1 00:00:33,400 --> 00:00:43,400 ♬~(テーマ音楽) 2 00:01:42,452 --> 00:01:45,789 (正平)えっ!? お姉ちゃん 出番 決まったんけ? 3 00:01:45,789 --> 00:01:50,489 (糸子)うん。 「体調も落ち着いてきたし」言うて。 4 00:01:52,963 --> 00:01:57,463 (正典)いつや? 10月11日や。 5 00:01:59,403 --> 00:02:02,389 10月11日いうたら…。 6 00:02:02,389 --> 00:02:05,392 (小梅) 正太郎ちゃんの命日ですやな。 7 00:02:05,392 --> 00:02:07,692 はい! 8 00:02:17,454 --> 00:02:21,454 <その10月11日を迎えました> 9 00:02:26,463 --> 00:02:49,453 ≪(太鼓の音) 10 00:02:49,453 --> 00:03:09,453 [ 回想 ] (拍手と歓声) 11 00:03:12,392 --> 00:03:16,396 (正太郎)人間も 箸と同じや。 12 00:03:16,396 --> 00:03:33,463 ♬~ 13 00:03:33,463 --> 00:03:36,400 (喜代美)おじいちゃん…。 14 00:03:36,400 --> 00:03:42,789 (正太郎)研いで 出てくるのは この塗り重ねたもんだけや。➡ 15 00:03:42,789 --> 00:03:50,464 一生懸命 生きてさえおったら 悩んだ事も 落ち込んだ事も➡ 16 00:03:50,464 --> 00:03:53,400 きれいな模様になって出てくる。➡ 17 00:03:53,400 --> 00:03:56,820 お前のなりたいもんになれる。 18 00:03:56,820 --> 00:04:07,397 ♬~ 19 00:04:07,397 --> 00:04:15,389 ♬~(出囃子) 20 00:04:15,389 --> 00:04:23,389 (拍手) 21 00:04:32,456 --> 00:04:35,993 ようこそのお運び 厚く御礼申し上げます。 22 00:04:35,993 --> 00:04:39,396 徒然亭の紅一点 若狭でございます。 23 00:04:39,396 --> 00:04:41,965 初日のご挨拶には 顔を出せませんで➡ 24 00:04:41,965 --> 00:04:44,401 失礼をいたしました。 25 00:04:44,401 --> 00:04:48,388 私事で恐縮ですが 結婚して 10年➡ 26 00:04:48,388 --> 00:04:51,058 やっと 子供を授かりまして。 27 00:04:51,058 --> 00:04:55,912 (拍手) 28 00:04:55,912 --> 00:04:58,965 ありがとうございます。 29 00:04:58,965 --> 00:05:03,954 けったいな感じですね。 おなかに 子供がいてるいうのんは…。 30 00:05:03,954 --> 00:05:08,058 私 子供の頃から 何でも くよくよ悩む癖がありまして。 31 00:05:08,058 --> 00:05:11,078 それだけは 似てほしないなあ。 そない思えば思うほど➡ 32 00:05:11,078 --> 00:05:14,464 似てしまうんやろなあ 嫌やなあって➡ 33 00:05:14,464 --> 00:05:16,466 もう既に くよくよ悩んでますけど。 34 00:05:16,466 --> 00:05:18,452 (笑い声) 35 00:05:18,452 --> 00:05:20,954 まあ そんな くよくよ悩んでばっかりやった➡ 36 00:05:20,954 --> 00:05:23,724 子供の頃の私を 笑わしてくれたんが➡ 37 00:05:23,724 --> 00:05:26,460 落語でございまして…。 ええ。 38 00:05:26,460 --> 00:05:29,463 うちの師匠 草若の「愛宕山」をね➡ 39 00:05:29,463 --> 00:05:33,900 毎日毎日 聴いてたんでございます。 40 00:05:33,900 --> 00:05:40,490 師匠の十八番の このネタに 今日は 挑戦さして頂きます。 41 00:05:40,490 --> 00:05:42,790 どうぞ よろしく おつきあいを願います。 42 00:05:45,896 --> 00:05:50,467 え~ 太鼓持ち 男芸者と呼ばれる 商売がありますが➡ 43 00:05:50,467 --> 00:05:52,452 これが なかなか 難しい商売でして。 44 00:05:52,452 --> 00:05:54,905 東京の方では…。 45 00:05:54,905 --> 00:05:58,125 [ 回想 ] ほら! おばあちゃん 初めまして。 46 00:05:58,125 --> 00:06:01,394 喜代美で…。 (布の裂ける音) 47 00:06:01,394 --> 00:06:04,064 あ~! 48 00:06:04,064 --> 00:06:06,466 信じられへん! 49 00:06:06,466 --> 00:06:09,453 喜代美! 50 00:06:09,453 --> 00:06:13,457 お母ちゃん 急に入ってこんといてんか。 51 00:06:13,457 --> 00:06:16,793 ゆっくり入ってきたら その方が 気色悪いやな。 52 00:06:16,793 --> 00:06:22,093 これ ランドセルに つけときなれ。 何や それ。 53 00:06:25,118 --> 00:06:29,222 ぎょうさん ええ事 ありますように。 お守りや。 54 00:06:29,222 --> 00:06:32,225 御所から 二条のお城も 尻目に殺しまして➡ 55 00:06:32,225 --> 00:06:34,795 どんどん 西へ出てまいります。 56 00:06:34,795 --> 00:06:36,963 野辺へ出てまいりますと 春先の事で➡ 57 00:06:36,963 --> 00:06:41,118 空には ひばりが ピーチクパーチク ピーチクパーチク さえずって➡ 58 00:06:41,118 --> 00:06:43,403 下には れんげ たんぽぽの花盛り。 59 00:06:43,403 --> 00:06:45,388 陽炎が こう 燃えたちまして➡ 60 00:06:45,388 --> 00:06:48,892 遠山には す~っと 霞の帯を引いたよう。 61 00:06:48,892 --> 00:06:54,080 麦が 青々と伸びて 菜種の花が 彩っていようかという本陽気。 62 00:06:54,080 --> 00:06:56,466 やかましゅう言うて やって参ります。 63 00:06:56,466 --> 00:06:59,466 その道中の陽気な事! 64 00:07:02,722 --> 00:07:04,791 [ 回想 ] え~っ!? 65 00:07:04,791 --> 00:07:07,127 (糸子)「別の容器に入った 大根おろしと➡ 66 00:07:07,127 --> 00:07:12,065 かつお節と刻みねぎと そばつゆをかけて 食べなさい」。 67 00:07:12,065 --> 00:07:15,502 もう お母ちゃん! 何なんけ あの…。 68 00:07:15,502 --> 00:07:18,002 あ~ 喜代美 お帰りやす。 69 00:07:19,623 --> 00:07:23,423 ど… どうしたん? その顔。 70 00:07:25,395 --> 00:07:29,633 赤いアイシャドーで お色気 ムンムンや。 ハハハッ! 71 00:07:29,633 --> 00:07:32,652 「しょうもない! 何でもないがな。➡ 72 00:07:32,652 --> 00:07:34,654 そんなもん わてかて でけまんがな。➡ 73 00:07:34,654 --> 00:07:37,290 ちょっと おばん! かわらけ 100枚」。 74 00:07:37,290 --> 00:07:40,794 「100枚て… 何ちゅう むちゃな事 言うねん」。 75 00:07:40,794 --> 00:07:44,064 [ 回想 ] 喜代美が 笑ってくれますように! 76 00:07:44,064 --> 00:07:46,466 お母ちゃん…。 77 00:07:46,466 --> 00:07:49,966 喜代美が 幸せでありますように! 78 00:07:52,405 --> 00:07:57,405 喜代美が! あっ… あ~っ!? 79 00:08:01,464 --> 00:08:05,402 どうしよう!? 間違うて 財布 投げてしもうた! 80 00:08:05,402 --> 00:08:07,621 え~っ!? (糸子)えらいこっちゃ! 81 00:08:07,621 --> 00:08:13,421 もう それやったら ほんまに 「愛宕山」の一八やんけ。 82 00:08:17,464 --> 00:08:23,086 フフフフッ…。 あっ 笑た! 83 00:08:23,086 --> 00:08:26,389 お母ちゃんが 変な事するからやわ。 84 00:08:26,389 --> 00:08:31,962 ♬~ 85 00:08:31,962 --> 00:08:36,733 笑た…。 笑た! 86 00:08:36,733 --> 00:08:38,985 喜代美が笑た! 87 00:08:38,985 --> 00:08:58,388 ♬~ 88 00:08:58,388 --> 00:09:00,390 「へえ 旦さん ただいま!」。 89 00:09:00,390 --> 00:09:04,394 「えらいやっちゃ 上がってきよった! で 金は?」。 90 00:09:04,394 --> 00:09:07,797 「ああ! 忘れてきた…」。 91 00:09:07,797 --> 00:09:13,453 (拍手と笑い声) 92 00:09:13,453 --> 00:09:39,953 (拍手) 93 00:10:02,469 --> 00:10:05,669 本日は…。 94 00:10:10,460 --> 00:10:16,433 私の最後の高座に おつきあい頂きまして➡ 95 00:10:16,433 --> 00:10:18,451 ありがとうございました。 96 00:10:18,451 --> 00:10:31,451 (どよめき) 97 00:10:45,395 --> 00:10:48,131 (草々)何を いきなり また 訳の分からん事➡ 98 00:10:48,131 --> 00:10:50,467 言うてんねん お前は! 99 00:10:50,467 --> 00:10:53,403 今までの修業 全部 無駄にする気か!? 100 00:10:53,403 --> 00:10:56,389 (草原)まあ 草々 落ち着け。 101 00:10:56,389 --> 00:10:59,893 若狭…。 102 00:10:59,893 --> 00:11:03,580 今の「愛宕山」 ほんまに よかったで。 103 00:11:03,580 --> 00:11:06,399 ありがとうございます。 104 00:11:06,399 --> 00:11:09,402 特別な思い入れのある噺 やったんやろけど➡ 105 00:11:09,402 --> 00:11:13,123 あれだけできたら 大したもんや。 106 00:11:13,123 --> 00:11:16,459 それだけに げせへんのや。 107 00:11:16,459 --> 00:11:19,462 もったいないやないか。 108 00:11:19,462 --> 00:11:24,084 ほやかて 見つけてしもたんですもん。 109 00:11:24,084 --> 00:11:26,953 何をや? 110 00:11:26,953 --> 00:11:29,456 自分のなりたいもの。 111 00:11:29,456 --> 00:11:31,391 喜代美! 112 00:11:31,391 --> 00:11:33,393 糸子! 勝手に 楽屋に…。 113 00:11:33,393 --> 00:11:38,965 あんた 何を考えとんや! 114 00:11:38,965 --> 00:11:44,965 お母ちゃんは許さんで! ちゃんと 修業続けなれ! 115 00:11:48,992 --> 00:11:51,127 お母ちゃん。 116 00:11:51,127 --> 00:11:55,081 何やの!? 117 00:11:55,081 --> 00:11:58,401 ごめんな。 118 00:11:58,401 --> 00:12:02,388 謝るくらいやったら 初めから おかしな事 言いなんな! 119 00:12:02,388 --> 00:12:07,688 違う。 その事やない。 120 00:12:09,796 --> 00:12:14,234 小浜 出る時…➡ 121 00:12:14,234 --> 00:12:16,934 ひどい事 言うて ごめんな。 122 00:12:22,892 --> 00:12:26,463 [ 回想 ] ここに おりなさい! 嫌や! 123 00:12:26,463 --> 00:12:30,733 何でや! お母ちゃんみたいに なりたくないの! 124 00:12:30,733 --> 00:12:41,895 ♬~ 125 00:12:41,895 --> 00:12:45,064 ごめんなさい…。 126 00:12:45,064 --> 00:12:56,459 ♬~ 127 00:12:56,459 --> 00:12:59,729 あのころ 私…➡ 128 00:12:59,729 --> 00:13:05,451 お母ちゃんいう仕事は しょうもない思とった。 129 00:13:05,451 --> 00:13:09,455 自分の やりたい事なんか 後回しで➡ 130 00:13:09,455 --> 00:13:13,960 家族の心配ばっかりして 世話焼いて➡ 131 00:13:13,960 --> 00:13:17,797 人の事で 笑たり 泣いたり➡ 132 00:13:17,797 --> 00:13:21,497 なんて つまらん 脇役人生や思とった。 133 00:13:23,453 --> 00:13:30,153 けど… ほやなかったんやね。 134 00:13:32,478 --> 00:13:35,965 お母ちゃんは 太陽みたいに➡ 135 00:13:35,965 --> 00:13:38,451 いつでも 周りを照らしてくれとる。 136 00:13:38,451 --> 00:13:40,951 毎日 毎日…。 137 00:13:44,457 --> 00:13:50,457 それが どんだけ すてきな事か分かったんや。 138 00:13:52,749 --> 00:13:55,752 どんだけ豊かな人生か 分かったんや。 139 00:13:55,752 --> 00:14:02,792 ♬~ 140 00:14:02,792 --> 00:14:04,992 お母ちゃん…。 141 00:14:08,464 --> 00:14:11,164 ありがとう。 142 00:14:12,819 --> 00:14:16,906 ずっと ずっと➡ 143 00:14:16,906 --> 00:14:20,293 おなかに おる時から➡ 144 00:14:20,293 --> 00:14:23,896 大事に大事にしてくれて➡ 145 00:14:23,896 --> 00:14:26,065 ありがとう。 146 00:14:26,065 --> 00:14:37,060 ♬~ 147 00:14:37,060 --> 00:14:40,063 何を言うとんのやな この子は…。 148 00:14:40,063 --> 00:14:46,452 ♬~ 149 00:14:46,452 --> 00:14:49,405 この子は! 150 00:14:49,405 --> 00:15:01,401 ♬~ 151 00:15:01,401 --> 00:15:04,787 私…➡ 152 00:15:04,787 --> 00:15:07,787 お母ちゃんみたいになりたい。 153 00:15:10,743 --> 00:15:14,397 お母ちゃんみたいに なりたいんや! 154 00:15:14,397 --> 00:15:24,397 ♬~ 155 00:15:34,250 --> 00:15:38,688 「まだまだと おもひすごしおるうちに➡ 156 00:15:38,688 --> 00:15:43,359 はや しのみちへ むかふものなり」。 157 00:15:43,359 --> 00:15:46,262 幼いはなが詠んだ辞世の歌は➡ 158 00:15:46,262 --> 00:15:52,702 はなや安東家の人々の運命を 大きく変える事になるのでした。 159 00:15:52,702 --> 00:15:55,605 (安東吉平) はな もう少しの辛抱じゃ。 160 00:15:55,605 --> 00:15:57,573 頑張るだよ! 161 00:15:57,573 --> 00:16:00,043 (安東はな)おとう…。