1 00:00:00,934 --> 00:00:07,708 ♬~ 2 00:00:07,708 --> 00:00:13,580 これは 太平洋戦争末期の1945年➡ 3 00:00:13,580 --> 00:00:17,751 アメリカで公開された プロパガンダ映画である。 4 00:00:17,751 --> 00:00:22,556 日本人に扮した俳優が アメリカ国民を挑発する。 5 00:00:26,960 --> 00:00:28,962 (笑い声) 6 00:00:40,107 --> 00:00:44,811 日本の映像を巧みにモンタージュし 敵がい心をあおる。 7 00:01:13,840 --> 00:01:15,809 戦争が始まると➡ 8 00:01:15,809 --> 00:01:20,280 アメリカは 戦場に大量のカメラを投入し➡ 9 00:01:20,280 --> 00:01:22,983 プロパガンダ戦略に力を注いだ。 10 00:01:28,989 --> 00:01:34,094 映画の都 ハリウッドは 軍の要請に全面協力した。 11 00:01:35,762 --> 00:01:38,665 (砲撃音) 12 00:01:38,665 --> 00:01:42,202 戦場を捉えた リアルな映像で➡ 13 00:01:42,202 --> 00:01:46,306 国民を戦争に駆り立てる映画を 量産していく。 14 00:01:53,714 --> 00:01:58,618 一方 日本は ニュース映画で プロパガンダ戦を戦う。 15 00:02:13,967 --> 00:02:18,972 銃後の人々も総力戦に巻き込まれていく。 16 00:02:29,983 --> 00:02:35,789 人々は 日本の勝利を信じて あらゆることを犠牲にした。 17 00:02:37,724 --> 00:02:42,929 さらに日本は ラジオ放送を使った 心理戦も展開していた。 18 00:02:45,098 --> 00:02:47,034 ⚟東京ローズ。 19 00:02:47,034 --> 00:02:49,803 「東京ローズ」と呼ばれる 女性アナウンサーたちが➡ 20 00:02:49,803 --> 00:02:52,906 アメリカ兵の戦意喪失をねらった。 21 00:03:05,819 --> 00:03:08,555 戦局が悪化していくと➡ 22 00:03:08,555 --> 00:03:11,658 日本は偽りの戦果を 伝えた。 23 00:03:14,261 --> 00:03:21,168 そしてアメリカは 日本人の大量殺りくを 正当化するプロパガンダを展開していく。 24 00:03:29,309 --> 00:03:32,412 「映像の世紀 バタフライエフェクト」。 25 00:03:34,748 --> 00:03:38,585 日本とアメリカは どのようにして国民をあおり➡ 26 00:03:38,585 --> 00:03:41,688 不都合な真実を伏せていったのか。 27 00:03:43,423 --> 00:03:49,229 太平洋戦争で繰り広げられた 日米のプロパガンダ戦である。 28 00:03:49,229 --> 00:03:58,138 ♬~ 29 00:03:59,873 --> 00:04:04,444 これは 太平洋戦争開戦の前の年➡ 30 00:04:04,444 --> 00:04:09,950 1940年の銀座界わいを映した 貴重なカラーフィルムである。 31 00:04:11,952 --> 00:04:16,156 旅行で日本を訪れていたアメリカ人が 撮影したものだ。 32 00:04:19,693 --> 00:04:22,596 日中戦争が始まって3年。 33 00:04:22,596 --> 00:04:28,001 戦時中とはいうものの まだ芝居や映画を楽しむ余裕があった。 34 00:04:34,941 --> 00:04:41,515 このころ 銀座に 国策に沿った ある会社が誕生している。 35 00:04:41,515 --> 00:04:45,619 日本映画社。 通称「日映」。 36 00:04:48,955 --> 00:04:55,095 それまで新聞や通信社は 別々に ニュース映画を製作していたが➡ 37 00:04:55,095 --> 00:04:57,697 それを日映1社に統合。 38 00:05:00,901 --> 00:05:04,604 政府による統制を容易にするためだった。 39 00:05:10,243 --> 00:05:15,682 日映製作の「日本ニュース」は 全国の劇場で上映された。 40 00:05:15,682 --> 00:05:19,386 劇映画と共にニュース映画を上映することが➡ 41 00:05:19,386 --> 00:05:22,255 義務付けられていた。 42 00:05:22,255 --> 00:05:25,492 ♬~ 43 00:05:25,492 --> 00:05:28,295 (砲撃音) 44 00:05:46,179 --> 00:05:51,585 日本は アジアを植民地支配していた 欧米を駆逐し➡ 45 00:05:51,585 --> 00:05:55,789 大東亜共栄圏を建設するという 大義を掲げた。 46 00:05:58,325 --> 00:06:02,929 「日本ニュース」は そのプロパガンダの一翼を担っていく。 47 00:06:53,313 --> 00:06:59,886 これは真珠湾攻撃のあと アメリカが撮影した映像である。 48 00:06:59,886 --> 00:07:03,623 実は 日本軍は 空襲のタイミングに合わせ➡ 49 00:07:03,623 --> 00:07:08,528 5隻の特殊潜航艇による 特別攻撃を仕掛けていた。 50 00:07:12,332 --> 00:07:15,335 しかし 作戦は失敗。 51 00:07:15,335 --> 00:07:21,541 隊員10人のうち 9人が命を落とし 1人が捕虜となった。 52 00:07:27,380 --> 00:07:30,283 真珠湾攻撃から3か月後➡ 53 00:07:30,283 --> 00:07:32,218 「日本ニュース」は➡ 54 00:07:32,218 --> 00:07:34,220 次のように 伝えた。 55 00:07:44,497 --> 00:07:49,069 1人が捕虜となった事実は伏せ 戦死した9人を➡ 56 00:07:49,069 --> 00:07:52,572 「軍神」という 言葉を使い 神格化した。 57 00:07:54,040 --> 00:07:58,511 学校では彼らをあがめることが求められ➡ 58 00:07:58,511 --> 00:08:02,816 子どもたちは 強い憧れを持つようになっていく。 59 00:08:16,463 --> 00:08:36,449 ♬~ 60 00:08:38,485 --> 00:08:42,288 日本の奇襲にアメリカは怒りに震えた。 61 00:08:55,769 --> 00:09:00,173 アメリカもプロパガンダ戦に 総力を挙げる。 62 00:09:04,210 --> 00:09:10,717 その主力を担ったのは 世界最大の映画の都 ハリウッドだった。 63 00:09:16,756 --> 00:09:23,596 大手映画会社は 兵士の訓練用フィルムや プロパガンダ映画を製作する軍のために➡ 64 00:09:23,596 --> 00:09:25,899 撮影所を明け渡した。 65 00:09:31,571 --> 00:09:35,542 ♬~ 66 00:09:35,542 --> 00:09:39,546 ハリウッドのスターたちも動員された。 67 00:09:44,818 --> 00:09:48,221 戦地からの リクエストに応じる映像である。 68 00:09:59,799 --> 00:10:01,734 (ため息) 69 00:10:01,734 --> 00:10:07,240 ♬~ 70 00:10:09,776 --> 00:10:13,213 それまでの戦争反対の世論は一変し➡ 71 00:10:13,213 --> 00:10:17,217 若者たちは徴兵に応じ 戦場に向かった。 72 00:10:20,687 --> 00:10:25,892 そのほとんどが 戦争を経験したことのない世代だった。 73 00:10:30,330 --> 00:10:34,134 新兵教育のための映画製作を 命じられたのが➡ 74 00:10:34,134 --> 00:10:39,139 アカデミー賞も受賞していた 巨匠フランク・キャプラだった。 75 00:10:42,342 --> 00:10:44,377 キャプラが思いついたのは➡ 76 00:10:44,377 --> 00:10:48,281 敵国の映像を集め 再編集することだった。 77 00:10:51,050 --> 00:10:53,553 ♬~ 78 00:10:53,553 --> 00:10:59,159 これは 新兵の教育用に作られた シリーズの第一作である。 79 00:11:03,796 --> 00:11:06,199 敵国の脅威を描きながら➡ 80 00:11:06,199 --> 00:11:10,003 アメリカが戦わなければならない理由を 説いていく。 81 00:11:21,214 --> 00:11:26,219 ♬~ 82 00:11:46,806 --> 00:11:50,810 日本の描写では その狂信性を強調した。 83 00:12:22,375 --> 00:12:25,278 計7本製作された このシリーズは➡ 84 00:12:25,278 --> 00:12:28,615 フランス語 中国語の吹き替え版も作られ➡ 85 00:12:28,615 --> 00:12:31,117 それぞれの国で上映された。 86 00:12:34,020 --> 00:12:38,725 アメリカ政府も 銃後の人々に戦争協力を求めた。 87 00:12:38,725 --> 00:12:44,631 これは 武器の試験を買って出た 女性たちの映像。 88 00:12:48,868 --> 00:12:54,407 アメリカは 太平洋とヨーロッパ 2つの戦線で戦うために➡ 89 00:12:54,407 --> 00:12:59,212 平時の国家予算の数倍に及ぶ ばく大な戦費を必要とした。 90 00:13:03,116 --> 00:13:09,722 政府は 映画を戦時国債の 販売促進の道具にしようと考えた。 91 00:13:12,725 --> 00:13:18,298 ♬~ 92 00:13:18,298 --> 00:13:22,101 目を付けたのが 人気のアニメーションだった。 93 00:13:29,375 --> 00:13:44,390 ♬~ 94 00:13:45,958 --> 00:13:50,697 戦時国債の販売額は 目標の90億ドルを超えたが➡ 95 00:13:50,697 --> 00:13:54,100 ほとんどは企業による購入だった。 96 00:13:56,002 --> 00:14:02,108 戦争は まだ遠く離れた場所で 起こっていることにすぎなかった。 97 00:14:06,612 --> 00:14:09,182 しかし 戦争の影響は➡ 98 00:14:09,182 --> 00:14:11,884 アメリカ人の生活にも表れ始める。 99 00:14:14,354 --> 00:14:20,059 日本軍が東南アジアを占領し 天然ゴムが入ってこなくなったのである。 100 00:14:20,059 --> 00:14:25,465 大統領は ゴム製品の供出を国民に呼びかけた。 101 00:14:47,954 --> 00:14:52,859 ゴムは 軍用車両やボートなどの製造に 不可欠である。 102 00:14:52,859 --> 00:14:56,763 子どもたちは おもちゃまで手放した。 103 00:14:59,232 --> 00:15:02,902 アメリカ国民の間に戦争協力の意識が➡ 104 00:15:02,902 --> 00:15:05,705 次第に広がっていった。 105 00:15:07,673 --> 00:15:13,379 ♬~ 106 00:15:27,460 --> 00:15:32,298 1943年5月 日本軍が占拠していた➡ 107 00:15:32,298 --> 00:15:37,603 アッツ島での戦いの行方を知らされた 日本人は がく然とした。 108 00:15:39,672 --> 00:15:45,311 大本営は 1942年のミッドウェー海戦での 大敗以来➡ 109 00:15:45,311 --> 00:15:47,814 戦況の悪化を伏せていた。 110 00:15:51,417 --> 00:15:54,387 ところが アッツ島の戦いで➡ 111 00:15:54,387 --> 00:15:59,892 守備隊 2600人余りが全滅したと 発表したのである。 112 00:16:05,364 --> 00:16:11,571 それを伝えるラジオ放送で 陸軍報道部長は こう語った。 113 00:16:42,935 --> 00:16:45,838 実は アッツ島の守備隊が➡ 114 00:16:45,838 --> 00:16:51,043 兵や武器の増援を求めなかったというのは 偽りだった。 115 00:16:56,382 --> 00:17:00,319 この時 大本営発表で初めて➡ 116 00:17:00,319 --> 00:17:04,123 「玉砕」という言葉が使われた。 117 00:17:04,123 --> 00:17:06,058 兵士の死を➡ 118 00:17:06,058 --> 00:17:10,263 「玉のように 美しく砕け散る」と美化しようとして➡ 119 00:17:10,263 --> 00:17:12,765 事実は伏せられたのだった。 120 00:17:18,004 --> 00:17:23,709 当時 放送を担う 日本放送協会に 記者はおらず➡ 121 00:17:23,709 --> 00:17:28,614 大本営の発表や通信社の記事を そのまま報じていた。 122 00:18:23,803 --> 00:18:28,140 開戦と同時に 日本は南方各地の前線で➡ 123 00:18:28,140 --> 00:18:31,344 もう一つのプロパガンダ戦を 展開していた。 124 00:18:45,391 --> 00:18:50,496 対敵宣伝活動 すなわち「心理戦」である。 125 00:18:54,500 --> 00:19:00,406 これは日本軍が 敵に厭戦気分を 広めるためにばらまいたビラ。 126 00:19:20,526 --> 00:19:26,232 心理戦で大きな役割を果たしたのが ラジオの国際放送だった。 127 00:19:37,877 --> 00:19:44,984 日本放送協会は 政府指導のもと 16の言語で海外放送を行っていた。 128 00:19:44,984 --> 00:19:51,490 対象は 海外に住む日本人 そして敵国兵士などである。 129 00:19:54,660 --> 00:19:59,498 開戦から1か月後に内閣情報局が出した 「放送しるべ」に➡ 130 00:19:59,498 --> 00:20:02,201 その役割が示されている。 131 00:20:05,304 --> 00:20:07,640 「わが海外放送は➡ 132 00:20:07,640 --> 00:20:12,078 強力な思想戦の 尖兵として活躍し➡ 133 00:20:12,078 --> 00:20:14,880 姿なき爆弾となり」。 134 00:20:16,916 --> 00:20:20,786 海外放送の思想戦で 最も効果を上げたのが➡ 135 00:20:20,786 --> 00:20:25,991 1943年に始まった番組 「ゼロ・アワー」だった。 136 00:20:28,227 --> 00:20:30,162 「ゼロ・アワー」に出演していた➡ 137 00:20:30,162 --> 00:20:33,766 一人の女性アナウンサーの映像が 残されている。 138 00:20:36,769 --> 00:20:43,175 終戦直後に連合国軍と共にやって来た 従軍記者が撮影したものである。 139 00:20:59,358 --> 00:21:01,360 東京ローズ。 140 00:21:03,062 --> 00:21:05,498 「東京ローズ」と 名乗ったのは➡ 141 00:21:05,498 --> 00:21:08,100 日系アメリカ人2世の… 142 00:21:13,372 --> 00:21:16,142 女性アナウンサーは複数いたが➡ 143 00:21:16,142 --> 00:21:21,447 アメリカ兵から総称して 「東京ローズ」と呼ばれ 大人気だった。 144 00:21:23,783 --> 00:21:30,689 「ゼロ・アワー」は 南太平洋方面で戦う アメリカ兵に向けた20分の番組。 145 00:21:54,113 --> 00:21:57,016 女性アナウンサーが ディスク・ジョッキーを務め➡ 146 00:21:57,016 --> 00:22:01,554 親しみやすい語り口で ノスタルジックな音楽を流す。 147 00:22:01,554 --> 00:22:05,824 ♬~ 148 00:22:05,824 --> 00:22:08,160 戦場のアメリカ兵たちに➡ 149 00:22:08,160 --> 00:22:12,765 遠く離れた故郷の 恋人や家族を思い出させ➡ 150 00:22:12,765 --> 00:22:15,868 ホームシックを起こさせるのが ねらいだった。 151 00:22:45,130 --> 00:22:51,637 敵国のプロパガンダにもかかわらず 番組は瞬く間に大人気となった。 152 00:22:53,539 --> 00:22:57,343 名前も知らないアナウンサーたちを 「東京ローズ」と呼び➡ 153 00:22:57,343 --> 00:22:59,545 アイドル視するようになる。 154 00:23:26,105 --> 00:23:29,942 日系アメリカ人のアイバが 東京ローズとなったのは➡ 155 00:23:29,942 --> 00:23:31,944 運命のいたずらだった。 156 00:23:38,651 --> 00:23:45,958 開戦直前 親戚の病気見舞いのため 初めて日本を訪れていたが➡ 157 00:23:45,958 --> 00:23:49,962 戦争が始まり アイバは帰国できなくなってしまった。 158 00:23:56,902 --> 00:24:01,373 日本放送協会でタイピストの職を得た アイバは➡ 159 00:24:01,373 --> 00:24:06,679 当初 日本のプロパガンダ放送に 関わることを拒んでいた。 160 00:24:09,915 --> 00:24:13,719 説得したのは オーストラリア人捕虜で➡ 161 00:24:13,719 --> 00:24:16,722 「ゼロ・アワー」の台本を 書かされていた… 162 00:24:20,392 --> 00:24:25,397 彼は 次のような言葉で アイバの心を変えた。 163 00:25:03,802 --> 00:25:06,705 これは アメリカが製作した➡ 164 00:25:06,705 --> 00:25:10,109 東京ローズへの注意喚起をする 映画である。 165 00:25:11,643 --> 00:25:16,548 (ラジオの音声) 166 00:25:34,166 --> 00:25:44,476 ♬~ 167 00:25:44,476 --> 00:25:51,683 アメリカ外国放送情報局の報告書には こう書かれている。 168 00:26:19,945 --> 00:26:23,549 東京ローズ。 東京ローズ。 169 00:26:23,549 --> 00:26:26,051 東京ローズは複数いたが➡ 170 00:26:26,051 --> 00:26:31,256 戦後 名乗り出たのは罪悪感のない アイバ 一人だった。 171 00:26:34,626 --> 00:26:37,863 このことが彼女の運命を➡ 172 00:26:37,863 --> 00:26:41,166 またも大きく狂わせることになる。 173 00:26:46,972 --> 00:26:51,844 戦争は激しさを増していたが 依然として アメリカ国民の関心は➡ 174 00:26:51,844 --> 00:26:55,547 政府が期待するほどには 高まっていなかった。 175 00:26:58,383 --> 00:27:00,686 開戦から2年後の調査では➡ 176 00:27:00,686 --> 00:27:05,591 国民の半数以上が 戦争を深刻に捉えていなかった。 177 00:27:10,462 --> 00:27:14,867 アメリカ政府は 新たなプロパガンダ戦略を始める。 178 00:27:17,703 --> 00:27:24,810 これは 1943年の太平洋の島 タラワの戦いを描いた映画である。 179 00:27:24,810 --> 00:27:26,812 (砲撃音) 180 00:27:30,682 --> 00:27:34,953 (爆発音) 181 00:27:34,953 --> 00:27:37,489 国民の関心を引き付けるために➡ 182 00:27:37,489 --> 00:27:42,594 全編を初めて 実戦のリアルな映像だけで構成した。 183 00:27:58,577 --> 00:28:00,879 (銃声) 184 00:28:02,915 --> 00:28:05,717 (爆発音) 185 00:28:07,719 --> 00:28:12,224 (爆発音) 186 00:28:12,224 --> 00:28:18,430 実は この映画の あるシーンに 大統領が待ったをかけていた。 187 00:28:20,699 --> 00:28:26,638 ルーズベルト大統領向けに 試写会が 行われた時のことだった。 188 00:28:26,638 --> 00:28:30,542 大統領が反応したのは 次のシーンである。 189 00:28:33,779 --> 00:28:37,382 アメリカ兵の遺体だった。 190 00:28:37,382 --> 00:28:42,087 太平洋戦争では 国民に見せたことがない映像だった。 191 00:28:43,889 --> 00:28:47,259 撮影を担当した ノーマン・ハッチ。 192 00:28:47,259 --> 00:28:49,328 大統領を説得したのは➡ 193 00:28:49,328 --> 00:28:53,432 彼と共に試写会にいた 従軍記者だった。 194 00:29:24,997 --> 00:29:29,501 大統領の承認を得て 映画は公開された。 195 00:30:08,874 --> 00:30:12,377 この映画は アカデミー賞を受賞する。 196 00:30:14,613 --> 00:30:18,283 戦時国債販売のキャンペーンにも使われ➡ 197 00:30:18,283 --> 00:30:22,988 今度は 一般の国民からも 巨額の戦費が集まった。 198 00:30:26,024 --> 00:30:31,229 撮影したノーマン・ハッチを紹介する プロパガンダ映画まで作られた。 199 00:30:47,112 --> 00:30:51,016 しかし 戦いが凄惨さを増すにつれ➡ 200 00:30:51,016 --> 00:30:56,521 アメリカは 戦場の現実を 覆い隠すようになっていく。 201 00:31:00,992 --> 00:31:06,698 1944年9月に始まった パラオ諸島 ぺリリュー島の戦いは➡ 202 00:31:06,698 --> 00:31:10,102 「狂気の戦場」と呼ばれた。 203 00:31:10,102 --> 00:31:12,104 (爆発音) 204 00:31:14,973 --> 00:31:20,679 戦意を失った日本兵に 容赦なく銃弾が撃ち込まれる。 205 00:31:22,481 --> 00:31:26,218 (銃声) 206 00:31:26,218 --> 00:31:32,958 この時 ノーマン・ハッチは 検閲の任務を命じられていた。 207 00:31:32,958 --> 00:31:38,363 これは 彼が公開を制限した 未編集の映像である。 208 00:31:47,472 --> 00:31:49,408 ナイフを使い➡ 209 00:31:49,408 --> 00:31:53,912 日本兵の遺体から 何かを奪おうとするアメリカ兵。 210 00:32:01,153 --> 00:32:06,658 さらに 戦場で正気を失う兵士の姿もある。 211 00:32:06,658 --> 00:32:17,369 ♬~ 212 00:32:49,734 --> 00:32:52,137 (爆発音) 213 00:32:54,206 --> 00:32:58,677 追い詰められていく日本は 戦局を打開するため➡ 214 00:32:58,677 --> 00:33:01,279 捨て身の作戦を開始した。 215 00:33:04,549 --> 00:33:06,551 特攻である。 216 00:33:10,355 --> 00:33:12,357 「日本ニュース」は➡ 217 00:33:12,357 --> 00:33:14,860 その出撃を 繰り返し伝えた。 218 00:33:51,229 --> 00:33:54,900 特攻に向かう若者たちの 最後の言葉を➡ 219 00:33:54,900 --> 00:33:57,602 国民はラジオを通して聞いた。 220 00:34:28,800 --> 00:34:31,670 アメリカは このころ既に➡ 221 00:34:31,670 --> 00:34:35,573 大量破壊兵器 原爆の開発を進めていた。 222 00:34:38,176 --> 00:34:40,111 この映画の中で➡ 223 00:34:40,111 --> 00:34:45,517 あらゆる兵器を使い 日本人を殺すことが 「正義」であると訴える。 224 00:34:47,652 --> 00:34:51,456 全米の映画館で繰り返し上映された。 225 00:35:26,057 --> 00:35:32,263 日本本土への無差別爆撃に続く 1945年8月。 226 00:35:37,268 --> 00:35:43,575 アメリカは 究極の無差別殺りく兵器 原子爆弾を投下した。 227 00:35:50,515 --> 00:35:52,717 そして迎えた 終戦。 228 00:35:58,590 --> 00:36:04,195 アメリカ国民の85%が 原爆投下を支持した。 229 00:36:15,673 --> 00:36:17,609 終戦直後➡ 230 00:36:17,609 --> 00:36:20,512 ハリウッドの巨匠 ジョン・ヒューストン監督は➡ 231 00:36:20,512 --> 00:36:23,481 一本の映画を製作した。 232 00:36:23,481 --> 00:36:27,585 従軍し 2本の映画を製作していたが➡ 233 00:36:27,585 --> 00:36:32,791 戦後 戦場を描くことなく 戦争の恐怖を伝えようとした。 234 00:36:37,796 --> 00:36:43,201 戦争で心を病んだ帰還兵たちの姿を描いた 記録映画である。 235 00:37:37,822 --> 00:37:43,895 だが ニューヨーク近代美術館での 完成上映会直前➡ 236 00:37:43,895 --> 00:37:47,398 軍によって フィルムは押収された。 237 00:37:51,002 --> 00:37:55,707 公開が許されたのは 35年後のことだった。 238 00:38:28,740 --> 00:38:34,879 戦時中 「日本ニュース」によって プロパガンダを担ってきた日本映画社は➡ 239 00:38:34,879 --> 00:38:39,684 終戦翌年に 映画「日本の悲劇」を公開した。 240 00:39:17,889 --> 00:39:21,659 戦時中の「日本ニュース」を再編集し➡ 241 00:39:21,659 --> 00:39:27,599 当時の報道が いかに偽りに 満ちたものであったのかを明らかにした。 242 00:39:27,599 --> 00:39:36,708 ♬~ 243 00:40:07,272 --> 00:40:10,475 一旦は公開された この映画に対し➡ 244 00:40:10,475 --> 00:40:12,477 時の首相 吉田 茂は➡ 245 00:40:12,477 --> 00:40:14,479 異議を唱えた。 246 00:40:17,081 --> 00:40:20,885 天皇の戦争責任に触れていたためだった。 247 00:40:22,887 --> 00:40:27,292 フィルムは没収され 上映禁止となった。 248 00:40:44,709 --> 00:40:48,212 東京ローズ アイバ・トグリ・ダキノは➡ 249 00:40:48,212 --> 00:40:51,015 日本で終戦を迎えていた。 250 00:40:57,655 --> 00:41:01,392 日本にやって来た連合国軍の従軍記者は➡ 251 00:41:01,392 --> 00:41:05,296 躍起になって 東京ローズを捜し出した。 252 00:41:32,690 --> 00:41:36,327 「自分は アメリカ兵を楽しませただけ」➡ 253 00:41:36,327 --> 00:41:42,934 罪悪感などなかった彼女は ラジオ収録の再現にも快く応じていた。 254 00:41:46,738 --> 00:41:51,142 しかし アイバは突然収監される。 255 00:41:51,142 --> 00:41:56,447 母国アメリカへの反逆罪に 問われたのだった。 256 00:42:02,587 --> 00:42:05,490 アメリカに送還され 行われた裁判で➡ 257 00:42:05,490 --> 00:42:09,694 アイバは無罪を主張したが 判決は有罪。 258 00:42:11,596 --> 00:42:17,201 市民権を剥奪され 6年2か月 投獄された。 259 00:42:20,738 --> 00:42:23,474 1956年1月。 260 00:42:23,474 --> 00:42:29,781 アイバが模範囚として 仮釈放された時の映像。 261 00:42:29,781 --> 00:42:32,183 39歳になっていた。 262 00:42:47,999 --> 00:42:51,636 アイバがアメリカの市民権を 取り戻したのは➡ 263 00:42:51,636 --> 00:42:56,441 この21年後の60歳の時。 264 00:42:56,441 --> 00:42:59,544 大統領特赦を受けてのことだった。 265 00:43:05,249 --> 00:43:07,752 2006年9月。 266 00:43:24,402 --> 00:43:27,672 かつて 戦場のアイドルだったアイバは➡ 267 00:43:27,672 --> 00:43:36,280 死の直前 アメリカ退役軍人会から 愛国的な市民として表彰を受けていた。 268 00:44:15,753 --> 00:44:39,243 ♬~