1 00:00:01,235 --> 00:00:04,605 山本周五郎を知っていますか? 2 00:00:04,605 --> 00:00:07,908 時代小説の名手です。 3 00:00:11,278 --> 00:00:16,583 描いたのは もがきながらも 懸命に生きる人々。 4 00:00:18,952 --> 00:00:22,623 彼らが教えてくれる 生きる力。 5 00:00:22,623 --> 00:00:25,292 見たら だれかに話したくなる。 6 00:00:25,292 --> 00:00:28,962 笑って泣けて心ぬくもる物語。 7 00:00:28,962 --> 00:00:33,267 きっと 人生のヒントが見つかります。 8 00:00:48,315 --> 00:00:52,019 今日のお話は「晩秋」。 9 00:01:04,765 --> 00:01:07,267 若くして両親を亡くした津留は➡ 10 00:01:07,267 --> 00:01:13,941 ある時 今や罪人となった 進藤主計の身の回りの世話をするように➡ 11 00:01:13,941 --> 00:01:15,876 申しつけられます。 12 00:01:15,876 --> 00:01:19,112 しかし その進藤主計とは➡ 13 00:01:19,112 --> 00:01:25,619 津留の父を切腹に追いやった 張本人でありました。 14 00:01:25,619 --> 00:01:29,957 憎い仇と二人 同じ屋根の下。 15 00:01:29,957 --> 00:01:36,163 津留は 父の仇を討つことができるのか。 16 00:01:39,433 --> 00:01:43,737 (障子の開閉音) 17 00:01:56,016 --> 00:01:58,852 (外記)そなたが津留というのだな? 18 00:01:58,852 --> 00:02:01,388 はい。 19 00:02:01,388 --> 00:02:04,758 既に話は聞いているかもしれんが➡ 20 00:02:04,758 --> 00:02:10,263 万勝寺様の御用人だった進藤主計殿が この屋敷にやって来る。 21 00:02:10,263 --> 00:02:15,602 進藤殿は 政に不正があった疑いをかけられ➡ 22 00:02:15,602 --> 00:02:20,474 そのお調べのために 極秘で送られてくるのだ。 23 00:02:20,474 --> 00:02:26,947 そなたには 進藤殿の身の回りの世話を してもらいたい。 24 00:02:26,947 --> 00:02:32,753 疑いをかけられているとはいえ 相手は藩の要人であった方。➡ 25 00:02:32,753 --> 00:02:36,623 決して粗相のないように。 はい。 26 00:02:36,623 --> 00:02:42,963 それと 今後 この屋敷の中で行われることは全て➡ 27 00:02:42,963 --> 00:02:47,134 聞いてもならず 見てもならない。 28 00:02:47,134 --> 00:02:53,006 目も耳もなくした心でいなければならぬ。 29 00:02:53,006 --> 00:02:55,008 よいな? 30 00:02:57,444 --> 00:02:59,446 はい。 31 00:03:03,750 --> 00:03:09,923 朝から降りだした雨が 夜に入ると 風さえ加わって➡ 32 00:03:09,923 --> 00:03:17,631 肌寒い しみいるような音を立てては しきりに庇を打つのが聞こえた。 33 00:03:19,266 --> 00:03:23,136 その雨の中を 人目を忍ぶように➡ 34 00:03:23,136 --> 00:03:29,342 進藤主計の乗り物が この屋敷へ到着した。 35 00:03:30,977 --> 00:03:38,618 津留は 高ぶってくる心を抑えながら じっと耳を澄ましていたが➡ 36 00:03:38,618 --> 00:03:41,655 僅かに人の出入りする気配と➡ 37 00:03:41,655 --> 00:03:46,860 はばかるような きぬ擦れの音を 聞いたばかりだった。 38 00:03:50,630 --> 00:03:59,940 そして やがて 二人の人間の足音が 廊下を通って 奥の間へ入った。 39 00:04:01,908 --> 00:04:03,844 (鈴の音) 40 00:04:03,844 --> 00:04:06,646 ⚟失礼します。 うん。 41 00:04:09,649 --> 00:04:11,918 お呼びでございましょうか? 42 00:04:11,918 --> 00:04:20,127 この者が お手回りの御用を勤めます。 名は 津留と申します。 43 00:04:25,098 --> 00:04:27,300 津留と申します。 44 00:04:34,274 --> 00:04:43,984 ♬~ 45 00:04:43,984 --> 00:04:45,986 お茶を おいれいたしましょうか? 46 00:04:45,986 --> 00:04:49,489 (外記) 今日は もうよい。 下がって休んでおれ。 47 00:04:51,291 --> 00:04:53,226 はい。 48 00:04:53,226 --> 00:05:18,518 ♬~ 49 00:05:25,091 --> 00:05:31,598  回想  (母)津留 これをあなたに授けます。 50 00:05:31,598 --> 00:05:33,633 これは…。 51 00:05:33,633 --> 00:05:43,143 父上は 進藤主計を刺そうとして打ち損じ 切腹を命じられました。 52 00:05:44,945 --> 00:05:51,618 しかし それは 進藤主計の不正をただすため➡ 53 00:05:51,618 --> 00:05:58,124 重税に苦しむ領内の民たちを 助けるためにしたことです。 54 00:05:58,124 --> 00:06:00,093 はい。 55 00:06:00,093 --> 00:06:02,963 もとより 死は覚悟の上。 56 00:06:02,963 --> 00:06:09,769 しかし 主計を討ち漏らして死ぬのは無念。 57 00:06:09,769 --> 00:06:16,076 父上は 何度も そうおっしゃってました。 58 00:06:18,445 --> 00:06:27,254 私が その品で 父上の遺志を継ごうと そう思っていたのですが➡ 59 00:06:27,254 --> 00:06:33,593 どうやら 私は もう長くはなさそうです。 60 00:06:33,593 --> 00:06:36,630 そんな…。 61 00:06:36,630 --> 00:06:44,271 その懐剣には 母の心が籠もっています。 62 00:06:44,271 --> 00:06:50,410 ♬~ 63 00:06:50,410 --> 00:06:55,282 懐剣を授かってから程なくして 母は病死。 64 00:06:55,282 --> 00:07:04,357 津留は 母の心の籠もっている その懐剣で いつか父の仇を討とうと➡ 65 00:07:04,357 --> 00:07:07,861 自分に誓ったのである。 66 00:07:14,567 --> 00:07:24,577 父上様 母上様 いよいよ時が参りました。 67 00:07:24,577 --> 00:07:29,582 津留の為すことを見ていて下さいまし。 68 00:07:39,125 --> 00:07:43,964 次の日から 新しい生活が始まった。 69 00:07:43,964 --> 00:07:48,168 失礼します。 お茶をお持ちしました。 70 00:07:51,271 --> 00:07:57,610 主計の身の回りは全て 津留一人の手に任されていた。 71 00:07:57,610 --> 00:08:02,349 そう言っても 格別忙しいわけではなかった。 72 00:08:02,349 --> 00:08:07,220 食事の給仕と寝床の世話くらいが 定まったもので➡ 73 00:08:07,220 --> 00:08:12,993 あとのことは 大抵 主計が自分でした。 74 00:08:12,993 --> 00:08:17,731 主計は いつも 机の上に大量の書類を置いて➡ 75 00:08:17,731 --> 00:08:22,235 せっせと 何か書き物をしていた。 76 00:08:22,235 --> 00:08:28,742 庭へ出ることもなく 手足を伸ばしていることもなかった。 77 00:09:02,208 --> 00:10:23,289 ♬~ 78 00:10:23,289 --> 00:10:25,291 (主計)何か用か? 79 00:10:27,160 --> 00:10:29,963 あっ あの… 明かりが見えましたので➡ 80 00:10:29,963 --> 00:10:33,433 何か お手伝いすることはないかと 思いまして。 81 00:10:33,433 --> 00:10:39,139 こちらで申しつける以外 気を遣うには及ばん。 82 00:10:39,139 --> 00:10:41,174 はい。 83 00:10:41,174 --> 00:11:00,393 ♬~ 84 00:11:00,393 --> 00:11:02,929 焦ってはいけない。 85 00:11:02,929 --> 00:11:08,268 今はまだ 自分の意思を 悟られないようにしなければ。 86 00:11:08,268 --> 00:11:13,473 津留は そう自分に言い聞かせた。 87 00:11:20,847 --> 00:11:26,619 津留は 機会さえあれば いつでも父の仇を討てるように➡ 88 00:11:26,619 --> 00:11:30,490 常に懐剣を忍ばせていた。 89 00:11:30,490 --> 00:11:38,998 しかし 主計の立ち振る舞いには 全くその隙がないのである。 90 00:11:41,634 --> 00:11:47,507 未明から夜半過ぎまで 休みなしに書き物を続ける。 91 00:11:47,507 --> 00:11:55,315 そのひたむきな精魂を傾ける姿には 単に隙がないばかりではなく➡ 92 00:11:55,315 --> 00:12:02,589 どこかに 強く人の心を打つものさえあった。 93 00:12:02,589 --> 00:12:13,600 ♬~ 94 00:12:13,600 --> 00:12:18,104 着る物の粗末なことも 食事の簡素なことも➡ 95 00:12:18,104 --> 00:12:21,140 驚くほどだった。 96 00:12:21,140 --> 00:12:26,613 食糧には 卵とか 魚鳥の肉を添えるようにしていたが➡ 97 00:12:26,613 --> 00:12:32,785 主計は 決して そういうものに箸をつけなかった。 98 00:12:32,785 --> 00:12:36,956 また 初めは 飯も白いものを出していたが➡ 99 00:12:36,956 --> 00:12:41,828 麦を入れるようにと言われて 麦飯にした。 100 00:12:41,828 --> 00:12:48,968 それも もう少し麦を多くという注文が 幾たびもあって➡ 101 00:12:48,968 --> 00:12:57,477 ついには 貧しい者が食べるような 黒いものになってしまった。 102 00:13:01,547 --> 00:13:03,850 ⚟失礼します。 103 00:13:06,386 --> 00:13:10,690 お茶をお持ちしました。 うん。 104 00:13:36,949 --> 00:13:41,454 私がいたしましょう。 すまん。 105 00:13:43,289 --> 00:13:49,095 こちらの ほつれでございますね。 ああ。 106 00:13:49,095 --> 00:13:53,299 御用がある時には 遠慮なくおっしゃって下さい。 107 00:13:53,299 --> 00:14:01,107 大抵のことは一人でできるのだが 少し疲れているのかもしれん。 108 00:14:04,377 --> 00:14:07,080 はあ…。 109 00:14:10,750 --> 00:14:17,390 昨夜の風で 随分葉が落ちてしまった。 110 00:14:17,390 --> 00:14:21,094 あれは 何という木か知っているか? 111 00:14:22,762 --> 00:14:24,697 どれでございましょう? 112 00:14:24,697 --> 00:14:28,935 あの向こうに見える大きな木だ。 113 00:14:28,935 --> 00:14:34,607 あれは 確か クヌギだと存じますが。 114 00:14:34,607 --> 00:14:37,810 そうか。 115 00:14:39,479 --> 00:14:42,782 あれが クヌギか。 116 00:14:47,954 --> 00:14:53,826 木もよく見るし クヌギという名も知っていながら➡ 117 00:14:53,826 --> 00:15:03,369 あの木がクヌギだということを この年になるまで知らずに過ごしてきた。 118 00:15:03,369 --> 00:15:11,577 この年になるまで。 ばかなことだ。 119 00:15:13,579 --> 00:15:20,086 終わりのひと言は 自ら嘲るような調子だった。 120 00:15:20,086 --> 00:15:25,391 それが鋭く津留の印象に残った。 121 00:15:35,635 --> 00:15:40,940 私欲を満たすために 藩の政をほしいままにし➡ 122 00:15:40,940 --> 00:15:48,681 邪魔する者があれば 容赦なく蹴落としてきた人だろうか。 123 00:15:48,681 --> 00:15:55,888 津留の心には いつしか そういう迷いが生じていた。 124 00:16:07,567 --> 00:16:10,903 今夜は 一段と冷え込みそうです。 125 00:16:10,903 --> 00:16:15,074 風呂が沸いておりますので どうぞ冷めないうちに。 126 00:16:15,074 --> 00:16:18,077 うん… そうか。 127 00:16:37,463 --> 00:16:48,608 ♬~ 128 00:16:48,608 --> 00:16:50,610 まさか! 129 00:16:54,780 --> 00:16:59,986 これは… お裁きのための調書。 130 00:17:04,891 --> 00:17:07,927  回想 今後 この屋敷の中で 行われることは全て➡ 131 00:17:07,927 --> 00:17:12,231 聞いてもならず 見てもならない。 132 00:17:12,231 --> 00:17:19,005 目も耳もなくした心でいなければならぬ。 133 00:17:19,005 --> 00:17:25,311 水野様がおっしゃってたのは このことだったんだ。 134 00:17:27,380 --> 00:17:31,584 調書を自ら書くなど 許されるはずがない。 135 00:17:31,584 --> 00:17:36,889 あの男は また不正を働いているのだ。 136 00:17:39,759 --> 00:17:44,931 裁かれる身でありながら その裁きの指図をするほど➡ 137 00:17:44,931 --> 00:17:51,704 進藤主計の権力は 今もなお大きいのだ。 138 00:17:51,704 --> 00:18:01,013 その事の重大さに 津留は ただ 寒気だつような気持ちだった。 139 00:18:05,251 --> 00:18:10,957 父上様… 母上様…。 140 00:18:13,359 --> 00:18:21,367 そして 霜月の半ば ある凍てる夜のこと。 141 00:18:26,572 --> 00:18:29,575 ⚟(外記)私は反対です! 142 00:18:32,745 --> 00:18:39,919 (外記)これは あまりにひどすぎます! 私には承服できません! 143 00:18:39,919 --> 00:18:43,756 そんな弱音は聞きたくない。 144 00:18:43,756 --> 00:18:49,261 しかし… これは事実とは言えません。 145 00:18:51,497 --> 00:18:55,501 どうか いま一度 お考え直し下さい。 146 00:18:57,303 --> 00:19:02,808 やはり あの男 調書の改ざんを…。 147 00:19:04,877 --> 00:19:09,382 事はもう 定まっているのだ。 148 00:19:11,050 --> 00:19:20,059 しかし… これでは まるで 自殺をするも同様ではございませんか。 149 00:19:20,059 --> 00:19:22,061 自殺? 150 00:19:26,832 --> 00:19:33,372 何故 あなた様は ご自分が不利になるような調書ばかりを➡ 151 00:19:33,372 --> 00:19:36,075 書かれるのですか!? 152 00:19:36,075 --> 00:19:39,378 これは お裁きとは言えません。 153 00:19:39,378 --> 00:19:43,916 いや これが裁きだ。 154 00:19:43,916 --> 00:19:49,789 この進藤主計を裁くには ここまでやる必要があるのだ。 155 00:19:49,789 --> 00:19:59,098 家中の者にも 領民にも 随分無理な 時には過酷だと思う政さえ執った。 156 00:19:59,098 --> 00:20:02,601 その報いを受けるのは当然だ。 157 00:20:02,601 --> 00:20:07,773 しかし 全ては藩礎確立のため。 158 00:20:07,773 --> 00:20:13,946 あなた様は 己を犠牲にし 全てをなげうって藩に尽くされました! 159 00:20:13,946 --> 00:20:20,419 それを裁くなど 私にはできません。 160 00:20:20,419 --> 00:20:22,488 ばかなことを申すな。 161 00:20:22,488 --> 00:20:27,193 藩礎確立というのは 申訳にすぎない。 162 00:20:27,193 --> 00:20:31,964 それが いかに 抜き差しならぬものだったにせよ➡ 163 00:20:31,964 --> 00:20:39,438 その理由によって行われた政の過誤が 許される道理はないのだ。 164 00:20:39,438 --> 00:20:47,980 しかし… 果たして これが過誤だったでしょうか? 165 00:20:47,980 --> 00:20:54,854 領民に重税を課すなど 政の最悪なるものだ。 166 00:20:54,854 --> 00:21:02,394 その一つをとっても この進藤主計の罪は 死に当たるだろう。 167 00:21:02,394 --> 00:21:09,768 そして これは 初めから覚悟していたことなのだ。 168 00:21:09,768 --> 00:21:16,942 ♬~ 169 00:21:16,942 --> 00:21:22,615 自分は 冷酷で情けを知らぬ人間だと言われた。 170 00:21:22,615 --> 00:21:29,955 専制 暴戻と罵られたが おかげで かえって仕事はしやすかった。 171 00:21:29,955 --> 00:21:33,292 そういう名が付けば付くだけ 無理が押せるし➡ 172 00:21:33,292 --> 00:21:38,964 責任を ほかの者に分担させる必要もなかった。 173 00:21:38,964 --> 00:21:44,136 だが もはや 岡崎藩の基礎は確立した。 174 00:21:44,136 --> 00:21:49,942 領民にも 耐え忍んでもらったものを返す時が来た。 175 00:21:49,942 --> 00:21:55,147 新しい藩政が始まるのだ。 176 00:21:55,147 --> 00:22:08,093 だが 残念なことは… 家中の者から幾人か 犠牲者を出したことだ。 177 00:22:08,093 --> 00:22:15,267 領民を思い 命をかけて行動した者たちに➡ 178 00:22:15,267 --> 00:22:20,272 黙って 死んでもらわなければならなかった。 179 00:22:22,775 --> 00:22:30,783 ⚟このことだけは 耐えがたいものだった…。 180 00:22:40,292 --> 00:22:53,305 できることなら その者たちと 思う存分 語り合ってみたかった…。 181 00:22:57,309 --> 00:22:59,311 ⚟(物音) 182 00:23:00,913 --> 00:23:03,582 何事だ! ⚟申し訳ございません。 183 00:23:03,582 --> 00:23:06,385 ⚟すぐに代わりのお茶を ご用意いたします。 184 00:23:26,405 --> 00:23:40,719 父上様… 母上様… お聞きになりましたか。 185 00:23:47,293 --> 00:23:53,966 父上様… 母上様…。 186 00:23:53,966 --> 00:24:00,472 (泣き声) 187 00:24:10,749 --> 00:24:13,052 ⚟失礼します。 188 00:24:19,758 --> 00:24:26,265 朝になってみると 奥の間は すっかり片づいていた。 189 00:24:26,265 --> 00:24:32,938 ずっと書き続けていた調書も おびただしい資料の山もなく➡ 190 00:24:32,938 --> 00:24:37,776 机は 壁際に押しつけてあった。 191 00:24:37,776 --> 00:24:43,582 お茶をお持ちしました。 うん。 192 00:24:43,582 --> 00:24:54,293 ♬~ 193 00:24:54,293 --> 00:24:59,798 私が お繕いいたしましょうか? いや もう済んだ。 194 00:25:02,735 --> 00:25:07,039 では 少し肩をおもみいたしましょう。 195 00:25:10,909 --> 00:25:16,382 そうか。 もんでくれるか。 196 00:25:16,382 --> 00:25:20,085 不慣れではございますが。 197 00:25:29,762 --> 00:25:34,767 明日 江戸へ送られることになった。 198 00:25:37,936 --> 00:25:42,775 お前には 随分世話になった。 199 00:25:42,775 --> 00:25:45,077 いえ。 200 00:25:49,281 --> 00:25:52,785 わしは お前を知っている。 201 00:25:52,785 --> 00:25:56,655 お前が誰の娘かということも。 202 00:25:56,655 --> 00:26:01,860 懐剣を離さないことも よく知っている。 203 00:26:05,731 --> 00:26:11,070 世話人に お前を選んだのは わし自身だ。 204 00:26:11,070 --> 00:26:18,944 できることなら 責任を果たした上で お前に討たれてやるつもりだった。 205 00:26:18,944 --> 00:26:25,250 しかし 今日は 懐剣を持っていないようではないか。 206 00:26:29,254 --> 00:26:36,995 私 昨夜のお言葉をお聞きしました。 207 00:26:36,995 --> 00:26:43,302 もう… 懐剣は必要ございません。 208 00:26:47,639 --> 00:26:55,647 それで 死んだ父が承知すると思うか。 209 00:27:00,219 --> 00:27:02,221 はい。 210 00:27:04,890 --> 00:27:17,369 父が死んだのも あなた様が生きたのも 同じ道であったと…➡ 211 00:27:17,369 --> 00:27:23,575 そう信じております。 212 00:27:23,575 --> 00:27:44,263 ♬~ 213 00:27:44,263 --> 00:27:48,600 心の荷を一つおろした。 214 00:27:48,600 --> 00:27:53,405 最も重い荷の一つであった。 215 00:27:53,405 --> 00:28:02,114 ♬~ 216 00:28:02,114 --> 00:28:09,855 お前のおかげで 肩が少し楽になった。 217 00:28:09,855 --> 00:28:18,163 ♬~ 218 00:28:19,898 --> 00:28:43,121 ♬~ 219 00:28:43,121 --> 00:28:47,759 女嫌いの若侍の前に 突然現れた美しい侍女。 220 00:28:47,759 --> 00:28:50,395 果たして 二人の恋の行方は? 221 00:28:50,395 --> 00:28:54,199 「だれかに話したくなる 山本周五郎日替わりドラマ」。