1 00:00:31,548 --> 00:00:33,548 ♬~ 2 00:00:50,567 --> 00:00:53,203 (貸山)いや それは話が違う… 3 00:00:53,203 --> 00:00:55,555 いやいやいや! そうではございません ええ… 4 00:00:55,555 --> 00:00:57,891 申し訳ございません 全く おっしゃるとおりで 5 00:00:57,891 --> 00:01:02,562 いや… しかし 先ほどは確か ご購入いただけると 6 00:01:02,562 --> 00:01:05,565 あっ 少々お待ちください 7 00:01:05,565 --> 00:01:08,201 コマノ君 コマノ君 ちょっと おいで 8 00:01:08,201 --> 00:01:12,555 あの機器… ほら あれ ちょっと 値引きできるんじゃなかったっけ 9 00:01:12,555 --> 00:01:16,226 え? 3パー? 何言ってんの! 10 00:01:16,226 --> 00:01:19,879 5%ぐらい いっちゃえよ ドカンと ドカンと そうそう… 11 00:01:19,879 --> 00:01:23,566 僕が言っとけば もう大丈夫だから うんうんうん… 12 00:01:23,566 --> 00:01:27,237 もしもし ええ あの ここで耳寄りな お話が 13 00:01:27,237 --> 00:01:31,574 ええ 今回5%ほど うちで頑張らさせていただいて… 14 00:01:31,574 --> 00:01:36,913 え? 他社からも売り込みが? えっ? あ… 15 00:01:36,913 --> 00:01:41,568 その会社は うちの劣化コピーですよ… え? 16 00:01:41,568 --> 00:01:44,568 えっ その会社に おいごさんが お勤めで? 17 00:01:47,206 --> 00:01:49,876 いや いやいや 決して他意は… [TEL](通話が切れた音) 18 00:01:49,876 --> 00:01:53,563 あっ あの もしもし? もしもし? 19 00:01:53,563 --> 00:01:55,863 あ~… 20 00:02:06,559 --> 00:02:09,896 (ため息) 21 00:02:09,896 --> 00:02:15,268 ったく サラリーマンてのは 手錠のない囚人だね 22 00:02:15,268 --> 00:02:17,870 そのくせ首輪は付いてる 23 00:02:17,870 --> 00:02:22,875 大事な取引先 逃がしてさ これで… 首にリーチだよ 24 00:02:22,875 --> 00:02:27,175 (白瀬)うん! ハァハァ… 25 00:02:32,568 --> 00:02:36,956 それに比べてさ サッカーの選手 ってのは すごいよね 26 00:02:36,956 --> 00:02:40,276 トップの選手になると うん億円も稼ぐでしょ 27 00:02:40,276 --> 00:02:43,646 それはいいの 夢があるから 28 00:02:43,646 --> 00:02:46,549 僕が すごいなって思うのは➡ 29 00:02:46,549 --> 00:02:50,903 得点を決めたときに 選手が ワッて雄たけびを上げるでしょ 30 00:02:50,903 --> 00:02:53,890 それ見て 観客も ワーッて叫ぶ 31 00:02:53,890 --> 00:02:57,190 はぁ… 何ですか? あの一体感 32 00:03:02,315 --> 00:03:06,869 そんな一体感はね サラリーマンには ありません 33 00:03:06,869 --> 00:03:10,890 結局はスタンドにいる民衆の1人 34 00:03:10,890 --> 00:03:14,560 仕事を1つ決めようが 拍手も喝采もない 35 00:03:14,560 --> 00:03:19,565 なのに 外しゃあ 罵声だけは届く 36 00:03:19,565 --> 00:03:23,553 あー 叫びたい もう ガーッと叫びたいよ 37 00:03:23,553 --> 00:03:27,874 でもね どうですか 僕が ホントに職場で叫んだら➡ 38 00:03:27,874 --> 00:03:30,209 これ 下手したら通報されますよ 39 00:03:30,209 --> 00:03:33,212 さーっと 人が散っていきます 40 00:03:33,212 --> 00:03:38,212 不公平だな 僕 これ 不公平だと思う 41 00:03:41,637 --> 00:03:47,010 叫びたいのは みんな同じだよ 42 00:03:47,010 --> 00:03:51,310 でも… 何叫んでいいか 分からないんだ 43 00:03:53,216 --> 00:03:57,603 (白瀬) あー 暑い… へっ ふっ お代わりをもらおう 44 00:03:57,603 --> 00:03:59,903 なみなみとやってくれ 45 00:04:10,566 --> 00:04:13,236 うう! ああ… あ~あ~… 46 00:04:13,236 --> 00:04:17,223 いやー すまない あんたの話が おかしくってね 47 00:04:17,223 --> 00:04:20,576 そこの台を打ってるとき つい耳に挟んでしまったんだ 48 00:04:20,576 --> 00:04:23,563 ああ さっきのサッカー選手の話 49 00:04:23,563 --> 00:04:29,218 あれは胸に迫ったね それは また どうして? 50 00:04:29,218 --> 00:04:31,571 私も叫びたいことがあってね 51 00:04:31,571 --> 00:04:36,209 あんたも相当叫びたいことが おありのようだ 52 00:04:36,209 --> 00:04:39,912 そうです ええ そうですとも 53 00:04:39,912 --> 00:04:43,566 僕もね 今 ものすごく叫びたい 54 00:04:43,566 --> 00:04:47,553 営業なんて部署に異動させられて 僕 この間までエンジニアだったの 55 00:04:47,553 --> 00:04:51,574 ほら ものすごく 賢そうな顔してるでしょ? ね? 56 00:04:51,574 --> 00:04:54,577 でもね エンジニアが 営業なんか行ったって➡ 57 00:04:54,577 --> 00:04:56,562 物なんて売れるわけないの 58 00:04:56,562 --> 00:05:01,234 僕 元のとこに戻れるんだったら 何でもする いや➡ 59 00:05:01,234 --> 00:05:05,221 必ず戻ってみせる うん よかったら その1杯➡ 60 00:05:05,221 --> 00:05:07,890 おごらせてくれないか? え? 61 00:05:07,890 --> 00:05:11,260 私が手をたたいたせいで こぼしてしまったんだ 62 00:05:11,260 --> 00:05:15,598 いや… お構いなく こちらに 同じ1杯を 63 00:05:15,598 --> 00:05:17,917 (バーテンダー)社長にお出ししたものと 同じもので? 64 00:05:17,917 --> 00:05:19,902 (白瀬)うん 65 00:05:19,902 --> 00:05:34,901 ♬~ 66 00:05:34,901 --> 00:05:36,901 あの… 67 00:05:38,921 --> 00:05:44,560 お待ち合わせですか? いいや 1人だ 68 00:05:44,560 --> 00:05:55,905 ♬~ 69 00:05:55,905 --> 00:05:57,907 先ほどは 酔っておりまして➡ 70 00:05:57,907 --> 00:05:59,926 大変に ご無礼を いいんだよ 71 00:05:59,926 --> 00:06:02,912 遠慮せずにやってくれ しかし さすがでございますな 72 00:06:02,912 --> 00:06:05,231 ん? いや 社長さんともなりますと➡ 73 00:06:05,231 --> 00:06:07,900 見ず知らずの人間に こう 1杯差し出せる 74 00:06:07,900 --> 00:06:11,254 そんな心の余裕をお持ちだ 大げさだよ 75 00:06:11,254 --> 00:06:14,924 経営者だとは言ったがね 私がいるのは小さな会社なんだ 76 00:06:14,924 --> 00:06:18,244 あー でも 社長さんならではの 心の広さと申しますか 77 00:06:18,244 --> 00:06:20,913 これには 元から青い太平洋も真っ青です 78 00:06:20,913 --> 00:06:22,899 もっと砕けてもらって かまわないよ 79 00:06:22,899 --> 00:06:24,901 はい? 我々は バーに居合わせた➡ 80 00:06:24,901 --> 00:06:27,587 ただの客同士にすぎないんだ そんなに持ち上げられたら➡ 81 00:06:27,587 --> 00:06:30,223 くつろげないよ ああ… すいません 82 00:06:30,223 --> 00:06:32,225 これが つい出てしまって 無意識に 83 00:06:32,225 --> 00:06:34,560 もう ほとんど ポンプと変わらないです 84 00:06:34,560 --> 00:06:37,563 と言うと? はい 私 ふた月前➡ 85 00:06:37,563 --> 00:06:40,233 営業の部署へと異動になりまして 86 00:06:40,233 --> 00:06:42,585 この営業畑には営業畑の➡ 87 00:06:42,585 --> 00:06:45,571 独自の話し方ってのが あるんですね 88 00:06:45,571 --> 00:06:48,224 今じゃ すっかり 口から ついて出る言葉が➡ 89 00:06:48,224 --> 00:06:50,560 この手より先に もみ手を… なるほど➡ 90 00:06:50,560 --> 00:06:52,895 さっきも そういうようなことを こぼされていたね 91 00:06:52,895 --> 00:06:54,914 いや お恥ずかしいかぎり 92 00:06:54,914 --> 00:06:56,883 いや 恥ずかしがることなんてないよ 93 00:06:56,883 --> 00:07:00,887 異動して ふた月でしょ? もう その調子なら立派だ 94 00:07:00,887 --> 00:07:02,922 素質があるってことだ 95 00:07:02,922 --> 00:07:06,242 いえ 僕の営業成績は 目も当てられないもので 96 00:07:06,242 --> 00:07:08,227 そうは見えんがね 97 00:07:08,227 --> 00:07:12,615 ちゃんと 先輩方の教えに 学んだんですがね 98 00:07:12,615 --> 00:07:18,221 何を教えてくれたんだね? 営業の諸先輩は 99 00:07:18,221 --> 00:07:21,874 ポーカーです ポーカー? 100 00:07:21,874 --> 00:07:26,229 はい 相手の顔色をうかがい その腹の中を読む 101 00:07:26,229 --> 00:07:29,565 買わない気でいるのか 少し値を下げれば買うのか 102 00:07:29,565 --> 00:07:32,568 相手のカードを読み こちらも 「値下げ」というカードを➡ 103 00:07:32,568 --> 00:07:36,872 徐々に切っていく そんなポーカーゲームにも似た心理戦です 104 00:07:36,872 --> 00:07:41,227 ふ~ん なるほど でも ご覧のとおり この顔 105 00:07:41,227 --> 00:07:44,230 ポーカーフェースって言うには ちょっと ほど遠くてですね 106 00:07:44,230 --> 00:07:48,217 で そのやり方で どれだけの売り上げを? 107 00:07:48,217 --> 00:07:51,887 誠に お恥ずかしいながら 今月 僕が成立させた取引は➡ 108 00:07:51,887 --> 00:07:56,259 ただの1件だけなんです それも 親戚のいる会社を➡ 109 00:07:56,259 --> 00:07:59,895 拝み倒して売った お情けの1件なんです 110 00:07:59,895 --> 00:08:05,568 はぁ~ 崖っぷちだね 崖っぷちです 111 00:08:05,568 --> 00:08:10,239 でも 必ず切り抜けられると 固く信じております 112 00:08:10,239 --> 00:08:14,560 そうだよ 成績を上げていけば いいんだよ! 113 00:08:14,560 --> 00:08:17,913 あるいは… あるいは? 114 00:08:17,913 --> 00:08:20,913 元の部署に戻るチャンスがあれば 115 00:08:27,907 --> 00:08:33,879 うーん 会社の異動というものには それなりの理由が あるものだ 116 00:08:33,879 --> 00:08:36,582 承知しております よほどの実績を➡ 117 00:08:36,582 --> 00:08:38,884 以前の部署で 残していないかぎり➡ 118 00:08:38,884 --> 00:08:42,888 人事に嘆願すること自体も 難しいだろう 119 00:08:42,888 --> 00:08:47,927 でも その… よほどの実績を 残していたとしたら? 120 00:08:47,927 --> 00:08:50,229 ほう 興味深い話だ 121 00:08:50,229 --> 00:08:54,884 僕 以前いた部署では 3度 表彰を頂いてるんです 122 00:08:54,884 --> 00:08:57,884 社内と社外 合わせて ほう そりゃすごい 123 00:08:59,889 --> 00:09:05,227 ええ 今思えば それが 人生の絶頂期だったかと… 124 00:09:05,227 --> 00:09:08,230 そういえば 以前はエンジニアだったと➡ 125 00:09:08,230 --> 00:09:10,566 さっき そう おっしゃっていたね はい 126 00:09:10,566 --> 00:09:14,166 その表彰を受けたものって 何を作ってるんだい? 127 00:09:16,572 --> 00:09:20,926 いや あの… 物の話は少々専門的で➡ 128 00:09:20,926 --> 00:09:22,912 退屈な お話に なってしまいますから➡ 129 00:09:22,912 --> 00:09:27,583 まあ「機械の一種」とだけ… じゃあ 物については➡ 130 00:09:27,583 --> 00:09:30,586 それ以上 聞かない そんなことよりも あれだ 131 00:09:30,586 --> 00:09:33,222 3度の表彰を受けるような 優秀なエンジニアが➡ 132 00:09:33,222 --> 00:09:35,558 どうして営業マンに? 133 00:09:35,558 --> 00:09:38,561 問題は そこなんです その異動➡ 134 00:09:38,561 --> 00:09:41,561 思い当たる理由は あるのかい? ええ 135 00:11:14,540 --> 00:11:19,929 これは よくある話ではありますが 「上司と部下」 この永遠の命題 136 00:11:19,929 --> 00:11:25,551 解き方ひとつで 出世か島流し 厳しい 137 00:11:25,551 --> 00:11:28,871 うん? 要するに 部長と対立して➡ 138 00:11:28,871 --> 00:11:31,874 飛ばされてしまったんです 139 00:11:31,874 --> 00:11:35,211 ある日 部長と 激しくやり合ってしまいまして 140 00:11:35,211 --> 00:11:37,213 それを たまたまとはいえ➡ 141 00:11:37,213 --> 00:11:40,216 本社の視察がある日に やってしまったのが まずかった 142 00:11:40,216 --> 00:11:44,870 本社の視察がある日に何をした? 143 00:11:44,870 --> 00:11:47,870 部署の一同を代表して とある陳情を 144 00:11:51,560 --> 00:11:53,863 なまじ 表彰歴がある分➡ 145 00:11:53,863 --> 00:11:57,199 これを本社の人々に向けた 私のパフォーマンスと➡ 146 00:11:57,199 --> 00:12:01,871 部長は受け取られ 烈火のごとく お怒りに 147 00:12:01,871 --> 00:12:05,891 「ありがとう おかげで これから私は➡ 148 00:12:05,891 --> 00:12:08,527 恥をかくことに 苦しまなくなるだろう➡ 149 00:12:08,527 --> 00:12:11,213 なぜならば あのときに➡ 150 00:12:11,213 --> 00:12:15,213 一生分の赤っ恥を かいてしまったのだから」 151 00:12:17,903 --> 00:12:22,875 何でしょう? この いやらしさ ふ~ん… それで? 152 00:12:22,875 --> 00:12:28,547 次の異動で 私1人 営業の部署に 153 00:12:28,547 --> 00:12:33,202 これに エンジニアリング部の皆は 黙っていませんでした 154 00:12:33,202 --> 00:12:37,540 ありがたいことに 社長宛の 嘆願書を作ってくれました 155 00:12:37,540 --> 00:12:40,209 しかし これが… 握り潰された 156 00:12:40,209 --> 00:12:42,561 はい 157 00:12:42,561 --> 00:12:45,197 部長は「こんなもの無意味だ」と 手を回されて 158 00:12:45,197 --> 00:12:49,897 して その声は 経営者の耳に届かなかった 159 00:12:54,640 --> 00:12:56,542 はい 160 00:12:56,542 --> 00:13:01,213 なるほど それで この異動が 部長の私怨によるものと 161 00:13:01,213 --> 00:13:05,200 私怨とまでは言いませんが… だが 理不尽な懲罰人事のせいで➡ 162 00:13:05,200 --> 00:13:09,600 せっかくの優秀な才能が 営業で腐ってると… 163 00:13:13,225 --> 00:13:17,225 そう言いたいんじゃないのか? 164 00:13:20,215 --> 00:13:24,587 ところで 君は 部長に何を言ったんだね? 165 00:13:24,587 --> 00:13:26,538 え? 166 00:13:26,538 --> 00:13:29,208 いや 何を言ったのか 教えてくれなければ➡ 167 00:13:29,208 --> 00:13:34,608 私だって 意見も助言も しようがない 168 00:13:48,193 --> 00:13:53,599 僕のいた部署は 半導体の製作をしておりました 169 00:13:53,599 --> 00:13:57,202 それも 生半可な半導体ではありません 170 00:13:57,202 --> 00:14:00,889 世界に誇れる高品質の半導体です 171 00:14:00,889 --> 00:14:03,559 ある日 エンジニアリング部に➡ 172 00:14:03,559 --> 00:14:07,212 到底 受け入れ難い 1つの通達がありました 173 00:14:07,212 --> 00:14:11,533 昨今の節電ムードの中 部長が何の相談もなく➡ 174 00:14:11,533 --> 00:14:15,554 作業室の空調温度を3度上げる ことを 決定してしまいまして 175 00:14:15,554 --> 00:14:18,557 3度 それが 何か まずいことなのか? 176 00:14:18,557 --> 00:14:22,911 だって 3度ですよ 3度! 3度! 177 00:14:22,911 --> 00:14:25,547 精密機器は静電気を嫌います 178 00:14:25,547 --> 00:14:27,566 ある一定の温度以下で 作業しなければ➡ 179 00:14:27,566 --> 00:14:30,552 大きく品質を下げてしまう 180 00:14:30,552 --> 00:14:34,556 人の体温が3度上がれば みんな ヒイヒイ フウフウ言うでしょ 181 00:14:34,556 --> 00:14:37,543 けど 半導体は ぬくいの寒いのと言えません 182 00:14:37,543 --> 00:14:40,229 そりゃそうだ 半導体がしゃべったら大変だ 183 00:14:40,229 --> 00:14:43,549 けど 僕には それが聞こえちゃう 184 00:14:43,549 --> 00:14:46,218 毎日 話しかけてましたから 185 00:14:46,218 --> 00:14:51,206 「太郎 今日は元気か?」 「花子 今日は暑いか?」 186 00:14:51,206 --> 00:14:55,878 次第に聞こえてくる半導体の声 その声をくんだ品質管理こそ➡ 187 00:14:55,878 --> 00:14:59,898 エンジニアの本懐です だが 部長の決断は➡ 188 00:14:59,898 --> 00:15:02,901 コストを鑑みての 決断じゃないのか? 189 00:15:02,901 --> 00:15:08,240 もし赤字なら 高品質だろうが 無に等しい 190 00:15:08,240 --> 00:15:11,940 君も 優秀なエンジニアだったなら… 191 00:15:13,879 --> 00:15:17,549 コストの大事さが分からない ばかじゃないだろう 192 00:15:17,549 --> 00:15:22,221 でも うちは世界に誇れる半導体を 作ってるんです 193 00:15:22,221 --> 00:15:25,224 「いくらアジアの工場が 追い上げてきてるからって➡ 194 00:15:25,224 --> 00:15:29,211 コストで同じ土俵に立てば 製品の魂を奪ってしまう」と➡ 195 00:15:29,211 --> 00:15:32,548 一同を代表して そう部長に掛け合ったんです 196 00:15:32,548 --> 00:15:35,868 半導体に魂だなんて 本気で そう言ってるのか? 197 00:15:35,868 --> 00:15:37,886 ええ 198 00:15:37,886 --> 00:15:41,540 一寸の虫にも五分の魂 199 00:15:41,540 --> 00:15:44,543 そこに感じ取れる米粒の鼓動 200 00:15:44,543 --> 00:15:48,197 半導体ってのは 小さな宇宙なんです 201 00:15:48,197 --> 00:15:50,549 世界のシステムの中枢を➡ 202 00:15:50,549 --> 00:15:54,570 この米粒のようなチップが 動かしている 203 00:15:54,570 --> 00:15:59,541 空港の管制塔 交通システム 証券取引所 先端医療 204 00:15:59,541 --> 00:16:03,541 この小さな宇宙は 世界を動かす心臓だ 205 00:16:06,198 --> 00:16:12,598 だから その心臓には 魂が こもっていなければいけない 206 00:16:20,896 --> 00:16:24,900 どうして そのことを 営業先で言わないんだ 207 00:16:24,900 --> 00:16:26,869 え? 208 00:16:26,869 --> 00:16:33,559 君は 一度でも取引先で 「これは世界を動かす心臓だ」と➡ 209 00:16:33,559 --> 00:16:38,213 そう言ってみせたことが あるのか? 210 00:16:38,213 --> 00:16:40,883 顔色をうかがい その腹の中を読んで➡ 211 00:16:40,883 --> 00:16:43,252 カードを切る? 212 00:16:43,252 --> 00:16:45,888 「そんな ままごとは かみさんとやれ」と➡ 213 00:16:45,888 --> 00:16:49,188 ばかな営業部の先輩どもに 教えてやれ! 214 00:16:51,260 --> 00:16:58,650 私が期待してるのは そんなことじゃないんだよ 215 00:16:58,650 --> 00:17:00,650 貸山君! 216 00:18:03,599 --> 00:18:06,602 フッフッ やっぱり君は ポーカーが下手くそだ 217 00:18:06,602 --> 00:18:12,608 挑発すると すぐに熱くなる でも… どうして僕の名前まで? 218 00:18:12,608 --> 00:18:15,244 簡単なことだ 君が店に入ってきたときから➡ 219 00:18:15,244 --> 00:18:17,579 うちの社員であることぐらい 分かっていた 220 00:18:17,579 --> 00:18:23,252 私が いつ 君が営業で売るものを 保険か不動産かと聞いたかね? 221 00:18:23,252 --> 00:18:28,924 いや… しかし それでは 僕の名前までは… 222 00:18:28,924 --> 00:18:32,244 まだ分からないのか? え? 223 00:18:32,244 --> 00:18:38,934 君を営業部に異動させるよう 指示したのは この私だ 224 00:18:38,934 --> 00:18:41,937 部長は 嘆願を握り潰したんじゃない 225 00:18:41,937 --> 00:18:46,925 それが私の采配だから 無意味だと言ったんだ 226 00:18:46,925 --> 00:18:50,946 もちろん 君の表彰歴は 承知のうえだ 227 00:18:50,946 --> 00:18:55,300 なら どうして こんな人事を? 僕は… 228 00:18:55,300 --> 00:18:58,270 かまわん! 言いたいことを言え 229 00:18:58,270 --> 00:19:02,574 我々はバーに居合わせた ただの客同士にすぎない 230 00:19:02,574 --> 00:19:05,577 そう言ったはずだ 231 00:19:05,577 --> 00:19:10,265 ならば お言葉ですが 言わせていただきます 232 00:19:10,265 --> 00:19:14,937 魚は泳ぐから魚 鳥は飛ぶから鳥なんです 233 00:19:14,937 --> 00:19:19,291 魚に海 鳥に空 それが あるべき場所というもの 234 00:19:19,291 --> 00:19:21,243 どうです? ならばエンジニアは… 235 00:19:21,243 --> 00:19:24,630 当然 ラボにいるのが 自然の ことわりじゃありませんか 236 00:19:24,630 --> 00:19:26,982 鳥に海を与えたって 溺れるだけです 237 00:19:26,982 --> 00:19:29,952 だが 君は随分と口が回る 238 00:19:29,952 --> 00:19:32,587 それが何だとおっしゃるんです? 239 00:19:32,587 --> 00:19:35,257 物には 納まるべき場所 ってものがあります 240 00:19:35,257 --> 00:19:39,628 だが 物と人は違う 人は もっと複雑だ 241 00:19:39,628 --> 00:19:42,931 自分の長所を 自分自身が知ってるとは限らない 242 00:19:42,931 --> 00:19:46,601 お見通しだと おっしゃるんですか? 僕の長所を 243 00:19:46,601 --> 00:19:49,588 君は弁が立つ だが しかし それを理由に➡ 244 00:19:49,588 --> 00:19:57,012 営業に送り込んだのではない 君は 口先だけの男じゃない 245 00:19:57,012 --> 00:20:02,584 何を… 何を見て そう おっしゃってるので? 246 00:20:02,584 --> 00:20:09,241 あのとき 私もいたんだよ 247 00:20:09,241 --> 00:20:12,627 君が部長と激しくやり合った あの 本社の視察の日 248 00:20:12,627 --> 00:20:15,964 そこに私もいたんだ 249 00:20:15,964 --> 00:20:20,585 あのときは まだ 私は本社の人間でね 250 00:20:20,585 --> 00:20:24,606 だが こっちに出向になることは すでに決まっていた 251 00:20:24,606 --> 00:20:26,908 え? 252 00:20:26,908 --> 00:20:31,596 私だって君と変わらない ただのサラリーマンだ 253 00:20:31,596 --> 00:20:36,596 はぁ 社長とは名ばかりの ただの雇われ社長だ 254 00:20:40,589 --> 00:20:45,961 正直に言おう あの視察の段階では➡ 255 00:20:45,961 --> 00:20:50,949 私は半導体という製品に 魅力を感じていなかった 256 00:20:50,949 --> 00:20:54,903 何千億という取引を動かすために 商社に入ったのに➡ 257 00:20:54,903 --> 00:20:59,291 どうして 製作所に出向になるのかと➡ 258 00:20:59,291 --> 00:21:02,911 私も この人事を恨んだよ 259 00:21:02,911 --> 00:21:05,947 だが どうだ 260 00:21:05,947 --> 00:21:08,250 愛する製品のため➡ 261 00:21:08,250 --> 00:21:12,254 必死に 上司に食ってかかる男がいた 262 00:21:12,254 --> 00:21:14,589 その熱弁が ふるってる 263 00:21:14,589 --> 00:21:18,243 「この半導体は 世界を動かす心臓だ➡ 264 00:21:18,243 --> 00:21:20,912 魂が➡ 265 00:21:20,912 --> 00:21:25,300 こもってるんだ」ってね 266 00:21:25,300 --> 00:21:29,921 それを聞いて燃えてきた 異動にしぼんだ心に張りが出た 267 00:21:29,921 --> 00:21:34,292 「何としても 製作所の業績を上げてみせる」 268 00:21:34,292 --> 00:21:37,692 そう思えた! 269 00:21:42,250 --> 00:21:46,271 2年で黒字に転じなければ➡ 270 00:21:46,271 --> 00:21:50,592 この私も首になる 271 00:21:50,592 --> 00:21:53,595 ≪(テーブル・フットボールを打つ音) 272 00:21:53,595 --> 00:21:57,916 (白瀬)会社の組織も あれと同じだ 273 00:21:57,916 --> 00:22:03,305 ロベルト・バッジョが 11人いたって勝てない 274 00:22:03,305 --> 00:22:05,924 お詳しいんですね 275 00:22:05,924 --> 00:22:11,913 うちのがんは 営業部なんだよ 貸山君 276 00:22:11,913 --> 00:22:15,600 えらい所に送り込みましたね 277 00:22:15,600 --> 00:22:20,255 あそこにいる連中は 誰も 誇りを持って製品を売ってない 278 00:22:20,255 --> 00:22:22,924 だから ごまをすることしか できない 279 00:22:22,924 --> 00:22:28,296 交渉した気になって ただ 足元を見られている 280 00:22:28,296 --> 00:22:31,996 でも 誇りを持つことは難しい 281 00:22:34,269 --> 00:22:38,969 だから 君を送り込んだ 282 00:22:50,585 --> 00:22:54,256 いつか エンジニアに 戻していただけますか? 283 00:22:54,256 --> 00:22:57,656 そいつは君の売り上げしだいさ 284 00:23:03,732 --> 00:23:06,251 どちらへ? うん? 285 00:23:06,251 --> 00:23:10,622 あの客と 一勝負してくる 286 00:23:10,622 --> 00:23:13,608 社長 うん? 287 00:23:13,608 --> 00:23:15,944 雇われ社長とおっしゃいながら➡ 288 00:23:15,944 --> 00:23:19,944 あなた 最初 単なる経営者だとおっしゃった 289 00:23:24,603 --> 00:23:29,257 僕に気が付いてることを 悟られないように 290 00:23:29,257 --> 00:23:33,912 そんなこと 僕も最初から分かっていました 291 00:23:33,912 --> 00:23:37,299 「こんなことして どうなるものか…」 292 00:23:37,299 --> 00:23:42,254 その震えが顔に出るようでは ポーカーは打てません 293 00:23:42,254 --> 00:23:46,925 僕はポーカーが下手なんじゃない 294 00:23:46,925 --> 00:23:50,925 ままごとのポーカーを楽しむ気には 到底なれなかったってだけです 295 00:23:53,915 --> 00:23:57,915 でも もう 僕はポーカーなんて打ちませんよ 296 00:24:03,608 --> 00:24:05,608 ご幸運を 297 00:24:07,929 --> 00:24:10,229 おう! 298 00:24:26,598 --> 00:24:29,951 (ホイッスル) 299 00:24:29,951 --> 00:24:33,939 あっ もしもし はい 先ほどは 大変失礼いたしました 300 00:24:33,939 --> 00:24:37,926 いえいえ ただ なぜ つい 他社さんの製品に➡ 301 00:24:37,926 --> 00:24:40,595 あのような失礼なことを 申し上げてしまったかと➡ 302 00:24:40,595 --> 00:24:43,965 申しますと… 実は私ども➡ 303 00:24:43,965 --> 00:24:47,665 製品の品質には 自負するものがございまして 304 00:24:52,307 --> 00:24:58,663 あの半導体には 実は 魂が こもっておるのでございます 305 00:24:58,663 --> 00:25:03,018 え? 「何を訳の分からないことを」と? 306 00:25:03,018 --> 00:25:05,718 そうおっしゃるのを お待ちしておりました 307 00:25:08,356 --> 00:25:12,711 スムーズな交通整理に 明日を占う緻密な気象予報➡ 308 00:25:12,711 --> 00:25:16,598 世界中のシステムの中枢に 採用されてるのが うちの製品です 309 00:25:16,598 --> 00:25:21,936 それは なぜか 信頼に値する高品質だからです 310 00:25:21,936 --> 00:25:25,307 良き母は 信頼できる相手の腕にしか➡ 311 00:25:25,307 --> 00:25:28,927 赤子を手渡さない この高品質ぶりは➡ 312 00:25:28,927 --> 00:25:35,300 執念のエンジニアリングが生んだ 1つの奇跡 魂の結晶体 313 00:25:35,300 --> 00:25:37,268 磨き上げられた科学技術は➡ 314 00:25:37,268 --> 00:25:40,605 魔法と見分けがつかないと 申します 315 00:25:40,605 --> 00:25:45,260 一緒に 世界に魔法をかけませんか? 316 00:25:45,260 --> 00:25:47,262 もちろん お供します 317 00:25:47,262 --> 00:25:50,949 ふん! はっ ふっ う~あ~! 318 00:25:50,949 --> 00:25:53,601 あのチップから 聞こえてきませんか? 319 00:25:53,601 --> 00:25:56,588 世界を動かす➡ 320 00:25:56,588 --> 00:25:58,606 米粒の鼓動が! 321 00:25:58,606 --> 00:26:00,606 よっしゃー! 322 00:26:02,977 --> 00:26:05,977 ゴール! おう! 323 00:26:10,602 --> 00:26:30,622 ♬~ 324 00:26:30,622 --> 00:26:35,622 ♬~ 325 00:28:16,644 --> 00:28:18,596 (北竿) どうして家出なんかしたんだ? (まなみ)だって重荷なのよ 326 00:28:18,596 --> 00:28:21,599 親にはね 自分より 優先させるものがある! 327 00:28:21,599 --> 00:28:23,599 (まなみ) そんな理屈 私には分からないの (北竿)分からなくてもいい 328 00:30:31,529 --> 00:30:33,529 ♬~