1 00:00:35,023 --> 00:00:36,641 (栞子)ありません。 2 00:00:36,641 --> 00:00:38,443 (邦代)お母さまが 鍵を? (栞子)はい。➡ 3 00:00:38,443 --> 00:00:41,512 母は この家にある 乱歩コレクションと➡ 4 00:00:41,512 --> 00:00:44,649 金庫の中身を 鹿山家から 買い取ろうとしているんです。➡ 5 00:00:44,649 --> 00:00:46,367 まだ 暗証文字までは たどりついていないと➡ 6 00:00:46,367 --> 00:00:49,487 思いますが それも 時間の問題かもしれません。➡ 7 00:00:49,487 --> 00:00:55,660 あしたには この家も 立ち退かなければならないし。 8 00:00:55,660 --> 00:00:59,364 (栞子)このままだと 私たちに 勝ち目はありません。 9 00:00:59,364 --> 00:01:02,383 何としても 母より先に 暗号を解いて➡ 10 00:01:02,383 --> 00:01:04,452 暗証文字を 手に入れるんです。 11 00:01:04,452 --> 00:01:08,306 その上で 交渉を持ち掛けるしか 道はないでしょう。 12 00:01:08,306 --> 00:01:22,306 ♬~ 13 00:01:40,638 --> 00:01:42,306 (智恵子)おかえりなさい。 14 00:01:42,306 --> 00:01:48,306 ♬~ 15 00:01:54,368 --> 00:01:57,371 (智恵子)金庫のことだけど。 16 00:01:57,371 --> 00:02:00,374 中に 何が入っているか 知ってる? 17 00:02:00,374 --> 00:02:03,428 あなたは 知っているんですか? 18 00:02:03,428 --> 00:02:09,383 知らないわ。 でも 大体の予想は ついてる。 19 00:02:09,383 --> 00:02:13,371 何ですか? あなたは どう思う? 20 00:02:13,371 --> 00:02:17,291 未発表の草稿か 何か。 いい読みだわ。➡ 21 00:02:17,291 --> 00:02:21,662 でも ただの草稿だったら➡ 22 00:02:21,662 --> 00:02:27,452 鹿山さんが 執拗に 隠し続ける 理由が ないと思わない?➡ 23 00:02:27,452 --> 00:02:34,492 様々な情報を 考え合わせると 答えは 一つしかない。 24 00:02:34,492 --> 00:02:39,492 『押絵と旅する男』の 第1稿よ。 25 00:02:43,434 --> 00:02:46,537 あり得ません。 (志田)そんな バカな。 26 00:02:46,537 --> 00:02:48,673 (大輔)そんなに すごいものなんですか? 27 00:02:48,673 --> 00:02:50,374 はい。 『押絵と旅する男』の 第1稿は➡ 28 00:02:50,374 --> 00:02:53,544 関西への旅行中に 書かれたんですが➡ 29 00:02:53,544 --> 00:02:57,448 乱歩は その原稿を持って 名古屋で 作家組合の会合に 参加します。 30 00:02:57,448 --> 00:03:00,885 ところが 自信のなさから 原稿を渡すことが できず➡ 31 00:03:00,885 --> 00:03:03,437 夜中に ホテルのトイレで 破り捨ててしまいました。 32 00:03:03,437 --> 00:03:07,425 現在 読むことのできる 『押絵と旅する男』とは➡ 33 00:03:07,425 --> 00:03:10,444 内容が かなり 違うものだったようです。 34 00:03:10,444 --> 00:03:15,366 トイレに 破り捨てたというのは あくまでも 本人の証言よ。 35 00:03:15,366 --> 00:03:18,486 もし 本当に 捨てていたとしても トイレ以外の➡ 36 00:03:18,486 --> 00:03:21,372 第三者が 回収できる場所だった 可能性もあるわ。 37 00:03:21,372 --> 00:03:23,374 それは 仮説ではなく 想像です。 38 00:03:23,374 --> 00:03:25,376 第一 一度でも 古書市場に出ていれば➡ 39 00:03:25,376 --> 00:03:27,378 話題にならないわけが ありません。 40 00:03:27,378 --> 00:03:29,514 市場に出ていなかったら どう? 41 00:03:29,514 --> 00:03:35,369 買ったのではなく 鹿山家に もともと あったものだとしたら? 42 00:03:35,369 --> 00:03:37,371 あるわけないじゃないですか。 そうかしら? 43 00:03:37,371 --> 00:03:43,444 鹿山さんの 実の父親の出身は 聞いている? 44 00:03:43,444 --> 00:03:46,444 どうやら 聞いているようね。 はっ。 45 00:03:49,500 --> 00:03:53,500 名古屋市 中区の 大須よ。 46 00:03:56,440 --> 00:04:01,796 そう。 当時 鹿山さんの父親が 働いていた ホテルの名前は➡ 47 00:04:01,796 --> 00:04:05,516 大須ホテル。 そして 昭和 2年。 48 00:04:05,516 --> 00:04:11,516 乱歩が 名古屋で 宿泊していたのも 大須ホテルよ。 49 00:04:16,444 --> 00:04:21,515 ねえ? 金庫の中にあるものが ホントに 幻の第1稿だったら➡ 50 00:04:21,515 --> 00:04:24,515 どんなことをしてでも 読んでみたいと 思わない? 51 00:04:27,305 --> 00:04:35,305 ♬~ 52 00:06:30,394 --> 00:06:32,596 (智恵子)何なら 協力してあげてもいいわよ。 53 00:06:32,596 --> 00:06:36,384 えっ? (智恵子)一緒に 暗号を解くなら➡ 54 00:06:36,384 --> 00:06:39,503 乱歩コレクションを 山分けしても いいわ。➡ 55 00:06:39,503 --> 00:06:42,503 ただし 金庫の中身は 譲らないけど。 56 00:06:44,458 --> 00:06:49,313 (智恵子)それでも このお店の 収入としては 大きいはずよ。 57 00:06:49,313 --> 00:06:52,383 お断りします。 58 00:06:52,383 --> 00:06:54,402 来城さんのために 暗号を解いても➡ 59 00:06:54,402 --> 00:06:56,387 あなたには 何の報酬もないはずよ。 60 00:06:56,387 --> 00:06:58,439 報酬なんて いりません。 私は ただ➡ 61 00:06:58,439 --> 00:07:01,392 鹿山さんからの プレゼントを 来城さんに渡してあげたいんです。 62 00:07:01,392 --> 00:07:05,392 まあ。 立派な心掛けね。 63 00:07:08,315 --> 00:07:10,384 鍵は 先を越されたけど➡ 64 00:07:10,384 --> 00:07:13,554 暗号は 必ず 私が 解いてみせます。 65 00:07:13,554 --> 00:07:15,523 (志田)先を越されたって どういうことだ? 66 00:07:15,523 --> 00:07:18,626 金庫の鍵は 「少年探偵団」シリーズと一緒に➡ 67 00:07:18,626 --> 00:07:21,395 本宅の 書斎のソファの中に 隠してありました。 68 00:07:21,395 --> 00:07:25,449 やっと それを 突き止めたんですが➡ 69 00:07:25,449 --> 00:07:30,449 すでに 鍵は 持ち去られた後だったんです。 70 00:07:36,393 --> 00:07:39,393 まだまだ 詰めが甘いわね。 71 00:07:51,459 --> 00:07:54,459 (文也)母さん 帰った? 72 00:07:56,680 --> 00:08:03,454 ごめんね。 あの人と会ったこと 黙ってて。 73 00:08:03,454 --> 00:08:08,309 (文也)覚えてる? 母さんが いなくなったときのこと。➡ 74 00:08:08,309 --> 00:08:10,377 ここに コーヒーカップと➡ 75 00:08:10,377 --> 00:08:13,464 読みかけの本が 置きっ放しになっててさ。➡ 76 00:08:13,464 --> 00:08:17,384 俺 何となく 母さんは いつか どっかへ行っちゃう人だって➡ 77 00:08:17,384 --> 00:08:20,384 知ってたような気がするんだ。 78 00:08:23,390 --> 00:08:25,576 ≪(物音) (文也)あっ。 79 00:08:25,576 --> 00:08:27,461 (藤波)あっ 違う。 そうじゃないの。➡ 80 00:08:27,461 --> 00:08:29,463 いや ちょっと。 声 掛ける タイミングが なくてね。➡ 81 00:08:29,463 --> 00:08:31,382 いや。 ホントに それだけよ。 (文也)いつから いたんですか? 82 00:08:31,382 --> 00:08:34,385 (藤波)えっと。 お母さんが いたときから? 83 00:08:34,385 --> 00:08:36,387 ≪えーっ!? そんなに前から? 84 00:08:36,387 --> 00:08:38,455 (志田)お前 全部 聞いてたのか? 全部。 85 00:08:38,455 --> 00:08:40,441 いや。 そうじゃないの。 うん。 話は聞いちゃったけど。 86 00:08:40,441 --> 00:08:42,443 まずいだろ そりゃ。 (藤波)いや。 まずくない。 87 00:08:42,443 --> 00:08:44,395 だいたい お前 何しに…。 (藤波)志田。 よし。 88 00:08:44,395 --> 00:08:47,464 志田…。 何で おふくろの名前 知ってんだ? 89 00:08:47,464 --> 00:08:50,784 (亜弥)お待たせしました。 ぜんざいです。 90 00:08:50,784 --> 00:08:53,320 (奈津実)で? で? で? 何で テラスなの? 寒くない? 91 00:08:53,320 --> 00:08:55,456 うーん。 92 00:08:55,456 --> 00:08:59,460 (藤波)大事な話 してんの。 立ち聞きしないようにね。 93 00:08:59,460 --> 00:09:01,745 (さやか)藤波さんが 言うかな? 94 00:09:01,745 --> 00:09:03,597 (藤波)うるさいな。 あっち 行ってなさいよ もう。➡ 95 00:09:03,597 --> 00:09:08,597 さあさあ さあさあ。 ゲットアウト。 座るな。 ゲットアウト。 ハリー。 ハリー。 96 00:09:10,454 --> 00:09:15,759 藤波さん。 絶対に 言わないでくださいね さっきの話。 97 00:09:15,759 --> 00:09:19,513 (藤波)大丈夫だよ。 それにしても 長い 付き合いだよね。 98 00:09:19,513 --> 00:09:24,385 (邦代)《明さんとは 大学教授と 生徒という関係で 始まって》➡ 99 00:09:24,385 --> 00:09:27,488 《38年間 ずっと この家で 暮らしてるんです》 100 00:09:27,488 --> 00:09:33,310 38年か。 そいつは すげえな。 (藤波)でしょ? 101 00:09:33,310 --> 00:09:36,463 どうかしたんですか? 102 00:09:36,463 --> 00:09:39,450 鹿山さんが 「少年探偵団」シリーズを 隠すために➡ 103 00:09:39,450 --> 00:09:43,387 ソファを 特注したのは 直美さんが 10歳のときです。 104 00:09:43,387 --> 00:09:45,573 直美さんが 10歳っていうと。 105 00:09:45,573 --> 00:09:50,461 1978年。 35年前です。 106 00:09:50,461 --> 00:09:54,465 私は そのとき 鹿山さんが 「少年探偵団」シリーズを➡ 107 00:09:54,465 --> 00:09:57,451 別宅の書庫から 移したと 思っていました。 でも。 108 00:09:57,451 --> 00:10:00,654 《「少年探偵団」シリーズが 見当たらないんですが?》 109 00:10:00,654 --> 00:10:04,441 《姉が ここに 初めて 来たときから なかったそうです》 110 00:10:04,441 --> 00:10:09,763 あれ? それって 38年前ですよね? 計算 合わねえじゃねえか。 111 00:10:09,763 --> 00:10:12,383 38年前には すでに 別宅に なかったとすると➡ 112 00:10:12,383 --> 00:10:16,387 35年前に ソファの中に 隠されるまで➡ 113 00:10:16,387 --> 00:10:19,390 3年間の空白期間が あったってことになるよね? 114 00:10:19,390 --> 00:10:21,458 その間 「少年探偵団」シリーズは➡ 115 00:10:21,458 --> 00:10:24,458 どこに 置いてあったのでしょうか? 116 00:10:26,430 --> 00:10:31,468 [TEL] 117 00:10:31,468 --> 00:10:34,468 はい。 篠川です。 118 00:10:36,607 --> 00:10:38,242 えっ!? 119 00:10:38,242 --> 00:10:49,386 ♬~ 120 00:10:49,386 --> 00:10:51,386 何をしているんですか? 121 00:10:53,390 --> 00:10:56,390 鍵は 頂いたわよ。 122 00:11:03,434 --> 00:11:06,387 えっ!? いいこと 教えてくれて➡ 123 00:11:06,387 --> 00:11:08,387 ありがとう。 124 00:11:13,310 --> 00:11:16,647 そういうことだったんですね。 125 00:11:16,647 --> 00:11:19,450 何で? 鍵は お母さんが 持ってたんじゃ? 126 00:11:19,450 --> 00:11:23,454 そうではなかったんです。 この人が 突然 うちに やって来たのは➡ 127 00:11:23,454 --> 00:11:27,675 私を動揺させて 情報を 引き出すためだったんです。 128 00:11:27,675 --> 00:11:30,377 《金庫の鍵は 「少年探偵団」シリーズと一緒に➡ 129 00:11:30,377 --> 00:11:33,397 本宅の 書斎のソファの中に 隠してありました》 130 00:11:33,397 --> 00:11:35,315 あのとき 私は 母が 鍵を持っていると➡ 131 00:11:35,315 --> 00:11:37,384 思い込んでいたせいで➡ 132 00:11:37,384 --> 00:11:39,319 言わなくてもいいことを 言ってしまいました。 133 00:11:39,319 --> 00:11:41,455 《まだまだ 詰めが甘いわね》 134 00:11:41,455 --> 00:11:44,308 あれは 母の思惑に はまってしまったことに対しての➡ 135 00:11:44,308 --> 00:11:46,443 言葉だったということです。 136 00:11:46,443 --> 00:11:49,630 でも それで どうやって? 私が 確認しなかったからです。 137 00:11:49,630 --> 00:11:51,448 確認? 見てください。 138 00:11:51,448 --> 00:11:54,485 光文社版の中に ポプラ社版が 交じっているんです。 139 00:11:54,485 --> 00:11:57,388 つまり ここにあるのは 全て➡ 140 00:11:57,388 --> 00:12:00,457 最初に刊行された 単行本の 初版だったんです。 141 00:12:00,457 --> 00:12:02,943 それなのに 戦前に 講談社から 刊行された➡ 142 00:12:02,943 --> 00:12:06,447 『怪人二十面相』 『少年探偵團』 『妖怪博士』 『大金塊』 143 00:12:06,447 --> 00:12:09,383 この4冊が ありません。 持ってなかったんですかね? 144 00:12:09,383 --> 00:12:13,437 いいえ。 あれだけ 蔵書が揃っているのに➡ 145 00:12:13,437 --> 00:12:17,391 それは 考えにくいです。 じゃあ どうして? 146 00:12:17,391 --> 00:12:21,378 もう一つ 別の隠し場所が あったんです。 147 00:12:21,378 --> 00:12:23,547 えっ? 「少年探偵団」シリーズは➡ 148 00:12:23,547 --> 00:12:27,451 別宅からではなく その場所から ソファの中へ 移されたんです。 149 00:12:27,451 --> 00:12:30,537 (直美)別の隠し場所? 希少価値の高い 講談社の➡ 150 00:12:30,537 --> 00:12:34,391 4冊だけは ずっと そこに 入れたままだったんでしょう。 151 00:12:34,391 --> 00:12:38,378 金庫の鍵は その場所に 隠してあったんです。 152 00:12:38,378 --> 00:12:41,381 そんな。 じゃあ いったい どこに? 153 00:12:41,381 --> 00:12:44,435 わざわざ 本を ソファに 移し替えたのは➡ 154 00:12:44,435 --> 00:12:46,703 おそらく そこは 子供の身長では➡ 155 00:12:46,703 --> 00:12:49,703 取り出しにくい 場所だったからです。 156 00:12:53,393 --> 00:12:56,447 五浦さん。 あっ。 はい。 157 00:12:56,447 --> 00:13:01,447 ドアを閉めてください。 あっ。 はい。 158 00:13:12,379 --> 00:13:14,379 ああっ! 159 00:13:28,462 --> 00:13:32,462 残念ながら 気付くのが 遅かったわね。 160 00:13:34,451 --> 00:13:38,455 (直美)返してください。 その鍵は 鹿山家のものですから。 161 00:13:38,455 --> 00:13:40,591 (智恵子)それは できません。 お兄さまから➡ 162 00:13:40,591 --> 00:13:46,380 金庫の件は 全面的に任せると 言われているんです。 163 00:13:46,380 --> 00:13:53,387 それより これ。 何だと思う? 164 00:13:53,387 --> 00:13:56,590 これって 確か 二銭銅貨ですよね? 165 00:13:56,590 --> 00:13:59,393 ええ。 『二銭銅貨』は 乱歩の デビュー作です。 166 00:13:59,393 --> 00:14:02,462 物語の中に 細工された 銅貨が出てくるんですが。 167 00:14:02,462 --> 00:14:07,668 それを 2枚に割ると 中から 暗号文が 出てくるんです。 168 00:14:07,668 --> 00:14:09,668 えっ? じゃあ! 169 00:14:16,894 --> 00:14:18,894 あっ。 170 00:14:22,399 --> 00:14:24,451 (邦代)二銭銅貨? 鍵と一緒に➡ 171 00:14:24,451 --> 00:14:28,388 慶子さんに 渡すおつもりだったようなんです。 172 00:14:28,388 --> 00:14:32,459 どういう意味か お分かりですか? 173 00:14:32,459 --> 00:14:37,381 そうですか。 あっ。 『二銭銅貨』が 収録されている➡ 174 00:14:37,381 --> 00:14:39,466 全集を 見せていただいても いいですか? 175 00:14:39,466 --> 00:14:43,466 何か 書き込みが あるかもしれません。 176 00:14:48,392 --> 00:14:52,446 それらしいものは 見当たりませんね。 177 00:14:52,446 --> 00:14:58,452 ありがとうございました。 後は 私たちで 片付けておきます。 178 00:14:58,452 --> 00:15:00,452 (邦代)じゃあ。 179 00:15:11,665 --> 00:15:13,665 何ですか? 180 00:15:16,386 --> 00:15:18,386 あっ。 181 00:15:24,244 --> 00:15:42,312 ♬~ 182 00:15:42,312 --> 00:15:48,312 ♬~ 183 00:15:58,996 --> 00:16:00,996 開いた! 184 00:16:08,388 --> 00:16:10,388 見つけた。 185 00:17:45,385 --> 00:17:47,320 話って 何? 金庫の鍵を➡ 186 00:17:47,320 --> 00:17:50,457 慶子さんに 譲ってください。 187 00:17:50,457 --> 00:17:54,311 (智恵子)何 言ってるの? 譲れるわけ ないでしょ。 188 00:17:54,311 --> 00:17:57,447 暗号文を 見つけました。 189 00:17:57,447 --> 00:18:01,451 鹿山さんが 慶子さんに宛てた 手紙に 「君にしか 分からない➡ 190 00:18:01,451 --> 00:18:04,388 暗号文を残す」と はっきり 書いてあります。 191 00:18:04,388 --> 00:18:09,643 この暗号文は 慶子さんのものです。 192 00:18:09,643 --> 00:18:12,379 お互いに ダイヤルナンバーは 分かっていますが➡ 193 00:18:12,379 --> 00:18:15,382 もし 私たちが 暗号を解いたとしても➡ 194 00:18:15,382 --> 00:18:18,435 鍵がなければ 金庫を 開けることはできません。 195 00:18:18,435 --> 00:18:21,671 そうね。 鍵を持っている あなたも➡ 196 00:18:21,671 --> 00:18:26,460 暗証文字がなければ 金庫を 開けることはできません。 197 00:18:26,460 --> 00:18:30,380 断っておきますが この金庫は そう簡単には 壊れません。 198 00:18:30,380 --> 00:18:33,383 無理をすれば 中身が 無事であるという➡ 199 00:18:33,383 --> 00:18:36,436 保証は なくなるでしょう。 何が言いたいの? 200 00:18:36,436 --> 00:18:39,436 ≪(ドアの開く音) 201 00:18:43,393 --> 00:18:47,447 慶子さんから ご提案があります。 202 00:18:47,447 --> 00:18:50,450 お伺いしましょ。 慶子さんは➡ 203 00:18:50,450 --> 00:18:53,453 明日の朝には この家を 立ち退かなければなりません。 204 00:18:53,453 --> 00:18:59,459 それまでの間だけ 鍵を 貸していただけないでしょうか? 205 00:18:59,459 --> 00:19:03,380 もちろん 中に入っているものは 鹿山家の財産ですから➡ 206 00:19:03,380 --> 00:19:05,382 手に入らないのは 分かっています。 207 00:19:05,382 --> 00:19:08,468 ただ せめて 何が入っているのか➡ 208 00:19:08,468 --> 00:19:11,388 ご自分の目で 確かめたいと おっしゃっているんです。 209 00:19:11,388 --> 00:19:13,390 (智恵子)暗号が解けなかったら? 210 00:19:13,390 --> 00:19:16,543 そのときは 暗号文を あなたに 差し上げます。 211 00:19:16,543 --> 00:19:18,462 提案に応じなかったら? 212 00:19:18,462 --> 00:19:23,533 暗号文は 慶子さんが持って 出ていくことになります。 213 00:19:23,533 --> 00:19:42,235 ♬~ 214 00:19:42,235 --> 00:19:57,250 ♬~ 215 00:19:57,250 --> 00:20:03,456 ♬~ 216 00:20:03,456 --> 00:20:06,459 (智恵子)どちらにしても 金庫の中身は 私のものです。➡ 217 00:20:06,459 --> 00:20:11,459 明日の朝 必ず 鍵を返して。 218 00:20:30,383 --> 00:20:34,437 おう。 差し入れ 作ってきたぞ。 219 00:20:34,437 --> 00:20:37,874 何だ? こりゃ。 『二銭銅貨』に登場する 暗号文は➡ 220 00:20:37,874 --> 00:20:41,311 「南無阿彌陀佛」の 6文字の 組み合わせで 構成されています。 221 00:20:41,311 --> 00:20:43,380 この6文字を 3文字ずつ➡ 222 00:20:43,380 --> 00:20:45,732 2列に並べて 点字記号に 当てはめているんです。 223 00:20:45,732 --> 00:20:49,653 じゃあ つまり この文章を 点字として 解読したもんが➡ 224 00:20:49,653 --> 00:20:51,438 金庫の 暗証文字ってことか? そのとおりです。 225 00:20:51,438 --> 00:20:54,424 何だ。 なら 簡単じゃねえか。 最初は そう思ってたんですが。 226 00:20:54,424 --> 00:20:56,424 うん? 227 00:20:59,446 --> 00:21:02,382 「ひし うえじま」? 点字に 置き換えてみたんですが➡ 228 00:21:02,382 --> 00:21:05,502 どうしても 読めないところがあるんです。 229 00:21:05,502 --> 00:21:08,388 もしかしたら 独自の法則を持つ 点字で➡ 230 00:21:08,388 --> 00:21:11,391 他の記号の解釈も 間違えているのかも。 231 00:21:11,391 --> 00:21:14,494 ああ。 やはり 乱歩作品の中に➡ 232 00:21:14,494 --> 00:21:18,465 ヒントがあるんだと思います。 『二銭銅貨』以外の➡ 233 00:21:18,465 --> 00:21:23,520 暗号が出てくる作品も 手分けして 確認してみましょう。 234 00:21:23,520 --> 00:21:42,238 ♬~ 235 00:21:42,238 --> 00:21:47,527 ♬~ 236 00:21:47,527 --> 00:21:49,379 (邦代)皆さん。 お茶は いかが? 237 00:21:49,379 --> 00:21:52,315 ありがとうございます。 すいません。 238 00:21:52,315 --> 00:22:03,315 ♬~ 239 00:22:07,314 --> 00:22:18,314 ♬~ 240 00:22:20,393 --> 00:22:22,393 ハァー。 241 00:22:24,531 --> 00:22:31,531 (邦代)解けませんね。 もう 無理なのかしら。 242 00:22:37,310 --> 00:22:40,463 あの。 この点字って➡ 243 00:22:40,463 --> 00:22:43,383 大正時代に 使われていた 点字ってことは ないんですかね? 244 00:22:43,383 --> 00:22:46,503 例えば 今とは 法則が違うとか。 245 00:22:46,503 --> 00:22:50,390 日本の 点字表記の基礎は 明治時代に 確立されているので➡ 246 00:22:50,390 --> 00:22:53,493 それは ないですね。 失礼しました。 247 00:22:53,493 --> 00:22:56,463 ちょっと 待った。 お前 どうして 大正時代だと 思ったんだ? 248 00:22:56,463 --> 00:22:59,382 ここに 「大正 十二年」って 書いてあったから。 249 00:22:59,382 --> 00:23:02,435 えっ? いや。 どうしたんですか? 250 00:23:02,435 --> 00:23:05,388 二銭銅貨はな 鋳造されてたのが➡ 251 00:23:05,388 --> 00:23:08,391 明治 6年から 明治 17年の間だけなんだよ。 252 00:23:08,391 --> 00:23:11,511 大正 12年には もう 造られてねえんだよ。 253 00:23:11,511 --> 00:23:15,511 じゃあ 何で? 何でだ? 254 00:23:17,317 --> 00:23:21,588 大正 12年。 えっ? 255 00:23:21,588 --> 00:23:25,392 大正 12年というと 『二銭銅貨』が 『新青年』に掲載された年なんです。 256 00:23:25,392 --> 00:23:27,510 暗号と 何か 関係あるんですか? 257 00:23:27,510 --> 00:23:31,510 慶子さん。 ここに 『新青年』 ありましたよね? 258 00:23:35,452 --> 00:23:40,757 これが 『新青年』に掲載された 『二銭銅貨』です。 259 00:23:40,757 --> 00:23:44,377 そして こちらが 桃源社版の 全集です。 260 00:23:44,377 --> 00:23:48,381 ここと ここを よく見てください。 261 00:23:48,381 --> 00:23:51,317 あっ。 (邦代)暗号文が 違いますね。 262 00:23:51,317 --> 00:23:53,453 そうなんです。 263 00:23:53,453 --> 00:23:56,573 『二銭銅貨』が 最初に 発表されたとき 乱歩は➡ 264 00:23:56,573 --> 00:23:59,309 点字記号の 使い方を 間違えていたんです。 265 00:23:59,309 --> 00:24:01,394 間違えた? はい。 266 00:24:01,394 --> 00:24:04,397 よく見てください。 間違った 箇所が➡ 267 00:24:04,397 --> 00:24:06,449 鹿山さんが お作りになった 暗号文と➡ 268 00:24:06,449 --> 00:24:09,385 そっくりなんです。 つまり この間違い自体が➡ 269 00:24:09,385 --> 00:24:11,521 暗号を解く ヒントだったってことか? 270 00:24:11,521 --> 00:24:16,392 はい。 鹿山さんは この暗号文を 大正 12年 当時の 『二銭銅貨』 271 00:24:16,392 --> 00:24:18,394 乱歩のミスを含んだ 点字に従って➡ 272 00:24:18,394 --> 00:24:20,313 解釈しなさいと 伝えたかったんです。 273 00:24:20,313 --> 00:24:24,317 じゃあ 暗号文の答えは? 274 00:24:24,317 --> 00:24:44,317 ♬~ 275 00:24:48,391 --> 00:24:52,391 暗号が 解けました。 276 00:24:59,452 --> 00:25:03,473 (邦代)「ひしょうえじま」? これ どういう意味だ? 277 00:25:03,473 --> 00:25:05,742 とにかく 金庫を開けてみませんか? 278 00:25:05,742 --> 00:25:09,379 暗号文が 合っているかどうか まずは 確かめてみないと。 279 00:25:09,379 --> 00:25:11,379 どうぞ。 280 00:25:22,308 --> 00:25:25,512 姉の代わりに 私が。 281 00:25:25,512 --> 00:25:42,245 ♬~ 282 00:25:42,245 --> 00:25:57,310 ♬~ 283 00:25:57,310 --> 00:26:04,310 ♬~ 284 00:26:10,456 --> 00:26:14,456 (鍵の開く音) (邦代)あっ! 285 00:26:36,266 --> 00:26:52,248 ♬~ 286 00:26:52,248 --> 00:27:07,313 ♬~ 287 00:27:07,313 --> 00:27:16,313 ♬~ 288 00:27:21,461 --> 00:27:26,449 あっ。 あった あった。 おい。 ホントに あったぞ。 289 00:27:26,449 --> 00:27:30,236 すごい。 第1稿は 題名が違っていたんですね。 290 00:27:30,236 --> 00:27:42,832 ♬~ 291 00:27:42,832 --> 00:27:46,832 (邦代)慶子ちゃんを 一人に してもらえませんか? 292 00:27:52,458 --> 00:27:55,411 (邦代)ありがとうございます。 お疲れになったでしょう? 293 00:27:55,411 --> 00:27:59,465 ああ。 いえ。 お役に立てて よかったです。 294 00:27:59,465 --> 00:28:03,319 (邦代)お茶の用意が できましたら お呼びしますから。 295 00:28:03,319 --> 00:28:06,506 こりゃ 見事だな。 296 00:28:06,506 --> 00:28:09,592 あっ! おい。 『江川 蘭子』が あるじゃねえか。 297 00:28:09,592 --> 00:28:11,461 ああ。 これ 僕 こないだ 落としそうになったんですよ。 298 00:28:11,461 --> 00:28:16,716 触んな お前。 落としそう!? そりゃ ヤバいだろ。 299 00:28:16,716 --> 00:28:19,452 えっ? ヤバいんですか? あのな。 『江川 蘭子』はな➡ 300 00:28:19,452 --> 00:28:22,438 乱歩の 初版本の中でも 一番 高えんだぞ。 301 00:28:22,438 --> 00:28:25,475 美本だったら 100万は 軽く 超えるだろうな。 302 00:28:25,475 --> 00:28:27,475 100万!? 303 00:28:29,312 --> 00:28:31,381 まさか。 304 00:28:31,381 --> 00:28:34,567 私たちは だまされていたかもしれません。 305 00:28:34,567 --> 00:28:38,567 えっ? 篠川さん! 306 00:28:48,314 --> 00:28:52,452 邦代さんは どこですか? 307 00:28:52,452 --> 00:28:57,452 慶子さん。 あなたも 乱歩マニアでしたよね? 308 00:29:00,393 --> 00:29:02,729 『押絵と旅する男』の 主人公が➡ 309 00:29:02,729 --> 00:29:05,729 蜃気楼を 見に行った場所は どこですか? 310 00:29:08,384 --> 00:29:11,384 答えてください。 311 00:29:33,392 --> 00:29:35,392 追い掛けろ。 はい! 312 00:29:40,383 --> 00:29:44,383 慶子さん! えっ? 313 00:31:22,385 --> 00:31:26,389 車椅子の女性は 本当は 妹さんなんですよね? 314 00:31:26,389 --> 00:31:29,709 (邦代)どうして そう思うの? 315 00:31:29,709 --> 00:31:32,461 『江川 蘭子』です。 えっ? 316 00:31:32,461 --> 00:31:35,748 ≪(邦代)《お待たせしました》 《あっ!?》 317 00:31:35,748 --> 00:31:38,584 (邦代)《気を付けてください》 (大輔・栞子)《すいません》 318 00:31:38,584 --> 00:31:43,306 あのとき あなたは 本を 『空中紳士』と 『殺人迷路』の間に➡ 319 00:31:43,306 --> 00:31:45,458 戻しましたね。 それが? 320 00:31:45,458 --> 00:31:49,378 『江川 蘭子』 『空中紳士』 『殺人迷路』は➡ 321 00:31:49,378 --> 00:31:52,381 どれも 乱歩と 他の探偵作家陣による➡ 322 00:31:52,381 --> 00:31:56,385 合同小説なんです。 あなたは 五浦さんが➡ 323 00:31:56,385 --> 00:31:59,388 本を抜き取るところを 見ていませんでした。 324 00:31:59,388 --> 00:32:01,390 なのに もともと あった場所に➡ 325 00:32:01,390 --> 00:32:04,710 ちゅうちょなく 戻すことができたんです。 326 00:32:04,710 --> 00:32:09,382 本に詳しくないと 言っていた人の 行動としては 不自然です。 327 00:32:09,382 --> 00:32:14,453 考えてみれば 今回の件に関わった 皆さんの中に➡ 328 00:32:14,453 --> 00:32:18,457 以前から あなたと 面識がある方は いませんでした。 329 00:32:18,457 --> 00:32:22,457 入れ替わりの条件は 整っていたんです。 330 00:32:26,732 --> 00:32:33,306 (慶子)そうよ。 あの子が 邦代で 私が 慶子。 331 00:32:33,306 --> 00:32:36,375 2人で 入れ替わってたの。 332 00:32:36,375 --> 00:32:39,378 病を患った人の 頼み事だったら➡ 333 00:32:39,378 --> 00:32:43,382 鹿山家も 断りづらいだろうと思って。 334 00:32:43,382 --> 00:32:50,389 その原稿を持って 旅に出るおつもりですか? 335 00:32:50,389 --> 00:32:53,526 あなたは 何でも 分かってんのね。 336 00:32:53,526 --> 00:32:59,526 この原稿のことも 分かってるんでしょ? 337 00:33:02,385 --> 00:33:05,588 はい。 何を分かってるんですか? 338 00:33:05,588 --> 00:33:11,394 昭和 3年の初めに 刊行された 『創作探偵小説選集』の 序文で➡ 339 00:33:11,394 --> 00:33:14,447 乱歩は 『押絵と旅する男』の 第1稿を➡ 340 00:33:14,447 --> 00:33:18,384 名古屋の 大須ホテルの トイレに 捨てたと 書いています。 341 00:33:18,384 --> 00:33:21,437 で? 捨てた 原稿の題名が➡ 342 00:33:21,437 --> 00:33:26,742 『押絵と旅する男』であったことを 乱歩自身が 明記しているんです。 343 00:33:26,742 --> 00:33:31,380 つまり 題名が違っていた 可能性は ないということです。 344 00:33:31,380 --> 00:33:34,380 でも さっきの原稿は…。 345 00:33:36,319 --> 00:33:41,307 これは➡ 346 00:33:41,307 --> 00:33:44,460 偽物です。 偽物!? 347 00:33:44,460 --> 00:33:49,315 鹿山さんは 若いころ 推理作家を 目指されていたんですよね? 348 00:33:49,315 --> 00:33:51,315 あっ! 349 00:33:53,319 --> 00:33:56,389 これを 見て。 350 00:33:56,389 --> 00:33:59,392 「江島 日生」? 351 00:33:59,392 --> 00:34:05,448 鹿山さんの ペンネームですか? そのようね。 352 00:34:05,448 --> 00:34:12,521 これが 答えよ。 あの人は 人生最後の プレゼントとして➡ 353 00:34:12,521 --> 00:34:17,521 私のためだけに この小説を 書いてくれたんだわ。 354 00:34:21,464 --> 00:34:28,437 読者は あなた 一人だけ。 他の誰にも 読ませたくない。 355 00:34:28,437 --> 00:34:34,460 あっ。 だから あそこまで 厳重に しまいこんでいたんですね。 356 00:34:34,460 --> 00:34:37,460 でも もう一つ 理由があるの。 357 00:34:39,382 --> 00:34:44,770 自分も 乱歩の世界に 入りこんでみたい。 358 00:34:44,770 --> 00:34:50,526 あの色とりどりの 幻想の世界に 入りこんでみたい。 359 00:34:50,526 --> 00:34:56,526 そんな思いが ここ 最近 ずっと 頭から 離れなくて。 360 00:34:58,317 --> 00:35:01,437 それを 聞いていたからこそ➡ 361 00:35:01,437 --> 00:35:06,375 鹿山さんは あなたに 暗号解読を させようとしたんでしょう。 362 00:35:06,375 --> 00:35:11,630 そこに 行き着くまでの プロセスこそが➡ 363 00:35:11,630 --> 00:35:16,519 私にとっては 掛け替えのない 贈り物だったの。 364 00:35:16,519 --> 00:35:24,519 だから 家を出る前に 何としても 暗号を解きたかったんですね。 365 00:35:26,362 --> 00:35:31,383 きっと この小説は➡ 366 00:35:31,383 --> 00:35:36,622 私に似た女が 登場してくるはずよ。 367 00:35:36,622 --> 00:35:43,629 あの 本物の『押絵』のように➡ 368 00:35:43,629 --> 00:35:48,629 旅をしながら ゆっくり 読んでみるつもり。 369 00:35:51,387 --> 00:35:57,460 でも この変な ペンネームの意味も➡ 370 00:35:57,460 --> 00:36:00,460 もう 確かめることは できないのね。 371 00:36:05,935 --> 00:36:10,389 慶子さん。 鹿山さんが 一番 お好きだった 乱歩の作品は➡ 372 00:36:10,389 --> 00:36:14,393 『大金塊』ですか? ええ。 373 00:36:14,393 --> 00:36:19,515 主人公の名前を 覚えてらっしゃいますか? 374 00:36:19,515 --> 00:36:24,515 宮瀬 不二夫? そのとおりです。 375 00:36:35,447 --> 00:36:40,686 「miyase hujio」? 376 00:36:40,686 --> 00:36:44,390 「ejima hisyou」 377 00:36:44,390 --> 00:36:47,390 アナグラム!? 378 00:36:52,314 --> 00:36:58,304 ホントに 子供みたいな人。 379 00:36:58,304 --> 00:37:12,234 ♬~ 380 00:37:12,234 --> 00:37:20,376 ♬~ 381 00:37:20,376 --> 00:37:27,333 (泣き声) 382 00:37:27,333 --> 00:37:42,331 ♬~ 383 00:37:42,331 --> 00:38:01,383 ♬~ 384 00:38:01,383 --> 00:38:03,435 ああ。 じゃあ もう ここで。 385 00:38:03,435 --> 00:38:08,390 それじゃあ お気を付けて。 旅を 楽しんでください。 386 00:38:08,390 --> 00:38:13,629 ありがとう。 あなたたちも お元気で。 387 00:38:13,629 --> 00:38:16,629 はい。 それじゃ。 388 00:38:23,439 --> 00:38:30,379 乱歩の世界に 入ってみたいか。 入れ替わるというのも➡ 389 00:38:30,379 --> 00:38:33,382 乱歩の世界では よくある設定です。 390 00:38:33,382 --> 00:38:36,452 それも 慶子さんにとって➡ 391 00:38:36,452 --> 00:38:39,452 大切な プロセスの 一つだったんでしょう。 392 00:38:41,390 --> 00:38:46,390 ≪(足音) 393 00:40:25,377 --> 00:40:28,430 (智恵子)原稿は? 金庫の中身は➡ 394 00:40:28,430 --> 00:40:31,383 乱歩の直筆原稿では ありませんでした。 395 00:40:31,383 --> 00:40:34,386 あなたの予想は 完全に 外れたんです。 396 00:40:34,386 --> 00:40:37,840 志田さんから 大体の話は 聞いたわ。 397 00:40:37,840 --> 00:40:41,376 『押絵と旅する女』は 鹿山さんが 恋人のために 書き上げた➡ 398 00:40:41,376 --> 00:40:44,413 自作の小説だったってところね。 399 00:40:44,413 --> 00:40:46,615 あれは 慶子さん以外の人にとっては➡ 400 00:40:46,615 --> 00:40:51,320 何の価値も ないものです。 残念でしたね。 401 00:40:51,320 --> 00:40:53,605 そうかしら? えっ? 402 00:40:53,605 --> 00:40:58,377 あなた 彼女の話を 本気で 信じてるの? 403 00:40:58,377 --> 00:41:02,481 あの金庫は 鹿山さんが 死を意識する➡ 404 00:41:02,481 --> 00:41:05,317 ずっと ずっと 昔から あの家に 存在していたのよ。 405 00:41:05,317 --> 00:41:07,453 そんな昔から➡ 406 00:41:07,453 --> 00:41:11,723 恋人に残すための小説が 入れてあったとは 思えないけど。 407 00:41:11,723 --> 00:41:17,312 だとすると あの中には 何か 別の 貴重なものが 入っていたはずよ。 408 00:41:17,312 --> 00:41:20,382 それは どこにいったの? 409 00:41:20,382 --> 00:41:23,385 来城さんは 全部の原稿を あなたに 見せた? 410 00:41:23,385 --> 00:41:26,305 せいぜい ほんの 数枚だったんじゃない? 411 00:41:26,305 --> 00:41:28,457 もう 分かったでしょ? 412 00:41:28,457 --> 00:41:33,378 鹿山さんが 父親から 引き継いだ 『押絵と旅する男』の 第1稿は➡ 413 00:41:33,378 --> 00:41:37,449 断片だった 可能性がある。 おそらく 彼は➡ 414 00:41:37,449 --> 00:41:42,387 その足りない部分を 補う形で 小説を書き上げたんだわ。 415 00:41:42,387 --> 00:41:46,525 本物と 偽物の 物語の融合。 416 00:41:46,525 --> 00:41:51,525 それこそが 来城さんが望んでいた 最高の プレゼントだったのよ。 417 00:41:55,384 --> 00:41:59,454 ハァ。 まあ いいわ。 彼女が➡ 418 00:41:59,454 --> 00:42:03,392 原稿を持って 逃げることは 予想が ついていたから。 419 00:42:03,392 --> 00:42:06,378 えっ? 入れ替わりに 気付いてたんですか? 420 00:42:06,378 --> 00:42:09,631 ええ。 来城さんとは 何度か➡ 421 00:42:09,631 --> 00:42:11,383 目録販売で やりとりをしたことがあるの。 422 00:42:11,383 --> 00:42:14,436 ええ。 だから 顔は 見てないはずですよね? 423 00:42:14,436 --> 00:42:18,307 そうよ。 でも 字は 見たことあるの。 424 00:42:18,307 --> 00:42:20,375 字? 来城さんって➡ 425 00:42:20,375 --> 00:42:23,562 すごく 癖のある字を 書く人だったの。➡ 426 00:42:23,562 --> 00:42:25,380 だから 筆談をしたときに すぐに 分かったわ。➡ 427 00:42:25,380 --> 00:42:29,384 これは 彼女の字ではないって。 428 00:42:29,384 --> 00:42:33,288 それを 分かっていながら 鍵を渡したんですか? 429 00:42:33,288 --> 00:42:36,458 そうよ。 430 00:42:36,458 --> 00:42:41,747 彼女の足取りを 追うことは さほど 難しいことじゃないわ。 431 00:42:41,747 --> 00:42:47,319 だったら 小説を読む時間ぐらい あげてもいいわよね。 432 00:42:47,319 --> 00:42:53,319 ♬~ 433 00:42:57,312 --> 00:43:00,382 聞かないの? 434 00:43:00,382 --> 00:43:05,320 私が 10年間 どこで 何をしてたか。 435 00:43:05,320 --> 00:43:09,391 私は 別に。 436 00:43:09,391 --> 00:43:12,391 本を探してたの ずっと。 437 00:43:14,463 --> 00:43:18,383 どうしても 欲しい 古書があるの。 それは もしかしたら➡ 438 00:43:18,383 --> 00:43:21,386 一生を懸けても 見つけられないかもしれない。 439 00:43:21,386 --> 00:43:23,522 人生の全てを懸ける 覚悟がなければ➡ 440 00:43:23,522 --> 00:43:28,522 絶対 手に入れることができない 本当に 貴重な 1冊なの。 441 00:43:30,379 --> 00:43:35,634 本のために 子供たちを置いて 旅に出るなんて➡ 442 00:43:35,634 --> 00:43:38,634 ひどい 母親だと思う? 443 00:43:42,307 --> 00:43:46,795 私は 後悔してないわ。 444 00:43:46,795 --> 00:43:55,795 あなたたちは 大丈夫。 だって 私の子供だもの。 445 00:44:00,676 --> 00:44:07,382 ねえ? 栞子。 その本が どんな本なのか 知りたくない? 446 00:44:07,382 --> 00:44:10,385 私と一緒に来れば 分かるわよ。 447 00:44:10,385 --> 00:44:13,422 知りたいでしょう? 今の あなたなら➡ 448 00:44:13,422 --> 00:44:17,242 私の気持ちが 分かるはずよ。 そうでしょう? 449 00:44:17,242 --> 00:44:30,389 ♬~ 450 00:44:30,389 --> 00:44:35,477 あなたが いなくなってから ずっと➡ 451 00:44:35,477 --> 00:44:39,477 あなたのことを 許せないと 思ってきました。 452 00:44:44,386 --> 00:44:51,376 でも なぜ あのとき あなたが➡ 453 00:44:51,376 --> 00:44:56,765 私たちを置いて 家を出ることを 選んだのか。 454 00:44:56,765 --> 00:45:03,765 その生き方が 今なら 少しだけ 理解できるような気がします。 455 00:45:07,626 --> 00:45:12,230 だから 私は あなたを 止めません。 456 00:45:12,230 --> 00:45:25,510 ♬~ 457 00:45:25,510 --> 00:45:32,510 『押絵』の原稿を 手に入れたら 私は そのまま 日本を出るわ。 458 00:45:34,386 --> 00:45:39,374 来城さんの行き先は あなたも 分かってるでしょ? 459 00:45:39,374 --> 00:45:46,248 もし その気になったら 追い掛けてきなさい。 460 00:45:46,248 --> 00:46:02,547 ♬~ 461 00:46:02,547 --> 00:46:22,384 ♬~ 462 00:46:22,384 --> 00:46:42,454 ♬~ 463 00:46:42,454 --> 00:46:47,454 ♬~ 464 00:47:16,388 --> 00:47:24,379 ああ。 ああー。 ハァー。 465 00:47:24,379 --> 00:47:28,383 《本が読めないなんて もったいない》 466 00:47:28,383 --> 00:47:32,387 《ホントに もったいないです》 467 00:47:32,387 --> 00:47:36,308 《あの。 うちで 働いてもらえませんか?》 468 00:47:36,308 --> 00:47:38,376 《はい?》 469 00:47:38,376 --> 00:47:41,379 《何で? 何で 一人で やろうとしたんですか?》 470 00:47:41,379 --> 00:47:43,381 《あなたは 本を読まないから➡ 471 00:47:43,381 --> 00:47:46,318 私の気持ちが 分からないかもしれない》 472 00:47:46,318 --> 00:47:49,387 《そう思ったんです》 473 00:47:49,387 --> 00:47:53,375 《私 古い本が 好きなんです》 474 00:47:53,375 --> 00:47:58,613 《中に書かれている 物語だけじゃなくて➡ 475 00:47:58,613 --> 00:48:03,301 人の手から手へ渡った 本そのものに➡ 476 00:48:03,301 --> 00:48:06,388 物語があると 思うから》 477 00:48:06,388 --> 00:48:13,311 《五浦さんが 本を 読めるようになったら➡ 478 00:48:13,311 --> 00:48:16,248 私も うれしいです》 479 00:48:16,248 --> 00:48:32,247 ♬~ 480 00:48:32,247 --> 00:48:52,234 ♬~ 481 00:48:52,234 --> 00:49:07,249 ♬~ 482 00:49:07,249 --> 00:49:13,705 ♬~ 483 00:49:13,705 --> 00:49:19,311 (智恵子)《もし その気になったら 追い掛けてきなさい》 484 00:49:19,311 --> 00:49:26,311 ♬~ 485 00:49:54,379 --> 00:49:57,379 ≪おはようございます。 486 00:50:02,454 --> 00:50:07,309 ♬~ 487 00:50:07,309 --> 00:50:11,379 どうかしました? 488 00:50:11,379 --> 00:50:13,379 いや。 489 00:50:19,437 --> 00:50:24,437 おはようございます。 おはようございます。 490 00:50:27,379 --> 00:50:30,382 ≪(戸の開く音) ≪おう。 昨日は お疲れ。 491 00:50:30,382 --> 00:50:33,568 おはようございます。 お出掛けですか? 492 00:50:33,568 --> 00:50:40,608 仕事 仕事。 いい本 集めてくるから 待ってろよ。 493 00:50:40,608 --> 00:50:43,378 (栞子・大輔)いってらっしゃい。 おう。 494 00:50:43,378 --> 00:50:46,378 ≪(戸の開閉音) 495 00:50:48,383 --> 00:50:52,454 五浦さん。 ちょっと 顔色 悪くないですか? 496 00:50:52,454 --> 00:50:58,376 ああ。 実は ゆうべ 本を読もうとしたんですよ。 497 00:50:58,376 --> 00:51:01,446 えっ? でも 5ページで➡ 498 00:51:01,446 --> 00:51:08,653 挫折しちゃいました。 フフフ。 何を読まれたんですか? 499 00:51:08,653 --> 00:51:11,653 『押絵と旅する男』です。 500 00:51:15,377 --> 00:51:18,463 すいませんが。 長くなりますよ? 501 00:51:18,463 --> 00:51:23,463 えっ? それでも よければ お話しします。 502 00:51:26,304 --> 00:51:32,243 お願いします。 はい。 503 00:51:32,243 --> 00:51:46,441 ♬~ 504 00:51:46,441 --> 00:51:51,596 『押絵と旅する男』には 乱歩自身も 深い愛着を 持っていたようです。 505 00:51:51,596 --> 00:51:54,649 まさに 代表作の一つですね。 506 00:51:54,649 --> 00:51:58,386 魚津の蜃気楼を 見に行った 主人公は 帰りの汽車の中で➡ 507 00:51:58,386 --> 00:52:02,674 大きな押絵を持った 奇妙な男に 出会います。 508 00:52:02,674 --> 00:52:06,674 その押絵には 美しい娘と…。