1 00:00:34,138 --> 00:00:37,141 (栞子)<目の前に 同じ本で➡ 2 00:00:37,141 --> 00:00:40,144 奇麗なものと 汚れているものがあれば➡ 3 00:00:40,144 --> 00:00:44,148 誰しもが 奇麗な方に 手を伸ばします> 4 00:00:44,148 --> 00:00:48,152 <この本のように 汚れや 染みのある本を➡ 5 00:00:48,152 --> 00:00:50,154 好んで 手に取る人はいません> 6 00:00:50,154 --> 00:00:54,158 <しかし この本は なぜか 奇麗な本以上に➡ 7 00:00:54,158 --> 00:00:58,162 多くの人たちから 求められているのです> 8 00:00:58,162 --> 00:01:01,165 <いったい この本には➡ 9 00:01:01,165 --> 00:01:04,165 どんな秘密が 隠されているのでしょうか?> 10 00:01:13,177 --> 00:01:16,180 (大輔)うわっ! (藤波)ハハハ。 化け物か? 11 00:01:16,180 --> 00:01:19,183 (藤波)朝から 精が出るね 大輔君。 (大輔)藤波さん。 12 00:01:19,183 --> 00:01:22,186 急に 本が読みたくなっちゃってさ。 13 00:01:22,186 --> 00:01:24,188 それにしても くたびれた本ばかりだね。 14 00:01:24,188 --> 00:01:26,190 新しい本 ないの? ここ 古本屋なんで。 15 00:01:26,190 --> 00:01:28,192 そっか。 ≪(栞子)五浦さん。 午後から➡ 16 00:01:28,192 --> 00:01:30,194 宅買いに 付き合ってもらっても いいでしょうか? 17 00:01:30,194 --> 00:01:33,130 宅買い? (栞子)はい。➡ 18 00:01:33,130 --> 00:01:35,132 お客さまの自宅に 出張して 本を買い取るんです。 19 00:01:35,132 --> 00:01:37,134 分かりました。 20 00:01:37,134 --> 00:01:40,137 あっ。 そういえば 今日 志田さんは? 21 00:01:40,137 --> 00:01:42,139 それが 昨日から まったく 連絡 つかないんですよ。 22 00:01:42,139 --> 00:01:44,141 えっ? 古本 求めに➡ 23 00:01:44,141 --> 00:01:47,144 あちこち 出回る人ですから まあ 心配ないと 思うんですけどね。 24 00:01:47,144 --> 00:01:50,147 (藤波)うん。 ≪(奈緒)キャー! 25 00:01:50,147 --> 00:01:55,152 (藤波)何? ゴー。 怖い。 26 00:01:55,152 --> 00:01:57,154 あっ。 どうしたんですか? (奈緒)志田さんが。 27 00:01:57,154 --> 00:01:59,156 えっ? (藤波)あっ。 28 00:01:59,156 --> 00:02:01,156 (奈緒)志田さん。 29 00:02:06,163 --> 00:02:09,166 ああ。 志田さん! 30 00:02:09,166 --> 00:02:12,169 (藤波)死んでるのか? 早く 救急車を! 31 00:02:12,169 --> 00:02:14,169 (栞子)はい。 32 00:02:16,173 --> 00:02:19,176 (志田)実に 申し訳ない。 (藤波)単なる 二日酔いか! 33 00:02:19,176 --> 00:02:23,180 もう 心配 かけないでくださいよ。 [TEL](シャッター音) 34 00:02:23,180 --> 00:02:25,182 (文也)最高。 (奈緒)やめなよ。➡ 35 00:02:25,182 --> 00:02:27,184 子供じゃないんだから。 (藤波)ゆとりか! 36 00:02:27,184 --> 00:02:29,186 (文也)うるさいなぁ。 それで 志田さん。➡ 37 00:02:29,186 --> 00:02:31,205 昨日 何があったの? 38 00:02:31,205 --> 00:02:34,124 それがさ 全然 覚えてないんだよ。 39 00:02:34,124 --> 00:02:37,127 昨日 横浜で 古本を仕入れた 帰りに➡ 40 00:02:37,127 --> 00:02:42,132 大船で バーに入ったところまでは 覚えてんだけどなぁ。 41 00:02:42,132 --> 00:02:46,136 で その本は? えっ? 42 00:02:46,136 --> 00:02:52,142 あれ? なあ? こんぐらいのさ 紙袋 なかったか? 43 00:02:52,142 --> 00:02:54,144 あれ? (奈緒)なかったけど。 44 00:02:54,144 --> 00:02:59,149 ちょっ。 何だ? これ。 45 00:02:59,149 --> 00:03:02,152 おい。 これ 何だと思う? 46 00:03:02,152 --> 00:03:05,155 もしかして 志田さん 昨日 酔ってるときに➡ 47 00:03:05,155 --> 00:03:09,159 仕入れた本 全部 誰かに 売ってしまったんじゃ? 48 00:03:09,159 --> 00:03:11,161 ハァー。 ドンマイですよ。 一応 1,000円➡ 49 00:03:11,161 --> 00:03:13,163 もうけてることだし。 ねっ? バカ! 50 00:03:13,163 --> 00:03:16,166 そん中にはな すっげえ 高価な本が 入ってんだよ! 51 00:03:16,166 --> 00:03:18,168 えっ? (奈緒)どこ 行くの? 52 00:03:18,168 --> 00:03:20,170 決まってんだろ。 俺から 本 買ったやつを捜すんだ。 53 00:03:20,170 --> 00:03:23,173 (藤波)どうやって? 昨日 俺が取った 行動をたどる。 54 00:03:23,173 --> 00:03:25,175 そしたら 見つかんだろ。 どけ。 55 00:03:25,175 --> 00:03:27,175 (文也)でも 記憶がないんでしょ? 56 00:03:30,180 --> 00:03:33,117 だが ヒントはある。 57 00:03:33,117 --> 00:03:39,123 金メダル。 星形のスタンプ。 そして モモンガ。 58 00:03:39,123 --> 00:03:42,123 これ ヒントになりますかね? 59 00:03:44,128 --> 00:03:46,128 たこ。 60 00:03:49,133 --> 00:03:52,136 志田さん 本 買い戻せるといいですね。 61 00:03:52,136 --> 00:03:57,136 ええ。 あっ。 そこを 右です。 あっ はい。 62 00:03:59,143 --> 00:04:03,147 お客さんの家 高野の住宅街なんですよね? 63 00:04:03,147 --> 00:04:06,150 あの辺り 山を ぐるっと 回らないといけないんで➡ 64 00:04:06,150 --> 00:04:09,153 ホント 車だと 行きづらいんですよねぇ。 65 00:04:09,153 --> 00:04:11,153 そうですね。 66 00:04:22,166 --> 00:04:25,166 (チャイム) 67 00:04:27,171 --> 00:04:33,110 ビブリア古書堂の 篠川です。 ご本を 買い取りに参りました。 68 00:04:33,110 --> 00:04:38,115 (聡子)玉岡です。 本日は 突然 申し訳ありません。➡ 69 00:04:38,115 --> 00:04:42,119 3カ月前に 父が亡くなりました。➡ 70 00:04:42,119 --> 00:04:46,123 それで 家を売って マンションに 越すことにしたんです。➡ 71 00:04:46,123 --> 00:04:52,129 この際ですから 父の蔵書を 処分しようと思って。➡ 72 00:04:52,129 --> 00:04:55,132 それで ビブリアさんに。 73 00:04:55,132 --> 00:04:59,136 あの。 これって 全部 同じ人が描いた 絵ですか? 74 00:04:59,136 --> 00:05:01,138 (聡子)父が 趣味で 描いたものです。 75 00:05:01,138 --> 00:05:04,141 趣味にしては お上手ですね。 76 00:05:04,141 --> 00:05:09,146 (聡子)こちらが 父の書斎になります。 77 00:05:09,146 --> 00:05:12,146 (鍵の開く音) (聡子)どうぞ。 78 00:05:17,154 --> 00:05:20,157 貴重な本が たくさん ありますね。 そうなんですか。 79 00:05:20,157 --> 00:05:24,161 例えば この 中原 中也の 『在りし日の歌』とか。 80 00:05:24,161 --> 00:05:28,165 こっちにある 池波 正太郎の 直木賞 受賞作 『錯乱』も➡ 81 00:05:28,165 --> 00:05:33,103 今では なかなか 手に入れることができません。 82 00:05:33,103 --> 00:05:35,105 あれ? どうかしたんですか? 83 00:05:35,105 --> 00:05:38,108 夏目 漱石。 志賀 直哉。 太宰 治。 84 00:05:38,108 --> 00:05:42,112 お父さまは 主に 純文学や 詩集を お読みになっていたようですが➡ 85 00:05:42,112 --> 00:05:45,115 ここにある 数冊だけ 大衆小説なんですよ。 86 00:05:45,115 --> 00:05:48,118 (聡子)それらは 最近 私が購入した 本なんです。 87 00:05:48,118 --> 00:05:51,121 ああ。 それで。 (聡子)篠川さんの➡ 88 00:05:51,121 --> 00:05:56,126 ご指摘のとおり 父は 純文学や 詩集を 好んでおりまして➡ 89 00:05:56,126 --> 00:05:59,129 中でも 特に 宮沢 賢治が。 90 00:05:59,129 --> 00:06:02,132 本当ですね。 とても 充実しています。 91 00:06:02,132 --> 00:06:07,137 (聡子)今回は これ以外の本の 買い取りを お願いいたします。 92 00:06:07,137 --> 00:06:10,140 かしこまりました。 93 00:06:10,140 --> 00:06:15,145 (聡子)それから もう一つ お願いが。➡ 94 00:06:15,145 --> 00:06:22,152 実は 昨日 この書斎から 父の本が 盗まれました。➡ 95 00:06:22,152 --> 00:06:25,155 私 町内会長を やっておりまして➡ 96 00:06:25,155 --> 00:06:28,158 昨日は 町のイベントに 出ておりました。➡ 97 00:06:28,158 --> 00:06:32,095 そこで たまたま 人づてに 聞いたんです。 98 00:06:32,095 --> 00:06:36,099 (聡子)あなたが 推理力に たけていると。 99 00:06:36,099 --> 00:06:38,101 えっ? 篠川さん。 100 00:06:38,101 --> 00:06:42,101 その犯人を 捜してはいただけないでしょうか? 101 00:06:46,109 --> 00:06:56,109 ♬~ 102 00:08:59,142 --> 00:09:01,144 (聡子)まずは これを ご覧ください。 103 00:09:01,144 --> 00:09:03,146 ああ。 うん? 104 00:09:03,146 --> 00:09:06,149 『春と修羅』 何とかスケッチ。 105 00:09:06,149 --> 00:09:09,152 『心象スケッチ』です。 宮沢 賢治の詩集で➡ 106 00:09:09,152 --> 00:09:13,156 大正 13年に 関根書店から 刊行された 初版本です。 107 00:09:13,156 --> 00:09:16,159 宮沢 賢治は 多くの作品を 残していますが➡ 108 00:09:16,159 --> 00:09:19,162 生前に刊行されたのは この 『春と修羅』と➡ 109 00:09:19,162 --> 00:09:22,165 『注文の多い料理店』だけなんです。 しかも➡ 110 00:09:22,165 --> 00:09:27,170 どちらも 自費出版に近い形で 当時は ほとんど 売れず➡ 111 00:09:27,170 --> 00:09:30,173 作者自身が かなり 冊数を引き取ったようです。 112 00:09:30,173 --> 00:09:32,175 私の 大好きな作品なんです。 113 00:09:32,175 --> 00:09:35,178 父も とりわけ この本を 好んでおりまして➡ 114 00:09:35,178 --> 00:09:39,182 初版本は 2冊 所持しておりました。 115 00:09:39,182 --> 00:09:41,184 2冊? 50年前に➡ 116 00:09:41,184 --> 00:09:44,187 父が 手に入れたのが そちらの本で➡ 117 00:09:44,187 --> 00:09:48,191 もう1冊は 25年ほど前に。 118 00:09:48,191 --> 00:09:52,195 これほど 状態のいい本があるのに さらに 購入するということは➡ 119 00:09:52,195 --> 00:09:54,197 2冊目の方が より 奇麗な本なんですか? 120 00:09:54,197 --> 00:09:58,135 いいえ。 状態は よくありません。 えっ? 121 00:09:58,135 --> 00:10:03,140 表紙は 色あせておりますし 汚れも かなり 目立ちます。 122 00:10:03,140 --> 00:10:06,143 それなら どうして わざわざ そんな本を? 123 00:10:06,143 --> 00:10:09,146 おそらく 大変 貴重な本なので 予備に もう1冊➡ 124 00:10:09,146 --> 00:10:12,149 持っておこうとしたんだと 思います。 125 00:10:12,149 --> 00:10:18,155 ただ 父も 私も その状態の悪い方に➡ 126 00:10:18,155 --> 00:10:20,157 むしろ 強い愛着がありました。 127 00:10:20,157 --> 00:10:24,161 いかにも あの本を 愛した人の 手を経てきたようで。 128 00:10:24,161 --> 00:10:27,164 盗まれたのは その1冊なんですか? 129 00:10:27,164 --> 00:10:30,167 はい。 警察には? 130 00:10:30,167 --> 00:10:32,169 届けておりません。 131 00:10:32,169 --> 00:10:36,173 そんな貴重な本なのに どうして? 132 00:10:36,173 --> 00:10:42,179 犯人が 身内にいるからです。 133 00:10:42,179 --> 00:10:46,183 それで できれば 公にはしたくないんです。 134 00:10:46,183 --> 00:10:50,187 犯人は 換金目的で 本を盗んだに 違いありません。 135 00:10:50,187 --> 00:10:56,187 ですから 売られる前に どうしても 取り戻したいんです。 136 00:10:59,129 --> 00:11:05,135 私には 近くに住む 兄と姉が いるんですが➡ 137 00:11:05,135 --> 00:11:13,143 その2人が 昨晩の 9時ごろ 突然 やって来たんです。➡ 138 00:11:13,143 --> 00:11:17,147 おそらく 私が 家を手放そうとしているのを➡ 139 00:11:17,147 --> 00:11:21,151 どこかで 知ったんでしょう。 私の顔を 見るなり➡ 140 00:11:21,151 --> 00:11:24,154 家を売った金を 分けろと 言ってきたんです。 141 00:11:24,154 --> 00:11:28,158 失礼ですが 遺産相続で もめていたんですか? 142 00:11:28,158 --> 00:11:33,163 (聡子)いいえ。 私が この家と 蔵書を 兄と姉は➡ 143 00:11:33,163 --> 00:11:38,168 父の会社を 相続することで 話は まとまってはいました。 144 00:11:38,168 --> 00:11:42,172 なので はっきりと 断ったんですが。 145 00:11:42,172 --> 00:11:47,177 結局 30分ほどして ようやく 帰ってもらえました。 146 00:11:47,177 --> 00:11:50,180 その直後のことです。➡ 147 00:11:50,180 --> 00:11:54,184 書斎に行ったら 『春と修羅』が 消えていたんです。➡ 148 00:11:54,184 --> 00:11:57,204 たぶん 当ての外れた 兄か姉の どちらかが➡ 149 00:11:57,204 --> 00:12:01,124 盗んでいったんだと思います。 ちなみに ごきょうだいが➡ 150 00:12:01,124 --> 00:12:03,126 来られる前に 盗まれたという 可能性は ないんですか? 151 00:12:03,126 --> 00:12:06,129 それは ありません。 ちょうど 私は➡ 152 00:12:06,129 --> 00:12:11,134 2人が来る直前まで 書斎を 整理しておりました。➡ 153 00:12:11,134 --> 00:12:14,137 その時点では 確かに 本は ありましたから➡ 154 00:12:14,137 --> 00:12:18,141 2人がいる間に 盗まれたことに 間違いはないんです。 155 00:12:18,141 --> 00:12:21,144 でも ずっと 話し合ってたんですよね? 156 00:12:21,144 --> 00:12:24,147 だったら 2人に 盗むチャンスは ないんじゃ? 157 00:12:24,147 --> 00:12:29,152 それが 話の途中で 2人とも それぞれ 数分ほど➡ 158 00:12:29,152 --> 00:12:31,154 席を外しているんです。 159 00:12:31,154 --> 00:12:33,156 泥棒の可能性は 考えられないんですか? 160 00:12:33,156 --> 00:12:38,161 (聡子)書斎の窓は 全て 内側から 鍵が掛けられたままでしたし➡ 161 00:12:38,161 --> 00:12:42,165 ドアの暗証番号を 知っているのは 家族だけですから➡ 162 00:12:42,165 --> 00:12:45,168 泥棒による 犯行とは 考えられません。 163 00:12:45,168 --> 00:12:48,171 だったら もう その2人の どっちかで 決まりじゃないですか。 164 00:12:48,171 --> 00:12:50,173 ねえ? そうなんです。➡ 165 00:12:50,173 --> 00:12:55,178 それで 私も すぐに 2人に 電話をして 問い詰めたんですが➡ 166 00:12:55,178 --> 00:13:00,116 「そんなもの 知らない」って 逆に 怒鳴り返されてしまって。 167 00:13:00,116 --> 00:13:06,122 ですから 確かな証拠でも ないかぎり。 168 00:13:06,122 --> 00:13:10,126 あの。 幾つか 質問させてもらってもいいですか? 169 00:13:10,126 --> 00:13:12,128 どうぞ。 そのとき➡ 170 00:13:12,128 --> 00:13:14,130 お二人は どんな服装でしたか? 171 00:13:14,130 --> 00:13:17,133 (聡子)兄は ジーパンに 薄手のセーター。➡ 172 00:13:17,133 --> 00:13:21,137 姉は ワンピースに ロングコートだったと思います。 173 00:13:21,137 --> 00:13:23,139 あと どうしても 分からないことが➡ 174 00:13:23,139 --> 00:13:27,143 一つだけ あります。 なぜ 犯人は➡ 175 00:13:27,143 --> 00:13:32,148 これほどの 奇麗な本があるのに わざわざ 状態の悪い➡ 176 00:13:32,148 --> 00:13:35,151 『春と修羅』を 盗んでいったのでしょうか? 177 00:13:35,151 --> 00:13:41,157 兄たちは 父が 2冊目の 『春と修羅』を 購入する以前に➡ 178 00:13:41,157 --> 00:13:44,160 家を出ていました。 179 00:13:44,160 --> 00:13:48,164 ですから 2冊 存在するということを➡ 180 00:13:48,164 --> 00:13:51,167 知らなかったはずです。 確かに。 181 00:13:51,167 --> 00:13:54,170 1冊しか ないと思えば 2冊目を 探すことはしませんからね。 182 00:13:54,170 --> 00:13:57,190 でも 貴重な本だということぐらいは➡ 183 00:13:57,190 --> 00:13:59,109 知っていたはずなので➡ 184 00:13:59,109 --> 00:14:04,114 金銭目的で 盗んだことに 間違いはないと思います。 185 00:14:04,114 --> 00:14:06,116 何か 分かりましたか? 186 00:14:06,116 --> 00:14:11,121 ああ。 すみません。 今の情報だけでは。 187 00:14:11,121 --> 00:14:14,124 玉岡さん。 もし よかったら➡ 188 00:14:14,124 --> 00:14:17,127 一度 お兄さんたちに 直接 話を 聞かせてもらってもいいですか? 189 00:14:17,127 --> 00:14:20,130 そうしていただければ 助かります。 190 00:14:20,130 --> 00:14:24,130 手はずは 私の方で 整えますので。 191 00:14:29,139 --> 00:14:31,141 (一郎)2人は 私が 犯人だと 思ってるんですよね? 192 00:14:31,141 --> 00:14:33,143 いや。 そういうわけでは。 (一郎)いや。 193 00:14:33,143 --> 00:14:36,146 隠さなくてもいいですよ。 聡子から 疑われるのも➡ 194 00:14:36,146 --> 00:14:40,150 仕方ありません。 私は えらく 嫌われてますから。 195 00:14:40,150 --> 00:14:45,155 私と 聡子は 今でこそ 仲が悪いですが➡ 196 00:14:45,155 --> 00:14:49,159 子供のころは 違ったんですよ。 聡子とは 一緒に 本を読んで。 197 00:14:49,159 --> 00:14:55,165 それこそ 『春と修羅』の初版本を 一緒に暗唱したもんです。 198 00:14:55,165 --> 00:14:57,133 暗唱? 例えば➡ 199 00:14:57,133 --> 00:15:00,003 「わたくしは いま こころから いのる」➡ 200 00:15:00,003 --> 00:15:04,007 「どうか これが 天上の アイスクリームになつて」とかね。 201 00:15:04,007 --> 00:15:08,011 『春と修羅』の中の 「永訣の朝」という詩で➡ 202 00:15:08,011 --> 00:15:12,015 これは 宮沢 賢治が 亡くなった 妹を思って 書いたものです。 203 00:15:12,015 --> 00:15:15,018 だから 聡子が 大事にしてる本なんて➡ 204 00:15:15,018 --> 00:15:19,022 盗めるわけがありませんよ。 205 00:15:19,022 --> 00:15:25,022 まあ 犯人は 長女の 小百合でしょうねぇ。 206 00:15:27,030 --> 00:15:31,034 どうして そう思うんですか? 小百合はね 本が嫌いで➡ 207 00:15:31,034 --> 00:15:35,038 本が 大事な人の気持ちなんて 理解できません。 208 00:15:35,038 --> 00:15:39,042 それに 金に汚い人間で お金のことを 言いだしたのも➡ 209 00:15:39,042 --> 00:15:41,044 小百合ですから。 じゃあ➡ 210 00:15:41,044 --> 00:15:44,047 本が盗まれた あの日の夜 一郎さんは 話の最中に➡ 211 00:15:44,047 --> 00:15:47,050 席を外されたそうですが どちらへ? 212 00:15:47,050 --> 00:15:49,050 トイレに 行っただけです。 213 00:15:51,054 --> 00:15:55,058 あの人が 犯人だと 思うんですけど。 篠川さんは? 214 00:15:55,058 --> 00:15:59,095 私は 違うと思います。 どうしてですか? 215 00:15:59,095 --> 00:16:01,097 嘘をついていないと 思うからです。 216 00:16:01,097 --> 00:16:08,104 あの昔話 信じたんですか? あんなの 絶対 嘘ですよ。 217 00:16:08,104 --> 00:16:11,107 『春と修羅』の 暗唱だって 今 出版されてる本を読めば➡ 218 00:16:11,107 --> 00:16:14,110 いくらだって 予習できるじゃないですか。 219 00:16:14,110 --> 00:16:18,114 それが そうではないんです。 220 00:16:18,114 --> 00:16:21,117 現在 出版されている 『春と修羅』では➡ 221 00:16:21,117 --> 00:16:25,121 「永訣の朝」は 次のように なっています。 222 00:16:25,121 --> 00:16:27,123 「わたくしは いま こころから いのる」 223 00:16:27,123 --> 00:16:31,127 「どうか これが 兜卒の天の食に変って」 224 00:16:31,127 --> 00:16:35,131 あれ? さっき 一郎さん そこ。 225 00:16:35,131 --> 00:16:38,134 《「どうか これが 天上の アイスクリームになつて」》 226 00:16:38,134 --> 00:16:43,139 実は 「永訣の朝」は 初版本から 内容が 修正されているんです。 227 00:16:43,139 --> 00:16:46,142 ほう。 だから➡ 228 00:16:46,142 --> 00:16:50,146 過去に 初版本を読んだというのは 本当だと思います。 229 00:16:50,146 --> 00:16:53,149 でも トイレに行ったっていうのも すごく 怪しくないですか? 230 00:16:53,149 --> 00:16:56,152 うん。 きっと 行ったふりして 盗んだんですよ。 231 00:16:56,152 --> 00:17:00,089 それは 難しいのではないでしょうか? 232 00:17:00,089 --> 00:17:03,092 何でですか? 233 00:17:03,092 --> 00:17:07,096 想像してみてください。 ああ はい。 はい。 234 00:17:07,096 --> 00:17:11,100 あなたは 今 玉岡家の書斎にいます。 235 00:17:11,100 --> 00:17:13,102 うん。 236 00:17:13,102 --> 00:17:17,102 服装は ジーパンに 薄手のセーターです。 237 00:17:20,109 --> 00:17:22,111 《おお》 238 00:17:22,111 --> 00:17:26,115 では 書斎から 本を 1冊 盗んでみてください。 239 00:17:26,115 --> 00:17:29,118 《はい》 240 00:17:29,118 --> 00:17:34,123 あなたは その本を どこに隠しますか? 241 00:17:34,123 --> 00:17:37,126 《あれ?》 242 00:17:37,126 --> 00:17:40,129 そうなんです。 隠すところが ないんです。 243 00:17:40,129 --> 00:17:44,129 《あっ。 でも 1カ所だけ 隠せるところ ありますよ》 244 00:17:46,135 --> 00:17:48,137 《ほら。 ここなら 大丈夫》 245 00:17:48,137 --> 00:17:51,137 横を向いてみてください。 246 00:17:53,142 --> 00:17:55,144 《あっ》 247 00:17:55,144 --> 00:17:57,163 リビングから 丸見えです。 248 00:17:57,163 --> 00:18:01,084 だから 一郎さんは 犯人ではないと思います。 249 00:18:01,084 --> 00:18:07,090 あれ? ってことは 最初から 分かってたんですか? 250 00:18:07,090 --> 00:18:12,095 あっ。 すみません。 一応 お話を聞いてみたかったので。 251 00:18:12,095 --> 00:18:15,098 あっ。 でも これで 犯人は絞れましたね。 252 00:18:15,098 --> 00:18:18,101 後は 長女の 小百合さんしか 残ってませんから。 253 00:18:18,101 --> 00:18:20,103 はい。 254 00:18:20,103 --> 00:18:23,106 (亜弥)犯人 分かったんですか? えっ? 255 00:18:23,106 --> 00:18:25,108 (亜弥)志田さんから 本を買いたたいた 犯人です。 256 00:18:25,108 --> 00:18:30,113 ああ そっちか。 って 何で そのことを? 257 00:18:30,113 --> 00:18:34,117 (亜弥)店長から 聞いたんです。 258 00:18:34,117 --> 00:18:36,119 言い触らさないでくださいよ。 (藤波)とんでもない。 259 00:18:36,119 --> 00:18:41,124 亜弥ちゃんにだけ ぽろっと。 ハァー。 260 00:18:41,124 --> 00:18:44,127 駄目だ。 全然 思い出せない。 261 00:18:44,127 --> 00:18:46,129 (文也)志田さん。 笠井さんが 来たよ。 262 00:18:46,129 --> 00:18:48,131 (笠井)こんにちは。 志田さんの探してた➡ 263 00:18:48,131 --> 00:18:51,134 島崎 藤村の 『ふるさと』 手に入ったんで 持ってきました。 264 00:18:51,134 --> 00:18:53,136 おお。 悪いな わざわざ。 265 00:18:53,136 --> 00:18:55,138 (笠井)それで どうなったんですか? 266 00:18:55,138 --> 00:18:57,140 えっ? (笠井)今 文也君から 聞きました。 267 00:18:57,140 --> 00:18:59,142 (笠井)えらい 二日酔いしたって。 268 00:18:59,142 --> 00:19:01,144 (文也)これが そのときの写真です。 269 00:19:01,144 --> 00:19:04,147 (笠井・志田)ハハハ。 文也。 余計なことしてねえで➡ 270 00:19:04,147 --> 00:19:06,149 店の掃除 続けてろ。 ちょっと 待って。 271 00:19:06,149 --> 00:19:08,151 その おでこの スタンプ どっかで 見たことあるような。 272 00:19:08,151 --> 00:19:12,155 ホントか? おい! ちょっ。 273 00:19:12,155 --> 00:19:15,158 頼む 笠井。 思い出してくれ。 274 00:19:15,158 --> 00:19:17,160 あっ。 分かりました。 275 00:19:17,160 --> 00:19:21,164 えっ!? 俺が ここで 中古のゲームを買った? 276 00:19:21,164 --> 00:19:23,166 (店長)《ポイントカードは お持ちですか?》 277 00:19:23,166 --> 00:19:26,169 《うん? ああ。 忘れちゃったからね➡ 278 00:19:26,169 --> 00:19:28,171 ここで いいや》 (店長)《えっ?》 279 00:19:28,171 --> 00:19:30,173 《ここで いいから》 (店長)これ そのときに➡ 280 00:19:30,173 --> 00:19:33,176 お忘れになられました ゲームウォッチです。 281 00:19:33,176 --> 00:19:36,179 (笠井)志田さん。 何で ゲームなんか? 282 00:19:36,179 --> 00:19:39,182 きっと お前が欲しがってたのを 見つけて 買ったんじゃねえか? 283 00:19:39,182 --> 00:19:42,185 (笠井)ホントだ。 ああ。 ありがとうございます。 284 00:19:42,185 --> 00:19:45,188 ≪(マユ)あっ! チャンピオンさんだ。 285 00:19:45,188 --> 00:19:47,190 そういえば どうして➡ 286 00:19:47,190 --> 00:19:50,193 『春と修羅』は 初版本から 内容が 変わってるんですか? 287 00:19:50,193 --> 00:19:52,195 現在 出版されている 『春と修羅』は➡ 288 00:19:52,195 --> 00:19:56,199 宮沢 賢治の死後に 発見された 手入れ本に沿って➡ 289 00:19:56,199 --> 00:19:58,134 修正されているからです。 手入れ本? 290 00:19:58,134 --> 00:20:01,137 宮沢 賢治は 『春と修羅』を 出版した後も➡ 291 00:20:01,137 --> 00:20:05,141 自分の本に 筆を入れ 推敲を 重ね続けていました。 292 00:20:05,141 --> 00:20:09,145 その本が 手入れ本と呼ばれていて まだ 発見されていない➡ 293 00:20:09,145 --> 00:20:11,147 手入れ本も あるといわれています。 294 00:20:11,147 --> 00:20:13,149 へえー。 (奈津実)どう?➡ 295 00:20:13,149 --> 00:20:15,151 仕事には 慣れた? うん。 まあね。 296 00:20:15,151 --> 00:20:20,156 (奈津実)あっ そうだ。 志田さんって どうなったの? 297 00:20:20,156 --> 00:20:24,160 ブレークダンスの大会で 優勝? (マユ)うん。 298 00:20:24,160 --> 00:20:26,162 (笠井)志田さん ブレークダンス できるんですか? 299 00:20:26,162 --> 00:20:28,164 いや。 (マユ)おじさんのダンス➡ 300 00:20:28,164 --> 00:20:31,164 超 最高だったよ。 マジで? 301 00:20:33,169 --> 00:20:35,171 (笠井)あっ。 あっ。 これ。➡ 302 00:20:35,171 --> 00:20:37,173 紙袋 持ってたってことは ダンス大会の後に➡ 303 00:20:37,173 --> 00:20:39,175 志田さん 誰かに 本を売ったってことですよね? 304 00:20:39,175 --> 00:20:42,178 なっ? ああ。 姉ちゃん。 この会場 どこ? 305 00:20:42,178 --> 00:20:45,181 (従業員)本を売ってるところ? あっ 見ましたよ。 306 00:20:45,181 --> 00:20:47,183 ホントか!? (従業員)ええ。 307 00:20:47,183 --> 00:20:49,185 ああ。 よし! (笠井)ようやく➡ 308 00:20:49,185 --> 00:20:52,188 ゴールに たどりつきましたね。 ああ。 ハハハ。 309 00:20:52,188 --> 00:20:54,190 (従業員)あっ。 チャンピオンさん。 うん? 310 00:20:54,190 --> 00:20:58,190 (従業員)僕のペット 返してもらってもいいですか? 311 00:21:07,136 --> 00:21:10,139 小百合さん 遅いですね。 ≪(さやか)五浦さん。➡ 312 00:21:10,139 --> 00:21:12,141 お待ちの方が。 ああ。 313 00:21:12,141 --> 00:21:14,143 (昴)古川 小百合の 息子の 昴です。➡ 314 00:21:14,143 --> 00:21:16,145 母が 仕事で 少し 遅れるので➡ 315 00:21:16,145 --> 00:21:19,145 それまで うちで 待ってもらっていいっすか? 316 00:21:21,150 --> 00:21:24,153 (昴)聡子叔母さんのところで 何か あったんすか? 317 00:21:24,153 --> 00:21:26,155 お母さんからは 何も? (昴)はい。➡ 318 00:21:26,155 --> 00:21:30,159 母は 叔母さんのことになると 何も話したがらないんすよ。 319 00:21:30,159 --> 00:21:33,162 どうしてですか? (昴)母は 叔母が嫌いで。 320 00:21:33,162 --> 00:21:36,165 つうか あの2人 昔から めっちゃ 仲 悪いんすよ。 321 00:21:36,165 --> 00:21:42,171 その とばっちりを受けて なぜか 俺まで 嫌われてるんすけどね。 322 00:21:42,171 --> 00:21:46,175 実は 玉岡さんのところで 盗まれたんですよ。 323 00:21:46,175 --> 00:21:49,178 宮沢 賢治の 初版本が 1冊。 マジっすか? 324 00:21:49,178 --> 00:21:52,181 それで 玉岡さんに頼まれて 本を捜してるんです。 325 00:21:52,181 --> 00:21:55,184 でも どうして 1冊だけなんすか? 326 00:21:55,184 --> 00:21:57,203 えっ? じいちゃん 生きてるころは➡ 327 00:21:57,203 --> 00:21:59,122 たまに 書斎 遊び 行ってたんすけど。 328 00:21:59,122 --> 00:22:02,125 そのとき 言ってましたよ。 書斎には 珍しいもんが➡ 329 00:22:02,125 --> 00:22:05,128 いっぱい あるって。 だったら 普通➡ 330 00:22:05,128 --> 00:22:08,131 『春と修羅』以外にも もっと 盗みません? 331 00:22:08,131 --> 00:22:11,134 確かに。 そういえば 篠川さんも➡ 332 00:22:11,134 --> 00:22:14,137 あの書斎には 貴重な本が かなり あるって 言ってましたよね。 333 00:22:14,137 --> 00:22:23,146 中原 中也の 『在りし日の歌』とか 池波 正太郎の 賞 取ったやつ。 334 00:22:23,146 --> 00:22:25,148 『錯乱』っすか? それ それ。 335 00:22:25,148 --> 00:22:27,150 本が好きで よく知ってたら➡ 336 00:22:27,150 --> 00:22:31,154 絶対 そういう本も 持ってくと 思うんすけどね。 337 00:22:31,154 --> 00:22:33,154 ≪(ドアの開く音) 338 00:22:35,158 --> 00:22:38,161 (小百合)お待たせしました。➡ 339 00:22:38,161 --> 00:22:41,164 正直 本くらいで 何 騒いじゃってんのって➡ 340 00:22:41,164 --> 00:22:46,169 感じなんですけど。 それで その本は 幾ら するんですか? 341 00:22:46,169 --> 00:22:50,173 100万くらいだと思います。 (小百合)そんなに!?➡ 342 00:22:50,173 --> 00:22:53,176 やっぱり 妹には お金 分けてもらわなくっちゃ。➡ 343 00:22:53,176 --> 00:22:55,178 借金まみれの会社 譲ってもらったって➡ 344 00:22:55,178 --> 00:23:01,117 何の得も ありませんよ。 そもそも 遺言書もないんだし。 345 00:23:01,117 --> 00:23:04,120 で 今日は 何を聞きに来たんですか? 346 00:23:04,120 --> 00:23:08,124 ちょっと あの日のことを お聞きしたくて。 347 00:23:08,124 --> 00:23:12,128 3人で話してる最中 5分ほど 席を立たれたようですが➡ 348 00:23:12,128 --> 00:23:14,130 その間 何をなさってたんですか? 349 00:23:14,130 --> 00:23:18,134 自宅にいる 昴に 電話をしてましたけど。 350 00:23:18,134 --> 00:23:20,136 もしかして 私のこと 疑ってるんですか? 351 00:23:20,136 --> 00:23:23,139 気を悪くさせてしまったら すいません。 352 00:23:23,139 --> 00:23:27,143 ただ あの日 聡子さんの家には 一郎さんと 小百合さんだけで➡ 353 00:23:27,143 --> 00:23:29,145 その一郎さんには 犯行が 不可能だと 分かったんです。 354 00:23:29,145 --> 00:23:32,148 証拠なら あります。 えっ? 355 00:23:32,148 --> 00:23:36,152 あのとき 私は 携帯を忘れたので 実家の固定電話を借りて➡ 356 00:23:36,152 --> 00:23:39,152 家に 電話をかけたんです。 357 00:23:43,159 --> 00:23:46,159 ほら。 履歴がありますよね? 358 00:23:48,164 --> 00:23:51,167 実家の電話は コードがあるので➡ 359 00:23:51,167 --> 00:23:55,171 話しながら 移動して 盗むことはできません。 360 00:23:55,171 --> 00:23:58,107 まあ 通話明細を 請求すれば➡ 361 00:23:58,107 --> 00:24:03,112 通話時間を 証明することも できるんですけど。 362 00:24:03,112 --> 00:24:06,115 まだ 他に 何か? 363 00:24:06,115 --> 00:24:10,119 もう 何が何だか 全然 分からなくなってきましたよ。 364 00:24:10,119 --> 00:24:13,122 ああ。 ≪♬(口笛) 365 00:24:13,122 --> 00:24:15,124 志田さん。 おお。 366 00:24:15,124 --> 00:24:19,128 こんなところで 何を? 本の買い主が 見つかったんだよ。 367 00:24:19,128 --> 00:24:22,131 ホントですか? ああ。 でもな➡ 368 00:24:22,131 --> 00:24:25,134 道に迷っちゃったんだ。 ハハハ。 どこへ 向かってたんですか? 369 00:24:25,134 --> 00:24:27,136 高野だよ。 近道の階段 使ったら➡ 370 00:24:27,136 --> 00:24:29,138 5分ぐらいで 行けるって 聞いたんだが。 371 00:24:29,138 --> 00:24:32,141 ああ。 それなら あそこですよ。 372 00:24:32,141 --> 00:24:34,143 おお。 これか。 373 00:24:34,143 --> 00:24:36,145 それで 買い主は 誰だったんですか? 374 00:24:36,145 --> 00:24:40,145 あっ? 町内会長の 玉岡さんって人だってよ。 375 00:24:42,151 --> 00:24:44,153 (聡子)本当に すみませんでした。 376 00:24:44,153 --> 00:24:47,156 志田さんのせいに するつもりは ないんですが➡ 377 00:24:47,156 --> 00:24:51,160 私が 本が好きだというのが 分かったら 志田さんに➡ 378 00:24:51,160 --> 00:24:54,163 これを 1,000円で 買ってくれ 買ってくれって➡ 379 00:24:54,163 --> 00:25:00,102 迫られてしまいまして。 いや。 実に 申し訳ない。 380 00:25:00,102 --> 00:25:03,102 いえ。 ああ。 381 00:25:05,107 --> 00:25:08,110 あっ。 じゃあ 篠川さんのこと 聞いたのって? 382 00:25:08,110 --> 00:25:10,112 志田さんからです。 383 00:25:10,112 --> 00:25:14,112 ああ。 そういうことだったんですね。 384 00:25:17,119 --> 00:25:19,119 どうかしたんですか? 385 00:25:24,126 --> 00:25:27,129 あっ! 386 00:25:27,129 --> 00:25:31,133 玉岡さん。 えっ? 387 00:25:31,133 --> 00:25:34,133 本を盗んだ犯人 分かりました。 388 00:27:09,131 --> 00:27:14,131 ≪(戸の開く音) 389 00:27:40,162 --> 00:27:44,166 何すか? 話って。 受験勉強中なんで➡ 390 00:27:44,166 --> 00:27:49,171 できれば 手短に。 昴君。 391 00:27:49,171 --> 00:27:52,174 この前 僕たちと話したときに➡ 392 00:27:52,174 --> 00:27:54,176 事件のことは 何も知らないと 言いましたよね? 393 00:27:54,176 --> 00:27:59,181 そうっすけど。 でも それって 嘘ですよね? 394 00:27:59,181 --> 00:28:01,183 嘘じゃないっすよ。 じゃあ 何で➡ 395 00:28:01,183 --> 00:28:03,185 あのとき こう言ったんですか? 396 00:28:03,185 --> 00:28:05,187 《玉岡さんのところで 盗まれたんですよ》 397 00:28:05,187 --> 00:28:07,206 《宮沢 賢治の 初版本が 1冊》 398 00:28:07,206 --> 00:28:09,124 《でも どうして 1冊だけなんすか?》 399 00:28:09,124 --> 00:28:13,128 僕は ただ 宮沢 賢治の 初版本と 言っただけです。 400 00:28:13,128 --> 00:28:18,133 なのに なぜ 盗まれたのが➡ 401 00:28:18,133 --> 00:28:20,135 『春と修羅』だと 分かったんですか? 402 00:28:20,135 --> 00:28:22,137 《だったら 普通➡ 403 00:28:22,137 --> 00:28:25,137 『春と修羅』以外にも もっと 盗みません?》 404 00:28:27,142 --> 00:28:34,149 それは あなたが 本を盗んだ 張本人だからですよね? 405 00:28:34,149 --> 00:28:36,151 おじいさんの書斎に よく 遊びに行っていた あなたなら➡ 406 00:28:36,151 --> 00:28:39,154 暗証番号を 知っていても おかしくありませんし。 407 00:28:39,154 --> 00:28:41,156 あの日 お母さんたちが 玉岡さんの家に➡ 408 00:28:41,156 --> 00:28:43,158 行くことも 知っていたはずです。 409 00:28:43,158 --> 00:28:48,158 だから その隙を狙って 盗んだんですよね? 410 00:28:53,168 --> 00:28:55,170 何時ごろっすか? えっ? 411 00:28:55,170 --> 00:28:59,174 本が盗まれたのって その日の 何時ごろっすか? 412 00:28:59,174 --> 00:29:02,177 夜の 9時から 9時半の間ですけど。 413 00:29:02,177 --> 00:29:04,179 フッ。 だったら 俺には 犯行は無理っすよ。 414 00:29:04,179 --> 00:29:07,149 だって 俺 そのときは ずっと 家にいましたから。 415 00:29:07,149 --> 00:29:11,020 もちろん アリバイもあるし。 アリバイ? 416 00:29:11,020 --> 00:29:15,024 その時間 俺 自宅の電話で 母親と話してますから。 417 00:29:15,024 --> 00:29:21,030 ああ。 それか。 だったら アリバイになりませんよ。 418 00:29:21,030 --> 00:29:24,033 どうしてっすか? だって 電話で話したのって➡ 419 00:29:24,033 --> 00:29:27,036 夜の 9時13分から 5分間だけですよね? 420 00:29:27,036 --> 00:29:30,039 ということは その前後で 犯行は 可能じゃないですか。 421 00:29:30,039 --> 00:29:34,043 例えば 9時に盗んで 家に戻れば 電話には 出られますよね? 422 00:29:34,043 --> 00:29:37,046 フッ。 何 言ってんすか? うちから 叔母さんの家まで➡ 423 00:29:37,046 --> 00:29:42,051 車でも 15分 かかるんすよ? 確かに。 車なら かかります。 424 00:29:42,051 --> 00:29:46,051 でも 近道の階段を使えば 5分で 着きますよね? 425 00:29:50,059 --> 00:29:53,062 昴さんは おじいさまの書斎に➡ 426 00:29:53,062 --> 00:29:56,065 この本が あることを 知ってましたよね? 427 00:29:56,065 --> 00:29:58,067 《『錯乱』っすか?》 428 00:29:58,067 --> 00:30:01,070 それが 何か? 昴さんは この前➡ 429 00:30:01,070 --> 00:30:03,072 おじいさまが 生きていたころは➡ 430 00:30:03,072 --> 00:30:06,075 書斎に 遊びに行ってたと 話してました。 431 00:30:06,075 --> 00:30:10,112 それは おじいさまが 亡くなられてからは➡ 432 00:30:10,112 --> 00:30:13,115 書斎には 行っていないと いうことになります。 433 00:30:13,115 --> 00:30:15,117 だとしたら➡ 434 00:30:15,117 --> 00:30:20,122 昴さんが この本のことを 知ってるはずがないんです。 435 00:30:20,122 --> 00:30:22,124 どういうことっすか? 436 00:30:22,124 --> 00:30:27,129 なぜなら この本は 事件が起きる 少し前に…。 437 00:30:27,129 --> 00:30:30,132 (聡子)《これを 1,000円で 買ってくれ 買ってくれって➡ 438 00:30:30,132 --> 00:30:32,134 迫られてしまいまして》 439 00:30:32,134 --> 00:30:37,139 玉岡さんが 人から 購入したものなんです。 440 00:30:37,139 --> 00:30:41,143 つまり おとといの夜以降 書斎に入った 人間にしか➡ 441 00:30:41,143 --> 00:30:45,143 『錯乱』の存在を 知ることはできないんですよ。 442 00:30:54,156 --> 00:30:59,161 ああ。 俺。 ハァー。 443 00:30:59,161 --> 00:31:02,164 めちゃめちゃ ドジばっか してたんすね。 444 00:31:02,164 --> 00:31:05,167 昴さん。 どうして 本を盗んだりしたんですか? 445 00:31:05,167 --> 00:31:12,167 それも 状態の悪い方だけを。 盗んだんじゃありません。 446 00:31:14,109 --> 00:31:19,114 本を守っただけっすよ。 はっ? 447 00:31:19,114 --> 00:31:25,120 あの本は 汚れてるけど 俺には 特別なものなんです。 448 00:31:25,120 --> 00:31:28,120 どういうことですか? 449 00:31:30,125 --> 00:31:40,135 俺 小学生のころ 学校で いじめられてて。➡ 450 00:31:40,135 --> 00:31:43,138 そんとき じいちゃんが 『春と修羅』に 俺と同じ➡ 451 00:31:43,138 --> 00:31:47,142 「昴」っていう 詩があるって 朗読してくれたんです。 452 00:31:47,142 --> 00:31:50,145 どんな詩なんですか? 453 00:31:50,145 --> 00:31:54,149 「金を もつてゐるひとは 金が あてにならない」➡ 454 00:31:54,149 --> 00:31:57,152 「からだの丈夫なひとは ごろつとやられる」 455 00:31:57,152 --> 00:32:01,156 「あたまのいいものは あたまが弱い」 456 00:32:01,156 --> 00:32:05,160 「あてにするものは みんな あてにならない」 457 00:32:05,160 --> 00:32:10,099 物事に執着しても 意味がないってことですかね? 458 00:32:10,099 --> 00:32:18,107 たぶん そうだと。 だから それ 聞いたら➡ 459 00:32:18,107 --> 00:32:25,114 いじめのことばっか 気にしてる 自分が 急に アホらしくなって。 460 00:32:25,114 --> 00:32:29,118 それで じいちゃんには 「よく分かんないけど➡ 461 00:32:29,118 --> 00:32:31,120 すごく いいね」って 言ったんです。➡ 462 00:32:31,120 --> 00:32:35,124 そしたら 「お前は とても いい受け取り方をしている」って。➡ 463 00:32:35,124 --> 00:32:38,127 「この詩は お前に ふさわしい」って。 464 00:32:38,127 --> 00:32:41,130 それが きっかけで あの本が 特別に? 465 00:32:41,130 --> 00:32:45,134 それも あるんすけど 理由は まだ あって。➡ 466 00:32:45,134 --> 00:32:49,138 じいちゃん いわく 「この本には 秘密がある」➡ 467 00:32:49,138 --> 00:32:51,140 その謎を解いたら ご褒美 くれるって言うから➡ 468 00:32:51,140 --> 00:32:54,140 それで 何度も 読み返してたんです。 469 00:32:56,145 --> 00:33:02,151 そしたら 好きに なっちゃったんすよね。 あの本が。 470 00:33:02,151 --> 00:33:07,172 でも 聡子叔母さんとか うちの母親たちが➡ 471 00:33:07,172 --> 00:33:12,172 売るなんて 言いだすから。 それで…。 472 00:33:16,098 --> 00:33:21,103 だから もし よかったら このまま 黙っててもらえないっすか? 473 00:33:21,103 --> 00:33:24,106 あの本は じいちゃんの 一番 大事な本だし➡ 474 00:33:24,106 --> 00:33:27,109 絶対 売ってほしくないんすよ。 それは できません。 475 00:33:27,109 --> 00:33:32,114 でも 安心してください。 そもそも 玉岡さんは➡ 476 00:33:32,114 --> 00:33:35,117 宮沢 賢治の本を 一切 売るつもりは ないようですから。 477 00:33:35,117 --> 00:33:38,120 ホントっすか? 478 00:33:38,120 --> 00:33:45,127 ハァー。 じゃあ 俺がしたことは 意味なかったんすね。 479 00:33:45,127 --> 00:33:48,127 ああー。 480 00:33:51,133 --> 00:33:54,133 (昴)すみませんでした。 481 00:34:14,089 --> 00:34:18,093 あっ。 そういえば 結局 秘密って 何だったんですか? 482 00:34:18,093 --> 00:34:20,095 まだ 分かんないんすよ。 483 00:34:20,095 --> 00:34:23,098 謎 解く前に じいちゃんが 死んじゃったし➡ 484 00:34:23,098 --> 00:34:25,100 聡子叔母さんも 分かんないって いうし。 485 00:34:25,100 --> 00:34:28,103 そっか。 あっ。 でも➡ 486 00:34:28,103 --> 00:34:32,107 死ぬ直前に ヒントみたいなのも くれたんですよ。 487 00:34:32,107 --> 00:34:37,112 「テナルデイ軍曹に 気を付けろ」って。 488 00:34:37,112 --> 00:34:39,114 テナルデイ軍曹? 489 00:34:39,114 --> 00:34:44,119 『春と修羅』の 「眞空溶媒」の詩に 出てくる 人名っす。 490 00:34:44,119 --> 00:34:46,121 何のヒントなのか さっぱり 分かんないけど。 491 00:34:46,121 --> 00:34:54,129 でも 難しい謎で よかったって 今は 思ってるんです。 492 00:34:54,129 --> 00:34:59,134 だって 謎解きにかかる時間が 多ければ 多いほど➡ 493 00:34:59,134 --> 00:35:03,138 死んだ じいちゃんと つながってられるから。 494 00:35:03,138 --> 00:35:07,159 ただ 問題は 聡子叔母さんなんすよね。 495 00:35:07,159 --> 00:35:09,077 えっ? 496 00:35:09,077 --> 00:35:12,080 叔母さん 全然 本 見せてくんないんすよ。 497 00:35:12,080 --> 00:35:16,084 俺のこと 嫌ってて。 身内で 本の話 できんの➡ 498 00:35:16,084 --> 00:35:22,084 叔母さんしか いないから 俺は 色々と 話 したいんすけどね。 499 00:35:27,095 --> 00:35:31,099 これ おじいさまの絵ですよね? はい。 500 00:35:31,099 --> 00:35:34,102 さっき 言ってた 謎解きの ご褒美です。 501 00:35:34,102 --> 00:35:38,106 じいちゃんが 死んじゃったから 先に もらえたんすよ。 502 00:35:38,106 --> 00:35:43,111 誰から 受け取ったんですか? 葬式の後に 聡子叔母さんから。 503 00:35:43,111 --> 00:35:46,114 何か じいちゃんから 託されてたらしくて。 504 00:35:46,114 --> 00:35:48,116 俺が生まれた年に➡ 505 00:35:48,116 --> 00:35:51,116 じいちゃんが 描いてくれた 絵だって 言ってましたよ。 506 00:35:54,122 --> 00:36:02,122 ♬~ 507 00:37:36,124 --> 00:37:42,130 ハァー。 取りあえず 事件が 解決して よかったですね。 508 00:37:42,130 --> 00:37:46,134 ハァー。 五浦さん。 509 00:37:46,134 --> 00:37:51,139 この事件は まだ 何も 解決していません。 510 00:37:51,139 --> 00:37:55,143 えっ? 私 ようやく 分かったんです。 511 00:37:55,143 --> 00:37:57,145 何がですか? 512 00:37:57,145 --> 00:38:02,150 本を盗んだ犯人が。 犯人? 513 00:38:02,150 --> 00:38:05,153 それは 昴君ですよね? 514 00:38:05,153 --> 00:38:10,158 昴さんは ただ 書斎から 本を とっただけなんです。 515 00:38:10,158 --> 00:38:13,161 全然 意味が 分からないんですけど。 516 00:38:13,161 --> 00:38:17,161 ≪(戸の開閉音) 517 00:38:19,167 --> 00:38:23,171 ああ 玉岡さん。 すいません。 わざわざ お越しいただいて。 518 00:38:23,171 --> 00:38:26,174 このたびは 本当に ありがとうございました。 519 00:38:26,174 --> 00:38:28,176 もう 何て お礼を言ったらいいのか。 520 00:38:28,176 --> 00:38:33,176 気になさらないでください。 あっ。 それで これ。 521 00:38:41,123 --> 00:38:45,127 篠川さん? 申し訳ございませんが➡ 522 00:38:45,127 --> 00:38:48,130 この本を 玉岡さんに お渡しすることはできません。 523 00:38:48,130 --> 00:38:53,130 えっ? ご冗談ですよね? 524 00:38:55,137 --> 00:39:00,142 冗談では ありません。 どういうことですか? 525 00:39:00,142 --> 00:39:02,144 最初から 不思議に 思っていました。 526 00:39:02,144 --> 00:39:05,147 奇麗な本があるのに お父さまは どうして➡ 527 00:39:05,147 --> 00:39:10,152 わざわざ 状態の悪い本を もう1冊 購入したのか? 528 00:39:10,152 --> 00:39:13,155 それは 予備のためにって。 そうだとしても➡ 529 00:39:13,155 --> 00:39:17,159 そっちの方を 玉岡さんも お父さまも 大切にされるのは➡ 530 00:39:17,159 --> 00:39:20,162 変だとは 思いませんか? 531 00:39:20,162 --> 00:39:27,169 私は 実際に この本を見て その真相に 気付きました。 532 00:39:27,169 --> 00:39:30,172 えっ? この本は➡ 533 00:39:30,172 --> 00:39:33,175 状態のいい もう1冊より➡ 534 00:39:33,175 --> 00:39:36,111 はるかに 希少価値の高い本なんです。 535 00:39:36,111 --> 00:39:39,114 どういうことなんですか? 宮沢 賢治は➡ 536 00:39:39,114 --> 00:39:44,119 『春と修羅』を 詩集だとは 考えていませんでした。 537 00:39:44,119 --> 00:39:48,123 しかし 著者の意思とは 別に➡ 538 00:39:48,123 --> 00:39:52,127 本には 詩集と 印刷されてしまったんです。 539 00:39:52,127 --> 00:39:56,131 そのために 宮沢 賢治は 自分が所持していた本から➡ 540 00:39:56,131 --> 00:40:01,136 詩集の 二文字を ブロンズの粉を塗って➡ 541 00:40:01,136 --> 00:40:04,139 消していたんです。 542 00:40:04,139 --> 00:40:09,144 えっ? じゃあ それ 宮沢 賢治が 持っていた 本ってことですか? 543 00:40:09,144 --> 00:40:12,147 そうだと思います。 544 00:40:12,147 --> 00:40:16,151 さらに この本は 書き込みが あることによって➡ 545 00:40:16,151 --> 00:40:19,154 価値が はね上がっているんです。 546 00:40:19,154 --> 00:40:23,154 価値が上がる? どうして? それは…。 547 00:40:29,164 --> 00:40:33,164 これが 宮沢 賢治 本人の字だからです。 548 00:40:35,103 --> 00:40:40,108 なら 昴君の言ってた 本の秘密って。 549 00:40:40,108 --> 00:40:44,112 この本は まだ 発見されていなかった➡ 550 00:40:44,112 --> 00:40:48,112 宮沢 賢治の 手入れ本なんです。 551 00:40:52,120 --> 00:40:57,125 この本のことは 父と 私だけの秘密でした。 552 00:40:57,125 --> 00:41:02,130 人に知れ渡ると 必ず 本を求める 人間が現れて➡ 553 00:41:02,130 --> 00:41:05,133 面倒な事態に なるからです。 554 00:41:05,133 --> 00:41:10,138 だから 本当のことが 話せませんでした。 555 00:41:10,138 --> 00:41:14,142 篠川さんが お怒りになるのも 無理はございません。 556 00:41:14,142 --> 00:41:18,146 結果的に あなたのことを 利用してしまったんですから。 557 00:41:18,146 --> 00:41:21,149 でも ホントに 悪気はなかったんです。 558 00:41:21,149 --> 00:41:23,151 どうぞ お許しください。 559 00:41:23,151 --> 00:41:25,153 玉岡さんも こう言ってることですし➡ 560 00:41:25,153 --> 00:41:30,158 その本は もう…。 申し訳ございません。 561 00:41:30,158 --> 00:41:34,179 やはり この本を お渡しすることはできません。 562 00:41:34,179 --> 00:41:36,097 ちょっと 待ってください。 563 00:41:36,097 --> 00:41:41,102 この本は 私が 父から 相続したものです。 564 00:41:41,102 --> 00:41:45,106 あなたに とやかく言われる 筋合いは ありません。 565 00:41:45,106 --> 00:41:47,108 玉岡さんの 言うとおりです。 566 00:41:47,108 --> 00:41:56,108 ただ この本が 本当に 玉岡さんが 相続すべき 本だった場合ですが。 567 00:41:58,119 --> 00:42:01,122 どういう意味ですか? お父さまは➡ 568 00:42:01,122 --> 00:42:04,125 この本は 玉岡さんにではなく➡ 569 00:42:04,125 --> 00:42:10,125 本当は 昴さんに 残したのではないでしょうか? 570 00:42:12,133 --> 00:42:17,138 つまり 遺言書がないことを いいことに➡ 571 00:42:17,138 --> 00:42:23,144 玉岡さんは この本を 自分のものにしようとしたんです。 572 00:42:23,144 --> 00:42:25,146 そんなの 臆測です。 573 00:42:25,146 --> 00:42:29,150 臆測ではありません。 臆測よ! 574 00:42:29,150 --> 00:42:34,122 だいたい 父に 会ったこともない あなたが➡ 575 00:42:34,122 --> 00:42:35,990 何で そんなことが 分かるんですか? 576 00:42:35,990 --> 00:42:38,993 玉岡さんから 昴さんに渡った あの絵。 577 00:42:38,993 --> 00:42:48,002 あれは お父さまが用意した ご褒美ではありませんよね? 578 00:42:48,002 --> 00:42:53,007 あの絵は 昴さんが生まれた年に 描かれたと 言っていましたが➡ 579 00:42:53,007 --> 00:42:56,010 それは 事実ではありません。 580 00:42:56,010 --> 00:42:59,013 あの絵は 鎌倉の 鶴岡八幡宮ですが➡ 581 00:42:59,013 --> 00:43:03,017 その中に 有名な 大イチョウは 描かれておらず➡ 582 00:43:03,017 --> 00:43:09,017 よく見ると 代わりに 倒れた後の 状態が 描かれていました。 583 00:43:11,025 --> 00:43:16,030 ということは あの絵は 大イチョウが 強風によって➡ 584 00:43:16,030 --> 00:43:21,030 倒れてしまった後に 描かれたということです。 585 00:43:23,037 --> 00:43:30,044 大イチョウが 倒れたのは 2010年 3月10日。 586 00:43:30,044 --> 00:43:35,083 明らかに 昴さんが 生まれた後のことです。 587 00:43:35,083 --> 00:43:43,091 つまり 玉岡さんは 偽物の ご褒美を渡したんです。 588 00:43:43,091 --> 00:43:46,094 本物の ご褒美は➡ 589 00:43:46,094 --> 00:43:50,094 『春と修羅』だったのでは ありませんか? 590 00:43:54,102 --> 00:43:57,105 「テナルデイ軍曹に 気を付けろ」 591 00:43:57,105 --> 00:44:03,111 これは お父さまが 昴さんに残した 言葉です。 592 00:44:03,111 --> 00:44:05,113 どういう意味なんですか? 593 00:44:05,113 --> 00:44:08,116 『春と修羅』に出てくる テナルデイ軍曹は➡ 594 00:44:08,116 --> 00:44:12,120 ビクトル・ユゴーの小説 『レ・ミゼラブル』からの引用で➡ 595 00:44:12,120 --> 00:44:17,125 そこでは 人から 金品を奪う 泥棒として 登場してきます。 596 00:44:17,125 --> 00:44:21,129 お父さまは 玉岡さんが テナルデイ軍曹のように➡ 597 00:44:21,129 --> 00:44:27,129 昴さんから 本を奪うことを 予見していたんです。 598 00:44:36,077 --> 00:44:43,084 ハァ。 惨めな話ですね。 599 00:44:43,084 --> 00:44:48,089 ずっと 世話をしてきた 父親に疑われてたなんて。 600 00:44:48,089 --> 00:44:55,096 玉岡さん。 どうして 昴君に 本を 渡してあげなかったんですか? 601 00:44:55,096 --> 00:45:01,102 当然じゃないですか。 玉岡家で この本の価値を 知ってるのも➡ 602 00:45:01,102 --> 00:45:04,105 この本のことを 心から 愛してるのも 私だけなんです。 603 00:45:04,105 --> 00:45:09,110 私が持つべきだとは 思いませんか? 604 00:45:09,110 --> 00:45:12,113 それなのに よりにもよって➡ 605 00:45:12,113 --> 00:45:16,117 小百合姉さんの息子に 譲るなんて。 606 00:45:16,117 --> 00:45:20,121 まったく 何を考えてるんだか。 607 00:45:20,121 --> 00:45:27,128 昴さんは 玉岡さんと同じくらい この本が 好きです。 608 00:45:27,128 --> 00:45:33,128 だから お父さまは 悲しかったんだと思います。 609 00:45:35,069 --> 00:45:41,075 同じ本を好きな 玉岡さんと 昴さんが➡ 610 00:45:41,075 --> 00:45:46,075 自分が死んだ後も ずっと 不仲でいることを。 611 00:45:48,082 --> 00:45:56,090 それで この本を 直接 昴さんに渡さず➡ 612 00:45:56,090 --> 00:46:01,090 あえて 玉岡さんに 託したのではないでしょうか? 613 00:46:04,098 --> 00:46:08,102 どういうことですか? お父さまは きっと➡ 614 00:46:08,102 --> 00:46:12,106 そうすることで 謎解きをする 昴さんと➡ 615 00:46:12,106 --> 00:46:19,113 玉岡さんの 交流する機会を 増やし 心を通わせたかった。 616 00:46:19,113 --> 00:46:27,121 そして いつまでも この本を 昴さんと一緒に➡ 617 00:46:27,121 --> 00:46:31,125 大切にしてもらいたかったんだと 思います。 618 00:46:31,125 --> 00:46:51,079 ♬~ 619 00:46:51,079 --> 00:47:11,099 ♬~ 620 00:47:11,099 --> 00:47:31,119 ♬~ 621 00:47:31,119 --> 00:47:40,128 ♬~ 622 00:47:40,128 --> 00:47:44,132 あの2人 うまく やっていけますかね? 623 00:47:44,132 --> 00:47:48,136 大丈夫ですよ。 624 00:47:48,136 --> 00:47:51,139 今回は お二人の思いが➡ 625 00:47:51,139 --> 00:47:55,143 それぞれ 間違った方へ 向かってしまいましたが➡ 626 00:47:55,143 --> 00:48:03,151 もともとは 玉岡さんも 昴さんも あの本が 好きなだけですから。 627 00:48:03,151 --> 00:48:06,154 そうですよね。 628 00:48:06,154 --> 00:48:11,159 事なきを得て よかったな。 えっ? 629 00:48:11,159 --> 00:48:15,163 あの本は 世界に 唯一の本だ。 630 00:48:15,163 --> 00:48:20,168 そんな本を巡る 争いなら 死人が出ても おかしかねえ。 631 00:48:20,168 --> 00:48:23,171 そんな大げさな。 632 00:48:23,171 --> 00:48:27,171 大げさかどうか お前にも いずれ 分かるときが来る。 633 00:48:30,178 --> 00:48:36,117 ああ そうだ。 今回も すみません。 また 巻き込んでしまって。 634 00:48:36,117 --> 00:48:40,121 あっ いえ。 好きで やってることなんで。 635 00:48:40,121 --> 00:48:45,126 五浦さんは 困ってる人を 放っておけない タイプなんですね。 636 00:48:45,126 --> 00:48:49,126 うーん。 ウフフ。 どうですかね? 637 00:48:52,133 --> 00:48:54,133 あの。 638 00:48:56,137 --> 00:49:00,141 例えばですけど。 639 00:49:00,141 --> 00:49:05,146 もし 私が困っていたら 同じように 助けてくれますか? 640 00:49:05,146 --> 00:49:09,146 それは もちろんですけど。 641 00:49:11,152 --> 00:49:15,156 何か あったんですか? 642 00:49:15,156 --> 00:49:19,156 何でもありません。 例えばの話です。 643 00:49:23,164 --> 00:49:26,164 手伝いますね。 ああ。 644 00:49:38,112 --> 00:49:48,112 ♬~