1 00:00:03,170 --> 00:00:09,443 (由利)<天平12年 藤原広嗣殿が 大宰府で乱を起こし➡ 2 00:00:09,443 --> 00:00:11,945 それに呼応して 平城京でも➡ 3 00:00:11,945 --> 00:00:15,782 藤原仲麻呂殿が 兵を挙げようとしていました> 4 00:00:15,782 --> 00:00:22,122 (下道真備)藤原は 百年 千年 大君の敵となる! 5 00:00:22,122 --> 00:00:24,458 それで よろしいか? (藤原仲麻呂)寄るな~! 6 00:00:24,458 --> 00:00:28,629 藤原の命運を あなたが絶つことになる。 7 00:00:28,629 --> 00:00:31,298 それで よろしいか⁈ 8 00:00:31,298 --> 00:00:34,201 うわぁ~! 9 00:00:34,201 --> 00:00:42,643 ♬~ 10 00:00:42,643 --> 00:00:47,514 <大君は 藤原氏の影響力の強い 平城京から➡ 11 00:00:47,514 --> 00:00:52,653 都をうつすことを お決めになり 乱も治まりました。➡ 12 00:00:52,653 --> 00:00:57,991 大君は 伊勢 美濃 近江を巡った末➡ 13 00:00:57,991 --> 00:01:01,762 右大臣 橘 諸兄殿と縁の深い➡ 14 00:01:01,762 --> 00:01:06,266 山背国に 都を お移しになりました。➡ 15 00:01:06,266 --> 00:01:12,139 しかし 恭仁京と名付けられた 都の建設は 遅々として進まず➡ 16 00:01:12,139 --> 00:01:18,145 人々は 疫病と天変地異に 苦しめられていました> 17 00:01:30,290 --> 00:01:39,967 (方響の音) 18 00:01:39,967 --> 00:01:42,669 (聖武天皇)母上。 19 00:01:50,477 --> 00:01:58,151 昨日 占いの者が申したことが 気がかりでなりませぬ。 20 00:01:58,151 --> 00:02:02,422 瓜の種を畑にまくが 芽が出ない。 21 00:02:02,422 --> 00:02:06,927 何度まいても 芽は出ない。 22 00:02:06,927 --> 00:02:14,434 この国は滅びるので 何を植えても 芽は出ないと。 23 00:02:21,274 --> 00:02:28,782 (藤原宮子) 盧舎那仏を造れば… 救われる。 24 00:02:28,782 --> 00:02:35,655 大きな盧舎那仏が 天からの恵みを…➡ 25 00:02:35,655 --> 00:02:41,495 授けてくださる。 26 00:02:41,495 --> 00:02:50,804 雨と 花びらと➡ 27 00:02:50,804 --> 00:02:57,310 妙なる… 音曲を。 28 00:02:59,312 --> 00:03:01,248 (方響の音) 29 00:03:01,248 --> 00:03:11,758 ♬~ 30 00:03:14,428 --> 00:03:17,330 (橘 諸兄)大仏を造る? 31 00:03:17,330 --> 00:03:21,201 (光明皇后)大君が そう お決めになったのです。 32 00:03:21,201 --> 00:03:25,605 右大臣におかれては しかと その意を お受けになり➡ 33 00:03:25,605 --> 00:03:31,945 大仏造営を 国を挙げての行事に していただかねばなりませぬ。 34 00:03:31,945 --> 00:03:37,451 それは 結構なお話と存じますが➡ 35 00:03:37,451 --> 00:03:42,622 さきには 諸国に国分寺建立の詔もあり➡ 36 00:03:42,622 --> 00:03:46,493 目下は 都の造営も なかなか はかどらぬ有様にて…。 37 00:03:46,493 --> 00:03:53,266 よろしいか。 この恭仁宮は 古くから右大臣に縁のある土地。 38 00:03:53,266 --> 00:03:59,473 ここを都にと 大君に お勧めしたのは 大臣ぞ。➡ 39 00:03:59,473 --> 00:04:01,441 人手不足 物不足と申して➡ 40 00:04:01,441 --> 00:04:05,579 いまだに 大極殿すら お造りになれぬ。 41 00:04:05,579 --> 00:04:10,417 この有様では 平城京に都を戻し➡ 42 00:04:10,417 --> 00:04:14,921 大仏も 向こうで造った方が よいのではないか? 43 00:04:18,925 --> 00:04:21,228 (一同)お見事! 44 00:04:25,799 --> 00:04:28,602 右大臣。 45 00:04:28,602 --> 00:04:32,772 大仏を この状況で造れると お思いですか? 46 00:04:32,772 --> 00:04:35,108 東山道や北陸道では➡ 47 00:04:35,108 --> 00:04:39,279 今なお 3年前の飢饉の余波が 続いています。 48 00:04:39,279 --> 00:04:44,117 皆 飢えているのです。 しかたがあるまい。 49 00:04:44,117 --> 00:04:51,625 大君が そう仰せられ 皇后も 乗り気であらせられる。 50 00:04:51,625 --> 00:04:55,295 藤原一門などは 大仏を平城京で造るよう➡ 51 00:04:55,295 --> 00:04:58,798 画策を始めたという。 52 00:04:58,798 --> 00:05:03,069 大仏は 何としても この恭仁京に造る。 53 00:05:03,069 --> 00:05:05,906 そう言わねば 我らの負けになる。 54 00:05:05,906 --> 00:05:08,742 そういう理由で 賛同なさるのですか? 55 00:05:08,742 --> 00:05:10,744 もうよい。 56 00:05:14,915 --> 00:05:19,753 大君も 病弱なお方。 57 00:05:19,753 --> 00:05:24,925 遅かれ早かれ 次を いずれの 皇子に お継がせになるか➡ 58 00:05:24,925 --> 00:05:28,261 お決めにならねばなるまい。➡ 59 00:05:28,261 --> 00:05:32,766 我らとしては あの安積皇子を大君に頂き➡ 60 00:05:32,766 --> 00:05:35,769 藤原の野望を絶たねばならぬ。 61 00:05:38,939 --> 00:05:43,777 <安積親王は 皇太子の腹違いの弟君で➡ 62 00:05:43,777 --> 00:05:48,648 藤原家の血を引かない ただ一人の皇子でした。➡ 63 00:05:48,648 --> 00:05:52,485 そのため 古い貴族たちは この皇子を➡ 64 00:05:52,485 --> 00:05:56,189 次の大君にと考えていたのです。➡ 65 00:05:59,259 --> 00:06:03,063 このころ 兄は 恭仁京から少し離れた➡ 66 00:06:03,063 --> 00:06:07,934 木津川のほとりの 泉橋院という お寺に通っていました。➡ 67 00:06:07,934 --> 00:06:10,570 その近くでは 行基殿が➡ 68 00:06:10,570 --> 00:06:14,908 農民のための用水路造りを 行っていました> 69 00:06:14,908 --> 00:06:19,246 (行基)何度来られても 駄目なものは駄目ですよ。 70 00:06:19,246 --> 00:06:21,248 これは…。 71 00:06:22,916 --> 00:06:25,418 ここで働いているのは➡ 72 00:06:25,418 --> 00:06:30,090 水路が通れば 自分の田畑に 水がもらえる農民と➡ 73 00:06:30,090 --> 00:06:35,962 私の下で 仏門に入る修行を している優婆塞たちだ。 74 00:06:35,962 --> 00:06:41,434 それゆえ 仕事が早い。 無心で働く。 75 00:06:41,434 --> 00:06:45,939 しかし 都を造るとなれば 話は別だ。 76 00:06:45,939 --> 00:06:50,777 何故ですか? 国のために 都の 造営を手伝っていただくのと➡ 77 00:06:50,777 --> 00:06:55,282 ここで用水路を造るのと どれだけの違いがありますか? 78 00:06:55,282 --> 00:07:01,087 人は 己のためには働く。 79 00:07:01,087 --> 00:07:04,958 都の造営ができねば 朝廷が混乱します。 80 00:07:04,958 --> 00:07:07,560 朝廷が混乱すれば 国が混乱し➡ 81 00:07:07,560 --> 00:07:10,897 国の乱れは 民に 災いを もたらします。 82 00:07:10,897 --> 00:07:13,233 都を造るのは ほかのためではありません。 83 00:07:13,233 --> 00:07:18,905 己のためだと思います。 違いましょうか? 84 00:07:18,905 --> 00:07:25,245 人は 理屈だけでは動かない。 では こういう案は いかがです? 85 00:07:25,245 --> 00:07:28,148 ここで修行しておられる 優婆塞の方々は➡ 86 00:07:28,148 --> 00:07:31,418 どのように修行されても 僧侶にはなれない。 87 00:07:31,418 --> 00:07:35,288 一生 寺には入れず 説法することも許されない。 88 00:07:35,288 --> 00:07:40,093 それは 不幸だと思う。 89 00:07:40,093 --> 00:07:46,266 私は 優婆塞の方々が 都の造営に 手を貸してくだされば➡ 90 00:07:46,266 --> 00:07:49,269 僧侶になれるよう 朝廷を説得いたします。 91 00:07:52,772 --> 00:08:03,049 優婆塞は 750名いる。 それを 皆 僧侶にできると申されるのか? 92 00:08:03,049 --> 00:08:04,985 700…。 93 00:08:04,985 --> 00:08:24,437 ♬~ 94 00:08:24,437 --> 00:08:29,743 (阿倍皇太子)父上に 行基殿の話をしたのじゃ。 95 00:08:31,911 --> 00:08:37,417 優婆塞 750人に 僧侶の資格を与えたら➡ 96 00:08:37,417 --> 00:08:41,221 都を造るのに 手を貸してくれると。 97 00:08:44,190 --> 00:08:48,428 「それは無理だ」と仰せられた。 98 00:08:48,428 --> 00:08:54,300 きちんと お寺で修行した僧侶に 示しが つかぬと。 99 00:08:54,300 --> 00:09:14,053 ♬~ 100 00:09:14,053 --> 00:09:21,261 大君に ご覧いただこう 優婆塞たちを。 101 00:09:24,564 --> 00:09:30,069 行基殿に お会いいただこう。 102 00:09:30,069 --> 00:09:34,908 それしかない。 103 00:09:34,908 --> 00:09:38,711 (魚が跳ねる音) おっ 釣れました! 104 00:09:40,413 --> 00:09:42,415 釣れました! 105 00:09:45,251 --> 00:09:49,923 <兄は 大君を きつね狩りに お誘いし➡ 106 00:09:49,923 --> 00:09:54,761 泉橋院へと向かいました> 107 00:09:54,761 --> 00:09:59,432 真備は 大君を 行基の所へ案内するつもりだ。 108 00:09:59,432 --> 00:10:03,603 都造りに行基が加われば 完成が早まる。 109 00:10:03,603 --> 00:10:06,940 平城京へ戻りづらくなる。 110 00:10:06,940 --> 00:10:11,444 泉橋院の周りには 密偵を放ってある。 111 00:10:21,287 --> 00:10:25,959 その者たちに 真備を襲わせよ。 112 00:10:25,959 --> 00:10:30,463 大君と行基を 会わせてはならん。 113 00:10:30,463 --> 00:10:36,970 襲ってどうする? 抵抗したら斬る。 114 00:10:36,970 --> 00:10:50,483 ♬~ 115 00:10:50,483 --> 00:10:55,154 お~ よいお顔じゃ。 116 00:10:55,154 --> 00:10:59,325 藤原が 再び 日の目を見た暁には➡ 117 00:10:59,325 --> 00:11:04,163 この大仏を 必ず 御坊の寺に 造立してみせようぞ。 118 00:11:04,163 --> 00:11:11,604 ♬~ 119 00:11:11,604 --> 00:11:13,606 止まれ~! 120 00:11:19,946 --> 00:11:24,284 ⚟(聖武天皇)右衛士督 きつねは いずくにおる? 121 00:11:24,284 --> 00:11:31,291 はっ。 この先の泉橋院という 寺の周りに多く住むと申します。 122 00:11:33,960 --> 00:11:39,632 そこは 僧侶の姿をしたきつねが あまたいる所か? 123 00:11:39,632 --> 00:11:45,638 大君。 急がねば 日暮れまでに 御所へ戻れませぬぞ。 124 00:11:52,812 --> 00:11:54,814 行け。 125 00:11:58,318 --> 00:12:00,320 はっ。 126 00:12:10,597 --> 00:12:12,532 大君を馬へ! 127 00:12:12,532 --> 00:12:20,607 ♬~ 128 00:12:20,607 --> 00:12:26,412 真備様! 川へ お逃げください! 舟を用意いたしました。 129 00:12:26,412 --> 00:12:28,414 すまぬ。 130 00:12:30,783 --> 00:12:33,286 大君 こちらへ。 131 00:12:33,286 --> 00:12:38,625 ♬~ 132 00:12:38,625 --> 00:12:47,333 (掛け声) 133 00:13:15,762 --> 00:13:20,633 (聖武天皇)行基。 今日 手をつかねばならぬのは➡ 134 00:13:20,633 --> 00:13:23,136 我の方やもしれぬ。 135 00:13:29,942 --> 00:13:33,780 御坊が これまで造った 橋や用水路は➡ 136 00:13:33,780 --> 00:13:38,117 本来 国が成すべき 事業であったろう。 137 00:13:38,117 --> 00:13:40,620 礼を申さねばならぬ。 138 00:13:55,468 --> 00:13:59,138 以前より 気にかかってはいたが➡ 139 00:13:59,138 --> 00:14:03,409 寺の長たちは 御坊と あの優婆塞たちを➡ 140 00:14:03,409 --> 00:14:06,446 はみ出し者と忌み嫌う。 141 00:14:06,446 --> 00:14:11,084 なかなか会う機会を得ず 今日になってしもうた。 142 00:14:11,084 --> 00:14:16,255 長たちは 庭に咲く花ばかりを見て➡ 143 00:14:16,255 --> 00:14:21,260 野に咲く花の美しさを ご存じない。 144 00:14:23,129 --> 00:14:28,434 申しておくが 我は 野に咲く花が好きじゃ。 145 00:14:30,603 --> 00:14:36,409 御坊には 今ごろになって遅いと しかられるやもしれぬが➡ 146 00:14:36,409 --> 00:14:42,415 我は 優婆塞たちを 僧侶として認めようと思う。 147 00:14:47,153 --> 00:14:53,159 750名の優婆塞に 僧侶の身分を与える。 148 00:14:55,828 --> 00:14:58,297 それで よいか? 149 00:14:58,297 --> 00:15:12,245 ♬~ 150 00:15:12,245 --> 00:15:18,117 右衛士督 これで よいか? 151 00:15:18,117 --> 00:15:22,121 はい。 よろしいかと。 152 00:15:29,262 --> 00:15:31,197 行基。 153 00:15:31,197 --> 00:15:33,132 はっ。 154 00:15:33,132 --> 00:15:37,770 御坊を見込んで 頼みたいことがある。 155 00:15:37,770 --> 00:15:42,275 都の造営でございますか? 156 00:15:42,275 --> 00:15:46,145 それもあるが…➡ 157 00:15:46,145 --> 00:15:51,150 仏像造りを助けてもらえぬかと 思うておる。 158 00:15:53,286 --> 00:15:55,221 仏像? 159 00:15:55,221 --> 00:15:59,225 山のような盧舎那仏を造りたい。 160 00:16:01,093 --> 00:16:07,233 病に苦しむ民を救い 飢えに苦しむ民を救い➡ 161 00:16:07,233 --> 00:16:12,104 未来永劫 朽ちることなく建ち続ける➡ 162 00:16:12,104 --> 00:16:17,243 金銅の大仏を造立したい。 163 00:16:17,243 --> 00:16:19,245 どうか? 164 00:16:23,115 --> 00:16:30,256 我は 非力だ。 すべての民の病を治す力はない。 165 00:16:30,256 --> 00:16:34,260 すべての民の飢えを救うことも…。 166 00:16:36,128 --> 00:16:42,134 大君と呼ばれながら それが つらい。 167 00:16:46,272 --> 00:16:52,144 おそれながら その大仏を造る場合➡ 168 00:16:52,144 --> 00:16:58,284 どれほどの物と人が入り用か 計算をいたしました。 169 00:16:58,284 --> 00:17:09,228 銅70万斤 水銀5万両 炭1万石 金1万両➡ 170 00:17:09,228 --> 00:17:18,237 造立に従事する者 160万人 完成に10年。 171 00:17:18,237 --> 00:17:25,111 今 これを費やす余力が 我が国にあると お思いですか? 172 00:17:25,111 --> 00:17:29,749 病と飢饉 大君の仰せられるとおりです。 173 00:17:29,749 --> 00:17:32,652 皆 つらいのです。 174 00:17:32,652 --> 00:17:36,255 何故 大仏なのですか? 175 00:17:36,255 --> 00:17:41,127 小さな普通の仏で よいではありませんか。 176 00:17:41,127 --> 00:17:44,130 私は 反対です。 177 00:17:51,270 --> 00:17:56,142 幼いころ 近くの森に 大きな木があった。➡ 178 00:17:56,142 --> 00:18:00,713 背丈は 天にそびえている。➡ 179 00:18:00,713 --> 00:18:07,219 6歳の時 父が不治の病で倒れた。 180 00:18:07,219 --> 00:18:13,726 私は その森を 舎人に連れられて歩く時➡ 181 00:18:13,726 --> 00:18:18,230 必ず その大きな木に祈った。➡ 182 00:18:18,230 --> 00:18:24,103 父を 一日でも長く 生かしてほしいと。➡ 183 00:18:24,103 --> 00:18:31,243 小さな木より その大きな木が 願いを聞いてくれると思うた。➡ 184 00:18:31,243 --> 00:18:38,250 古い大きな木には 神が宿っている それを信じた。 185 00:18:41,253 --> 00:18:44,156 理屈ではない。 186 00:18:44,156 --> 00:18:49,128 私は 大きな仏を見てみたい。 187 00:18:49,128 --> 00:18:53,265 大君のお気持ちは よく分かります。 188 00:18:53,265 --> 00:18:56,769 しかし…。 (行基)真備殿。 189 00:18:59,138 --> 00:19:05,711 我らは 橋を造り 水路を切り開いてきた。 190 00:19:05,711 --> 00:19:08,614 誰に命じられたのでもない。 191 00:19:08,614 --> 00:19:13,219 それぞれが そうしたいから そうした。 192 00:19:13,219 --> 00:19:16,122 大仏も 同じじゃ。 193 00:19:16,122 --> 00:19:25,131 決めるのは その数字ではない。 皆の心じゃ。 194 00:19:28,234 --> 00:19:33,739 では 御坊 皆の心が 大仏を欲すれば➡ 195 00:19:33,739 --> 00:19:37,243 造立を手伝うてくれるか? 196 00:19:40,246 --> 00:19:42,748 喜んで。 197 00:19:52,758 --> 00:19:59,265 どうやら 大仏に反対なのは 私だけのようです。 198 00:19:59,265 --> 00:20:04,270 真備の申すことは 正しいと思う。 199 00:20:06,138 --> 00:20:09,141 なれど…。 200 00:20:12,778 --> 00:20:17,783 父上の気持ちも よう分かる。 201 00:20:42,308 --> 00:21:01,260 ♬~ 202 00:21:01,260 --> 00:21:04,163 (玄昉)よう。 203 00:21:04,163 --> 00:21:09,135 大君と行基殿の話し合いは うまくいったか? 204 00:21:09,135 --> 00:21:14,273 大君を襲った一味は 誰の手先だ? 205 00:21:14,273 --> 00:21:19,145 勘違いをするな。 狙われたのは 大君ではない。 206 00:21:19,145 --> 00:21:23,149 汝の命が 狙われたのだ。 207 00:21:26,285 --> 00:21:34,160 今日は 矢をそらせたが 次は…➡ 208 00:21:34,160 --> 00:21:37,163 こうだぞ。 209 00:21:39,298 --> 00:21:42,301 玄昉…。 210 00:21:44,170 --> 00:21:50,309 17年間 一緒に唐で学んだ仲だ。 211 00:21:50,309 --> 00:21:53,813 死なせたくなかった。 212 00:21:56,182 --> 00:22:02,254 頼む。 藤原と手を握ってくれ。 恭仁京の建設は よせ! 213 00:22:02,254 --> 00:22:05,157 あんな田舎 誰が住みたいと思う? 214 00:22:05,157 --> 00:22:10,162 喜んでいるのは 右大臣と その取り巻きだけだ。 215 00:22:12,264 --> 00:22:17,770 平城京へ戻って 汝は 大学をやれ。 216 00:22:19,772 --> 00:22:25,277 わしは この大仏を造る。 217 00:22:25,277 --> 00:22:32,151 それが 我らの望みだった。 違うか? 218 00:22:32,151 --> 00:22:35,654 そうさせなかったのは 誰だ? 219 00:22:39,291 --> 00:22:42,294 争いを起こしたのは 誰だ? 220 00:22:44,163 --> 00:22:46,165 玄昉…。 221 00:22:48,300 --> 00:22:53,172 大仏は 行基殿が造るかもしれぬ。 222 00:22:53,172 --> 00:23:00,246 ♬~ 223 00:23:00,246 --> 00:23:05,117 友として 忠告をする。 224 00:23:05,117 --> 00:23:10,256 もう 野心を捨てろ。 225 00:23:10,256 --> 00:23:14,126 普通の僧侶に戻れ。 226 00:23:14,126 --> 00:23:28,140 ♬~ 227 00:23:47,159 --> 00:23:52,798 <天平15年10月15日 大君は ついに➡ 228 00:23:52,798 --> 00:23:57,303 盧舎那仏造営の詔を 布告されました。➡ 229 00:23:57,303 --> 00:24:03,108 その詔で 大君は こう仰せられました。➡ 230 00:24:03,108 --> 00:24:10,749 「私は 徳の薄い者であるが 志は 広く人民を救うことにあり➡ 231 00:24:10,749 --> 00:24:18,257 努めて人々を慈しんできた。 しかしながら 天下の者一切が➡ 232 00:24:18,257 --> 00:24:23,128 すべて 仏の救いを受けているとは 言えない。➡ 233 00:24:23,128 --> 00:24:28,267 そこで 盧舎那仏の金銅像一体を お造りし➡ 234 00:24:28,267 --> 00:24:33,772 動物であれ 植物であれ 生きとし生けるものが➡ 235 00:24:33,772 --> 00:24:39,278 ことごとく栄えることを 望むものである。➡ 236 00:24:39,278 --> 00:24:44,783 天下の富と権勢を持っているのは 私である。➡ 237 00:24:44,783 --> 00:24:52,658 その富と力で この大仏を造るのは たやすいかもしれない。 しかし➡ 238 00:24:52,658 --> 00:24:57,296 そのために いたずらに 人々を 苦労させることがあっては➡ 239 00:24:57,296 --> 00:25:02,134 この尊い心を 分からせることはできない。➡ 240 00:25:02,134 --> 00:25:08,240 それゆえ 我が友として この造立に参加するものは➡ 241 00:25:08,240 --> 00:25:14,113 心を込め 誠実に それぞれが 大きな幸せを招くよう➡ 242 00:25:14,113 --> 00:25:20,252 心の中の盧舎那仏に祈るとよい。➡ 243 00:25:20,252 --> 00:25:23,155 たとえ 一枝の草や➡ 244 00:25:23,155 --> 00:25:27,126 一握りの土のような わずかなものでも ささげて➡ 245 00:25:27,126 --> 00:25:31,263 この仕事に協力したいと 願う者があれば➡ 246 00:25:31,263 --> 00:25:34,266 それも よいのである」> 247 00:25:38,137 --> 00:25:44,777 <詔から3か月後 左大臣になられた橘 諸兄殿や➡ 248 00:25:44,777 --> 00:25:48,647 皇后 皇太子まで お連れになり➡ 249 00:25:48,647 --> 00:25:53,285 大君は 難波へ おたちになりました。➡ 250 00:25:53,285 --> 00:25:57,156 うわさでは 大仏造立に費用がかかるため➡ 251 00:25:57,156 --> 00:26:00,092 新たな都造りを停止し➡ 252 00:26:00,092 --> 00:26:04,229 古くから第二の都として 栄えてきた難波を➡ 253 00:26:04,229 --> 00:26:08,233 都とする案が 浮上したというのです> 254 00:26:16,241 --> 00:26:20,112 <この旅の途中で 安積親王が体調を崩され➡ 255 00:26:20,112 --> 00:26:26,251 恭仁京へ引き返すという 小さな出来事がありました。➡ 256 00:26:26,251 --> 00:26:30,255 それが 事件の発端となりました> 257 00:26:45,270 --> 00:26:51,143 先程 急ぎの使者が戻ってきた。 258 00:26:51,143 --> 00:26:58,283 安積皇子が 急病のため こちらへ戻ってこられるという。 259 00:26:58,283 --> 00:27:04,089 病とあれば 玄昉殿の手当ても 受けに参られよう。 260 00:27:04,089 --> 00:27:08,093 皇子には 脚気の持病がおありで➡ 261 00:27:08,093 --> 00:27:12,097 いつも 決まった薬を差し上げている。 262 00:27:15,234 --> 00:27:18,237 薬か…。 263 00:27:29,248 --> 00:27:33,118 これで 勝負あった。 264 00:27:33,118 --> 00:28:11,223 ♬~ 265 00:28:11,223 --> 00:28:15,227 どうじゃ 苦いか? 266 00:28:45,123 --> 00:28:49,261 うっ… う~っ…。 267 00:28:49,261 --> 00:28:52,164 わっ… あ…。 268 00:28:52,164 --> 00:28:54,766 げ… 玄昉! 269 00:28:54,766 --> 00:28:58,270 わっ わぁ~! 270 00:28:58,270 --> 00:29:02,140 あ… ああ~! 271 00:29:02,140 --> 00:29:07,145 はぁ… はぁ… はぁ… はぁ…。 272 00:29:09,715 --> 00:29:11,650 (安積親王)うわぁ~! 273 00:29:11,650 --> 00:29:13,585 (玄昉)わぁ~! 274 00:29:13,585 --> 00:29:16,088 はぁ… はぁ…。 275 00:29:19,224 --> 00:29:21,226 ⚟(舎人)やあ~! ⚟(安積親王)うわぁ~! 276 00:29:27,099 --> 00:29:29,101 あっ ああ~! 277 00:29:34,239 --> 00:29:36,241 あっ…。 278 00:29:40,112 --> 00:29:42,114 はっ…。 279 00:29:46,251 --> 00:30:17,215 ♬~ 280 00:30:17,215 --> 00:30:21,153 う… うう~。 281 00:30:21,153 --> 00:30:31,163 ♬~ 282 00:30:32,831 --> 00:30:35,667 ⚟兵を集めよ! 283 00:30:35,667 --> 00:30:39,304 左大臣。 仲麻呂に してやられた。 284 00:30:39,304 --> 00:30:42,207 皇子は 殺されたのだ。 間違いない。 285 00:30:42,207 --> 00:30:44,643 ⚟戦じゃ 戦じゃ! 286 00:30:44,643 --> 00:30:50,649 左大臣は 恭仁京を攻め 仲麻呂を討つと申しておる。 287 00:30:52,317 --> 00:30:55,320 汝は どう思う? 288 00:30:57,189 --> 00:31:01,126 仲麻呂殿が まことに 皇子を害し奉ったかどうか➡ 289 00:31:01,126 --> 00:31:05,263 まだ 定かではございませぬ。 (光明皇后)そのとおりじゃ。 290 00:31:05,263 --> 00:31:09,134 ただ 皇子が どのようにして お亡くなりになったか➡ 291 00:31:09,134 --> 00:31:13,138 直ちに 都へ戻って 調べなければなりません。 292 00:31:13,138 --> 00:31:16,775 万が一 害し奉った者がいるなら➡ 293 00:31:16,775 --> 00:31:21,279 法に照らして 罰すべきでございます。 294 00:31:21,279 --> 00:31:24,182 しかし 誰が それを行う? 295 00:31:24,182 --> 00:31:29,154 適任者は 汝しかおらぬと思うが? 296 00:31:29,154 --> 00:31:34,159 我は 反対じゃ。 真備が行けば 殺されます! 297 00:31:35,827 --> 00:31:41,133 ご案じなされますな。 死なぬように参ります。 298 00:31:44,302 --> 00:31:52,310 ただし 一つ 大君のご英断が 頂きたく存じます。 299 00:31:57,315 --> 00:32:03,321 都を 平城京へお戻しになられては いかがでございましょう? 300 00:32:07,125 --> 00:32:13,265 4年前 戦を避けるため 平城京を出ました。 301 00:32:13,265 --> 00:32:20,272 こたびは 戦を避けるため 平城京へ戻るのです。 302 00:32:22,274 --> 00:32:26,778 私は 大仏造立には 今でも疑問がございます。 303 00:32:26,778 --> 00:32:30,649 しかし 平城京へ戻るなら➡ 304 00:32:30,649 --> 00:32:35,153 民の負担も いささか軽くなると存じます。 305 00:32:38,290 --> 00:32:42,160 もし ご英断が下れば➡ 306 00:32:42,160 --> 00:32:47,299 私は ただちに 仲麻呂殿に会いに参ります。 307 00:32:47,299 --> 00:33:02,314 ♬~ 308 00:33:04,249 --> 00:33:08,753 我は 太政官参議藤原仲麻呂である。 309 00:33:08,753 --> 00:33:11,656 泉橋院へ参る。 通せ! 310 00:33:11,656 --> 00:33:15,627 行基殿の命により これより先は 下馬願う。 311 00:33:15,627 --> 00:33:19,130 刀は 我らがお預かりいたす。 何? 312 00:33:22,267 --> 00:33:26,271 (馬のいななき) 313 00:33:28,773 --> 00:33:30,775 チッ。 314 00:33:38,283 --> 00:33:41,786 うまい場所を選ばれたな。 315 00:33:41,786 --> 00:33:43,722 恭仁京に入ってこられたら➡ 316 00:33:43,722 --> 00:33:48,293 誰があなたに斬りつけたか 分からない。 317 00:33:48,293 --> 00:33:53,298 私も まだ死にたくありませんから。 318 00:33:55,166 --> 00:33:58,303 何を読んでおられる? 319 00:33:58,303 --> 00:34:01,206 よいことが書いてあります。 320 00:34:01,206 --> 00:34:09,247 「戦いは 国を全うするを 上となし 国を破るは これに次ぐ」とある。 321 00:34:09,247 --> 00:34:16,922 「百戦百勝は 善の善なるものに あらざるなり」。 孫子ですか。 322 00:34:16,922 --> 00:34:23,595 つまり 戦わずに勝つのが 最上と言っている。 323 00:34:23,595 --> 00:34:27,265 それで? 324 00:34:27,265 --> 00:34:32,771 あなたは この度 そのことを 成し遂げられた。 325 00:34:32,771 --> 00:34:40,278 戦うことなく 左大臣 諸兄殿を打ち負かされた。 326 00:34:40,278 --> 00:34:44,783 都を 平城京に戻す。 327 00:34:44,783 --> 00:34:50,288 大君が そう お決めになったのです。 328 00:34:50,288 --> 00:34:55,160 左大臣は それで納得されたのか? 329 00:34:55,160 --> 00:35:01,232 もはや 安積皇子も うせてしまわれた。 330 00:35:01,232 --> 00:35:05,103 大命に従うほか ありますまい。 331 00:35:05,103 --> 00:35:10,241 左大臣は 敗れたのです。 332 00:35:10,241 --> 00:35:15,246 そのことを お伝えしに来ました。 333 00:35:19,751 --> 00:35:26,091 私の敵は 左大臣だけではない。 334 00:35:26,091 --> 00:35:30,095 もう一人いる。 335 00:35:31,763 --> 00:35:42,474 真備殿は 負けたのか? 勝ったのか? 336 00:35:42,474 --> 00:35:52,150 もし 私が勝ったのなら 汝は 大君のそばを離れよ。 337 00:35:52,150 --> 00:35:57,288 皇太子からも離れよ。 338 00:35:57,288 --> 00:36:03,094 朝廷から手を引け。 339 00:36:03,094 --> 00:36:08,099 国に2人の頭はいらぬ。 340 00:36:10,235 --> 00:36:13,238 手を引け。 341 00:36:18,743 --> 00:36:24,749 それで 国が 穏やかになるのなら。 342 00:36:29,254 --> 00:36:36,761 ただ 一つ お聞きしておきたい。 343 00:36:39,264 --> 00:36:46,137 安積皇子を害し奉ったのは 誰です? 344 00:36:46,137 --> 00:36:52,143 正直に お答えいただきたい。 345 00:36:54,279 --> 00:37:01,720 皇子は…➡ 346 00:37:01,720 --> 00:37:09,894 玄昉が 薬を飲ませた直後に 倒れられたそうだ。 347 00:37:09,894 --> 00:37:14,766 神仏に誓って言う。 348 00:37:14,766 --> 00:37:19,771 私は 後から聞いて驚いた。 349 00:37:24,242 --> 00:37:28,246 それだけだ。 350 00:37:47,465 --> 00:37:50,769 <天平17年 春➡ 351 00:37:50,769 --> 00:37:54,272 都が 平城京に戻されました。➡ 352 00:37:54,272 --> 00:37:57,609 何千 何万という人々が➡ 353 00:37:57,609 --> 00:38:01,579 連日 平城京に向かって 帰っていきました。➡ 354 00:38:01,579 --> 00:38:06,718 大仏造立にかかわる人々も 大量の資材も➡ 355 00:38:06,718 --> 00:38:12,223 皆 平城京へ 移されていきました。➡ 356 00:38:12,223 --> 00:38:21,733 そして 平城京の東に 大仏が造られ始めました。➡ 357 00:38:21,733 --> 00:38:25,603 この年も 春以来 雨が降らず➡ 358 00:38:25,603 --> 00:38:31,409 人々は 田植えもままならない 苦しい暮らしが続いていました。➡ 359 00:38:31,409 --> 00:38:35,280 夏には何度も地震がありました。➡ 360 00:38:35,280 --> 00:38:41,119 しかし 人々は 大仏を造り続けました。➡ 361 00:38:41,119 --> 00:38:48,126 まるで それだけが希望のように 造り続けました> 362 00:38:54,632 --> 00:38:58,269 <玄昉殿は あの事件の後➡ 363 00:38:58,269 --> 00:39:03,107 朝廷の命により 九州 大宰府の観世音寺へ送られ➡ 364 00:39:03,107 --> 00:39:07,078 不遇の日々を 過ごしていたそうです。➡ 365 00:39:07,078 --> 00:39:12,083 そして 翌年の6月> 366 00:39:17,622 --> 00:39:23,428 わしを斬るのか。 誰の命令だ? 367 00:39:23,428 --> 00:39:25,897 参議殿だ。 368 00:39:25,897 --> 00:39:29,200 仲麻呂か。 369 00:39:33,638 --> 00:39:38,610 誰か 平城京のうわさを 聞いた者はいるか? 370 00:39:38,610 --> 00:39:45,617 大仏は どうした? まだ 出来上がらんのか? 371 00:39:50,121 --> 00:39:55,260 あの大仏を 最初に造ろうとしたのは➡ 372 00:39:55,260 --> 00:39:58,263 この わしだ。 373 00:40:24,789 --> 00:40:28,993 唐にいたころが 懐かしいのう。 374 00:40:33,798 --> 00:40:43,508 山のように 大きな仏を見た。 375 00:41:00,258 --> 00:41:03,261 (刀を振り下ろす音) 376 00:41:05,096 --> 00:41:08,966 元旦の御所の宴へ お見えにならなかったので➡ 377 00:41:08,966 --> 00:41:12,770 いかがなされたのかと 皆が案じておりました。 378 00:41:12,770 --> 00:41:17,608 わしは 宴とか儀式とか 大の苦手でな。 379 00:41:17,608 --> 00:41:22,447 とりわけ 仲麻呂殿が 式部卿になられてから➡ 380 00:41:22,447 --> 00:41:26,784 一段と 役人臭い 堅苦しいものになった。 381 00:41:26,784 --> 00:41:31,289 わしは 嫌いだ。 御所とは そういう所です。 382 00:41:31,289 --> 00:41:36,160 いや 仲麻呂殿だ。 383 00:41:36,160 --> 00:41:41,299 皆 仲麻呂殿を恐れて ピリピリしておる。 384 00:41:41,299 --> 00:41:43,968 左大臣を押しのけ➡ 385 00:41:43,968 --> 00:41:48,639 大仏を造る責任者になる おつもりのようだが➡ 386 00:41:48,639 --> 00:41:54,345 大仏から 最も遠いお方じゃ。 387 00:41:56,514 --> 00:42:05,823 わしは 本心を言うと 真備殿に 大仏を頼みたかった。 388 00:42:10,261 --> 00:42:17,935 玄昉が 九州へ行く前日 大寺で ばったり会ったのだ。 389 00:42:17,935 --> 00:42:21,272 あれは 面白いことを言うた。 390 00:42:21,272 --> 00:42:25,143 「自分は もう都へは戻ってこれまい。➡ 391 00:42:25,143 --> 00:42:29,781 大仏の出来上がったお姿を 見ることはできぬ。➡ 392 00:42:29,781 --> 00:42:33,284 行基殿も お年が お年じゃ。➡ 393 00:42:33,284 --> 00:42:37,455 出来上がるまで 生きてはおられまい」。 394 00:42:37,455 --> 00:42:44,228 「では 誰が 大仏を見届けるのだ?」。 395 00:42:44,228 --> 00:42:47,165 玄昉は こう言うのだ。 396 00:42:47,165 --> 00:42:50,468 「真備に 見届けてほしい。➡ 397 00:42:50,468 --> 00:42:58,209 大仏に 一番 反対した男だが あいつが 一番 大仏に近い男だ。➡ 398 00:42:58,209 --> 00:43:03,748 そう思われぬか?」と。 399 00:43:03,748 --> 00:43:06,651 わしは 言うてやった。 400 00:43:06,651 --> 00:43:13,257 「そう思う汝が 最も 大仏に近いのだ。➡ 401 00:43:13,257 --> 00:43:17,929 何故 道を間違えた?」。 402 00:43:17,929 --> 00:43:24,702 玄昉は 黙って泣き出した。 403 00:43:24,702 --> 00:43:30,641 わしは 言うた後 後悔した。 404 00:43:30,641 --> 00:43:42,153 道を間違えて 初めて 玄昉は 仏に近づいたのだ。➡ 405 00:43:42,153 --> 00:43:46,157 人とは そういうものだ。 406 00:43:47,925 --> 00:43:52,630 分かりませぬ。 407 00:43:52,630 --> 00:44:00,338 私は 仏とは 縁の遠い人間です。 408 00:44:03,741 --> 00:44:09,614 何故 私に 大仏を見届けろと? 409 00:44:09,614 --> 00:44:18,289 理由はない。 わしも 玄昉も 勝手に そう思うただけだ。➡ 410 00:44:18,289 --> 00:44:23,094 しかし 2人の坊主が そう思うのだ。 411 00:44:23,094 --> 00:44:28,266 まんざら 間違ってもいまい。 412 00:44:28,266 --> 00:44:33,271 ハハハハハッ。 413 00:44:57,795 --> 00:45:04,402  回想 唐の都には 貧しい者も 病の者も 幾万人といる。 414 00:45:04,402 --> 00:45:09,073 それを救うには 大きな慈悲の力がいる。 415 00:45:09,073 --> 00:45:13,744 山ほど大きな仏が必要なんだ。 416 00:45:13,744 --> 00:45:17,748 玄昉…。 417 00:45:27,258 --> 00:45:56,287 ♬~ 418 00:45:56,287 --> 00:46:02,727  回想 理屈ではない。 私は 大きな仏を見てみたい。 419 00:46:02,727 --> 00:46:11,068 決めるのは その数字ではない。 皆の心じゃ。 420 00:46:11,068 --> 00:47:51,068 ♬~ 421 00:48:04,882 --> 00:48:08,886 (橘 諸兄)真備殿。 422 00:48:10,688 --> 00:48:13,224 左大臣…。 423 00:48:13,224 --> 00:48:16,727 大仏造立に反対の真備殿が➡ 424 00:48:16,727 --> 00:48:20,598 どういう風の吹き回しで こんな所に? 425 00:48:20,598 --> 00:48:22,600 はあ。 426 00:48:22,600 --> 00:48:28,305 よい所で会うた。 汝に 話があるのじゃ。 427 00:48:30,074 --> 00:48:34,745 近ごろは 朝廷も 様変わりじゃ。 428 00:48:34,745 --> 00:48:40,618 政は 仲麻呂殿がおやりになるゆえ 左大臣は どこぞで➡ 429 00:48:40,618 --> 00:48:46,457 歌でも お詠みになっておれば よいといったあんばいじゃ。 430 00:48:46,457 --> 00:48:53,931 それゆえ こうして 毎日 大仏様の 出来具合を 検分に参っておる。 431 00:48:53,931 --> 00:49:02,940 心洗われる日々だが まあ いささか 退屈じゃのう。 432 00:49:04,875 --> 00:49:13,584 実は 昨日 朝議で 汝の処遇について話が出た。 433 00:49:13,584 --> 00:49:20,724 近々 筑前守として 九州に下って もらいたいという話なのじゃ。 434 00:49:20,724 --> 00:49:24,228 は? その先がある。 435 00:49:24,228 --> 00:49:34,738 しかる後に 遣唐使の副使として 唐へ行ってもらいたいのじゃ。 436 00:49:34,738 --> 00:49:37,241 唐へ!? 437 00:49:37,241 --> 00:49:43,113 次の遣唐使は 唐から 初めて 学者を招くという役目がある。 438 00:49:43,113 --> 00:49:54,258 唐で 名の通った汝に頼みたいと 仲麻呂が 強く推したのじゃ。 439 00:49:54,258 --> 00:50:00,130 我は 反対したが 仲麻呂が ぜひにと申す。 440 00:50:00,130 --> 00:50:07,271 仲麻呂の本意は 透けて見えるが 誰も 表立って反対はできぬ。➡ 441 00:50:07,271 --> 00:50:12,943 仲麻呂の息のかかった者たちが 皆 賛成じゃ。 442 00:50:12,943 --> 00:50:17,815 我らの命運は 尽きたと言うほかはない。 443 00:50:17,815 --> 00:50:26,290 ♬~ 444 00:50:26,290 --> 00:50:30,794 真備を 唐へやるなど 正気のさたとは思えませぬ。 445 00:50:30,794 --> 00:50:35,799 真備に 死ねと申すのですか? 446 00:50:39,803 --> 00:50:43,674 仲麻呂は 真備が怖いのです。 447 00:50:43,674 --> 00:50:46,677 だから 遠くに 追い払いたいのです。 448 00:50:46,677 --> 00:50:52,316 大君の名において 止めるよう お命じいただきたいのです。 449 00:50:52,316 --> 00:50:59,990 皇子よ これは 仲麻呂だけが 下した命令ではない。 450 00:50:59,990 --> 00:51:03,260 朝廷の総意じゃ。 451 00:51:03,260 --> 00:51:05,930 総意? 452 00:51:05,930 --> 00:51:11,268 皇子は 遠からず 大君を お継ぎにならねばならぬ。 453 00:51:11,268 --> 00:51:15,940 大君となれば 百官の言葉に耳を傾け➡ 454 00:51:15,940 --> 00:51:19,777 国の大事を決めねばならぬ。 455 00:51:19,777 --> 00:51:24,648 皆が案ずるのは 皇子の陰に 真備がいて➡ 456 00:51:24,648 --> 00:51:29,453 何かと 指図をせぬかということじゃ。 457 00:51:29,453 --> 00:51:34,458 仲麻呂が指図をするのは よいのですか? 458 00:51:37,127 --> 00:51:45,803 皇子よ 案ずるな。 真備は強い。 459 00:51:45,803 --> 00:51:52,309 ただ一人 我の大仏造立を反対した男だ。➡ 460 00:51:52,309 --> 00:51:55,980 唐へ行くぐらいで 死にはせぬ。 461 00:51:55,980 --> 00:51:59,850 ですが! 申すな。 462 00:51:59,850 --> 00:52:04,655 いろいろあろうが 何も申すな。 463 00:52:06,624 --> 00:52:14,365 汝は 藤原の血を引く者ゆえ 我の跡を継ぐ。 464 00:52:14,365 --> 00:52:22,139 これは 定めぞ。 定めゆえ 動かせぬこともある。 465 00:52:22,139 --> 00:52:25,976 申せぬこともある。 466 00:52:25,976 --> 00:52:31,448 申したいのです! 動かしたいのです! 467 00:52:31,448 --> 00:52:37,788 それが できぬのなら 父上の跡を継ぐのは嫌です! 468 00:52:37,788 --> 00:52:41,792 大君になど ならぬ! 469 00:52:59,176 --> 00:53:05,249 (聖武天皇)父としては 好きにいたせと申すほかはない。 470 00:53:05,249 --> 00:53:11,121 だが 大君として 言い残しておかねばならぬ。 471 00:53:11,121 --> 00:53:17,261 今 朝廷一の器量者は 仲麻呂と見る。 472 00:53:17,261 --> 00:53:21,565 ほかの者に 国を動かす力はない。 473 00:53:23,133 --> 00:53:29,273 であるなら 信じようと思う。 474 00:53:29,273 --> 00:53:38,282 我が臣下を信じる。 それを 自らに課してきた。➡ 475 00:53:40,884 --> 00:53:44,755 汝も 信じよ。 476 00:53:44,755 --> 00:53:48,659 自らに それを課せ。 477 00:53:48,659 --> 00:54:15,152 ♬~ 478 00:54:26,263 --> 00:54:28,765 (由利)お帰りなさいませ。 うん。 479 00:54:28,765 --> 00:54:33,270 兄上 皇子様が お忍びで おいでです。 480 00:54:44,782 --> 00:54:47,284 これが 五帝座であろう? 481 00:54:47,284 --> 00:54:49,586 これが 北斗。 482 00:54:59,796 --> 00:55:03,767 汝が春宮にいたころ いつか➡ 483 00:55:03,767 --> 00:55:08,605 星のことを教えてくれるという 約束をしたであろう。 484 00:55:08,605 --> 00:55:17,214 私は もう 春宮を離れた身。 以前のようには参りません。 485 00:55:17,214 --> 00:55:21,418 一生 そばにいよと申したのに。 486 00:55:21,418 --> 00:55:25,255 人には おのおの 役目というものがございます。 487 00:55:25,255 --> 00:55:30,127 私は 来年は 筑前へ赴任せねばならず。 488 00:55:30,127 --> 00:55:37,134 その後 唐へ行くのか? 489 00:55:41,705 --> 00:55:47,211 我も行きたい 唐へ。 490 00:55:58,789 --> 00:56:01,692 平城京へ戻って以来➡ 491 00:56:01,692 --> 00:56:06,230 汝は 御所で会うても 口をきこうとせぬ。 492 00:56:06,230 --> 00:56:12,102 聞きたいことがあっても いつも 遠くに行ってしまう。 493 00:56:12,102 --> 00:56:16,240 それも 仲麻呂との約束か? 494 00:56:16,240 --> 00:56:24,114 ♬~ 495 00:56:24,114 --> 00:56:29,253 昔 思うたことがある。 496 00:56:29,253 --> 00:56:35,125 大君ではのうて 臣下の家に生まれたかった。 497 00:56:35,125 --> 00:56:44,735 そうすれば 真備の話を 一生 聞いて暮らせる。 498 00:56:44,735 --> 00:56:48,238 いつも そばで。 499 00:56:52,276 --> 00:56:59,283 こんな思いは せずに済んだ。 500 00:57:05,222 --> 00:57:10,527 もう 大君にはならぬ! 絶対にならぬ! 501 00:57:12,095 --> 00:57:15,732 大君に おなりなさい! 502 00:57:15,732 --> 00:57:19,236 必ず おなりなさい。 503 00:57:19,236 --> 00:57:31,748 ♬~ 504 00:57:31,748 --> 00:57:39,756 そうでなくては 今まで ご一緒した意味がなくなる。 505 00:57:42,759 --> 00:57:52,269 私は 自分が学んだことを すべて 皇子に話したつもりです。 506 00:57:52,269 --> 00:58:01,778 共に 野を歩き 村を歩き この国について語りました。 507 00:58:03,714 --> 00:58:13,223 皇子は 貧しい人々の気持ちも 働く人々の暮らしも➡ 508 00:58:13,223 --> 00:58:18,095 よく分かっておられる。 509 00:58:18,095 --> 00:58:28,105 あとは そのことを思い ご自分の政を行えばよいのです。 510 00:58:30,640 --> 00:58:36,246 藤原の血筋に とらわれることはありません。 511 00:58:36,246 --> 00:58:42,753 ご自分に正直な大君で いらっしゃればよい。 512 00:58:42,753 --> 00:58:50,627 これまでのことは 明日からのためにあったと➡ 513 00:58:50,627 --> 00:58:55,632 そう思える大君に なっていただきたいのです。 514 00:58:59,202 --> 00:59:06,076 それが 私の誇りとなります。 515 00:59:06,076 --> 00:59:18,221 ♬~ 516 00:59:18,221 --> 00:59:28,732 私は 遠くへ参っても 皇子の近くにいます。 517 00:59:28,732 --> 00:59:35,238 いずくにいても おそばに侍しております。 518 00:59:40,243 --> 00:59:48,251 どうか ご安心ください。 519 00:59:55,725 --> 01:00:02,232 一生 そばにいるか? 520 01:00:14,144 --> 01:00:18,281 ならば…➡ 521 01:00:18,281 --> 01:00:21,284 大君になる。 522 01:01:05,695 --> 01:02:26,776 ♬~ 523 01:02:26,776 --> 01:02:30,280 ♬~ 524 01:02:30,280 --> 01:02:37,454 <天平勝宝元年7月 皇太子は 聖武天皇の跡を継がれ➡ 525 01:02:37,454 --> 01:02:40,790 大君の玉座に おつきになりました。➡ 526 01:02:40,790 --> 01:02:46,796 後に 孝謙と申された 女帝の誕生でした> 527 01:02:48,665 --> 01:02:53,803 <兄は 従四位上という 高い位を与えられましたが➡ 528 01:02:53,803 --> 01:02:59,309 翌年 朝廷の命により 筑前守として 九州へ送られ➡ 529 01:02:59,309 --> 01:03:07,317 その翌々年 遣唐使の副使として 唐へ行くことになったのです> 530 01:03:10,754 --> 01:03:18,261 南無 盧舎那仏。 南無…。 531 01:03:18,261 --> 01:03:24,134 ♬~ 532 01:03:24,134 --> 01:03:30,273 <その年の春 大仏様の開眼会が 盛大に行われました。➡ 533 01:03:30,273 --> 01:03:36,079 行基殿は この時を見ることなく 入滅なされましたが➡ 534 01:03:36,079 --> 01:03:43,286 大君をはじめ 朝廷の方々 僧侶 平城京の人々➡ 535 01:03:43,286 --> 01:03:48,158 身分の上下を問わず 御仏を慕う無数の人々が➡ 536 01:03:48,158 --> 01:03:52,295 この開眼会に集まりました> 537 01:03:52,295 --> 01:04:04,240 ♬~ 538 01:04:04,240 --> 01:04:08,578 <大仏様のお顔を飾る分しか 金が調達できず➡ 539 01:04:08,578 --> 01:04:11,081 完成途中ではありましたが➡ 540 01:04:11,081 --> 01:04:15,585 聖武太上天皇のお体の具合が 思わしくなかったため➡ 541 01:04:15,585 --> 01:04:19,255 開眼会を急がれたそうです> 542 01:04:19,255 --> 01:05:05,235 ♬~ 543 01:05:05,235 --> 01:05:12,742 <この華やかな お祭りに 兄の姿はありませんでした> 544 01:05:12,742 --> 01:05:23,753 ♬~ 545 01:05:25,755 --> 01:05:30,260 <朝廷では 光明皇太后が お作りになった➡ 546 01:05:30,260 --> 01:05:35,932 紫微中台という直属の役所の長に 仲麻呂殿が お就きになり➡ 547 01:05:35,932 --> 01:05:40,270 事実上 皇太后と共に 政を行うという➡ 548 01:05:40,270 --> 01:05:42,772 異例の事態が起きていました> 549 01:05:42,772 --> 01:05:50,647 摂津の国が 大きな嵐に遭うて 田畑が 水没したというが➡ 550 01:05:50,647 --> 01:05:54,284 被害を受けた民すべてに➡ 551 01:05:54,284 --> 01:05:59,155 国の倉から 相応の五穀を配っては どうか? 552 01:05:59,155 --> 01:06:04,727 その件につきましては 既に 紫微中台が➡ 553 01:06:04,727 --> 01:06:10,600 田にかかる租税の免除のみと 決めたように 聞いております。 554 01:06:10,600 --> 01:06:13,436 紫微中台が? 555 01:06:13,436 --> 01:06:15,438 仲麻呂を呼べ! 556 01:06:15,438 --> 01:06:23,112 ♬~ 557 01:06:23,112 --> 01:06:27,750 摂津の国の件であるが…。 558 01:06:27,750 --> 01:06:32,422 おそれながら 民すべてに 五穀を配るほど➡ 559 01:06:32,422 --> 01:06:38,094 国の倉に 余裕はございません。 摂津に派遣をした役人も➡ 560 01:06:38,094 --> 01:06:41,130 田租の免除でよかろうとの 意見でございます。 561 01:06:41,130 --> 01:06:47,770 では 聞くが 摂津の役人たちが 朝廷に 内密で➡ 562 01:06:47,770 --> 01:06:52,642 貧しい農民に 田を貸し また 稲も貸し付け➡ 563 01:06:52,642 --> 01:06:56,279 違法の利息を 懐に入れていると申すが…。 564 01:06:56,279 --> 01:07:01,718 摂津の国司は 我が一族を任命いたしました。 565 01:07:01,718 --> 01:07:05,221 そのような不正があるとは 聞いておりませぬ。 566 01:07:05,221 --> 01:07:09,092 摂津だけではない。 諸国に送った役人が➡ 567 01:07:09,092 --> 01:07:13,730 国々で 賄賂を取って 地方の不正を見逃しているという。 568 01:07:13,730 --> 01:07:16,766 諸国に送る役人たちは 皆 紫微中台で厳選した➡ 569 01:07:16,766 --> 01:07:21,604 立派な者どもです。 ご案じなされますな。 570 01:07:21,604 --> 01:07:26,242 仲麻呂 我は 調べたうえで申しておる。 571 01:07:26,242 --> 01:07:28,912 この仲麻呂が 承知いたさぬことは➡ 572 01:07:28,912 --> 01:07:33,249 すべて ないものと申すほか ございませぬ。 573 01:07:33,249 --> 01:07:40,123 ♬~ 574 01:07:40,123 --> 01:07:42,258 仲麻呂! 575 01:07:42,258 --> 01:07:45,161 ♬~ 576 01:07:45,161 --> 01:07:51,267 <仲麻呂殿の身内を中心とした政は 国の制度をゆがめ➡ 577 01:07:51,267 --> 01:07:55,104 結果として 朝廷内の不統一を生み➡ 578 01:07:55,104 --> 01:08:00,076 国は 一層 荒廃していったのです> 579 01:08:00,076 --> 01:08:05,581 ♬~ 580 01:08:13,590 --> 01:08:19,429 <私は 兄が唐へ行って間もなく 大君に請われるまま➡ 581 01:08:19,429 --> 01:08:24,634 内侍として 大君のおそばに お仕えしていました> 582 01:08:26,736 --> 01:08:30,573 申し上げます。 先程 紀伊の国より使者が参り➡ 583 01:08:30,573 --> 01:08:34,243 5日前 牟漏埼に 遣唐使船が漂着いたした由。 584 01:08:34,243 --> 01:08:36,179 何⁈ 585 01:08:36,179 --> 01:08:40,750 兄 真備が 帰着いたしたそうでございます。 586 01:08:40,750 --> 01:08:45,254 帰った… 真備が。 587 01:08:45,254 --> 01:08:47,190 はい。 588 01:08:47,190 --> 01:09:01,738 ♬~ 589 01:09:01,738 --> 01:09:06,209 お待ちください! お待ちください! 590 01:09:06,209 --> 01:09:09,112 しばらく お待ちください! お待ちください! しばし! 591 01:09:09,112 --> 01:09:12,081 今しばらく お待ちください! 592 01:09:12,081 --> 01:09:18,087 ♬~ 593 01:09:28,231 --> 01:09:34,237 遣唐使副使 吉備真備 ただいま 唐より帰着いたしました。 594 01:09:37,740 --> 01:09:46,249 先日 唐の高僧 鑑真殿も 第2船にて お着きになった。 595 01:09:46,249 --> 01:09:53,256 無事 お役目を終えられ この仲麻呂も 喜びに堪えぬ。 596 01:09:55,758 --> 01:10:02,265 私は 務めを果たした。 あなたは どうだ? 597 01:10:02,265 --> 01:10:08,137 恭仁京より こちらへ都を戻す時 私は あなたに お願いをした。 598 01:10:08,137 --> 01:10:12,775 世を 穏やかに治めていただきたいと。 599 01:10:12,775 --> 01:10:17,447 世は 穏やかぞ。 私には そのようには見えぬ。 600 01:10:17,447 --> 01:10:22,785 紀伊の国から こちらへ戻るまで 多くの貧しい人を見た。 601 01:10:22,785 --> 01:10:26,656 あなたの選んだ役人たちが 諸国で 不正を行い➡ 602 01:10:26,656 --> 01:10:30,293 私腹を肥やしているのも 見聞きした。 603 01:10:30,293 --> 01:10:36,299 かつて あなたは 私に こう申された。 604 01:10:39,302 --> 01:10:47,176 「この国は 美しくない。 何故だろう」と。 605 01:10:47,176 --> 01:10:51,314 今 私には 分かる。 606 01:10:51,314 --> 01:10:58,187 制度はあっても それを ゆがめる者がいる。 607 01:10:58,187 --> 01:11:05,761 力を握った途端 初心を忘れる者がいる。 608 01:11:05,761 --> 01:11:12,268 それゆえ この国は 美しい音を響かせぬ。 609 01:11:14,270 --> 01:11:18,775 私は 約束どおり 務めを果たした。 610 01:11:18,775 --> 01:11:24,280 今度は あなたが 務めを果たさなければならない。 611 01:11:24,280 --> 01:11:28,151 どういう務めだ? 612 01:11:28,151 --> 01:11:32,622 制度をゆがめ 初心を忘れたご自身を➡ 613 01:11:32,622 --> 01:11:37,293 法に照らして 罰するのです。 614 01:11:37,293 --> 01:11:41,797 罰なら もう受けている。 615 01:11:41,797 --> 01:11:46,302 近ごろ 眠ると 夢の中に 大仏が現れる。 616 01:11:46,302 --> 01:11:52,175 大勢の者が 我も我もと 大仏を見に来る。 617 01:11:52,175 --> 01:11:56,312 この仲麻呂が 大仏のそばにいるのに➡ 618 01:11:56,312 --> 01:12:00,183 誰も 仲麻呂がいるとは気づかぬ。 619 01:12:00,183 --> 01:12:06,122 何故だと大仏に問うと 大仏は こう答える。 620 01:12:06,122 --> 01:12:13,596 「汝は 小さく汚れた者だ。➡ 621 01:12:13,596 --> 01:12:18,301 我の大きさ 美しさには かなわぬ」。 622 01:12:20,269 --> 01:12:23,940 夢の中で 我は後悔している。 623 01:12:23,940 --> 01:12:30,646 大仏がいるかぎり 我は小さき者だ。 624 01:12:37,286 --> 01:12:41,624 しかし 目が覚めて 我は思う。 625 01:12:41,624 --> 01:12:47,330 大仏など 恐れるに足りぬ。 壊せばよいのだ。 626 01:12:50,299 --> 01:12:56,172 そもそも この世に さほどに美しきものがあるか? 627 01:12:56,172 --> 01:13:02,245 誰が よい政を行うても 旱魃は起きる。 628 01:13:02,245 --> 01:13:08,251 貧しき者は 地上から なくなりはせぬ。 629 01:13:09,919 --> 01:13:15,591 この仲麻呂も 精一杯やってみたのだ。 630 01:13:15,591 --> 01:13:21,597 それを 笑うなら笑え。 631 01:13:23,266 --> 01:13:31,974 しょせん 大仏は作り物。 壊してしまえ。 ハハハハ! 632 01:13:35,278 --> 01:13:43,152 夢を見た日は 一日 もの憂い。 我は 夢で罰を受けたと思う。 633 01:13:43,152 --> 01:13:51,627 どうだ。 これで よいか? ハハハハハ! 634 01:13:51,627 --> 01:13:55,931 あなたは 今の地位を退くべきだ。 635 01:13:57,500 --> 01:14:02,571 朝廷を私物と化した あなたは 四方 敵ばかりだ。 636 01:14:02,571 --> 01:14:07,443 それで まともな政は行えぬ。 637 01:14:07,443 --> 01:14:12,248 今のあなたを支えているのは 皇太后のみだ。 638 01:14:12,248 --> 01:14:16,953 いずれ あなたは一人になる。 639 01:14:18,587 --> 01:14:23,459 遠からず 滅びることになる。 640 01:14:23,459 --> 01:14:29,231 どうかな? その前に 敵は つぶしておく。 641 01:14:29,231 --> 01:14:34,603 汝が敵なら また 唐へ行かせる。 行かせるがよい。 642 01:14:34,603 --> 01:14:39,275 私は 何度でも帰ってくる。 643 01:14:39,275 --> 01:14:45,581 あなたが一人になり 誰かに討たれるまで帰ってくる。 644 01:14:47,149 --> 01:14:54,290 面白い。 誰が この仲麻呂を討つ? 645 01:14:54,290 --> 01:15:00,596 誰も討たねば 私が討つ。 646 01:15:09,238 --> 01:15:14,110 あなたは敗れる。 647 01:15:14,110 --> 01:15:21,584 汝に命じる。 本日 直ちに九州へ行け。 648 01:15:21,584 --> 01:15:24,920 大宰府へ行け。 649 01:15:24,920 --> 01:15:33,262 玄昉が死したごとく 九州で死ね。 二度と都へ戻さぬぞ。 650 01:15:33,262 --> 01:15:38,601 よかろう。 九州へ行こう。 651 01:15:38,601 --> 01:15:46,475 ただし 油断召されるな。 国中の目が➡ 652 01:15:46,475 --> 01:15:50,212 あなたが一人になるのを 待っている。 653 01:15:50,212 --> 01:15:55,951 その時 私は戻ってくる。 654 01:15:55,951 --> 01:16:11,901 ♬~ 655 01:16:11,901 --> 01:16:15,237 (グラスが割れる音) やれるものなら やってみろ! 656 01:16:15,237 --> 01:16:19,909 我は負けぬぞ! 朝廷も国も 我に従う。 657 01:16:19,909 --> 01:16:24,914 九州で死ね! 我は負けぬぞ! 658 01:16:31,921 --> 01:16:37,793 <兄は 大宰府へ左遷され 再び 都を去りました。➡ 659 01:16:37,793 --> 01:16:45,935 翌年 聖武太上天皇が崩御され 仲麻呂殿は 誰はばかることなく➡ 660 01:16:45,935 --> 01:16:51,273 権勢を欲しいままにされ 名も 恵美押勝と変え➡ 661 01:16:51,273 --> 01:16:53,943 藤原一門とも一線を画し➡ 662 01:16:53,943 --> 01:16:58,948 太政大臣にまで 上り詰められました> 663 01:17:00,749 --> 01:17:05,888 <しかし その後ろ盾であった 光明皇太后が➡ 664 01:17:05,888 --> 01:17:11,227 間もなく 病で崩御されたのです> 665 01:17:11,227 --> 01:17:40,923 ♬~ 666 01:17:40,923 --> 01:17:44,793 <この時 大君は 仲麻呂殿の お立てになった➡ 667 01:17:44,793 --> 01:17:50,599 淳仁天皇に 余儀なく譲位をされ 太上天皇の お立場でしたが➡ 668 01:17:50,599 --> 01:17:55,905 この機に大きな決意をされました> 669 01:17:58,941 --> 01:18:05,748 <天平宝字8年初頭 大君は造東大寺長官として➡ 670 01:18:05,748 --> 01:18:09,552 兄を都へ呼び戻されました。➡ 671 01:18:09,552 --> 01:18:15,858 まるで それが合図のように 戦が始まったのです> 672 01:18:20,195 --> 01:18:24,099 <光明皇太后崩御の後 孤立感を強め➡ 673 01:18:24,099 --> 01:18:28,571 力で朝廷を制圧しようとしていた 仲麻呂殿でしたが➡ 674 01:18:28,571 --> 01:18:32,875 味方に つく者は わずかとなっていました> 675 01:18:34,443 --> 01:18:38,147 仲麻呂殿は 都を出たか。 676 01:18:40,916 --> 01:18:45,221 やはり 都では孤立していたな…。 677 01:18:47,590 --> 01:18:53,929 よろしいか。 汝は 近江に先回りして➡ 678 01:18:53,929 --> 01:18:57,800 勢多橋を焼き落とす。 はっ! 679 01:18:57,800 --> 01:19:04,206 汝は 越前に回って 仲麻呂殿の逃げ場を押さえる。 680 01:19:04,206 --> 01:19:06,141 はっ! 681 01:19:06,141 --> 01:19:10,079 従って 主戦場は この辺りとなる。 682 01:19:10,079 --> 01:19:12,081 (一同)おう! 683 01:19:12,081 --> 01:19:19,788 ♬~ 684 01:19:51,587 --> 01:19:58,594 一度だけ 戦をいたします。 685 01:20:02,931 --> 01:20:06,235 お許しください。 686 01:20:07,803 --> 01:20:11,507 決して長くは戦いません。 687 01:20:14,943 --> 01:20:19,248 国を疲弊させる戦には いたしませぬ。 688 01:20:25,954 --> 01:20:30,292 どうか…➡ 689 01:20:30,292 --> 01:20:37,166 私の戦に間違いがありませぬよう。 690 01:20:37,166 --> 01:21:18,273 ♬~ 691 01:21:18,273 --> 01:21:21,176 (馬の いななき) 692 01:21:21,176 --> 01:21:23,946 引け! 引け~! 693 01:21:23,946 --> 01:21:32,621 ♬~ 694 01:21:32,621 --> 01:21:37,326 申し上げます。 敵軍は進路を変え この三尾崎に向かっている由。 695 01:21:40,963 --> 01:21:47,836 我らは勝つ! ただし 仲麻呂殿は斬るな! 696 01:21:47,836 --> 01:21:50,305 生かして捕らえよ! 697 01:21:50,305 --> 01:21:53,308 (一同)お~! 698 01:21:56,979 --> 01:22:01,817 <決戦場は 兄の予想どおり 琵琶湖の西岸となり➡ 699 01:22:01,817 --> 01:22:07,823 兄の軍は 一方的に 仲麻呂殿の軍を破りました> 700 01:22:09,925 --> 01:22:27,276 (戦の ざわめき) 701 01:22:27,276 --> 01:22:29,945 うわっ! 702 01:22:29,945 --> 01:22:32,247 あ~っ! 703 01:22:43,959 --> 01:22:46,662 うわぁ~! 704 01:22:57,506 --> 01:23:00,242 うわぁ~! 705 01:23:00,242 --> 01:23:02,244 はあっ! 706 01:23:25,467 --> 01:23:27,469 う~っ! 707 01:24:12,581 --> 01:24:14,583 仲麻呂殿…。 708 01:24:18,253 --> 01:24:24,126 汝が友であれば…➡ 709 01:24:24,126 --> 01:24:27,429 勝てたのだが…。 710 01:24:31,266 --> 01:24:33,569 (うめき声) 711 01:24:39,942 --> 01:24:47,249 政… 代わりに やってみるがよい。 712 01:24:51,954 --> 01:24:55,257 うまくゆくかのう? 713 01:25:02,564 --> 01:25:10,372 何をやっても… 大仏には かなわぬが。 714 01:25:18,113 --> 01:25:20,415 (うめき声) 715 01:25:24,820 --> 01:25:27,789 汝なら…。 716 01:25:27,789 --> 01:26:47,502 ♬~ 717 01:27:19,568 --> 01:27:38,920 ♬~ 718 01:27:38,920 --> 01:27:43,258 吉備真備は その後 2代の天皇に仕え➡ 719 01:27:43,258 --> 01:27:51,133 唐で学んだ律令政治の実践を行い 現代に至る国家の礎を築いた。 720 01:27:51,133 --> 01:27:58,273 そして 775年 81歳の天寿を全うした。 721 01:27:58,273 --> 01:28:04,880 その間 大きな戦は皆無であった。 722 01:28:04,880 --> 01:28:55,197 ♬~