1 00:00:00,934 --> 00:00:09,343 ♬~ 2 00:00:15,415 --> 00:00:19,086 これは 「シャーロック・ホームズ」の作者➡ 3 00:00:19,086 --> 00:00:23,490 コナン・ドイルの姿を記録した貴重な 映像である。 4 00:00:42,242 --> 00:00:45,145 名探偵ホームズの活躍の舞台は➡ 5 00:00:45,145 --> 00:00:49,216 産業革命が進む 19世紀のロンドン。 6 00:01:00,193 --> 00:01:06,266 ホームズの科学的推理を悩ませたのは 黒い霧だった。 7 00:01:22,449 --> 00:01:25,652 (汽笛) 8 00:01:25,652 --> 00:01:32,426 黒い霧 それは 当時のロンドンのシンボルだった。 9 00:01:35,329 --> 00:01:39,700 産業革命によって 石炭の利用が急増し➡ 10 00:01:39,700 --> 00:01:46,974 視界を奪う 煤混じりの霧の中で 事故や犯罪が多発した。 11 00:01:51,678 --> 00:01:54,247 このロンドンの黒い霧こそ➡ 12 00:01:54,247 --> 00:01:58,919 人類が今 直面する 環境破壊の始まりだといわれている。 13 00:02:04,858 --> 00:02:10,664 それから100年以上たった 2023年6月。 14 00:02:10,664 --> 00:02:13,300 Welcome to New York! 15 00:02:13,300 --> 00:02:17,771 ニューヨークは スモッグに覆われ オレンジ色に染まった。 16 00:02:20,173 --> 00:02:26,513 原因は カナダで発生した 森林火災の煙だった。 17 00:02:26,513 --> 00:02:29,483 Oh my God! 18 00:02:29,483 --> 00:02:35,222 今 温暖化による気候変動が進行。 19 00:02:35,222 --> 00:02:42,362 熱波や乾燥の影響で 世界各地で大規模な 森林火災が相次いでいる。 20 00:02:42,362 --> 00:02:50,137 産業革命前と比べ 地球の平均気温は 1.2℃上昇。 21 00:02:52,339 --> 00:02:56,710 かつてない規模の自然災害が 頻発している。 22 00:02:59,479 --> 00:03:07,354 地球は もはや 元の姿に戻ることはない という危機感が広がっている。 23 00:03:11,158 --> 00:03:14,628 「映像の世紀バタフライエフェクト」。 24 00:03:16,430 --> 00:03:24,104 何度も繰り返された自然からの警告に 私たちは なぜ目を背けてきたのか。 25 00:03:24,104 --> 00:03:27,874 百年の破壊の記録である。 26 00:03:27,874 --> 00:03:38,552 ♬~ 27 00:03:41,421 --> 00:03:45,992 煤で顔を真っ黒にした子供たち。 28 00:03:48,195 --> 00:03:53,366 1920年代のロンドンの映像である。 29 00:03:53,366 --> 00:03:57,738 人々の暮らしは 石炭に支えられていた。 30 00:04:03,143 --> 00:04:09,716 ロンドンの街は 煤と霧にまみれ 鈍色と化した。 31 00:04:16,990 --> 00:04:26,466 産業革命が進む中 蒸気機関車や工場など 石炭を燃やし続けた結果だった。 32 00:04:33,006 --> 00:04:38,478 家庭でも あらゆる場面で石炭は欠かせなかった。 33 00:04:46,620 --> 00:04:54,060 多くの労働者が押し寄せ 人口も爆発的に増加していた。 34 00:04:54,060 --> 00:04:57,931 市内を流れるテムズ川は➡ 35 00:04:57,931 --> 00:05:04,504 800万を超える人々の生活排水を飲み込み 悪臭を放った。 36 00:05:06,173 --> 00:05:09,442 その様子を目の当たりにした 日本人がいた。 37 00:05:11,611 --> 00:05:14,281 夏目漱石である。 38 00:05:48,381 --> 00:05:53,153 一方 その霧のロンドンを愛した画家がいた。 39 00:05:54,955 --> 00:05:59,693 印象派を代表する フランス人画家 モネ。 40 00:05:59,693 --> 00:06:04,097 何度も この街を訪れては 霧の風景を描いた。 41 00:06:04,097 --> 00:06:07,167 その数は 100点に上る。 42 00:06:40,967 --> 00:06:49,209 その後 世界最大の経済大国に 躍り出たのはアメリカである。 43 00:06:49,209 --> 00:06:53,880 それを牽引したのが 自動車だ。 44 00:07:09,462 --> 00:07:14,301 フォードT型は 流れ作業の導入で 大量生産され➡ 45 00:07:14,301 --> 00:07:16,870 価格は下がり続けた。 46 00:07:21,174 --> 00:07:26,579 1920年代後半までに 1500万台以上が生産され➡ 47 00:07:26,579 --> 00:07:33,453 自動車は贅沢品ではなく 大衆向けの商品として普及していく。 48 00:08:02,916 --> 00:08:08,722 ライバル社の出現で 自動車産業は更に拡大していく。 49 00:08:08,722 --> 00:08:13,693 GMこと ゼネラルモーターズは➡ 50 00:08:13,693 --> 00:08:20,367 T型を造り続けたフォードに対し さまざまな車種を製造。 51 00:08:20,367 --> 00:08:27,474 顧客の所得に応じて 高級車から大衆車までラインナップした。 52 00:08:27,474 --> 00:08:32,145 自動車は ステータスを表すものになった。 53 00:08:36,082 --> 00:08:44,858 もはや フォードT型は時代遅れとなり 1927年 生産を中止した。 54 00:08:49,029 --> 00:08:53,967 自動車は 飽きたら乗り換える時代へと突入。 55 00:08:53,967 --> 00:08:58,838 アメリカ全世帯の7割が 所有するまでになった。 56 00:09:02,142 --> 00:09:04,110 (歓声) 57 00:09:06,980 --> 00:09:10,850 圧勝したハーバート・フーヴァー率いる 共和党は➡ 58 00:09:10,850 --> 00:09:15,121 こんな スローガンを掲げた。 59 00:09:25,498 --> 00:09:31,571 自動車の爆発的な普及は 他の交通機関にも強い影響を与えていく。 60 00:09:34,974 --> 00:09:40,947 これは 1930年代のロサンゼルスの映像。 61 00:09:43,716 --> 00:09:52,392 当時 ロスには軌道延長1700キロという 世界最大の鉄道網が敷かれていた。 62 00:09:55,195 --> 00:10:00,500 しかし 自動車の普及で乗客は減少しつつあった。 63 00:10:00,500 --> 00:10:07,307 それに乗じ GMを中心とした 自動車産業が鉄道会社を買収した。 64 00:10:07,307 --> 00:10:11,811 経営権を握ると 次々に鉄道路線を廃線にし➡ 65 00:10:11,811 --> 00:10:15,381 バス路線へと置き換えていった。 66 00:10:19,252 --> 00:10:22,155 政府は GMなどを相手取り➡ 67 00:10:22,155 --> 00:10:27,126 交通システムの独占だと訴える 裁判を起こした。 68 00:10:30,997 --> 00:10:37,871 しかし 最終的には ロスの鉄道の多くは廃線となった。 69 00:10:40,440 --> 00:10:45,078 世界屈指の自動車の街となった ロサンゼルス。 70 00:10:45,078 --> 00:10:50,750 その後 アメリカで最も早く 深刻なスモッグに苦しむ街となる。 71 00:10:56,556 --> 00:11:04,731 1935年 アメリカで化石燃料を使った 画期的な新素材が誕生した。 72 00:11:22,715 --> 00:11:28,254 プラスチックの一種 ナイロンを生み出したのは デュポン社。 73 00:11:28,254 --> 00:11:34,561 もともとは 火薬メーカー。 第1次世界大戦で急成長した。 74 00:11:34,561 --> 00:11:39,632 (爆発音) 75 00:11:41,334 --> 00:11:46,839 このころ 「化学でよりよい生活を」という スローガンを掲げ➡ 76 00:11:46,839 --> 00:11:50,510 人工素材の開発に乗り出していた。 77 00:11:54,714 --> 00:12:02,388 1939年 ニューヨーク万博で デュポン社の新たな製品が登場する。 78 00:12:10,096 --> 00:12:15,868 絹より丈夫で安価な ナイロン製ストッキング。 79 00:12:15,868 --> 00:12:20,940 発売から僅か数日で 500万足を売り上げた。 80 00:12:52,071 --> 00:12:59,245 第2次世界大戦は 大量生産の技術を いやおうなく加速させていく。 81 00:13:01,280 --> 00:13:07,720 フォードの自動車工場では 爆撃機 B-24を大量生産。 82 00:13:07,720 --> 00:13:11,391 1時間に1機のペースで製造した。 83 00:13:13,493 --> 00:13:21,167 デュポンは 開発したばかりのナイロンで 今度は大量のパラシュートを作った。 84 00:13:45,525 --> 00:13:51,798 安価で大量生産の利くプラスチックが 従来の素材に取って代わっていった。 85 00:13:55,101 --> 00:14:01,474 もう一つ 戦場に出現した新開発の薬剤があった。 86 00:14:21,294 --> 00:14:26,466 マラリアなどから身を守るための 殺虫剤として開発された… 87 00:14:31,204 --> 00:14:35,875 害虫は殺すが 人には害がないという 「魔法の粉」は➡ 88 00:14:35,875 --> 00:14:40,213 その後 伝染病対策に威力を発揮➡ 89 00:14:40,213 --> 00:14:44,584 世界で何千万もの命を救ったといわれる。 90 00:14:52,125 --> 00:14:56,395 日本では 戦後のシラミ駆除にも使われた。 91 00:15:01,300 --> 00:15:05,738 DDTを開発した スイス人科学者の パウル・ミュラーは➡ 92 00:15:05,738 --> 00:15:08,975 ノーベル賞を受賞。 93 00:15:08,975 --> 00:15:13,880 戦後 デュポンをはじめとした 化学メーカーは➡ 94 00:15:13,880 --> 00:15:17,984 こぞって DDTを商品化。 95 00:15:17,984 --> 00:15:22,755 食糧増産のための農薬として 普及していった。 96 00:15:31,130 --> 00:15:35,401 1952年 霧の街 ロンドンで➡ 97 00:15:35,401 --> 00:15:38,971 例年にも増して ひどいスモッグが発生した。 98 00:15:40,873 --> 00:15:47,213 12月 猛烈な寒波がロンドンを襲う。 99 00:15:47,213 --> 00:15:52,185 人々は いつも以上に石炭を燃やした。 100 00:15:54,086 --> 00:16:01,394 すると 濃い霧が街を覆い 交通が麻痺。 101 00:16:01,394 --> 00:16:05,565 家畜が相次いで死ぬなどの 異変が現れた。 102 00:16:11,571 --> 00:16:16,242 これは 当時のロンドンを捉えた映像。 103 00:16:18,644 --> 00:16:23,216 ガスライトで照らさなければ 歩くことも ままならないほどだった。 104 00:16:27,386 --> 00:16:35,161 体調不良を訴える人が続出し 死者は 4000人を超えた。 105 00:16:35,161 --> 00:16:41,834 原因は スモッグに含まれる 高濃度の硫酸塩だった。 106 00:17:22,208 --> 00:17:26,879 もはやロンドン名物とは 言っていられない事態だった。 107 00:17:28,981 --> 00:17:32,652 政府は 対策に本腰を入れる。 108 00:17:32,652 --> 00:17:38,224 古い炉の取り替えや 煙を出さない 無煙炭への置き換えを進めた。 109 00:17:38,224 --> 00:17:44,730 かかる費用は自治体と国で 7割賄う措置をとった。 110 00:17:44,730 --> 00:17:47,700 煤煙を拡散して薄めようと➡ 111 00:17:47,700 --> 00:17:52,138 工場の煙突を高くすることも 対策に盛り込まれた。 112 00:17:52,138 --> 00:17:57,810 高さ200メートルの煙突が数多く造られた。 113 00:17:59,879 --> 00:18:07,053 家庭での石炭利用を減らすため 電気やガスへの移行も促した。 114 00:18:11,490 --> 00:18:15,361 それでも簡単には消えない ロンドンのスモッグ。 115 00:18:15,361 --> 00:18:18,731 こんなものまで登場した。 116 00:18:38,084 --> 00:18:45,891 1950年代。 自動車の街 ロサンゼルスでも 深刻なスモッグが発生していた。 117 00:18:45,891 --> 00:18:53,966 このころには人々の生活は もう 自動車なしには立ち行かなくなっていた。 118 00:19:18,758 --> 00:19:20,760 (エンジン音) 119 00:19:20,760 --> 00:19:27,900 これは バイクで郵便物を届ける配達員の映像。 120 00:19:27,900 --> 00:19:32,571 ガスマスクを着けなければ ハイウエーは危険だった。 121 00:19:38,210 --> 00:19:41,947 この事態を受け 市は専門家を集めて➡ 122 00:19:41,947 --> 00:19:44,016 対策委員会を設立した。 123 00:19:49,321 --> 00:19:51,791 メンバーの ハーゲン・スミット教授は➡ 124 00:19:51,791 --> 00:19:57,063 原因が自動車の排ガスにあると 明確に断じた。 125 00:20:20,820 --> 00:20:25,658 市は フォード GMなど 自動車メーカー 4社に対し➡ 126 00:20:25,658 --> 00:20:30,029 排ガスを減らす対策を検討するよう 要求。 127 00:20:31,831 --> 00:20:39,805 しかし 自動車メーカーは科学的根拠は 薄いと 態度を変えることはなかった。 128 00:21:03,095 --> 00:21:09,368 1960年代に入って 一気に 環境汚染が進んだのが日本である。 129 00:21:12,772 --> 00:21:19,245 高度経済成長期を迎え 工業化が急ピッチで進められていた。 130 00:21:22,114 --> 00:21:26,118 これは 当時の大気汚染の 深刻さを取り上げた➡ 131 00:21:26,118 --> 00:21:29,488 NHKの ドキュメンタリー番組。 132 00:21:38,597 --> 00:21:46,071 全国各地で発展した大規模な工業地帯では 大気汚染などの公害が深刻化していた。 133 00:21:49,575 --> 00:21:52,611 大規模な石油化学コンビナートを擁する➡ 134 00:21:52,611 --> 00:21:55,381 三重県四日市市。 135 00:22:00,186 --> 00:22:07,159 石油を燃やすことで生じる亜硫酸ガスに 住民は苦しみ 健康被害を訴えていた。 136 00:22:09,428 --> 00:22:15,834 工場は 120メートルの高煙突で 汚染物質の拡散を図った。 137 00:22:15,834 --> 00:22:20,506 しかし 必ずしも 本気の取り組みとは言えなかった。 138 00:23:06,151 --> 00:23:13,225 アメリカが 100年かけた工業化を 25年で成し遂げたといわれる日本。 139 00:23:13,225 --> 00:23:18,197 環境破壊も 世界のトップクラスとなっていた。 140 00:23:32,011 --> 00:23:39,285 1970年代に入ると 公害は日本中に広がり もはや ひと事ではなくなる。 141 00:23:50,529 --> 00:23:59,405 1970年7月 東京 杉並で自動車の排ガスが 原因といわれる光化学スモッグが発生。 142 00:24:01,040 --> 00:24:06,912 スモッグを吸い込んだ高校生が 救急搬送される事態となった。 143 00:24:09,748 --> 00:24:18,324 乗用車の数は 10年前の15倍 677万台にまで膨れ上がっていた。 144 00:24:22,027 --> 00:24:26,699 国は ようやく危機感を持つに至った。 145 00:24:31,036 --> 00:24:39,311 1971年 アメリカ イギリスなどに続き 環境庁を設立する。 146 00:24:43,349 --> 00:24:47,519 翌年。 初めて開催された… 147 00:24:52,358 --> 00:24:56,729 医師出身の 環境庁長官 大石武一は➡ 148 00:24:56,729 --> 00:25:01,200 経済最優先の 政策の過ちを 認めた。 149 00:25:22,388 --> 00:25:27,226 日本は 大気汚染や水質汚染の防止など➡ 150 00:25:27,226 --> 00:25:31,764 新たに 14の法律を制定・改正し➡ 151 00:25:31,764 --> 00:25:34,733 公害対策に動きだした。 152 00:25:43,876 --> 00:25:46,845 一冊の本が アメリカに衝撃を与える。 153 00:25:53,218 --> 00:25:58,123 著者の海洋生物学者 レイチェル・カーソンは➡ 154 00:25:58,123 --> 00:26:04,830 戦後 農地や家庭で広く 使われるようになった殺虫剤 DDTが➡ 155 00:26:04,830 --> 00:26:09,902 生態系に深刻な影響を及ぼしていると 警告した。 156 00:26:40,499 --> 00:26:48,073 執筆のきっかけとなったのは 1958年に 届いた友人からの手紙。 157 00:26:50,109 --> 00:26:58,183 友人の住む街で DDTが空中散布されたあと 鳥が死んでいたと訴えていた。 158 00:27:05,591 --> 00:27:11,730 DDTの特徴は どんな虫にも効き 分解されにくいこと。 159 00:27:11,730 --> 00:27:15,601 そのため 効き目が長もちする。 160 00:27:15,601 --> 00:27:20,372 DDTによって 収穫量は飛躍的に伸びた。 161 00:27:20,372 --> 00:27:23,775 一方で分解されにくいということは➡ 162 00:27:23,775 --> 00:27:28,614 生物の体内に蓄積していくことを 意味する。 163 00:27:28,614 --> 00:27:36,188 カーソンは4年間かけて DDTが生物に与える影響を明らかにした。 164 00:27:37,990 --> 00:27:43,228 この時 カーソンはガンを患っていた。 165 00:27:43,228 --> 00:27:46,598 病床に伏しながらも 書き上げた。 166 00:27:51,937 --> 00:27:59,344 本が出版されると DDT製品を扱う化学メーカーが猛反発。 167 00:27:59,344 --> 00:28:05,317 デュポンなど大手企業は カーソンの訴えを認めようとしなかった。 168 00:28:31,977 --> 00:28:38,650 激化する論争に ピリオドを打ったのは 時の大統領 ケネディだった。 169 00:28:56,101 --> 00:28:59,171 その翌日… 170 00:29:04,910 --> 00:29:14,286 DDTの国内使用が ほぼ全て 禁止となったのは 10年後の1972年だった。 171 00:29:18,357 --> 00:29:28,033 カーソンは それを見届けることなく 出版から2年後 その生涯を閉じた。 172 00:30:06,738 --> 00:30:10,108 (雷鳴) 173 00:30:10,108 --> 00:30:16,014 1970年代 環境汚染は新たな局面を迎えた。 174 00:30:16,014 --> 00:30:20,585 汚染が 国境を越え始めたのだ。 175 00:30:23,422 --> 00:30:25,390 ここは… 176 00:30:27,325 --> 00:30:29,795 「黒い森」という意味である。 177 00:30:31,663 --> 00:30:35,033 酸性雨によって木々が立ち枯れ➡ 178 00:30:35,033 --> 00:30:39,304 黒々とした針葉樹が姿を消してしまった。 179 00:30:44,042 --> 00:30:48,880 原因は やはり工場や自動車の排ガス。 180 00:30:48,880 --> 00:30:54,686 化石燃料から出る硫黄酸化物や 窒素酸化物が雨に混じり➡ 181 00:30:54,686 --> 00:30:57,389 森に降り注いだ。 182 00:30:57,389 --> 00:31:02,561 世界各地で 被害が国内にとどまらない 現象が起こっていた。 183 00:31:11,903 --> 00:31:16,108 アメリカの工場地帯から出た排ガスが 酸性雨となり➡ 184 00:31:16,108 --> 00:31:19,978 隣国カナダの森や湖を汚染していた。 185 00:31:23,448 --> 00:31:30,322 ロンドンスモッグ以来 主流となっていた 高煙突が大きな要因だった。 186 00:31:30,322 --> 00:31:37,095 高い所で煙を出し拡散させることで 近隣の大気汚染は緩和されたが➡ 187 00:31:37,095 --> 00:31:42,367 一方で 汚染を広範囲に広げていたのだ。 188 00:31:44,836 --> 00:31:52,477 1980年 アメリカは カナダと共に この問題に取り組むことに合意。 189 00:31:52,477 --> 00:31:58,650 共同チームを作り 翌年 報告書を出した。 190 00:32:19,571 --> 00:32:23,341 しかし その年 レーガン政権が 発足すると➡ 191 00:32:23,341 --> 00:32:27,112 風向きが変わる。 192 00:32:27,112 --> 00:32:30,015 レーガン大統領は 独自の研究チームで➡ 193 00:32:30,015 --> 00:32:34,085 酸性雨調査を やり直すと発表した。 194 00:32:36,721 --> 00:32:38,790 チームの一人… 195 00:32:40,559 --> 00:32:46,131 人工衛星の軍事利用研究に携わっていた 物理学者だった。 196 00:32:46,131 --> 00:32:49,201 レーガンから じきじきに指名された。 197 00:32:51,369 --> 00:32:56,341 シンガーは 強烈な反共主義者でもあった。 198 00:32:58,143 --> 00:33:00,145 環境保護を訴え➡ 199 00:33:00,145 --> 00:33:05,917 企業活動の規制を求める人々を 共産主義者と同一視していた。 200 00:33:17,495 --> 00:33:21,099 3年後の1984年。 201 00:33:21,099 --> 00:33:25,971 酸性雨に関する シンガーたちの 見解が 報告された。 202 00:33:36,348 --> 00:33:40,318 更に こう付け加えた。 203 00:34:03,441 --> 00:34:07,712 当時のアメリカは 不況のただ中にあった。 204 00:34:12,484 --> 00:34:16,721 企業への規制は 経済成長を阻む。 205 00:34:16,721 --> 00:34:20,292 規制緩和を打ち出し 当選した レーガン大統領は➡ 206 00:34:20,292 --> 00:34:25,664 この報告書を根拠に カナダとの合意を翻した。 207 00:34:29,968 --> 00:34:32,304 それから4年。 208 00:34:32,304 --> 00:34:37,375 地球規模で進行していた環境破壊が 報告された。 209 00:34:41,012 --> 00:34:46,651 1988年 アメリカ議会で NASAの科学者➡ 210 00:34:46,651 --> 00:34:50,722 ジェームズ・ハンセンが 世界に警告した。 211 00:35:04,002 --> 00:35:09,207 二酸化炭素などの温室効果ガスが 地球温暖化を招いており➡ 212 00:35:09,207 --> 00:35:14,179 将来 甚大な被害をもたらす という報告だった。 213 00:35:16,848 --> 00:35:20,418 その年の夏 アメリカは➡ 214 00:35:20,418 --> 00:35:23,388 40℃を超える 猛暑に見舞われ➡ 215 00:35:23,388 --> 00:35:28,460 干ばつで農作物が大打撃を受けた。 216 00:35:30,662 --> 00:35:36,835 ギリシャも熱波に襲われ 64人の死者が出た。 217 00:35:39,371 --> 00:35:44,509 アフリカ スーダンでは 史上最悪の洪水が発生。 218 00:35:44,509 --> 00:35:48,480 200万もの人々が家を失った。 219 00:35:50,248 --> 00:35:54,719 各国が地球温暖化に取り組む 姿勢を見せた。 220 00:36:06,097 --> 00:36:10,368 アメリカも例外ではなかった。 221 00:36:21,579 --> 00:36:29,854 そして1997年 京都で 地球温暖化防止会議が開催された。 222 00:36:31,756 --> 00:36:37,962 温室効果ガス排出削減のため 各国が具体的な目標値を定め➡ 223 00:36:37,962 --> 00:36:42,834 その実現を目指す約束をする 初めての場となった。 224 00:36:58,116 --> 00:37:00,051 (拍手) 225 00:37:00,051 --> 00:37:05,223 先進国の二酸化炭素などの排出規制の 数値を定めた… 226 00:37:09,727 --> 00:37:13,198 アメリカも これに合意した。 227 00:37:21,306 --> 00:37:25,677 日本では CO排出量を半分に抑えた➡ 228 00:37:25,677 --> 00:37:29,447 世界初のハイブリッド車の販売が 開始された。 229 00:37:32,317 --> 00:37:37,889 ヨーロッパでも 電気自動車の開発が進められた。 230 00:37:37,889 --> 00:37:43,461 世界が温暖化防止に向けて 動きだしたかに見えた。 231 00:37:46,598 --> 00:37:50,568 しかし またしてもブレーキがかかる。 232 00:37:50,568 --> 00:37:55,006 1997年 100人以上の科学者が➡ 233 00:37:55,006 --> 00:38:02,080 CO排出規制を疑問視すると表明した ライプツィヒ宣言が発表された。 234 00:38:29,607 --> 00:38:33,178 取りまとめたのは 13年前➡ 235 00:38:33,178 --> 00:38:37,048 酸性雨の原因が 排ガスとは言いきれないと報告した➡ 236 00:38:37,048 --> 00:38:41,219 アメリカの科学者 フレッド・シンガーだった。 237 00:38:59,938 --> 00:39:06,611 地球温暖化に懐疑的なシンクタンクや 企業も積極的にテレビCMを打った。 238 00:39:42,981 --> 00:39:47,585 そして 2001年 ブッシュ政権が誕生すると➡ 239 00:39:47,585 --> 00:39:52,457 アメリカは京都議定書からの 離脱を発表する。 240 00:40:11,209 --> 00:40:18,616 しかし その後 温暖化への懐疑論を 展開した人々に疑いの目が向けられた。 241 00:40:18,616 --> 00:40:23,321 強力な反対論者 シンガーの研究プロジェクトに➡ 242 00:40:23,321 --> 00:40:29,127 石油会社から 1万ドルの寄付があったことが判明。 243 00:40:29,127 --> 00:40:33,464 更に ライプツィヒ宣言に 名を連ねた中に➡ 244 00:40:33,464 --> 00:40:37,769 気候学者ではない人 そもそも署名していない人が➡ 245 00:40:37,769 --> 00:40:42,040 多く含まれていたことも明るみに出た。 246 00:40:44,909 --> 00:40:46,844 それでも シンガーは➡ 247 00:40:46,844 --> 00:40:51,716 一貫して 気候変動への懐疑を訴え続けた。 248 00:41:12,970 --> 00:41:16,841 アメリカが本格的な 気候変動対策に乗り出したのは➡ 249 00:41:16,841 --> 00:41:20,611 パリ協定復帰後の2021年。 250 00:41:31,022 --> 00:41:37,795 ジェームズ・ハンセンが発した 温暖化の警告から 33年がたっていた。 251 00:41:50,975 --> 00:41:55,480 国連機関は 人類が地球温暖化を招いたことに➡ 252 00:41:55,480 --> 00:41:59,817 もはや 疑いの余地はないと断言している。 253 00:41:59,817 --> 00:42:07,091 今年の夏 世界の平均気温は 観測史上最高を記録した。 254 00:42:08,593 --> 00:42:15,099 30年で 0.5℃という スピードで温暖化が進行。 255 00:42:15,099 --> 00:42:20,571 COの排出量は 去年 最大を記録した。 256 00:42:25,410 --> 00:42:28,179 海に目を転じると…。 257 00:42:30,648 --> 00:42:36,921 プラスチックゴミが 自然に分解されることは決してない。 258 00:42:45,797 --> 00:42:50,068 しかし 全てが放置され続けたわけではない。 259 00:42:55,239 --> 00:42:59,644 20世紀末 破壊が懸念されていたオゾン層。 260 00:42:59,644 --> 00:43:04,182 その後 スプレー缶などに 使われていた化学物質➡ 261 00:43:04,182 --> 00:43:06,851 フロンが 規制されたことで➡ 262 00:43:06,851 --> 00:43:11,022 オゾン層は今 回復傾向にある。 263 00:43:13,324 --> 00:43:17,895 危機的状況にあったアマゾンの熱帯雨林。 264 00:43:17,895 --> 00:43:26,404 森林保護が推し進められ 今年 伐採の面積が30% 減少した。 265 00:43:26,404 --> 00:43:36,280 風力 水力など再生可能エネルギーへの 転換は 30%近くまで進んでいる。 266 00:43:38,883 --> 00:43:46,157 100年前 黒い霧で覆われていた ロンドンは今…。 267 00:43:53,431 --> 00:44:00,104 霧に苦しんだ名探偵ホームズは こんな言葉を残している。 268 00:44:10,815 --> 00:44:39,010 ♬~