1 00:02:35,918 --> 00:02:39,071 いやぁ いい式だったねぇ。 2 00:02:39,071 --> 00:02:41,590 俺 泣きそうになっちゃったよ。 3 00:02:41,590 --> 00:02:44,510 渡部先生 気落ちなさってましたね。 4 00:02:44,510 --> 00:02:46,929 うん そりゃそうだよ。 5 00:02:46,929 --> 00:02:51,917 あの奥さん 渡部先生が 1冊も 本出せてない頃から➡ 6 00:02:51,917 --> 00:02:55,087 ずっと支えてたんだから。 7 00:02:55,087 --> 00:02:58,257 50年連れ添った奥さん 先に亡くすって➡ 8 00:02:58,257 --> 00:03:01,243 どんな気分なのかなぁ。 9 00:03:01,243 --> 00:03:03,395 《50年。 10 00:03:03,395 --> 00:03:06,231 愛って そんなに続くものなのね》 11 00:03:06,231 --> 00:03:11,070 俺さぁ ずっと思ってたんだけど➡ 12 00:03:11,070 --> 00:03:15,257 お前 なんで そんな荷物多いの? 13 00:03:15,257 --> 00:03:18,927 先生が ご著書を奥様のお棺に 入れたいかと思いまして➡ 14 00:03:18,927 --> 00:03:21,430 念のために デビュー作から すべてお持ちしました。 15 00:03:21,430 --> 00:03:23,732 ですが 葬儀社の方に 止められてしまって…。 16 00:03:23,732 --> 00:03:25,751 うん そりゃそうだろ。 17 00:03:25,751 --> 00:03:28,237 どら 1個持ってやるよ。 なっ! 18 00:03:28,237 --> 00:03:30,255 大丈夫です。 え? あぁ…。 19 00:03:30,255 --> 00:03:32,858 それより編集長 私 残って➡ 20 00:03:32,858 --> 00:03:34,760 葬儀のお手伝いをしたほうが よいのではないでしょうか? 21 00:03:34,760 --> 00:03:38,147 ああ それは 担当の橋本の仕事だからいいの。 22 00:03:38,147 --> 00:03:41,283 っていうか お前 渡部先生の好みのタイプじゃないし。 23 00:03:41,283 --> 00:03:44,336 見たろ? 各社の担当編集者。 24 00:03:44,336 --> 00:03:46,738 み~んな 巨乳のゆるふわちゃん。 25 00:03:46,738 --> 00:03:57,232 ♬~ 26 00:03:57,232 --> 00:03:59,418 はぁ 確かに 皆さん➡ 27 00:03:59,418 --> 00:04:02,905 橋本さんと似たようなタイプの 女性だなとは思いましたが。 28 00:04:02,905 --> 00:04:05,924 うん 渡部先生 気に入った担当にしか➡ 29 00:04:05,924 --> 00:04:08,010 原稿 渡さないから。 30 00:04:08,010 --> 00:04:09,928 どこの編集部も みんな 似たような子が➡ 31 00:04:09,928 --> 00:04:11,897 担当になっちゃうんだよ。 32 00:04:11,897 --> 00:04:15,067 ああ 奥さんの若い頃も➡ 33 00:04:15,067 --> 00:04:19,571 まさに その 巨乳のゆるふわちゃんだったって。 34 00:04:19,571 --> 00:04:22,741 で ある日 嫉妬して怒っちゃって➡ 35 00:04:22,741 --> 00:04:24,760 そしたら 先生➡ 36 00:04:24,760 --> 00:04:29,231 「バカだなぁ。 いくつになったって 君が いちばん好きだよ。 37 00:04:29,231 --> 00:04:33,752 だから 君に似ている子を見ると うれしくなるんだ」って➡ 38 00:04:33,752 --> 00:04:36,588 愛の告白をしたんだってさ。 39 00:04:36,588 --> 00:04:38,590 先生 ああ見えても➡ 40 00:04:38,590 --> 00:04:42,244 一度も 浮気しなかったんだってよ。 41 00:04:42,244 --> 00:04:47,099 結局 人間 最初に好きになった人の面影を➡ 42 00:04:47,099 --> 00:04:50,499 いつまでも 追い求めるものなのかなぁ。 43 00:05:00,229 --> 00:05:03,749 は~い お待たせ。 44 00:05:03,749 --> 00:05:05,751 ありがとうございます。 45 00:05:05,751 --> 00:05:09,571 そして…。 46 00:05:09,571 --> 00:05:14,259 これも食べてみて。 47 00:05:14,259 --> 00:05:16,359 ほい。 48 00:05:18,897 --> 00:05:20,997 いただきます。 うん。 49 00:05:29,625 --> 00:05:32,411 《甘くて しょっぱい。 50 00:05:32,411 --> 00:05:34,429 これは…》 51 00:05:34,429 --> 00:05:37,749 何が入ってるかわかる? 52 00:05:37,749 --> 00:05:41,753 マドレーヌの中に… まぐろ。 53 00:05:41,753 --> 00:05:44,423 さすが佐々木。 54 00:05:44,423 --> 00:05:46,909 せいか~い。 55 00:05:46,909 --> 00:05:50,078 マグレーヌ。 56 00:05:50,078 --> 00:05:52,080 こんなものが存在するんですね。 57 00:05:52,080 --> 00:05:56,151 このへんは まぐろが名物だからな。 58 00:05:56,151 --> 00:05:59,922 三崎って言やあ やっぱり まぐろ丼か。 59 00:05:59,922 --> 00:06:04,576 そうだ。 せっかくだから まぐろ丼 食いに行くか。 60 00:06:04,576 --> 00:06:06,578 なんてな。 61 00:06:06,578 --> 00:06:09,898 《そういえば 忙しくて➡ 62 00:06:09,898 --> 00:06:13,085 昨日の晩から 食事をとっていないんだった。 63 00:06:13,085 --> 00:06:17,385 疲れと空腹で 目がかすむ…》 64 00:06:35,907 --> 00:06:41,096 えっとね ここなんだけどさ…。 65 00:06:41,096 --> 00:06:43,582 あれ? 佐々…。 66 00:06:43,582 --> 00:06:45,584 俊吾さん! 67 00:06:45,584 --> 00:06:48,670 おい! おい 佐々木。 68 00:06:48,670 --> 00:06:50,970 どこ行くんだよ? おい! 69 00:07:54,903 --> 00:07:57,589 《この町に俊吾さんが? 70 00:07:57,589 --> 00:08:00,589 でも なんで? どうして?》 71 00:08:05,414 --> 00:08:08,083 いない…。 72 00:08:08,083 --> 00:08:10,068 《落ち着いて 幸子。 73 00:08:10,068 --> 00:08:13,922 普通に考えて 俊吾さんが あんな大きな魚を抱えて➡ 74 00:08:13,922 --> 00:08:16,775 歩いているわけがない。 シュールすぎる。 75 00:08:16,775 --> 00:08:18,910 きっと ただの見間違い。 76 00:08:18,910 --> 00:08:22,514 でも 幻覚を見るなんて…》 77 00:08:22,514 --> 00:08:24,914 何か食べなくちゃ。 78 00:08:27,185 --> 00:08:29,271 どうぞ。 ありがとうございます。 79 00:08:29,271 --> 00:08:31,373 ありがとうございました。 80 00:08:31,373 --> 00:08:33,573 はい ありがとうございます。 ありがとうございます。 81 00:08:40,766 --> 00:08:42,766 いただきます。 82 00:08:45,087 --> 00:08:48,487 《まずは まぐろの中華まん》 83 00:08:58,583 --> 00:09:01,236 《フワッフワ。 84 00:09:01,236 --> 00:09:06,258 熱々のやわらかな生地に感じる ほんのりとした甘み。 85 00:09:06,258 --> 00:09:08,910 見た目も食感も 肉まんに似ているけれど➡ 86 00:09:08,910 --> 00:09:13,064 口の中に広がるのは 間違いなく まぐろ! 87 00:09:13,064 --> 00:09:17,752 ご当地B級グルメ 侮れないわ。 88 00:09:17,752 --> 00:09:20,852 次は まぐろコロッケ》 89 00:09:24,426 --> 00:09:29,826 《ホクホクとしたジャガイモの中に まぐろの大きなかたまりが》 90 00:09:34,085 --> 00:09:37,072 《サクサク! 91 00:09:37,072 --> 00:09:41,743 下味も しっかりついていて ソースなんていらない。 92 00:09:41,743 --> 00:09:44,663 食事のメインキャストになる。 93 00:09:44,663 --> 00:09:47,082 続いて まぐろの串焼き》 94 00:09:47,082 --> 00:09:50,735 佐々木~。 95 00:09:50,735 --> 00:09:55,157 ハァー 急にいなくなるから どうしたかと思うでしょ。 96 00:09:55,157 --> 00:09:57,576 何 食べてるんでしょう? 97 00:09:57,576 --> 00:10:00,562 すみません 忘却しようと思いまして。 98 00:10:00,562 --> 00:10:02,564 ん? うん。 99 00:10:02,564 --> 00:10:05,250 あっ いや これ 持ち帰ることにしてさ➡ 100 00:10:05,250 --> 00:10:08,050 まぐろ丼 食べに行かない? 101 00:10:12,424 --> 00:10:17,596 あ~ のんびりしてて いいとこだよなぁ。 102 00:10:17,596 --> 00:10:20,916 ちょっと ムードには 欠けるけどな。 103 00:10:20,916 --> 00:10:22,918 おっ。 104 00:10:22,918 --> 00:10:26,972 誰かと こうやって 2人で 海 見るなんて 久しぶりだな。 105 00:10:26,972 --> 00:10:30,909 それが 佐々木と~。 106 00:10:30,909 --> 00:10:34,296 まぁ 別に 俺は 嫌じゃないけどな。 107 00:10:34,296 --> 00:10:38,600 《俊吾さんと来たかったな 海。 108 00:10:38,600 --> 00:10:42,900 あ~ また俊吾さんが脳内に》 109 00:10:45,657 --> 00:10:49,077 あれっ? ほ~れ。 110 00:10:49,077 --> 00:10:52,597 あっ 大丈夫です 編集長。 いいよ。 111 00:10:52,597 --> 00:10:57,686 おっ 渡部先生の最新刊か。 はい。 112 00:10:57,686 --> 00:11:00,572 主人公の侍が ヤシの実に頭をぶつけて➡ 113 00:11:00,572 --> 00:11:03,592 記憶喪失になる というお話ですよね。 114 00:11:03,592 --> 00:11:08,630 「記憶は 無くしても 愛は 無くさない」。 115 00:11:08,630 --> 00:11:11,266 このコピーが いいんだよな。 116 00:11:11,266 --> 00:11:14,352 そんなこと 本当にあるんですかね。 117 00:11:14,352 --> 00:11:17,239 あ~ いや ないとは言い切れないだろう。 118 00:11:17,239 --> 00:11:20,909 あっ ほら 心因性の記憶喪失 っていうじゃない。 119 00:11:20,909 --> 00:11:25,564 大きなショック 受けすぎちゃって 一時的に記憶を失うってやつ。 120 00:11:25,564 --> 00:11:29,918 大きなショックを受ける出来事。 121 00:11:29,918 --> 00:11:33,572 すみませ~ん。 あの~ 写真 撮ってもらっていいですか? 122 00:11:33,572 --> 00:11:35,574 お願いします。 はい。 123 00:11:35,574 --> 00:11:39,010 えっ! あ~ 引き受けちゃうんだ。 124 00:11:39,010 --> 00:11:42,010 撮ろっか じゃあ。 撮ろう。 125 00:11:44,249 --> 00:11:47,249 では 撮りますよ。 はい 笑顔で。 126 00:11:52,974 --> 00:11:55,774 (白井)は~い 笑顔で。 127 00:11:59,914 --> 00:12:02,917 (白井)は~い 笑顔で。 128 00:12:02,917 --> 00:12:05,917 やっぱり 俊吾さん。 129 00:12:08,239 --> 00:12:11,259 編集長 残りは お願いいたします。 はぁ? 130 00:12:11,259 --> 00:12:15,347 おい おい 佐々木。 どこ行くんだよ また。 131 00:12:15,347 --> 00:12:18,347 なっ なんで こんなズームしてんだ? アイツ。 132 00:12:25,573 --> 00:12:27,573 《いない》 133 00:12:36,284 --> 00:12:39,284 (石井)ここ 関係者以外 立ち入り禁止だけど。 134 00:12:42,590 --> 00:12:44,690 申し訳ございません。 135 00:12:51,566 --> 00:12:53,918 俊吾さん。 136 00:12:53,918 --> 00:12:58,590 はぁ? いや 俺は 漁師の石井和男ってもんだけど。 137 00:12:58,590 --> 00:13:01,576 いや でも…。 138 00:13:01,576 --> 00:13:04,963 なんだよ。 じろじろ見んな。 139 00:13:04,963 --> 00:13:09,634 すみません。 知り合いに似ていたものですから。 140 00:13:09,634 --> 00:13:12,237 俊吾さんに。 141 00:13:12,237 --> 00:13:17,959 知らねえな。 おい いいから 出てけ。 危ねえから。 142 00:13:17,959 --> 00:13:21,930 あっ あの しっ 失礼ですが…。 143 00:13:21,930 --> 00:13:25,316 記憶の喪失をなさっているのでは ありませんか? 144 00:13:25,316 --> 00:13:27,235 あの すまないの手紙も➡ 145 00:13:27,235 --> 00:13:29,637 いなくなることを 謝るのではなく➡ 146 00:13:29,637 --> 00:13:33,274 余興か何かをしようとしていて で 手紙を書いて すぐに 何か➡ 147 00:13:33,274 --> 00:13:35,927 大きなショックを受けるようなことが あって それで…。 148 00:13:35,927 --> 00:13:38,947 (石井)なに わけわかんねえこと 言ってんだよ。 149 00:13:38,947 --> 00:13:42,947 俊吾って誰だ? アンタの恋人か何かか? 150 00:13:46,237 --> 00:13:48,237 しっ 失礼しました。 151 00:13:51,910 --> 00:13:54,210 アンタの着てる それ 喪服? 152 00:13:56,581 --> 00:13:58,881 (石井)おい アンタ 死ぬ気か! 153 00:14:01,920 --> 00:14:13,420 ♬~ 154 00:14:21,573 --> 00:14:26,411 (石井)おい おやっさん いるか? (茂雄)いねえよ。 155 00:14:26,411 --> 00:14:30,248 いるじゃねえか。 おい 入れ。 156 00:14:30,248 --> 00:14:33,918 おい…。 157 00:14:33,918 --> 00:14:35,920 (石井)この子に 何か食わしてやってくれ。 158 00:14:35,920 --> 00:14:39,574 休憩中。 ちょっと待っててくれ。 159 00:14:39,574 --> 00:14:41,576 愛想 悪いけど➡ 160 00:14:41,576 --> 00:14:44,576 あの人 元漁師の料理人で 味は絶品だから。 161 00:14:46,898 --> 00:14:51,352 おい 起きろよ。 おい おやっさん 起きろ 起きろ 起きろ 起きろ! 162 00:14:51,352 --> 00:14:53,955 なんだよ。 頼むよ。 163 00:14:53,955 --> 00:14:56,908 あの子 海に飛び込もうとしたんだよ。 164 00:14:56,908 --> 00:15:00,908 このへんで自殺なんかされたら 漁が できなくなっちまう。 165 00:15:04,249 --> 00:15:07,619 寝んなよ! 頼むよ。 166 00:15:07,619 --> 00:15:10,588 恋人と死に別れたみたいで なんか 混乱しちゃっててさ。 167 00:15:10,588 --> 00:15:12,888 なっ? 作ってやってくれよ。 168 00:15:17,929 --> 00:15:20,582 ほい。 169 00:15:20,582 --> 00:15:23,982 今日は 思いっきり食って 忘れろ。 170 00:15:26,571 --> 00:15:28,571 あの…。 171 00:15:30,592 --> 00:15:34,229 私の名前は 幸子といいます。 172 00:15:34,229 --> 00:15:39,250 何か 何か思い出せませんか? 173 00:15:39,250 --> 00:15:42,921 幸子。 174 00:15:42,921 --> 00:15:46,908 懐かしいな。 175 00:15:46,908 --> 00:15:51,913 《懐かしい? 私のことが? 176 00:15:51,913 --> 00:15:55,913 あなたは やはり 俊吾さん?》 177 00:18:15,923 --> 00:18:18,576 ただいま。 178 00:18:18,576 --> 00:18:21,262 いらっしゃい。 179 00:18:21,262 --> 00:18:25,683 休憩時間じゃなかったの? 和男が連れてきたんだけどよ。 180 00:18:25,683 --> 00:18:29,337 別に アイツのこれじゃねえからな。 心配することは ねえぞ。 181 00:18:29,337 --> 00:18:31,272 ホントに? 182 00:18:31,272 --> 00:18:34,676 あの人 都合の悪いこと すぐ記憶がないとか言うから。 183 00:18:34,676 --> 00:18:37,261 《記憶がない》 184 00:18:37,261 --> 00:18:40,314 婿養子の分際で 女なんか作ったら➡ 185 00:18:40,314 --> 00:18:43,314 そっこう たたきだしてやるけどね。 186 00:18:46,020 --> 00:18:47,922 なに!? 187 00:18:47,922 --> 00:18:52,593 あの… 今 婿養子と? 188 00:18:52,593 --> 00:18:55,893 そう。 和男は 私の旦那。 189 00:19:02,270 --> 00:19:05,590 どうしたのよ。 190 00:19:05,590 --> 00:19:09,260 だから この子は いろいろ 大変なんだからよ。 191 00:19:09,260 --> 00:19:14,260 優しくしてやれ。 優しく。 わかった。 192 00:19:25,276 --> 00:19:27,276 ありがとうございます。 193 00:19:30,581 --> 00:19:33,601 あの…。 194 00:19:33,601 --> 00:19:36,921 和男さんは いつごろ この町へ? 195 00:19:36,921 --> 00:19:40,274 12月の終わりごろかな。 196 00:19:40,274 --> 00:19:43,594 《私の前から 俊吾さんが消えたのも➡ 197 00:19:43,594 --> 00:19:47,598 去年の冬。 198 00:19:47,598 --> 00:19:51,903 もしかして 記憶喪失になった俊吾さんが➡ 199 00:19:51,903 --> 00:19:56,924 この場所に迷い込み 介抱しているうちに 恋仲に。 200 00:19:56,924 --> 00:19:59,724 ありえない話じゃない》 201 00:20:11,989 --> 00:20:14,589 ⦅ちょっと 大丈夫?⦆ 202 00:20:27,271 --> 00:20:32,310 で そのまま電撃婚しちゃった。 203 00:20:32,310 --> 00:20:35,110 いい年してバカみたいだけど。 204 00:20:38,749 --> 00:20:43,704 和男さんは こちらに来る前 どこにいらしたんでしょうか。 205 00:20:43,704 --> 00:20:46,808 東京らしいけど あんまり教えてくれないの。 206 00:20:46,808 --> 00:20:51,078 まあ 過去なんてもん 気にしててもしかたないよ。 207 00:20:51,078 --> 00:20:55,133 人間 どんなに悲しい目に遭っても 腹は減る。 208 00:20:55,133 --> 00:20:59,437 だから 悲しいときは うまいもん食って忘れるんだ。 209 00:20:59,437 --> 00:21:02,437 って あの人がよく言うの。 210 00:21:10,264 --> 00:21:12,283 ⦅悲しいときはね➡ 211 00:21:12,283 --> 00:21:15,419 おいしいものを 食べるといいんだよ⦆ 212 00:21:15,419 --> 00:21:19,423 《やっぱり俊吾さん》 213 00:21:19,423 --> 00:21:22,827 じゃ ごゆっくり。 214 00:21:22,827 --> 00:21:24,745 えっ? 215 00:21:24,745 --> 00:21:30,434 あなたは 彼を愛していますか。 えっ? 216 00:21:30,434 --> 00:21:34,334 彼を愛していますか。 217 00:21:36,457 --> 00:21:40,857 じゃなかったら 一緒になんか なんないでしょ。 218 00:21:50,588 --> 00:21:54,258 《記憶喪失なんて 小説の中の出来事。 219 00:21:54,258 --> 00:21:57,762 そう思っていた。 でも ホーキング博士により➡ 220 00:21:57,762 --> 00:22:01,098 宇宙人の存在が肯定されたし 青いバラもあるし➡ 221 00:22:01,098 --> 00:22:03,467 マグロのスイーツだって存在する。 222 00:22:03,467 --> 00:22:07,438 俊吾さんが 記憶喪失に なることだって きっとある。 223 00:22:07,438 --> 00:22:12,760 ただ 問題は 今 俊吾さんが幸せだってこと。 224 00:22:12,760 --> 00:22:17,932 私は彼に 記憶を取り戻させるべきなの?》 225 00:22:17,932 --> 00:22:20,332 誰かの幸せを壊してまで。 226 00:22:27,091 --> 00:22:29,427 見せて。 227 00:22:29,427 --> 00:22:32,597 すげえでけえから これ。 え~? 228 00:22:32,597 --> 00:22:35,099 まだダメだよ 開けちゃ。 ちょっとだけ。 229 00:22:35,099 --> 00:22:39,420 ダメだよ 楽しみに ダメだよ。 まだダメだって。 230 00:22:39,420 --> 00:22:42,089 すげえでけえの こんな なってたから。 231 00:22:42,089 --> 00:22:44,258 ホント? 232 00:22:44,258 --> 00:22:47,358 見せて見せて。 ダメダメ…。 233 00:22:55,102 --> 00:22:58,502 はいよ 三崎のマグロ丼定食。 234 00:23:10,017 --> 00:23:12,017 きれい…。 235 00:25:28,939 --> 00:25:30,939 (茂雄)三崎のマグロ丼定食。 236 00:25:38,933 --> 00:25:41,033 きれい…。 237 00:25:44,655 --> 00:25:46,574 あの。 238 00:25:46,574 --> 00:25:48,759 どうやって食べれば? 239 00:25:48,759 --> 00:25:53,559 好きに食えよ。 好きに…。 240 00:25:59,453 --> 00:26:01,553 いただきます。 241 00:26:05,242 --> 00:26:08,078 《お作法としては 小皿の醤油につけて➡ 242 00:26:08,078 --> 00:26:11,378 お刺身みたいに食べるのが 正しいと聞いたことがある》 243 00:26:15,769 --> 00:26:17,769 《でも…》 244 00:26:30,935 --> 00:26:34,135 《なんて ツヤツヤして きれいなの》 245 00:26:36,590 --> 00:26:38,890 《まずは マグロから》 246 00:26:43,247 --> 00:26:48,102 《甘い 口の中に甘みが広がる。 247 00:26:48,102 --> 00:26:50,738 マグロが こんなに甘いなんて 知らなかった。 248 00:26:50,738 --> 00:26:54,124 脂ののり具合も最高。 249 00:26:54,124 --> 00:26:57,912 それにこれ お醤油じゃない。 250 00:26:57,912 --> 00:27:01,248 マグロにピッタリ合う甘めのタレ。 251 00:27:01,248 --> 00:27:05,753 自家製かしら マグロのおいしさを より引き立てている。 252 00:27:05,753 --> 00:27:10,753 大将 匠の技が光ってます》 253 00:27:13,761 --> 00:27:15,861 《今度は ご飯と》 254 00:27:21,068 --> 00:27:26,073 《う~ ご飯とマグロの相性抜群! 255 00:27:26,073 --> 00:27:28,242 箸が止まらなくなる。 256 00:27:28,242 --> 00:27:31,595 ご飯とマグロを ベストなバランスで口に運べる幸せ。 257 00:27:31,595 --> 00:27:35,995 丼物だからなせる技 マグロ丼 最高!》 258 00:27:39,753 --> 00:27:42,753 《お次は あら汁》 259 00:27:49,463 --> 00:27:52,099 《なんて コクなの。 260 00:27:52,099 --> 00:27:57,271 味噌に溶け出した魚の旨みが 一気に流れ込んでくる。 261 00:27:57,271 --> 00:28:01,592 おいしい いろいろな お魚のダシが絡み合って➡ 262 00:28:01,592 --> 00:28:05,412 相乗効果で旨みが 何十倍にもなっている感じ。 263 00:28:05,412 --> 00:28:07,512 はぁ…》 264 00:28:10,584 --> 00:28:12,586 マグロのカブト煮だよ。 265 00:28:12,586 --> 00:28:17,408 ここいらじゃよ 余っちまった マグロの頭を カブト煮にすんだよ。 266 00:28:17,408 --> 00:28:21,078 作り方 味付けはな うちごとによって違うんだがよ➡ 267 00:28:21,078 --> 00:28:24,498 これはな 俺のおふくろの味だよ。 268 00:28:24,498 --> 00:28:27,898 食べてみな。 ありがとうございます。 269 00:28:34,575 --> 00:28:38,675 《カブト煮… これが漁師町の家庭料理》 270 00:28:49,423 --> 00:28:54,595 《えっ 何 この皮の食感 プルップル。 271 00:28:54,595 --> 00:28:57,581 今まで味わったことのない感覚。 272 00:28:57,581 --> 00:29:01,251 ちょっぴり甘辛味が身まで しっかり しみわたっていて➡ 273 00:29:01,251 --> 00:29:04,051 お箸が止められない! 274 00:29:07,091 --> 00:29:10,761 たくさん入っている これは➡ 275 00:29:10,761 --> 00:29:16,900 玉ねぎ!? 276 00:29:16,900 --> 00:29:21,472 このしぜんな甘みは 玉ねぎから出たものなのね。 277 00:29:21,472 --> 00:29:26,910 ああ でも やっぱり この皮の食感はたまらない! 278 00:29:26,910 --> 00:29:31,565 プルップル最高! 甘辛最高! 279 00:29:31,565 --> 00:29:35,452 これが漁師さんの 立派な肉体を作り上げてきた➡ 280 00:29:35,452 --> 00:29:37,404 家庭の味なのね。 281 00:29:37,404 --> 00:29:41,308 余すところなく おいしい 海の王様・マグロ! 282 00:29:41,308 --> 00:29:44,595 そして あら汁の たくさんの魚たち。 283 00:29:44,595 --> 00:29:47,081 海の幸の豪華共演! 284 00:29:47,081 --> 00:29:50,934 きらびやかな味が 体中に染み渡っていく…。 285 00:29:50,934 --> 00:29:53,787 お箸が止まらない! もう どうにも止まらない! 286 00:29:53,787 --> 00:29:56,907 ありがとう 魚たち。 ありがとう マグロ! 287 00:29:56,907 --> 00:30:00,077 ありがとう 大海原!》 288 00:30:00,077 --> 00:30:02,913 (波の音) 289 00:30:02,913 --> 00:30:05,315 ♬~ 290 00:30:05,315 --> 00:30:09,253 ⦅フッフー! フッフー! イヤッホー! 291 00:30:09,253 --> 00:30:13,924 オッケー ヤッホーイ フォー いけ~! 292 00:30:13,924 --> 00:30:16,524 ハッハー!⦆ 293 00:30:18,746 --> 00:30:20,748 フゥ…。 294 00:30:20,748 --> 00:30:27,071 大将 ごちそうさまでした。 お会計を。 295 00:30:27,071 --> 00:30:30,240 俺は休憩中なんだよ。 296 00:30:30,240 --> 00:30:34,111 休憩中はよ カネは受け取らねえんだ。 297 00:30:34,111 --> 00:30:40,584 いや… でも。 うまかったか。 298 00:30:40,584 --> 00:30:44,254 はい。 心なしか 世界が➡ 299 00:30:44,254 --> 00:30:46,256 ハッキリ見えるようになったような 気がしました。 300 00:30:46,256 --> 00:30:50,577 そりゃよかった。 アンタが さっき飲んだ あら汁な。 301 00:30:50,577 --> 00:30:55,516 あれは毎日味が違うんだよ。 302 00:30:55,516 --> 00:30:58,919 その日 その日に とれた物 入れてっからよ。 303 00:30:58,919 --> 00:31:05,426 二度と同じ味は作れねえ。 今日だけの味だ! 304 00:31:05,426 --> 00:31:09,413 だからさ➡ 305 00:31:09,413 --> 00:31:17,237 昨日のことなんか考えたってよぅ 意味ねえんだよ。 306 00:31:17,237 --> 00:31:22,426 人間はよ 今日のことと➡ 307 00:31:22,426 --> 00:31:26,597 明日の天気のことだけ 考えてりゃいいんだ。 308 00:31:26,597 --> 00:31:28,766 いつまでもよ➡ 309 00:31:28,766 --> 00:31:34,254 消えた男のことなんか 気にしてたらよ➡ 310 00:31:34,254 --> 00:31:39,760 もったいないぞ! ん? 311 00:31:39,760 --> 00:32:15,412 ♬~ 312 00:32:15,412 --> 00:32:18,415 《あれ? 荷物…。 313 00:32:18,415 --> 00:32:22,515 はっ! 編集長を 置き去りにしてしまった》 314 00:32:34,248 --> 00:32:38,085 もしもし。 やっと つながったよ~。 315 00:32:38,085 --> 00:32:41,255 もう心配して いろんなとこ捜しちゃったよ。 316 00:32:41,255 --> 00:32:45,759 もうしわけございません 編集長。 マグロ丼を食べておりました。 317 00:32:45,759 --> 00:32:49,159 えっ 自分だけ? お前 どこにいるの? 318 00:32:53,233 --> 00:32:56,403 くろば亭 というお店です。 319 00:32:56,403 --> 00:32:59,923 それ 俺が佐々木と 行きたかったとこだよ! 320 00:32:59,923 --> 00:33:02,576 すぐそこに行くから待ってろ。 321 00:33:02,576 --> 00:33:04,995 すみません 編集長。 322 00:33:04,995 --> 00:33:07,414 私 今から 会わなきゃいけない 人がいるんです。 323 00:33:07,414 --> 00:33:10,814 えっ? すぐ行くから待っ…。 (通話を切る音) 324 00:33:14,087 --> 00:33:20,387 ハァ ハァ…。 (汽笛) 325 00:33:22,913 --> 00:33:25,449 《俊吾さん。 326 00:33:25,449 --> 00:33:30,904 私 俊吾さんに 何も言えなかったから。 327 00:33:30,904 --> 00:33:34,908 ありがとうも さようならも。 328 00:33:34,908 --> 00:33:39,096 だから今度こそ。 329 00:33:39,096 --> 00:33:41,598 そして 今度こそ ちゃんと➡ 330 00:33:41,598 --> 00:33:44,918 俊吾さんを…》 331 00:33:44,918 --> 00:33:46,918 あの…。 332 00:36:18,922 --> 00:36:21,942 (汽笛) 333 00:36:21,942 --> 00:36:25,242 あの…。 334 00:36:30,534 --> 00:36:32,753 あれ? 335 00:36:32,753 --> 00:36:35,689 お~ アンタか。 336 00:36:35,689 --> 00:36:39,593 石井さん? おう。 337 00:36:39,593 --> 00:36:42,579 (汽笛) 338 00:36:42,579 --> 00:36:46,433 違う。 全然違う…。 339 00:36:46,433 --> 00:36:48,585 腹いっぱいになったか。 340 00:36:48,585 --> 00:36:53,256 ハァ… 顔色が違うな。 341 00:36:53,256 --> 00:36:58,411 いえ 顔色ではなく 顔が…。 342 00:36:58,411 --> 00:37:04,451 は? あれは 幻…。 343 00:37:04,451 --> 00:37:06,536 その分なら大丈夫だな。 344 00:37:06,536 --> 00:37:08,622 いや 幸子ってさぁ うちで➡ 345 00:37:08,622 --> 00:37:10,690 昔飼ってた犬と おんなじ名前で。 346 00:37:10,690 --> 00:37:16,429 20歳まで生きたんだよ。 ヘッ 大往生だろ。 347 00:37:16,429 --> 00:37:19,032 犬…。 348 00:37:19,032 --> 00:37:21,118 (白井)見つけた~! 349 00:37:21,118 --> 00:37:24,254 なんだ また喪服かよ。 350 00:37:24,254 --> 00:37:26,854 ここ 関係者以外 立入禁止! 351 00:37:29,759 --> 00:37:32,359 ありがとうございました! 352 00:37:41,755 --> 00:37:46,743 佐々木! これ。 353 00:37:46,743 --> 00:37:50,597 ね 何があった? 私にも わかりません。 354 00:37:50,597 --> 00:37:56,753 でも 1つだけわかるのは 私は あら汁になりたい! 355 00:37:56,753 --> 00:37:58,755 えっ もう何言ってんの? 356 00:37:58,755 --> 00:38:00,757 今日という日は 今日だけなのです。 357 00:38:00,757 --> 00:38:03,927 人生も あら汁も 同じ日はないのです! 358 00:38:03,927 --> 00:38:07,080 お前 大丈夫か? 早く会社に戻りましょう。 359 00:38:07,080 --> 00:38:10,250 読むべき原稿が 私たちを待っています。 360 00:38:10,250 --> 00:38:14,421 あ… ねぇ ちょっと待って~。 361 00:38:14,421 --> 00:38:17,574 俺 マグロ丼食べてないし~! 362 00:38:17,574 --> 00:38:20,911 ちょっ これ 1つ持って~! 363 00:38:20,911 --> 00:38:25,911 ♬~