1 00:00:01,070 --> 00:00:08,070 ♬〜 2 00:00:10,530 --> 00:00:14,430 私は59歳のカメラマン。 3 00:00:16,900 --> 00:00:21,640 定年が目前に迫っている。 4 00:00:21,640 --> 00:00:26,590 おびえる日々を送っていた。 逃れようのない老いに 5 00:00:26,590 --> 00:00:30,000 ♬〜 6 00:00:30,000 --> 00:00:33,070 ♬〜 7 00:00:33,070 --> 00:00:37,970 そんな私に思いも寄らぬことが起きた。 8 00:00:41,770 --> 00:00:46,170 公園で宇宙人に出会ったのである。 9 00:00:53,330 --> 00:00:56,530 彼は私を待っている。 10 00:01:17,900 --> 00:01:23,000 ♬〜 11 00:01:36,300 --> 00:01:41,800 始まったのである。 私と宇宙人クスとの日々が 12 00:01:51,640 --> 00:01:55,740 ♬〜 13 00:02:00,400 --> 00:02:07,900 私の職場にほど近い大都会の公園である。 クスが暮らしているのは 14 00:02:10,870 --> 00:02:16,130 暇を見つけては クスの元を訪ねる。 15 00:02:16,130 --> 00:02:22,030 そんな生活を送って もう3か月がたつ。 16 00:02:27,740 --> 00:02:30,000 何度見ても宇宙人そのものである。 17 00:02:30,000 --> 00:02:32,530 何度見ても宇宙人そのものである。 18 00:02:35,430 --> 00:02:38,740 小さな体に巨大な頭。 19 00:02:41,100 --> 00:02:44,100 つり上がった大きな目。 20 00:02:48,300 --> 00:02:56,700 宇宙人としか思えないのである。 やっぱり私には クスの木に宿った 21 00:03:14,230 --> 00:03:17,230 いや でも あれだね 何か…  22 00:04:11,330 --> 00:04:19,740 誰ひとり 気付かないことである。 不思議なのは私には見えている宇宙人に 23 00:04:22,840 --> 00:04:25,930 はあ〜 うん。 24 00:04:44,900 --> 00:04:49,900 さすがに私も若干 不安になってきた。 25 00:04:52,970 --> 00:04:58,460 見えるとは何かについて調べてみた。 人間にとって 26 00:05:00,230 --> 00:05:05,430 すると ある心理学の先生にたどりついた。 27 00:05:14,430 --> 00:05:18,670 見えますというか はい 分かりますよ。 はい あ なるほど はい。 28 00:05:18,670 --> 00:05:21,260 ず〜っと見続けてるんですけど 結構こういう写真を 29 00:05:21,260 --> 00:05:25,360 初めて見たかもしれないです これ。 自撮りで2ショットってのは 30 00:05:31,740 --> 00:05:34,230 (菅井)…っていうのはあれですかね? 31 00:05:49,770 --> 00:05:51,970 ある範囲で自由である。 32 00:05:59,330 --> 00:06:00,000 ♬〜 33 00:06:00,000 --> 00:06:13,130 ♬〜 34 00:06:20,530 --> 00:06:22,530 あ〜。 35 00:06:54,360 --> 00:07:00,000 ♬〜 36 00:07:00,000 --> 00:07:05,070 ♬〜 37 00:07:05,070 --> 00:07:09,230 こんにちは。よろしくお願いします。 こんにちは。 38 00:07:09,230 --> 00:07:14,430 ついてきてもらえますか? はい。 おじさんに ちょっと 39 00:07:14,430 --> 00:07:17,130 (菅井)どこ行くんでしょうね。 どこに行くんだ? 40 00:07:21,800 --> 00:07:25,560 登ったり! (菅井)いろいろ。 41 00:07:25,560 --> 00:07:28,560 何かデコボコしてるねえ。 42 00:07:32,330 --> 00:07:36,030 砂ついてる。砂ついてる? (菅井)はい? 43 00:07:36,030 --> 00:07:38,130 (菅井)うん。 44 00:07:43,870 --> 00:07:47,070 (菅井)顔 見えた。 顔! 45 00:07:51,530 --> 00:07:55,130 (菅井)どう? しかみえない? 46 00:07:55,130 --> 00:07:57,070 (菅井)みえないかあ。 47 00:07:57,070 --> 00:08:00,000 (菅井)怪獣にみえるかあ。 48 00:08:00,000 --> 00:08:00,670 (菅井)怪獣にみえるかあ。 49 00:08:00,670 --> 00:08:25,670 ♬〜 50 00:08:30,170 --> 00:08:37,460 分からずじまいだった。 結局 宇宙人に見える理由は 51 00:08:37,460 --> 00:08:43,870 分からなくてよかったのかもしれない。 でも 思えば 52 00:08:47,130 --> 00:08:52,100 木々のざわめきに包まれると クスを見つめ 53 00:08:52,100 --> 00:08:58,400 都市にいることすら忘れそうになる。 私の心は自由になり 54 00:09:29,070 --> 00:09:30,000 私にとって特別な場所である。 南米のアマゾンは 55 00:09:30,000 --> 00:09:35,870 私にとって特別な場所である。 南米のアマゾンは 56 00:09:40,670 --> 00:09:45,260 そこは地球上で最大の森だ。 57 00:09:47,430 --> 00:09:53,840 14回 現地を訪れた。 これまで四半世紀の間に 58 00:09:56,130 --> 00:10:00,000 見つめ続けることで 原初の森に生きる人々を 59 00:10:00,000 --> 00:10:02,000 見つめ続けることで 原初の森に生きる人々を 60 00:10:02,000 --> 00:10:09,430 根源的な問いに迫りたかった。 人間とは何か 命とは何かという 61 00:10:09,430 --> 00:10:19,930 ♬〜 62 00:10:23,870 --> 00:10:29,400 妖精のようなチョウが舞っていた。 深い森には いつも 63 00:10:29,400 --> 00:10:30,000 ♬〜 64 00:10:30,000 --> 00:10:40,430 ♬〜 65 00:10:40,430 --> 00:10:48,300 アマゾンに行くことができていない。 2018年を最後に私は 66 00:10:48,300 --> 00:10:53,400 デスクワーク中心の日々が続いていた。 管理職として 67 00:10:56,640 --> 00:11:00,000 そしてカメラを持つことも減っていった。 68 00:11:00,000 --> 00:11:02,030 そしてカメラを持つことも減っていった。 69 00:11:12,640 --> 00:11:18,530 定年。 定年退職。 60歳。 70 00:11:20,900 --> 00:11:26,700 う〜ん 還暦。 う〜ん。 71 00:11:38,900 --> 00:11:41,200 怖い。 72 00:12:12,230 --> 00:12:16,640 秋も深まった ある寒い朝。 73 00:12:22,400 --> 00:12:25,590 私は思わず息をのんだ。 74 00:12:27,640 --> 00:12:30,000 クスがチョウとキスをしていた。 75 00:12:30,000 --> 00:12:31,230 クスがチョウとキスをしていた。 76 00:12:34,400 --> 00:12:37,400 アサギマダラだ。 77 00:12:37,400 --> 00:12:45,030 異国へと渡る 旅するチョウである。 2,000km以上も海を飛び 78 00:12:45,030 --> 00:12:58,200 ♬〜 79 00:12:58,200 --> 00:13:00,000 旅するチョウに私が驚いたのは 80 00:13:00,000 --> 00:13:02,130 旅するチョウに私が驚いたのは 81 00:13:02,130 --> 00:13:07,130 持ち上がっていたからだ。 このころ新たなアマゾン取材の話が 82 00:13:10,200 --> 00:13:13,100 私は不安だった。 83 00:13:13,100 --> 00:13:17,930 カメラマンとして重要な目は老眼が進み 84 00:13:17,930 --> 00:13:22,900 平衡感覚も時々 乱れる。 85 00:13:22,900 --> 00:13:29,300 ないことは自分がよく分かっている。 アマゾン取材がなまやさしいもので 86 00:13:33,330 --> 00:13:40,230 奇跡に思えた。 迷い続ける私と旅するチョウとの出会いは 87 00:14:19,430 --> 00:14:25,840 日々 滝のような雨が降る。 あのアマゾンの森には 88 00:14:29,970 --> 00:14:30,000 そして命が宿される。 89 00:14:30,000 --> 00:14:34,070 そして命が宿される。 90 00:14:47,100 --> 00:14:50,970 (菅井)ふっ! くっ… うっ…! 91 00:14:50,970 --> 00:14:56,590 はあ。 うっ… ああ ああ…。 92 00:14:56,590 --> 00:14:58,530 ううっ…。 93 00:14:58,530 --> 00:15:00,000 しばらくぶりに鍛え始めた。 私は なまっていた体を 94 00:15:00,000 --> 00:15:04,070 しばらくぶりに鍛え始めた。 私は なまっていた体を 95 00:15:04,070 --> 00:15:06,970 くっ…。 96 00:15:06,970 --> 00:15:08,900 うっ はあ…。 97 00:15:08,900 --> 00:15:12,800 うっ… あっ… はっ…。 98 00:15:17,170 --> 00:15:22,670 復活させた。 長い間さぼっていた階段上りも 99 00:15:24,560 --> 00:15:29,970 還暦が間近に迫った中での大仕事。 6年ぶり 100 00:15:33,870 --> 00:15:39,030 私は アマゾンに行くことを決めた。 101 00:15:39,030 --> 00:15:47,840 ♬〜  102 00:16:34,300 --> 00:16:56,430 ♬〜 103 00:16:56,430 --> 00:17:00,000 先住民の取材のために 密林に暮らす 104 00:17:00,000 --> 00:17:01,000 先住民の取材のために 密林に暮らす 105 00:17:01,000 --> 00:17:06,700 奥へ奥へと進んだ。 私はアマゾン川の支流を 106 00:17:16,560 --> 00:17:30,000 ♬〜 107 00:17:30,000 --> 00:17:35,560 ♬〜 108 00:17:35,560 --> 00:17:43,400 私にとっても初めての経験だった。 これまで幾たびもアマゾンを訪れた 109 00:17:43,400 --> 00:17:50,030 ♬〜 110 00:17:50,030 --> 00:17:56,130 思えてならなかった。 それは クスからのギフトのように 111 00:17:56,130 --> 00:18:16,840 ♬〜 112 00:18:40,670 --> 00:18:44,870 君が宇宙人だと思えているかぎり 113 00:18:44,870 --> 00:18:54,560 僕でいられる… と思う。 僕は きっと年を重ねても 114 00:19:21,070 --> 00:19:30,000 ♬〜 115 00:19:30,000 --> 00:19:39,360 ♬〜 116 00:19:39,360 --> 00:19:41,970 ♬〜