1 00:00:38,488 --> 00:00:40,473 (鱒之介)このたびは 作家デビュー40周年➡ 2 00:00:40,473 --> 00:00:42,892 おめでとうございます。 (池内)あ~ いやいや ありがとう。 3 00:00:42,892 --> 00:00:47,146 それで パーティーに出す 寿司屋台の件ですが➡ 4 00:00:47,146 --> 00:00:49,632 考えてもらえましたでしょうかね。 5 00:00:49,632 --> 00:00:53,803 ぜひとも この 柳寿しさんに お願いをしたいんですが。 6 00:00:53,803 --> 00:00:56,689 ありがとうございます その件なんですが➡ 7 00:00:56,689 --> 00:01:00,960 ご招待客 300人ともなりますと 病み上がりの あっしじゃあ➡ 8 00:01:00,960 --> 00:01:03,146 失礼にあたるんじゃないかと。 9 00:01:03,146 --> 00:01:08,000 そうですか そりゃ困ったなぁ。 10 00:01:08,000 --> 00:01:11,621 こんなときに 旬くんがいてくれたらなぁ。 11 00:01:11,621 --> 00:01:14,791 (旬)親父 アナゴの仕込み 終わったよ。 12 00:01:14,791 --> 00:01:17,143 旬くん! 13 00:01:17,143 --> 00:01:20,196 あっ 池内先生 いらっしゃいませ。 14 00:01:20,196 --> 00:01:23,316 あっ 40周年 おめでとうございます。 15 00:01:23,316 --> 00:01:27,487 ああ いや 深川で 修業中じゃなかったのかい? 16 00:01:27,487 --> 00:01:29,472 はい 深川の親方から➡ 17 00:01:29,472 --> 00:01:31,474 柳寿しに戻っていいよと 言われまして➡ 18 00:01:31,474 --> 00:01:33,476 今日から いつもどおりです。 19 00:01:33,476 --> 00:01:35,476 あっ そう…。 20 00:01:39,515 --> 00:01:42,652 そうだったか。 21 00:01:42,652 --> 00:01:44,852 はい? 22 00:01:51,194 --> 00:01:54,130 (池内)いや~ すまなかったね 編集長。 23 00:01:54,130 --> 00:01:58,484 私が 独断で柳寿しに 話をしてしまったばっかりに。 24 00:01:58,484 --> 00:02:00,503 (西島)いえいえいえ 私のほうこそ➡ 25 00:02:00,503 --> 00:02:03,539 嘉志寿司さんに 勝手に依頼してしまって…。 26 00:02:03,539 --> 00:02:06,442 先生の顔を潰すわけには まいりませんので➡ 27 00:02:06,442 --> 00:02:08,444 おわびのうえ 断りを…。 いやいや。 28 00:02:08,444 --> 00:02:10,446 そういうわけにはいかない。 29 00:02:10,446 --> 00:02:15,885 私が柳寿しに わびを入れよう。 30 00:02:15,885 --> 00:02:18,104 まぁ しかし よりによって➡ 31 00:02:18,104 --> 00:02:23,793 寿司対決で競い合った 旬くんと大吾くんとはねぇ。 32 00:02:23,793 --> 00:02:27,780 寿司対決… そうだ! 33 00:02:27,780 --> 00:02:30,449 また あの2人に勝負させましょう それなら 公平だ! 34 00:02:30,449 --> 00:02:32,451 えっ? 35 00:02:32,451 --> 00:02:35,338 因縁の対決として 記事にもできます。 36 00:02:35,338 --> 00:02:38,124 うん いける いける。 37 00:02:38,124 --> 00:02:41,477 寿司ダネは…。 38 00:02:41,477 --> 00:02:44,130 真鯛は どうですか? 39 00:02:44,130 --> 00:02:46,530 真鯛? 40 00:02:48,467 --> 00:02:53,823 なるほど 紅葉鯛か。 41 00:02:53,823 --> 00:02:57,877 <勝翁:日本人が 古くから 愛してやまない 真鯛。 42 00:02:57,877 --> 00:03:02,815 真鯛の旬として 有名なのは 産卵前の桜咲く季節。 43 00:03:02,815 --> 00:03:05,985 この時期の真鯛は 小さな斑点が現れ➡ 44 00:03:05,985 --> 00:03:09,155 まるで桜吹雪のように 見えるところから➡ 45 00:03:09,155 --> 00:03:11,474 桜鯛と呼ばれます。 46 00:03:11,474 --> 00:03:14,644 産卵を終えた 5月から6月ごろの真鯛は➡ 47 00:03:14,644 --> 00:03:16,796 麦わら鯛と名を変え➡ 48 00:03:16,796 --> 00:03:18,814 味が落ちると されてますな。 49 00:03:18,814 --> 00:03:23,202 紅葉の時期を迎えると 真鯛は 紅葉鯛となり➡ 50 00:03:23,202 --> 00:03:25,454 再び 栄養を蓄え始めます。 51 00:03:25,454 --> 00:03:29,954 紅葉鯛は桜鯛より うまい という人もいるようで> 52 00:03:33,462 --> 00:03:37,967 ⦅大吾! まだ仕込みが終わらんのか。 53 00:03:37,967 --> 00:03:41,787 親父 手が あかぎれで痛くて…。 54 00:03:41,787 --> 00:03:45,458 手が荒れるのは 修業が足りん証拠だ! 55 00:03:45,458 --> 00:03:47,458 さっさとやれ。 56 00:03:49,795 --> 00:03:52,495 早くしろ!⦆ 57 00:04:06,512 --> 00:04:13,452 (龍男)大吾 真鯛勝負の準備は できたのか? 58 00:04:13,452 --> 00:04:17,323 前回の寿司対決では 柳寿しと 2位を分け合ったが➡ 59 00:04:17,323 --> 00:04:20,376 もう そんな失態は許さんぞ。 60 00:04:20,376 --> 00:04:25,131 (大吾)言われなくても 今回は 必ず勝つ。 61 00:04:25,131 --> 00:04:30,286 そもそも 嘉志寿司が 大衆店と比較されること自体➡ 62 00:04:30,286 --> 00:04:32,288 恥なんだ。 63 00:04:32,288 --> 00:04:36,088 絶対に嘉志寿司の格を落とすなよ。 64 00:04:42,965 --> 00:04:47,136 《鯛のうまみを引き出すには やっぱり昆布が いちばんだ。 65 00:04:47,136 --> 00:04:51,774 けど 今回は 30分の時間制限があるから➡ 66 00:04:51,774 --> 00:04:54,474 肝心の昆布じめができない》 67 00:04:58,798 --> 00:05:00,783 う~ん…。 68 00:05:00,783 --> 00:05:06,956 昆布じめしたものは いつもの味だ 問題ない… が➡ 69 00:05:06,956 --> 00:05:09,442 昆布じめしてないほうは➡ 70 00:05:09,442 --> 00:05:13,612 味が淡泊で うまみを感じられない。 71 00:05:13,612 --> 00:05:17,616 親父 今回は 制限時間30分だ。 72 00:05:17,616 --> 00:05:20,119 昆布じめは…。 わかってる。 73 00:05:20,119 --> 00:05:25,274 問題は 昆布じめだけじゃない。 えっ? 74 00:05:25,274 --> 00:05:27,293 煮切りだ。 75 00:05:27,293 --> 00:05:30,179 この時期の紅葉鯛は 脂がのっていて➡ 76 00:05:30,179 --> 00:05:32,965 煮切りを弾いてしまう。 77 00:05:32,965 --> 00:05:35,818 煮切りが タネになじまなくて いろいろ試したが➡ 78 00:05:35,818 --> 00:05:39,889 うまい方法が 見つからなかったんだ。 79 00:05:39,889 --> 00:05:44,293 これを使え。 80 00:05:44,293 --> 00:05:47,446 瀬戸内海の小島で 古くからの製法で作られた➡ 81 00:05:47,446 --> 00:05:49,946 高級天然塩だ。 82 00:05:53,452 --> 00:05:55,452 塩? 83 00:06:01,110 --> 00:06:05,498 甘みがあって 市販の天然塩より まろやかだ。 84 00:06:05,498 --> 00:06:09,952 なるほど これなら 真鯛との相性は 抜群。 うん。 85 00:06:09,952 --> 00:06:14,957 嘉志寿司4代目が 三流寿司屋に 負けるわけにはいかない。 86 00:06:14,957 --> 00:06:18,057 わかってるな 大吾。 87 00:06:29,805 --> 00:06:34,810 う~ん 梅醤油も ダメか。 88 00:06:34,810 --> 00:06:38,247 梅の味が 鯛とケンカしちゃってる。 89 00:06:38,247 --> 00:06:41,247 どうすれば…。 90 00:06:48,157 --> 00:06:52,128 (西島)それでは 嘉志寿司さんと 柳寿しさんによる➡ 91 00:06:52,128 --> 00:06:54,964 真鯛勝負 始めたいと思います。 92 00:06:54,964 --> 00:06:58,467 審査は このホテルの 日本料理長である➡ 93 00:06:58,467 --> 00:07:01,470 米山さんに 判定を一任いたします。 94 00:07:01,470 --> 00:07:03,973 米山さん お願いいたします。 95 00:07:03,973 --> 00:07:07,810 (米山)公平を期すために あらかじめ➡ 96 00:07:07,810 --> 00:07:10,179 1匹の鯛を3枚におろし➡ 97 00:07:10,179 --> 00:07:14,150 2枚の半身 それぞれを 両者に使っていただきます。 98 00:07:14,150 --> 00:07:19,550 寿司ダネは 真鯛のみ 制限時間は 30分です。 99 00:07:24,810 --> 00:07:26,810 それでは はじめ。 100 00:07:36,939 --> 00:07:42,628 ほう 2人とも 若いが 見事な包丁さばきですね。 101 00:07:42,628 --> 00:07:47,466 銀座でも 指折りの技を持つ 寿司職人です。 102 00:07:47,466 --> 00:07:51,287 (米山)ただ 30分では 昆布じめができない。 103 00:07:51,287 --> 00:07:54,987 どうするのか…。 104 00:08:06,118 --> 00:08:08,454 両者とも 粉状のものを取り出した。 105 00:08:08,454 --> 00:08:10,472 これは いったい…。 106 00:08:10,472 --> 00:08:13,526 大吾くんの粉は 桃色。 107 00:08:13,526 --> 00:08:19,114 一方 旬くんのは 緑がかった粉だ。 108 00:08:19,114 --> 00:08:57,286 ♬~ 109 00:08:57,286 --> 00:08:59,455 《小杉:何だ あの粉は。 110 00:08:59,455 --> 00:09:04,810 しかし 大吾さんの魔法の粉に かなうはずがない!》 111 00:09:04,810 --> 00:09:41,447 ♬~ 112 00:09:41,447 --> 00:09:45,447 (西島)両者 制限時間内に 握り終えました。 113 00:09:51,290 --> 00:09:54,960 (西島)お手もとに 届きましたでしょうか。 114 00:09:54,960 --> 00:09:57,613 それでは 嘉志寿司さんの握りから➡ 115 00:09:57,613 --> 00:10:00,113 試食を お願いいたします。 116 00:10:11,944 --> 00:10:13,963 これは…。 117 00:10:13,963 --> 00:10:17,633 寿司飯と鯛の身の間に 挟んでいる粉は➡ 118 00:10:17,633 --> 00:10:23,622 鯛の真子を 昆布だしで 湯通ししたものに➡ 119 00:10:23,622 --> 00:10:29,778 醤油 みりん 酒で 味つけしたものですね。 120 00:10:29,778 --> 00:10:33,282 はい。 121 00:10:33,282 --> 00:10:36,952 鯛のうまみと 真子のうまみが 繊細な味わいを生み出し➡ 122 00:10:36,952 --> 00:10:39,822 瀬戸内の古式天然塩が➡ 123 00:10:39,822 --> 00:10:44,126 そのうまみを 一層 引き出している。 124 00:10:44,126 --> 00:10:48,781 見事な発想と それを まとめ上げた技術➡ 125 00:10:48,781 --> 00:10:50,781 すばらしい。 126 00:10:54,953 --> 00:10:56,955 それでは 続きまして➡ 127 00:10:56,955 --> 00:11:00,359 柳寿しさんの試食 お願いいたします。 128 00:11:00,359 --> 00:11:02,778 《フッ 旬の粉など➡ 129 00:11:02,778 --> 00:11:06,632 子どもだましの細工に 決まってる》 130 00:11:06,632 --> 00:11:09,532 塩は振ってないようですね。 131 00:11:18,811 --> 00:11:21,511 これは…。 132 00:12:42,578 --> 00:12:46,078 それでは 判定です 米山料理長 お願いします。 133 00:12:48,500 --> 00:12:50,500 この勝負…。 134 00:12:55,474 --> 00:12:57,474 引き分けとします。 135 00:13:00,462 --> 00:13:04,016 ちょっと待ってください どうして! 136 00:13:04,016 --> 00:13:06,935 柳寿しさん その粉について➡ 137 00:13:06,935 --> 00:13:09,121 皆さんに説明してあげてください。 138 00:13:09,121 --> 00:13:12,441 はい。 139 00:13:12,441 --> 00:13:18,614 これは 塩昆布を ミキサーにかけて 粉末にしたものです。 140 00:13:18,614 --> 00:13:21,283 昆布を水で煮て やわらかくしてから➡ 141 00:13:21,283 --> 00:13:24,786 醤油 みりんで作った調味液で 煮詰めて➡ 142 00:13:24,786 --> 00:13:28,440 一度 乾燥させてから 粉状にしています。 143 00:13:28,440 --> 00:13:33,128 なるほど 塩昆布か。 144 00:13:33,128 --> 00:13:36,148 昆布のうまみが 鯛のうまみを引き出し➡ 145 00:13:36,148 --> 00:13:40,152 塩味が適度に効いてたのも そのためか。 146 00:13:40,152 --> 00:13:44,656 大吾くんの発想も見事だが 旬くんのアイデアも 甲乙つけがたい。 147 00:13:44,656 --> 00:13:48,156 これは 確かに 引き分けが妥当ですね。 148 00:13:50,495 --> 00:13:53,882 日本料理で 鯛の身を食べるとき 醤油ではなく➡ 149 00:13:53,882 --> 00:13:56,635 塩昆布を調味料として使う店が 多いのですが➡ 150 00:13:56,635 --> 00:14:00,305 通常は 塩昆布を 細切りにして使います。 151 00:14:00,305 --> 00:14:03,325 粉末にしたのは 意外でした。 152 00:14:03,325 --> 00:14:06,495 細切りだと 口の中に➡ 153 00:14:06,495 --> 00:14:08,463 塩昆布の硬さが 残ってしまうので➡ 154 00:14:08,463 --> 00:14:10,482 粉状にしました。 155 00:14:10,482 --> 00:14:12,451 (米山)お見事です。 156 00:14:12,451 --> 00:14:16,471 (拍手) 157 00:14:16,471 --> 00:14:19,825 いや~ 困ったなぁ。 158 00:14:19,825 --> 00:14:23,195 引き分けだと どちらに パーティーの屋台を➡ 159 00:14:23,195 --> 00:14:25,230 任せたらいいんだか。 160 00:14:25,230 --> 00:14:28,800 せっかくですから お二人で やってもらいましょう。 161 00:14:28,800 --> 00:14:30,819 どうでしょうか? 162 00:14:30,819 --> 00:14:33,655 かまいません。 お断りします。 163 00:14:33,655 --> 00:14:39,144 三流寿司屋と 店を並べるのは 屈辱以外の何ものでもない。 164 00:14:39,144 --> 00:14:41,146 (池内)大吾くん! 165 00:14:41,146 --> 00:14:46,468 一流か 三流かを決めるのは 職人ではない。 166 00:14:46,468 --> 00:14:50,768 握った寿司を食べていただく お客様だ。 167 00:15:08,307 --> 00:15:10,459 (大吾)小杉。 168 00:15:10,459 --> 00:15:14,813 盛りつけのしかたが違うって 何度言えば わかるんだ! 169 00:15:14,813 --> 00:15:16,865 すみません…。 170 00:15:16,865 --> 00:15:18,865 (龍男)やめんか! 171 00:15:26,325 --> 00:15:28,327 小杉。 はい。 172 00:15:28,327 --> 00:15:30,827 ホール 手伝ってこい。 はい。 173 00:15:34,800 --> 00:15:36,800 どけ。 174 00:15:39,471 --> 00:15:43,458 弟子に 八つ当たりなどして 情けない。 175 00:15:43,458 --> 00:15:46,795 親父は 黙ってろ。 176 00:15:46,795 --> 00:15:49,798 なぜ 勝てなかったのか わからんのか。 177 00:15:49,798 --> 00:15:52,184 理由は単純だ。 178 00:15:52,184 --> 00:15:55,971 お前の実力が 柳寿しのせがれと同等➡ 179 00:15:55,971 --> 00:15:59,571 いや はっきり言って 劣っているからだ。 180 00:16:03,462 --> 00:16:07,299 親父… いくら親父でも! 181 00:16:07,299 --> 00:16:11,153 お前は 中学に進んでから 修業をし始めた。 182 00:16:11,153 --> 00:16:14,456 人一倍 不器用だった。 183 00:16:14,456 --> 00:16:20,479 確かに 努力はした 人の10倍は 努力をしただろう。 184 00:16:20,479 --> 00:16:26,485 だがな 努力しただけで 背負えるほど➡ 185 00:16:26,485 --> 00:16:29,485 嘉志寿司の看板は 軽くない。 186 00:16:33,809 --> 00:16:39,481 (龍男)柳寿しに劣るようでは 4代目は 名乗れんな。 187 00:16:39,481 --> 00:16:44,781 俺は 劣ってなんかいない。 188 00:16:48,407 --> 00:16:51,607 まだ 己の実力が わからんのか。 189 00:16:55,814 --> 00:16:58,817 あ~ そうだ。 190 00:16:58,817 --> 00:17:01,117 池内先生から電話があったぞ。 191 00:17:04,306 --> 00:17:07,826 ボラを握ってほしいそうだ。 192 00:17:07,826 --> 00:17:11,026 ボラを? 193 00:17:16,935 --> 00:17:19,735 (大吾)ボラの握りです。 (池内)うん。 194 00:17:21,790 --> 00:17:25,944 ボラの洗いと。 195 00:17:25,944 --> 00:17:31,444 おぉ~ この香りは ゆず味噌だね。 196 00:17:37,622 --> 00:17:40,609 いかがでしょうか? 197 00:17:40,609 --> 00:17:43,995 確かに ゆずの香りで➡ 198 00:17:43,995 --> 00:17:46,782 ボラの臭みを消すことには 成功してるな。 199 00:17:46,782 --> 00:17:51,453 と同時にだ ボラのうまみまでも 消えてしまってる。 200 00:17:51,453 --> 00:17:56,808 失敗と言わざるをえないね。 201 00:17:56,808 --> 00:18:01,947 お言葉ですが そもそも ボラは握りには向きません。 202 00:18:01,947 --> 00:18:04,966 寿司通の方なら 絶対に そんな注文をしないでしょう。 203 00:18:04,966 --> 00:18:10,806 大吾 言葉を慎め。 あ~ いいんです いいんです。 204 00:18:10,806 --> 00:18:15,160 大吾くん 私と ちょっと つきあってくれないか。 205 00:18:15,160 --> 00:18:17,195 はっ? 206 00:18:17,195 --> 00:18:20,482 親方 大吾くんを しばらく お借りしますよ。 207 00:18:20,482 --> 00:18:22,482 はい。 208 00:19:06,478 --> 00:19:10,298 まさか 柳寿しに? 209 00:19:10,298 --> 00:19:14,803 実はな 旬くんにも ボラの握りを頼んであってな。 210 00:19:14,803 --> 00:19:19,474 一緒に どうかね? なんで 俺が ヤツの寿司を…。 211 00:19:19,474 --> 00:19:23,178 帰らせていただきます。 212 00:19:23,178 --> 00:19:28,578 他人が握った寿司を食べるのも 修業のうち 違うかね? 213 00:19:31,820 --> 00:19:33,820 いらっしゃいませ。 214 00:19:38,476 --> 00:19:42,130 大吾 どうして…。 215 00:19:42,130 --> 00:19:44,530 彼のことは 気にせんでいい。 216 00:19:48,119 --> 00:19:54,519 早速だが ボラの握りを頼むよ。 はい。 217 00:20:02,200 --> 00:20:04,970 《んっ? 洗いには しないのか? 218 00:20:04,970 --> 00:20:07,770 洗いにしないと ボラの臭みは取れない》 219 00:20:24,122 --> 00:20:26,822 ボラの握り お待ち。 220 00:20:31,112 --> 00:20:34,165 大吾くん 食べてみなさい。 221 00:20:34,165 --> 00:20:36,201 《ボラは洗いにして➡ 222 00:20:36,201 --> 00:20:38,136 酢味噌で食べるのが いちばんだ。 223 00:20:38,136 --> 00:20:40,622 こんな 何の変哲もない握りじゃ➡ 224 00:20:40,622 --> 00:20:44,522 フッ 臭みが残って とても食べられたものじゃない》 225 00:20:55,470 --> 00:20:58,940 あ~ こりゃあ うまい。 226 00:20:58,940 --> 00:21:02,127 洗いにしなかったのは なぜかね? 227 00:21:02,127 --> 00:21:06,631 はい 洗いには 酢味噌が いちばん合います。 228 00:21:06,631 --> 00:21:10,552 ですが 酢味噌と寿司飯は 合いません。 229 00:21:10,552 --> 00:21:13,321 酢味噌に ゆずを入れることも 考えましたが➡ 230 00:21:13,321 --> 00:21:18,209 それだと ゆずの香りが強すぎて バランスを崩してしまいます。 231 00:21:18,209 --> 00:21:20,979 そこで 思いついたのが➡ 232 00:21:20,979 --> 00:21:23,481 からし味噌です。 233 00:21:23,481 --> 00:21:26,351 洗いにせずに からし味噌をつけることで➡ 234 00:21:26,351 --> 00:21:30,805 ボラのうまみを引き出せると 考えました。 235 00:21:30,805 --> 00:21:34,959 固定観念にとらわれない 柔軟な発想。 236 00:21:34,959 --> 00:21:38,463 いや~ 感服した。 237 00:21:38,463 --> 00:21:41,466 ありがとうございます。 238 00:21:41,466 --> 00:21:45,487 からし味噌に うの花と クチナシの実も合わせてるな。 239 00:21:45,487 --> 00:21:47,489 ああ。 240 00:21:47,489 --> 00:21:54,489 大吾くん 旬くんのボラの握りは どうかね? 241 00:22:11,129 --> 00:22:14,149 池内先生…。 242 00:22:14,149 --> 00:22:18,849 いいから ほっといてあげなさい。 243 00:22:31,966 --> 00:22:38,639 俺は 嘉志寿司の看板に あぐらをかいていたのか…。 244 00:22:38,639 --> 00:22:43,060 お客さんのためを思う➡ 245 00:22:43,060 --> 00:22:48,649 職人としての姿勢や 向上心まで なくしちまってたのか…。 246 00:22:48,649 --> 00:22:55,149 それを… それを あのガキに教えられるなんて。 247 00:22:57,958 --> 00:23:06,484 (すすり泣く声) 248 00:23:06,484 --> 00:23:09,487 なに? 嵯峨美といえば➡ 249 00:23:09,487 --> 00:23:13,023 京都で 一 二を争う 日本料理の名店だぞ。 250 00:23:13,023 --> 00:23:15,523 そこへ修業に出たいというのか? 251 00:23:17,812 --> 00:23:19,980 今のままじゃ 俺は➡ 252 00:23:19,980 --> 00:23:23,150 嘉志寿司の看板と親父に 頼るばかりだ。 253 00:23:23,150 --> 00:23:27,805 日本料理の基礎を 一から学び 鍛え直す必要がある! 254 00:23:27,805 --> 00:23:33,794 嵯峨美は 厳しい修業で有名だ。 255 00:23:33,794 --> 00:23:35,794 わかってんのか? 256 00:23:38,783 --> 00:23:42,820 ボラは 沿岸に長くとどまると 泥臭くなってしまう。 257 00:23:42,820 --> 00:23:48,292 外洋に出て 荒海にもまれてこそ うまいボラとなるんだ。 258 00:23:48,292 --> 00:23:55,466 池内先生が ボラの握りを注文したのは➡ 259 00:23:55,466 --> 00:24:02,766 俺に対する メッセージだったのに 俺は あんな失礼なことを…。 260 00:24:06,460 --> 00:24:09,463 わかった いいだろう。 261 00:24:09,463 --> 00:24:15,052 ただし 一人前の職人として 認められるまでは➡ 262 00:24:15,052 --> 00:24:19,640 嘉志寿司の敷居を またぐことは許さん。 263 00:24:19,640 --> 00:24:23,794 はい 覚悟の上です。 264 00:24:23,794 --> 00:24:29,794 絶対に 嘉志寿司の名に恥じない 職人になって 帰ってきます! 265 00:24:33,938 --> 00:24:39,438 《俺は 必ず 柳葉旬を超える》