1 00:00:02,169 --> 00:00:30,230 ♬~ 2 00:00:30,230 --> 00:00:33,133 あ~ 久しぶり~。 3 00:00:33,133 --> 00:00:39,273 昔 飾ってた お人形が 出てきましたよ~。 4 00:00:39,273 --> 00:00:45,145 懐かしいなあ え~。 あれ? 5 00:00:45,145 --> 00:00:49,483 この人形 何か手に持ってたような 気がしたんだけど…。 6 00:00:49,483 --> 00:00:52,386 何 持ってたかな? 7 00:00:52,386 --> 00:00:57,090 え? 無くしちゃったんですか? ひどい! 8 00:00:57,090 --> 00:01:00,294 えっ? 人形 しゃ… しゃべった!? 9 00:01:02,229 --> 00:01:08,235 4月から5月にかけて 見頃を迎える… 10 00:01:10,904 --> 00:01:19,246 藤はマメ科の植物で小さな花が集まり 垂れ下がるように咲きます。 11 00:01:19,246 --> 00:01:22,249 日本固有の植物です。 12 00:01:23,917 --> 00:01:30,223 他の樹木などに巻きつきながら つるを伸ばし成長します。 13 00:01:32,926 --> 00:01:36,263 藤が「不死」に つながることから➡ 14 00:01:36,263 --> 00:01:40,767 長寿や子孫繁栄の花とも いわれてきました。 15 00:01:43,937 --> 00:01:49,276 芽吹いたばかりの藤の葉で染める 鮮やかな色。 16 00:01:49,276 --> 00:01:58,785 ♬~ 17 00:01:58,785 --> 00:02:04,491 藤のつるを手間暇かけて 織り上げた 藤布。 18 00:02:06,059 --> 00:02:11,264 日本最古の織物の一つと いわれます。 19 00:02:13,233 --> 00:02:16,903 切子の世界では…。 20 00:02:16,903 --> 00:02:20,907 風に揺れる藤浪が…。 21 00:02:24,644 --> 00:02:30,150 藤の奥深い魅力 探っていきましょう。 22 00:02:36,757 --> 00:02:43,263 ♬~ 23 00:02:50,103 --> 00:02:54,107 奈良 春日大社。 24 00:02:58,278 --> 00:03:03,550 4月。 春の神事が行われます。 25 00:03:03,550 --> 00:03:07,220 藤原氏と ゆかりの深い 春日大社には➡ 26 00:03:07,220 --> 00:03:15,529 藤原氏の象徴である 藤の花が さまざまな 文様となり ちりばめられています。 27 00:03:17,564 --> 00:03:21,568 狩衣に浮かぶ 藤巴紋。 28 00:03:27,240 --> 00:03:32,245 巫女の衣を飾るのは 藤棚文。 29 00:03:40,787 --> 00:03:45,092 髪には 藤のかんざし。 30 00:03:53,934 --> 00:03:59,739 春日大社には 藤にまつわる名宝があります。 31 00:03:59,739 --> 00:04:06,213 平安時代 藤原氏が奉納したと 伝えられる 銅鏡です。 32 00:04:06,213 --> 00:04:10,083 神様に奉納する鏡っていうのは➡ 33 00:04:10,083 --> 00:04:14,721 全国いろんなところに たくさん あるんですけども➡ 34 00:04:14,721 --> 00:04:20,227 やはり そこに 藤っていうものを入れたっていうのは➡ 35 00:04:20,227 --> 00:04:25,232 春日大社ならではの意匠だと思います。 36 00:04:28,101 --> 00:04:33,106 こちらは 鎌倉時代に描かれた絵巻。 37 00:04:35,709 --> 00:04:43,216 「春日権現験記」です。 さまざまな場面に 藤が登場します。 38 00:04:46,453 --> 00:04:51,458 本殿の庭に 松に絡まるように咲く藤。 39 00:04:55,595 --> 00:05:01,201 めでたい場面に 藤が描かれています。 40 00:05:01,201 --> 00:05:10,710 つるを伸ばし 上へ上へと伸びていく藤は 藤原一族の繁栄の象徴でもありました。 41 00:05:15,215 --> 00:05:22,088 境内には 長い歴史を見つめ続けてきた 藤があります。 42 00:05:22,088 --> 00:05:27,594 樹齢700年ともいわれる 砂ずりの藤。 43 00:05:30,764 --> 00:05:36,069 近衛家が奉納したという 棚作りの藤です。 44 00:05:39,072 --> 00:05:44,244 4月の初め つぼみが膨らみ始めます。 45 00:05:44,244 --> 00:06:00,694 ♬~ 46 00:06:00,694 --> 00:06:05,565 4月下旬。 藤の花が咲きました。 47 00:06:05,565 --> 00:06:13,273 ♬~ 48 00:06:15,041 --> 00:06:18,245 今日1つ目の壺は… 49 00:06:26,653 --> 00:06:31,157 栃木県足利市にある植物園です。 50 00:06:35,896 --> 00:06:44,571 藤の到来は 薄紅色から始まり 紫 白 黄色と続き➡ 51 00:06:44,571 --> 00:06:49,576 およそ ひとつきにわたる 藤の競演となります。 52 00:06:53,246 --> 00:06:59,252 中でも圧巻なのが 紫の大藤。 53 00:07:04,891 --> 00:07:11,197 かつて この藤は 大きな危機に直面しました。 54 00:07:11,197 --> 00:07:18,071 25年前 足利の市街地にあった植物園は 再開発に伴い➡ 55 00:07:18,071 --> 00:07:21,574 移転を余儀なくされたのです。 56 00:07:26,746 --> 00:07:33,053 植物園のシンボルだった大藤も 移植の話が持ち上がります。 57 00:07:35,889 --> 00:07:43,697 しかし すでに樹齢130年にもなる 藤の移植は 不可能といわれました。 58 00:07:45,598 --> 00:07:52,906 そこで 白羽の矢が立ったのが 樹医の塚本こなみさんでした。 59 00:08:12,726 --> 00:08:18,732 塚本さんが移植に選んだ方法は 前代未聞でした。 60 00:08:22,202 --> 00:08:28,708 人間が骨折した時に使う 石こうで 幹を固定したのです。 61 00:08:28,708 --> 00:08:35,482 ♬~ 62 00:08:35,482 --> 00:08:41,488 幹に傷がつくと そこから腐り 致命傷になるからでした。 63 00:08:43,723 --> 00:08:48,728 こうして 大藤の移植は成功しました。 64 00:08:53,233 --> 00:09:02,242 現在 藤棚の面積は1,000平方メートル およそ600畳にまで広がりました。 65 00:09:04,677 --> 00:09:12,485 美しい花を咲かせるため 一年中 きめ細かな手入れが行われます。 66 00:09:12,485 --> 00:09:17,924 余分な花ですとか 花の咲いたあとをちょっと見越して➡ 67 00:09:17,924 --> 00:09:21,928 邪魔になる枝だけを ちょっと取ってますね。 68 00:09:26,533 --> 00:09:32,238 大藤の成長を 今も願う塚本さん。 69 00:09:49,222 --> 00:09:54,227 8万房もの花を付ける藤。 70 00:09:58,932 --> 00:10:05,138 さまざまな人の思いに応えるように 咲き誇ります。 71 00:10:10,510 --> 00:10:17,784 あ~ 小さい頃に 親戚のおねえちゃんから もらった 宝箱 出てきましたよ。 72 00:10:17,784 --> 00:10:21,588 この中に きっと あなたに ぴったりなものがありますよ。 73 00:10:21,588 --> 00:10:24,090 まあ うれしい。 74 00:10:25,758 --> 00:10:28,595 ほら これ ハンドバッグ。 75 00:10:28,595 --> 00:10:35,468 ホントかわいい! …って違うでしょ! もっと長いものです! 76 00:10:35,468 --> 00:10:38,238 長いもの…? 77 00:10:38,238 --> 00:10:45,245 ♬~ 78 00:10:46,980 --> 00:10:51,284 東京 江東区… 79 00:10:51,284 --> 00:10:55,288 ここは江戸時代からの藤の名所です。 80 00:10:57,090 --> 00:11:04,297 太鼓橋と藤との取り合わせは 多くの 浮世絵師によって描かれました。 81 00:11:08,568 --> 00:11:15,275 亀戸周辺は 昔から 切子職人の街としても知られています。 82 00:11:19,212 --> 00:11:22,215 目黒祐樹さんも その一人。 83 00:11:44,103 --> 00:11:50,310 ダイヤモンドホイールという研磨工具で ガラスを削っていきます。 84 00:11:57,283 --> 00:12:01,588 藤のつるは 粗めのタッチで削ります。 85 00:12:03,089 --> 00:12:09,095 藤の葉は 押さえて 膨らませて ふっと抜く。 86 00:12:12,765 --> 00:12:17,270 (削る音) 87 00:12:21,240 --> 00:12:28,114 花びらの重なりも 一枚一枚 立体的に浮かび上がらせます。 88 00:12:28,114 --> 00:12:40,126 ♬~ 89 00:12:47,467 --> 00:12:53,172 ガラスに刻まれた 亀戸天神の藤…。 90 00:12:59,279 --> 00:13:07,353 (目黒)風に舞った状態とか 揺らいだ 感覚が とても幻想的っていうか➡ 91 00:13:07,353 --> 00:13:10,556 そういう時に 香りとかもするし➡ 92 00:13:10,556 --> 00:13:14,427 別世界に なんか こうやって 吸い込まれていくような感覚なんで➡ 93 00:13:14,427 --> 00:13:18,431 それをみんなにも見てほしいんで。 94 00:13:20,566 --> 00:13:23,569 今日2つ目の壺は… 95 00:13:33,146 --> 00:13:38,151 ここに 藤の季節を 待ちわびる人がいます。 96 00:13:39,952 --> 00:13:48,161 星名康弘さんは 植物の発する色に 魅せられ 染色の道に進みました。 97 00:13:51,531 --> 00:13:57,537 ガラス瓶に入っているのは さまざまな植物で染めた布。 98 00:14:09,716 --> 00:14:16,889 これは地元の植物園と共同で染めた 草や木の色見本。 99 00:14:16,889 --> 00:14:23,196 毎年 色は増え 現在 91種類を数えるまでになりました。 100 00:14:24,764 --> 00:14:34,040 星名さんが よく染めるのは ガマズミの枝を使った淡い紅色や…➡ 101 00:14:34,040 --> 00:14:40,246 マツヨイグサの葉と茎を使った ねずみ色。 102 00:14:45,251 --> 00:14:52,925 そして春になると 星名さんが心待ちにする色があります。 103 00:14:52,925 --> 00:14:56,229 藤の若葉です。 104 00:15:01,200 --> 00:15:06,205 摘み取ったばかりのフレッシュな葉に こだわります。 105 00:15:23,322 --> 00:15:30,096 ♬~ 106 00:15:30,096 --> 00:15:36,235 葉を煮出し 染める液 染液を作ります。 107 00:15:36,235 --> 00:15:48,581 ♬~ 108 00:15:48,581 --> 00:15:54,287 染めるのは 地元特産の絹織物。 109 00:15:58,925 --> 00:16:03,229 布が かすかに色づいていきます。 110 00:16:05,698 --> 00:16:11,504 発色と色の定着をさせるための媒染液。 111 00:16:11,504 --> 00:16:17,210 つばきの灰を沈殿させた 上澄みを使います。 112 00:16:17,210 --> 00:16:24,083 ♬~ 113 00:16:24,083 --> 00:16:33,092 灰の成分と藤の葉の色素が反応して… 鮮やかな黄色になっていきます。 114 00:16:56,749 --> 00:17:02,321 一年に一度出会う 特別な色…。 115 00:17:02,321 --> 00:17:08,527 若葉のパワーを宿した 鮮やかな藤染です。 116 00:17:10,863 --> 00:17:15,301 は~い 思い出してきましたよ。 117 00:17:15,301 --> 00:17:19,005 君が持っていた長いものって これでしょう? 118 00:17:19,005 --> 00:17:22,208 ちょうどね 肩にフィットするでしょ? 119 00:17:22,208 --> 00:17:26,879 この釣りざお ピッタリ! …って 違う! 違う! 120 00:17:26,879 --> 00:17:31,217 私は 藤のむ・す・め! 121 00:17:31,217 --> 00:17:34,053 あ~ 藤娘! 122 00:17:34,053 --> 00:17:41,260 ♬~ 123 00:17:42,762 --> 00:17:50,770 京都府北部 切り立った断崖が 日本海に向かって突き出た丹後半島。 124 00:17:53,906 --> 00:17:59,378 郷土資料館には 海と山に囲まれた この土地ならではの➡ 125 00:17:59,378 --> 00:18:03,182 民俗資料が展示されています。 126 00:18:07,687 --> 00:18:16,696 ここに 藤のつるから糸を採り 織り上げた 藤布があります。 127 00:18:16,696 --> 00:18:21,200 日本最古の織物の一つといわれています。 128 00:18:23,202 --> 00:18:28,074 一時は途絶えそうになり 「幻の布」とも いわれてきましたが➡ 129 00:18:28,074 --> 00:18:33,079 この地で ひっそり息づいていたのです。 130 00:18:36,716 --> 00:18:40,052 京都府 宮津市 上世屋➡ 131 00:18:40,052 --> 00:18:44,256 藤布が伝承されてきた 集落です。 132 00:18:46,225 --> 00:18:52,231 織っていたのは 70代 80代の女性たち。 133 00:18:57,937 --> 00:19:07,446 昭和49年の映像です。 春 藤のつるを切りに 山に分け入ります。 134 00:19:18,157 --> 00:19:23,162 良い藤糸になる つるだけを 選びます。 135 00:19:24,930 --> 00:19:33,139 ここは標高が高く 綿が取れなかったため 藤布が織られてきたといいます。 136 00:19:34,740 --> 00:19:40,046 厚い皮を剥ぎ 繊維を取り出す仕事。 137 00:19:41,881 --> 00:19:47,186 冬の農閑期には 繊維を糸にしていく仕事。 138 00:19:50,589 --> 00:19:56,095 大変な手間をかけて 藤布が作られていました。 139 00:20:03,169 --> 00:20:09,108 この地に受け継がれてきた 貴重な藤布の普及活動を行っている➡ 140 00:20:09,108 --> 00:20:12,111 井之本 泰さんです。 141 00:20:17,249 --> 00:20:22,088 12年前からは 廃校となった小学校を利用して➡ 142 00:20:22,088 --> 00:20:26,292 藤布の講習会などを行ってきました。 143 00:20:28,260 --> 00:20:34,266 藤布の魅力や 作り方を 多くの人に伝えています。 144 00:21:13,072 --> 00:21:16,275 今日 最後の壺は… 145 00:21:23,249 --> 00:21:27,753 丹後半島は織物の産地です。 146 00:21:30,756 --> 00:21:34,260 明治時代から続く 織り元です。 147 00:21:34,260 --> 00:21:41,267 ちりめんや西陣織など さまざまな絹織物を手がけてきました。 148 00:21:47,806 --> 00:21:54,113 その一角で機を織る 四代目の小石原将夫さん。 149 00:21:59,952 --> 00:22:08,260 織っているのは 藤布です。 絹織物とは全く違う 素朴な布。 150 00:22:10,062 --> 00:22:15,067 藤布に魅せられて30年がたちました。 151 00:22:34,253 --> 00:22:41,260 小石原さんは 上世屋の山奥に通い 藤布を教わりました。 152 00:22:44,263 --> 00:22:51,270 4月。 藤のつるを切りに 山に向かいます。 153 00:23:01,213 --> 00:23:09,221 春から夏にかけて 藤のつるは水分を含み 最も しなやかだといいます。 154 00:23:18,230 --> 00:23:25,571 つるの切り方も教わったとおり 地面から30センチ残して切ります。 155 00:23:25,571 --> 00:23:29,575 次の世代に残すためです。 156 00:23:50,729 --> 00:23:56,268 「赤藤」と呼ばれていたのは 赤みを帯びた しまのある藤で➡ 157 00:23:56,268 --> 00:23:59,972 良い繊維が採れると教わりました。 158 00:24:02,875 --> 00:24:10,749 木づちで たたき 外側の厚い皮をむき 中の繊維を取り出します。 159 00:24:10,749 --> 00:24:18,724 ♬~ 160 00:24:18,724 --> 00:24:23,228 これが後に 糸となります。 161 00:24:28,067 --> 00:24:34,073 繊維に木の灰を よく まぶし あく炊きをします。 162 00:24:37,743 --> 00:24:44,249 繊維の中の不純物をとかし ほぐしやすく するためです。 163 00:24:58,063 --> 00:25:05,204 小石原さんは 女性たちの作業を 目に焼き付けるようにして 学びました。 164 00:25:05,204 --> 00:25:14,213 ♬~ 165 00:25:28,727 --> 00:25:32,731 今度は 川で さらします。 166 00:25:35,067 --> 00:25:38,937 コウバシという 竹で作った道具を指に挟み➡ 167 00:25:38,937 --> 00:25:43,142 繊維をしごき 汚れを落とします。 168 00:25:58,757 --> 00:26:05,864 ♬~ 169 00:26:05,864 --> 00:26:14,573 今度は 藤の繊維をつないで 1本の糸にしていく 藤績みという仕事。 170 00:26:14,573 --> 00:26:21,080 滑らかな糸にするため 結び目を作らない 独特のつなぎ方をします。 171 00:26:25,717 --> 00:26:30,055 つなぎ合わせる糸の先端を2つに分けて➡ 172 00:26:30,055 --> 00:26:33,258 それぞれ 左に よります。 173 00:26:35,227 --> 00:26:41,733 その2本を合わせて 今度は 右に より 1本に。 174 00:27:04,189 --> 00:27:13,198 途方もない時間と 途方もない 手間を重ねて生み出される 藤の糸。 175 00:27:16,201 --> 00:27:23,208 小石原さんは今 藤布をさまざまなものに展開しています。 176 00:27:25,210 --> 00:27:32,084 縦糸に絹を 横糸に藤を織り込んで 帯を作ります。 177 00:27:32,084 --> 00:27:43,095 ♬~ 178 00:28:05,684 --> 00:28:10,188 古代のロマンは現代にも…。 179 00:28:15,194 --> 00:28:21,199 悠久の命を宿す藤布です。 180 00:28:33,178 --> 00:28:36,215 あいにく 藤の花は 無くしちゃったみたいだけど➡ 181 00:28:36,215 --> 00:28:40,886 代わりにね いいものが ありますよ。 182 00:28:40,886 --> 00:28:44,590 まあ きれいな藤のかんざし。 183 00:28:46,692 --> 00:28:51,096 いいね~ よく似合ってるね~。 184 00:28:51,096 --> 00:28:56,201 やっと 藤娘になりました。