1 00:00:04,357 --> 00:00:06,393 でしょう。 2 00:00:36,322 --> 00:00:39,159 (平四郎)ハハハ…。 (錠之介)井筒殿。 はい? 3 00:00:39,159 --> 00:00:41,494 委細承知。 4 00:00:41,494 --> 00:00:47,000 <定町廻り同心 佐伯錠之介を もてなし➡ 5 00:00:47,000 --> 00:00:51,838 葵殺しを調べ直す許しを得た 平四郎は➡ 6 00:00:51,838 --> 00:00:59,638 おふじや 孫八ら 葵に恨みを持つ人物を疑う> 7 00:01:02,015 --> 00:01:07,353 <だが 弓之助は 葵殺しの現場の様子から➡ 8 00:01:07,353 --> 00:01:11,524 この事件は 何かの間違いで起こった➡ 9 00:01:11,524 --> 00:01:15,028 とっさの犯行ではないかと 推理する> 10 00:01:15,028 --> 00:01:19,365 (弓之助)「人」ではなく 「事」を見るのです。 11 00:01:19,365 --> 00:01:21,301 だから? 12 00:01:21,301 --> 00:01:25,038 あの場で起こった「事」の ありさまだけを見てみると➡ 13 00:01:25,038 --> 00:01:29,876 葵さんに深い恨みを持つ人の 仕業だとは思えないのです。 14 00:01:29,876 --> 00:01:35,148 <平四郎は 鍵を握る もう一人の人物➡ 15 00:01:35,148 --> 00:01:39,819 湊屋総右衛門と会う事になった> 16 00:01:39,819 --> 00:01:44,019 まるで もののけの親戚だな。 17 00:01:47,160 --> 00:01:49,095 (烏の鳴き声) 18 00:01:49,095 --> 00:01:51,095 うわ~! 19 00:01:53,333 --> 00:01:59,633 (鳴き声) 20 00:02:23,196 --> 00:02:26,032 葵の事は気の毒だった。 21 00:02:26,032 --> 00:02:30,703 井筒様には いろいろ ご造作をおかけ致しました。 22 00:02:30,703 --> 00:02:36,809 遅まきながら 厚く お礼とおわび 申し上げる次第でございます。➡ 23 00:02:36,809 --> 00:02:41,981 気持ちばかりでございますが おわびとお礼のしるしに➡ 24 00:02:41,981 --> 00:02:45,485 井筒様のご新造様に お召し頂ければと➡ 25 00:02:45,485 --> 00:02:47,420 あつらえさせたものでございます。 26 00:02:47,420 --> 00:02:52,158 日本橋通2丁目 上総屋の品。 27 00:02:52,158 --> 00:02:54,994 もし お気に召して頂けましたならば➡ 28 00:02:54,994 --> 00:02:57,497 上総屋の者をやりまして➡ 29 00:02:57,497 --> 00:03:01,834 仕立てに取りかかる手配は できておりますので。 30 00:03:01,834 --> 00:03:06,634 手に取ってみてもいいかい? (総右衛門)もちろんでございます。 31 00:03:18,017 --> 00:03:23,189 (錠之介のまねで) 委細… 承知しておるので➡ 32 00:03:23,189 --> 00:03:30,363 遠慮なく。 ヘッヘッヘ…。 33 00:03:30,363 --> 00:03:33,967 …と言いたいところだが どなたかとは違って➡ 34 00:03:33,967 --> 00:03:36,803 小心者に出来てる。 それに こいつは➡ 35 00:03:36,803 --> 00:03:41,140 三十俵二人扶持の小役人の ご新造様には過ぎたべべだ。 36 00:03:41,140 --> 00:03:45,478 気持ちだけ頂いておこう。 37 00:03:45,478 --> 00:03:49,649 お気に召さなかったようだ。 38 00:03:49,649 --> 00:03:53,820 葵の着物も 上総屋のものかい? 39 00:03:53,820 --> 00:03:59,692 あの日 この座敷の衣桁には 白菊柄の着物が掛かってたそうだ。 40 00:03:59,692 --> 00:04:04,163 葵には 特に ひいきのお店は なかったようでございます。 41 00:04:04,163 --> 00:04:08,835 白菊の着物は 確か 白木屋かと。 42 00:04:08,835 --> 00:04:13,835 大店だ。 さすがだな。 43 00:04:16,509 --> 00:04:18,809 佐吉は やっちゃいねえよ。 44 00:04:22,015 --> 00:04:26,352 佐吉の話によれば たまたま あの場に居合わせ➡ 45 00:04:26,352 --> 00:04:29,188 葵の亡骸を…。 46 00:04:29,188 --> 00:04:36,929 いや… 死んだと思っていた 母親の亡骸を見つけただけだ。 47 00:04:36,929 --> 00:04:40,629 下手人は ほかにいる。 48 00:04:42,302 --> 00:04:46,139 そこでだ 湊屋さん。 あんたたちの中に➡ 49 00:04:46,139 --> 00:04:48,074 それと心当たりのあるやつが いるなら➡ 50 00:04:48,074 --> 00:04:50,009 さっくりと 教えてほしいと思ってね。 51 00:04:50,009 --> 00:04:53,813 それが 今夜の用向きだ。 52 00:04:53,813 --> 00:05:00,153 下手人は佐吉。 …という事で 事は収まったはずでございます。 53 00:05:00,153 --> 00:05:03,489 もとより 私どもには あれを そんな立場に追い込んだ➡ 54 00:05:03,489 --> 00:05:06,392 責めがございます。 ですからこそ 手を尽くして➡ 55 00:05:06,392 --> 00:05:12,498 あれを縄付きにはしませなんだ。 湊屋さん。 あんた 本当に➡ 56 00:05:12,498 --> 00:05:17,370 佐吉が葵を殺めたと 信じてるのかい? 57 00:05:17,370 --> 00:05:21,174 事は収まったなんて よそ行きの口上はいらねえ。 58 00:05:21,174 --> 00:05:23,509 本音を聞かせてくれ。 59 00:05:23,509 --> 00:05:25,545 ほかに誰がございましょう。 60 00:05:25,545 --> 00:05:30,245 あんたの頭の中を駆け巡ってる 女は どうだい? 61 00:05:35,455 --> 00:05:38,358 (久兵衛)井筒様の おっしゃっているお方は➡ 62 00:05:38,358 --> 00:05:40,793 おふじ様の事で ございましょうか? 63 00:05:40,793 --> 00:05:43,696 ほかにいるなら教えてくれ。 64 00:05:43,696 --> 00:05:50,136 旦那様。 井筒様に おふじ様の事を➡ 65 00:05:50,136 --> 00:05:52,805 お話しした方が よくはございませんか? 66 00:05:52,805 --> 00:05:56,976 ここは お話しなさった方が➡ 67 00:05:56,976 --> 00:06:00,646 おふじ様にとっても 救いになるのでは…。 68 00:06:00,646 --> 00:06:03,946 おふじが どうかしたのかい? 69 00:06:05,518 --> 00:06:08,318 旦那様。 70 00:06:11,824 --> 00:06:14,861 井筒様は あれが➡ 71 00:06:14,861 --> 00:06:17,861 首くくりのまねをした事は ご存じでしょうか? 72 00:06:20,833 --> 00:06:23,336 佐吉から聞いた。 73 00:06:23,336 --> 00:06:27,507 だが 今の言い方は おふじに気の毒だ。 74 00:06:27,507 --> 00:06:29,542 まね事だったかどうかは 分からねえ。 75 00:06:29,542 --> 00:06:31,844 本気で死ぬつもり だったのかもしれねえ。 76 00:06:31,844 --> 00:06:34,447 まね事であったにしろ なかったにしろ➡ 77 00:06:34,447 --> 00:06:36,949 あの時を境に➡ 78 00:06:36,949 --> 00:06:41,149 おふじは乱心致しました。 79 00:06:42,755 --> 00:06:44,755 あ…? 80 00:06:46,659 --> 00:06:50,463 おふじは 今 己が どこの誰であるのか➡ 81 00:06:50,463 --> 00:06:52,398 分からなくなっております。➡ 82 00:06:52,398 --> 00:07:00,139 昼も夜も うれしいも悲しいも 何もございません。➡ 83 00:07:00,139 --> 00:07:05,945 日がな一日 空を眺めております。➡ 84 00:07:05,945 --> 00:07:12,485 おふじは 人を殺める事はおろか 一人で出歩く事もできやしません。 85 00:07:12,485 --> 00:07:17,824 ですから 下手人は佐吉と思うほか 道はございませなんだ。 86 00:07:17,824 --> 00:07:20,726 何しろ 亡骸のそばにいたところを➡ 87 00:07:20,726 --> 00:07:25,164 捕らえられたのでございますしな。 88 00:07:25,164 --> 00:07:29,035 その事 ほかに知ってる者は? 89 00:07:29,035 --> 00:07:34,607 手前に久兵衛 それと 房吉。 90 00:07:34,607 --> 00:07:36,542 へえ。 91 00:07:36,542 --> 00:07:39,445 あとは ふじ屋敷の女中たちでございます。 92 00:07:39,445 --> 00:07:41,948 ほかには 決して 漏れてはおりません。 93 00:07:41,948 --> 00:07:47,753 井筒様。 この事 どうか ご内聞に願いたいのでございます。 94 00:07:47,753 --> 00:07:52,124 ああ。 俺だって そこまで粗忽者じゃねえ。 95 00:07:52,124 --> 00:07:55,161 いいな? 政五郎。 (政五郎)へい。 96 00:07:55,161 --> 00:08:22,488 ♬~ 97 00:08:22,488 --> 00:08:25,988 かわいそうな女だ。 98 00:08:28,361 --> 00:08:31,163 井筒様が おふじと佐吉のほかに➡ 99 00:08:31,163 --> 00:08:34,133 葵を恨んでいる者がいないかと お聞きなのでしたら➡ 100 00:08:34,133 --> 00:08:38,771 ほかにはございませんと 申すほかありません。 101 00:08:38,771 --> 00:08:43,109 葵は 上方じゃ 手広く 商売をしてたっていうじゃねえか。 102 00:08:43,109 --> 00:08:45,945 商売敵はいなかったのか? 103 00:08:45,945 --> 00:08:49,448 いたとしても 江戸まで追いかけてくるとは…。 104 00:08:49,448 --> 00:08:51,484 あんたの商売敵は どうだい? 105 00:08:51,484 --> 00:08:56,622 私に恨みを持つ者は 数え切れません。 106 00:08:56,622 --> 00:09:00,960 それでも その数ある敵の眼中に 葵は入っておりません。 107 00:09:00,960 --> 00:09:05,131 湊屋総右衛門の敵は 湊屋総右衛門を狙います。 108 00:09:05,131 --> 00:09:09,468 湊屋の身代 のれん 看板。 109 00:09:09,468 --> 00:09:13,139 葵を殺めたところで 湊屋のどこに傷がつきましょうか。 110 00:09:13,139 --> 00:09:15,339 あんたの心には? 111 00:09:21,647 --> 00:09:23,583 どうしたい? 112 00:09:23,583 --> 00:09:26,819 人は 誰でも いつかは死ぬものでございます。 113 00:09:26,819 --> 00:09:32,319 定めがある以上 嘆いてばかりもいられません。 114 00:09:36,429 --> 00:09:39,129 そうかい。 115 00:09:47,073 --> 00:09:51,444 [ 心の声 ] …だとさ 葵さん。➡ 116 00:09:51,444 --> 00:09:53,779 お前さんが死んでも➡ 117 00:09:53,779 --> 00:09:57,450 立ち直れないほど 深い傷じゃねえって➡ 118 00:09:57,450 --> 00:10:00,786 旦那は そう言ったんだぜ。➡ 119 00:10:00,786 --> 00:10:07,986 人は 誰だって みんな いつかは死ぬんだってさ。 120 00:10:11,964 --> 00:10:17,303 (葵)それでこその 湊屋総右衛門でございますよ。 121 00:10:17,303 --> 00:10:22,808 [ 心の声 ] そうかい。 だったら 聞こう。➡ 122 00:10:22,808 --> 00:10:26,808 あんたを殺したのは 誰だい? 123 00:10:34,153 --> 00:10:37,490 (総右衛門)井筒様。 124 00:10:37,490 --> 00:10:43,490 ああ すまねえ。 ぼんやりしちまった。 125 00:10:45,164 --> 00:10:51,937 それで 例の幻術一座にあてられた 孫八だが…。 126 00:10:51,937 --> 00:10:55,508 (久兵衛) あのあと 湊屋の使いの者に➡ 127 00:10:55,508 --> 00:11:00,379 連れ帰ってもらい 手前どもの 目の届くところにおります。 128 00:11:00,379 --> 00:11:03,182 どこに? 129 00:11:03,182 --> 00:11:08,054 私が旦那様に任されている 川崎の別邸に➡ 130 00:11:08,054 --> 00:11:10,690 下男として住み込んでおります。➡ 131 00:11:10,690 --> 00:11:14,560 ここまで連れてくるのは いささか難しいので➡ 132 00:11:14,560 --> 00:11:20,760 井筒様に 足を運んで頂くしかございません。 133 00:11:22,401 --> 00:11:29,709 湊屋さん。 もう ほかに聞く事はねえ。 134 00:11:29,709 --> 00:11:32,678 ただし…➡ 135 00:11:32,678 --> 00:11:39,385 これから先 佐吉には 一切 関わらないでくれ。 136 00:11:39,385 --> 00:11:45,157 あいつを ふじ屋敷に 出入りもさせねえ。 いいな? 137 00:11:45,157 --> 00:11:51,657 それは もう よろしいように。 では 私は これで。 138 00:12:02,708 --> 00:12:08,013 井筒様。 明日 組屋敷の方に➡ 139 00:12:08,013 --> 00:12:10,516 お伺いしても よろしゅうございましょうか? 140 00:12:10,516 --> 00:12:16,816 あ…? ああ いいよ。 それでは。 141 00:12:32,471 --> 00:12:36,342 久兵衛さんは 何のお話があるのでしょうか。 142 00:12:36,342 --> 00:12:40,813 さあな…。 しかし 旦那の言うとおりだ。 143 00:12:40,813 --> 00:12:45,484 湊屋さんてのは もののけの親戚みたいなお人だ。 144 00:12:45,484 --> 00:12:47,484 なあ。 145 00:12:49,155 --> 00:12:54,660 ところで 政五郎。 杢太郎の話だが…。 146 00:12:54,660 --> 00:12:56,595 (杢太郎)晴香先生! 147 00:12:56,595 --> 00:12:58,831 <杢太郎の話とは➡ 148 00:12:58,831 --> 00:13:03,502 法春院へ手習いに通っている おはつが➡ 149 00:13:03,502 --> 00:13:05,838 一時 行方知れずとなり➡ 150 00:13:05,838 --> 00:13:10,709 葵の家で見つかった事である。➡ 151 00:13:10,709 --> 00:13:17,850 杢太郎は 子盗り鬼の仕業だと 断じていた> 152 00:13:17,850 --> 00:13:20,686 いかにも おかしな話です。 153 00:13:20,686 --> 00:13:24,190 同じ場所で 続けての首絞めって事になります。 154 00:13:24,190 --> 00:13:28,527 葵さんの一件と関わりがあると 考えるのが道理でしょうが➡ 155 00:13:28,527 --> 00:13:33,827 しかし どうつながるのか。 あ…。 156 00:13:35,334 --> 00:13:39,805 お… 叔父上。 ああ 行ってこい。 ほら。 157 00:13:39,805 --> 00:13:45,144 おでこも行ってこい。 ほら…。 (ため息) 158 00:13:45,144 --> 00:13:50,015 弓之助はな 悪い夢を見て おねしょをする癖がある。 159 00:13:50,015 --> 00:13:52,651 ええ。 殺しだ何だと➡ 160 00:13:52,651 --> 00:13:55,688 子どもが聞く類いの話じゃ ありませんからね。 161 00:13:55,688 --> 00:13:59,158 心が ついていかないんで ござんしょう。 162 00:13:59,158 --> 00:14:02,061 だが あいつのおつむりを 働かせるのを➡ 163 00:14:02,061 --> 00:14:04,029 やめさせる訳にもいかねえ。 164 00:14:04,029 --> 00:14:07,666 それはそれで あいつにとって酷だ。 165 00:14:07,666 --> 00:14:13,005 今は つらくても 心が育つのを待つしかねえ。 166 00:14:13,005 --> 00:14:15,005 へい。 167 00:14:16,675 --> 00:14:20,179 さてと…。 (腰が鳴る音) 168 00:14:20,179 --> 00:14:25,517 旦那? う~ん… 腰が…。 169 00:14:25,517 --> 00:14:29,317 えっ… 旦那…。 170 00:14:32,324 --> 00:14:38,097 …と まあ そういう訳だ。 ちょうどよかったよ。 171 00:14:38,097 --> 00:14:41,800 お前に知らせをやろうと 思ってたところだったからな。 172 00:14:41,800 --> 00:14:44,703 (佐吉)俺も あのあとの事が 気になってましたから。 173 00:14:44,703 --> 00:14:47,473 旦那のおっしゃるとおり➡ 174 00:14:47,473 --> 00:14:51,143 湊屋とは もう 関わりを持ちたくありません。 175 00:14:51,143 --> 00:14:54,046 お恵も同じ気持ちです。 176 00:14:54,046 --> 00:14:58,884 ですが おふじ様が そんなあんばいだったとは…。 177 00:14:58,884 --> 00:15:04,690 ああ。 下手人は 一体 誰なんだって話だ。 178 00:15:04,690 --> 00:15:09,495 あっ… そういえば 昨日 法春院で➡ 179 00:15:09,495 --> 00:15:13,332 手習いの師匠だとおっしゃる 晴香先生というお方が➡ 180 00:15:13,332 --> 00:15:15,267 通りがけに 挨拶に見えられました。 181 00:15:15,267 --> 00:15:18,170 ああ。 政五郎が そんな事 言ってたな。 182 00:15:18,170 --> 00:15:20,673 お前が 「いい匂いがする」と➡ 183 00:15:20,673 --> 00:15:22,608 べんちゃらを言ってたとな。 184 00:15:22,608 --> 00:15:24,843 いや… いや… べんちゃらではございません。 185 00:15:24,843 --> 00:15:30,015 本当に お着物から いい匂いがしたのでございます。 186 00:15:30,015 --> 00:15:33,786 晴香先生からの匂いは 匂い袋でした。 187 00:15:33,786 --> 00:15:37,623 佐吉さんも お母上の亡骸に駆け寄った時➡ 188 00:15:37,623 --> 00:15:40,125 いい匂いがしたと おっしゃってましたが。 189 00:15:40,125 --> 00:15:44,630 え…? はい。 甘ったるい いい匂いが。 190 00:15:44,630 --> 00:15:48,133 (弓之助)それは 葵さんの着物の匂いでしたか? 191 00:15:48,133 --> 00:15:51,804 いや… 違ったと思います。 192 00:15:51,804 --> 00:15:54,139 ああ ほら… 衣桁に掛けてあった➡ 193 00:15:54,139 --> 00:15:56,809 白菊柄の着物の匂いじゃねえか? おい。 194 00:15:56,809 --> 00:15:58,744 (小平次)旦那。 195 00:15:58,744 --> 00:16:01,313 仕立て上がったばかりの着物は 匂いません。 196 00:16:01,313 --> 00:16:04,650 しばらくの間 匂い袋と一緒にしまうとか➡ 197 00:16:04,650 --> 00:16:08,654 匂い袋を 袖口や胸元に 忍ばせるとかしなくちゃ。 198 00:16:08,654 --> 00:16:10,823 ふん。 うへぇ。 199 00:16:10,823 --> 00:16:13,158 確かに そうです。 200 00:16:13,158 --> 00:16:17,658 白菊の着物からの 匂いじゃなかったような…。 201 00:16:19,498 --> 00:16:26,171 あ… あの… 叔父上…。 叔父上。 202 00:16:26,171 --> 00:16:28,107 ああ? 何だ? あ… ほら。 203 00:16:28,107 --> 00:16:31,043 えっ? またか。 行ってこい。 ほら…。 204 00:16:31,043 --> 00:16:33,979 いえ 違うんです。 205 00:16:33,979 --> 00:16:37,116 あの… 尾籠な話なのですが➡ 206 00:16:37,116 --> 00:16:44,456 人は 首を絞められて死にますと 大抵… ね… その…。 207 00:16:44,456 --> 00:16:49,695 下の方が緩むと申しますか。 ああ。 まあ 大抵そうなるな。 208 00:16:49,695 --> 00:16:55,300 (弓之助)はい。 あ…? そうか。 あの時…。 209 00:16:55,300 --> 00:16:57,803 (嗅ぐ音) 210 00:16:57,803 --> 00:17:02,674 ありゃあ そいつを嗅いでたのか。 211 00:17:02,674 --> 00:17:06,812 はい。 まだ 少々 残り香が残っておりました。 212 00:17:06,812 --> 00:17:08,847 残り香ねえ。 213 00:17:08,847 --> 00:17:13,986 事程左様に あの臭いというのは 強烈なものですが➡ 214 00:17:13,986 --> 00:17:17,022 佐吉さんは いい匂いがした事の方を➡ 215 00:17:17,022 --> 00:17:21,727 覚えていたんですよね? へい。 そっちの臭いは…。 216 00:17:21,727 --> 00:17:27,166 けどよ 匂い袋からの匂いは そんな強いもんじゃねえだろう。 217 00:17:27,166 --> 00:17:29,501 そこです。 どこ? 218 00:17:29,501 --> 00:17:32,404 あ… ですから 匂い袋の匂いは➡ 219 00:17:32,404 --> 00:17:35,774 袋が破けて 中身が散ったりしない限りは➡ 220 00:17:35,774 --> 00:17:37,709 ほのかな匂いです。 221 00:17:37,709 --> 00:17:42,114 じゃ 佐吉さんの嗅いだ 匂いの正体は 何なんでしょうか? 222 00:17:42,114 --> 00:17:46,314 何だったんでしょうか…。 俺にも分かりません。 223 00:17:47,920 --> 00:17:50,456 だてに寝小便してねえな。 224 00:17:50,456 --> 00:17:52,391 弓之助! この野郎! 叔父上! 叔父上! 叔父上! 225 00:17:52,391 --> 00:17:54,793 (腰が鳴る音) 腰が…。 226 00:17:54,793 --> 00:17:57,629 あ…。 旦那? えっ…? 旦那! 227 00:17:57,629 --> 00:17:59,929 叔父上! 旦那! えび反った。 えび反った。 228 00:18:19,885 --> 00:18:25,157 <2年ばかり前 久兵衛は 鉄瓶長屋で➡ 229 00:18:25,157 --> 00:18:28,494 口うるさいが 実直な差配人として➡ 230 00:18:28,494 --> 00:18:35,194 平四郎や お徳と 見知った間柄であった> 231 00:18:37,769 --> 00:18:39,705 ≪(小平次)旦那。 232 00:18:39,705 --> 00:18:45,444 おいしそうな干菓子を 頂きましたよ。 233 00:18:45,444 --> 00:18:49,781 おお そうかい。 お懐かしゅうございます。 234 00:18:49,781 --> 00:18:56,481 お元気そうで何よりです。 うへぇ。 お願いします。 235 00:19:06,331 --> 00:19:11,803 ≪湊屋は あんたが とっくに 川崎に戻ってると思ってんだろ? 236 00:19:11,803 --> 00:19:15,641 いいのかい? 必要とあらば➡ 237 00:19:15,641 --> 00:19:22,514 主に うそをつきますのも 奉公人の働きのうちでございます。 238 00:19:22,514 --> 00:19:27,152 なるほど。 …で? 239 00:19:27,152 --> 00:19:33,759 井筒様。 旦那様と おふじ様の間に➡ 240 00:19:33,759 --> 00:19:39,932 ある事情がございます。 それを聞けってか。 241 00:19:39,932 --> 00:19:45,804 井筒様には 湊屋の事を 知っておいて頂きたく。 242 00:19:45,804 --> 00:19:54,112 実は 湊屋のご長男 跡取りの宗一郎様は➡ 243 00:19:54,112 --> 00:19:57,783 旦那様の 実のお子ではございません。 244 00:19:57,783 --> 00:20:00,285 …へっ? 245 00:20:00,285 --> 00:20:03,785 久兵衛。 はい。 246 00:20:09,795 --> 00:20:12,130 総右衛門と おふじの縁組みは➡ 247 00:20:12,130 --> 00:20:16,001 総右衛門の商人としての 先行きを見込んだ➡ 248 00:20:16,001 --> 00:20:19,638 おふじの父親が まとめたって話だったが。 249 00:20:19,638 --> 00:20:27,145 ですが 当時 おふじ様には よそに思うお人がいらしたようで。 250 00:20:27,145 --> 00:20:32,818 つまり 嫁になってからも その男とって事か。 251 00:20:32,818 --> 00:20:37,155 ひそかに 通じておられたようです。 252 00:20:37,155 --> 00:20:41,994 もっとも 宗一郎様が生まれて間もなく➡ 253 00:20:41,994 --> 00:20:45,994 その男は 病を得て死んだそうです。 254 00:20:47,799 --> 00:20:52,638 ≪不義の子って訳か。 宗一郎は…。 255 00:20:52,638 --> 00:20:57,542 手前が この事を知っている事を 旦那様も ご存じありません。 256 00:20:57,542 --> 00:21:01,346 だったら あんたは 誰から聞いたんだ? 257 00:21:01,346 --> 00:21:07,519 ご本人の宗一郎様からです。 258 00:21:07,519 --> 00:21:14,026 <久兵衛が任されている 川崎にある湊屋の別邸に➡ 259 00:21:14,026 --> 00:21:21,526 ある日 宗一郎が 突然 訪ねてきた事があった> 260 00:21:23,201 --> 00:21:29,074 (宗一郎) そうか。 知らなかったのか。 261 00:21:29,074 --> 00:21:32,010 お前は 親父の懐刀だから➡ 262 00:21:32,010 --> 00:21:36,148 知らされているとばかり 思っていた。 263 00:21:36,148 --> 00:21:40,986 ですが そのような話 一体 誰から➡ 264 00:21:40,986 --> 00:21:44,656 お聞きになったので ございますか? 265 00:21:44,656 --> 00:21:46,992 おふくろからだよ。 266 00:21:46,992 --> 00:22:01,173 ♬~ 267 00:22:01,173 --> 00:22:10,515 (おふじ)お前はね 宗一郎。 旦那様のお子じゃないんだよ。 268 00:22:10,515 --> 00:22:15,187 それは 旦那様も ご存じの事。 269 00:22:15,187 --> 00:22:19,858 旦那様は お前を跡取りに据えると おっしゃってるけど➡ 270 00:22:19,858 --> 00:22:23,158 先は分からない。 271 00:22:24,730 --> 00:22:29,034 だから お前も覚悟をしておくんだ。 272 00:22:29,034 --> 00:22:34,473 おふじも 余計な事を言ったもんだ。 273 00:22:34,473 --> 00:22:36,708 まあ 俺が 宗一郎なら➡ 274 00:22:36,708 --> 00:22:39,611 そんな事 打ち明けられた時点で 家を飛び出してる。 275 00:22:39,611 --> 00:22:42,481 さもなきゃ 放蕩三昧で大暴れだ。 276 00:22:42,481 --> 00:22:46,818 それを 知らん顔して 真面目に商いやってるってか。 277 00:22:46,818 --> 00:22:50,155 はっ! 仏様かよ 宗一郎は…。 278 00:22:50,155 --> 00:22:55,660 井筒様には 湊屋の悪い事ばかり お見せしなければならず➡ 279 00:22:55,660 --> 00:23:00,165 まことに…。 何だっていいや。 280 00:23:00,165 --> 00:23:04,503 …で 久兵衛さん。 281 00:23:04,503 --> 00:23:08,673 あんた どうして こんな話を 俺に聞かせたんだ? 282 00:23:08,673 --> 00:23:11,009 葵殺しには関わりあるのか? 283 00:23:11,009 --> 00:23:15,881 いいえ。 ただ 旦那様のために➡ 284 00:23:15,881 --> 00:23:20,185 少々 言い訳を したくなりましたので。 285 00:23:20,185 --> 00:23:26,691 つまり その… 葵様と比べて おふじ様に対するなさりようが➡ 286 00:23:26,691 --> 00:23:33,465 冷たく厳しいと 井筒様は 思っておいででしょうから。 287 00:23:33,465 --> 00:23:39,805 弁解に来た訳だ。 総右衛門の忠実な奉公人として。 288 00:23:39,805 --> 00:23:46,144 ですが 本当のところは 分からないのでございます。 289 00:23:46,144 --> 00:23:48,480 …うん? 290 00:23:48,480 --> 00:23:55,654 長じて 宗一郎様は お声や立ち居振る舞いが➡ 291 00:23:55,654 --> 00:23:59,157 旦那様に似てまいりました。 292 00:23:59,157 --> 00:24:06,498 宗一郎様が お生まれになったのは ご夫婦が添ってからの事。 293 00:24:06,498 --> 00:24:10,836 月日に足りない事もありません。 294 00:24:10,836 --> 00:24:17,008 ですから 恐らく おふじ様も どちらの…。 295 00:24:17,008 --> 00:24:19,044 なるほど。 296 00:24:19,044 --> 00:24:24,683 おふじは ただただ 宗一郎を 思う男の子だと思いたかった。 297 00:24:24,683 --> 00:24:26,618 だから 総右衛門に告げた。 298 00:24:26,618 --> 00:24:31,356 総右衛門は それをのみ下し 葵に逃げた。 299 00:24:31,356 --> 00:24:36,328 はあ… なんともはや 俺には もう お手上げだ。 300 00:24:36,328 --> 00:24:39,464 日々の暮らしで 精いっぱいのやつらの事は➡ 301 00:24:39,464 --> 00:24:44,135 俺も よく分かる。 だが 湊屋さんの事情だけは➡ 302 00:24:44,135 --> 00:24:50,008 手に負えねえや。 ただ…。 303 00:24:50,008 --> 00:24:54,479 一つ 分かった事がある。 304 00:24:54,479 --> 00:24:57,148 てめえに どんな きつい事を言おうと➡ 305 00:24:57,148 --> 00:24:59,818 母親は母親だ。 306 00:24:59,818 --> 00:25:03,655 おふじの気がふれたもとが 葵にあると知ったなら➡ 307 00:25:03,655 --> 00:25:10,655 宗一郎が 葵を殺してやろうと 考えたって 不思議じゃねえ。 308 00:25:12,330 --> 00:25:14,266 本当の父親じゃない➡ 309 00:25:14,266 --> 00:25:17,502 総右衛門の泣きっ面が 見られるんだからよ。 310 00:25:17,502 --> 00:25:21,172 つまりは 「鼬の最後っ屁」って訳だ。 311 00:25:21,172 --> 00:25:25,510 井筒様。 顔は仏でも 心は夜叉。 312 00:25:25,510 --> 00:25:31,016 湊屋さんの血筋なら お得意だろ? 313 00:25:31,016 --> 00:26:12,691 ♬~ 314 00:26:12,691 --> 00:26:14,691 宗一郎。 315 00:26:22,834 --> 00:26:26,334 いや… いい。 316 00:26:35,113 --> 00:26:37,813 [ 心の声 ] まさか…。 317 00:26:43,455 --> 00:26:45,957 うう…。 318 00:26:45,957 --> 00:26:50,128 ああ… すまねえな。 (志乃)いいえ。 319 00:26:50,128 --> 00:26:53,798 はあ…。 320 00:26:53,798 --> 00:26:57,135 なかなか やみませんわね。 321 00:26:57,135 --> 00:27:01,473 霧雨は なぜかしら悲しいものです。 322 00:27:01,473 --> 00:27:06,144 空も 寂しい色をしております。 323 00:27:06,144 --> 00:27:09,047 こんな雨を見てるとさ➡ 324 00:27:09,047 --> 00:27:15,820 ふっとさ 妙に 泣きたくなったりするものかい? 325 00:27:15,820 --> 00:27:18,156 はい? 326 00:27:18,156 --> 00:27:22,994 お前さんが おぼこ娘のような事を言うからさ。 327 00:27:22,994 --> 00:27:26,865 どんなおなごでも どんな大年増になっても➡ 328 00:27:26,865 --> 00:27:30,735 どこかに おぼこ娘の部分を 残しているものです。 329 00:27:30,735 --> 00:27:33,438 そうかねえ。 330 00:27:33,438 --> 00:27:37,308 殿方が どんなに 枯れたお年寄りになっても➡ 331 00:27:37,308 --> 00:27:39,778 どこかに すけべえを残しているのと➡ 332 00:27:39,778 --> 00:27:41,713 同じ事でございますよ。 333 00:27:41,713 --> 00:27:44,913 ハハハ…。 334 00:27:47,452 --> 00:27:50,355 悋気は どうかな? 335 00:27:50,355 --> 00:27:53,625 あれは 大年増になっても 続くものかな? 336 00:27:53,625 --> 00:28:03,635 さあ…。 あなた それは 謎かけでございますか? 337 00:28:03,635 --> 00:28:05,570 えっ? 338 00:28:05,570 --> 00:28:09,140 何やら 悪さをしておいでなので ございますか? 339 00:28:09,140 --> 00:28:11,810 …いやいや うっ! (腰が鳴る音) 340 00:28:11,810 --> 00:28:13,745 平気で…。 平気だ 平気だ。 341 00:28:13,745 --> 00:28:18,245 頂きます。 はい。 342 00:28:32,931 --> 00:28:37,102 そういや 坊ちゃん 近頃は… ほら 坊ちゃんお得意の➡ 343 00:28:37,102 --> 00:28:41,439 こいつは やりませんね。 ああ。 測る事はやめたのです。 344 00:28:41,439 --> 00:28:43,374 もう 時期ではないと 先生が…。 345 00:28:43,374 --> 00:28:47,612 ふ~ん。 塾で教わっている 測量好きの先生か? 346 00:28:47,612 --> 00:28:51,483 はい。 先生は 「物を測るという稽古は積んだ。➡ 347 00:28:51,483 --> 00:28:55,954 これからは 測れぬところを 測りなさい」と。 348 00:28:55,954 --> 00:28:58,790 測れないところって どこですか? 349 00:28:58,790 --> 00:29:02,293 あ… 人の思いでございましょうか。 350 00:29:02,293 --> 00:29:08,466 例えば お嫁入りの用意をしている とよねえ様の幸せな気持ちとか。 351 00:29:08,466 --> 00:29:11,803 えっ! そう? 決まったか。 352 00:29:11,803 --> 00:29:14,305 は… はい。 とよねえ様のお顔は➡ 353 00:29:14,305 --> 00:29:17,505 あのお日様よりも輝いております。 354 00:29:23,982 --> 00:29:26,885 よくできました。 ウフフ。 355 00:29:26,885 --> 00:29:31,489 おとよには 幸せになってほしいもんだ。 356 00:29:31,489 --> 00:29:35,093 どこぞの大問屋の主人と お内儀のような➡ 357 00:29:35,093 --> 00:29:38,763 掛け違いなどないようにな。 はい。 358 00:29:38,763 --> 00:29:40,763 うん。 359 00:29:50,108 --> 00:29:52,443 えっ? おいおいおい じいさん。 360 00:29:52,443 --> 00:29:54,379 どうした? 腰 やっちまったか? 361 00:29:54,379 --> 00:29:56,314 (友兵衛)へえ。 ああ…。 362 00:29:56,314 --> 00:30:00,785 た… 立とうとしたら 思いっきり ギク~ッと…。 363 00:30:00,785 --> 00:30:03,621 そうかい。 おい…。 364 00:30:03,621 --> 00:30:06,457 俺は治ったぜ。 え~っ! ハハハ! 365 00:30:06,457 --> 00:30:08,393 お大事にな。 366 00:30:08,393 --> 00:30:10,328 お達者で。 367 00:30:10,328 --> 00:30:12,964 さよなら~。 368 00:30:12,964 --> 00:30:15,466 さよなら? (腰が鳴る音) 369 00:30:15,466 --> 00:30:18,966 ああ~っ! 痛い 痛い 痛い…! 370 00:30:21,639 --> 00:30:26,144 これは 新しいおかずですね。 (お恵)本当 おいしそう。 371 00:30:26,144 --> 00:30:29,480 (おさん)でしょう? 八はい豆腐っていって➡ 372 00:30:29,480 --> 00:30:32,817 水とお酒で煮て しょうゆを加えて煮立ててから➡ 373 00:30:32,817 --> 00:30:36,688 お豆腐を入れて グラグラッときたら おたまで すくって➡ 374 00:30:36,688 --> 00:30:38,990 大根おろしをかけて頂くんです。 375 00:30:38,990 --> 00:30:43,161 そうなのですね。 今度 作ってみます。 376 00:30:43,161 --> 00:30:47,498 ねえ 長坊。 は~い。 食べたいです。 377 00:30:47,498 --> 00:30:49,834 (おしま)買ってきゃいいんだよ。 買ってきゃ。 378 00:30:49,834 --> 00:30:53,171 (おさき) そうさ。 売るほどあんだから。 379 00:30:53,171 --> 00:30:55,106 はい。 380 00:30:55,106 --> 00:30:57,842 (お徳)お恵ちゃん。 おいしいもの いっぱい➡ 381 00:30:57,842 --> 00:31:02,513 佐吉さんに食べさせてりゃ そのうち 子宝に恵まれるよ。 382 00:31:02,513 --> 00:31:07,852 嫌だ お徳さんたら。 (笑い声) 383 00:31:07,852 --> 00:31:12,190 明後日の朝 川崎に行く事になったんだ。 384 00:31:12,190 --> 00:31:14,859 先方に頼み事をするんで➡ 385 00:31:14,859 --> 00:31:17,762 土産の折詰を こしらえてほしいと思ってさ。 386 00:31:17,762 --> 00:31:19,731 頼み事って何ですか? 387 00:31:19,731 --> 00:31:24,535 内々の話だ。 できれば 立派な折詰を➡ 388 00:31:24,535 --> 00:31:27,572 こしらえてほしいんだよ。 できるかい? 389 00:31:27,572 --> 00:31:32,143 へい。 旦那の頼みとあらば どこまでもってね。 390 00:31:32,143 --> 00:31:35,647 ねえ? お徳さん。 うん。 そりゃ いいけどさ➡ 391 00:31:35,647 --> 00:31:38,683 何人分ぐらいの折詰ですか? 2~3人ってとこか。 392 00:31:38,683 --> 00:31:40,818 あっ 私が しょっていきますんで。 393 00:31:40,818 --> 00:31:43,855 そうだよね。 そういう時の中間さんだもんね。 394 00:31:43,855 --> 00:31:45,990 うへぇ。 395 00:31:45,990 --> 00:31:51,162 じゃあ 旦那と小平次さんの 道中の握り飯も要りますね。 396 00:31:51,162 --> 00:31:53,831 一緒に こさえてくれると ありがたい。 397 00:31:53,831 --> 00:31:55,767 でしたら 明後日の朝➡ 398 00:31:55,767 --> 00:31:59,003 暁七つぐらいまでには お届けに上がります。 399 00:31:59,003 --> 00:32:00,939 さて どうしようかねえ。 400 00:32:00,939 --> 00:32:04,342 あんまり重いと 小平次さんが難儀だしね。 401 00:32:04,342 --> 00:32:08,513 かといって 手 抜く訳にもいかないし。 えっ? 402 00:32:08,513 --> 00:32:12,383 板に着いてきたなと思ってさ。 仕出し屋のおかみが…。 403 00:32:12,383 --> 00:32:15,386 うへぇ~。 ハハハ…! 404 00:32:15,386 --> 00:32:18,690 はい お待ち。 ナスの煮物だよ。 405 00:32:18,690 --> 00:32:21,726 うわ~ おいしそう。 これ どうやって作るんですか? 406 00:32:21,726 --> 00:32:25,029 これはね ナスをごま油で さっと炒めてから➡ 407 00:32:25,029 --> 00:32:28,700 だし汁と しょうゆと みりんで 煮るんだよ。 408 00:32:28,700 --> 00:32:30,735 仕上げは 大根おろし…。 409 00:32:30,735 --> 00:32:34,806 [ 心の声 ] お徳。 その仕出しは➡ 410 00:32:34,806 --> 00:32:39,606 お前が大好きだった久兵衛に 食わせるんだ。 411 00:32:41,479 --> 00:32:43,414 湊屋に ちゃんと話しとかなきゃ➡ 412 00:32:43,414 --> 00:32:46,150 後で いろいろ 面倒なんじゃないのかい? ええ。 413 00:32:46,150 --> 00:32:48,850 あんたの立場も つらいもんだ。 414 00:32:50,488 --> 00:32:53,324 [ 心の声 ] あいつを喜ばしてやりたいんだ。➡ 415 00:32:53,324 --> 00:32:57,495 お前が作ったもんだって言ってな。 416 00:32:57,495 --> 00:33:01,165 食べてみるかい? ウフフ…。 417 00:33:01,165 --> 00:33:04,202 旦那。 私の顔に 何かついてんのかい? 418 00:33:04,202 --> 00:33:08,840 いや。 相変わらず べっぴんだなあと思ってさ。 419 00:33:08,840 --> 00:33:13,040 怒るよ 旦那! 全く…。 ハハハ…。 420 00:33:15,613 --> 00:33:18,016 <お徳の店の帰り➡ 421 00:33:18,016 --> 00:33:23,888 平四郎は お六が働いている店に 立ち寄った。➡ 422 00:33:23,888 --> 00:33:29,727 神田多町1丁目の いさごという飯屋だ> 423 00:33:29,727 --> 00:33:32,663 そうでした。 叔父上が川崎に行ってる間に➡ 424 00:33:32,663 --> 00:33:34,799 政五郎さんに お願いして➡ 425 00:33:34,799 --> 00:33:37,301 芋洗坂の 例の おはつという女の子に➡ 426 00:33:37,301 --> 00:33:39,237 会いに行っても よろしいでしょうか? 427 00:33:39,237 --> 00:33:41,973 首絞めに遭った子か? はい。 428 00:33:41,973 --> 00:33:44,809 いいだろう。 俺からも頼んでおく。 429 00:33:44,809 --> 00:33:48,980 (お六)どうですか? 旦那。 いや~ こいつは うめえや。 430 00:33:48,980 --> 00:33:53,151 いや 特に この山椒を利かした 身欠き鰊は 絶品だな。 431 00:33:53,151 --> 00:33:55,086 ありがとうございます。 432 00:33:55,086 --> 00:33:57,488 でも 旦那に こんな きれいな坊ちゃんがいたなんて➡ 433 00:33:57,488 --> 00:33:59,524 お見それしました。 甥っ子だ。 434 00:33:59,524 --> 00:34:02,360 だから 顔が似てねえ。 なっ? どうでしょうか。 435 00:34:02,360 --> 00:34:04,662 ハハハ…。 ハハハ…。 436 00:34:04,662 --> 00:34:06,998 うへぇ。 うへぇですか? 437 00:34:06,998 --> 00:34:10,034 ああ こいつの口癖だ。 ああ…。 438 00:34:10,034 --> 00:34:12,334 ところで お六。 439 00:34:14,505 --> 00:34:18,376 何か 葵の事で 思い出した事はあったかい? 440 00:34:18,376 --> 00:34:20,845 それなんですけどね➡ 441 00:34:20,845 --> 00:34:23,514 洗いざらい しゃべったと 思ってたんですけど➡ 442 00:34:23,514 --> 00:34:28,686 葵様が言った事で 一つだけ 付け足しておこうかって思って。 443 00:34:28,686 --> 00:34:31,486 付け足す? 444 00:34:38,362 --> 00:34:41,799 そんな事を…。 445 00:34:41,799 --> 00:34:45,303 何ですか? 後でな。 はい。 446 00:34:45,303 --> 00:34:47,238 お六さん! はい! こっち。 447 00:34:47,238 --> 00:34:50,808 じゃ 旦那 ごゆっくり。 うん。 448 00:34:50,808 --> 00:34:54,979 焼き魚1つに 煮魚1つ。 はい。 449 00:34:54,979 --> 00:34:58,015 え~っと それから きんぴらを2つ頂いて…。 450 00:34:58,015 --> 00:35:03,154 葵も こんな暮らしが したかったろうよ。 451 00:35:03,154 --> 00:35:07,024 あんな 隠居みてえな暮らしじゃなくよ。 452 00:35:07,024 --> 00:35:09,494 えっ…? 453 00:35:09,494 --> 00:35:13,364 本人だって 体を養生して 元に戻れば➡ 454 00:35:13,364 --> 00:35:19,504 また 忙しい日々に 戻る事ができると…➡ 455 00:35:19,504 --> 00:35:22,173 思ってたはずだ。 456 00:35:22,173 --> 00:35:41,859 ♬~ 457 00:35:41,859 --> 00:35:49,467 下手人の野郎も 今頃 知らん顔で 飯を食ってるかもしれねえな。 458 00:35:49,467 --> 00:35:52,467 面白くねえ。 459 00:35:58,809 --> 00:36:04,482 <平四郎が川崎へ行く当日である> 460 00:36:04,482 --> 00:36:06,817 あなたが お徳さん。 461 00:36:06,817 --> 00:36:09,320 この間 頂いた 仕出しのおかず➡ 462 00:36:09,320 --> 00:36:12,356 大層 おいしゅうございました。 めっそうもない。 463 00:36:12,356 --> 00:36:16,093 旦那には いつも お世話になってばかりいて。 464 00:36:16,093 --> 00:36:19,330 ご新造様にも こうして お目にかかれて➡ 465 00:36:19,330 --> 00:36:24,669 幸せでございます。 ご丁寧なご挨拶 恐れ入ります。 466 00:36:24,669 --> 00:36:26,604 旦那! えっ? 467 00:36:26,604 --> 00:36:29,904 右と左 脚絆の高さが違うよ! 468 00:36:33,377 --> 00:36:37,248 …あっ 申し訳ありません。 出過ぎた事を。 469 00:36:37,248 --> 00:36:41,152 いえ。 私も どうも そのような気が致します。 470 00:36:41,152 --> 00:36:43,452 ですよね? 471 00:36:47,792 --> 00:36:50,828 旦那も お徳さんと ご新造さんにかかっちゃ➡ 472 00:36:50,828 --> 00:36:55,328 形なしだ。 うへぇ。 フフフ…。 473 00:36:59,136 --> 00:37:03,641 <こうして 平四郎が 小平次と共に➡ 474 00:37:03,641 --> 00:37:08,479 川崎に旅立って しばらくした後> 475 00:37:08,479 --> 00:37:11,148 今日は 何をなさろうってんですか? 476 00:37:11,148 --> 00:37:14,051 芋洗坂の杢太郎と おはつって子から➡ 477 00:37:14,051 --> 00:37:16,654 話を聞き出すだけですかい? 478 00:37:16,654 --> 00:37:19,156 実は 杢太郎さんに➡ 479 00:37:19,156 --> 00:37:21,092 おはつちゃんを かくまってもらおうと➡ 480 00:37:21,092 --> 00:37:23,494 思っているのです。 かくまう? 481 00:37:23,494 --> 00:37:26,831 はい。 おはつちゃんが 首を絞められたのは➡ 482 00:37:26,831 --> 00:37:32,937 多分 脅されたのだと思います。 葵さんを手にかけた下手人に…。 483 00:37:32,937 --> 00:37:37,275 葵殺しの下手人に脅された? 484 00:37:37,275 --> 00:37:41,779 …だとしたら おはつは 下手人を見たという事ですか? 485 00:37:41,779 --> 00:37:45,279 見たというより 出くわしたのでしょう。 486 00:37:48,119 --> 00:37:50,154 ≪(物音) 487 00:37:50,154 --> 00:38:04,568 ♬~ 488 00:38:04,568 --> 00:38:08,506 ところで 坊ちゃん いや… 弓之助さんは➡ 489 00:38:08,506 --> 00:38:11,642 葵殺しは 何かの間違いで➡ 490 00:38:11,642 --> 00:38:15,813 とっさに起こってしまった事だと 井筒の旦那におっしゃったと➡ 491 00:38:15,813 --> 00:38:19,317 そう お聞きしました。 そうです。 492 00:38:19,317 --> 00:38:23,988 今回の事は 私 「通りもの」の仕業ではないかと➡ 493 00:38:23,988 --> 00:38:26,023 考えております。 「通りもの」? 494 00:38:26,023 --> 00:38:28,159 (せきこみ) 495 00:38:28,159 --> 00:38:32,997 <「通りもの」とは ある時 唐突に乱心し➡ 496 00:38:32,997 --> 00:38:40,738 暴れたり 人を殺したりする 文字どおり 通って過ぎるもの> 497 00:38:40,738 --> 00:38:42,673 ですが 通りものが➡ 498 00:38:42,673 --> 00:38:46,110 2度も 同じ場所で 同じ事を 繰り返すって話は➡ 499 00:38:46,110 --> 00:38:49,013 聞いた事がござんせん。 それに 通りものが➡ 500 00:38:49,013 --> 00:38:55,619 いきなり 家に上がって 座敷で殺すってのも げせねえ。 501 00:38:55,619 --> 00:38:59,123 もっと言えば 家に行った時は 乱心していて➡ 502 00:38:59,123 --> 00:39:01,058 そのあと 正気に戻って➡ 503 00:39:01,058 --> 00:39:03,627 おはつに出くわした事を 思い出して➡ 504 00:39:03,627 --> 00:39:07,131 それで 口封じなんて 考えられませんや。 505 00:39:07,131 --> 00:39:10,034 通りものは てめえが やらかした事を➡ 506 00:39:10,034 --> 00:39:12,303 まるで 覚えてねえもんです。 507 00:39:12,303 --> 00:39:15,639 ですから 葵さんを殺した 通りものは➡ 508 00:39:15,639 --> 00:39:18,542 私たちが普通に知っている 通りものとは➡ 509 00:39:18,542 --> 00:39:21,145 違うのではないかと…。 510 00:39:21,145 --> 00:39:26,317 あまり うまく言えませんが ただ…。➡ 511 00:39:26,317 --> 00:39:30,654 それは 急に起こったのです。➡ 512 00:39:30,654 --> 00:39:34,425 そして 下手人が我に返って逃げ出す時➡ 513 00:39:34,425 --> 00:39:36,625 おはつちゃんに 顔を見られた。 514 00:39:40,598 --> 00:39:42,533 おはつちゃんが出くわした その人は➡ 515 00:39:42,533 --> 00:39:45,269 おはつちゃんが 顔を見知ってる人なのです。 516 00:39:45,269 --> 00:39:48,773 おはつちゃんにとっては その人を見た事は➡ 517 00:39:48,773 --> 00:39:52,643 どういう意味かは分からない。 ですが その人物にとっては➡ 518 00:39:52,643 --> 00:39:55,112 何かの拍子に おはつちゃんの口から➡ 519 00:39:55,112 --> 00:39:57,047 自分の事が しゃべられたら たまらない。 520 00:39:57,047 --> 00:39:59,450 だから 脅しをかけた。 521 00:39:59,450 --> 00:40:01,786 …子盗り鬼。 522 00:40:01,786 --> 00:40:05,623 そうです。 子盗り鬼の仕業に 見せかけたのです。 523 00:40:05,623 --> 00:40:07,558 つまり 下手人は➡ 524 00:40:07,558 --> 00:40:10,961 芋洗坂の家のそばにいるはずに 違いないのです。 525 00:40:10,961 --> 00:40:12,897 今も いるはずです。 526 00:40:12,897 --> 00:40:16,133 下手人が 次に おはつちゃんを狙う時は➡ 527 00:40:16,133 --> 00:40:20,971 本気です。 だから 急がなければなりません。 528 00:40:20,971 --> 00:40:38,823 ♬~ 529 00:40:38,823 --> 00:40:41,123 (久兵衛)井筒様。 530 00:40:48,165 --> 00:40:50,501 よう。 久兵衛。 531 00:40:50,501 --> 00:40:56,307 井筒様。 本日は 遠いところ ご足労頂き 恐れ入ります。