1 00:00:01,168 --> 00:00:08,842 ♬~ 2 00:00:08,842 --> 00:00:14,648 永久凍土が広がる シベリア 北極圏。 3 00:00:16,316 --> 00:00:22,122 この人を寄せつけない 極寒の地にある刑務所 「北極の狼」で➡ 4 00:00:22,122 --> 00:00:25,926 2年前 事件が起きた。 5 00:00:37,604 --> 00:00:43,176 プーチン政権を批判し 30年以上の懲役を宣告されていた➡ 6 00:00:43,176 --> 00:00:48,382 アレクセイ・ナワリヌイが 獄中で死去した。 7 00:00:49,950 --> 00:00:55,489 ロシアは ナワリヌイの死因を 自然死だと発表した。 8 00:00:55,489 --> 00:01:00,627 だが イギリスなど欧州5か国は 調査の結果➡ 9 00:01:00,627 --> 00:01:05,132 ロシアによる毒殺と断じた。 10 00:01:08,168 --> 00:01:16,677 ウラル山脈から太平洋に至り ロシアの国土の7割を占める 「シベリア」。 11 00:01:19,112 --> 00:01:25,319 19世紀 ロシア帝国は 勢力を東方へと拡大するため➡ 12 00:01:25,319 --> 00:01:29,323 シベリア開発に着手する。 13 00:01:31,425 --> 00:01:36,063 無数の流刑囚が 労働力として シベリアへ送られ➡ 14 00:01:36,063 --> 00:01:41,368 生きて帰ることなく この地に消えた。 15 00:02:20,407 --> 00:02:24,311 ソビエト連邦で スターリンが権力を握ると➡ 16 00:02:24,311 --> 00:02:28,315 シベリアは 更なる悲劇の舞台となった。 17 00:02:30,884 --> 00:02:38,291 罪の無い人々が シベリア全土に建設された 収容所へと送られた。 18 00:02:41,094 --> 00:02:46,933 タイガの開拓 鉄道建設 金の採掘➡ 19 00:02:46,933 --> 00:02:55,042 あらゆる国家事業に 囚人たちが動員され 多くの人が命を落とした。 20 00:02:57,644 --> 00:03:02,482 しかし戦後 アメリカとの覇権争いが始まると➡ 21 00:03:02,482 --> 00:03:06,987 シベリアは 罰の地から 希望の地へと変わる。 22 00:03:08,722 --> 00:03:14,294 ソ連は 資源の眠るシベリアを 国家戦略の要と位置づけ➡ 23 00:03:14,294 --> 00:03:19,599 数十万の市民が 開拓地へ向かった。 24 00:03:25,505 --> 00:03:33,647 無尽蔵の天然資源が次々と発見され シベリアは 成長の原動力となる。 25 00:03:33,647 --> 00:03:40,353 ソ連はアメリカに並ぶ 超大国の地位を固めた。 26 00:04:16,223 --> 00:04:21,128 「映像の世紀バタフライエフェクト」。 27 00:04:22,896 --> 00:04:26,433 人々の絶望と欲望をのみ込み➡ 28 00:04:26,433 --> 00:04:31,738 国家の覇権を支えてきた 広大なフロンティア 「シベリア」。 29 00:04:31,738 --> 00:04:36,042 その100年の記録である。 30 00:04:46,086 --> 00:04:51,892 100年前 ソ連は 国土の広大さを誇示するため➡ 31 00:04:51,892 --> 00:04:57,397 「世界の六分の一」と題した 記録映画を製作した。 32 00:05:00,467 --> 00:05:08,842 その中心にあったのが タイガと 永久凍土に覆われた シベリアである。 33 00:05:08,842 --> 00:05:16,283 古くから 狩猟や遊牧を営む 多様な民族が暮らしていた。 34 00:05:16,283 --> 00:05:18,718 シベリアの広大な版図は➡ 35 00:05:18,718 --> 00:05:26,459 帝政ロシアが 先住民族を征服しながら 広げていったものだった。 36 00:05:26,459 --> 00:05:34,568 ヨーロッパの辺境国であったロシアは 世界最大の国家へ 姿を変えていく。 37 00:06:03,663 --> 00:06:10,971 19世紀末 帝国が総力を挙げて シベリア鉄道の建設を掲げると➡ 38 00:06:10,971 --> 00:06:16,109 大地の景色は一変する。 39 00:06:16,109 --> 00:06:19,045 全長 9,300キロ。 40 00:06:19,045 --> 00:06:25,752 これは 日本からアメリカ大陸までの距離を はるかに凌ぐ。 41 00:06:27,587 --> 00:06:35,795 完成まで 25年の歳月を要する 世界最長の鉄道建設が始まる。 42 00:06:38,198 --> 00:06:43,003 労働者や流刑囚が シベリアの荒野に送り込まれ➡ 43 00:06:43,003 --> 00:06:48,008 安価な外国人労働者も駆り出された。 44 00:06:50,644 --> 00:06:55,148 建設ルートを横切る無数の河川に 橋が架けられ➡ 45 00:06:55,148 --> 00:06:59,953 新たな街が 次々と誕生する。 46 00:07:01,554 --> 00:07:07,560 20年で 170万のロシア人が入植した。 47 00:07:11,231 --> 00:07:16,002 このロシアの東方進出に 危機感を抱いたのが➡ 48 00:07:16,002 --> 00:07:23,610 東アジアへの領土拡張をもくろむ 新興国 日本だった。 49 00:07:44,731 --> 00:07:55,542 1904年 日本はロシアへ奇襲攻撃を仕掛け ついに 日露の戦端が開かれた。 50 00:07:58,978 --> 00:08:03,483 100万を超すロシア将兵が シベリア鉄道によって➡ 51 00:08:03,483 --> 00:08:07,787 前線の満州へと 送り込まれた。 52 00:08:12,225 --> 00:08:22,168 日本軍も 朝鮮半島 南満州へ大軍を派遣。 戦局は拡大していく。 53 00:08:22,168 --> 00:08:27,007 ♬~ 54 00:08:27,007 --> 00:08:29,009 (砲弾の音) 55 00:08:29,009 --> 00:08:33,680 日本軍のねらいは シベリア鉄道が全線開通し➡ 56 00:08:33,680 --> 00:08:38,651 ロシアの輸送力が整う前に 決着をつけることだった。 57 00:08:38,651 --> 00:08:44,290 激しい戦闘の末 ロシアは敗北する。 58 00:08:44,290 --> 00:08:53,199 ♬~ 59 00:08:56,870 --> 00:09:01,474 日露戦争に勝利した日本は シベリア極東に位置する➡ 60 00:09:01,474 --> 00:09:05,578 樺太南部を獲得する。 61 00:09:13,586 --> 00:09:21,995 これは 北海道から派遣された日本軍が 冬の樺太を撮影した映像である。 62 00:09:26,066 --> 00:09:31,971 樺太での極寒の生活が記録されている。 63 00:09:34,407 --> 00:09:40,613 零下40度で水揚げされた魚は 瞬時に凍結。 64 00:09:43,249 --> 00:09:49,155 市場では 凍った肉を 斧で切り分け 販売した。 65 00:09:52,926 --> 00:10:00,066 雄大な自然と豊富な天然資源を持つ樺太は 「宝の島」と宣伝され➡ 66 00:10:00,066 --> 00:10:04,971 日本人の出稼ぎや 入植者が急増する。 67 00:10:40,673 --> 00:10:46,846 一方 ロシアでは 日露戦争の敗北を機に 革命の機運が高まり➡ 68 00:10:46,846 --> 00:10:53,653 1917年 ロマノフ朝が崩壊した。 69 00:10:53,653 --> 00:10:59,092 そして レーニン率いるボリシェビキが 首都でクーデターを起こし➡ 70 00:10:59,092 --> 00:11:02,295 権力を掌握する。 71 00:11:03,930 --> 00:11:12,438 だが 共産党政権の支配は都市部に限られ 全土には 統治が及んでいなかった。 72 00:11:14,140 --> 00:11:18,044 権力の空白地帯となった シベリアに目をつけたのが➡ 73 00:11:18,044 --> 00:11:23,516 利権獲得を狙う 外国勢力だった。 74 00:11:23,516 --> 00:11:32,425 これは シベリアの要衝 ウラジオストクに 出兵した 欧米列強軍の映像である。 75 00:11:54,213 --> 00:12:00,486 日本を含む7か国が レーニン率いる共産党政権を承認せず➡ 76 00:12:00,486 --> 00:12:03,289 シベリアへ軍を派兵。 77 00:12:03,289 --> 00:12:09,896 日本は 列強最多となる 7万の軍を送り込んだ。 78 00:12:12,932 --> 00:12:18,237 一方 共産党政権も反撃する。 79 00:12:28,481 --> 00:12:34,554 ロシア全土に宣伝資料を満載した プロパガンダ列車を走らせ➡ 80 00:12:34,554 --> 00:12:39,158 外国勢力への抵抗を 呼びかけた。 81 00:12:52,105 --> 00:13:05,018 ♬~ 82 00:13:07,220 --> 00:13:13,159 シベリア各地で 共産党支持の農民や労働者が パルチザンを結成し➡ 83 00:13:13,159 --> 00:13:15,561 日本軍へ襲いかかった。 84 00:13:17,397 --> 00:13:20,299 (爆発音) 85 00:13:47,226 --> 00:13:52,465 共産党政権の敵は 外国軍だけではなかった。 86 00:13:52,465 --> 00:14:00,673 これは シベリアを拠点とする反共産党勢力 「白軍」の映像である。 87 00:14:02,508 --> 00:14:10,717 シベリアの白軍は 外国列強軍の支援を受け 13万の軍勢に拡大。 88 00:14:10,717 --> 00:14:15,154 共産党率いる赤軍と 激突した。 89 00:14:15,154 --> 00:14:18,057 (砲弾の音) 90 00:14:18,057 --> 00:14:26,733 白軍と赤軍 そして外国軍が入り乱れ ロシアは熾烈な内戦へと突入➡ 91 00:14:26,733 --> 00:14:31,037 1,000万の命が失われた。 92 00:14:34,607 --> 00:14:43,182 1922年 赤軍が内戦を制し ソビエト連邦が誕生した。 93 00:14:43,182 --> 00:14:48,020 外国軍は 巨額の戦費と 多くの犠牲を払いながら➡ 94 00:14:48,020 --> 00:14:53,126 何も手にすることなく 去っていった。 95 00:14:55,261 --> 00:15:01,968 そして シベリアを舞台とする 新たな悲劇が始まる。 96 00:15:01,968 --> 00:15:09,142 ソ連で権力を握ったスターリンは シベリア各地に 次々と収容所を建設。 97 00:15:09,142 --> 00:15:14,947 その数は 全土で476か所に上った。 98 00:15:16,883 --> 00:15:19,852 外部から隔絶された収容所には➡ 99 00:15:19,852 --> 00:15:26,559 内戦で敗れた白軍勢力 反体制的と見なされた聖職者などが➡ 100 00:15:26,559 --> 00:15:30,463 次々と送られていった。 101 00:15:35,301 --> 00:15:41,874 強制労働を通じて 社会主義的人間に 再教育するという名目で➡ 102 00:15:41,874 --> 00:15:47,880 囚人たちは 無償の労働力として利用される。 103 00:15:49,549 --> 00:15:53,219 最も過酷な収容所と恐れられたのが➡ 104 00:15:53,219 --> 00:15:58,558 シベリア極北に位置し 冬には零下45度に達する➡ 105 00:15:58,558 --> 00:16:02,361 コルィマの金鉱だった。 106 00:16:03,996 --> 00:16:12,405 囚人たちは 数か月に及ぶ移送の果てに 無人の荒野に放り出された。 107 00:16:14,073 --> 00:16:18,945 金鉱を切り開き 凍りついた大地を掘り起こす作業は➡ 108 00:16:18,945 --> 00:16:23,182 すべて人の手によるものだった。 109 00:16:23,182 --> 00:16:29,088 囚人は3週間で 瀕死の状態となった。 110 00:16:31,324 --> 00:16:37,630 コルィマは ソ連の金生産の 大部分を占めるまでに成長した。 111 00:16:37,630 --> 00:16:43,503 収容所は 富を生み出す装置となった。 112 00:16:43,503 --> 00:16:49,609 スターリン統治時代 強制労働を強いられた人々は 1,800万➡ 113 00:16:49,609 --> 00:16:53,813 多くの人が 命を落とした。 114 00:17:19,272 --> 00:17:27,013 独ソ戦が勃発すると シベリアは新たな役割を担う。 115 00:17:27,013 --> 00:17:31,851 西部の軍需工場は ドイツの攻撃から逃れるため➡ 116 00:17:31,851 --> 00:17:34,487 シベリアへと移された。 117 00:17:34,487 --> 00:17:37,990 (汽笛) 118 00:17:45,965 --> 00:17:50,269 (爆撃音) 119 00:18:00,479 --> 00:18:07,887 開戦1年目だけで 1,500以上の工場が シベリアなど 遠隔地に避難し➡ 120 00:18:07,887 --> 00:18:10,389 破壊を免れた。 121 00:18:13,592 --> 00:18:19,365 シベリアは 戦局を支える 一大軍需基地となった。 122 00:18:19,365 --> 00:18:25,671 絶望の地は 戦時生産の中心地へと変わっていった。 123 00:18:38,684 --> 00:18:45,291 さらに 同盟国アメリカが ソ連へ 軍需物資を送り始める。 124 00:18:45,291 --> 00:18:50,429 太平洋を越えて 極東に支援物資が続々到着し➡ 125 00:18:50,429 --> 00:18:56,035 シベリア鉄道によって 前線へと運ばれた。 126 00:19:15,488 --> 00:19:23,496 ソ連軍は戦力を回復し ドイツとの戦いに勝利する。 127 00:19:30,069 --> 00:19:36,375 これは ソ連軍の将兵が ベルリンから帰還する映像である。 128 00:19:54,193 --> 00:20:00,633 将兵がシベリア鉄道で送られた先は 故郷ではなかった。 129 00:20:00,633 --> 00:20:04,403 故郷を通り過ぎ さらに東へ。 130 00:20:04,403 --> 00:20:08,507 満州との国境地帯だった。 131 00:20:18,918 --> 00:20:25,424 独ソ戦終結から3か月 ソ連は日ソ中立条約を破棄し➡ 132 00:20:25,424 --> 00:20:28,194 170万の兵を送り込み➡ 133 00:20:28,194 --> 00:20:35,768 日本軍の守る 満州 樺太 朝鮮半島に攻め込んだ。 134 00:20:35,768 --> 00:20:42,775 日本軍は ソ連軍の圧倒的な軍事力を前に 敗走する。 135 00:20:44,977 --> 00:20:49,782 ソ連軍によって 60万の日本人が捕らえられ➡ 136 00:20:49,782 --> 00:20:54,687 その多くが シベリアへ送られた。 137 00:20:59,024 --> 00:21:07,633 もう一つの敗戦国 ドイツの捕虜もまた シベリアの収容所へと送られていた。 138 00:21:09,668 --> 00:21:15,307 第2次世界大戦で 2,700万もの死者を出していたソ連は➡ 139 00:21:15,307 --> 00:21:21,313 失った労働力を 戦争捕虜で埋め合わせようとした。 140 00:21:23,048 --> 00:21:26,552 およそ200万のドイツ人が抑留され➡ 141 00:21:26,552 --> 00:21:32,458 ソ連の収容所システムは 最大規模に広がった。 142 00:21:36,328 --> 00:21:43,102 シベリアに送られた日本人もまた 過酷な日々を強いられていた。 143 00:21:43,102 --> 00:21:51,610 これは シベリア抑留を描いた映画 「私はシベリヤの捕虜だった」。 144 00:21:53,979 --> 00:22:01,620 アメリカが ソ連の非人道性を示すため 日本の製作会社に資金を提供➡ 145 00:22:01,620 --> 00:22:06,625 北海道にセットを組んで 撮影された。 146 00:22:32,084 --> 00:22:37,556 「ノルマ」という言葉は シベリア抑留から 帰国した人たちが 口にしたことで➡ 147 00:22:37,556 --> 00:22:40,459 定着した。 148 00:22:45,297 --> 00:22:49,301 戦後 ソ連は帰国の条件として➡ 149 00:22:49,301 --> 00:22:55,040 共産主義への支持を示す者を 優先する方針をとった。 150 00:22:55,040 --> 00:23:00,446 抑留者たちは 帰国を望む心につけ込まれていった。 151 00:23:02,147 --> 00:23:05,517 これは 映画の一場面。 152 00:23:05,517 --> 00:23:11,523 「軍国主義者」のレッテルを貼られた将校が 糾弾されている。 153 00:23:36,482 --> 00:23:40,352 ソ連をたたえる集会が繰り返され➡ 154 00:23:40,352 --> 00:23:48,560 帰国を願う抑留者たちは 共産主義に従う姿勢を競うように示した。 155 00:23:50,829 --> 00:23:53,932 同志諸君。 156 00:24:28,667 --> 00:24:36,575 ソ連は日本からサハリン 日本が樺太と呼んだ島を取り返していた。 157 00:24:39,945 --> 00:24:42,815 ソ連政府の移住政策によって➡ 158 00:24:42,815 --> 00:24:50,222 ロシア人の人口は 戦前の10万から 60万に急増した。 159 00:24:54,526 --> 00:25:00,866 ロシアからの移住者は かつて日本人が 使っていた 工場や炭鉱を接収し➡ 160 00:25:00,866 --> 00:25:04,269 生活を築いた。 161 00:25:13,445 --> 00:25:18,617 一方 これは 樺太からの日本人引き揚げを伝える➡ 162 00:25:18,617 --> 00:25:22,521 NHKのニュース映像である。 163 00:25:31,530 --> 00:25:40,839 樺太に暮らしていた40万の日本人は ロシア人と入れ代わるように 島を去った。 164 00:26:20,212 --> 00:26:27,519 終戦から8年 スターリンが死去し シベリアに捕らわれていた人々の運命が➡ 165 00:26:27,519 --> 00:26:30,889 ようやく動きだす。 166 00:26:30,889 --> 00:26:36,829 帰国の遅れていたドイツや 日本の抑留者たちが 次々と解放され➡ 167 00:26:36,829 --> 00:26:40,332 故郷へ戻っていった。 168 00:26:48,707 --> 00:26:57,416 ドイツ人 日本人だけではない。 ソ連国内の60万の囚人の名誉が回復され➡ 169 00:26:57,416 --> 00:27:01,820 収容所システムは 終わりを告げる。 170 00:27:03,655 --> 00:27:10,362 この時 11年にわたり刑に服していた 一人の人物が解放された。 171 00:27:10,362 --> 00:27:14,366 後にノーベル賞を受賞する作家➡ 172 00:27:14,366 --> 00:27:17,569 アレクサンドル・ソルジェニーツィンである。 173 00:27:53,005 --> 00:27:59,411 これは 戦後初めてシベリアを取材した NHKの番組である。 174 00:28:01,580 --> 00:28:08,921 終戦から16年が過ぎ シベリアで命を落とした 日本人抑留者の遺族が➡ 175 00:28:08,921 --> 00:28:13,325 初めて 墓参を許された。 176 00:28:27,005 --> 00:28:30,976 過酷な労働と劣悪な環境の中➡ 177 00:28:30,976 --> 00:28:38,183 6万人の日本人抑留者が 故郷を見ることなく 亡くなった。 178 00:29:19,324 --> 00:29:46,218 ♬~ 179 00:30:13,312 --> 00:30:19,418 囚人の消えたシベリアに 新しい時代が到来する。 180 00:30:21,053 --> 00:30:25,891 ソ連政府は シベリアに眠る 天然資源を掘り起こすため➡ 181 00:30:25,891 --> 00:30:30,495 ソ連全土から 労働者を動員した。 182 00:30:32,464 --> 00:30:37,302 移住者には新しい住宅 高い給与が約束され➡ 183 00:30:37,302 --> 00:30:42,607 僅か4年で 10万世帯が移住した。 184 00:30:45,077 --> 00:30:47,079 (爆破音) 185 00:30:47,079 --> 00:30:53,685 日本の国土の20倍に及ぶタイガは 次々と伐採され➡ 186 00:30:53,685 --> 00:30:58,690 未開の地に 新たな道路が建設される。 187 00:31:07,632 --> 00:31:17,142 シベリアの巨大な河川は せき止められ 世界最大級の水力発電所へと姿を変えた。 188 00:31:24,116 --> 00:31:30,355 厳しい自然に閉ざされてきた シベリアの奥地に 調査隊が派遣され➡ 189 00:31:30,355 --> 00:31:35,160 天然資源を 次々と発掘する。 190 00:31:45,904 --> 00:31:49,174 石油や天然ガスを輸出するため➡ 191 00:31:49,174 --> 00:31:54,679 シベリア全土に パイプラインが張り巡らされた。 192 00:31:56,681 --> 00:32:04,723 天然資源の輸出は ソ連の外貨収入の 6割以上を占めるまでに拡大した。 193 00:32:04,723 --> 00:32:13,331 シベリアの富を手にし ソ連は アメリカと並ぶ超大国へと変貌する。 194 00:32:18,069 --> 00:32:22,007 しかし シベリアの急速な開発は➡ 195 00:32:22,007 --> 00:32:27,913 先住の少数民族の暮らしを 根底から変えた。 196 00:32:45,897 --> 00:32:52,637 ソ連政府は 伝統的な遊牧生活を 送ってきた 少数民族を定住化させ➡ 197 00:32:52,637 --> 00:32:56,741 同化政策を推し進めた。 198 00:32:59,044 --> 00:33:07,452 体制が変わっても シベリアは 国家の思惑に巻き込まれ続けた。 199 00:33:10,622 --> 00:33:17,028 しかし 封じ込まれていた シベリアの絶望の記憶が➡ 200 00:33:17,028 --> 00:33:21,733 ソ連の体制を揺るがす事態を引き起こす。 201 00:33:34,145 --> 00:33:43,955 収容所から解放されたソルジェニーツィンが 自らの体験をもとに 「収容所群島」を執筆。 202 00:33:45,557 --> 00:33:50,262 ソ連が隠し続けてきた 社会主義体制の暗部を➡ 203 00:33:50,262 --> 00:33:53,164 白日の下にさらした。 204 00:33:53,164 --> 00:33:59,070 世界で 実に3,000万部以上を売り上げた。 205 00:34:25,530 --> 00:34:32,203 ソ連政府は ソルジェニーツィンを逮捕し 国外へと追放する。 206 00:34:32,203 --> 00:34:40,011 個人に対する追放処分は トロツキー以来 極めて異例だった。 207 00:34:49,621 --> 00:34:57,529 ソルジェニーツィンの追放から15年後 シベリアで異変が起こる。 208 00:35:03,501 --> 00:35:08,340 炭鉱労働者が 劣悪な労働環境への抗議を訴え➡ 209 00:35:08,340 --> 00:35:11,109 ストライキを決行。 210 00:35:11,109 --> 00:35:18,216 労働者の国家を標榜するソ連において 前代未聞の出来事だった。 211 00:35:27,559 --> 00:35:34,332 シベリアのストライキは 瞬く間に ソ連全土へ拡大➡ 212 00:35:34,332 --> 00:35:41,339 嘘と恐怖によって抑え込まれてきた 人々の不満が 一気に噴き出した。 213 00:35:43,041 --> 00:35:50,749 アメリカに亡命していたソルジェニーツィンは 改革を求める提言を緊急出版。 214 00:35:50,749 --> 00:35:59,057 ソ連国内だけで 2,600万部を 売り上げるという 異例の反響を呼んだ。 215 00:36:39,097 --> 00:36:45,336 新生ロシアは 深い混迷に入り込んでいく。 216 00:36:45,336 --> 00:36:50,875 市場経済への急激な移行で ルーブルの価値は急落。 217 00:36:50,875 --> 00:36:57,649 1年で 物価は20倍以上に跳ね上がり 生活は失われた。 218 00:36:57,649 --> 00:37:03,354 一方で 混乱に乗じて 富を手にする者も現れた。 219 00:37:05,056 --> 00:37:06,991 (ハンマーの音) 220 00:37:06,991 --> 00:37:13,598 資金難に陥った政府は シベリアの国有企業の多くを 二束三文で➡ 221 00:37:13,598 --> 00:37:18,703 新興財閥 「オリガルヒ」に売り飛ばした。 222 00:37:25,143 --> 00:37:31,015 ソ連崩壊から3年後。 223 00:37:31,015 --> 00:37:36,521 ソルジェニーツィンは 祖国の現実を 自らの目で確かめるため➡ 224 00:37:36,521 --> 00:37:41,025 20年ぶりの帰国を決断する。 225 00:37:44,062 --> 00:37:50,401 降り立ったのは 首都 モスクワではなく 作品の源となった➡ 226 00:37:50,401 --> 00:37:55,707 収容所の記憶が眠る シベリアだった。 227 00:38:16,528 --> 00:38:21,766 祖国の真実を シベリアの大地から読み取ろうと➡ 228 00:38:21,766 --> 00:38:26,671 シベリア鉄道に乗り モスクワへ向かった。 229 00:38:30,308 --> 00:38:39,617 2か月の旅で 農村を歩き 工場を訪ね 市井の人々と語り合った。 230 00:38:41,820 --> 00:38:49,294 彼が見たのは 資本主義の荒波に ロシアの魂が押し流されていくことへの➡ 231 00:38:49,294 --> 00:38:53,198 戸惑いと嘆きだった。 232 00:38:54,899 --> 00:38:59,137 ソルジェニーツィンは 大統領と会談➡ 233 00:38:59,137 --> 00:39:03,374 共産主義でも西欧型の自由主義でもない➡ 234 00:39:03,374 --> 00:39:08,479 ロシア独自の道を歩むべきだと訴えた。 235 00:39:11,583 --> 00:39:15,787 議会では 国民の窮状を報告した。 236 00:39:15,787 --> 00:39:19,490 だが 資本主義のうまみを知った議員たちは➡ 237 00:39:19,490 --> 00:39:22,493 聞く耳を持たなかった。 238 00:39:57,695 --> 00:40:03,501 帰国から6年後 失意のソルジェニーツィンに接近したのは➡ 239 00:40:03,501 --> 00:40:08,506 新たに大統領に就任した プーチンだった。 240 00:40:22,854 --> 00:40:29,427 ソルジェニーツィンは プーチン大統領の 「強いロシアの復活」というビジョンに➡ 241 00:40:29,427 --> 00:40:33,831 祖国再建の希望を見いだした。 242 00:40:42,140 --> 00:40:48,680 強権を強めるプーチン大統領は シベリアの資源を牛耳ってきたオリガルヒを➡ 243 00:40:48,680 --> 00:40:52,183 次々と逮捕した。 244 00:40:53,851 --> 00:41:02,760 天然ガスや石油企業は国営化され 国家は シベリアの富を取り戻した。 245 00:41:05,563 --> 00:41:11,402 ソルジェニーツィンは 89歳で この世を去った。 246 00:41:11,402 --> 00:41:17,442 晩年は ロシア帝国に息づいていた ロシアの魂をたたえ➡ 247 00:41:17,442 --> 00:41:23,848 その復活を掲げるプーチンを 高く評価していた。 248 00:41:28,086 --> 00:41:34,992 ウクライナと戦うロシア軍の前線から 投稿された動画がある。 249 00:42:04,288 --> 00:42:09,794 シベリア出身者が ロシア軍の前線に投入されている。 250 00:42:09,794 --> 00:42:16,901 人口あたりの戦死者は モスクワ出身者などと 比較して 突出して多い。 251 00:42:28,880 --> 00:42:32,216 都市部のロシア人の犠牲を抑えるため➡ 252 00:42:32,216 --> 00:42:38,923 シベリアの少数民族を 激戦地へ投入しているといわれる。 253 00:42:41,893 --> 00:42:47,331 そして 欧米の制裁下において シベリアの資源が➡ 254 00:42:47,331 --> 00:42:52,437 ロシアの莫大な戦費を支え続けている。 255 00:42:57,008 --> 00:43:03,214 ロシア帝政時代 流刑地の調査のため シベリアを横断した➡ 256 00:43:03,214 --> 00:43:06,117 チェーホフの言葉がある。 257 00:43:07,785 --> 00:43:15,993 シベリアは いつの時代も 絶望と欲望をのみ込み続けてきた。 258 00:44:13,284 --> 00:44:40,177 ♬~