1 00:00:37,369 --> 00:00:41,373 (旬)ちくしょう… ちくしょう…。 2 00:00:41,373 --> 00:00:43,673 ちくしょう!! 3 00:00:49,398 --> 00:00:52,398 (寛治)おい 色男。 4 00:00:54,386 --> 00:00:57,986 (寛治)どうした? そんな格好で。 風邪ひくぞ 旬坊。 5 00:01:11,136 --> 00:01:14,707 鱒之介さんが そんなことをな…。 6 00:01:14,707 --> 00:01:17,407 (旬)俺 もう店には戻らない。 7 00:01:21,046 --> 00:01:26,051 気持ちは わかるが 柳寿し以外 おめぇの帰る場所はねえ。 8 00:01:26,051 --> 00:01:28,051 違うか? 9 00:01:33,042 --> 00:01:37,079 実はな 札幌の河岸仲間から 聞いたんだが➡ 10 00:01:37,079 --> 00:01:40,699 あの達也って野郎 店の売り上げに手つけて➡ 11 00:01:40,699 --> 00:01:44,053 勘当寸前だったらしいぞ。 達也くんが!? 12 00:01:44,053 --> 00:01:47,056 大体 あの若さで 愛想のいいヤツなんて➡ 13 00:01:47,056 --> 00:01:51,377 おめぇみてぇに ホントにいいヤツか 逆に腹黒い人間しかいねえんだよ。 14 00:01:51,377 --> 00:01:54,697 じゃあ それを わかってて親父は…。 15 00:01:54,697 --> 00:01:57,766 おめぇに試練を与えたのさ。 16 00:01:57,766 --> 00:02:00,819 自分のことは 自分で どうにでもなるが➡ 17 00:02:00,819 --> 00:02:03,389 他人様だと そうはいかねえ。 18 00:02:03,389 --> 00:02:07,989 人を育てる。 こいつぁ 難問だぜ。 19 00:02:10,062 --> 00:02:13,462 自分じゃなく 人を…。 20 00:02:17,886 --> 00:02:20,186 寛治さん 俺…。 21 00:02:24,043 --> 00:02:27,062 ありがとうございました。 22 00:02:27,062 --> 00:02:31,450 俺… 店に戻ります。 23 00:02:31,450 --> 00:02:33,750 ああ。 24 00:02:38,707 --> 00:02:42,394 《そういえば じっちゃんが言ってたっけ。 25 00:02:42,394 --> 00:02:47,049 人一人 育てるには 常連さんを10人 失う覚悟で➡ 26 00:02:47,049 --> 00:02:50,052 目をかけなきゃならないって》 27 00:02:50,052 --> 00:03:10,038 ♬~ 28 00:03:10,038 --> 00:03:12,374 《親父が片づけたのか》 29 00:03:12,374 --> 00:03:30,142 ♬~ 30 00:03:30,142 --> 00:03:33,045 《わかったよ 親父。 31 00:03:33,045 --> 00:03:37,445 親父は何も言わないけど いつだって俺に教えてくれた》 32 00:03:40,052 --> 00:03:43,355 《俺が やれることは 一つしかない。 33 00:03:43,355 --> 00:03:47,709 俺は 俺なりの方法で 全力で達也くんと向き合う。 34 00:03:47,709 --> 00:03:50,379 それだけだ。 35 00:03:50,379 --> 00:03:52,979 だよな? 親父》 36 00:04:03,041 --> 00:04:05,794 《達也:昨日は あんなことが あったのに…》 37 00:04:05,794 --> 00:04:08,730 ⦅鱒之介:大バカ野郎が!!⦆ 38 00:04:08,730 --> 00:04:11,430 《達也:よく一緒に働けるな》 39 00:04:13,452 --> 00:04:16,038 ⦅もしかして 親父 達也くんの親父さんに➡ 40 00:04:16,038 --> 00:04:18,707 なんか弱みでも 握られてるのか?⦆ 41 00:04:18,707 --> 00:04:21,360 《親方は 俺が実家で 金を盗んだことを➡ 42 00:04:21,360 --> 00:04:23,362 知ってるんだろうか》 43 00:04:23,362 --> 00:04:25,380 スミイカ。 はい。 44 00:04:25,380 --> 00:04:30,803 《達也:もし今度 俺がヘマをしたら 怒られるだけじゃ済まねえな。 45 00:04:30,803 --> 00:04:33,372 逃げるのは簡単だけど➡ 46 00:04:33,372 --> 00:04:36,692 逃げたら実家から勘当されちまう。 47 00:04:36,692 --> 00:04:42,381 そうなりゃ 金も才能もねえ俺は どうやって生きていけば…。 48 00:04:42,381 --> 00:04:46,385 あと少し 我慢するしかないか》 49 00:04:46,385 --> 00:04:50,038 (旬)達也くん。 はい。 50 00:04:50,038 --> 00:04:52,738 ちょっと手伝ってもらえるかな。 51 00:04:54,710 --> 00:04:58,046 <勝翁:江戸時代から続く 江戸前寿司の定番 赤貝。 52 00:04:58,046 --> 00:05:01,099 黒い貝殻を開けると 中は真っ赤。 53 00:05:01,099 --> 00:05:03,702 赤貝と呼ばれるゆえんです。 54 00:05:03,702 --> 00:05:06,371 江戸っ子は赤貝のヒモも大好物。 55 00:05:06,371 --> 00:05:10,042 あっしのオススメは キュウリと一緒に 細巻きにした ひもきゅう。 56 00:05:10,042 --> 00:05:12,711 たまりませんな> 57 00:05:12,711 --> 00:05:16,048 (達也)殻付きの赤貝って 初めて見ましたよ。 58 00:05:16,048 --> 00:05:19,101 うちでは 貝類は なるべく殻付きで仕入れて➡ 59 00:05:19,101 --> 00:05:22,387 開店前に さばいてるんだ。 (達也)めんどくさいですね。 60 00:05:22,387 --> 00:05:26,041 仲買に さばいてもらえば…。 これが うちのやり方なんだ。 61 00:05:29,711 --> 00:05:31,697 携帯 鳴ってるよ。 62 00:05:33,715 --> 00:05:35,701 そうっすね。 63 00:05:42,374 --> 00:05:45,043 (戸の開閉音) 64 00:05:45,043 --> 00:05:47,043 フゥ…。 65 00:06:01,710 --> 00:06:03,712 うん。 66 00:06:03,712 --> 00:06:06,381 (2人)うん。 67 00:06:06,381 --> 00:06:09,051 おあいそ お願いします。 はい おあいそ! 68 00:06:09,051 --> 00:06:11,051 (旬)ありがとうございます。 69 00:06:14,056 --> 00:06:16,756 達也くん これ お願いできるかな。 70 00:06:18,710 --> 00:06:21,363 《達也:えっ? こんな安いの? 71 00:06:21,363 --> 00:06:24,366 赤貝は殻まで さばいたのに。 72 00:06:24,366 --> 00:06:28,770 これじゃ もうけが全然ないだろ。 ホント 頭 悪いな》 73 00:06:28,770 --> 00:06:31,707 柳寿しさんって 赤貝を 殻付きで買ってるんですか? 74 00:06:31,707 --> 00:06:35,060 さいでさぁ。 むき身より割安だし➡ 75 00:06:35,060 --> 00:06:38,130 直前にむいたほうが おいしいからね。 76 00:06:38,130 --> 00:06:40,699 ありがとうございました。 ありがとうございました。 77 00:06:40,699 --> 00:06:44,386 いいタネを安く提供したいっていう 親方の心意気だよ。 78 00:06:44,386 --> 00:06:47,806 いえ あっしは先代に 教わったまんまの仕事➡ 79 00:06:47,806 --> 00:06:51,376 してるだけですから。 それに自分で さばいたほうが➡ 80 00:06:51,376 --> 00:06:53,695 貝の調子が わかりやすから。 81 00:06:53,695 --> 00:06:55,697 はぁ~っ…。 82 00:06:55,697 --> 00:06:58,700 親方のような本物の職人 見てると ほっとしますよ。 83 00:06:58,700 --> 00:07:00,702 (鱒之介)ありがとうございます。 84 00:07:00,702 --> 00:07:03,372 《達也:旬さん なんで? 85 00:07:03,372 --> 00:07:06,708 なんで あんな涼しげに うれしそうな顔…。 86 00:07:06,708 --> 00:07:10,045 貝をさばいたのは 旬さんじゃないか》 87 00:07:10,045 --> 00:07:12,047 ありがとうございました。 88 00:07:12,047 --> 00:07:14,032 じゃあな 新人。 89 00:07:14,032 --> 00:07:17,703 どうせ なるなら 親方のような 客に愛される寿司職人になれよ。 90 00:07:17,703 --> 00:07:19,688 頑張れよ。 91 00:07:19,688 --> 00:07:22,724 はい。 ありがとうございます。 92 00:07:22,724 --> 00:07:25,360 旬さん ごちそうさま。 じゃあね 旬ちゃん。 93 00:07:25,360 --> 00:07:27,360 ありがとうございました。 94 00:07:33,352 --> 00:07:37,055 よし 今日は忙しかったね。 95 00:07:37,055 --> 00:07:40,392 じゃあ のれん しまってきてくれるかな? 96 00:07:40,392 --> 00:07:43,692 あの… 旬さん。 ん? 97 00:07:45,714 --> 00:07:48,033 いえ… なんでも…。 98 00:07:48,033 --> 00:08:17,045 ♬~ 99 00:08:17,045 --> 00:08:19,381 すみません。 オススメ なんですか? 100 00:08:19,381 --> 00:08:23,381 はい。 今日は寒ブリと平貝が いいのが入ってます。 101 00:08:25,787 --> 00:08:28,390 (旬)あと ウニと…。 102 00:08:28,390 --> 00:08:30,390 ≪ウニね。 103 00:08:46,074 --> 00:08:49,111 おはようございます。 おはよう。 104 00:08:49,111 --> 00:08:52,697 えっ!? どうしたの? その髪形。 105 00:08:52,697 --> 00:08:56,034 変… ですか? 106 00:08:56,034 --> 00:08:59,037 いや… 変じゃないけど。 107 00:08:59,037 --> 00:09:03,692 俺 うまく言えないんすけど 旬さんを見てて➡ 108 00:09:03,692 --> 00:09:06,695 なんか 寿司職人って いいなと思って。 109 00:09:06,695 --> 00:09:08,697 えっ? 110 00:09:08,697 --> 00:09:12,384 それで 形から入ろうかなと。 111 00:09:12,384 --> 00:09:15,036 ああ…。 112 00:09:15,036 --> 00:09:18,373 うん いいじゃん。 よく似合ってるよ。 113 00:09:18,373 --> 00:09:20,709 ありがとうございます。 114 00:09:20,709 --> 00:09:22,677 じゃあ 行こうか。 115 00:09:22,677 --> 00:09:24,677 はい。 116 00:09:36,358 --> 00:09:38,343 達也くん。 はい。 117 00:09:38,343 --> 00:09:40,362 新鮮な魚を見極めるときは➡ 118 00:09:40,362 --> 00:09:43,515 目や おなかを見る。 えらを見がちなんだけど➡ 119 00:09:43,515 --> 00:09:46,001 えらよりも あとは背中の…。 120 00:09:46,001 --> 00:09:48,436 (勇)達也くん なんか変わりましたね。 121 00:09:48,436 --> 00:09:50,338 ああ。 122 00:09:50,338 --> 00:09:54,693 (寛治)以前と比べると 表情が まるで違う。 123 00:09:54,693 --> 00:09:57,729 旬の愚鈍なまでの 誠実さと優しさが➡ 124 00:09:57,729 --> 00:10:01,366 わずかな良心を 目覚めさせたのかな。 125 00:10:01,366 --> 00:10:05,353 いい親方になるぜ 旬坊はよ。 126 00:10:05,353 --> 00:10:09,007 寛治さん そのヒラメ いただけますか? 127 00:10:09,007 --> 00:10:12,694 おう。 それじゃ あとで 柳寿しさんに届けるぜ。 128 00:10:12,694 --> 00:10:15,347 あの… これは 俺個人として買います。 129 00:10:15,347 --> 00:10:18,016 明日 北海道に戻るので。 130 00:10:18,016 --> 00:10:21,353 今日は 旬さんに 昆布締めを教えてもらうんです。 131 00:10:21,353 --> 00:10:23,889 そうか。 132 00:10:23,889 --> 00:10:27,025 よし! じゃあ これは俺からのご祝儀だ。 133 00:10:27,025 --> 00:10:29,361 ホントっすか!? よかったな。 134 00:10:29,361 --> 00:10:31,696 はい。 ありがとうございます。 135 00:10:31,696 --> 00:10:34,696 おう。 頑張れよ。 はい。 136 00:10:41,022 --> 00:10:43,008 うん。 137 00:10:43,008 --> 00:10:45,393 ありがとうございます。 138 00:10:45,393 --> 00:10:48,680 (旬)達也くん 明日の飛行機 取れた? 139 00:10:48,680 --> 00:10:50,999 はい。 140 00:10:50,999 --> 00:10:56,054 旬さん 本当に お世話になりました。 141 00:10:56,054 --> 00:10:59,357 いや 俺は何も。 142 00:10:59,357 --> 00:11:02,694 達也くん 立派な二代目になってくれよ。 143 00:11:02,694 --> 00:11:06,748 はい。 でも 実家に帰ったら➡ 144 00:11:06,748 --> 00:11:10,018 また サボり癖が 出るんじゃないかって不安で。 145 00:11:10,018 --> 00:11:13,021 そんときは 俺が また鍛えなおしてやるよ。 146 00:11:13,021 --> 00:11:15,021 はい。 ぜひ。 147 00:11:17,008 --> 00:11:20,362 (鱒之介)そろそろ行くか。 はい。 148 00:11:20,362 --> 00:11:23,365 お客さんが来たら 寿司組合の会合で留守だと➡ 149 00:11:23,365 --> 00:11:26,334 よく説明して 開店時間に出直してもらうんだ。 150 00:11:26,334 --> 00:11:29,334 わかりました。 いってらっしゃいませ。 151 00:12:50,352 --> 00:12:55,357 (戸の開閉音) 152 00:12:55,357 --> 00:12:58,009 開店前に すみません。 153 00:12:58,009 --> 00:13:01,709 ちょっと よろしいでしょうか? はい。 どうぞ。 154 00:13:04,382 --> 00:13:09,437 申し訳ありません。 営業前やとは わかっては いるんですが➡ 155 00:13:09,437 --> 00:13:13,692 どうしても 柳寿しさんの寿司折を一人前➡ 156 00:13:13,692 --> 00:13:17,062 持ち帰りで いただきたいと思いまして。 157 00:13:17,062 --> 00:13:21,132 すみません。 実は親方が出かけておりまして。 158 00:13:21,132 --> 00:13:24,352 えっ…。 住所を教えていただければ➡ 159 00:13:24,352 --> 00:13:26,721 あとでお届けします。 160 00:13:26,721 --> 00:13:30,675 それが… すぐ奈良に 戻らないといけませんので。 161 00:13:30,675 --> 00:13:34,045 奈良ですか。 実は…。 162 00:13:34,045 --> 00:13:37,382 連れ合いが病で 近々➡ 163 00:13:37,382 --> 00:13:40,385 大きな治療をしなければ ならないのですが➡ 164 00:13:40,385 --> 00:13:45,040 食事制限の前に なんとしても 柳寿しさんの寿司を➡ 165 00:13:45,040 --> 00:13:47,709 食べさせてやりたいと思いまして。 166 00:13:47,709 --> 00:13:50,378 そのために わざわざ 奈良から来たんですか? 167 00:13:50,378 --> 00:13:55,050 はい。 今日を逃せば夫は➡ 168 00:13:55,050 --> 00:13:59,020 一生 柳寿しの寿司を食べることが できないかもしれません。 169 00:13:59,020 --> 00:14:02,440 なんとか お願いできませんでしょうか? 170 00:14:02,440 --> 00:14:07,695 《どうしよう… 親方も旬さんも 携帯は つながらないし…》 171 00:14:07,695 --> 00:14:12,083 夫の分 一人前だけで よいのですが…。 172 00:14:12,083 --> 00:14:14,702 《俺は どうすれば…》 173 00:14:14,702 --> 00:14:18,706 すみません。 私には どうにも…。 174 00:14:18,706 --> 00:14:20,725 そうですか。 175 00:14:20,725 --> 00:14:22,761 《俺は…》 176 00:14:22,761 --> 00:14:25,029 申し訳ございません。 いえ。 177 00:14:25,029 --> 00:14:28,700 前もって連絡しなかった 私が悪いんです。 178 00:14:28,700 --> 00:14:31,035 《俺は…》 179 00:14:31,035 --> 00:14:35,390 親方に よろしくお伝えください。 180 00:14:35,390 --> 00:14:37,709 はい…。 181 00:14:37,709 --> 00:14:40,028 《俺は…。 182 00:14:40,028 --> 00:14:43,364 俺は 今まで何をやってきたんだ。 183 00:14:43,364 --> 00:14:46,418 寿司屋の息子で 生まれていながら➡ 184 00:14:46,418 --> 00:14:50,021 寿司に興味も持たず 遊んでばかりいたせいで➡ 185 00:14:50,021 --> 00:14:53,024 旦那さんのために 寿司を食べさせてあげたい➡ 186 00:14:53,024 --> 00:14:57,362 という ささやかな願いにすら 応えることができない。 187 00:14:57,362 --> 00:15:02,400 最低だ… 俺は最低の人間だ》 188 00:15:02,400 --> 00:15:04,400 待ってください。 189 00:15:07,806 --> 00:15:12,377 この俺に… 俺に寿司を握らせてください。 190 00:15:12,377 --> 00:15:14,712 えっ? 191 00:15:14,712 --> 00:15:18,700 親方には 遠く足元にも及びませんが➡ 192 00:15:18,700 --> 00:15:23,371 旦那さんのために どうか 寿司を握らせてください。 193 00:15:23,371 --> 00:15:26,758 ほんまですか? はい。 194 00:15:26,758 --> 00:15:31,058 ええ。 ぜひ… よろしくお願いします。 195 00:15:38,720 --> 00:15:41,720 《ツケ場に入るのが こんなに怖いなんて…》 196 00:15:57,872 --> 00:16:00,872 フゥーッ…。 197 00:16:04,379 --> 00:16:07,048 《もう昆布締めをする時間はない。 198 00:16:07,048 --> 00:16:12,353 でも 寛治さんからいただいた このヒラメは 最高のヒラメだ。 199 00:16:12,353 --> 00:16:16,007 絶対に生でも おいしいはずだ。 200 00:16:16,007 --> 00:16:19,010 親方から怒られるのは確実。 201 00:16:19,010 --> 00:16:23,014 いや 殺されるかもしれない。 202 00:16:23,014 --> 00:16:27,685 でも… それでも俺は…。 203 00:16:27,685 --> 00:16:32,724 この人のために寿司を握りたい》 204 00:16:32,724 --> 00:17:14,024 ♬~ 205 00:17:18,036 --> 00:17:20,371 申し訳ありません。 206 00:17:20,371 --> 00:17:23,408 今 自分が扱えるのは このヒラメだけで…。 207 00:17:23,408 --> 00:17:27,712 こんな不細工な寿司折で 本当に すみません。 208 00:17:27,712 --> 00:17:30,365 お代は いりませんので。 209 00:17:30,365 --> 00:17:35,737 いいえ このお寿司は きっと おいしいですよ。 210 00:17:35,737 --> 00:17:39,791 あなたは 親方や息子さんと同じ➡ 211 00:17:39,791 --> 00:17:43,044 優しい目をしていますから。 212 00:17:43,044 --> 00:17:46,064 きっと おいしいはずです。 213 00:17:46,064 --> 00:17:50,064 せやから お代は受け取ってください。 214 00:17:58,743 --> 00:18:02,043 ほんまに ありがとう。 215 00:18:04,365 --> 00:18:06,665 ありがとうございました。 216 00:18:13,374 --> 00:18:15,360 (鱒之介)なんだと? 217 00:18:15,360 --> 00:18:18,713 勝手に ツケ場に入って 寿司を握っただと!? 218 00:18:18,713 --> 00:18:21,366 店の信用を 落とすようなことをして➡ 219 00:18:21,366 --> 00:18:23,384 申し訳ありませんでした。 220 00:18:23,384 --> 00:18:26,037 これは 俺の勝手な判断でしたことです。 221 00:18:26,037 --> 00:18:29,724 旬さんは一切 関係ありません。 俺だけの責任です。 222 00:18:29,724 --> 00:18:32,393 親父。 223 00:18:32,393 --> 00:18:36,381 確かに勝手に ツケ場に立ったことは 許されることじゃない。 224 00:18:36,381 --> 00:18:40,034 だけど 達也くんは わざわざ 奈良から出てきてくれた➡ 225 00:18:40,034 --> 00:18:44,022 お客さんのために 少しでも 役に立ちたくて握ったんだ。 226 00:18:44,022 --> 00:18:46,691 人として間違ってないよ。 227 00:18:46,691 --> 00:18:49,694 だが 失った店の信用は 戻ってこねえ。 228 00:18:49,694 --> 00:18:52,363 それは おめぇだって わかってるこったろう。 229 00:18:52,363 --> 00:18:54,349 それは…。 230 00:18:54,349 --> 00:18:58,353 旬さん いいんです。 親方の教えに 背いた俺が悪いんです。 231 00:18:58,353 --> 00:19:02,790 親方 店の信用を失ったのは 自分の責任です。 232 00:19:02,790 --> 00:19:05,677 信用を取り戻すまで ここで タダ働きさせてください! 233 00:19:05,677 --> 00:19:08,012 お願いします!! 234 00:19:08,012 --> 00:19:11,412 達也。 顔を上げろ。 235 00:19:22,377 --> 00:19:25,029 なに 勘違いしてやがるんだ。 236 00:19:25,029 --> 00:19:27,031 達也。 237 00:19:27,031 --> 00:19:31,436 手 洗って ツケ場に立て。 どんな寿司を握ったか見せてみろ。 238 00:19:31,436 --> 00:19:34,372 えっ? 239 00:19:34,372 --> 00:19:36,372 はい。 240 00:20:32,447 --> 00:20:36,701 昆布締めせずに握ったのか。 はい。 241 00:20:36,701 --> 00:20:41,105 時間がありませんでしたので。 でも 自分で食べてみて➡ 242 00:20:41,105 --> 00:20:44,025 このヒラメなら 生でもおいしいと思いました。 243 00:20:44,025 --> 00:20:46,360 さばいたのも お前か? 244 00:20:46,360 --> 00:20:49,660 はい。 旬さんに教わって 自分でやりました。 245 00:20:54,669 --> 00:20:56,687 旬。 246 00:20:56,687 --> 00:20:59,690 ご隠居に連絡して すぐに来てもらえ。 247 00:20:59,690 --> 00:21:01,692 えっ…。 248 00:21:01,692 --> 00:21:03,692 早くしねえか。 249 00:21:06,697 --> 00:21:09,734 (鱒之介)達也が握った寿司です。 250 00:21:09,734 --> 00:21:12,434 味見をお願いします。 251 00:21:27,685 --> 00:21:30,354 (平政)まずくはない。 252 00:21:30,354 --> 00:21:35,154 じゃが 柳寿しの寿司ではないな。 253 00:21:37,728 --> 00:21:39,780 じっちゃん それは…。 254 00:21:39,780 --> 00:21:42,350 柳寿しの寿司ではないが➡ 255 00:21:42,350 --> 00:21:47,021 鱒之介さんや 旬坊の握りのように➡ 256 00:21:47,021 --> 00:21:50,024 誠実さと温かさと➡ 257 00:21:50,024 --> 00:21:53,678 何より江戸前の心意気を感じる。 258 00:21:53,678 --> 00:21:55,696 うん。 259 00:21:55,696 --> 00:21:58,396 いい寿司じゃ。 260 00:22:02,353 --> 00:22:06,040 ご隠居なら わかっていただける と思ってました。 261 00:22:06,040 --> 00:22:10,661 鱒之介さんは はなから 達也くんのしたことを➡ 262 00:22:10,661 --> 00:22:13,681 責めるつもりなんぞなかった。 263 00:22:13,681 --> 00:22:15,700 えっ…。 264 00:22:15,700 --> 00:22:19,353 達也くんのしたことは 人として正しい。 265 00:22:19,353 --> 00:22:23,774 じゃが 簡単に それを認めてしまえば➡ 266 00:22:23,774 --> 00:22:27,011 また同じようなことが 起きたときに➡ 267 00:22:27,011 --> 00:22:30,681 安易に寿司を握ればいいと 考えてしまう。 268 00:22:30,681 --> 00:22:36,053 そのときこそ 店の信用を失う可能性が高い。 269 00:22:36,053 --> 00:22:40,107 だから 鱒之介さんは あえて➡ 270 00:22:40,107 --> 00:22:44,011 厳しく教えようとしたんじゃ。 271 00:22:44,011 --> 00:22:48,382 でも わざわざ じっちゃんを呼ばなくても。 272 00:22:48,382 --> 00:22:50,701 旬坊。 273 00:22:50,701 --> 00:22:56,090 鱒之介さんは わしのことを 気遣ってくれたんじゃよ。 274 00:22:56,090 --> 00:22:58,709 こないだの一件で➡ 275 00:22:58,709 --> 00:23:04,409 わしは 柳寿しに 来づらくなっていたからのう。 276 00:23:17,044 --> 00:23:19,046 達也! 277 00:23:19,046 --> 00:23:21,048 はい。 278 00:23:21,048 --> 00:23:24,035 寿司職人にとって いちばん大切なのは➡ 279 00:23:24,035 --> 00:23:27,054 お客さんのために握ることだ。 280 00:23:27,054 --> 00:23:30,057 お前は 俺に叱られるのを 覚悟しながら➡ 281 00:23:30,057 --> 00:23:32,457 それを実践した。 282 00:23:35,146 --> 00:23:38,049 もう お前に教えることは 何もねえ。 283 00:23:38,049 --> 00:23:41,052 北海道に帰ったら➡ 284 00:23:41,052 --> 00:23:44,722 もっといい寿司職人になれ。 285 00:23:44,722 --> 00:23:46,722 いいな。 286 00:23:50,728 --> 00:23:52,728 はい。 287 00:24:17,722 --> 00:24:20,722 すまなかったな 旬。 288 00:24:24,712 --> 00:24:26,714 親父。 289 00:24:26,714 --> 00:24:30,014 俺 今日も ツケ場に立って 寿司を握るよ。 290 00:24:33,020 --> 00:24:35,420 ああ。