1 00:00:15,415 --> 00:00:19,319 “アリニア”を オープンしたばかりの頃— 2 00:00:20,220 --> 00:00:25,291 もっとインスピレーションを 発揮できると実感した 3 00:00:28,528 --> 00:00:33,733 画廊に行って 壁いっぱいに 描かれた絵を見ると— 4 00:00:34,067 --> 00:00:38,204 “料理でこういうことを したい”といつも思った 5 00:00:40,507 --> 00:00:45,211 インスピレーションを 発揮する場所が— 6 00:00:45,345 --> 00:00:49,048 皿に限定されることに イラついていた 7 00:00:50,817 --> 00:00:52,819 そこで思いついたのが— 8 00:00:53,486 --> 00:00:55,221 テーブルクロスだ 9 00:00:59,459 --> 00:01:04,731 料理を皿に載せてフォークや スプーンで食べなくても 10 00:01:04,831 --> 00:01:07,100 いいのではないか? 11 00:01:16,843 --> 00:01:20,680 私の店では常に新しいことに 挑戦し— 12 00:01:21,247 --> 00:01:25,251 より良い料理を追求してきた 13 00:01:31,257 --> 00:01:32,392 ルール? 14 00:01:32,592 --> 00:01:34,794 そんなものには とらわれない 15 00:01:48,408 --> 00:01:53,179 NETFLIX オリジナルドキュメンタリー 16 00:02:36,322 --> 00:02:39,425 シェフのテーブル 17 00:02:51,571 --> 00:02:55,575 イリノイ州 シカゴ 18 00:02:58,645 --> 00:03:01,214 “液体窒素” 19 00:03:09,656 --> 00:03:13,326 グラントが最高の 新人シェフと紹介され— 20 00:03:13,426 --> 00:03:16,462 私の料理学校の講師は 怒った 21 00:03:16,596 --> 00:03:18,398 食事中に熱湯を注いで ローズマリーの— 22 00:03:18,398 --> 00:03:20,233 食事中に熱湯を注いで ローズマリーの— ジェームス・ビアード賞 受賞 料理評論家 フランシス・ラム 23 00:03:20,233 --> 00:03:20,333 ジェームス・ビアード賞 受賞 料理評論家 フランシス・ラム 24 00:03:20,333 --> 00:03:23,870 ジェームス・ビアード賞 受賞 料理評論家 フランシス・ラム 香りを漂わせるという 彼のやり方に対して 25 00:03:23,870 --> 00:03:24,771 香りを漂わせるという 彼のやり方に対して 26 00:03:24,871 --> 00:03:26,706 “おおげさだ” 27 00:03:26,839 --> 00:03:29,509 “ローズマリーは 料理に使え”と 28 00:03:29,642 --> 00:03:33,646 数年後 私が“アリニア”で 食べたのは— 29 00:03:33,880 --> 00:03:35,548 ピローに載った料理だ 30 00:03:35,648 --> 00:03:40,653 料理をカットするたびに いい香りが漂ってきて— 31 00:03:40,787 --> 00:03:44,257 “これはマジックだ”と 感動した 32 00:03:45,525 --> 00:03:48,428 “アリニア” ミシュラン三つ星 33 00:03:48,528 --> 00:03:51,864 世界のベスト・レストラン50 2015年 第26位 34 00:03:52,799 --> 00:03:57,370 あんな経験ができる レストランは他にはない 35 00:03:57,570 --> 00:04:00,773 店への入り方さえ 他では考えられない 36 00:04:01,674 --> 00:04:05,612 店内に入るまでに 方向感覚を失うような— 37 00:04:05,912 --> 00:04:09,415 不思議な気分になるんだ 38 00:04:09,549 --> 00:04:11,551 まるで魔法だよ 39 00:04:13,453 --> 00:04:17,857 入り口のドアを開けると 長い廊下がある 40 00:04:17,957 --> 00:04:22,428 8歩ほど進むと 片側のドアが開く 41 00:04:22,562 --> 00:04:24,764 実は長い廊下は— 42 00:04:24,998 --> 00:04:26,699 目の錯覚だ 43 00:04:26,799 --> 00:04:29,435 思い返してみると あれは— 44 00:04:29,969 --> 00:04:31,804 客を弄(もてあそ)んでた 45 00:04:33,306 --> 00:04:37,543 驚きの連続で 次に何が起こるかは— 46 00:04:37,977 --> 00:04:40,413 予測不可能なんだ 47 00:04:58,364 --> 00:05:01,301 誰もしないような質問を— 48 00:05:01,401 --> 00:05:04,370 グラントは 自分に問いかける 49 00:05:04,971 --> 00:05:08,007 “どうやって 料理を浮かす?” 50 00:05:08,541 --> 00:05:10,910 “どうやって料理を消す?” 51 00:05:11,344 --> 00:05:14,414 “どうやって 客の前で隠す?” 52 00:05:15,481 --> 00:05:19,319 グラントにとって 創造とは新しいことに— 53 00:05:19,419 --> 00:05:21,321 挑戦することだ 54 00:05:26,459 --> 00:05:32,765 “アリニア”を開店した時 グラントは こう考えていた 55 00:05:32,999 --> 00:05:36,369 “レストランで経験できる 要素を—” 56 00:05:36,469 --> 00:05:38,504 “どうしたら変えられるか” 57 00:05:48,114 --> 00:05:52,952 もちろんレストランなので 料理が提供されるから— 58 00:05:53,052 --> 00:05:55,655 食事するという経験ができる 59 00:05:55,755 --> 00:06:00,026 しかし それと同時に 劇場にいるような— 60 00:06:00,827 --> 00:06:02,495 経験もできる 61 00:06:02,595 --> 00:06:05,865 さらにパフォーマンスや セラピーの経験も 62 00:06:06,566 --> 00:06:10,536 どんな経験であれ 様々な思いを抱く 63 00:06:11,537 --> 00:06:14,707 テーブルランナーが必要だ 64 00:06:14,807 --> 00:06:15,975 コーンは? 65 00:06:16,075 --> 00:06:16,743 できてます 66 00:06:16,843 --> 00:06:18,111 ランナーは? 67 00:06:18,544 --> 00:06:21,581 コーン用のは すぐに用意します 68 00:06:22,682 --> 00:06:26,953 世界をリードするシェフは おいしい料理を作る 69 00:06:28,020 --> 00:06:30,957 私たちは その先を進む必要がある 70 00:06:32,024 --> 00:06:35,561 “アリニア”では 経験を味わってほしい 71 00:06:41,567 --> 00:06:43,936 私はお客様に— 72 00:06:44,036 --> 00:06:47,440 ワクワク感を 楽しんでもらいたい 73 00:06:48,741 --> 00:06:51,444 予想させないことが大事だ 74 00:06:52,545 --> 00:06:54,714 期待を裏切りたい 75 00:07:01,487 --> 00:07:05,458 よく誤解されるんだが— 76 00:07:05,758 --> 00:07:10,730 私たちは食材を試験管や シャーレで育ててはいない 77 00:07:11,664 --> 00:07:15,601 シェフとして 信頼できる食材を調達してる 78 00:07:15,902 --> 00:07:19,572 その素晴らしい食材を 使って— 79 00:07:19,772 --> 00:07:22,608 それにひねりを加えていく 80 00:07:24,043 --> 00:07:27,647 その際に いろんな挑戦をする 81 00:07:27,980 --> 00:07:32,485 “この素晴らしさを 保つにはどうするか” 82 00:07:33,019 --> 00:07:34,720 “だが同時に—” 83 00:07:35,488 --> 00:07:38,991 “かつてないものを どう作り出すか” 84 00:07:43,863 --> 00:07:48,501 切り方を変えたり ピューレ状や泡状にしたり 85 00:07:49,735 --> 00:07:52,505 他の物に 見えるようにしたり 86 00:07:55,741 --> 00:07:57,844 こういう発想だ 87 00:07:58,511 --> 00:08:02,882 “見た目はイチゴだが 実際はトマトだったら?” 88 00:08:05,017 --> 00:08:08,588 または その反対の場合もある 89 00:08:10,256 --> 00:08:13,192 これはトマトなのか イチゴなのか 90 00:08:13,493 --> 00:08:14,927 まるで心理戦だ 91 00:08:23,536 --> 00:08:27,907 パンとトマトだけでも 喜んでもらえる ストロベリー/トマト 92 00:08:27,907 --> 00:08:28,241 ストロベリー/トマト 93 00:08:28,708 --> 00:08:31,711 “プンパニッケルのクラムを 添えた—” 94 00:08:31,811 --> 00:08:34,080 “ストロベリー/トマト” なら— 95 00:08:34,814 --> 00:08:38,951 喜んでもらえる上に 驚いてももらえる 96 00:08:39,552 --> 00:08:41,254 料理にはそれが必要だ 97 00:08:41,954 --> 00:08:46,959 そうでなければ 500ドルで出す価値はない 98 00:08:47,693 --> 00:08:48,628 そうでしょ? 99 00:08:53,533 --> 00:08:55,835 フライドポテトと— 100 00:08:56,669 --> 00:08:58,671 ガーリックオイルです 101 00:08:58,771 --> 00:08:59,639 僕の? 102 00:09:00,673 --> 00:09:01,307 おいしそう 103 00:09:02,875 --> 00:09:03,709 それは何? 104 00:09:03,843 --> 00:09:04,710 普通のバーガー 105 00:09:05,778 --> 00:09:10,316 私が4歳半の時 両親がダイナーを開いた 106 00:09:11,217 --> 00:09:15,154 私は家よりも 店で過ごす時間が多かった 107 00:09:17,123 --> 00:09:21,093 店のコックは ノームおじさんだった 108 00:09:21,594 --> 00:09:25,898 真面目な人だったが よくイタズラを仕掛けられた 109 00:09:27,700 --> 00:09:29,735 ある日 私は— 110 00:09:29,835 --> 00:09:34,106 おじさんがフライドポテトを ピクルスで— 111 00:09:34,206 --> 00:09:37,109 巻いて食べるのを見た 112 00:09:37,610 --> 00:09:41,814 “マネさせて 後でからかうつもりだ” 113 00:09:41,914 --> 00:09:43,649 私はそう思った 114 00:09:44,917 --> 00:09:46,886 仕方ないので— 115 00:09:47,019 --> 00:09:49,789 しぶしぶ ひと口食べた 116 00:09:50,156 --> 00:09:52,058 そして驚いた 117 00:09:52,592 --> 00:09:55,094 マズそうな 組み合わせなのに— 118 00:09:55,661 --> 00:09:58,030 とてもおいしかったんだ 119 00:09:58,264 --> 00:10:01,167 おじさんは 秘密を教えてくれた 120 00:10:01,300 --> 00:10:06,038 “デンプン 脂肪分 酸味 塩味のバランスがいい”と 121 00:10:06,138 --> 00:10:08,674 その瞬間 料理と恋に落ちた 122 00:10:13,346 --> 00:10:16,882 私にとって料理とは 好奇心を持ち— 123 00:10:17,316 --> 00:10:21,187 食材でいろいろ 遊んでみることだった 124 00:10:23,322 --> 00:10:28,260 16歳の時 オムレツに オレンジのツイストと— 125 00:10:28,361 --> 00:10:31,263 パセリか何かを添えて 飾った 126 00:10:31,897 --> 00:10:33,899 すると父は こう言った 127 00:10:34,367 --> 00:10:35,935 “時間の無駄だ” 128 00:10:36,802 --> 00:10:39,205 “料理は温かくて 早いのが基本” 129 00:10:40,806 --> 00:10:42,208 父の料理には— 130 00:10:42,341 --> 00:10:47,647 表現やストーリー 芸術の 要素はまったくなかった 131 00:10:48,014 --> 00:10:51,183 料理は ただの 収入の手段だった 132 00:10:52,952 --> 00:10:56,022 だが私は 料理はそれ以上の— 133 00:10:56,122 --> 00:10:58,290 何かであるべきだと思った 134 00:11:06,966 --> 00:11:10,870 お客様をあっと言わせる 仕掛けが欲しい 135 00:11:10,970 --> 00:11:14,774 オレンジスライスの シルエットを見せるとか 136 00:11:14,940 --> 00:11:15,374 ええ 137 00:11:15,875 --> 00:11:16,075 お客さんは それを見て— 138 00:11:16,075 --> 00:11:18,010 お客さんは それを見て— 〝クルーシャル・ ディテール〞 ワークショップ 139 00:11:18,010 --> 00:11:18,344 〝クルーシャル・ ディテール〞 ワークショップ 140 00:11:18,344 --> 00:11:19,912 〝クルーシャル・ ディテール〞 ワークショップ 〝そこには オレンジがある〞と言う 141 00:11:19,912 --> 00:11:20,012 〝そこには オレンジがある〞と言う 142 00:11:20,012 --> 00:11:21,881 〝そこには オレンジがある〞と言う イリノイ州 シカゴ 143 00:11:21,981 --> 00:11:24,050 だが持ち上げると— 144 00:11:24,417 --> 00:11:26,252 他の物があるんだ 145 00:11:26,385 --> 00:11:31,390 料理と皿の模様を 同化させると面白い 146 00:11:31,991 --> 00:11:34,226 そうすれば皿の模様は— 147 00:11:34,326 --> 00:11:38,130 単なる装飾以上の 意味を生み出す 148 00:11:38,230 --> 00:11:39,465 なるほど 149 00:11:40,032 --> 00:11:40,966 いいね 150 00:11:41,400 --> 00:11:45,805 料理で人を驚かせることに 醍醐(だいご)味がある 151 00:11:46,105 --> 00:11:50,409 あらゆることにひねりを 加えることは重要だ 152 00:11:52,011 --> 00:11:55,381 現在のコースは ささやかに始まる 153 00:11:56,015 --> 00:11:59,151 目を引くものを1つ 用意すると— 154 00:11:59,251 --> 00:12:03,255 それがきっかけで 会話が生まれる 155 00:12:03,889 --> 00:12:06,425 そして それは 料理の一部になる 156 00:12:07,426 --> 00:12:12,298 美しさと機能性の両方を 楽しむことができる 157 00:12:13,199 --> 00:12:18,471 一度の食事の中で それが何回できるか考えた 158 00:12:20,806 --> 00:12:23,943 あらゆる手を尽くして 挑戦したよ 159 00:12:47,500 --> 00:12:51,937 お客様の前で 小さなたきぎを燃やす 160 00:12:52,071 --> 00:12:56,942 なぜ たきぎを燃やすのか お客様は不思議に思う 161 00:12:57,076 --> 00:12:59,378 ここでお客様は— 162 00:12:59,478 --> 00:13:05,351 松に刺さったウナギと プラムをあぶって食べるので 163 00:13:05,451 --> 00:13:06,886 納得するでしょう 164 00:13:08,787 --> 00:13:13,092 コースを構成する 他の料理を食べると— 165 00:13:13,225 --> 00:13:16,996 係の者が たきぎを テーブルから下げ— 166 00:13:18,130 --> 00:13:19,932 たきぎを崩す 167 00:13:21,167 --> 00:13:26,338 すると中から昆布に包まれた 鶏モモ肉が出てくる 168 00:13:26,972 --> 00:13:29,375 実は たきぎで ローストしてた 169 00:13:32,244 --> 00:13:33,279 お客様は驚く 170 00:13:34,146 --> 00:13:37,016 “まさか料理していたとは” 171 00:13:39,351 --> 00:13:43,155 お客様は 8つのコースを楽しむ 172 00:13:43,422 --> 00:13:48,861 それぞれ30分以内で すべてをうまく組み込んでる 173 00:13:50,996 --> 00:13:53,899 私にとって重要なのは— 174 00:13:54,366 --> 00:13:56,101 お客様に— 175 00:13:56,902 --> 00:13:58,370 なるほどと思わせること 176 00:13:58,938 --> 00:14:02,274 何かを発見したと 感じてもらうことだ 177 00:14:04,276 --> 00:14:08,247 プレゼントを開ける 子供のようにね 178 00:14:10,216 --> 00:14:15,154 フタを開けるまで 中身が何かは分からない 179 00:14:17,022 --> 00:14:20,159 開けたら驚くべき物が 入っている 180 00:14:24,363 --> 00:14:25,431 マジックショーだ 181 00:14:28,267 --> 00:14:34,173 鶏モモ肉 昆布 シシトウ ユリ 182 00:14:34,907 --> 00:14:36,575 ありがとう 183 00:14:36,876 --> 00:14:38,310 お疲れ様 184 00:14:39,578 --> 00:14:44,617 料理学校に通い始めて 料理本を読みあさっていた頃 185 00:14:45,184 --> 00:14:48,921 チャーリー・トロッターの 本が出版された 186 00:14:49,889 --> 00:14:53,926 料理を新たな次元へ 導いた料理人だ 187 00:14:54,393 --> 00:14:56,929 彼の店で働くことになった 188 00:14:57,963 --> 00:15:03,135 私は料理学校で 調理を学んだので— 189 00:15:03,235 --> 00:15:05,404 朝食ぐらいは作れた 190 00:15:05,504 --> 00:15:08,474 でもまだ若く未熟な私は— 191 00:15:09,108 --> 00:15:10,943 高級料理を知らなかった 192 00:15:12,945 --> 00:15:14,513 厨房に入ると— 193 00:15:15,347 --> 00:15:18,350 かつて 経験したことのない— 194 00:15:19,018 --> 00:15:22,087 熾烈(しれつ)な世界が広がっていた 195 00:15:22,621 --> 00:15:25,958 料理人同士が 足を引っ張り合い— 196 00:15:26,058 --> 00:15:28,127 相手の失敗を望んでいた 197 00:15:28,227 --> 00:15:30,029 チームワークなんてない 198 00:15:30,362 --> 00:15:33,299 その頂点に 君臨していたのが— 199 00:15:33,632 --> 00:15:35,534 トロッターだった 200 00:15:38,370 --> 00:15:41,407 彼は人の心を操る天才だった 201 00:15:42,374 --> 00:15:46,545 人の心に入り込み 操り人形のように動かす 202 00:15:49,114 --> 00:15:53,652 誰かに料理を作る時に抱く 絆のような感覚は— 203 00:15:54,520 --> 00:15:56,956 みじんもなかった 204 00:15:57,056 --> 00:15:59,191 まるで不毛な荒れ地だ 205 00:16:01,060 --> 00:16:05,664 私は料理に関する あらゆることに疑いを持った 206 00:16:08,434 --> 00:16:10,502 道を誤ったのではないか… 207 00:16:13,172 --> 00:16:15,140 料理に不向きなのでは… 208 00:16:18,477 --> 00:16:21,180 彼に店を辞めると告げた 209 00:16:21,513 --> 00:16:25,417 すると彼は こう答えたんだ 210 00:16:25,684 --> 00:16:30,656 “辞めたら ここで働いた 記録は何も残らない” 211 00:16:30,756 --> 00:16:32,591 “大成できないぞ” 212 00:16:35,294 --> 00:16:38,430 結局 私は敗北感と共に— 213 00:16:38,564 --> 00:16:40,432 店を辞めた 214 00:16:46,605 --> 00:16:48,741 “シカゴ” 215 00:16:58,784 --> 00:17:01,453 ほら これを見てくれ 216 00:17:03,122 --> 00:17:04,623 もっと要ります? 217 00:17:04,790 --> 00:17:07,092 この辺が最高だよね 218 00:17:07,192 --> 00:17:08,193 本当だ 219 00:17:08,327 --> 00:17:09,695 鉛筆みたいだ 220 00:17:10,229 --> 00:17:11,096 嗅(か)いで 221 00:17:11,330 --> 00:17:12,498 いい香りです 222 00:17:12,598 --> 00:17:13,399 だろ? 223 00:17:13,499 --> 00:17:14,333 すごくいい 224 00:17:15,334 --> 00:17:20,205 私にとって香りは 昔から重要な要素だった 225 00:17:20,305 --> 00:17:25,811 ロースト・ターキーの匂いは 10歳の時の感謝祭の記憶を 226 00:17:26,111 --> 00:17:28,781 瞬時に蘇(よみがえ)らせてくれる 227 00:17:29,081 --> 00:17:30,549 香りは強い力がある 228 00:17:30,649 --> 00:17:34,319 素晴らしい食事を 経験してもらうために 229 00:17:34,420 --> 00:17:37,623 香りを うまく利用できれば— 230 00:17:37,723 --> 00:17:40,325 人の心を引きつけられる 231 00:17:43,395 --> 00:17:48,667 それで私は香りを料理に 取り入れることを考え始めた 232 00:17:50,069 --> 00:17:53,505 “どうやって香りで 味付けできるだろう” 233 00:17:54,139 --> 00:17:55,140 サイモン 234 00:17:55,240 --> 00:17:55,707 何です? 235 00:17:55,808 --> 00:17:57,109 ピローは? 236 00:17:57,242 --> 00:17:59,244 もう準備できてます 237 00:17:59,445 --> 00:18:04,383 アムステルダムから戻った 友人がいて— 238 00:18:04,783 --> 00:18:07,386 噴霧器を見せてくれた 239 00:18:13,192 --> 00:18:17,629 私はその噴霧器に 強い香りのする素材を入れ 240 00:18:17,729 --> 00:18:19,164 香りだけを— 241 00:18:20,132 --> 00:18:23,769 ピローの中に 入れることができた 242 00:18:23,869 --> 00:18:27,806 テーブルで香りを 楽しめるようにしたんだ 243 00:18:36,849 --> 00:18:42,888 お客様の感覚と感情に訴え 両方を刺激するために— 244 00:18:43,288 --> 00:18:46,658 香りを使うのは とてもいい方法だ 245 00:18:47,860 --> 00:18:51,130 例えば 最初のデートで— 246 00:18:51,230 --> 00:18:54,867 感じた香りは すぐに思い出せる 247 00:18:55,167 --> 00:18:57,870 どこにいても いくつになってもね 248 00:18:59,338 --> 00:19:03,175 “アリニア”では 香りを使って 食事を— 249 00:19:03,542 --> 00:19:06,512 感情に訴える経験に 変えている 250 00:19:08,680 --> 00:19:13,886 私たちは料理における 感情的な要素を— 251 00:19:14,319 --> 00:19:16,155 調味料と捉えている 252 00:19:16,555 --> 00:19:20,192 塩や砂糖 酢と一緒に ノスタルジアも— 253 00:19:20,292 --> 00:19:21,860 料理に加えるんだ 254 00:19:25,631 --> 00:19:29,601 人々を感動させられたら 次の目標に移る 255 00:19:30,235 --> 00:19:34,540 それは料理や レストランだけに限らない 256 00:19:35,541 --> 00:19:37,576 それ以上の何かだ 257 00:19:39,211 --> 00:19:45,484 豆 多くの付け合わせ ナツメグの香りを詰めたピロー (2006年) 258 00:19:53,959 --> 00:19:59,231 トロッターの店を辞めた後 ワイン雑誌を読んでいて— 259 00:19:59,765 --> 00:20:03,902 新しいレストランに関する 記事が目に留まった 260 00:20:04,203 --> 00:20:06,939 “フレンチ・ランドリー”の 記事だ 261 00:20:07,272 --> 00:20:09,441 〝フレンチ・ ランドリー〞 262 00:20:09,441 --> 00:20:12,544 〝フレンチ・ ランドリー〞 263 00:20:09,441 --> 00:20:12,544 私は“そこで働きたい”と 思った 264 00:20:13,779 --> 00:20:18,350 私が店に行き 入り口から入ると— 265 00:20:18,450 --> 00:20:20,919 男性がモップをかけていた 266 00:20:21,220 --> 00:20:24,256 シェフはいるかと 尋ねると— 267 00:20:24,423 --> 00:20:25,624 彼は言った 268 00:20:26,925 --> 00:20:28,227 “私だ”とね 269 00:20:30,329 --> 00:20:33,799 シェフ自ら モップをかけるとは— 270 00:20:33,932 --> 00:20:37,836 トロッターの店とは 大違いだった 271 00:20:39,338 --> 00:20:42,507 私は1996年10月28日から 働き始めた 272 00:20:42,908 --> 00:20:46,912 シェフのトーマスはその年 州の最優秀賞を— 273 00:20:47,012 --> 00:20:50,415 翌年には 全米の最優秀賞を受賞した 274 00:20:51,783 --> 00:20:55,554 私は巨匠のそばにいると 実感した 275 00:20:57,889 --> 00:20:59,925 トーマスになりたかった 276 00:21:01,293 --> 00:21:05,831 そして彼の料理法を 夢中になって学んだ 277 00:21:07,532 --> 00:21:09,968 あらゆることを分析し— 278 00:21:10,569 --> 00:21:13,705 どうすれば 完璧にできるか考えた 279 00:21:15,474 --> 00:21:20,345 そして完璧さへの追求に 情熱を注ぐようになった 280 00:21:22,514 --> 00:21:26,618 そして彼と同じ考えを 持っている感覚になり— 281 00:21:27,753 --> 00:21:31,990 キャビアとカンタロープの 料理を考案した 282 00:21:34,726 --> 00:21:36,428 彼に食べてもらうと— 283 00:21:36,862 --> 00:21:39,998 “とてもおいしい”と 言ってくれた 284 00:21:40,866 --> 00:21:45,003 その言葉は私に 無敵と思えるほどの— 285 00:21:45,304 --> 00:21:46,738 自信をつけた 286 00:21:48,006 --> 00:21:51,043 それから彼は続けて こう言った 287 00:21:51,476 --> 00:21:54,880 “今日からこれは トーマス・ケラーの料理だ” 288 00:21:55,013 --> 00:21:58,717 “君は二度とこれを 作れないがいいか?” 289 00:22:00,852 --> 00:22:04,856 私は自信たっぷりに 笑いながら答えた 290 00:22:05,524 --> 00:22:08,493 “他にもアイデアは あるから どうぞ” 291 00:22:14,833 --> 00:22:17,035 “シシトウ半分か全部の香り” 292 00:22:17,336 --> 00:22:18,337 “キクラゲ” 293 00:22:18,670 --> 00:22:20,072 “フレーバーアイス” 294 00:22:23,742 --> 00:22:27,913 時間を引き延ばす方法は あるのかな 295 00:22:28,046 --> 00:22:31,750 今まで時間について 調べたことないが… 296 00:22:32,918 --> 00:22:34,453 意味不明? 297 00:22:34,553 --> 00:22:36,388 ホーキング博士ですね 298 00:22:37,022 --> 00:22:41,560 例えば すべてのコースから 1つの要素を選び 299 00:22:41,793 --> 00:22:45,931 それを最後のデザートに 使うんだ 300 00:22:46,398 --> 00:22:49,501 その時 味わった すべての味が— 301 00:22:49,601 --> 00:22:52,037 最後のデザートに象徴される 302 00:22:52,137 --> 00:22:55,707 メニュー全体を 考え直さないと… 303 00:22:56,708 --> 00:22:58,710 イチからやり直しです 304 00:23:01,012 --> 00:23:03,648 ある日 マイクにこう言った 305 00:23:03,749 --> 00:23:06,685 “同じことをやっていると 飽きる” 306 00:23:06,952 --> 00:23:09,020 そして彼は答えた 307 00:23:09,121 --> 00:23:11,123 “予約表を見て—” 308 00:23:12,390 --> 00:23:17,095 “その日のお客様全員が うちに初めて来るなら—” 309 00:23:17,529 --> 00:23:19,030 “彼らには初めてだ” 310 00:23:19,731 --> 00:23:23,401 私はこう言った “こっちは初めてじゃない” 311 00:23:31,777 --> 00:23:36,982 同じメニューが 3ヵ月 続いたら変える 312 00:23:37,516 --> 00:23:38,583 急にメニューを 変えることもある 313 00:23:38,583 --> 00:23:40,852 急にメニューを 変えることもある 〝アリニア〞総料理長 マイク・バゲール 314 00:23:41,119 --> 00:23:44,623 無茶に思えるが 必要なことなんだ 315 00:23:45,524 --> 00:23:49,027 〝ネクスト〞 〝アリニア〞の姉妹店 316 00:23:53,865 --> 00:23:54,900 何が重要か? 317 00:23:56,101 --> 00:23:59,704 店の顔となる料理を 作ること? 318 00:24:00,605 --> 00:24:01,940 いや 違う 319 00:24:02,040 --> 00:24:08,880 創造性の最優先を 理念とする店を持つことだ 320 00:24:10,749 --> 00:24:15,520 私の店でもヒット作を 生み出せたかもしれない 321 00:24:16,154 --> 00:24:17,155 だが— 322 00:24:17,889 --> 00:24:21,760 そうなってしまうと 創造性がそれ以上— 323 00:24:22,527 --> 00:24:24,496 伸ばせなくなる 324 00:24:32,170 --> 00:24:37,142 “水曜日だから最高の料理を 作ろう”とは思わない 325 00:24:38,643 --> 00:24:40,512 重要なのは— 326 00:24:40,645 --> 00:24:45,650 私たちが様々な料理を 提供していると意識すること 327 00:24:47,919 --> 00:24:51,523 そして食事の経験を 進化させるのが— 328 00:24:51,623 --> 00:24:53,124 何より重要だ 329 00:24:59,698 --> 00:25:04,669 確かにトーマスは 限界に挑戦し 前衛的だった 330 00:25:05,170 --> 00:25:10,675 私はその先を行きたかったし 彼も理解してくれていた 331 00:25:12,210 --> 00:25:16,047 彼は私を1週間 “エル・ブリ”で働かせた 332 00:25:16,147 --> 00:25:17,916 〝フェラン・アドリア 世界最高のシェフ〞 333 00:25:17,916 --> 00:25:19,651 〝フェラン・アドリア 世界最高のシェフ〞 334 00:25:17,916 --> 00:25:19,651 店内に入ると— 335 00:25:19,751 --> 00:25:23,154 フェランは私を テーブルにつかせ— 336 00:25:23,655 --> 00:25:24,823 食事を出した 337 00:25:27,225 --> 00:25:32,731 半透明のガラスのように 見えるリゾットや— 338 00:25:33,598 --> 00:25:37,702 手袋が手を振るという デザートがあって— 339 00:25:38,236 --> 00:25:40,171 火星にいる気分になった 340 00:25:40,839 --> 00:25:45,610 “うちはお客様のお腹を 満たし 感覚を刺激する” 341 00:25:45,911 --> 00:25:47,946 フェランは そう言った 342 00:25:48,280 --> 00:25:50,849 “フレンチ・ランドリー”に 戻って— 343 00:25:51,049 --> 00:25:55,153 私は自分自身の料理の 追求に躍起になった 344 00:25:59,958 --> 00:26:02,127 アニョロッティの調理中— 345 00:26:02,227 --> 00:26:05,664 カモ足のコンフィを つまんだ時— 346 00:26:06,097 --> 00:26:10,869 煮汁のゼラチン成分が 手の中で溶け始めた 347 00:26:11,736 --> 00:26:15,273 体温のせいで 固体だったゼラチンが— 348 00:26:15,607 --> 00:26:17,175 液体になったんだ 349 00:26:20,779 --> 00:26:24,149 その時 煮汁を冷やせば— 350 00:26:24,249 --> 00:26:27,953 パスタの中に 入れられると思った 351 00:26:29,254 --> 00:26:33,758 ゆでると液体になり まったく新しい物が出来上がる 352 00:26:38,763 --> 00:26:43,969 ゆでた物をまな板に置き 上から押すと中の煮汁が— 353 00:26:44,069 --> 00:26:45,370 飛び散った 354 00:26:45,770 --> 00:26:46,938 爆発したんだ 355 00:26:47,939 --> 00:26:50,041 爆発した煮汁には— 356 00:26:50,642 --> 00:26:53,745 トリュフの 匂いが含まれていた 357 00:26:56,881 --> 00:27:00,218 それから私は さらに深く考えた 358 00:27:04,856 --> 00:27:09,627 これを自分の料理の 本質にし そして— 359 00:27:09,995 --> 00:27:14,632 驚きや食感 香りを 組み合わせるのはどうか 360 00:27:16,234 --> 00:27:19,804 その料理を見て あるコックは言った 361 00:27:19,938 --> 00:27:21,673 “客には出せない” 362 00:27:24,909 --> 00:27:29,647 自分自身の料理スタイルを 決める必要性を感じた 363 00:27:31,683 --> 00:27:33,118 そうするには— 364 00:27:33,985 --> 00:27:37,722 “フレンチ・ランドリー”に いてはいけない 365 00:27:39,224 --> 00:27:43,028 ルールから 抜け出さねばならなかった 366 00:27:45,964 --> 00:27:51,403 ブラックトリュフの爆発 367 00:27:58,376 --> 00:28:02,814 次に働いた“トリオ”で 初めて厨房を任された 368 00:28:03,314 --> 00:28:08,153 やっと実力が発揮できた そんな時 ニックと出会った 369 00:28:09,387 --> 00:28:14,025 私は妻と一緒にシカゴ郊外の “トリオ”を訪れた 370 00:28:14,192 --> 00:28:16,361 その店では かつてない— 〝アリニア〞 共同オーナー ニック・ココナス 371 00:28:16,361 --> 00:28:16,461 〝アリニア〞 共同オーナー ニック・ココナス 372 00:28:16,461 --> 00:28:20,765 〝アリニア〞 共同オーナー ニック・ココナス 美しくて上品で おいしい料理が— 373 00:28:20,999 --> 00:28:22,100 出てきた 374 00:28:23,134 --> 00:28:28,273 “フレンチ・ランドリー”に いたシェフが作ったという 375 00:28:29,207 --> 00:28:32,410 まだ無名だが 世界一の店だと思った 376 00:28:33,311 --> 00:28:37,882 ニックと話し 料理の感想を聞くと— 377 00:28:38,149 --> 00:28:42,053 “店を持ちたくなったら 私が力になる” 378 00:28:42,921 --> 00:28:44,189 そう言われた 379 00:28:45,957 --> 00:28:50,795 “トリオ”は昔からの ルールにとらわれた店だった 380 00:28:51,963 --> 00:28:55,400 ニックの言葉が 私を後押しした 381 00:28:56,901 --> 00:29:00,405 4日後の朝 グラントから連絡があった 382 00:29:00,505 --> 00:29:03,007 “本気なら話し合いたい”と 383 00:29:03,141 --> 00:29:06,444 妻を起こして “店を開く”と言った 384 00:29:07,112 --> 00:29:08,279 よし始め! 385 00:29:08,379 --> 00:29:09,314 始め! 386 00:29:12,450 --> 00:29:16,254 店のロゴを決めるために 夢中で— 387 00:29:16,354 --> 00:29:18,823 シンボルを探した 388 00:29:21,025 --> 00:29:24,229 夜遅くに グーグルで検索していて— 389 00:29:24,362 --> 00:29:26,464 あるシンボルを見つけた 390 00:29:26,965 --> 00:29:29,534 “アリニア”という 段落記号だ 391 00:29:30,435 --> 00:29:32,971 意味を調べてみると— 392 00:29:33,304 --> 00:29:36,074 まさに完璧だったんだ 393 00:29:36,875 --> 00:29:38,276 “新しい発想の始まり” 394 00:29:54,959 --> 00:29:58,997 店の理念は “新しいことをする” 395 00:29:59,430 --> 00:30:03,034 “どの時点においても 新しいことをする” 396 00:30:03,268 --> 00:30:05,870 アンチ・グリドルの電源を 397 00:30:06,504 --> 00:30:10,875 開店準備の1年間は 興味深かった 398 00:30:11,276 --> 00:30:15,847 才能あふれる若き彼の 夢の実現を手伝った 399 00:30:15,980 --> 00:30:19,517 でもそれは 予想以上に重要だった 400 00:30:26,391 --> 00:30:31,429 自分の店を持つことは 彼の幼い頃からの夢だった 401 00:30:33,264 --> 00:30:36,167 私はスタッフを集めて言った 402 00:30:36,267 --> 00:30:39,470 “肝に銘じて聞いてくれ” 403 00:30:39,604 --> 00:30:42,841 “今から開くのは 国内最高の—” 404 00:30:43,541 --> 00:30:44,843 “レストランだ” 405 00:30:45,944 --> 00:30:49,414 “最高でないなら 失敗ということだ” 406 00:30:53,084 --> 00:30:54,619 その1週間後に開店した 407 00:30:55,086 --> 00:30:59,324 そして国内で最も 影響力のある評論家が— 408 00:31:00,024 --> 00:31:01,092 来てくれた 409 00:31:01,226 --> 00:31:02,861 開店初日にね 410 00:31:02,961 --> 00:31:05,864 〝アリニア 完璧なディナー〞 411 00:31:05,964 --> 00:31:06,297 〝SF料理が見せる リアリティ〞 412 00:31:06,297 --> 00:31:09,534 〝SF料理が見せる リアリティ〞 開店3日後に NYタイムズで特集だ 413 00:31:09,634 --> 00:31:13,638 みんなから祝福の 電話が鳴り続けた 〝NYタイムズ紙 外食情報〞 414 00:31:13,638 --> 00:31:14,305 〝NYタイムズ紙 外食情報〞 415 00:31:14,439 --> 00:31:17,442 世界的に有名な 評論家からは— 〝全米ベスト・ レストラン50〞 416 00:31:17,575 --> 00:31:18,243 〝ベスト・ レストラン50〞 417 00:31:18,243 --> 00:31:20,011 〝ベスト・ レストラン50〞 こう言われた 418 00:31:20,011 --> 00:31:20,178 〝ベスト・ レストラン50〞 419 00:31:20,178 --> 00:31:20,879 〝ベスト・ レストラン50〞 〝君の店をアメリカで 最高の店に選んだ〞 420 00:31:20,879 --> 00:31:21,012 〝君の店をアメリカで 最高の店に選んだ〞 421 00:31:21,012 --> 00:31:24,315 〝君の店をアメリカで 最高の店に選んだ〞 〝シカゴで伝統を 打破するアケッツ〞 422 00:31:29,921 --> 00:31:35,627 仕事と興奮と創造性が 爆発したかのようだった 423 00:31:37,195 --> 00:31:39,364 すべてが うまくいってた 424 00:31:43,067 --> 00:31:47,338 私は大きな喜びに 押し潰されそうだった 425 00:31:47,438 --> 00:31:51,342 なぜなら10歳の頃から 夢見ていたことが— 426 00:31:51,609 --> 00:31:55,613 その時 まさに 実現したんだからね 427 00:32:14,432 --> 00:32:17,368 “トリオ”で 働いていた時に— 428 00:32:17,468 --> 00:32:20,204 舌に白い点があると 気づいた 429 00:32:21,706 --> 00:32:26,577 酸っぱい物や 熱いコーヒーを飲むと— 430 00:32:26,678 --> 00:32:28,079 痛みがあった 431 00:32:28,980 --> 00:32:32,183 歯医者に行って 診てもらうと— 432 00:32:32,317 --> 00:32:36,120 “28歳のあなたは 1日18時間働き—” 433 00:32:36,220 --> 00:32:39,390 “ストレスで 舌を噛んでいる” 434 00:32:40,024 --> 00:32:41,392 そう言われた 435 00:32:43,594 --> 00:32:48,266 “アリニア”の開店準備中も 痛みは続いていた 436 00:32:49,434 --> 00:32:53,404 飲食に支障をきたし 話すのもやっとだった 437 00:32:53,538 --> 00:32:58,076 でも その頃は夢の実現に 必死だったので— 438 00:32:58,209 --> 00:33:01,012 舌のことは後回しだった 439 00:33:02,647 --> 00:33:05,149 ある時 かなり悪化して— 440 00:33:06,050 --> 00:33:09,187 それ以上 放っておけなくなった 441 00:33:11,222 --> 00:33:15,293 グラントは髪が薄くなり始め まるで— 442 00:33:15,393 --> 00:33:17,261 麻薬常習者のようだった 443 00:33:17,362 --> 00:33:19,364 麻薬はやってないのにだ 444 00:33:19,564 --> 00:33:24,035 心配していたら “舌が痛いんだ”と言われた 445 00:33:24,268 --> 00:33:28,139 彼はガムで舌を覆い 見えないようにした 446 00:33:28,239 --> 00:33:32,310 彼を別室に連れていき “舌を見せろ”と言うと 447 00:33:32,443 --> 00:33:37,015 “見せるもんか 絶対に嫌だ”と拒否された 448 00:33:37,115 --> 00:33:41,552 頼み込んで見せてもらうと ひどい状態だった 449 00:33:41,652 --> 00:33:45,023 すぐに口腔外科へ行くよう 私は言った 450 00:33:47,392 --> 00:33:50,595 口腔外科へ行って 生検を受けた 451 00:33:51,529 --> 00:33:55,666 2日後に病院から 電話がかかってきた 452 00:33:55,767 --> 00:33:59,604 “結果が出たので すぐに来てほしい”と— 453 00:34:00,204 --> 00:34:01,806 言われた 454 00:34:03,174 --> 00:34:05,209 “今 聞きたい” 455 00:34:06,177 --> 00:34:08,312 “電話で聞く”と 言っても— 456 00:34:09,747 --> 00:34:10,815 ダメだった 457 00:34:16,054 --> 00:34:19,323 ニックと一緒に 診察室へ入った 458 00:34:20,224 --> 00:34:21,626 医者はこう言った 459 00:34:22,093 --> 00:34:26,564 “残念ですが ステージ4bのガンです” 460 00:34:27,398 --> 00:34:29,801 私は落ち着いて聞いた 461 00:34:30,468 --> 00:34:32,236 “ステージ4bは—” 462 00:34:33,571 --> 00:34:35,406 “どの段階なのか?” 463 00:34:37,809 --> 00:34:41,412 舌の4分の3を 切除すると言われた 464 00:34:41,813 --> 00:34:46,250 左下アゴ全部と首の両側も 取ったとしても— 465 00:34:48,286 --> 00:34:51,656 死亡する確率は70%もあると 466 00:34:54,725 --> 00:34:57,128 私は医者をまっすぐ見て— 467 00:34:57,728 --> 00:35:00,598 他に選択肢はないか聞いた 468 00:35:00,798 --> 00:35:03,734 “ないと思う”と言われた 469 00:35:14,445 --> 00:35:17,148 自分の死を考えるのと— 470 00:35:17,415 --> 00:35:20,485 死の宣告を受けるのでは 大違いだ 471 00:35:23,421 --> 00:35:25,389 周りの人々や— 472 00:35:26,324 --> 00:35:28,426 息子たちに— 473 00:35:29,794 --> 00:35:32,396 申し訳なく思った 474 00:35:35,633 --> 00:35:40,705 ふさぎ込んだグラントを連れ 病院の外へ出た 475 00:35:41,339 --> 00:35:45,343 向かいの店に入り マルガリータを飲んだ 476 00:35:48,846 --> 00:35:53,184 飲みながらニックに 今後のことを聞かれた 477 00:35:54,819 --> 00:35:55,820 私は— 478 00:35:56,721 --> 00:35:58,589 “死ぬだけ”と答えた 479 00:36:03,828 --> 00:36:07,365 自分らしさを反映した店を 持てないなら 480 00:36:07,465 --> 00:36:12,603 自分は存在価値がないという 信念を 彼は持っていた 481 00:36:15,540 --> 00:36:20,578 手術を受けないでいいと 私に言ってほしかったんだ 482 00:36:20,878 --> 00:36:25,917 彼はできるだけ潔く 死ぬ道を選ぼうとしていた 483 00:36:27,451 --> 00:36:29,387 そんなこと反対だ 484 00:36:45,870 --> 00:36:49,240 病気について 公表することになり— 485 00:36:49,373 --> 00:36:51,676 私が下書きを書いた 486 00:36:53,411 --> 00:36:57,315 だが彼は それを読もうとしなかった 487 00:36:57,415 --> 00:36:59,951 “どうせ3ヵ月で 死ぬんだ”と 488 00:37:00,551 --> 00:37:03,721 しかし公になったことで— 489 00:37:03,821 --> 00:37:08,292 シカゴ大学が 私の連絡先を探し出し— 490 00:37:08,459 --> 00:37:11,796 自宅に電話をかけてきて こう言った 491 00:37:11,929 --> 00:37:14,999 “我々は アケッツさんを救える” 492 00:37:16,801 --> 00:37:22,807 シカゴ大学で診察を受け 検査をしたところ— 493 00:37:22,907 --> 00:37:27,278 やはりステージ4のガンだと 診断された 494 00:37:27,945 --> 00:37:30,815 だが こう言われた 495 00:37:32,416 --> 00:37:35,920 “手術をしなくても 治療できる” 496 00:37:36,921 --> 00:37:39,557 そしてさらに— 497 00:37:39,690 --> 00:37:43,961 “生存率については およそ70%だ”と 498 00:37:45,730 --> 00:37:50,735 他の病院で言われたことと まったく逆だった 499 00:37:50,968 --> 00:37:53,704 すべてがひっくり返った 500 00:37:57,008 --> 00:37:59,944 それは実験的な治療で— 501 00:38:00,678 --> 00:38:05,616 “分解して再び組み立てる” という独自の考え方だった 502 00:38:07,318 --> 00:38:10,621 出された書類に署名をし— 503 00:38:11,022 --> 00:38:13,958 それから すぐに治療に入った 504 00:38:17,061 --> 00:38:21,499 死を受け入れていた 私たちは— 505 00:38:21,599 --> 00:38:26,370 そこから化学療法を 受ける道を選んだ 506 00:38:37,014 --> 00:38:41,752 私は12週間に及ぶ 化学療法を始めた 507 00:38:44,355 --> 00:38:47,858 早朝 病院に行き 化学療法を受け— 508 00:38:48,659 --> 00:38:54,065 店に戻って準備し その後 また病院で化学療法を受けた 509 00:38:55,366 --> 00:38:57,902 そしてまた店に戻った 510 00:38:59,603 --> 00:39:01,639 体はボロボロになった 511 00:39:03,874 --> 00:39:07,445 放射線治療の範囲は 鼻の頭から— 512 00:39:07,578 --> 00:39:09,847 鎖骨にかけてだった 513 00:39:10,715 --> 00:39:13,551 ヤケドしたみたいになった 514 00:39:15,419 --> 00:39:19,790 しばらくすると皮膚が死んで 皮がむけた 515 00:39:19,890 --> 00:39:23,627 すべてを はぎ取られてしまったよ 516 00:39:23,728 --> 00:39:26,764 味覚を感じる味蕾(みらい)を含めてね 517 00:39:29,066 --> 00:39:34,505 彼は化学療法を受けて味覚を 失うとは思っていなかった 518 00:39:35,573 --> 00:39:37,508 味見の時に— 519 00:39:37,608 --> 00:39:38,376 〝塩が足りない〞と 言った後に— 520 00:39:38,376 --> 00:39:40,411 〝塩が足りない〞と 言った後に— 〝ネクスト〞総料理長 デイヴ・ベラン 521 00:39:40,411 --> 00:39:40,544 〝ネクスト〞総料理長 デイヴ・ベラン 522 00:39:40,544 --> 00:39:42,980 〝ネクスト〞総料理長 デイヴ・ベラン 〝塩は十分だ〞 と言い直すことも 523 00:39:46,684 --> 00:39:48,953 味を感じないことに— 524 00:39:49,653 --> 00:39:50,654 気づいた 525 00:39:54,959 --> 00:40:01,031 検査結果や画像診断によると ガンは小さくなっていた 526 00:40:02,533 --> 00:40:06,036 だが再び味覚が 戻るかどうかは— 527 00:40:06,437 --> 00:40:10,641 医者は確信を持って 答えられなかった 528 00:40:12,676 --> 00:40:15,846 味が分からないのに シェフとして— 529 00:40:17,047 --> 00:40:19,016 どうやって料理を作る? 530 00:40:20,718 --> 00:40:22,019 彼は自分を見失った 531 00:40:22,853 --> 00:40:25,723 味覚を 失ってしまうのは— 532 00:40:26,590 --> 00:40:28,859 命を失ったのと同じだった 533 00:40:36,767 --> 00:40:40,871 “アリニア”が廃れることを みんな心配した 534 00:40:42,807 --> 00:40:47,878 私は勝負はまだ ついてないと証明したかった 535 00:40:49,447 --> 00:40:51,749 革新を続けていると— 536 00:40:51,882 --> 00:40:55,486 人々に見せることにした 537 00:40:59,723 --> 00:41:03,661 彼は料理の絵と一緒に 指示も送ってきた 538 00:41:03,828 --> 00:41:10,034 “しっかり焼くことと 酸味は強くしすぎないこと” 539 00:41:10,234 --> 00:41:11,969 それに対し私たちは— 540 00:41:12,069 --> 00:41:15,906 “ピクルスが5としたら どの程度の酸味?” 541 00:41:16,474 --> 00:41:19,243 そういうやり取りを 通して— 542 00:41:19,777 --> 00:41:21,145 理解を深めた 543 00:41:24,482 --> 00:41:26,917 ひらめきを感じて こう思った 544 00:41:27,051 --> 00:41:31,856 “味が分からなくても シェフとしてやっていける” 545 00:41:31,989 --> 00:41:34,859 考えるのは頭だからだ 546 00:41:35,259 --> 00:41:36,794 舌じゃない 547 00:41:38,696 --> 00:41:43,067 奇しくも病気が彼に シェフとは何かを教えた 548 00:41:44,902 --> 00:41:50,741 以前は 新作の盛り付けは 彼だけがやっていたが— 549 00:41:50,875 --> 00:41:54,011 今は料理に触れずに 新作を送り出す 550 00:41:55,012 --> 00:41:57,081 もっと良くできるはずだ 551 00:41:57,214 --> 00:42:01,552 世界に名をはせる店を 作るためには— 552 00:42:01,652 --> 00:42:06,223 周りの人々の意見を 取り入れることが必要だ 553 00:42:07,691 --> 00:42:12,563 何かを生み出したいなら 考えをぶちまけるべきだ 554 00:42:20,804 --> 00:42:24,975 ある日 シェフたちと こんな話をした 555 00:42:25,109 --> 00:42:31,782 “チーズを膨らますのを 思いついたのは2002年だが” 556 00:42:31,916 --> 00:42:33,884 “それを浮かべたら?” 557 00:42:34,018 --> 00:42:37,254 “宙に浮かぶ料理を 考えよう” 558 00:42:37,588 --> 00:42:40,591 するとマイクが “私がやる”と 559 00:42:40,858 --> 00:42:45,129 他のみんなは あきれて黙っていた 560 00:42:45,763 --> 00:42:48,866 “そんなの不可能だ”とね 561 00:42:51,769 --> 00:42:54,905 浮く料理なら 砂糖だと思い— 562 00:42:55,005 --> 00:42:58,909 様々な種類や割合で 試してみた 563 00:42:59,009 --> 00:43:01,312 そして何とか— 564 00:43:01,612 --> 00:43:04,648 形のない物が出来上がった 565 00:43:06,684 --> 00:43:10,754 膨らませることはできるが きれいな形じゃない 566 00:43:11,021 --> 00:43:12,957 実際にひどい形だった 567 00:43:15,893 --> 00:43:18,162 砂糖の安定が鍵だった 568 00:43:21,599 --> 00:43:26,737 砂糖と安定剤を適切な温度で 混ぜたら うまく膨らみ 569 00:43:26,870 --> 00:43:29,640 移動させても壊れなかった 570 00:43:37,715 --> 00:43:40,217 最初の風船を 固定させた時— 571 00:43:41,085 --> 00:43:43,854 歴史的偉業を達成した 572 00:43:46,790 --> 00:43:51,762 “永遠に店の料理として 残していいか?”と— 573 00:43:52,663 --> 00:43:53,864 マイクに言った 574 00:43:56,300 --> 00:44:00,170 自分のために作れば よかったと思った 575 00:44:00,304 --> 00:44:03,307 自分のレパートリーに しとけばとね 576 00:44:04,675 --> 00:44:06,844 今は“アリニア”の料理だ 577 00:44:12,116 --> 00:44:16,854 シェフは包丁さばきや 盛り付け ソテーなど— 578 00:44:17,187 --> 00:44:20,958 巧みな技術で 世に知られたいと思う 579 00:44:23,360 --> 00:44:25,696 だけどそれは重要ではない 580 00:44:25,829 --> 00:44:31,769 一番重要なのは 小さくて 価値のある発想を— 581 00:44:32,302 --> 00:44:34,238 他の人に渡すことだ 582 00:44:34,705 --> 00:44:36,206 それで生まれたのが— 583 00:44:36,807 --> 00:44:38,275 “風船”だ 584 00:44:47,451 --> 00:44:49,953 それが今10になった 585 00:44:50,054 --> 00:44:54,058 それとカメノテが10皿 1皿はすべて野菜で 586 00:44:55,225 --> 00:45:01,065 生検を受けて麻酔が切れた時 ブレア医師に言われた 587 00:45:02,132 --> 00:45:05,035 “検査結果は陰性だった” 588 00:45:06,904 --> 00:45:08,272 ガンが消えたんだ 589 00:45:13,010 --> 00:45:17,247 数週間後 コーヒーに砂糖を たくさん入れて— 590 00:45:17,881 --> 00:45:19,083 ガブ飲みした 591 00:45:20,050 --> 00:45:22,019 その時に思った 592 00:45:22,119 --> 00:45:26,023 “めちゃくちゃ 甘いじゃないか” 593 00:45:26,457 --> 00:45:28,292 カップを置いて— 594 00:45:29,226 --> 00:45:32,863 コーヒーを見つめて また飲んでみた 595 00:45:34,031 --> 00:45:36,800 “砂糖の甘さを感じる” 596 00:45:37,034 --> 00:45:38,102 “味覚が戻った” 597 00:45:43,173 --> 00:45:49,246 1ヵ月後 塩ひとつまみを 舌の上に載せてみたら— 598 00:45:50,380 --> 00:45:52,082 塩の味を感じた 599 00:45:54,985 --> 00:45:58,956 味覚が次から次へと 戻り始めていた 600 00:46:01,091 --> 00:46:03,127 だが興味深かったのは— 601 00:46:04,428 --> 00:46:07,865 様々な味が ぶつかり始めたことだ 602 00:46:16,406 --> 00:46:18,108 生まれた時は— 603 00:46:18,475 --> 00:46:22,312 味覚はまだ それほど発達してない 604 00:46:24,348 --> 00:46:28,418 成長するにつれ 味覚は鋭くなっていく 605 00:46:29,419 --> 00:46:33,157 若い時は味を 記憶することができない 606 00:46:33,457 --> 00:46:36,226 その時点では— 607 00:46:36,560 --> 00:46:40,931 味の相乗効果を 理解することはできないんだ 608 00:46:42,099 --> 00:46:45,802 私が理解したのは33歳の時だ 609 00:46:47,905 --> 00:46:51,175 私にとっては 天の教えのようであり— 610 00:46:51,375 --> 00:46:54,845 シェフとしての世界が 一変した 611 00:46:57,014 --> 00:47:00,851 自分の中に かつてない活力が生まれ— 612 00:47:01,251 --> 00:47:05,155 それまで以上に意欲に燃えた 613 00:47:06,256 --> 00:47:10,227 再び得た命を 無駄にしたくはなかった 614 00:47:12,863 --> 00:47:16,567 ピーチ カヴァ バジル マレー川の塩と共に 615 00:47:20,304 --> 00:47:24,074 スパニッシュタパスの五重奏 616 00:47:26,877 --> 00:47:30,514 ニジマスの卵と豆 オリーブオイル カモミール 617 00:47:33,450 --> 00:47:37,588 ニンジンのスプレーと キノコの落書き 618 00:47:40,224 --> 00:47:43,994 ブラックトリュフの爆発 619 00:47:46,363 --> 00:47:49,900 ベーコンをバタースコッチ リンゴ タイムと共に 620 00:47:52,469 --> 00:47:57,140 ラムのケッパーリーフ ブドウ オリーブ添え 621 00:48:00,244 --> 00:48:04,514 チーズケーキの抹茶 ベリー ハイビスカス添え 622 00:48:15,058 --> 00:48:20,964 トロピカルフルーツの ラム酒 バニラ カフィアライムがけ 623 00:48:25,435 --> 00:48:29,973 私は今後“舌ガンを患った シェフ”として— 624 00:48:30,073 --> 00:48:35,646 知られるのではないかと 心配していた 625 00:48:37,447 --> 00:48:41,318 “味覚を失ったシェフ”と 思われることもね 626 00:48:42,653 --> 00:48:44,955 だが 病気を克服して— 627 00:48:45,088 --> 00:48:48,959 再スタートを 切ることができた 628 00:49:04,308 --> 00:49:08,512 スタッフ全員が 活気づく必要があった 629 00:49:08,645 --> 00:49:10,647 グラントの場合は— 630 00:49:10,981 --> 00:49:15,252 何かを作り出すことが 一番の薬だった 631 00:49:15,385 --> 00:49:18,989 彼はまったく新しいことを 求めていた 632 00:49:19,990 --> 00:49:23,994 新しいことをしていると 前に進める 633 00:49:24,127 --> 00:49:27,097 そういう感覚が 彼にはあった 634 00:49:27,230 --> 00:49:30,067 “流木 トロロとウニ カメノテ” 635 00:49:30,600 --> 00:49:35,138 壁一面がキャンバスだと 想像してみてくれ 636 00:49:35,272 --> 00:49:38,608 私たちが ソースを投げつけ— 637 00:49:38,709 --> 00:49:42,079 お客様がそれを すくい取るんだ 638 00:49:42,979 --> 00:49:47,317 実際にやらないが それと似たことをやりたい 639 00:49:47,451 --> 00:49:48,185 ええ 640 00:49:48,285 --> 00:49:53,156 “これを全部 捨てろ”と 彼は何度か言った 641 00:49:53,357 --> 00:49:56,626 いい料理なので なぜ捨てるのか聞いた 642 00:49:57,494 --> 00:50:02,399 彼は常にもっといい方法や もっといい食材など— 643 00:50:02,532 --> 00:50:06,002 より良い物を 追い求めてるんだ 644 00:50:07,337 --> 00:50:08,505 これはどうなる? 645 00:50:09,439 --> 00:50:13,143 煙が出て カクテルベースを注ぐと… 646 00:50:13,243 --> 00:50:15,312 新しいデキャンタだ 647 00:50:15,579 --> 00:50:16,346 その通り 648 00:50:16,446 --> 00:50:18,148 今までにない 649 00:50:18,248 --> 00:50:19,015 そうだ 650 00:50:19,583 --> 00:50:24,087 創造性や革新性が グラントの仕事の中核だ 651 00:50:24,187 --> 00:50:27,224 彼の仕事は 素晴らしいが— 652 00:50:27,357 --> 00:50:30,127 そこにはリスクが存在する 653 00:50:31,194 --> 00:50:33,530 興味深くもあるが— 654 00:50:34,131 --> 00:50:36,099 危険でもある 655 00:50:36,233 --> 00:50:40,303 “アリニア”はこの10年で 多くを成し遂げた 656 00:50:40,404 --> 00:50:44,541 しかし今後も 同じでいられるだろうか? 657 00:50:45,108 --> 00:50:50,247 新しさを追求する中で失敗し 店の評判を落としたり— 658 00:50:50,680 --> 00:50:52,349 経営難に陥り— 659 00:50:53,083 --> 00:50:55,619 店を潰してしまう可能性も 660 00:50:57,387 --> 00:51:01,091 うまくいくかは 誰にも分からない 661 00:51:03,260 --> 00:51:06,563 このレイアウトに した訳は— 662 00:51:06,696 --> 00:51:10,200 カメレオンみたいな 部屋にしたいから 663 00:51:10,634 --> 00:51:12,335 そう話したよね 664 00:51:13,670 --> 00:51:16,239 2016年1月に いったん店を閉め 665 00:51:16,673 --> 00:51:20,143 改装すると共に 新しい技術や— 666 00:51:20,277 --> 00:51:23,246 サービングスタイルを 学ぶんだ 667 00:51:24,414 --> 00:51:29,653 現在 驚くほど 順調だった店を分解している 668 00:51:30,520 --> 00:51:36,193 大盛況だったし 悪いところはなかった 669 00:51:36,560 --> 00:51:42,132 だが開店当初の理念を 保ち続けるためには— 670 00:51:42,766 --> 00:51:44,868 分解しないといけない 671 00:51:45,735 --> 00:51:47,604 “新しい発想”が必要だ 672 00:51:49,539 --> 00:51:52,709 それは私たちの 義務とも言える 673 00:51:55,178 --> 00:51:58,415 店をまっさらな状態に戻す 674 00:52:01,351 --> 00:52:03,520 今 私たちは自問している 675 00:52:04,754 --> 00:52:09,326 “10年間の功績を消して 再びイチから—” 676 00:52:11,127 --> 00:52:14,197 “やり直せるだろうか?” 677 00:52:14,531 --> 00:52:16,166 答えは“イエス”だ