1 00:00:01,235 --> 00:00:04,605 山本周五郎を知っていますか? 2 00:00:04,605 --> 00:00:07,908 時代小説の名手です。 3 00:00:11,278 --> 00:00:16,583 描いたのは もがきながらも 懸命に生きる人々。 4 00:00:18,952 --> 00:00:22,623 彼らが教えてくれる 生きる力。 5 00:00:22,623 --> 00:00:25,292 見たら だれかに話したくなる。 6 00:00:25,292 --> 00:00:28,962 笑って泣けて心ぬくもる物語。 7 00:00:28,962 --> 00:00:33,267 きっと 人生のヒントが見つかります。 8 00:00:48,315 --> 00:00:51,985 今日のお話は「はたし状」。 9 00:00:51,985 --> 00:00:57,658 藩士 今泉第二と 友人の藤島英之助➡ 10 00:00:57,658 --> 00:01:01,261 和田しの 八木千久馬。 11 00:01:01,261 --> 00:01:04,164 4人は幼なじみですが➡ 12 00:01:04,164 --> 00:01:10,604 中でも今泉第二と藤島英之助は 大親友でありました。 13 00:01:10,604 --> 00:01:16,476 やがて 第二と しのは 深い仲になり 2人は婚約します。 14 00:01:16,476 --> 00:01:21,615 しかし 参勤交代で 江戸勤めとなった第二のもとに➡ 15 00:01:21,615 --> 00:01:27,487 ある日 一方的な婚約の破棄を伝える 手紙が届きます。 16 00:01:27,487 --> 00:01:31,959 そして この手紙によって 友情は崩れ去り➡ 17 00:01:31,959 --> 00:01:36,263 復讐劇へと発展してゆくのです。 18 00:01:44,538 --> 00:01:47,975 父から届いた その手紙には➡ 19 00:01:47,975 --> 00:01:52,312 婚約破棄の理由は 何も書かれていなかった。 20 00:01:52,312 --> 00:01:55,215 「縁がなかったと思うより しかたがない。➡ 21 00:01:55,215 --> 00:02:00,921 どうか男らしく諦めるように」と 書かれていただけだった。 22 00:02:03,256 --> 00:02:08,962 これは… 何かの間違いではないのか。 23 00:02:11,598 --> 00:02:13,934  回想 (笑い声) 24 00:02:13,934 --> 00:02:20,273 (千久馬)いや~ それにしても 第さん しの殿 本当におめでとう。 25 00:02:20,273 --> 00:02:22,209 (笑い声) 26 00:02:22,209 --> 00:02:25,412 ありがとう。 しかし 婚約をして➡ 27 00:02:25,412 --> 00:02:28,281 すぐに江戸勤めというのは 少し気の毒ではあるがな。 28 00:02:28,281 --> 00:02:31,184 まあ しかたあるまい。 しばらくの辛抱だ。 29 00:02:31,184 --> 00:02:37,624 それにしても 仮祝言の時の しの殿は 見違えるようだった。 30 00:02:37,624 --> 00:02:42,295 幼い頃からのつきあいだが あんなにきれいになっているとは。 31 00:02:42,295 --> 00:02:46,967 私や藤島と違って 第さんには 見る目があったということだな。 32 00:02:46,967 --> 00:02:49,870 (しの)そんな からかわないで下さい。 33 00:02:49,870 --> 00:02:53,306 そういえば 藤島の容体はどうなんだ? 34 00:02:53,306 --> 00:02:57,978 いやいや 心配するほどではない。 軽い風邪だと言っておった。 35 00:02:57,978 --> 00:03:00,881 江戸へたつまえの第さんに うつしてしまっては申し訳ないと➡ 36 00:03:00,881 --> 00:03:04,584 用心したまでのこと。 それならいいが…。 37 00:03:04,584 --> 00:03:07,487 出立前に会えなかったのは残念だな。 38 00:03:07,487 --> 00:03:12,259 私がいない間 しののことを頼もうと思ったのだが…➡ 39 00:03:12,259 --> 00:03:17,130 よろしく伝えておいてくれ。 心配しなくても 私がいるではないか。 40 00:03:17,130 --> 00:03:21,601 お前では少々頼りないからなあ! (笑い声) 41 00:03:21,601 --> 00:03:25,305 (千久馬) 第さんに言われると こたえるな…。 42 00:03:28,475 --> 00:03:35,182 幾たびか しのへ手紙を書きかけたが その度に途中で筆を投げた。 43 00:03:36,950 --> 00:03:43,290 しのは ごく幼い頃から きょうだいのようにつきあってきた。 44 00:03:43,290 --> 00:03:46,193 それが何とも言ってよこさないのは➡ 45 00:03:46,193 --> 00:03:50,197 言ってよこせない事情が あるのに違いない。 46 00:03:53,300 --> 00:04:01,308 こんなふうに思い惑っている時 友人である八木千久馬から手紙が届いた。 47 00:04:07,814 --> 00:04:13,920 手紙には 「しのは近く 藤島英之助と結婚するだろう。➡ 48 00:04:13,920 --> 00:04:19,259 それで万事を察してもらうほかはない」と 書かれていた。 49 00:04:19,259 --> 00:04:25,599 第二は その暗示的な書き方に 強烈な印象を受けた。 50 00:04:25,599 --> 00:04:28,602 藤島が…。 51 00:04:30,270 --> 00:04:34,274 英之助と しのが…。 52 00:04:35,942 --> 00:04:38,278 (英之助)しのを嫁に? 53 00:04:38,278 --> 00:04:43,150 そうだ。 そうしたいと思っているのだが どうだろう? 54 00:04:43,150 --> 00:04:45,619 そうか…。 55 00:04:45,619 --> 00:04:48,288 何だ そんなに意外か? 56 00:04:48,288 --> 00:04:50,624 あっ いや… 第さんと しのは➡ 57 00:04:50,624 --> 00:04:53,293 きょうだいのような関係だと 思っていたのでな➡ 58 00:04:53,293 --> 00:04:57,631 第さんが しのを そのように思っているとは思わなかった。 59 00:04:57,631 --> 00:05:04,437 そうか。 お前は察してくれているものだと 思っていたのだが。 60 00:05:04,437 --> 00:05:08,575 しのには もう伝えたのか? 61 00:05:08,575 --> 00:05:13,914 いや まだだ。 まずは お前に相談してからと思ってな。 62 00:05:13,914 --> 00:05:19,619 江戸へ出立する前に 仮祝言だけでもと 思っているのだが どう思う? 63 00:05:22,255 --> 00:05:24,925 そうか…。 64 00:05:24,925 --> 00:05:27,627 英之助? 65 00:05:29,262 --> 00:05:32,566 私は…。 66 00:05:36,136 --> 00:05:41,274 もちろん賛成だ。 そうか。 67 00:05:41,274 --> 00:05:47,981 第さんと しのなら きっとうまくいく。 何も心配することはない。 68 00:06:08,435 --> 00:06:12,572 例えば 千久馬と そういうことになったとしても➡ 69 00:06:12,572 --> 00:06:18,245 それほどの痛手も受けず もっと楽な気持ちで許せたであろう。 70 00:06:18,245 --> 00:06:25,118 だが 英之助は違う。 英之助だけは そうしてはならぬはずである。 71 00:06:25,118 --> 00:06:31,791 英之助と しのが そうなることは ほとんど裏切りに等しい。 72 00:06:31,791 --> 00:06:36,263 しかも英之助は それが裏切りになることを➡ 73 00:06:36,263 --> 00:06:39,599 知っているはずであった。 74 00:06:39,599 --> 00:06:42,902 英之助…。 75 00:06:53,146 --> 00:07:00,453 第二が江戸から戻ったのは それから3年余りがたった頃であった。 76 00:07:15,235 --> 00:07:18,138 第さん? 77 00:07:18,138 --> 00:07:21,841 第さんじゃないか。 78 00:07:24,577 --> 00:07:29,249 やっぱり 第さんだ! 帰ってきたのか。 79 00:07:29,249 --> 00:07:34,921 話がある。 一度うちに来てくれないか? しのも心配して会いたがっている。 80 00:07:34,921 --> 00:07:37,624 俺には話すことはない。 81 00:07:41,261 --> 00:07:44,164 第さんは もう俺を 信じてくれないかもしれないが➡ 82 00:07:44,164 --> 00:07:47,133 俺は今でも第さんを親友だと思っている。 83 00:07:47,133 --> 00:07:51,271 第さんとの結婚を破るについて しのが どんなに苦しんだか…➡ 84 00:07:51,271 --> 00:07:55,942 俺の立場がどんなだったものか 話しても信じないだろうし➡ 85 00:07:55,942 --> 00:07:58,645 話したくもない。 86 00:08:00,213 --> 00:08:06,886 だが… 一人の女のために 20年の友情が➡ 87 00:08:06,886 --> 00:08:12,225 こんなにも もろく壊れてしまって いいのだろうか。 88 00:08:12,225 --> 00:08:16,563 時によれば…➡ 89 00:08:16,563 --> 00:08:22,435 血を分けた兄弟でも 殺し合うことができる。 90 00:08:22,435 --> 00:08:34,581 ♬~ 91 00:08:34,581 --> 00:08:38,251 (千久馬) いや~ 本当によく帰ってきてくれた。 92 00:08:38,251 --> 00:08:41,588 何も連絡がないので このまま 国には戻らないのではないかと➡ 93 00:08:41,588 --> 00:08:44,257 心配しておったのだ。 94 00:08:44,257 --> 00:08:48,128 まあ 帰ってきたくない気持ちも 分かるがな。 95 00:08:48,128 --> 00:08:51,931 帰る途中 英之助に会った。 96 00:08:51,931 --> 00:08:57,604 英之助に? …で 何か言っておったか? 97 00:08:57,604 --> 00:09:03,410 俺は今でも親友だと思っている そう言っておった。 98 00:09:03,410 --> 00:09:06,413 全く耳を疑った。 99 00:09:06,413 --> 00:09:12,552 そうか。 20年の友情を壊したのは あいつだ。 100 00:09:12,552 --> 00:09:19,893 なのに 今でも親友などと口にするとは。 101 00:09:19,893 --> 00:09:25,231 第さんが江戸へ行っている間に 英之助は随分と変わってしまった。 102 00:09:25,231 --> 00:09:30,236 特に重役に取り入って 今の職に就いてからは…。 103 00:09:33,573 --> 00:09:39,446 第さん こんなことは言いたくないのだが➡ 104 00:09:39,446 --> 00:09:43,583 英之助には気を付けた方がいい。 105 00:09:43,583 --> 00:09:45,919 なぜだ? 106 00:09:45,919 --> 00:09:51,591 自分の幸福のために 目の上のこぶは遠ざけておきたいものだ。 107 00:09:51,591 --> 00:09:56,262 どんな幸福も 決して永遠ではない。 108 00:09:56,262 --> 00:10:02,135 人間は 不幸や悲嘆から逃れることはできん。 109 00:10:02,135 --> 00:10:12,278 ♬~ 110 00:10:12,278 --> 00:10:16,950 すまないが しばらく一人にしてくれ。 111 00:10:16,950 --> 00:10:29,963 ♬~ 112 00:10:37,637 --> 00:10:42,976 第二は 暇があると 城下の外へ歩きに出た。 113 00:10:42,976 --> 00:10:48,648 北東と西に山を回し 南に平野の開けた地形であるが➡ 114 00:10:48,648 --> 00:10:54,320 彼は 北側の山の裾を歩くのが 好きであった。 115 00:10:54,320 --> 00:10:58,191 丘の上を行く時は眺めがよかった。 116 00:10:58,191 --> 00:11:03,496 その眺めの中にいると 心が安らかに落ち着いた。 117 00:11:05,265 --> 00:11:11,604 その眺めは 第二を慰めてくれるようであった。 118 00:11:11,604 --> 00:11:23,316 ♬~ 119 00:11:34,294 --> 00:11:37,197 ひと言だけ言いに来た。 120 00:11:37,197 --> 00:11:48,308 ♬~ 121 00:11:48,308 --> 00:11:54,981 陰で人を誹謗するのは見苦しい。 文句があるなら じかに言うべきだ。 122 00:11:54,981 --> 00:12:01,254 断っておくが 俺は決闘を申し込まれて 逃げるほど 腰抜けではない。 123 00:12:01,254 --> 00:12:05,258 誹謗するとは誰のことだ? 124 00:12:12,265 --> 00:12:18,271 裏切り者という言葉は 最上の侮蔑だ。 125 00:12:21,941 --> 00:12:28,815 よく分からんが お前には その覚えがあるはずだ。 126 00:12:28,815 --> 00:12:34,287 誹謗とは ないことを曲げて そしるのを言う。 127 00:12:34,287 --> 00:12:39,292 その事実があるとすれば それは誹謗ではない。 128 00:12:46,299 --> 00:12:49,636 いい気なものだ。 129 00:12:49,636 --> 00:12:53,640 とにかく忠告はしたぞ。 130 00:13:03,182 --> 00:13:07,487 そうか 英之助がそんなことを。 131 00:13:10,923 --> 00:13:14,260 …で お前はどうするんだ? 132 00:13:14,260 --> 00:13:16,929 何がだ? 133 00:13:16,929 --> 00:13:19,399 はたし合いだ。 134 00:13:19,399 --> 00:13:21,934 はたし合い? 135 00:13:21,934 --> 00:13:25,805 英之助と はたし合いをするのでは ないのか? 136 00:13:25,805 --> 00:13:31,611 彼は 俺に はたし合いを申し込むつもりなのか? 137 00:13:31,611 --> 00:13:39,285 いや 彼には それはできない。 彼は受ける立場にいるのだから。 138 00:13:39,285 --> 00:13:45,625 では 俺に申し込めというのか? 139 00:13:45,625 --> 00:13:50,963 英之助のねらいは そうであろう。 既に 噂になっておる。 140 00:13:50,963 --> 00:13:54,834 まあ それも 英之助が吹聴したのであろうがな。 141 00:13:54,834 --> 00:13:58,638 英之助が? はたし合いという名目で➡ 142 00:13:58,638 --> 00:14:02,241 第さんを堂々と排除しようというわけだ。 143 00:14:02,241 --> 00:14:08,548 第さんが逃げられないように 噂まで振りまいて… 全く悪辣なやり方だ。 144 00:14:13,586 --> 00:14:17,924 言っておくが 俺は はたし合いには反対だ。 145 00:14:17,924 --> 00:14:25,231 反対だが このまま放っておけば 何と言われるか…。 146 00:14:33,940 --> 00:14:36,843 分かった。 147 00:14:36,843 --> 00:14:43,616 すまないが はたし状を書くから 少し待っていてくれないか。 148 00:14:43,616 --> 00:14:46,953 彼に届けてもらいたい。 149 00:14:46,953 --> 00:14:50,289 そうか 分かった。 150 00:14:50,289 --> 00:14:54,293 俺で役に立つことなら何でもするよ。 151 00:14:59,298 --> 00:15:02,568 気持ちは落ち着いていた。 152 00:15:02,568 --> 00:15:08,441 体中に力の充実が感じられ 頭も快く緊張して➡ 153 00:15:08,441 --> 00:15:15,581 随分 久方ぶりに 生きているという 現実感のある時間を過ごした。 154 00:15:15,581 --> 00:15:22,922 丸3年以上も彼を取り巻き 押さえつけ 閉じ込めていたもの➡ 155 00:15:22,922 --> 00:15:27,593 どす黒く重苦しい壁のようなものが➡ 156 00:15:27,593 --> 00:15:31,597 はたし状を書いた刹那に崩れた。 157 00:15:33,266 --> 00:15:37,603 音が聞こえるかと思うほど 見事に崩れ去って➡ 158 00:15:37,603 --> 00:15:40,940 にわかに 明るい光がさし込み➡ 159 00:15:40,940 --> 00:15:47,647 新しい香ばしい空気が 流れみなぎるように思えた。 160 00:15:56,289 --> 00:15:58,591 エイ! 161 00:16:04,096 --> 00:16:08,100 (荒い息遣い) 162 00:16:39,832 --> 00:16:42,835 失礼します。 163 00:16:45,605 --> 00:16:49,942 藤島の奥方様が お見えになっております。 164 00:16:49,942 --> 00:16:52,278 しのが? 165 00:16:52,278 --> 00:16:55,615 どうしても若旦那様にお会いしたいと おっしゃるので➡ 166 00:16:55,615 --> 00:16:59,619 奥様にお伺いして 客間にお通ししております。 167 00:17:25,912 --> 00:17:29,215 お久しゅうございます。 168 00:17:41,260 --> 00:17:44,964 用件だけ聞きましょう。 169 00:17:53,272 --> 00:17:57,576 これを お返しいたします。 170 00:17:59,612 --> 00:18:04,450 それは 藤島の望みですか? 171 00:18:04,450 --> 00:18:10,890 いいえ 私がお返しするんです。 172 00:18:10,890 --> 00:18:14,560 どうしてですか? 173 00:18:14,560 --> 00:18:18,898 あなたは間違っていらっしゃるんです。 174 00:18:18,898 --> 00:18:24,570 あなたは藤島に はたし状など送ることはできません。 175 00:18:24,570 --> 00:18:29,442 そんなことは 決しておできになれないはずです。 176 00:18:29,442 --> 00:18:35,214 私は こ… これ以上なお➡ 177 00:18:35,214 --> 00:18:38,584 不当な侮辱に耐え忍んでゆかなければ ならないんですか! 178 00:18:38,584 --> 00:18:44,590 藤島は 侮辱を受けなかったでしょうか? 179 00:18:46,258 --> 00:18:52,598 あなたが口にした ひどい陰口や 根も葉もない そしりを➡ 180 00:18:52,598 --> 00:18:56,936 藤島は何も言わずに我慢していたのです。 181 00:18:56,936 --> 00:19:02,208 私が? 私が何を言ったというんですか? 182 00:19:02,208 --> 00:19:06,078 何をですって? 183 00:19:06,078 --> 00:19:09,548 何を言ったかとおっしゃるんですか!? 184 00:19:09,548 --> 00:19:13,886 ええ そうです。 私には全く身に覚えがございません。 185 00:19:13,886 --> 00:19:21,560 それに はたし合いを望んでいるのは 英之助の方ではございませんか! 186 00:19:21,560 --> 00:19:24,463 誰が そんなことを…? 187 00:19:24,463 --> 00:19:30,903 はたし合いを名目に 英之助が私を排除しようとしていると➡ 188 00:19:30,903 --> 00:19:34,607 千久馬が そう申しておりました。 189 00:19:40,246 --> 00:19:43,549 千久馬様が…。 190 00:19:45,117 --> 00:19:48,921 そうでしたのね…。 191 00:19:48,921 --> 00:19:52,591 全て分かりました。 192 00:19:52,591 --> 00:19:58,898 どういうことですか? 何が分かったというんですか? 193 00:20:05,171 --> 00:20:11,277 まさか 千久馬が仕組んだと言うんじゃ ないでしょうね? 194 00:20:11,277 --> 00:20:14,580 あの人です。 195 00:20:17,149 --> 00:20:21,921 みんな あの人がしたことなんです。 196 00:20:21,921 --> 00:20:25,291 私は信じません。 197 00:20:25,291 --> 00:20:29,295 彼に どうして そんな必要があるんですか!? 198 00:20:32,965 --> 00:20:38,971 申し上げますわ… みんな。 199 00:20:41,640 --> 00:20:48,347 申し上げなければ 分かって頂けないでしょうから。 200 00:20:52,985 --> 00:20:59,325 その明かりを もう少し暗くして下さいまし。 201 00:20:59,325 --> 00:21:22,281 ♬~ 202 00:21:22,281 --> 00:21:28,621 あなたが江戸へおたちになった 秋のことです。➡ 203 00:21:28,621 --> 00:21:36,295 私は 安楽寺の裏山に 山菜を採りに行きました。 204 00:21:36,295 --> 00:21:38,964 (千久馬)しの殿! 205 00:21:38,964 --> 00:21:41,667 千久馬様。 206 00:21:43,636 --> 00:21:48,974 どちらに行かれるんですか? ちょっと裏山まで山菜を採りに。 207 00:21:48,974 --> 00:21:52,311 お一人でですか? ええ。 208 00:21:52,311 --> 00:21:58,984 そうですか…。 では 私も手伝います。 209 00:21:58,984 --> 00:22:01,587 しかし…。 210 00:22:01,587 --> 00:22:06,458 遠慮はいりません。 第さんに 留守中の世話を頼まれてますからね。 211 00:22:06,458 --> 00:22:09,461 では 行きましょう。 212 00:22:12,932 --> 00:22:15,935 (千久馬)さあ! 213 00:22:21,273 --> 00:22:30,282 (しの)そう言って あの人は 裏山までついてきました…。➡ 214 00:22:30,282 --> 00:22:34,954 そこで…➡ 215 00:22:34,954 --> 00:22:40,960 私は あの人に辱められたのです。 216 00:22:48,300 --> 00:22:54,306 まさか 千久馬が…? 217 00:22:56,175 --> 00:23:01,580 千久馬様は こうなった以上は責任を取る➡ 218 00:23:01,580 --> 00:23:06,252 自分が改めて結婚を申し込むつもりだと おっしゃいました。 219 00:23:06,252 --> 00:23:13,259 しかし そのような申し出 受けることなど できるはずがありません。 220 00:23:14,927 --> 00:23:22,635 あんな辱めを受けては あなたの妻にもなれません。 221 00:23:25,271 --> 00:23:29,608 こうなった以上は自害するしかない…➡ 222 00:23:29,608 --> 00:23:33,912 そう思って私は 川へと向かいました。 223 00:23:36,282 --> 00:23:43,289 その時 藤島に助けられたのです。 224 00:23:47,626 --> 00:23:55,968 生きる力を失っていた私を 藤島は必死に励ましてくれました。 225 00:23:55,968 --> 00:24:01,573 ただ怪我をしただけだ 自分が その怪我を治そう。 226 00:24:01,573 --> 00:24:04,243 そう申しました。 227 00:24:04,243 --> 00:24:11,116 そして 自分を医者だと思って嫁に来い。 228 00:24:11,116 --> 00:24:15,421 そう言って下さったのです。 229 00:24:21,260 --> 00:24:29,134 ただ藤島は あなたのことを 何よりも心配しておりました。 230 00:24:29,134 --> 00:24:37,142 江戸にいる あなたのことを思って ずっと苦しんでおりました。 231 00:24:39,278 --> 00:24:45,951 藤島にとっては あなたとの友情が破れることが➡ 232 00:24:45,951 --> 00:24:49,655 一番つらいことだったのです! 233 00:24:53,292 --> 00:24:55,961 (障子の開閉音) 234 00:24:55,961 --> 00:25:10,242 ♬~ 235 00:25:10,242 --> 00:25:15,114 貴様は愚かなやつだ 第二! 236 00:25:15,114 --> 00:25:17,583 (すすり泣き) 237 00:25:17,583 --> 00:25:23,255 なぜ 英之助の気持ちが 分かってやれなかったんだ! 238 00:25:23,255 --> 00:25:31,597 そんなにもバカだったのか。 そんなにも…! 239 00:25:31,597 --> 00:25:39,271 第さんと しのなら きっとうまくいく。 何も心配することはない。 240 00:25:39,271 --> 00:25:51,850 ♬~ 241 00:25:51,850 --> 00:25:55,154 ああ… あ~っ! 242 00:26:22,815 --> 00:26:28,120 あんまり遅いんで これを迎えに来たんだ。 243 00:26:50,876 --> 00:26:55,280 すまなかった。 244 00:26:55,280 --> 00:27:02,287 お前には 随分 苦労をかけてしまったようだ。 245 00:27:11,563 --> 00:27:15,567 分かってくれれば それでいい。 246 00:27:21,240 --> 00:27:29,948 ああ… ようやく 帰ってきたような気がするよ。 247 00:27:32,584 --> 00:27:36,255 おかえり 第さん。 248 00:27:36,255 --> 00:27:39,958 よく戻ってきてくれた。 249 00:27:46,899 --> 00:27:56,208 しかし… まさか これが救いの神になるとはな。 250 00:28:00,212 --> 00:28:05,918 そうだな いかにも皮肉すぎる。 251 00:28:09,888 --> 00:28:15,761 (笑い声) 252 00:28:15,761 --> 00:28:43,255 ♬~ 253 00:28:43,255 --> 00:28:49,595 独りぼっちの若殿と まぬけな泥棒の 奇妙な友情の物語。 254 00:28:49,595 --> 00:28:53,899 「だれかに話したくなる 山本周五郎日替わりドラマ」。