一件は 公のこと。 502 00:40:41,072 --> 00:40:44,742 勝手なご返答をされては困ります。 503 00:40:44,742 --> 00:40:49,247 (治済)これは そなたが上様に上呈した➡ 504 00:40:49,247 --> 00:40:52,250 「御心得之箇条」であるが…➡ 505 00:40:52,250 --> 00:40:54,385 ホレ…➡ 506 00:40:54,385 --> 00:40:56,921 ここに こうある。➡ 507 00:40:56,921 --> 00:41:05,630 六十余州は 朝廷よりの預かりものゆえ 自分のものと思うては ならぬ。 508 00:41:05,630 --> 00:41:11,436 ならば 我らが朝廷に指図することは ハナから筋がおかしい。 509 00:41:11,436 --> 00:41:17,642 そなたが崇める朱子学では 「孝」を大事とする。 510 00:41:22,880 --> 00:41:30,621 先の短い父君に 尊号を贈りたい それは まさに「孝」の心。➡ 511 00:41:30,621 --> 00:41:37,628 此度は そなたは間違いなく 認めるであろうと考えた次第じゃ。 512 00:41:40,732 --> 00:41:44,902 一橋様。 513 00:41:44,902 --> 00:41:49,741 お心遣いは ありがたく存じますが➡ 514 00:41:49,741 --> 00:41:56,080 これは 御公儀の威信を損ないかねぬお話。 515 00:41:56,080 --> 00:42:00,518 これより先は➡ 516 00:42:00,518 --> 00:42:04,322 私に お任せいただきたく! 517 00:42:10,194 --> 00:42:13,531 その後 越中守様は➡ 518 00:42:13,531 --> 00:42:18,202 「尊号」を取りやめるよう 切々と訴えた文書を自らしたため➡ 519 00:42:18,202 --> 00:42:20,872 朝廷に返事。 520 00:42:20,872 --> 00:42:23,541 ほっと一息と思いきや。 521 00:42:23,541 --> 00:42:27,211 ご老中方 ご無礼仕ります! 522 00:42:27,211 --> 00:42:30,014 オロシャの船が やって参りました! 523 00:42:35,086 --> 00:42:39,357 直すとこだけ直して 手 入れりゃ 立派な歌麿作だ。 524 00:42:39,357 --> 00:42:42,727 それで オロシャは まことに我が国を狙っておるのか? 525 00:42:42,727 --> 00:42:44,762 ならぬ! 子ができたのでございます! 526 00:42:44,762 --> 00:42:48,599 俺の借金 百両を…。 歌の女郎絵 50枚で…。 527 00:42:48,599 --> 00:42:50,601 よろしくお願いします。 528 00:42:50,601 --> 00:42:53,237 蔦屋さんのもとで描くだけで よろしいので? 529 00:42:53,237 --> 00:42:55,239 蔦重とは 終わりにします。