1 00:00:00,968 --> 00:00:07,574 ♬~ 2 00:00:32,266 --> 00:00:36,203 これは 国際宇宙ステーションから 撮影された➡ 3 00:00:36,203 --> 00:00:39,306 インド・パキスタン国境付近の写真。 4 00:00:41,008 --> 00:00:44,378 画面中央を走る オレンジの線。 5 00:00:44,378 --> 00:00:47,047 インドとパキスタンを 分かつ➡ 6 00:00:47,047 --> 00:00:50,550 2,000キロの壁である。 7 00:00:52,019 --> 00:00:54,288 敵対する両国。 8 00:00:54,288 --> 00:01:00,427 壁沿いに インド軍が設置した 15万個に上る強力な投光器の光が➡ 9 00:01:00,427 --> 00:01:05,432 宇宙にまで届くのである。 10 00:01:09,870 --> 00:01:14,474 人類の歴史は 壁の歴史でもあった。 11 00:01:20,013 --> 00:01:29,022 20世紀 東西2つの陣営に分かれた世界は 「壁」を築いた。 12 00:01:30,657 --> 00:01:35,963 朝鮮半島を真っ二つにした… 13 00:01:39,232 --> 00:01:44,838 そして 一つの都市を東西に分断した… 14 00:01:47,474 --> 00:01:51,044 壁は 家族や恋人を引き裂き➡ 15 00:01:51,044 --> 00:01:56,450 乗り越えようとした人々の命を奪った。 16 00:02:08,428 --> 00:02:11,732 (ハンマーの音) 17 00:02:13,266 --> 00:02:17,804 ベルリンの壁が崩壊し 冷戦が終結。 18 00:02:17,804 --> 00:02:21,508 世界は 一つになった はずだった。 19 00:02:23,143 --> 00:02:27,114 しかし 21世紀の今 世界各地で➡ 20 00:02:27,114 --> 00:02:35,222 これまで壁のなかった国境線上に 新たな壁が出現している。 21 00:02:35,222 --> 00:02:40,627 不法移民を はね返す 国境の壁。 22 00:02:42,629 --> 00:02:50,737 それでも 命懸けで 壁を越えようとする人は 後を絶たない。 23 00:02:55,042 --> 00:03:03,250 中東には パレスチナ自治区を隔離する 巨大な壁が築かれた。 24 00:03:06,186 --> 00:03:11,992 パレスチナの人々は 壁の向こう側に出稼ぎに向かう。 25 00:03:11,992 --> 00:03:16,997 そのために 毎朝 屈辱的な時間に耐え続ける。 26 00:03:26,540 --> 00:03:34,014 ペルー・リマの斜面に建設された 富裕層と貧困層の居住区を隔てる壁。 27 00:03:34,014 --> 00:03:38,618 「恥の壁」と呼ばれている。 28 00:03:40,353 --> 00:03:47,561 ベルリンの壁崩壊時 「16」だった壁は 今 「78」にまで増えた。 29 00:03:47,561 --> 00:03:54,267 その長さは 地球1周分 4万キロに達する。 30 00:04:16,590 --> 00:04:19,326 ♬~ 31 00:04:19,326 --> 00:04:23,764 「映像の世紀バタフライエフェクト」。 32 00:04:23,764 --> 00:04:28,535 人は なぜ 壁をつくるのか。 33 00:04:28,535 --> 00:04:35,642 壁をめぐって繰り広げられてきた 絶望と希望の物語である。 34 00:04:35,642 --> 00:04:46,253 ♬~ 35 00:05:09,509 --> 00:05:15,315 1961年8月13日の朝。 36 00:05:15,315 --> 00:05:17,851 目覚めた ベルリン市民の前に➡ 37 00:05:17,851 --> 00:05:25,458 有刺鉄線で つくられた壁が 一夜にして出現していた。 38 00:05:50,350 --> 00:05:53,987 東西冷戦 真っただ中の この時代➡ 39 00:05:53,987 --> 00:05:56,556 東ドイツの中にあった ベルリンは➡ 40 00:05:56,556 --> 00:05:59,159 東西に分断されていた。 41 00:06:05,632 --> 00:06:09,302 そのため 大量の東ドイツ市民が➡ 42 00:06:09,302 --> 00:06:14,274 比較的 自由な往来が許されていた 西ベルリンを経由し➡ 43 00:06:14,274 --> 00:06:18,378 空路を使い 西側諸国に脱出していた。 44 00:06:23,516 --> 00:06:27,387 東ドイツ政府は 市民の流出を防ぐため➡ 45 00:06:27,387 --> 00:06:34,394 東西ベルリンの境界に 有刺鉄線の壁をつくったのだった。 46 00:06:38,431 --> 00:06:45,939 兵士 警官など 数万人が 警備のため壁沿いに並んだ。 47 00:07:05,158 --> 00:07:12,165 この時 警備に当たっていた 一人の若い隊員がいた。 48 00:07:15,835 --> 00:07:20,640 数か月前 この任務のために 地方から ベルリンにやって来た➡ 49 00:07:20,640 --> 00:07:23,143 19歳の若者だった。 50 00:07:25,078 --> 00:07:29,049 鉄条網の前で 繰り広げられる光景を見るうちに➡ 51 00:07:29,049 --> 00:07:34,254 東ドイツへの絶望が膨らんでいった。 52 00:07:53,006 --> 00:07:59,212 有刺鉄線が出現した 2日後のことだった。 53 00:07:59,212 --> 00:08:01,481 この日の正午ごろ。 54 00:08:01,481 --> 00:08:05,685 次々に 建設用のトラックが集まってきていた。 55 00:08:05,685 --> 00:08:09,089 壁が補強されることに気付いた シューマンは➡ 56 00:08:09,089 --> 00:08:13,293 自らに こう言い聞かせた。 57 00:08:27,407 --> 00:08:36,816 これは 壁の警備に当たるシューマンを 映した その日の実際の映像である。 58 00:08:36,816 --> 00:08:41,721 この時 シューマンは たばこを吸っては 投げ捨てを繰り返しながら➡ 59 00:08:41,721 --> 00:08:48,128 必死に 飛び越えるチャンスを うかがっていた。 60 00:09:04,677 --> 00:09:13,253 2時間にわたり 同僚兵士の注意が 鉄線からそれるチャンスを待ち続けた。 61 00:09:13,253 --> 00:09:17,457 そして 午後4時。 62 00:09:22,929 --> 00:09:29,702 銃を投げ捨て シューマンは 一気に有刺鉄線を飛び越えた。 63 00:09:29,702 --> 00:09:36,209 西側に渡ったシューマンが向かったのは 西ドイツの警察車両だった。 64 00:09:36,209 --> 00:09:40,513 シューマンの脱走の気配に気付いた 西側の警察官が➡ 65 00:09:40,513 --> 00:09:44,818 車両を待機させていたのだ。 66 00:09:48,721 --> 00:09:58,131 こうして 白昼堂々 壁建設後 初めて 警備隊員が亡命した。 67 00:09:58,131 --> 00:10:01,501 亡命後 西側のメディアによって行われた➡ 68 00:10:01,501 --> 00:10:04,504 シューマンのインタビューが 残されている。 69 00:10:33,366 --> 00:10:38,238 亡命から 数時間後には その瞬間を捉えた写真が➡ 70 00:10:38,238 --> 00:10:43,243 世界各国の新聞の一面を飾った。 71 00:10:45,945 --> 00:10:48,948 (シャッター音) 付けられたタイトルは… 72 00:10:55,922 --> 00:10:58,925 シューマンの亡命の成功を見て取り➡ 73 00:10:58,925 --> 00:11:08,234 その後 兵士と警察官 2,100人が 西側への亡命に成功したといわれている。 74 00:11:12,972 --> 00:11:16,342 危機感を募らせた東ドイツ政府は➡ 75 00:11:16,342 --> 00:11:22,348 急ピッチで コンクリートで壁を補強していった。 76 00:11:24,651 --> 00:11:30,456 邪魔な家は 次々 破壊した。 77 00:11:34,627 --> 00:11:37,830 壁が完成してしまう前に逃げようと➡ 78 00:11:37,830 --> 00:11:42,435 東ドイツの人々は さまざまな方法を試みた。 79 00:11:44,270 --> 00:11:50,877 西側に面する建物の窓から 決死の覚悟で 飛び降りる者もいた。 80 00:12:48,234 --> 00:12:53,373 壁が完成に近づくにつれ 脱出は困難を極め➡ 81 00:12:53,373 --> 00:12:57,677 亡命者数は激減していった。 82 00:12:57,677 --> 00:13:02,782 それでも 人々は諦めなかった。 83 00:13:18,531 --> 00:13:23,102 ♬~ 84 00:13:23,102 --> 00:13:25,605 これは 1962年に➡ 85 00:13:25,605 --> 00:13:27,540 アメリカで 放送された➡ 86 00:13:27,540 --> 00:13:31,144 ドキュメンタリーである。 87 00:13:34,013 --> 00:13:37,216 東に残した家族を脱出させようと➡ 88 00:13:37,216 --> 00:13:44,424 西側の人々が 壁の下に トンネルを掘り始めたのだ。 89 00:13:44,424 --> 00:13:49,262 その中心は 学生たちだった。 90 00:13:49,262 --> 00:13:52,999 彼らは 撮影を許可することで➡ 91 00:13:52,999 --> 00:13:59,005 アメリカのテレビ局から 資金提供を受けていた。 92 00:14:17,757 --> 00:14:27,066 悪臭と泥水と格闘し 掘削作業をする 学生の中に 一人の若者がいた。 93 00:14:32,371 --> 00:14:36,509 土木を学ぶ大学生だった。 94 00:14:36,509 --> 00:14:41,380 自身も 東ベルリンからの亡命者であった ヨアヒムには➡ 95 00:14:41,380 --> 00:14:44,584 東側に残してきた恋人がいた。 96 00:14:51,023 --> 00:14:58,231 ある日 ヨアヒムは クリスタから 一通の手紙を受け取った。 97 00:15:11,477 --> 00:15:19,085 ヨアヒムは 20人ほどの仲間とともに 掘削に挑んだ。 98 00:15:19,085 --> 00:15:24,757 トンネルのスタート地点は 西側のパン屋の地下室。 99 00:15:24,757 --> 00:15:27,960 そこから壁の下を通り➡ 100 00:15:27,960 --> 00:15:35,701 140メートル離れた 東側にある住居の 地下室をつなぐ計画だった。 101 00:15:35,701 --> 00:15:41,007 東側も警戒していた。 102 00:15:41,007 --> 00:15:46,646 警備隊が 高性能マイクを使い トンネルを掘る音を探り➡ 103 00:15:46,646 --> 00:15:51,851 地下を調べていた。 104 00:16:14,640 --> 00:16:17,410 掘り始めてから 半年後。 105 00:16:17,410 --> 00:16:21,714 トンネルは ついに開通した。 106 00:16:23,216 --> 00:16:27,987 10月3日 脱出が決行された。 107 00:16:27,987 --> 00:16:32,792 事前に暗号を使い 決行日を伝えていた。 108 00:16:34,427 --> 00:16:39,832 泥水にまみれ 人々が次々と逃げてきた。 109 00:16:41,968 --> 00:16:44,971 その数 57人。 110 00:16:44,971 --> 00:16:51,611 ベルリンの壁をめぐる 最大の脱出劇だった。 111 00:16:51,611 --> 00:16:53,546 そして➡ 112 00:16:53,546 --> 00:16:57,350 彼女も 泥まみれで現れた。 113 00:16:57,350 --> 00:17:05,258 これは たどりついた瞬間のクリスタを 捉えた写真である。 114 00:17:21,307 --> 00:17:27,113 だが こうした試みの多くは 失敗に終わった。 115 00:17:27,113 --> 00:17:35,421 70本以上のトンネルが掘られたが 成功したのは 19本にすぎなかった。 116 00:17:35,421 --> 00:17:44,330 壁は 崩壊するまでの28年間 人々の自由を奪い続けた。 117 00:17:48,000 --> 00:17:55,308 東西冷戦は アジアにも 強固な「壁」を出現させた。 118 00:17:57,510 --> 00:18:06,319 韓国と北朝鮮を分かつ軍事境界線 通称「38度線」である。 119 00:18:08,955 --> 00:18:13,960 38度線は 第2次世界大戦直後に引かれた。 120 00:18:16,829 --> 00:18:19,398 当時は 厳しい警備もなく➡ 121 00:18:19,398 --> 00:18:25,404 人々は やすやすと 38度線を行き来していた。 122 00:18:30,142 --> 00:18:33,379 しかし その後 警備は強化され➡ 123 00:18:33,379 --> 00:18:39,585 朝鮮戦争によって 軍事境界線がつくられる。 124 00:18:41,887 --> 00:18:50,196 1968年 韓国社会を揺るがす大事件が起きる。 125 00:19:02,141 --> 00:19:05,378 軍事境界線の鉄条網を突破し➡ 126 00:19:05,378 --> 00:19:11,584 北朝鮮の 30人を超すゲリラ部隊が 韓国に秘密裏に侵入。 127 00:19:11,584 --> 00:19:15,955 ソウル市内に向かったのだ。 128 00:19:15,955 --> 00:19:21,594 軍と警察の出動により ゲリラ部隊の ほとんどが死亡したが➡ 129 00:19:21,594 --> 00:19:27,600 韓国側も 35人が犠牲となった。 130 00:19:30,669 --> 00:19:38,477 逮捕された 北朝鮮ゲリラの言葉に 韓国中が震撼した。 131 00:19:56,128 --> 00:20:04,737 国中で 北朝鮮の首相 金日成に 報復するべきだという声が上がった。 132 00:20:06,605 --> 00:20:08,841 朴正熙大統領は➡ 133 00:20:08,841 --> 00:20:14,447 北への報復のための極秘部隊の創設を 軍に命じた。 134 00:20:14,447 --> 00:20:17,850 こうして誕生したのが 秘密工作部隊… 135 00:20:20,619 --> 00:20:24,457 目的は ただ一つ。 136 00:20:24,457 --> 00:20:32,665 軍事境界線を越えて 北朝鮮に侵入し 金日成首相を暗殺すること。 137 00:20:32,665 --> 00:20:39,772 北朝鮮のゲリラ部隊と同じ 30人余りで構成されていた。 138 00:20:41,741 --> 00:20:49,949 部隊員の多くは 軍関係者に まちで声をかけられた 一般の若者だった。 139 00:21:15,207 --> 00:21:21,013 戦闘の素人だった若者たちを 最強の兵士にするべく➡ 140 00:21:21,013 --> 00:21:27,786 軍は 実尾島という無人島に送り込み 特訓を施した。 141 00:21:27,786 --> 00:21:32,525 ♬~ 142 00:21:32,525 --> 00:21:37,062 これは 部隊の関係者の 証言をもとに製作された➡ 143 00:21:37,062 --> 00:21:40,933 劇映画 「シルミド」である。 144 00:21:40,933 --> 00:21:48,541 ♬~ 145 00:21:50,609 --> 00:21:57,616 訓練は過酷を極め 7人が命を落とした。 146 00:22:14,633 --> 00:22:16,936 ♬~ 147 00:22:18,504 --> 00:22:25,411 若者たちは 2年以上にわたって 壮絶な訓練を受け続けた。 148 00:22:27,213 --> 00:22:32,318 ところが 思わぬ事態が起こった。 149 00:22:34,954 --> 00:22:37,723 国際情勢の変化を受け➡ 150 00:22:37,723 --> 00:22:43,529 韓国と北朝鮮の緊張緩和が 急激に進んだのである。 151 00:22:45,464 --> 00:22:47,399 手のひらを返したように➡ 152 00:22:47,399 --> 00:22:51,036 金日成への報復を 叫ぶ声がしぼみ➡ 153 00:22:51,036 --> 00:22:56,442 むしろ 北との融和を 望む声が高まっていた。 154 00:22:58,143 --> 00:23:03,282 すると 朴大統領は 決断を下す。 155 00:23:03,282 --> 00:23:08,387 684部隊を 極秘裏に 抹消することだった。 156 00:23:11,090 --> 00:23:17,696 それから1年後 悲劇が起こった。 157 00:23:46,425 --> 00:23:52,998 684部隊の隊員が 突如 反乱を起こし 上官18人を殺害。 158 00:23:52,998 --> 00:23:57,002 島を脱出し ソウルに向かった。 159 00:23:57,002 --> 00:24:04,009 自分たちの存在を認めてほしいと 大統領に直訴するためだった。 160 00:24:07,079 --> 00:24:15,087 動きを察知した政府は 軍や警察 500人を送り 銃撃戦を展開。 161 00:24:16,755 --> 00:24:22,961 追い詰められた隊員たちは 手榴弾で自爆した。 162 00:24:26,932 --> 00:24:30,869 4人が 一命を取り留めた。 163 00:24:30,869 --> 00:24:36,108 国のために 全てをなげうって挑んだ ミッションを 果たせない無念さを➡ 164 00:24:36,108 --> 00:24:40,212 訴えていたという。 165 00:25:05,504 --> 00:25:09,375 政府は この部隊に関する一切の事実を➡ 166 00:25:09,375 --> 00:25:11,643 機密扱いとした。 167 00:25:11,643 --> 00:25:14,913 映画が公開された 2003年まで➡ 168 00:25:14,913 --> 00:25:20,919 真相が公になることはなかった。 169 00:25:23,322 --> 00:25:28,193 1989年11月9日の夜。 170 00:25:28,193 --> 00:25:31,997 東ベルリン市民を歓喜させるニュースが 報じられた。 171 00:25:43,409 --> 00:25:52,117 旅行に関する政令案が発表され 市民の国外旅行の自由が認められたのだ。 172 00:25:52,117 --> 00:26:01,460 実は 政令は 翌日発効の予定だったが 政府報道官は 即時発効と失言していた。 173 00:26:01,460 --> 00:26:06,865 数万の市民が 壁にある検問所に押し寄せた。 174 00:26:16,508 --> 00:26:19,178 これ以上 市民をとどめれば➡ 175 00:26:19,178 --> 00:26:23,048 暴動が起こりかねないと思った 検問所の責任者は➡ 176 00:26:23,048 --> 00:26:27,820 独断で ゲートを開ける判断を下す。 177 00:26:27,820 --> 00:26:32,191 そして 夜11時過ぎ。 178 00:26:32,191 --> 00:26:43,635 (歓声と拍手) 179 00:26:43,635 --> 00:26:55,647 ♬~ 180 00:27:14,600 --> 00:27:20,005 世界中が 一斉に この出来事を報じた。 181 00:27:30,649 --> 00:27:32,885 そして。 182 00:27:32,885 --> 00:27:36,788 (ハンマーの音) 183 00:27:36,788 --> 00:27:42,394 人々が 壁を 壊し始めた。 184 00:28:03,815 --> 00:28:10,188 壁崩壊のニュースを テレビで見ていた人物がいた。 185 00:28:10,188 --> 00:28:15,060 かつて 有刺鉄線の壁を乗り越え 西側に亡命した➡ 186 00:28:15,060 --> 00:28:20,966 元東ドイツ警備隊員 コンラート・シューマン。 187 00:28:20,966 --> 00:28:26,572 そのニュースを 涙を流しながら見ていた。 188 00:28:28,473 --> 00:28:31,510 亡命後のシューマンの 西側での人生は➡ 189 00:28:31,510 --> 00:28:35,514 幸せなものとはいえなかった。 190 00:28:38,016 --> 00:28:41,420 自動車工場に職を得たものの➡ 191 00:28:41,420 --> 00:28:46,124 アメリカなどから スパイを疑われ 度々 尋問を受けた。 192 00:28:48,126 --> 00:28:53,532 東からの報復にも おびえ続けた。 193 00:28:56,535 --> 00:29:05,077 壁崩壊のよくとし シューマンは 故郷・東ドイツの土を 29年ぶりに踏んだ。 194 00:29:05,077 --> 00:29:11,183 しかし 待っていたのは歓迎ではなかった。 195 00:29:35,574 --> 00:29:42,714 1998年 シューマンは 自ら命を絶った。 196 00:29:42,714 --> 00:29:46,118 理由は明らかになっていない。 197 00:29:48,086 --> 00:29:51,890 今 ベルリンの壁があった場所には➡ 198 00:29:51,890 --> 00:29:58,530 シューマンの 「自由への跳躍」が掲げられている。 199 00:29:58,530 --> 00:30:04,102 ここを通る人たちは たとえ彼の名前を知らなくても➡ 200 00:30:04,102 --> 00:30:06,438 彼の振り絞った勇気が➡ 201 00:30:06,438 --> 00:30:13,745 確かに世界を変えたことを 思い起こすことになる。 202 00:30:17,082 --> 00:30:21,920 ♬~(ラッパ) 203 00:30:21,920 --> 00:30:27,426 そのラッパの音は 毎日 夕方に響く。 204 00:30:27,426 --> 00:30:29,361 (拍手と歓声) 205 00:30:29,361 --> 00:30:34,466 インドとパキスタンの国境のまち ワガ。 206 00:30:36,835 --> 00:30:41,673 黒色の制服を着た兵士がいる 手前側がパキスタン。 207 00:30:41,673 --> 00:30:47,779 ベージュの制服を着た兵士がいる 向こう側が インドである。 208 00:30:49,514 --> 00:30:54,519 これは 1959年から 毎日 行われてきた… 209 00:30:59,091 --> 00:31:04,596 国境に設けられたゲートを閉鎖する際に 行われる儀式である。 210 00:31:04,596 --> 00:31:09,301 (手拍子) 211 00:31:10,936 --> 00:31:12,871 (一同)パキスタン! 212 00:31:12,871 --> 00:31:14,873 (一同)パキスタン! 213 00:31:22,547 --> 00:31:27,386 ヒンドゥー教徒の多いインドと イスラム教の国 パキスタンは➡ 214 00:31:27,386 --> 00:31:32,124 建国以来 激しく対立してきた。 215 00:31:32,124 --> 00:31:34,693 このフラッグセレモニーは➡ 216 00:31:34,693 --> 00:31:44,736 両国の人々が ため込んだ感情の ガス抜きの機能も果たしている。 217 00:31:44,736 --> 00:31:47,139 (歓声と拍手) 218 00:31:49,007 --> 00:31:54,112 インドとパキスタンは もともと 一つの国だった。 219 00:31:55,881 --> 00:31:58,683 そこに国境線を 引いたのは➡ 220 00:31:58,683 --> 00:32:04,956 それまで インドを 植民地支配していた イギリスだった。 221 00:32:04,956 --> 00:32:13,265 ♬~ 222 00:32:23,208 --> 00:32:30,348 第2次大戦後 国力の衰えたイギリスは インドから撤退することを決めた。 223 00:32:30,348 --> 00:32:32,784 そのために送り込んだのが➡ 224 00:32:32,784 --> 00:32:35,220 ヴィクトリア女王のひ孫である➡ 225 00:32:35,220 --> 00:32:38,723 ルイス・マウントバッテンだった。 226 00:32:41,993 --> 00:32:48,333 しかし問題は 激化する宗教対立だった。 227 00:32:48,333 --> 00:32:54,573 マウントバッテンは イスラム教徒の多い インドの西側と東側を➡ 228 00:32:54,573 --> 00:32:59,711 パキスタンとして分離することを決めた。 229 00:32:59,711 --> 00:33:04,316 そして 1947年8月➡ 230 00:33:04,316 --> 00:33:08,820 イギリスが決めた 国境線が発表された。 231 00:33:10,422 --> 00:33:16,795 しかし イスラム教徒とヒンドゥー教徒は 交じり合って暮らしていた。 232 00:33:16,795 --> 00:33:24,636 両者を完璧に分かつ国境線を引くことなど 不可能だった。 233 00:33:24,636 --> 00:33:27,806 一夜にして生まれた国境を挟んで➡ 234 00:33:27,806 --> 00:33:33,411 インドからは イスラム教徒が パキスタンからは ヒンドゥー教徒らが➡ 235 00:33:33,411 --> 00:33:40,619 数百万もの難民になって流出する 未曽有の大移動が始まった。 236 00:34:08,580 --> 00:34:17,489 移動する行列が 擦れ違う時に 突然 殺し合いが発生することもあった。 237 00:34:19,791 --> 00:34:22,694 女性へのレイプも頻発し➡ 238 00:34:22,694 --> 00:34:29,000 その数は 数万件とも 10万件ともいわれる。 239 00:34:31,403 --> 00:34:39,311 この混乱により 100万もの人々が 命を落としたといわれている。 240 00:35:26,558 --> 00:35:30,128 破壊と殺りくが繰り返される中➡ 241 00:35:30,128 --> 00:35:37,235 マウントバッテンは 意気揚々と インドを去っていった。 242 00:35:52,951 --> 00:35:59,457 その後 インドとパキスタンは 3度にわたる大規模な戦争を繰り広げ➡ 243 00:35:59,457 --> 00:36:03,862 今も 対立が続いている。 244 00:36:08,466 --> 00:36:11,669 (手拍子) 245 00:36:13,304 --> 00:36:19,611 今日も 国境のまちでは あのフラッグセレモニーが行われる。 246 00:36:22,814 --> 00:36:25,517 (歓声) 247 00:36:25,517 --> 00:36:30,822 インドに留学経験を持つ あるパキスタンの若者が➡ 248 00:36:30,822 --> 00:36:33,625 こんな言葉を残している。 249 00:37:10,395 --> 00:37:21,005 (歓声と拍手) 250 00:37:23,975 --> 00:37:26,511 2002年。 251 00:37:26,511 --> 00:37:32,417 今度は 中東に新たな壁が出現した。 252 00:37:34,686 --> 00:37:43,194 イスラエルが パレスチナとの境に築いた 巨大な「分離壁」である。 253 00:37:46,297 --> 00:37:50,168 イスラエルに隣接する パレスチナ自治区は➡ 254 00:37:50,168 --> 00:37:55,874 「ガザ地区」と 「ヨルダン川西岸地区」の 2つ。 255 00:37:58,409 --> 00:38:02,347 イスラエルは この2つの自治区との境に➡ 256 00:38:02,347 --> 00:38:09,854 パレスチナのテロ行為を防ぐという目的で 壁を築いた。 257 00:38:13,291 --> 00:38:18,897 しかし毎朝 壁を行き来する人たちがいる。 258 00:38:18,897 --> 00:38:25,803 ヨルダン川西岸地区から イスラエルに 出稼ぎに向かう パレスチナ人である。 259 00:38:27,472 --> 00:38:32,710 イスラエル軍によって設置された検問所 「チェックポイント」を通過するのに➡ 260 00:38:32,710 --> 00:38:40,084 檻のようなレーンの中で 長時間にわたり 待たされる。 261 00:38:40,084 --> 00:38:44,923 パレスチナ自治区の中には 条件の良い仕事がない。 262 00:38:44,923 --> 00:38:51,529 人々は 生活のため この屈辱的な通勤に耐えている。 263 00:38:51,529 --> 00:39:01,139 ♬~ 264 00:39:30,969 --> 00:39:36,407 ♬~ 265 00:39:36,407 --> 00:39:45,116 しかも 労働許可証を入手するために 毎月700ドルを支払う人もいる。 266 00:39:45,116 --> 00:39:53,925 ♬~ 267 00:39:55,660 --> 00:39:58,563 (爆破の音) 268 00:39:58,563 --> 00:40:03,768 イスラエルは ガザ地区への攻撃を続けている。 269 00:40:06,638 --> 00:40:10,441 ガザ地区にも イスラエル側と行き来するための➡ 270 00:40:10,441 --> 00:40:15,747 チェックポイントがあったが 現在は封鎖されている。 271 00:40:17,548 --> 00:40:22,987 ヨルダン川西岸地区でも パレスチナの 人々の移動の自由が➡ 272 00:40:22,987 --> 00:40:27,592 更に規制されるようになった。 273 00:40:29,460 --> 00:40:36,968 そして 分離壁は 今もなお のび続けている。 274 00:40:43,574 --> 00:40:49,681 壁は今 世界各地で増え続けている。 275 00:40:49,681 --> 00:40:55,386 メキシコシティには まちを分断する壁がある。 276 00:40:57,455 --> 00:41:01,626 都市をまたぐように建てられた この壁は➡ 277 00:41:01,626 --> 00:41:08,633 富裕層と貧困層の住むエリアを 残酷なまでに隔てている。 278 00:41:10,335 --> 00:41:18,242 2015年 EUの加盟国ハンガリーには セルビアとの国境沿いに壁が建設された。 279 00:41:19,944 --> 00:41:28,653 セルビアを経由して EUを目指す 中東からの難民の流入を防ぐためである。 280 00:41:41,566 --> 00:41:49,140 そして ロシアと国境を接する フィンランドにも壁ができた。 281 00:41:49,140 --> 00:41:52,643 ウクライナ侵攻によって 緊張が高まり➡ 282 00:41:52,643 --> 00:41:59,851 去年から 200キロに及ぶ壁建設が始まっている。 283 00:42:05,223 --> 00:42:09,794 60年前 愛する人を救うため➡ 284 00:42:09,794 --> 00:42:13,030 ベルリンの壁の下に トンネルを掘った➡ 285 00:42:13,030 --> 00:42:16,834 ヨアヒム・ノイマンは 今も健在である。 286 00:42:18,536 --> 00:42:24,909 救い出した恋人 クリスタと すぐに結婚した。 287 00:42:24,909 --> 00:42:30,114 大学を卒業後 トンネル専門の建設エンジニアとなり➡ 288 00:42:30,114 --> 00:42:35,553 60ものトンネル建設を成功させた。 289 00:42:35,553 --> 00:42:45,963 中でも大きな仕事が 1991年に貫通した 英仏海峡トンネルである。 290 00:42:45,963 --> 00:42:55,073 このトンネルは その後 時代を大きく動かした。 291 00:42:55,073 --> 00:42:58,776 イギリスとヨーロッパ大陸が つながったことで➡ 292 00:42:58,776 --> 00:43:05,016 欧州連合・EUの統合が 一気に進むきっかけとなった。 293 00:43:05,016 --> 00:43:14,425 ♬~ 294 00:43:14,425 --> 00:43:21,999 一方で このトンネルを通って 不法移民が大量に流入した。 295 00:43:21,999 --> 00:43:29,707 それは やがてイギリスの EUからの離脱 という事態にも つながった。 296 00:43:31,342 --> 00:43:37,748 ヨアヒムの愛する妻 クリスタは 19年前 亡くなった。 297 00:43:40,051 --> 00:43:48,359 ヨアヒムは 飾り棚に 宝物のように 一足の靴を飾っている。 298 00:44:07,979 --> 00:44:39,610 ♬~ 299 00:44:39,610 --> 00:44:42,013 ♬~