1 00:00:00,934 --> 00:00:02,870 ♬~ 2 00:00:02,870 --> 00:00:05,305 「バタフライエフェクト」。 3 00:00:05,305 --> 00:00:09,810 一羽の蝶の羽ばたきが 巡り巡って 嵐を起こす。 4 00:00:14,314 --> 00:00:16,650 歴史は いわば➡ 5 00:00:16,650 --> 00:00:19,953 「バタフライエフェクト」の 積み重ねである。 6 00:00:24,324 --> 00:00:32,032 これは 20世紀最高の知性と言われた ある科学者の脳の写真である。 7 00:00:34,001 --> 00:00:40,307 その知性の秘密を解き明かそうと 死後に取り出され 今も保管されている。 8 00:00:42,676 --> 00:00:49,683 この頭脳から生み出された理論や数式は 世界の在り方を根本から変えた。 9 00:00:53,320 --> 00:00:57,624 未曽有の殺りくをもたらした 原子爆弾。 10 00:01:02,162 --> 00:01:08,468 金融取引の自動化と市場の膨張を 推し進めた マネー革命。 11 00:01:10,637 --> 00:01:12,639 その脳の持ち主は… 12 00:01:15,309 --> 00:01:20,314 相対性理論をはじめ 数々の偉大な発見を成し遂げた。 13 00:01:34,661 --> 00:01:39,533 相対性理論は 後進の科学者たちによって磨き上げられ➡ 14 00:01:39,533 --> 00:01:43,537 ついには 核というパンドラの箱を開けた。 15 00:01:52,679 --> 00:01:58,018 そして ランダムに見える粒子の動きが 計算できることを示した➡ 16 00:01:58,018 --> 00:02:01,321 ブラウン運動に関する数式。 17 00:02:06,626 --> 00:02:12,332 経済学者たちに応用され 金融市場のありようを一変させた。 18 00:02:14,968 --> 00:02:18,305 金融取引は コンピューターで自動化され➡ 19 00:02:18,305 --> 00:02:22,009 爆発的なマネーの膨張を 引き起こしていく。 20 00:02:24,177 --> 00:02:29,649 しかし 巨大化した市場は 時に制御不能となり➡ 21 00:02:29,649 --> 00:02:32,953 世界を深刻な経済危機へと突き落とした。 22 00:02:35,989 --> 00:02:41,862 一つの ささやかな出来事から 歴史の知られざる連鎖をたどる➡ 23 00:02:41,862 --> 00:02:45,866 「映像の世紀 バタフライエフェクト」。 24 00:02:48,335 --> 00:02:56,043 今回は 一人の天才から始まった 科学者たちの罪と勇気の物語である。 25 00:03:06,286 --> 00:03:10,590 1896年 スイス。 26 00:03:14,961 --> 00:03:18,298 ヨーロッパを代表する理系の大学で➡ 27 00:03:18,298 --> 00:03:23,603 ドイツ生まれの あるユダヤ人青年が 物理学を学んでいた。 28 00:03:32,312 --> 00:03:36,616 容姿端麗で 頭脳明晰。 29 00:03:38,985 --> 00:03:44,991 しかし すこぶる生意気で 教授からの評判は悪かった。 30 00:03:46,660 --> 00:03:54,534 大学の研究者を目指していたが 性格が災いしてか 不採用に次ぐ不採用。 31 00:03:54,534 --> 00:04:00,941 困窮する姿を見かねた友人が 就職先を紹介してくれた。 32 00:04:00,941 --> 00:04:05,612 それは ベルンにある スイスの特許局。 33 00:04:05,612 --> 00:04:08,515 特許申請の書類を審査するという➡ 34 00:04:08,515 --> 00:04:14,621 研究者にとっては 退屈な事務仕事に思われた。 35 00:04:14,621 --> 00:04:18,492 (爆発音) 36 00:04:18,492 --> 00:04:23,630 ところが 新しい発明が 次々と生まれていた この時代。 37 00:04:23,630 --> 00:04:26,533 毎日 寄せられる特許の申請書は➡ 38 00:04:26,533 --> 00:04:30,237 アインシュタインの脳を 大いに刺激した。 39 00:05:00,467 --> 00:05:05,172 当時 住んでいた家が 今も記念館として残されている。 40 00:05:10,610 --> 00:05:16,917 自宅では いつも リビングの机に向かい 思索にふけっていたという。 41 00:05:19,619 --> 00:05:22,289 仕事は はやばやと終わらせ➡ 42 00:05:22,289 --> 00:05:27,994 有り余る時間を 好きな研究に没頭して 過ごすことができた。 43 00:05:50,650 --> 00:05:55,322 特許局で働き始めて3年後の 1905年。 44 00:05:55,322 --> 00:06:00,327 後に「奇跡の年」と呼ばれる この年。 45 00:06:02,128 --> 00:06:07,434 アインシュタインは 画期的な論文を相次いで発表する。 46 00:06:10,604 --> 00:06:15,909 中でも 大きな注目を集めたのが 相対性理論。 47 00:06:24,618 --> 00:06:29,289 しかし 当時 この難解な理論を理解できる人は➡ 48 00:06:29,289 --> 00:06:32,292 世界に 10人もいないと言われた。 49 00:06:34,961 --> 00:06:39,633 発明王 トーマス・エジソンが 相対性理論について語る➡ 50 00:06:39,633 --> 00:06:42,335 貴重な映像が残されている。 51 00:06:52,212 --> 00:06:54,214 (笑い声) 52 00:06:56,182 --> 00:07:00,921 しかし この理論は 科学者たちに衝撃を与え➡ 53 00:07:00,921 --> 00:07:04,791 実用化に向けた研究が 一気に広がっていく。 54 00:07:04,791 --> 00:07:10,263 中でも 原子から ばく大なエネルギーを 取り出す 原子力研究は➡ 55 00:07:10,263 --> 00:07:13,266 多くの科学者を とりこにした。 56 00:07:48,301 --> 00:07:50,971 1914年。 57 00:07:50,971 --> 00:07:54,841 第一次世界大戦が勃発した ちょうど この年。 58 00:07:54,841 --> 00:07:59,546 アインシュタインは 母国ドイツへと戻った。 59 00:08:01,581 --> 00:08:07,887 ベルリン大学に教授として招かれ 充実した研究生活を送る。 60 00:08:09,923 --> 00:08:13,793 ポツダムには 通称 「アインシュタイン塔」と呼ばれる➡ 61 00:08:13,793 --> 00:08:16,796 研究施設まで建設された。 62 00:08:18,598 --> 00:08:26,306 その中には 最新の望遠鏡を備え 理論を検証する実験も進められていた。 63 00:08:27,941 --> 00:08:33,813 アインシュタインは 1921年の ノーベル物理学賞を受賞し➡ 64 00:08:33,813 --> 00:08:36,816 世界的な名声を手にした。 65 00:08:40,954 --> 00:08:47,961 これは ベルリンで開かれた ラジオに関する展示会の映像である。 66 00:08:51,297 --> 00:08:57,170 最先端の通信技術をアピールするために 開会式に招かれた アインシュタイン。 67 00:08:57,170 --> 00:09:01,875 そのスピーチは ドイツ全土に生放送された。 68 00:09:43,550 --> 00:09:51,257 時代の寵児となったアインシュタインは 世界各国から講演に招かれるようになる。 69 00:10:07,841 --> 00:10:09,843 (笑い声) 70 00:10:13,313 --> 00:10:19,185 出版社からの招きで 日本にも 足を運んでいた。 71 00:10:19,185 --> 00:10:24,190 その時の印象を 息子宛ての手紙に つづっている。 72 00:10:55,355 --> 00:11:02,962 しかし 次第に 母国ドイツでは 不穏な空気が広がっていた。 73 00:11:02,962 --> 00:11:06,833 世界恐慌で 経済が壊滅的な状況に陥る中➡ 74 00:11:06,833 --> 00:11:12,839 人々の圧倒的な支持を受け ヒトラー率いるナチスが台頭。 75 00:11:15,975 --> 00:11:18,878 ゲルマン民族の復興を掲げる ヒトラーは➡ 76 00:11:18,878 --> 00:11:25,652 ユダヤ人を「有害な人種」だと公言し 徹底的に弾圧し始める。 77 00:11:25,652 --> 00:11:29,322 ユダヤ系の商店への不買運動が広がり➡ 78 00:11:29,322 --> 00:11:34,327 ユダヤ人は 次々と 公職から追放されていった。 79 00:11:44,671 --> 00:11:51,978 攻撃の矛先は ユダヤ人科学者 アインシュタインにも向けられていく。 80 00:11:57,016 --> 00:11:59,352 ユダヤ人が書いた本や➡ 81 00:11:59,352 --> 00:12:03,222 「非ドイツ的」とされた本を焼く 焚書も始まり➡ 82 00:12:03,222 --> 00:12:07,226 アインシュタインの著書は 格好の標的となった。 83 00:12:37,991 --> 00:12:41,661 1933年1月。 84 00:12:41,661 --> 00:12:46,966 アインシュタインは アメリカのカリフォルニア州を訪れる。 85 00:12:49,535 --> 00:12:52,005 皮肉なことに➡ 86 00:12:52,005 --> 00:12:57,010 ドイツとアメリカの友好関係を祝う 演説をすることが目的だった。 87 00:12:58,678 --> 00:13:04,984 しかし その帰りの船の中で 思いもよらない知らせが届く。 88 00:13:06,486 --> 00:13:11,257 ベルリン近郊の別荘に 武器が隠されているという容疑で➡ 89 00:13:11,257 --> 00:13:14,961 ナチスが 強制捜査を行ったというのだ。 90 00:13:18,965 --> 00:13:22,302 アインシュタインは そのまま亡命。 91 00:13:22,302 --> 00:13:25,605 二度と ドイツの地を踏むことはなかった。 92 00:13:27,640 --> 00:13:29,976 その年の10月。 93 00:13:29,976 --> 00:13:33,313 ドイツから避難した学者たちを 支援する集会で➡ 94 00:13:33,313 --> 00:13:37,617 アインシュタインが行った スピーチの映像が残されている。 95 00:13:50,663 --> 00:13:52,665 (拍手) 96 00:14:02,275 --> 00:14:05,945 1939年9月。 97 00:14:05,945 --> 00:14:11,250 ドイツが ポーランドに侵攻し 第二次世界大戦が始まった。 98 00:14:16,289 --> 00:14:22,995 世界各国は 最新の科学技術を導入し 強力な兵器の開発を進める。 99 00:14:30,837 --> 00:14:35,308 中でも 最新鋭の兵器として 注目されたのは➡ 100 00:14:35,308 --> 00:14:39,011 原子のエネルギーを利用する爆弾だった。 101 00:14:41,647 --> 00:14:46,986 アインシュタインの相対性理論が 明らかにした 原子の力。 102 00:14:46,986 --> 00:14:51,858 原子核を分裂させることで ばく大なエネルギーが放出される。 103 00:14:51,858 --> 00:14:54,327 このエネルギーを利用すれば➡ 104 00:14:54,327 --> 00:14:58,331 強力な爆弾をつくり出せると 考えられたのだ。 105 00:15:04,937 --> 00:15:12,812 世界各国で 原子爆弾に関する研究が本格化する。 106 00:15:12,812 --> 00:15:19,819 日本でも 理化学研究所の仁科芳雄などが 秘密裏に開発を進めていた。 107 00:15:24,957 --> 00:15:31,297 中でも 研究が最も進んでいると 見られていたのが ドイツだった。 108 00:15:31,297 --> 00:15:38,171 世界で初めて ウランによる 原子炉を建造し 実験も進めていた。 109 00:15:38,171 --> 00:15:44,877 更に 占領したチェコスロバキアで 原料となるウラン鉱山も接収していた。 110 00:15:47,847 --> 00:15:54,554 このままでは ヒトラーが世界に先駆けて 原子爆弾を手にしてしまうのではないか。 111 00:15:56,322 --> 00:15:58,991 焦りを募らせた アインシュタインは➡ 112 00:15:58,991 --> 00:16:03,696 時のアメリカ大統領 ルーズベルトに 書簡を送った。 113 00:16:38,297 --> 00:16:42,168 ルーズベルトは アインシュタインの進言を受け入れ➡ 114 00:16:42,168 --> 00:16:45,471 原子爆弾の開発に着手する。 115 00:17:06,459 --> 00:17:13,165 しかし ドイツは 原子爆弾の開発を進めてはいなかった。 116 00:17:17,136 --> 00:17:22,608 ここは ドイツ陸軍の兵器研究所。 117 00:17:22,608 --> 00:17:30,283 ドイツが ひそかに開発していた新兵器は 弾道ミサイル V2ロケットだった。 118 00:17:30,283 --> 00:17:35,955 ヒトラーは 原子爆弾を ユダヤ人 アインシュタインの研究から始まった➡ 119 00:17:35,955 --> 00:17:40,826 「ユダヤ的科学」と捉え 忌み嫌っていたと言われる。 120 00:17:40,826 --> 00:17:52,305 ♬~ 121 00:17:52,305 --> 00:18:00,012 1943年 アメリカ テネシー州の原野に 突如 巨大な街が築かれた。 122 00:18:01,581 --> 00:18:04,483 目的は ほとんどの人に知らされないまま➡ 123 00:18:04,483 --> 00:18:09,789 最盛期には 7万5,000もの人々が働いていた。 124 00:18:13,926 --> 00:18:18,931 街建設の目的は 原子爆弾の開発。 125 00:18:22,268 --> 00:18:26,605 全米各地で進められていた この極秘プロジェクトは➡ 126 00:18:26,605 --> 00:18:29,609 「マンハッタン計画」と 名付けられた。 127 00:18:32,478 --> 00:18:39,619 国じゅうから 10万人に上る 科学者と技術者が集められた。 128 00:18:39,619 --> 00:18:44,924 ナチスの迫害を逃れたユダヤ人も 多数参加していた。 129 00:18:49,295 --> 00:18:52,631 プロジェクトのリーダーを務めたのは➡ 130 00:18:52,631 --> 00:18:57,970 宇宙物理学者の ロバート・オッペンハイマー。 131 00:18:57,970 --> 00:19:03,242 相対性理論を発展させた 天体や ブラックホールの研究で注目を集め➡ 132 00:19:03,242 --> 00:19:06,912 30代の若さで抜擢された。 133 00:19:06,912 --> 00:19:12,918 彼もまた ドイツから移住した ユダヤ人の息子だった。 134 00:19:45,951 --> 00:19:51,824 これは 原爆開発の過程を再現した 映画「原子の力」。 135 00:19:51,824 --> 00:19:56,128 戦後 科学者たちが自ら出演し 製作された。 136 00:19:57,963 --> 00:20:00,633 アインシュタインの相対性理論が➡ 137 00:20:00,633 --> 00:20:03,969 オッペンハイマーら 後進の科学者へと引き継がれ➡ 138 00:20:03,969 --> 00:20:09,275 原爆が実用化されていった様子が 描かれている。 139 00:20:10,843 --> 00:20:14,613 映画では 原子爆弾の燃料となる ウランから➡ 140 00:20:14,613 --> 00:20:18,617 プルトニウムを抽出する過程も 再現されていた。 141 00:20:35,901 --> 00:20:38,671 (爆発音) 142 00:20:38,671 --> 00:20:42,341 1945年5月。 143 00:20:42,341 --> 00:20:46,011 ドイツが降伏した。 144 00:20:46,011 --> 00:20:49,882 アインシュタインが懸念していた 原子爆弾の開発は➡ 145 00:20:49,882 --> 00:20:55,588 ドイツでは行われていなかったことを アメリカは知る。 146 00:20:57,623 --> 00:21:02,928 それでも アメリカは 核開発を止めることはなかった。 147 00:21:05,297 --> 00:21:07,233 7月16日。 148 00:21:07,233 --> 00:21:14,306 ついに 原子爆弾が完成し 人類初の核実験が行われる。 149 00:21:14,306 --> 00:21:18,010 いわゆる 「トリニティ実験」だ。 150 00:21:20,179 --> 00:21:27,887 実験の直前 オッペンハイマーは 自ら 爆弾の最終点検を行っていた。 151 00:21:32,324 --> 00:21:39,031 失敗が許されない極度のプレッシャーの中 3年余りで完成させた。 152 00:21:42,968 --> 00:21:47,873 オッペンハイマーは 実験に参加していた 科学者の弟と共に➡ 153 00:21:47,873 --> 00:21:53,179 8キロほど離れた場所で 爆発の瞬間を見届けた。 154 00:21:57,550 --> 00:22:03,255 (爆発音) 155 00:22:37,189 --> 00:22:39,191 その3週間後。 156 00:22:39,191 --> 00:22:44,196 原子爆弾を積んだ B29が向かった先は 日本だった。 157 00:22:47,867 --> 00:22:53,005 広島では ウラン型の爆弾で14万人。 158 00:22:53,005 --> 00:23:00,012 長崎では プルトニウム型の爆弾で 7万人の命が奪われた。 159 00:23:08,287 --> 00:23:12,157 オッペンハイマーは 戦争を終結させた功労者として➡ 160 00:23:12,157 --> 00:23:18,297 アメリカ国民から 最大級の賛辞が贈られた。 161 00:23:18,297 --> 00:23:22,968 しかし 広島と長崎の惨状を知った オッペンハイマーは➡ 162 00:23:22,968 --> 00:23:27,973 次第に 激しい後悔の念に とらわれるようになる。 163 00:23:30,309 --> 00:23:36,315 晩年 自らの核開発を振り返って こう語った。 164 00:24:00,939 --> 00:24:08,280 第二次世界大戦が終結しても 核開発競争は終わらなかった。 165 00:24:08,280 --> 00:24:15,154 世界は 米ソが核の脅威を突きつけ合う 「冷戦の時代」へと突入する。 166 00:24:15,154 --> 00:24:18,624 (爆発音) 167 00:24:18,624 --> 00:24:23,929 終戦から4年後 ソビエトも 初の核実験に成功。 168 00:24:25,965 --> 00:24:29,968 開発競争は ますます加速していった。 169 00:24:31,837 --> 00:24:35,975 戦後も アメリカで研究活動を続けていた アインシュタインは➡ 170 00:24:35,975 --> 00:24:39,645 核の恐怖に覆われた世界を 目の当たりにし➡ 171 00:24:39,645 --> 00:24:42,948 自責の念に さいなまれるようになる。 172 00:25:09,608 --> 00:25:16,281 アインシュタインは 世界に向けて 核兵器の廃絶を訴えかけるようになった。 173 00:25:16,281 --> 00:25:22,988 1950年に アメリカの番組に出演した時の 貴重な映像が残されている。 174 00:25:47,980 --> 00:25:53,318 しかし 当時 アメリカでは ソビエトの脅威に対抗するため➡ 175 00:25:53,318 --> 00:25:56,622 核武装は 国民から支持されていた。 176 00:25:59,925 --> 00:26:04,263 反対する者には 「共産主義者」のレッテルが貼られ➡ 177 00:26:04,263 --> 00:26:07,566 厳しい目が向けられた。 178 00:26:09,134 --> 00:26:13,272 アインシュタインも 秘密裏に FBIの監視下に置かれ➡ 179 00:26:13,272 --> 00:26:18,577 市民権の取り消しを視野に入れた 調査まで行われていた。 180 00:26:21,613 --> 00:26:28,620 そんな アインシュタインの元を 一人の日本人科学者が訪ねた。 181 00:26:31,957 --> 00:26:36,295 中間子論により 日本で初めて ノーベル物理学賞を受賞した➡ 182 00:26:36,295 --> 00:26:39,298 湯川秀樹だ。 183 00:26:41,967 --> 00:26:45,637 アインシュタインは 湯川の手を握り➡ 184 00:26:45,637 --> 00:26:51,643 「日本人を殺すことになり 申し訳ない」と 涙を流したという。 185 00:26:53,312 --> 00:27:00,319 だが 実は湯川自身も 原子爆弾の開発には 忸怩たる思いを抱いていた。 186 00:27:02,921 --> 00:27:10,796 湯川の中間子論は 原子力の研究には 欠かせない基本理論の一つだった。 187 00:27:10,796 --> 00:27:17,803 更に 湯川の死後に日記が公開され 新たな事実も明らかになった。 188 00:27:20,939 --> 00:27:25,277 ここに記された 「F研究」という言葉。 189 00:27:25,277 --> 00:27:28,947 これは 戦時中 海軍からの依頼で➡ 190 00:27:28,947 --> 00:27:35,254 京都帝国大学の物理学者が進めていた 原爆研究を意味する。 191 00:27:36,822 --> 00:27:40,526 湯川も この研究会に参加していた。 192 00:27:42,294 --> 00:27:45,631 湯川もまた アインシュタインと同じように➡ 193 00:27:45,631 --> 00:27:51,336 原子力研究の一端を担った責任を 感じるようになっていたのだ。 194 00:28:28,607 --> 00:28:35,948 しかし 科学者たちの思いとは裏腹に アメリカの核開発は進んでいく。 195 00:28:35,948 --> 00:28:42,287 1952年には 水素爆弾の実験に 世界で初めて成功する。 196 00:28:42,287 --> 00:28:48,994 その威力は 広島に落とされた原爆の 625倍にも上った。 197 00:28:50,629 --> 00:28:54,499 マンハッタン計画の責任者だった オッペンハイマー。 198 00:28:54,499 --> 00:28:57,502 戦後は 原爆開発の方針を決める➡ 199 00:28:57,502 --> 00:29:01,807 原子力委員会のアドバイザーを 務めていた。 200 00:29:03,575 --> 00:29:10,282 しかし 水爆など 更なる核開発には 断固として反対していた。 201 00:29:34,273 --> 00:29:37,943 オッペンハイマーもまた 共産主義者の摘発➡ 202 00:29:37,943 --> 00:29:41,246 「赤狩り」の対象となっていく。 203 00:30:04,970 --> 00:30:07,639 1954年。 204 00:30:07,639 --> 00:30:10,309 オッペンハイマーは 公職から追放され➡ 205 00:30:10,309 --> 00:30:14,313 原子力委員会のアドバイザーも 解任された。 206 00:30:16,982 --> 00:30:21,853 所長を務めていた研究所からも 追放せよという声が上がるが➡ 207 00:30:21,853 --> 00:30:24,856 アインシュタインらが 猛然と反対。 208 00:30:24,856 --> 00:30:27,859 かろうじて 職は保たれた。 209 00:30:39,237 --> 00:30:44,009 1955年4月18日。 210 00:30:44,009 --> 00:30:47,312 アインシュタインが世を去った。 211 00:30:49,348 --> 00:30:54,219 本人の遺志により 葬儀は 家族と友人のみで ひっそりと行われ➡ 212 00:30:54,219 --> 00:30:58,523 遺灰は 川に散骨された。 213 00:31:00,959 --> 00:31:08,967 枕元には 数日後に控えていた講演に向け 書きかけた原稿が残されていた。 214 00:31:42,334 --> 00:31:46,004 アインシュタインの 訃報に接した オッペンハイマーは➡ 215 00:31:46,004 --> 00:31:49,708 偉大な科学者の死に 哀悼の意を示した。 216 00:32:16,968 --> 00:32:19,638 アインシュタインの遺志を受け継ぎ➡ 217 00:32:19,638 --> 00:32:22,974 オッペンハイマーは その後も生涯を懸けて➡ 218 00:32:22,974 --> 00:32:26,278 核の脅威に 警鐘を鳴らし続けた。 219 00:32:57,876 --> 00:33:02,180 平和を訴える科学者同士の連帯は 日本にも広がる。 220 00:33:03,949 --> 00:33:07,285 湯川秀樹は アインシュタインの死の直前➡ 221 00:33:07,285 --> 00:33:10,288 一通の手紙を受け取っていた。 222 00:33:12,157 --> 00:33:15,961 核兵器の廃絶を目指す 世界の科学者たちの➡ 223 00:33:15,961 --> 00:33:20,265 共同宣言への協力を 呼びかけるものだった。 224 00:33:21,833 --> 00:33:26,972 その宣言に基づき 始まったのが パグウォッシュ会議。 225 00:33:26,972 --> 00:33:31,843 東西両陣営の科学者たちが参加していた。 226 00:33:31,843 --> 00:33:38,984 日本で初めて開かれた時 開会の演説を託されたのが 湯川だった。 227 00:33:38,984 --> 00:33:43,655 病に倒れながらも 医師の反対を押し切って参加。 228 00:33:43,655 --> 00:33:47,659 執念で 核の廃絶を訴えかけた。 229 00:33:59,204 --> 00:34:04,276 パグウォッシュ会議は 後に ノーベル平和賞を受賞。 230 00:34:04,276 --> 00:34:09,581 今も 世界の科学者たちによって 活動が受け継がれている。 231 00:34:19,291 --> 00:34:24,963 1905年に アインシュタインが発表した 数々の論文。 232 00:34:24,963 --> 00:34:29,301 その中に もう一つ 世界を一変させた理論がある。 233 00:34:29,301 --> 00:34:32,304 ブラウン運動に関する数式だ。 234 00:34:35,640 --> 00:34:39,311 水に落ちたインクなど 小さな粒子の動きは➡ 235 00:34:39,311 --> 00:34:44,316 ランダムに見えても 規則性があり 予測可能であることを証明した。 236 00:34:45,984 --> 00:34:54,693 この数式が 意外な分野で革命を起こし 世界を大きく揺さぶることになる。 237 00:34:58,997 --> 00:35:01,900 1970年代初頭。 238 00:35:01,900 --> 00:35:06,805 経済学に 数学を融合させる 最先端の研究が行われていた➡ 239 00:35:06,805 --> 00:35:09,808 マサチューセッツ工科大学。 240 00:35:12,277 --> 00:35:15,180 ここで 金融取引の 数理モデルの➡ 241 00:35:15,180 --> 00:35:19,184 研究を進めていたのが 経済学者の… 242 00:35:22,921 --> 00:35:29,928 ショールズは 数学者と共に 1973年に 画期的な論文を発表する。 243 00:35:33,965 --> 00:35:40,839 株価の変動を予測し リスクを避け 最適な投資額を導く理論を構築。 244 00:35:40,839 --> 00:35:46,144 後に 「ブラック・ショールズ方程式」と 呼ばれる数式を編み出した。 245 00:35:48,980 --> 00:35:53,318 この方程式を作り出す上で ブレークスルーをもたらしたのが➡ 246 00:35:53,318 --> 00:35:57,322 70年前の アインシュタインの数式だった。 247 00:36:27,952 --> 00:36:31,623 アインシュタインは ブラウン運動の数式で➡ 248 00:36:31,623 --> 00:36:37,495 ランダムに見える粒子の動きが 計算できることを示した。 249 00:36:37,495 --> 00:36:42,634 ショールズは 粒子と同じように 株価の値動きも予測可能で➡ 250 00:36:42,634 --> 00:36:46,638 最適な投資額を計算できると考えたのだ。 251 00:37:12,597 --> 00:37:14,933 ブラック・ショールズ方程式は➡ 252 00:37:14,933 --> 00:37:18,937 金融市場の在り方を 根本から変えることになる。 253 00:37:21,606 --> 00:37:23,608 これは… 254 00:37:25,944 --> 00:37:28,613 株価や金利などを入力すると➡ 255 00:37:28,613 --> 00:37:33,618 自動的に 最適な投資額を はじき出してくれるというものだ。 256 00:37:36,955 --> 00:37:39,624 この方程式をきっかけに➡ 257 00:37:39,624 --> 00:37:42,961 コンピューターによる 金融取引の自動化が加速。 258 00:37:42,961 --> 00:37:45,864 さまざまな金融商品も開発され➡ 259 00:37:45,864 --> 00:37:50,869 実体経済を超える 「マネー革命」の時代を迎える。 260 00:38:01,446 --> 00:38:08,153 ショールズは 金融市場への貢献により ノーベル経済学賞を受賞した。 261 00:38:10,922 --> 00:38:15,593 そして 自らの理論を 実際の金融市場で試そうと➡ 262 00:38:15,593 --> 00:38:19,297 投資ファンド LTCMに参加する。 263 00:38:21,266 --> 00:38:24,169 LTCMには ショールズの他にも➡ 264 00:38:24,169 --> 00:38:29,607 FRBの元副議長や 有名トレーダーなど 精鋭が集い➡ 265 00:38:29,607 --> 00:38:32,911 「ウォール街のドリームチーム」と 呼ばれた。 266 00:38:34,946 --> 00:38:38,816 ここで ショールズは 自らの方程式を応用して➡ 267 00:38:38,816 --> 00:38:41,820 さまざまな金融商品を開発。 268 00:38:41,820 --> 00:38:48,293 世界中から投資を集めて 一時は 17兆円に上る資産を運用し➡ 269 00:38:48,293 --> 00:38:53,298 年間の利回りが 40%を超える実績を 誇っていた。 270 00:39:15,253 --> 00:39:19,958 しかし ドリームチームの繁栄は 長くは続かなかった。 271 00:39:23,595 --> 00:39:29,934 1998年 LTCMが 多額の金を流し込んでいた ロシアが➡ 272 00:39:29,934 --> 00:39:33,271 財政破綻の危機に直面する。 273 00:39:33,271 --> 00:39:37,609 ロシアだけでなく 新興国から 資金の流出が相次ぎ➡ 274 00:39:37,609 --> 00:39:41,613 世界経済は 深刻な打撃を受けた。 275 00:39:44,282 --> 00:39:47,952 リスクは予測できると 豪語していた LTCMは➡ 276 00:39:47,952 --> 00:39:51,823 この事態を読み切ることはできなかった。 277 00:39:51,823 --> 00:39:55,827 巨大な損失を抱え 破綻した。 278 00:39:55,827 --> 00:39:59,964 17兆円もの投資を集めていた LTCMの破綻は➡ 279 00:39:59,964 --> 00:40:05,970 金融機関だけなく 一般の投資家たちにも 多大な損失をもたらした。 280 00:40:31,896 --> 00:40:35,667 その後も 過ちは繰り返された。 281 00:40:35,667 --> 00:40:38,569 さまざまな金融テクニックが 編み出されたが➡ 282 00:40:38,569 --> 00:40:42,874 リスクを コントロールすることなど できなかった。 283 00:40:49,013 --> 00:40:52,717 危機の度に 同じ光景が繰り返される。 284 00:40:59,957 --> 00:41:04,829 しかし ショールズたちが切り開いた マネー革命の潮流は➡ 285 00:41:04,829 --> 00:41:09,300 もう 後戻りすることはない。 286 00:41:09,300 --> 00:41:16,174 金融市場では AIが主流となり もはや 人間の出る幕はない。 287 00:41:16,174 --> 00:41:21,312 世界の金融資産は 実体経済を上回るスピードで成長。 288 00:41:21,312 --> 00:41:27,318 この10年で およそ2倍 250兆ドルに膨れ上がった。 289 00:41:30,655 --> 00:41:34,525 今も ショールズは 投資の世界に身を置いている。 290 00:41:34,525 --> 00:41:40,231 リスクをコントロールする 万能の方程式を探し続けている。 291 00:42:07,959 --> 00:42:12,663 核の脅威もまた 世界を覆い続けている。 292 00:42:15,833 --> 00:42:23,141 世界が 核のない平和を願い続けてもなお 核兵器の進化は止まらない。 293 00:42:24,976 --> 00:42:28,646 アメリカで行われた 臨界前核実験。 294 00:42:28,646 --> 00:42:32,984 核爆発をさせず 爆弾の性能を確かめることができ➡ 295 00:42:32,984 --> 00:42:36,687 核兵器の性能向上を図ろうとしている。 296 00:42:39,657 --> 00:42:41,659 現在の… 297 00:42:43,327 --> 00:42:48,032 世界には 1万3,000を超える 核兵器があると言われる。 298 00:42:53,971 --> 00:42:56,674 アインシュタインが スイス・ベルンで生み出した➡ 299 00:42:56,674 --> 00:42:59,343 数々の理論や数式。 300 00:42:59,343 --> 00:43:03,948 それは この世界を確実に豊かにした。 301 00:43:03,948 --> 00:43:10,254 しかし 科学が発展すればするほど 破滅の種も産み落とした。 302 00:43:11,823 --> 00:43:14,292 第二次世界大戦のさなか➡ 303 00:43:14,292 --> 00:43:17,995 アインシュタインは こんな言葉を残している。 304 00:44:05,576 --> 00:44:39,877 ♬~