1 00:00:09,276 --> 00:00:17,150 この大仏が造られたのは 1258年前 天平時代のことである。 2 00:00:17,150 --> 00:00:23,290 当時 日本は人口500万人足らずの 小国であった。 3 00:00:23,290 --> 00:00:26,960 毎年のように襲う 旱魃 飢饉➡ 4 00:00:26,960 --> 00:00:33,300 そして 大地震などが 民を苦しめ 国は疲弊していた。 5 00:00:33,300 --> 00:00:37,804 そのころ 中国大陸では 巨大な帝国 唐が➡ 6 00:00:37,804 --> 00:00:42,309 世界に冠たる文明国家として アジアに君臨していた。 7 00:00:42,309 --> 00:00:46,280 日本の朝廷は 遣唐使と呼ばれた 使節団を送り➡ 8 00:00:46,280 --> 00:00:51,818 唐の文明を学び 国家の確立を 目指そうとした。 9 00:00:51,818 --> 00:00:57,324 遣唐使たちは 命を賭して その使命を果たしたのである。 10 00:01:25,819 --> 00:01:28,655 (下道真備)わあ~! 11 00:01:28,655 --> 00:01:33,794 玄昉! もう駄目だ! この船は沈むぞ! 12 00:01:33,794 --> 00:01:38,298 (玄昉)案ずるな! 船は沈まん! 沈まん? 13 00:01:38,298 --> 00:01:43,637 わしは 17年間 唐の寺で 仏の御心と向き合ってきた!➡ 14 00:01:43,637 --> 00:01:47,307 わしの体の中には 仏の力が宿っている。 15 00:01:47,307 --> 00:01:50,210 その力があるかぎり わしは死なん!➡ 16 00:01:50,210 --> 00:01:53,180 わしが死なんということは 誰も死なん! 17 00:01:53,180 --> 00:01:57,317 理に合わん話だ。 そんな話 信じられるか! 18 00:01:57,317 --> 00:02:00,921 信じろ! 仏の力は理屈ではない! 19 00:02:00,921 --> 00:02:04,791 私は 理の通らぬ話は信じない! 20 00:02:04,791 --> 00:02:12,632 (悲鳴) 21 00:02:12,632 --> 00:02:15,135 わあ~! 22 00:02:18,939 --> 00:02:24,277 わしを 信じろ~! 信じる~! 23 00:02:24,277 --> 00:02:29,783 南無海竜王神。 我らの船を 無事に日の本に至らしめたまえ! 24 00:02:29,783 --> 00:02:35,288 南無海竜王神。 南無海竜王神。 25 00:02:46,233 --> 00:02:53,540 (方響の音) 26 00:02:55,308 --> 00:03:00,313 わしの言うたとおりじゃろ。 船は沈まん。 27 00:03:05,919 --> 00:03:09,790 汝のおかげだ。 礼を言う。 28 00:03:09,790 --> 00:03:15,262 日本を出る時も 同じ船。 帰りも一緒。 29 00:03:15,262 --> 00:03:19,132 これも 何かの縁ぞ。 助け合いじゃ。 30 00:03:19,132 --> 00:03:23,637 干し肉が ちらりと のぞいとる。 ああ。 31 00:03:28,608 --> 00:03:33,780 汝は よう食べるのう。 腹が減っていては お経も読めん。 32 00:03:33,780 --> 00:03:38,952 日本へ帰ったら 出世もせねばならん。 力が要る。 33 00:03:38,952 --> 00:03:41,288 出世。 34 00:03:41,288 --> 00:03:44,191 汝は帰国したら 何をするつもりだ? 35 00:03:44,191 --> 00:03:46,960 何を…。 36 00:03:46,960 --> 00:03:50,630 唐で学んだ 律令制度や天体のことや➡ 37 00:03:50,630 --> 00:03:54,501 いろいろな新しい知識を 皆に伝えたい。 38 00:03:54,501 --> 00:03:57,971 日本は 古来 豪族同士の戦が多い。 39 00:03:57,971 --> 00:04:04,277 しかし 新知識を広めれば それが愚かなことだと分かる。 40 00:04:06,246 --> 00:04:12,919 わしも 汝も パッとせん家柄だ。 日本では 家柄ですべてが決まる。 41 00:04:12,919 --> 00:04:16,590 貴族に生まれなければ 一生 貴族には なれん。 42 00:04:16,590 --> 00:04:21,762 しかし 遣唐使ともなれば 話は違う。 43 00:04:21,762 --> 00:04:24,564 天下を取れる。 44 00:04:24,564 --> 00:04:28,835 我らは そのために 17年もの 長い間➡ 45 00:04:28,835 --> 00:04:36,243 異国の地で苦労してきたんだ。 汝も もっと高い望みを持て。 46 00:04:38,645 --> 00:04:44,951 この17年間で 父が死んだそうだ。 47 00:04:44,951 --> 00:04:48,622 下級役人で 一生を終えた。 48 00:04:48,622 --> 00:04:57,831 妹は婿を取ったが 先立たれて 母と一緒に畑をやっているそうだ。 49 00:05:01,201 --> 00:05:08,708 私は… 皆に早う会いたい。 50 00:05:10,744 --> 00:05:15,248 今 思うのは それだけだ。 51 00:05:17,250 --> 00:05:24,257 ⚟(男)島だ~! 島が見えるぞ! 島だ~! 52 00:05:28,261 --> 00:05:30,263 おお~ 着いたぞ~! 53 00:05:34,134 --> 00:05:37,270 日本だ~! 54 00:05:37,270 --> 00:05:40,173 日本だ~! 55 00:05:40,173 --> 00:05:49,282 ♬~ 56 00:05:49,282 --> 00:05:52,285 帰ったぞ。 57 00:05:55,155 --> 00:05:58,291 帰った…。 58 00:05:58,291 --> 00:06:09,569 ♬~ 59 00:06:09,569 --> 00:06:22,949 ♬~ 60 00:06:22,949 --> 00:06:35,262 ♬~ 61 00:07:07,227 --> 00:07:09,229 由利か? 62 00:07:13,099 --> 00:07:15,101 兄様か? 63 00:07:24,577 --> 00:07:29,749 留守中 苦労をかけました。 64 00:07:29,749 --> 00:07:50,937 ♬~ 65 00:07:50,937 --> 00:07:55,742 家の屋根は… 何故 壊れている? 66 00:07:57,444 --> 00:08:01,214 先の 大地震で…。 67 00:08:01,214 --> 00:08:03,550 母上は? 68 00:08:03,550 --> 00:08:24,738 ♬~ 69 00:08:24,738 --> 00:08:26,673 母上! 70 00:08:26,673 --> 00:09:02,575 ♬~ 71 00:09:02,575 --> 00:09:10,717 <兄 真備が唐から帰ってきました。 天平7年 春のことです。➡ 72 00:09:10,717 --> 00:09:14,220 共に帰国をされるはずであった 多くの方が➡ 73 00:09:14,220 --> 00:09:17,123 旅の途中で亡くなられたと 聞きますから➡ 74 00:09:17,123 --> 00:09:22,128 兄の生還は 奇跡としか言いようがありません> 75 00:09:36,242 --> 00:09:41,581 (母)太郎よ 豆が煮えました。 お食べ。 76 00:09:41,581 --> 00:09:43,583 はい! 77 00:09:48,254 --> 00:09:55,929 ♬~ 78 00:09:55,929 --> 00:09:59,265 皆 近所の子たちです。➡ 79 00:09:59,265 --> 00:10:03,269 兄上の唐の話を 聞きたがっているのです。 80 00:10:14,280 --> 00:10:20,153 これは 唐の国で使われている 方響という楽器で➡ 81 00:10:20,153 --> 00:10:22,789 低い音から高い音まで➡ 82 00:10:22,789 --> 00:10:27,293 きちんと 12段階に分けて 音が出るように作られています。 83 00:10:30,296 --> 00:10:32,298 (方響の音) 84 00:10:35,168 --> 00:10:37,470 今のが 一番高い音。 85 00:10:39,305 --> 00:10:41,307 (方響の音) 86 00:10:43,176 --> 00:10:46,179 これが 一番低い音。 87 00:10:46,179 --> 00:10:49,949 笛などを大勢で吹く時 この音に合わせて吹けば➡ 88 00:10:49,949 --> 00:10:52,318 音が調和するわけです。 89 00:10:52,318 --> 00:10:57,190 音楽は おのおのの楽器の音が 調和しなければ 美しくない。 90 00:10:57,190 --> 00:11:01,127 これは そのための道具なのです。 91 00:11:01,127 --> 00:11:06,599 唐の国は 何事につけ 調和を大切にします。 92 00:11:06,599 --> 00:11:09,269 こうやって 音の基準を設けたように➡ 93 00:11:09,269 --> 00:11:12,772 国の仕組みにも 基準や規則を設け➡ 94 00:11:12,772 --> 00:11:16,276 国全体が調和するよう 考えられている。 95 00:11:16,276 --> 00:11:19,178 誠に 美しい国です。 96 00:11:19,178 --> 00:11:25,618 (藤原仲麻呂)我が国は 33年前 唐を手本に国の仕組みを作った。 97 00:11:25,618 --> 00:11:31,291 しかし 一向に美しい国にならない。 98 00:11:31,291 --> 00:11:34,294 何故だと思われます? 99 00:11:37,964 --> 00:11:43,836 私は 長い間 留守をしていて➡ 100 00:11:43,836 --> 00:11:47,307 この国が 美しいのか美しくないのか➡ 101 00:11:47,307 --> 00:11:50,210 まだ分かりません。 102 00:11:50,210 --> 00:11:54,814 ただ 唐は 100年以上かけて➡ 103 00:11:54,814 --> 00:11:58,318 ようやく完成した国だ ということです。 104 00:11:58,318 --> 00:12:01,321 100年ですか…。 105 00:12:10,263 --> 00:12:13,766 我は 藤原仲麻呂と申す。 106 00:12:13,766 --> 00:12:18,271 実は 我が上司である 葛城王というお方が➡ 107 00:12:18,271 --> 00:12:20,206 あなたの唐の話を ぜひ お聞きしたいと➡ 108 00:12:20,206 --> 00:12:23,142 仰せになっておられるのですが。 109 00:12:23,142 --> 00:12:26,145 今から 会っていただくわけには 参りませぬか? 110 00:12:26,145 --> 00:12:28,281 はっ? 111 00:12:28,281 --> 00:12:32,151 ♬~ 112 00:12:32,151 --> 00:12:36,155 <その日 兄は 朝廷の偉いお方で➡ 113 00:12:36,155 --> 00:12:39,792 葛城王という 有名な貴族に招かれ➡ 114 00:12:39,792 --> 00:12:44,297 朱雀門近くの館に 連れていかれました。➡ 115 00:12:44,297 --> 00:12:50,803 朱雀門は 10万人の民が暮らす 平城京の奥まった所にあり➡ 116 00:12:50,803 --> 00:12:54,674 朝廷の入り口にあたります。➡ 117 00:12:54,674 --> 00:12:57,310 その近くに館を持つお方は➡ 118 00:12:57,310 --> 00:13:02,148 政を取りしきる有力者と 決められていました> 119 00:13:02,148 --> 00:13:09,756 ♬~ 120 00:13:09,756 --> 00:13:18,264 (方響の音) 121 00:13:18,264 --> 00:13:25,138 よい音じゃのう。 フッフッフ。 これが 唐の音色だそうな。 122 00:13:25,138 --> 00:13:28,908 妙なる響きじゃ。 奥ゆかしいのう。 123 00:13:28,908 --> 00:13:33,746 ほかにも 唐の力量を示す 文物がございます。 124 00:13:33,746 --> 00:13:38,951 天体の観測により 太陽と月の動きの ずれを➡ 125 00:13:38,951 --> 00:13:41,788 正しく取り入れた この 暦の見事さを➡ 126 00:13:41,788 --> 00:13:47,293 これより ご説明申し上げます。 それは またの折でよい。 127 00:13:47,293 --> 00:13:50,196 この楽器の お話だけでも➡ 128 00:13:50,196 --> 00:13:54,801 あなたの学ばれた 唐の知識の深さが しのばれる。➡ 129 00:13:54,801 --> 00:13:59,305 我は すぐにでも これを 妹に見せてやりたい。 130 00:13:59,305 --> 00:14:12,251 ♬~ 131 00:14:12,251 --> 00:14:19,125 (大伴家持)「ももしきの➡ 132 00:14:19,125 --> 00:14:28,601 大宮人は多かれど➡ 133 00:14:28,601 --> 00:14:42,148 こころに乗りて 思ゆる妹」。 134 00:14:42,148 --> 00:14:46,152 これは珍しや。 兄上殿。 135 00:14:48,287 --> 00:14:55,294 今日は お目にかけたきものがあり 急ぎ 参内つかまつった。 136 00:14:57,630 --> 00:15:00,533 そう 硬くなられることはない。 137 00:15:00,533 --> 00:15:04,737 皇后も ここでは 気軽に話をされる。 138 00:15:04,737 --> 00:15:08,608 あのお方は 皇后様ですか? 139 00:15:08,608 --> 00:15:14,447 な~に。 もともとは藤原の出で 私の伯母ですから➡ 140 00:15:14,447 --> 00:15:16,749 至って 砕けたお方です。 141 00:15:16,749 --> 00:15:28,461 ♬~ 142 00:15:28,461 --> 00:15:33,766 皇后。 近ごろ 歌会のお招きに あずかりませぬが➡ 143 00:15:33,766 --> 00:15:37,270 この仲麻呂を お忘れでございましょうか。 144 00:15:37,270 --> 00:15:42,141 (光明皇后)汝は 学問はできるが 歌は下手だもの。 145 00:15:42,141 --> 00:15:47,647 そこまで おっしゃいますか。 仲麻呂 立ち直れませぬ。 ハハハハハ。 146 00:15:58,291 --> 00:16:00,726 下道真備か。 147 00:16:00,726 --> 00:16:02,662 はっ。 148 00:16:02,662 --> 00:16:09,235 汝は学業優れ 唐においても 高名な学者であったよし。 149 00:16:09,235 --> 00:16:12,138 (方響の音) 150 00:16:12,138 --> 00:16:16,742 この方響の話を お聞きになるとよい。 151 00:16:16,742 --> 00:16:20,246 なみなみならぬ博学ぶりぞ。 152 00:16:20,246 --> 00:16:23,583 (光明皇后)兄上は 相当 そなたが お気に入りじゃ。➡ 153 00:16:23,583 --> 00:16:28,254 何か 望み事があれば この期を逃さず 頼むことです。➡ 154 00:16:28,254 --> 00:16:32,124 何でも 聞き届けてくれましょうぞ。 155 00:16:32,124 --> 00:16:35,761 遠慮のう申されよ。 156 00:16:35,761 --> 00:16:41,934 唐で 17年 学ばれたお方の 望みとやらを聞いてみたい。 157 00:16:41,934 --> 00:16:46,239 我も聞いてみたい。 申してみよ。 158 00:16:49,675 --> 00:16:55,481 私には 母がおります。 159 00:16:55,481 --> 00:17:02,221 地震で家が傾き 狭い土間で寝ております。 160 00:17:02,221 --> 00:17:09,095 足が弱っておりますので 畑が遠いのも難渋しております。 161 00:17:09,095 --> 00:17:12,865 もし 望めるのなら…➡ 162 00:17:12,865 --> 00:17:18,170 畑の近くに 小さな館を建ててやりたいと…。 163 00:17:19,772 --> 00:17:21,908 必ず お返しいたします。 164 00:17:21,908 --> 00:17:27,246 その1軒分の材木を 拝借したいのです。 165 00:17:27,246 --> 00:17:35,121 真備殿。 あなたは唐から お帰りになったのじゃぞ。 166 00:17:35,121 --> 00:17:40,259 朝廷が 10倍の広さの屋敷を 用意いたしましょうぞ。➡ 167 00:17:40,259 --> 00:17:43,162 望みの低い。 168 00:17:43,162 --> 00:17:46,599 (阿倍内親王) 本人が それでよいと言うのじゃ。 169 00:17:46,599 --> 00:17:49,302 小さな家を与えてやればよい。 170 00:17:53,773 --> 00:17:59,278 ちょうど 裏手の馬屋が 1つ空いておる。 171 00:17:59,278 --> 00:18:02,715 急ぐのであれば そこへ入れてやったらどうです。 172 00:18:02,715 --> 00:18:05,217 (光明皇后)馬屋…。 173 00:18:05,217 --> 00:18:13,726 吉備の国の田舎では 皆 馬と一緒に寝ると聞きました。 174 00:18:13,726 --> 00:18:16,562 ちょうどいいでは ありませんか。 175 00:18:16,562 --> 00:18:21,567 内親王。 誰が そのような たわけたことを申しました? 176 00:18:23,235 --> 00:18:25,538 あの者たちが。 177 00:18:30,109 --> 00:18:36,582 お恥ずかしいが 我が娘です。 しかってやっていただきたい。 178 00:18:36,582 --> 00:18:41,787 唐では かかる娘を どう しかります? 179 00:18:43,756 --> 00:18:46,258 唐では…。 180 00:18:49,261 --> 00:18:51,197 しばし 拝借。 181 00:18:51,197 --> 00:19:01,707 ♬~ 182 00:19:01,707 --> 00:19:03,642 ひゃっ! 183 00:19:03,642 --> 00:19:23,562 ♬~ 184 00:19:23,562 --> 00:19:25,898 何と書いてある? 185 00:19:25,898 --> 00:19:32,238 「君子は 泰かにして驕らず」。 186 00:19:32,238 --> 00:19:39,245 ♬~ 187 00:19:41,747 --> 00:19:44,450 一つ聞いてよいか? 188 00:19:51,257 --> 00:19:58,130 唐の学問は 人の心を見ることは できるのか? 189 00:19:58,130 --> 00:20:02,134 人の心を変えることは できるか? 190 00:20:07,273 --> 00:20:13,279 我は阿倍内親王ぞ。 答えねば この宮殿から出さぬ。 191 00:20:15,948 --> 00:20:19,618 学問は 理屈を通すことです。 192 00:20:19,618 --> 00:20:23,489 理屈が通れば 人の心も動かせましょう。 193 00:20:23,489 --> 00:20:29,295 しかし 理屈が通らぬのが 人の心。 194 00:20:29,295 --> 00:20:34,800 唐の学問とて できることと できぬことがあります。 195 00:20:34,800 --> 00:20:41,807 汝は 学問の大家であろう。 見て判断をせよ。 196 00:20:44,310 --> 00:20:46,612 ついて参れ。 197 00:21:29,622 --> 00:21:36,295 ♬~ 198 00:21:36,295 --> 00:21:39,298 私の おばばじゃ。 199 00:21:42,168 --> 00:21:51,177 ずっと ああやって 目に見えぬ ハエを追って 暮らしている。 200 00:21:56,315 --> 00:22:08,327 この館から 一歩も外へ出ず 10年以上 ああやって…。 201 00:22:14,266 --> 00:22:22,942 理由が分からぬ。 父上が 物心がつかれたころには➡ 202 00:22:22,942 --> 00:22:27,279 もう お会いになれなかったという。 203 00:22:27,279 --> 00:22:32,284 どんな薬も 効き目がない。 204 00:22:34,153 --> 00:22:40,292 時々 泣いておられる。 205 00:22:40,292 --> 00:22:54,306 ♬~ 206 00:22:54,306 --> 00:22:58,010 治すことは できぬのか? 207 00:23:03,115 --> 00:23:05,584 どうじゃ? 208 00:23:05,584 --> 00:23:14,760 ♬~ 209 00:23:14,760 --> 00:23:21,267 <この時 兄が見たのは 皇太夫人宮子様でした。➡ 210 00:23:21,267 --> 00:23:26,138 宮子様は 藤原家から 天皇家へ嫁がれたお方で➡ 211 00:23:26,138 --> 00:23:31,777 今の大君 聖武天皇の ご生母でいらっしゃいます。➡ 212 00:23:31,777 --> 00:23:34,680 栄光に満ちた そのお方が➡ 213 00:23:34,680 --> 00:23:38,951 何故 このような病に かかってしまわれたのか➡ 214 00:23:38,951 --> 00:23:42,254 誰にも分かりませんでした> 215 00:23:45,291 --> 00:23:51,630 ♬~ 216 00:23:51,630 --> 00:24:00,239 ♬~ 217 00:24:00,239 --> 00:24:04,576 <その年 3月 帰国した遣唐使の人たちは➡ 218 00:24:04,576 --> 00:24:09,448 大君に拝謁し 帰国のあいさつを行いました> 219 00:24:09,448 --> 00:24:29,268 ♬~ 220 00:24:29,268 --> 00:24:33,138 <大君は 使節たちの苦労をねぎらわれ➡ 221 00:24:33,138 --> 00:24:39,278 それぞれに 新しい仕事と身分を 約束されました。➡ 222 00:24:39,278 --> 00:24:42,781 兄は 大学の次席責任者という地位を➡ 223 00:24:42,781 --> 00:24:45,451 与えられることになりました。➡ 224 00:24:45,451 --> 00:24:51,256 そして 大きな屋敷も与えられました。➡ 225 00:24:51,256 --> 00:24:57,963 この時の朝廷は 藤原家の方々が 主要な役職を占められ➡ 226 00:24:57,963 --> 00:25:01,734 それを不満に思う 葛城王をはじめとする➡ 227 00:25:01,734 --> 00:25:06,238 古い貴族の方々との溝が 深まっていました> 228 00:25:10,242 --> 00:25:13,078 (藤原武智麻呂)仲麻呂。 229 00:25:13,078 --> 00:25:16,415 近ごろの 葛城王の様子は どうじゃ? 230 00:25:16,415 --> 00:25:19,918 なかなか 腹の底は見えませぬ。 231 00:25:25,124 --> 00:25:28,127 紛れもなく 敵じゃ。➡ 232 00:25:28,127 --> 00:25:30,262 わしには分かる。 233 00:25:30,262 --> 00:25:35,134 古い貴族連中は 藤原のやり方が 気に入らぬのです。 234 00:25:35,134 --> 00:25:38,771 昔のやり方に 戻したいのです。 235 00:25:38,771 --> 00:25:41,273 兄上は 甘いのだ。 236 00:25:41,273 --> 00:25:47,279 長屋王を殺した時 王も一緒に 始末をしておけばよかったのだ。 237 00:25:54,620 --> 00:25:56,655 父上。 238 00:25:56,655 --> 00:25:59,792 あの 唐帰りの学者殿は➡ 239 00:25:59,792 --> 00:26:04,296 早めに こちらに引き込んでおいた 方が よいと思うのですが。 240 00:26:05,898 --> 00:26:09,201 敵に回すと 手ごわい。 241 00:26:12,571 --> 00:26:15,607 (玄昉)唐から帰って 面白いことが 何もない! 242 00:26:15,607 --> 00:26:20,746 寺にこもって 持ち帰った一切経を 皆に説教する毎日じゃ。➡ 243 00:26:20,746 --> 00:26:25,918 あ~ つまらん! わしは もっと 表へ出たい!➡ 244 00:26:25,918 --> 00:26:31,256 わしの力を もっと 朝廷の 上の連中に見せつけてやりたい。➡ 245 00:26:31,256 --> 00:26:33,258 その機会が欲しい。 246 00:26:37,129 --> 00:26:40,265 おい! 聞いておるのか? 247 00:26:40,265 --> 00:26:43,168 ⚟(子供)お父! お父! 248 00:26:43,168 --> 00:26:46,939 (泣き声) お父! お父! 249 00:26:46,939 --> 00:26:48,941 どけ~! 250 00:26:53,278 --> 00:26:55,614 おい 真備。 251 00:26:55,614 --> 00:27:01,220 わしたちは 生死を共にした仲だ。 そうだろ? 252 00:27:01,220 --> 00:27:03,155 うん。 253 00:27:03,155 --> 00:27:08,093 ならば わしの出世を助けろ。 254 00:27:08,093 --> 00:27:12,731 わしを 葛城王に引き合わしてくれんか? 255 00:27:12,731 --> 00:27:16,235 あの参議殿なら わしの出世を助けてくれよう。 256 00:27:16,235 --> 00:27:20,105 汝は 仏に仕える身であろう。 出世して どうする。 257 00:27:20,105 --> 00:27:28,113 出世をしたらば 何でも手に入る。 権力 金… 女。 258 00:27:29,781 --> 00:27:35,621 わしは 権力を手に入れたら やりたいことがあるんだ。 259 00:27:35,621 --> 00:27:43,262 天をもつくような 大きな盧舎那仏を造りたい。 260 00:27:43,262 --> 00:27:47,132 盧舎那仏? うん。 261 00:27:47,132 --> 00:27:55,274 唐にいた時 洛陽の近くで とてつもない大仏を見た。 262 00:27:55,274 --> 00:27:57,776 山全体が 仏像なんだ。 263 00:27:57,776 --> 00:28:03,882 唐の都には 貧しい者も 病の者も 幾万人といる。 264 00:28:03,882 --> 00:28:10,222 それを救うには 大きな慈悲の力が要る。 265 00:28:10,222 --> 00:28:15,093 山ほど大きな仏が必要なんだ。 266 00:28:15,093 --> 00:28:20,232 わしは 感動した。 そこで経を上げた。 267 00:28:20,232 --> 00:28:25,904 すると わしの体の中に 大きな光が入ってきた。 268 00:28:25,904 --> 00:28:31,777 その時 わしは 仏の力を得たんだ。 269 00:28:31,777 --> 00:28:37,516 病を治したり 人を見抜く力だ。 270 00:28:37,516 --> 00:28:40,752 私は 理に合わん話は信じない。 271 00:28:40,752 --> 00:28:45,257 船が沈むのを わしが その力で助けたろ! 272 00:28:45,257 --> 00:28:49,127 あれは 嵐が収まっただけだ。 273 00:28:49,127 --> 00:28:52,764 真備 頼むよ! 274 00:28:52,764 --> 00:28:59,271 (風の音) 275 00:28:59,271 --> 00:29:12,217 ♬~ 276 00:29:12,217 --> 00:29:15,721  回想  治すことは できぬのか? 277 00:29:19,091 --> 00:29:21,226 どうじゃ? 278 00:29:21,226 --> 00:29:28,100 ♬~ 279 00:29:28,100 --> 00:29:31,236 ふわ~! 280 00:29:31,236 --> 00:29:34,940 汝は 病を治せると言うたな? 281 00:29:36,575 --> 00:29:39,277 心の病は どうだ? 282 00:29:42,247 --> 00:29:45,917 唐の律令制度は 手短に言えば➡ 283 00:29:45,917 --> 00:29:50,422 朝廷が日本を統一して治めるのに 誠に適した制度なのじゃ。 284 00:29:50,422 --> 00:29:54,259 私は 制度に問題があると 申しているのではありません。 285 00:29:54,259 --> 00:29:58,096 我が国には 我が国特有の 風土というものがある。 286 00:29:58,096 --> 00:30:00,599 我が国の風土とは 何じゃ。 287 00:30:00,599 --> 00:30:04,436 地方の豪族どもが 好き勝手に地方を支配する➡ 288 00:30:04,436 --> 00:30:07,472 昔の姿に戻れということか! そういうことではない。 289 00:30:07,472 --> 00:30:11,777 はっきり申し上げれば あなた方 藤原一門が 役人たちを独占し➡ 290 00:30:11,777 --> 00:30:14,613 制度を一門のために 利用しようとするところに➡ 291 00:30:14,613 --> 00:30:17,516 皆の不信感があるということです。 言葉が すぎるぞ! 292 00:30:17,516 --> 00:30:19,484 事実であろう。 なに!? 293 00:30:19,484 --> 00:30:33,498 (口論) 294 00:30:36,301 --> 00:30:39,004 議論は そこまで。 295 00:30:46,311 --> 00:30:52,651 申しておくが 我らに必要なのは 感情的な議論ではない。 296 00:30:52,651 --> 00:31:01,259 天の月や星を見るように 子細に この国の現状を見ること。 297 00:31:01,259 --> 00:31:03,562 以上。 298 00:31:19,277 --> 00:31:22,180 真備殿。 299 00:31:22,180 --> 00:31:26,618 一度 右大臣の館へ 遊びに参られませんか? 300 00:31:26,618 --> 00:31:32,491 父が 花でも見ながら ご一緒に 歌など詠みたいと申しています。 301 00:31:32,491 --> 00:31:37,262 今日のお話なども 大変 興味を持つと存じます。 302 00:31:37,262 --> 00:31:44,636 それは困った。 私は 歌が大の苦手なのです。 303 00:31:44,636 --> 00:31:48,807 はあ…。 それは残念。 304 00:31:48,807 --> 00:31:52,310 ぜひ 別の機会に。 305 00:31:53,979 --> 00:31:55,981 もう一つ。 306 00:31:57,649 --> 00:32:03,455 玄昉というお友達を 葛城王に紹介なさいましたね。 307 00:32:05,457 --> 00:32:09,261 王は 玄昉の法力を買いかぶり➡ 308 00:32:09,261 --> 00:32:15,133 大君の母君の病を治させるため 宮中に送り込まれた。 309 00:32:15,133 --> 00:32:18,770 今 宮中で困っていることは➡ 310 00:32:18,770 --> 00:32:23,608 玄昉が 母君のおそばに仕える 女官たちに 次々に手を出し➡ 311 00:32:23,608 --> 00:32:29,281 我が物顔で 酒宴に ふけっていることだそうです。 312 00:32:29,281 --> 00:32:32,951 よろしいですか? 313 00:32:32,951 --> 00:32:38,757 玄昉などという 怪しい坊主を 葛城王に任せたのは間違いです。 314 00:32:38,757 --> 00:32:44,296 今後は そのような紹介事は この仲麻呂に お任せください。 315 00:32:44,296 --> 00:32:48,800 あなたが お困りにならぬよう 取り計らいますゆえ。 316 00:32:48,800 --> 00:33:05,584 ♬~ 317 00:33:05,584 --> 00:33:14,292 (読経) 318 00:33:28,273 --> 00:33:34,779 このハエ 窓の外にほうり出します ゆえ よくご覧なさりませ。 319 00:33:50,662 --> 00:34:00,205 ♬~ 320 00:34:00,205 --> 00:34:04,109 さあ これで 邪魔は消えた。 321 00:34:04,109 --> 00:34:10,615 目を閉じて 心の眼を開くのです。 322 00:34:14,252 --> 00:34:23,762 皇太夫人様 あなた様には 大きな大きな仏が見えるはずです。 323 00:34:23,762 --> 00:34:28,633 川の向こうの 大きな山に➡ 324 00:34:28,633 --> 00:34:36,274 我らを 苦しみから 解き放ってくださる 盧舎那仏が。 325 00:34:36,274 --> 00:35:10,275 ♬~ 326 00:35:15,747 --> 00:35:22,620 ♬~ 327 00:35:22,620 --> 00:35:24,756 (役人)いたぞ~! 328 00:35:24,756 --> 00:35:31,262 <ここ数年の旱魃 続きで 国は大飢饉に陥っていました。➡ 329 00:35:31,262 --> 00:35:36,134 税を払えぬ農民が 村から逃げ出し 京へ流れ込み➡ 330 00:35:36,134 --> 00:35:42,273 奴婢として 寺や市場などで働き その過酷な労働に耐えきれず➡ 331 00:35:42,273 --> 00:35:48,613 再び 浮浪の民となり 犯罪に 手を染める者が激増しました。➡ 332 00:35:48,613 --> 00:35:55,320 朝廷は こうした放浪者を 厳しく取り締まっていました> 333 00:36:12,237 --> 00:36:14,239 (馬の いななき) 334 00:36:17,575 --> 00:36:20,278 兄上 放浪者じゃ! 335 00:36:29,187 --> 00:36:32,190 これ。 しっかりなさい。 336 00:36:35,126 --> 00:36:40,131 震えております。 助けてやりましょうか。 337 00:36:44,669 --> 00:36:49,274 由利 この者は 法を犯したのだ。 だから 追われている。 338 00:36:49,274 --> 00:36:54,279 ですが このままでは 命にかかわります。 339 00:36:58,783 --> 00:37:02,554 私は 法を学んだ人間だ。 340 00:37:02,554 --> 00:37:06,724 法を犯した者を 助けるわけには いかん。 341 00:37:06,724 --> 00:37:28,213 ♬~ 342 00:37:56,141 --> 00:37:58,143 戻ったぞ! 343 00:38:04,716 --> 00:38:06,718 (役人長)下道真備殿か? 344 00:38:08,386 --> 00:38:11,422 右大臣の命により 身柄を拘束いたす。➡ 345 00:38:11,422 --> 00:38:14,192 手向かい無用ぞ! 346 00:38:14,192 --> 00:38:36,748 ♬~ 347 00:38:36,748 --> 00:38:41,252 (武智麻呂)そこもとたちが 内裏に送り込んだ 玄昉法師が➡ 348 00:38:41,252 --> 00:38:46,758 本日 重大なる過ちを犯した。 349 00:38:46,758 --> 00:38:50,595 玄昉は本日 おそれおおくも 大君に対し➡ 350 00:38:50,595 --> 00:38:53,264 母君の病を治したと称し➡ 351 00:38:53,264 --> 00:38:57,769 中宮におでましあれば 対面がかなうと上奏いたした。 352 00:38:57,769 --> 00:39:06,211 大君は それを真に受けられ 今朝方 中宮へ行幸なされた。➡ 353 00:39:06,211 --> 00:39:12,717 しかし 母君は 館から一歩もお出にならん。➡ 354 00:39:12,717 --> 00:39:20,725 既に半日 大君は いまだ 板の間でお待ちになられておる! 355 00:39:23,228 --> 00:39:29,100 母君の病は癒えておらぬ。 356 00:39:29,100 --> 00:39:32,570 玄昉の罪は 死罪に値する! 357 00:39:32,570 --> 00:39:39,577 その玄昉の後見者である そこもとたちも 罪は免れぬ! 358 00:39:41,746 --> 00:39:50,255 さあ ここを出て 川を渡り 盧舎那仏のおそばへ参るのです。 359 00:39:53,258 --> 00:39:55,193 さあ…。 360 00:39:55,193 --> 00:40:05,203 ♬~ 361 00:40:20,952 --> 00:40:24,289 (資人)恐れながら 別室へ おいでいただくよう➡ 362 00:40:24,289 --> 00:40:27,292 主から おおせつかって参りました。 363 00:40:32,964 --> 00:40:35,667 (資人)お急ぎなされませ。 364 00:40:58,189 --> 00:41:05,263 ♬~ 365 00:41:05,263 --> 00:41:10,134 食べませんか? 甘くてうまい糖だ。 366 00:41:10,134 --> 00:41:18,776 ♬~ 367 00:41:18,776 --> 00:41:25,283 父 武智麻呂が あなたを惜しんでいます。 368 00:41:25,283 --> 00:41:29,787 一度 一緒に 歌を詠んでみたかったと。 369 00:41:31,789 --> 00:41:37,595 もし 承知いただけるのであれば 今からでも遅くはない。 370 00:41:37,595 --> 00:41:42,800 こたびの あなたの罪は 許そうと申しています。 371 00:41:42,800 --> 00:41:45,303 いかが? 372 00:41:47,305 --> 00:41:52,977 私は 玄昉の 理の通らぬ力を 不覚にも認め➡ 373 00:41:52,977 --> 00:41:57,281 内裏に推挙するよう 葛城王に進言しました。 374 00:42:00,251 --> 00:42:04,122 これは 間違いでした。 375 00:42:04,122 --> 00:42:08,760 間違いは 処罰されなければなりません。 376 00:42:08,760 --> 00:42:14,265 父に… 殺されますよ? 377 00:42:14,265 --> 00:42:21,139 ♬~ 378 00:42:21,139 --> 00:42:26,277 朝廷による 国の統一。 379 00:42:26,277 --> 00:42:32,150 それが 我が藤原家の悲願です。 380 00:42:32,150 --> 00:42:37,288 代々の地位や 土地や利権に しがみつき➡ 381 00:42:37,288 --> 00:42:42,794 国の法に従わない勢力は 除かなければならない。 382 00:42:42,794 --> 00:42:46,297 葛城王も そうです。 383 00:42:49,300 --> 00:42:57,175 あなたには 我らと共に 新しい国を造っていただきたい。 384 00:42:57,175 --> 00:43:07,685 ♬~ 385 00:43:07,685 --> 00:43:10,621 嫌なら死ねと? 386 00:43:10,621 --> 00:43:21,232 ♬~ 387 00:43:21,232 --> 00:43:26,070 私は 唐で兵学も学んだ。 388 00:43:26,070 --> 00:43:31,776 兵学の根本は 戦わずして勝つことです。 389 00:43:35,279 --> 00:43:39,083 戦うべき敵を 作らぬことです。 390 00:43:40,785 --> 00:43:45,656 あなた方は そこを間違えている。 391 00:43:45,656 --> 00:43:57,235 ♬~ 392 00:43:57,235 --> 00:43:59,170 申し上げます! 393 00:43:59,170 --> 00:44:02,907 中宮によりの知らせにて 皇太夫人に おかれましては➡ 394 00:44:02,907 --> 00:44:07,211 館より お出ましの ご気配 これありとのこと。なに? 395 00:44:11,616 --> 00:44:17,121 (扉が開く音) 396 00:44:44,282 --> 00:46:00,224 ♬~ 397 00:46:00,224 --> 00:46:03,127 (聖武天皇)母御前…。 398 00:46:03,127 --> 00:46:44,602 ♬~ 399 00:46:44,602 --> 00:46:49,340 <玄昉殿に 病を治す力があると見た朝廷は➡ 400 00:46:49,340 --> 00:46:53,844 玄昉殿を 宮中にある内道場の長として➡ 401 00:46:53,844 --> 00:46:59,116 皇太夫人様の治療に 当たるらせることにしました。➡ 402 00:46:59,116 --> 00:47:05,923 兄と葛城王殿が許されたのは 申すまでもありません> 403 00:47:07,825 --> 00:47:12,630 <この騒ぎの直後 天平9年の春➡ 404 00:47:12,630 --> 00:47:17,101 朝廷を揺るがす 恐ろしい出来事が起きたのです> 405 00:47:17,101 --> 00:47:23,007 うわ~! どうした?あ… あれ。 406 00:47:27,411 --> 00:47:33,250 痘瘡だ…。 海蔵。 この者は痘瘡を病んでいる。 407 00:47:33,250 --> 00:47:37,088 葛城王殿に知らせよ。 京の街に痘瘡が入ったと。 408 00:47:37,088 --> 00:47:40,091 内裏の玄昉にも伝えろ。 ここへ近づくな! 409 00:47:40,091 --> 00:47:44,595 近づけば 命を落とすぞ! 引け! 引け! 410 00:47:44,595 --> 00:47:48,132 引け! 引け! 引け! 411 00:47:48,132 --> 00:47:50,468 (騒ぐ声) 412 00:47:50,468 --> 00:47:52,570 引け! 413 00:47:54,372 --> 00:47:56,374 しっかりしろ。 414 00:48:05,950 --> 00:48:09,253 吉備の国の学者殿。 415 00:48:11,756 --> 00:48:14,225 内親王…。 416 00:48:14,225 --> 00:48:17,728 市場見物じゃ。 皆には 内緒ぞ。 417 00:48:17,728 --> 00:48:21,132 逃げられよ。 ここは危ない。 あっ…。 418 00:48:27,405 --> 00:48:31,275 いずこへ参る?逃げるのです。 どこまで逃げる? 419 00:48:31,275 --> 00:48:37,148 私の館が近くにございます。 それはよい。 汝の館も見てみたい。 420 00:48:37,148 --> 00:48:42,653 <それは 痘瘡という 恐ろしい伝染病でした。➡ 421 00:48:42,653 --> 00:48:45,656 九州から広まった この病気は➡ 422 00:48:45,656 --> 00:48:52,329 あっという間に 平城京にも広まり 人々の命を奪っていきました。➡ 423 00:48:52,329 --> 00:48:57,134 朝廷の方々も 例外ではありませんでした> 424 00:48:57,134 --> 00:49:00,438 (うめき声) 425 00:49:02,540 --> 00:49:08,412 <時の最高権力者で 右大臣の藤原武智麻呂殿も➡ 426 00:49:08,412 --> 00:49:15,519 その弟で 参議の房前殿も宇合殿も 次々に病死をされ➡ 427 00:49:15,519 --> 00:49:19,790 朝廷の最大勢力であった 藤原一門が➡ 428 00:49:19,790 --> 00:49:24,895 一気に崩壊していくという 異常な事態となったのです> 429 00:49:29,466 --> 00:49:34,839 <そのころ 昼間に太陽が欠ける という 不吉な出来事があり➡ 430 00:49:34,839 --> 00:49:39,043 打ち続く旱魃で 餓死する者も 後を絶たず➡ 431 00:49:39,043 --> 00:49:44,248 不穏な気配が 辺りに漂っていました> 432 00:49:44,248 --> 00:49:56,260 ♬~ 433 00:49:56,260 --> 00:50:03,434 <大君は この事態に動揺され 詔で こう仰せられました。➡ 434 00:50:03,434 --> 00:50:08,772 「私の不徳によって この災厄は起きたのである。➡ 435 00:50:08,772 --> 00:50:14,078 天を仰いで 恥 恐れる」と> 436 00:50:14,078 --> 00:50:21,285 ♬~ 437 00:50:21,285 --> 00:50:24,188 <混乱のさなか 大君は➡ 438 00:50:24,188 --> 00:50:27,958 皇后の兄である 橘 諸兄殿を➡ 439 00:50:27,958 --> 00:50:31,161 大納言に任命なされました> 440 00:50:32,796 --> 00:50:38,002 <古い貴族が 息を吹き返したのです> 441 00:50:43,307 --> 00:50:46,510 (扉が開く音) 442 00:50:53,584 --> 00:50:57,187 我が子よ。 443 00:51:04,561 --> 00:51:08,465 盧舎那仏を造るのじゃ。 444 00:51:18,175 --> 00:51:24,682 大きな盧舎那仏。 445 00:51:26,784 --> 00:51:32,890 さすれば 国は安まる。 446 00:51:41,065 --> 00:51:44,935 「孔子対えて曰わく」。 447 00:51:44,935 --> 00:51:49,306 <兄は 光明皇后の たっての希望で➡ 448 00:51:49,306 --> 00:51:54,611 時折 内親王の教育係を 務めていました> 449 00:51:56,680 --> 00:52:01,085 その意味は? 君主が立派で➡ 450 00:52:01,085 --> 00:52:06,223 臣下が臣下として立派であること。 そう。 451 00:52:06,223 --> 00:52:09,693 旱魃があっても 地震があっても➡ 452 00:52:09,693 --> 00:52:13,897 それに備えた食料の蓄えを 組織全体で計り➡ 453 00:52:13,897 --> 00:52:18,635 乗り越えていく。(ため息) 454 00:52:18,635 --> 00:52:22,906 理屈の上では うまくいくはずなのです。 455 00:52:22,906 --> 00:52:28,312 でも 実際は うまくいっておらぬ。そうです。 456 00:52:28,312 --> 00:52:31,782 この制度を支えていくには もっと 国が➡ 457 00:52:31,782 --> 00:52:36,620 まとまっていなければならない。 父上も そう仰せじゃ。 458 00:52:36,620 --> 00:52:42,426 藤原だ 古い貴族だと 角 突き合わせてる場合ではない。 459 00:52:42,426 --> 00:52:48,232 そのとおりだと申されておる。 大君が? 460 00:52:48,232 --> 00:52:52,970 父上は 先生と同じことを仰せじゃ。 461 00:52:52,970 --> 00:52:59,376 地方では穀物の蓄えを 役人が不正に横流しして➡ 462 00:52:59,376 --> 00:53:03,747 私腹を肥やしている。 そうです。 463 00:53:03,747 --> 00:53:10,254 だから 農民は飢えて家を捨て 浮浪の民となる。 464 00:53:13,090 --> 00:53:21,432 それを正すには 「君 君たり 臣 臣たり」。 465 00:53:21,432 --> 00:53:24,735 父上も そのとおりだと。 466 00:53:27,237 --> 00:53:30,707 一度 会うてみたら どうじゃ? はっ!? 467 00:53:30,707 --> 00:53:35,913 それがよい。 父上は 今 盧舎那仏のことで悩んでおられる。 468 00:53:35,913 --> 00:53:40,851 盧舎那仏? 中宮の皇太夫人様に➡ 469 00:53:40,851 --> 00:53:44,121 「山のように大きな 盧舎那仏を造れば➡ 470 00:53:44,121 --> 00:53:47,157 世が治まる」と 言われたそうじゃ。 471 00:53:47,157 --> 00:53:53,163 おおかた 玄昉殿が 皇太夫人様に申したのであろう。 472 00:53:55,833 --> 00:54:00,938 来い 来い! 皆 来い! 一緒に行こうぞ! 473 00:54:00,938 --> 00:54:11,849 一緒に来い! 来い 来い! 一緒に行こうぞ! 来い 来い! 474 00:54:14,051 --> 00:54:16,954 行基様じゃ! 475 00:54:16,954 --> 00:54:26,096 ♬~ 476 00:54:26,096 --> 00:54:32,603 あれが行基殿か? 偉いお方です。 477 00:54:32,603 --> 00:54:36,106 百姓が ここに道が欲しいと お願いすると➡ 478 00:54:36,106 --> 00:54:39,610 あのお方が造ってくださるんです。 479 00:54:39,610 --> 00:54:44,748 川に橋が欲しいと言うと 橋を造られる。 480 00:54:44,748 --> 00:54:54,158 ♬~ 481 00:55:08,906 --> 00:55:13,443 ⚟(玄昉)あ~ やめろ やめろ! やめんか! 危ない 危ない! 482 00:55:13,443 --> 00:55:17,848 (笑い声) 483 00:55:17,848 --> 00:55:24,388 ⚟さあ 歌え 歌え! やめんか! やめろ!(笑い声) 484 00:55:24,388 --> 00:55:29,760 ついでくれ ついでくれ。 早く 早く。 あ~!(笑い声) 485 00:55:29,760 --> 00:55:32,729 待て 待て。 待ってくれ! 486 00:55:32,729 --> 00:55:37,868 待て! こら! 待てったら。 487 00:55:37,868 --> 00:55:40,671 待て!(笑い声) 488 00:55:42,706 --> 00:55:49,313 よう! よく ここが分かったな? 489 00:55:49,313 --> 00:55:56,086 驚いた。 汝の行方を寺で聞いたら 亡き武智麻呂殿の館だという。 490 00:55:56,086 --> 00:56:02,759 今は 息子の仲麻呂殿が主だ。 さすが 藤原。 落ち目とはいえ➡ 491 00:56:02,759 --> 00:56:05,229 金銀が 腐るほどあると見える。 492 00:56:05,229 --> 00:56:08,131 勝手に入り 勝手に遊んでくれという。 493 00:56:08,131 --> 00:56:12,736 汝も たやすく門内に入れたろう。 どうだ? この わしと一緒に➡ 494 00:56:12,736 --> 00:56:18,075 2~3日 遊んでいかんか? 極楽じゃぞ。(笑い声) 495 00:56:18,075 --> 00:56:20,878 話がある! 496 00:56:22,913 --> 00:56:26,783 しばし 席を外せ。 497 00:56:26,783 --> 00:56:29,086 席を外せっていうの。 498 00:56:29,086 --> 00:56:32,890 早く! 早くいけっていうの! 499 00:56:35,759 --> 00:56:39,363 まあ 座れ。 500 00:56:41,265 --> 00:56:48,005 わしは 諸兄殿には 心底 落胆したんだ。 501 00:56:48,005 --> 00:56:50,407 大納言になったとたん➡ 502 00:56:50,407 --> 00:56:53,677 このわしを大僧正にすると ぬかしたことなど➡ 503 00:56:53,677 --> 00:56:58,415 すっかり忘れて。 冷たいもんだ。 会おうともせん。 504 00:56:58,415 --> 00:57:00,617 玄昉。 505 00:57:02,219 --> 00:57:08,659 仲麻呂は 皇后が 最も かわいがってきた甥っ子だ。 506 00:57:08,659 --> 00:57:15,098 必ず 権力を取り返す。 わしは その手助けをしようと思う。 507 00:57:15,098 --> 00:57:21,705 それは危険だぞ。 諸兄殿も 藤原一門も 一筋縄では いかん。 508 00:57:21,705 --> 00:57:25,075 利用されるだけだぞ。 わしも やつらを利用する。 509 00:57:25,075 --> 00:57:32,883 仲麻呂は約束して証文まで書いた。 わしを 必ず 大僧正にすると。 510 00:57:34,584 --> 00:57:39,790 この盧舎那仏も 必ず造ると。 511 00:57:41,358 --> 00:57:47,164 わしの寺に 大仏を造らせる。 512 00:57:47,164 --> 00:57:53,770 国じゅうの者が わしと この大仏に ひれ伏す。 513 00:57:53,770 --> 00:57:59,443 皇太夫人様が 大君に これを造るよう 勧めたそうだ。 514 00:57:59,443 --> 00:58:04,881 汝が皇太夫人様に申し上げたな? そうだ。 515 00:58:04,881 --> 00:58:09,052 これを造るのに どれだけの人手と 費用がかかると思う? 516 00:58:09,052 --> 00:58:14,558 まあ 無数にかかる。 この国が どれだけ苦しいか➡ 517 00:58:14,558 --> 00:58:17,361 考えたこと あるか? 苦しいから造るのだ。 518 00:58:17,361 --> 00:58:20,564 何のために!? 救われるために!誰が救われる!? 519 00:58:20,564 --> 00:58:23,400 餓死する者が救われるか!? 520 00:58:23,400 --> 00:58:27,170 涅槃の境地を知れば 餓死など 恐るるに足らん。 521 00:58:27,170 --> 00:58:29,906 涅槃とは何だ!? 522 00:58:29,906 --> 00:58:33,243 これが 汝の涅槃か!? 523 00:58:33,243 --> 00:58:35,278 そうだ。 524 00:58:35,278 --> 00:58:40,584 これが 永遠に続くのだ。 525 00:58:40,584 --> 00:58:43,086 愚かな。 526 00:58:46,923 --> 00:58:49,760 愚かは どっちだ? 527 00:58:49,760 --> 00:58:57,567 近ごろ 阿倍内親王と あちこちに 出かけているそうだな? ハッハハハ。 528 00:58:59,536 --> 00:59:03,373 何故 懇ろになってしまわん? 529 00:59:03,373 --> 00:59:10,380 内親王を落とせば 出世は思いのままだぞ。 530 00:59:12,983 --> 00:59:15,485 玄昉…。 531 00:59:19,756 --> 00:59:26,463 (笑い声) 532 00:59:26,463 --> 00:59:31,668 汝に 盧舎那仏は造らせぬ! 533 00:59:31,668 --> 01:00:01,865 ♬~ 534 01:00:07,938 --> 01:00:12,275 お願いがあるのですが…。 何だ? 535 01:00:12,275 --> 01:00:17,147 近くの川で 行基様が 橋を造っておられるそうです。 536 01:00:17,147 --> 01:00:22,152 少し 手伝って参りたいのですが いけませんか? 537 01:00:41,304 --> 01:01:14,204 ♬~ 538 01:01:14,204 --> 01:01:19,142 (行基) よ~し 上げろ~! 上げろ~! 539 01:01:19,142 --> 01:01:23,780 よ~し 引け~! 540 01:01:23,780 --> 01:01:30,287 よ~し 引け~! そう! 541 01:01:30,287 --> 01:01:34,157 よ~し! よ~し 出来た! 542 01:01:34,157 --> 01:01:37,160 行基様。 543 01:01:37,160 --> 01:01:41,298 よう来たな。 544 01:01:41,298 --> 01:01:47,170 ♬~ 545 01:01:47,170 --> 01:01:53,810 <法相宗の僧侶である行基様は 近隣諸国の布教活動のかたわら➡ 546 01:01:53,810 --> 01:01:56,646 病に苦しむ人々のために➡ 547 01:01:56,646 --> 01:02:00,250 布施屋と呼ばれる治療所を 各地に開き➡ 548 01:02:00,250 --> 01:02:06,122 水不足の農地には 水を引き 荒れ狂う川には 橋を架け➡ 549 01:02:06,122 --> 01:02:11,928 その名は 平城京にも 広く知れ渡ったお方でした> 550 01:02:14,598 --> 01:02:19,269 海蔵が あなたに命を助けられたと 申しております。 551 01:02:19,269 --> 01:02:24,274 お礼申し上げます。 はっ。 552 01:02:27,143 --> 01:02:33,116 海蔵は 以前 私と一緒に 橋を造って歩いていた男です。 553 01:02:33,116 --> 01:02:39,122 足を少し痛め 都で働くと申して 離れていきました。 554 01:02:40,857 --> 01:02:45,161 生きて また会えるとは 思いませんでした。 555 01:02:55,305 --> 01:02:57,240 危ない! 556 01:02:57,240 --> 01:03:10,253 ♬~ 557 01:03:10,253 --> 01:03:15,125 うお~!(男)いくぞ~! (一同)お~! 558 01:03:15,125 --> 01:03:20,263 ♬~ 559 01:03:20,263 --> 01:03:26,770 さすが 海蔵。 まだ 執念が残っている。執念? 560 01:03:26,770 --> 01:03:32,942 ああ。 あの男は 妻と子を 川で亡くしたのです。 561 01:03:32,942 --> 01:03:35,445 山城の国で…。 562 01:03:37,113 --> 01:03:39,449 (行基)海蔵は 小作農民で➡ 563 01:03:39,449 --> 01:03:43,953 うちから遠く離れた田畑で 働いていたのです。 564 01:03:43,953 --> 01:03:47,791 乳飲み子を抱えた女房は 寂しがって➡ 565 01:03:47,791 --> 01:03:55,298 毎日 川を渡って会いに来ていた。 ある日 川が荒れて➡ 566 01:03:55,298 --> 01:04:02,105 それでも 海蔵に会いたい一心で 川を渡ろうとした。➡ 567 01:04:02,105 --> 01:04:07,243 橋があれば 死ぬことはなかった。➡ 568 01:04:07,243 --> 01:04:12,115 その川には 橋がなかった。➡ 569 01:04:12,115 --> 01:04:18,254 それを聞いて 私は 皆と一緒に そこに橋を架けた。➡ 570 01:04:18,254 --> 01:04:24,127 それ以来 海蔵は 一緒に 橋を 架けて歩くようになったのです。 571 01:04:24,127 --> 01:04:29,766 ここで働く者は そういう者が多い。 572 01:04:29,766 --> 01:04:35,271 みんな 自分の橋を架けておる。 573 01:04:35,271 --> 01:04:55,291 ♬~ 574 01:04:55,291 --> 01:04:58,194 (優婆塞)行基様。 575 01:04:58,194 --> 01:05:01,197 では。 576 01:05:03,099 --> 01:05:08,104 行基殿は 何故 橋を造るのです? 577 01:05:10,740 --> 01:05:16,246 あなたは 何故 海蔵を救われた? 578 01:05:19,249 --> 01:05:23,119 天のことは 見ているほかない。 579 01:05:23,119 --> 01:05:32,128 しかし この地上のことは 手を下せば 思いがかなう。 580 01:05:37,267 --> 01:05:43,473 手を下すほかない この国の有様を見れば。 581 01:05:45,008 --> 01:05:48,211 そうは思われませぬか? 582 01:05:56,286 --> 01:06:10,233 ♬~ 583 01:06:10,233 --> 01:06:18,107 <翌天平10年 阿倍内親王は 皇太子におなりになりました。➡ 584 01:06:18,107 --> 01:06:23,246 御年21歳であられました> 585 01:06:23,246 --> 01:06:33,256 ♬~ 586 01:06:33,256 --> 01:06:38,761 <同年 橘 諸兄殿は 右大臣に進まれ➡ 587 01:06:38,761 --> 01:06:42,932 いよいよ 大きな力を 持たれることになりました。➡ 588 01:06:42,932 --> 01:06:45,435 それは とりもなおさず➡ 589 01:06:45,435 --> 01:06:50,440 藤原一門の衰退を 意味することでもありました> 590 01:06:59,282 --> 01:07:06,089 <母が亡くなったのは その翌年のことでした> 591 01:07:06,089 --> 01:07:19,802 ♬~ 592 01:07:23,239 --> 01:07:29,112 <天平12年 朝廷を揺るがす事件が ぼっ発しました。➡ 593 01:07:29,112 --> 01:07:35,251 諸兄殿によって 九州 大宰府へ 左遷された藤原広嗣殿が➡ 594 01:07:35,251 --> 01:07:42,258 現状を不満とし 大宰府の兵を 率いて 反乱を起こしたのです> 595 01:07:46,262 --> 01:07:51,601 <九州の藤原一門に連なる 豪族たちが これに呼応し➡ 596 01:07:51,601 --> 01:07:57,307 反乱軍は 関門海峡を渡る勢いを示しました> 597 01:08:08,084 --> 01:08:10,887 広嗣軍が すぐ そこまで 来てるって。 598 01:08:10,887 --> 01:08:15,558 <広嗣軍が 明日にも 都へ 攻め込むのではないかという➡ 599 01:08:15,558 --> 01:08:21,064 うわさが広まり 天地が ひっくり返った騒ぎとなりました> 600 01:08:23,900 --> 01:08:28,071 <慌てた朝廷は 1万を超える軍勢を➡ 601 01:08:28,071 --> 01:08:30,974 急いで 九州に送ることにしましたが➡ 602 01:08:30,974 --> 01:08:33,743 不安は募るばかりでした> 603 01:08:33,743 --> 01:08:38,247 真備殿を呼べ。 右衛士督の意見が聞きたい。 604 01:08:38,247 --> 01:08:40,249 真備殿を呼べ! 605 01:08:50,259 --> 01:08:55,098 <兄は 右大臣の 再三の呼び出しにも応じず➡ 606 01:08:55,098 --> 01:08:58,601 一日中 家に閉じこもっていました。➡ 607 01:08:58,601 --> 01:09:02,205 このころ 兄は 宮中をも守る➡ 608 01:09:02,205 --> 01:09:06,909 右衛士督という仕事に 転じていました> 609 01:09:08,711 --> 01:09:15,918 兄上。 右大臣が また 使いの方を よこされていますが。 610 01:09:17,720 --> 01:09:25,395 由利。 汝が皇后なら どう動く? は? 611 01:09:25,395 --> 01:09:29,065 皇后と諸兄殿は 兄弟だと言うが➡ 612 01:09:29,065 --> 01:09:32,902 実は 母親が同じというだけで 父親は違う。 613 01:09:32,902 --> 01:09:35,738 諸兄殿は 天皇の血を引く➡ 614 01:09:35,738 --> 01:09:37,774 美努王という方の皇子で➡ 615 01:09:37,774 --> 01:09:42,245 皇后は 藤原不比等殿が 父親だ。 616 01:09:42,245 --> 01:09:46,749 皇后は 父 不比等殿に尊敬の念が深く➡ 617 01:09:46,749 --> 01:09:49,786 藤原の血筋に 思い入れがある。 618 01:09:49,786 --> 01:09:55,758 あの仲麻呂殿との関係を見れば 分かる。 619 01:09:55,758 --> 01:09:58,661  回想 ハッハッハッハッハ…。 620 01:09:58,661 --> 01:10:08,104 皇后は 諸兄殿と藤原と…➡ 621 01:10:08,104 --> 01:10:11,307 どちらを選ばれる? 622 01:10:15,278 --> 01:10:20,450 諸兄殿に会うてる暇はない。 一刻を争う。 623 01:10:20,450 --> 01:10:23,119 宮中へ向かう。 624 01:10:23,119 --> 01:10:25,421 (方響の音) 625 01:10:26,989 --> 01:10:31,794 娘から 汝のことは よく聞いている。 626 01:10:31,794 --> 01:10:35,298 一度 話したかった。 627 01:10:35,298 --> 01:10:43,506 汝の持ち帰った この方響 時折 聴くのだが 身に染みる。 628 01:10:45,007 --> 01:10:50,313 世の中は これほど見事な音を出さぬ。 629 01:10:50,313 --> 01:10:56,619 こたびの大宰府の乱 夜も眠れぬ。 630 01:10:58,187 --> 01:11:05,261 大宰府の乱に呼応して この京でも 乱が起きるおそれがございます。 631 01:11:05,261 --> 01:11:07,764 誰が 乱を起こす? 632 01:11:07,764 --> 01:11:12,268 この京は 藤原一門によって造られた都。 633 01:11:12,268 --> 01:11:16,773 都そのものが 乱を起こしましょう。 634 01:11:19,609 --> 01:11:22,311 父上。 635 01:11:28,117 --> 01:11:36,325 近ごろ 皇后のもとへ 仲麻呂が 足しげく出入りをしていると聞く。 636 01:11:43,299 --> 01:11:46,202 仲麻呂は 野心が強い。 637 01:11:46,202 --> 01:11:51,207 「気をつけろ」と 皇后には申しているのだが…。 638 01:11:53,009 --> 01:11:57,146 右衛士督の結論を聞きたい。 639 01:11:57,146 --> 01:12:01,417 乱を防ぐ手だては あるのか? 640 01:12:01,417 --> 01:12:04,320 答えは 一つ。 641 01:12:04,320 --> 01:12:10,126 大君が 皇后と共に この都を お出になられることです。 642 01:12:10,126 --> 01:12:17,433 藤原一門が根を張った この都を お捨てになられることです。 643 01:12:19,268 --> 01:12:22,171 朝廷を ほかの場所に お移しになれば➡ 644 01:12:22,171 --> 01:12:26,776 乱は 意味を失いましょう。 645 01:12:26,776 --> 01:12:30,947 汝も そう思うか。 646 01:12:30,947 --> 01:12:37,286 先程 その話をしていたのじゃ。 647 01:12:37,286 --> 01:12:41,157 やはり 父上と話が合う。 648 01:12:41,157 --> 01:12:45,161 しかし ほかに 手だてはないか? 649 01:12:47,296 --> 01:12:56,305 この春 河内の知識寺という寺で 背丈ほどの仏像を見た。 650 01:12:56,305 --> 01:12:59,008 盧舎那仏だ。 651 01:13:00,576 --> 01:13:05,448 母上の仰せられていた御仏は これかと思うた。 652 01:13:05,448 --> 01:13:12,188 まことに 息を飲むほど美しいと思うた。 653 01:13:12,188 --> 01:13:19,262 その仏は 河内の民が 老いも若きも➡ 654 01:13:19,262 --> 01:13:22,598 富める者も 貧しき者も 皆一緒に➡ 655 01:13:22,598 --> 01:13:26,602 力を合わせて造ったものだという。 656 01:13:30,940 --> 01:13:35,778 それを この都で 造ってはどうかと思うた。 657 01:13:35,778 --> 01:13:38,814 もっと大きな仏を 皆で造れば➡ 658 01:13:38,814 --> 01:13:42,451 国は 一つに まとまるのではないかと。 659 01:13:42,451 --> 01:13:47,790 仏の前では 藤原も右大臣もない。 660 01:13:47,790 --> 01:13:52,295 争いは無意味と 皆が悟らぬか? 661 01:14:00,236 --> 01:14:02,738 どうか? 662 01:14:04,907 --> 01:14:08,244 かつての百済 高句麗➡ 663 01:14:08,244 --> 01:14:11,747 皆 見事な仏像を 造った国でございます。 664 01:14:11,747 --> 01:14:16,252 しかし いずれも 戦で滅びました。 665 01:14:16,252 --> 01:14:22,258 私は 理にかなわぬ話には 同意いたしかねます。 666 01:14:27,763 --> 01:14:30,266 さようか。 667 01:14:38,274 --> 01:14:45,281 分かった。 我は 都を離れよう。 668 01:14:47,283 --> 01:14:52,288 汝の 理にかのうたやり方で やってみよう。 669 01:14:57,460 --> 01:15:06,268 父上が都を出るのを 藤原方は 黙って見ているであろうか? 670 01:15:09,105 --> 01:15:14,110 仲麻呂は 不気味なところがある。 671 01:15:17,246 --> 01:15:20,249 胸騒ぎがする。 672 01:15:21,917 --> 01:15:28,257 ご案じなさいますな。 私に考えがあります。 673 01:15:28,257 --> 01:15:30,760 考え? 674 01:15:34,130 --> 01:15:42,138 下道真備は 星を眺めるだけの 学者じゃと思うていた。 675 01:15:44,273 --> 01:15:47,576 私も そのつもりでしたが…。 676 01:15:55,785 --> 01:15:59,455 前から思うていたのじゃが➡ 677 01:15:59,455 --> 01:16:04,760 我は よい先生を持ったと思う。 678 01:16:11,901 --> 01:16:16,405 都を出ても ずっと そばにいよ。 679 01:16:18,074 --> 01:16:20,576 約束ぞ。 680 01:16:48,771 --> 01:16:54,276 何? 右衛士督が来た? 1人で来たのか? 681 01:16:54,276 --> 01:16:59,281 はっ。 仲麻呂殿に 目通りいたしたいと。 682 01:17:17,233 --> 01:17:20,903 兄上。 斬りますか? 683 01:17:20,903 --> 01:17:23,405 外で待て。 684 01:17:42,758 --> 01:17:45,794 聞こえましたかな? 685 01:17:45,794 --> 01:17:51,100 はい。 私を斬りますかと。 686 01:17:51,100 --> 01:17:55,271 よい耳をしておられる。 687 01:17:55,271 --> 01:17:58,173 鼻もよいのです。 688 01:17:58,173 --> 01:18:03,879 はあ~ これは 見事な香り。 689 01:18:03,879 --> 01:18:08,184 唐の宮廷で 何度か かいだことがある。 690 01:18:09,752 --> 01:18:14,523 これは 沈香の香木の香り。 691 01:18:14,523 --> 01:18:20,729 この国で この香りを召された方は 東院の庭でお目にかかった➡ 692 01:18:20,729 --> 01:18:24,233 皇后様のほか 覚えにありませぬ。 693 01:18:36,212 --> 01:18:40,216 今日はまた 何用で参られた? 694 01:18:44,587 --> 01:18:49,758 庭の兵は 誰と戦う備えです? 695 01:18:49,758 --> 01:18:53,596 もちろん いとこの広嗣とです。 696 01:18:53,596 --> 01:18:56,632 いつ 京へ攻め込んでくるか 分からない。 697 01:18:56,632 --> 01:19:02,404 しかし かがり火は皆 北側の門に 立てられている。 698 01:19:02,404 --> 01:19:08,110 矢を持った兵は皆 朱雀門辺りに向いている。 699 01:19:12,548 --> 01:19:18,253 あなたの狙いは 右大臣 諸兄殿でしょう? 700 01:19:21,223 --> 01:19:24,226 だとしたら? 701 01:19:26,562 --> 01:19:30,065 私は 右衛士督です。 702 01:19:30,065 --> 01:19:36,772 京中の騒ぎを取り締まる者として あなたを捕らえるほかない。 703 01:19:38,574 --> 01:19:43,245 捕らえる? この仲麻呂を? 704 01:19:43,245 --> 01:19:46,248 フッフッフッフ…。 705 01:19:48,117 --> 01:19:52,921 私は 逆に申し上げたい。 706 01:19:52,921 --> 01:19:57,726 今 あなたの命は 私の手の中にある。 707 01:20:01,263 --> 01:20:04,933 これが 最後の機会です。 708 01:20:04,933 --> 01:20:11,607 私と共に 古い貴族たちを一掃しませんか? 709 01:20:11,607 --> 01:20:15,277 新しい世を作るのです。 710 01:20:15,277 --> 01:20:20,282 右大臣を倒すのです! 711 01:20:22,151 --> 01:20:24,953 刀で? 712 01:20:26,989 --> 01:20:30,192 そう 刀で! 713 01:20:33,295 --> 01:20:35,597 断る。 714 01:20:37,166 --> 01:20:42,304 私は あなたを捕らえる。 715 01:20:42,304 --> 01:20:45,507 どうやって? 716 01:20:47,976 --> 01:20:54,316 あなたは 刀もお持ちでない。 しかも 1人で。 ハッハッハッハッハッハ…。 717 01:20:54,316 --> 01:20:58,187 あなたを捕らえるのは 刀ではない。 718 01:20:58,187 --> 01:21:03,025 あなたのおじい様である 不比等殿が作られた➡ 719 01:21:03,025 --> 01:21:05,828 法が捕らえるのです。 720 01:21:11,600 --> 01:21:15,270 よくお考えいただきたい。 721 01:21:15,270 --> 01:21:22,444 不比等殿が 何故 この国に 律令という制度を持ち込まれたか。 722 01:21:22,444 --> 01:21:29,218 刀で治める国から 法で治める国を 目指されたからでしょう。 723 01:21:29,218 --> 01:21:35,624 その方が 皆が穏やかに 争いなく暮らせる➡ 724 01:21:35,624 --> 01:21:39,128 そう思われたからでしょう。 725 01:21:39,128 --> 01:21:44,933 私は ゆくゆくは あなたが この国の宰相となり➡ 726 01:21:44,933 --> 01:21:47,302 不比等殿が目指されたものを➡ 727 01:21:47,302 --> 01:21:50,305 進めてゆかれるのだと 思っていました。 728 01:21:51,974 --> 01:21:59,281 藤原一門で それができるのは あなただと。 729 01:22:00,783 --> 01:22:05,087 何故 それを放棄されるのです? 730 01:22:08,257 --> 01:22:14,129 私は あなたと戦いたくない。 731 01:22:14,129 --> 01:22:19,134 反乱は 思いとどまってほしい。 732 01:22:21,270 --> 01:22:24,273 近づくな。 733 01:22:27,142 --> 01:22:31,613 私の部下が 間もなく この館を取り巻く。 734 01:22:31,613 --> 01:22:35,284 私が死ねば 一斉に攻めかかる。 735 01:22:35,284 --> 01:22:39,154 我らの兵が勝つ。 勝っても負けても➡ 736 01:22:39,154 --> 01:22:44,293 皇后を戦渦に巻き込むことになる。 737 01:22:44,293 --> 01:22:49,298 それで よろしいか? 738 01:22:53,302 --> 01:22:57,973 (雷鳴) 739 01:22:57,973 --> 01:23:02,411 皇后は 藤原一門の御旗であろう。 740 01:23:02,411 --> 01:23:08,750 そのお方が 反乱軍におわしますと 白日の下にさらされる。 741 01:23:08,750 --> 01:23:12,621 それで よろしいか? 寄るな! 742 01:23:12,621 --> 01:23:16,492 私は 大君の命を受けてきた。 743 01:23:16,492 --> 01:23:22,931 藤原は 百年 千年 大君の敵となる! 744 01:23:22,931 --> 01:23:25,601 それで よろしいか? 寄るな~! 745 01:23:25,601 --> 01:23:29,438 藤原の命運を あなたが絶つことになる。 746 01:23:29,438 --> 01:23:31,773 それで よろしいか!? 747 01:23:31,773 --> 01:23:33,709 (雷鳴) 748 01:23:33,709 --> 01:23:40,282 それでよろしければ 斬るがいい! 逆賊 藤原仲麻呂! 749 01:23:40,282 --> 01:23:46,288 うわぁ~! 750 01:24:07,743 --> 01:24:10,646 帰れ! 751 01:24:10,646 --> 01:24:15,250 このまま帰るわけにはいかない。 752 01:24:15,250 --> 01:24:23,258 大君は この都から 出ていかれる。 朝廷を ほかへ移す。 753 01:24:26,261 --> 01:24:35,270 私は 仲麻呂殿に その行列の 先陣に立っていただきたい。 754 01:24:35,270 --> 01:24:42,277 騎兵将軍として 共に都を出ていただきたい。 755 01:24:44,279 --> 01:24:49,151 反乱を起こしたのは 広嗣殿1人。 756 01:24:49,151 --> 01:24:53,789 藤原一門は 朝廷と共にある。 757 01:24:53,789 --> 01:24:59,294 それを 天下に示していただきたい。 758 01:25:02,230 --> 01:25:15,410 その役目は 藤原家の統領たる あなたが 最もふさわしい。 759 01:25:15,410 --> 01:25:29,257 ♬~ 760 01:25:29,257 --> 01:25:36,131 私が唐で学んだのは 戦わぬことです。 761 01:25:36,131 --> 01:25:42,270 人が穏やかに生きることです。 762 01:25:42,270 --> 01:25:48,143 ♬~ 763 01:25:48,143 --> 01:25:54,282 このとおり お願いいたします。 764 01:25:54,282 --> 01:26:23,278 ♬~ 765 01:26:25,247 --> 01:26:51,773 ♬~ 766 01:26:51,773 --> 01:27:02,217 <天平12年10月 大君は 慌ただしく 都から離れていかれました。➡ 767 01:27:02,217 --> 01:27:10,092 次の都が定まらぬままの 不安に満ちた旅の始まりでした> 768 01:27:10,092 --> 01:27:28,076 ♬~ 769 01:27:30,245 --> 01:27:32,748 (聖武天皇) 山のような盧舎那仏を造りたい。 770 01:27:32,748 --> 01:27:34,683 (諸兄)大仏を造る? 771 01:27:34,683 --> 01:27:38,620 (玄昉)大仏は どうした? まだ 出来上がらんのか? 772 01:27:38,620 --> 01:27:43,125 大仏など 恐れるに足りぬ。 壊せばよいのだ。 773 01:27:45,260 --> 01:27:47,195 玄昉~! 774 01:27:47,195 --> 01:27:51,133 我は 負けぬぞ~! 775 01:27:51,133 --> 01:27:55,270 一生 そばにいるか? 776 01:27:55,270 --> 01:28:01,076 (行基)真備に見届けてほしい。 何故 私に 大仏を見届けろと? 777 01:28:01,076 --> 01:28:54,062 ♬~