1 00:00:03,937 --> 00:00:08,809 (優子)もう 話してもいいよね。➡ 2 00:00:08,809 --> 00:00:14,114 長い話になるけど 聞いてくれるねぇ? 3 00:00:16,416 --> 00:00:22,956 お父ちゃんとお母ちゃんの 昔の話…。 4 00:00:22,956 --> 00:00:26,793 ♬~ 5 00:00:26,793 --> 00:00:32,599 ♬「陽の光 纏う朝」 6 00:00:32,599 --> 00:00:38,805 ♬「開く窓 願う姿」 7 00:00:38,805 --> 00:00:49,149 ♬「忘れない 机の前 あなたの場所」 8 00:00:49,149 --> 00:00:55,822 ♬「また会えたら話をしよう」 9 00:00:55,822 --> 00:01:00,594 ♬「あの日の続きを聴かせてよ」 10 00:01:00,594 --> 00:01:07,935 ♬「届いて この歌 あなたへ」 11 00:01:07,935 --> 00:01:13,607 ♬「降り注ぐ 順光線」 12 00:01:13,607 --> 00:01:20,948 ♬「照らす背には 永久の願い」 13 00:01:20,948 --> 00:01:30,958 ♬「『大丈夫 ほら 見ていて』」 14 00:01:39,967 --> 00:01:42,302 (暢子)いつの写真? 15 00:01:42,302 --> 00:01:46,173 (優子)昭和18年ぐらいかね。 16 00:01:46,173 --> 00:01:50,811 うちの家族と お父ちゃん。➡ 17 00:01:50,811 --> 00:01:54,147 たった一枚 残っている写真。 18 00:01:54,147 --> 00:01:59,019 お父ちゃんが ずっと持っててくれてたわけ。 19 00:01:59,019 --> 00:02:01,755 これが お母ちゃんのおうち? 20 00:02:01,755 --> 00:02:07,627 (優子)そう。 うちは 那覇の食堂の娘だったから。 21 00:02:07,627 --> 00:02:13,266 ♬~(「浜千鳥」) 22 00:02:13,266 --> 00:02:19,606 (優子)うちの家族は 両親と おじぃ おばぁ➡ 23 00:02:19,606 --> 00:02:25,912 時恵ネーネー 弟の秀夫の7人家族。 24 00:02:28,315 --> 00:02:36,623 (優子)ネーネーは 琉球舞踊が上手で 弟は 賢秀に似て やんちゃだったよ。 25 00:02:36,623 --> 00:02:43,397 ♬~(「浜千鳥」) 26 00:02:43,397 --> 00:02:46,633 (良子)お母ちゃんも 踊りを習ってた? 27 00:02:46,633 --> 00:02:49,669 (優子)ネーネーに 少し教えてもらっただけ。 28 00:02:49,669 --> 00:02:52,139 お母ちゃんの踊り 見てみたい。 29 00:02:52,139 --> 00:02:54,941 (賢秀)おう。 ハッハッハ…。 30 00:02:56,643 --> 00:03:01,248 (優子)お父ちゃんは うちのお店で働いていたさぁ。 31 00:03:01,248 --> 00:03:04,151 お店の名物は そばだったよ。 32 00:03:04,151 --> 00:03:10,257 あ~ だから お父ちゃんが そばを作れたわけ? 33 00:03:10,257 --> 00:03:13,160 (良子)そのお店で お父ちゃんと出会ったわけ? 34 00:03:13,160 --> 00:03:15,762 初めは ただのお客さん。 35 00:03:15,762 --> 00:03:19,399 芸人一座の 一番下っ端でね。 36 00:03:19,399 --> 00:03:22,769 (歌子)もしかしたら 上原さんも その一座にいたわけ? 37 00:03:22,769 --> 00:03:25,105 上原さんが座長だったんだのに。 38 00:03:25,105 --> 00:03:30,610 (賢秀)アキサミヨー。 父ちゃんの夢は 歌手だったわけ? 39 00:03:30,610 --> 00:03:33,413 歌子が 今 使っている三線は➡ 40 00:03:33,413 --> 00:03:37,117 お父ちゃんが そのころから使っていたもの。 41 00:03:41,955 --> 00:03:46,293 上原さんの一座は 苦しくなって➡ 42 00:03:46,293 --> 00:03:49,963 お父ちゃんは 本土に出稼ぎに行ったわけ。 43 00:03:49,963 --> 00:04:00,574 ♬~ 44 00:04:00,574 --> 00:04:04,911 (房子)私の両親は やんばるの出身で➡ 45 00:04:04,911 --> 00:04:10,383 幼い姉を親戚に預けて 鶴見に仕事を探しに来た。 46 00:04:10,383 --> 00:04:12,752 私は 鶴見で生まれた。 47 00:04:12,752 --> 00:04:16,256 だから 私は 一度も 姉には会ったことがない。 48 00:04:16,256 --> 00:04:21,762 その姉の息子が 賢三。 暢子さんの父親。 49 00:04:21,762 --> 00:04:28,401 (二ツ橋)つまり オーナーの 甥御さんですね。 50 00:04:28,401 --> 00:04:33,607 賢三は 戦前 出稼ぎで鶴見に来ていた。 51 00:04:33,607 --> 00:04:37,777 私は 親戚というものに 初めて出会った。 52 00:04:37,777 --> 00:04:39,813 うれしかった。 53 00:04:39,813 --> 00:04:46,820 明るい若者で 三線はうまいし 県人会にも すぐになじんだ。 54 00:04:49,489 --> 00:04:56,129  回想 (賢三)♬「親ぬ寄し事や」 55 00:04:56,129 --> 00:05:02,903 ♬「肝に染みり」 56 00:05:02,903 --> 00:05:06,773 ♬「親ぬ寄し」 57 00:05:06,773 --> 00:05:08,775 (田良島)じゃあ 三郎さんは➡ 58 00:05:08,775 --> 00:05:13,246 暢子ちゃんの父親から三線を? 59 00:05:13,246 --> 00:05:20,987 (三郎)両親は 沖縄生まれの沖縄育ちだが 俺は こっちで生まれて育った。➡ 60 00:05:20,987 --> 00:05:24,257 沖縄のことを何にも知らねえ。 61 00:05:24,257 --> 00:05:27,260 大人になると それが悔しくてな。 62 00:05:27,260 --> 00:05:31,031 それで 賢三に 三線を教えてもらったんですよ。 63 00:05:31,031 --> 00:05:33,400 じきに 那覇に 戻っちまったんですけどね。 64 00:05:33,400 --> 00:05:36,937 民謡歌手になりてえっつって。 65 00:05:36,937 --> 00:05:40,407 (歌子)お父ちゃんは 結局 歌手には なれなかったの? 66 00:05:40,407 --> 00:05:43,777 どうにもならなくて…。 67 00:05:43,777 --> 00:05:49,115 お父ちゃんは 住み込みで うちの食堂の店員になった。 68 00:05:49,115 --> 00:05:52,018 で そのまま結婚? 69 00:05:52,018 --> 00:05:59,292 ううん。 お父ちゃんは そのうち いなくなってしまったから。 70 00:05:59,292 --> 00:06:01,228 何で? 71 00:06:01,228 --> 00:06:05,732 戦争が始まって 召集されて➡ 72 00:06:05,732 --> 00:06:09,436 中国の方に出征していった。 73 00:06:18,745 --> 00:06:25,085 (田良島)俺の兄は 19年に入営しましてね。 74 00:06:25,085 --> 00:06:28,588 沖縄で 戦死したんです。 75 00:06:28,588 --> 00:06:34,394 だから どうしても あの 「鉄の暴風」のことを➡ 76 00:06:34,394 --> 00:06:37,597 自分で記事にして伝えたかった。 77 00:06:40,267 --> 00:06:46,940 俺は 戦後 シベリアに連れていかれました。 78 00:06:46,940 --> 00:06:49,976 (田良島)シベリアですか。 79 00:06:49,976 --> 00:06:54,614 何年も 残された家族は➡ 80 00:06:54,614 --> 00:06:57,517 生きてんのか 死んでんのかも分からずね。 81 00:06:57,517 --> 00:07:01,054 苦労をかけちまいましたよ。 82 00:07:01,054 --> 00:07:04,557 (多江)いいえ。 83 00:07:04,557 --> 00:07:10,063 寒さと飢えの中 シベリアで死んだやつは まだ➡ 84 00:07:10,063 --> 00:07:14,234 骨も 日本に帰れないまま。 85 00:07:14,234 --> 00:07:19,940 いいやつほど 早く死にます。 86 00:07:24,577 --> 00:07:30,917 (優子)お父ちゃんは 戦地でのことを ほとんど話さなかった。 87 00:07:30,917 --> 00:07:37,624 ただ 一度だけ すごく後悔してることがあると言ってた。 88 00:07:40,627 --> 00:07:45,398 「まくとぅそーけー なんくるないさー」。 89 00:07:45,398 --> 00:07:49,769 自分が正しいと思うことを 守れなかったことを➡ 90 00:07:49,769 --> 00:07:54,407 すごく悔やんでいたと思う。 91 00:07:54,407 --> 00:08:00,213 帰ってきたばかりの頃は 夜 寝ている時➡ 92 00:08:00,213 --> 00:08:08,088 「ごめんなさい ごめんなさい」と うなされていたからね。 93 00:08:08,088 --> 00:08:19,599 ♬~ 94 00:08:19,599 --> 00:08:24,738  回想 (賢秀)父ちゃん 毎朝 何をお祈りしてるわけ? 95 00:08:24,738 --> 00:08:30,243 お願いしたいことと 謝らないといけないことがあるわけさ。 96 00:08:43,089 --> 00:08:50,397 昭和19年10月10日の大空襲で➡ 97 00:08:50,397 --> 00:08:53,933 那覇は 焼け野原➡ 98 00:08:53,933 --> 00:09:00,740 おうちも 食堂も 全部燃えて➡ 99 00:09:00,740 --> 00:09:04,744 おじぃと おばぁも亡くなって。 100 00:09:07,480 --> 00:09:13,686 そして 米軍が上陸してきた…。 101 00:09:17,557 --> 00:09:22,362 (優子)うちは 山の中を さまよっているうちに➡ 102 00:09:22,362 --> 00:09:26,232 お父さん お母さん ネーネーと はぐれて➡ 103 00:09:26,232 --> 00:09:28,568 弟と 二人きりになってしまった。 104 00:09:28,568 --> 00:09:30,870  回想 はっ…。 105 00:09:33,440 --> 00:09:38,244 (優子)うちと弟は アメリカ兵に つかまって➡ 106 00:09:38,244 --> 00:09:42,248 捕虜収容所で終戦を迎えた。 107 00:09:44,751 --> 00:09:52,559 戦争が終わって お父ちゃんは 沖縄に帰ってこられたわけ? 108 00:09:54,394 --> 00:10:01,768 日本には 戻ってきていたけど 沖縄には 帰ってこられなかった。 109 00:10:01,768 --> 00:10:04,404 何で? 110 00:10:04,404 --> 00:10:08,942 そのころ 沖縄出身の復員兵は➡ 111 00:10:08,942 --> 00:10:14,414 すぐに 沖縄に帰ることを 許されていなかったから。 112 00:10:14,414 --> 00:10:16,616 どうして? 113 00:10:18,284 --> 00:10:24,591 沖縄は… 日本じゃなくなっていたからねぇ。 114 00:10:37,971 --> 00:10:46,980 ♬~ 115 00:10:46,980 --> 00:10:50,650 (房子)妹と 空襲で生き別れて➡ 116 00:10:50,650 --> 00:10:57,957 きっとまた 一緒に暮らせると信じて ずっと捜し続けて。 117 00:10:59,993 --> 00:11:02,962 とも…! 118 00:11:02,962 --> 00:11:06,766 すいません…。 119 00:11:06,766 --> 00:11:12,405 (房子)私は 妹を捜しながら 焼け跡の闇市で 商売を始めた。 120 00:11:12,405 --> 00:11:17,610 あっ ありがとうございます。 ありがとうございました。 121 00:11:17,610 --> 00:11:19,612 いらっしゃい…。 122 00:11:21,281 --> 00:11:24,951 賢三…。 123 00:11:24,951 --> 00:11:30,290 (房子)明るかった賢三が まるで別人。➡ 124 00:11:30,290 --> 00:11:33,293 笑わない男になっていた。 125 00:11:35,628 --> 00:11:39,499 (房子)沖縄に帰りたくても 帰れなかった 賢三は➡ 126 00:11:39,499 --> 00:11:44,137 私の商売を手伝ってくれた。➡ 127 00:11:44,137 --> 00:11:50,443 人がいいし 料理もできる 頼れる甥っ子だった。➡ 128 00:11:50,443 --> 00:11:55,949 独りぼっちだった私は とっても うれしかった。 129 00:12:03,389 --> 00:12:06,392 賢三。 はい。 130 00:12:15,969 --> 00:12:19,272 叔母さん ありがとう。 131 00:12:19,272 --> 00:12:24,410 2人で もっともっと働いて 稼ぐよ! 132 00:12:24,410 --> 00:12:26,412 はい! 133 00:12:28,281 --> 00:12:33,786 (房子)これからも ずっと一緒に 商売をやっていこうねって約束した。 134 00:12:39,626 --> 00:12:46,966 翌年 賢三は沖縄に帰れることになって 鶴見を去った。 135 00:12:46,966 --> 00:12:53,840 「家族の消息を確かめたら すぐ また戻ります」と言って。➡ 136 00:12:53,840 --> 00:12:57,310 でも それっきり…。 137 00:12:57,310 --> 00:13:02,582 賢三が 鶴見に 戻ることはなかった。 138 00:13:02,582 --> 00:13:07,754 1年ほどして 手紙が届いた。 139 00:13:07,754 --> 00:13:12,625 「やんばるで結婚した。 やんばるで子供を育てたい。➡ 140 00:13:12,625 --> 00:13:16,429 約束を破ってしまって 申し訳ない」。 141 00:13:18,765 --> 00:13:22,769 私は 裏切られたと 思い込んでしまった。 142 00:13:24,637 --> 00:13:31,277 あちこちの収容所を 転々とさせられて➡ 143 00:13:31,277 --> 00:13:35,148 いつも ひもじくて。 144 00:13:35,148 --> 00:13:41,854 やがて 弟も死んでしまった。 145 00:13:43,623 --> 00:13:51,631 うちが 独りぼっちになってしまって もう 生きる気力もなくなった頃…。 146 00:13:58,438 --> 00:14:01,741 (優子)お父ちゃんは 自分の親きょうだいが➡ 147 00:14:01,741 --> 00:14:06,379 収容所にいるんじゃないかと 捜しに来てた。➡ 148 00:14:06,379 --> 00:14:13,152 結局 みんな 戦争で 死んでしまっていたんだけど。 149 00:14:13,152 --> 00:14:15,355  回想 (賢三)優子か? 150 00:14:19,926 --> 00:14:23,763 ニーニー… 賢三ニーニー! 151 00:14:23,763 --> 00:14:26,799 生きてたのか 生きててくれたのか! 152 00:14:26,799 --> 00:14:29,302 よかった…。 153 00:14:35,274 --> 00:14:39,145 運命の再会だと思った。 154 00:14:39,145 --> 00:14:54,460 ♬~