1 00:00:00,934 --> 00:00:12,079 ♬~ 2 00:00:12,079 --> 00:00:36,003 ♬~ 3 00:00:36,003 --> 00:00:43,810 「奇妙な果実」とは 木につるされた 黒人の死体のことである。 4 00:00:47,014 --> 00:00:52,753 アメリカ「TIME」誌は 1939年に発表された この歌を➡ 5 00:00:52,753 --> 00:00:57,658 20世紀最高の歌に挙げた。 6 00:00:59,660 --> 00:01:02,963 歌ったのは ジャズシンガー… 7 00:01:49,910 --> 00:01:55,515 アメリカに激しい人種差別が 吹き荒れるたび➡ 8 00:01:55,515 --> 00:01:58,352 「奇妙な果実」はカバーされ➡ 9 00:01:58,352 --> 00:02:02,556 時代を超え 歌われ続けてきた。 10 00:02:27,514 --> 00:02:34,655 ♬~ 11 00:02:34,655 --> 00:02:37,324 21世紀➡ 12 00:02:37,324 --> 00:02:40,527 役割を終えたかにみえた この歌が➡ 13 00:02:40,527 --> 00:02:46,333 未知のウイルスが分断した世界で またも よみがえった。 14 00:02:48,001 --> 00:02:54,007 65年前亡くなった ビリー・ホリデイの言葉がある。 15 00:03:16,363 --> 00:03:20,267 「映像の世紀バタフライエフェクト」。 16 00:03:24,104 --> 00:03:29,776 「奇妙な果実」は 今の世界に何を残したのか。 17 00:03:29,776 --> 00:03:35,382 名曲がつないだ 怒りと悲しみの物語である。 18 00:03:50,831 --> 00:03:54,301 第一次世界大戦を戦った アメリカ軍兵士が➡ 19 00:03:54,301 --> 00:03:58,305 ニューヨークへ凱旋したときの 映像である。 20 00:04:02,042 --> 00:04:06,046 行進しているのは 黒人だけで編成された… 21 00:04:17,390 --> 00:04:21,995 彼らは ヨーロッパの前線で ジャズを演奏し➡ 22 00:04:21,995 --> 00:04:25,899 兵士や地元住民を元気づけた。 23 00:04:31,638 --> 00:04:34,641 そして 1920年代➡ 24 00:04:34,641 --> 00:04:39,079 アメリカは 未曽有の好景気を迎えた。 25 00:04:39,079 --> 00:04:45,385 大流行したジャズに彩られたその時代は 「ジャズ・エイジ」と呼ばれた。 26 00:04:50,690 --> 00:04:57,497 人々は繁栄をおう歌し ジャズを提供する ナイトクラブがにぎわった。 27 00:04:59,399 --> 00:05:04,604 客は白人 ステージに立つのは黒人。 28 00:05:04,604 --> 00:05:08,141 腕に覚えがあれば稼げる ジャズの世界は➡ 29 00:05:08,141 --> 00:05:12,646 黒人が活躍できる数少ない場所だった。 30 00:05:19,786 --> 00:05:24,090 黒人ミュージシャンの中から スターも生まれた。 31 00:05:29,062 --> 00:05:33,600 これは 生涯で150曲以上の 録音を残し➡ 32 00:05:33,600 --> 00:05:35,802 「ブルースの女帝」 と呼ばれた… 33 00:05:38,071 --> 00:05:41,775 (拍手) 34 00:05:46,780 --> 00:05:51,017 ルイ・アームストロングの人気に 火がついたのも この時代。 35 00:05:51,017 --> 00:05:54,988 ダミ声と トランペットを ボーカルのように吹くスタイルで➡ 36 00:05:54,988 --> 00:05:57,891 喝采を浴びていた。 37 00:05:57,891 --> 00:06:03,196 ♬~ 38 00:06:06,566 --> 00:06:10,971 このころ ニューヨークの黒人たちは➡ 39 00:06:10,971 --> 00:06:16,376 マンハッタン北部の ハーレム地区に住むようになっていた。 40 00:06:19,045 --> 00:06:25,852 このハーレムに ジャズに魅了された 一人の少女がいた。 41 00:06:30,490 --> 00:06:35,195 後の 歌手 ビリー・ホリデイである。 42 00:07:03,023 --> 00:07:07,260 エレノラの家庭環境は複雑だった。 43 00:07:07,260 --> 00:07:15,068 母親は ジャズミュージシャンの父親と 別れ 売春で生計を立てていた。 44 00:07:17,270 --> 00:07:20,473 エレノラは 学校に通わず➡ 45 00:07:20,473 --> 00:07:27,580 14歳で母親のいる売春宿で 下働きを始める。 46 00:07:27,580 --> 00:07:32,485 時に 客を取らされることもあったという。 47 00:07:38,658 --> 00:07:41,661 家計を助けるため エレノラは➡ 48 00:07:41,661 --> 00:07:46,100 ナイトクラブの 踊り子に応募する。 49 00:07:46,100 --> 00:07:53,506 うまく踊ることができなかった エレノラは 代わりに歌を披露した。 50 00:07:53,506 --> 00:07:59,412 これが 歌手ビリー・ホリデイ誕生の きっかけとなる。 51 00:08:15,695 --> 00:08:19,332 ビリーを見いだしたのは ジョン・ハモンドという➡ 52 00:08:19,332 --> 00:08:22,135 駆け出しの 音楽プロデューサーだった。 53 00:08:23,837 --> 00:08:30,643 大学を中退し ジャズ界で 一旗揚げようという野心にあふれていた。 54 00:08:48,695 --> 00:08:52,565 聴く者の心に深くしみこむ歌声で➡ 55 00:08:52,565 --> 00:08:56,936 ビリーは すぐに頭角を現す。 56 00:08:56,936 --> 00:09:04,043 19歳のときには映画に出演し 恋人にすがる女性を演じた。 57 00:09:07,313 --> 00:09:12,886 これは ビリーが歌う 最も古い映像である。 58 00:09:12,886 --> 00:09:28,101 ♬~ 59 00:09:29,903 --> 00:09:37,710 1938年 ビリーは驚くべき行動に出た。 60 00:09:40,480 --> 00:09:44,284 当時ジャズ界では 白人なら白人だけ➡ 61 00:09:44,284 --> 00:09:48,288 黒人なら黒人だけで バンドが組まれていた。 62 00:09:54,027 --> 00:10:00,300 ♬~ 63 00:10:00,300 --> 00:10:02,569 クラリネット奏者 アーティ・ショウが➡ 64 00:10:02,569 --> 00:10:07,173 率いる白人バンドに ビリーは ただ一人➡ 65 00:10:07,173 --> 00:10:10,577 黒人ボーカリストとして参加する。 66 00:10:14,080 --> 00:10:18,685 (拍手) 67 00:10:35,001 --> 00:10:40,807 当時 アメリカ南部の州では あらゆる施設が➡ 68 00:10:40,807 --> 00:10:46,012 黒人と白人で分けられていた。 69 00:10:51,417 --> 00:10:55,021 ビリーがショウと 南部ケンタッキー州で➡ 70 00:10:55,021 --> 00:10:59,125 ステージに立ったときのことだった。 71 00:11:22,515 --> 00:11:26,085 人種のるつぼと言われる ニューヨークに戻ってからも➡ 72 00:11:26,085 --> 00:11:28,788 それは同じだった。 73 00:12:11,364 --> 00:12:17,503 同じころ ビリーを打ちのめす 出来事があった。 74 00:12:17,503 --> 00:12:24,310 ジャズミュージシャンだった ビリーの父親が亡くなった。 75 00:12:26,212 --> 00:12:33,419 南部テキサス州を公演中 ビリーの父は 肺炎になった。 76 00:12:33,419 --> 00:12:38,291 だが 黒人を受け入れてくれる 病院が見つからず➡ 77 00:12:38,291 --> 00:12:42,095 そのまま死んでしまった。 78 00:13:08,154 --> 00:13:11,057 23歳になったビリーは➡ 79 00:13:11,057 --> 00:13:15,662 マンハッタンにできた 新しいナイトクラブで歌い始める。 80 00:13:23,936 --> 00:13:29,876 才能さえあれば誰でもステージに立て 金さえ払えば 人種を問わず➡ 81 00:13:29,876 --> 00:13:33,980 誰でも客として迎えられるクラブだった。 82 00:13:36,516 --> 00:13:40,920 この店を開いたのは ユダヤ系アメリカ人の… 83 00:14:13,152 --> 00:14:16,155 4か月ほど たったころ➡ 84 00:14:16,155 --> 00:14:23,262 ビリーの歌声に魅了された 一人の男が歌を持ち込んだ。 85 00:14:26,065 --> 00:14:29,869 学校の教師として 働いていた 詩人の… 86 00:14:32,405 --> 00:14:36,609 彼もまた ユダヤ系アメリカ人だった。 87 00:14:38,578 --> 00:14:42,882 その歌の名は 「Strange Fruit」。 88 00:14:57,296 --> 00:15:00,233 木につるされた 黒人のリンチ遺体を➡ 89 00:15:00,233 --> 00:15:06,539 果実に見立てて 人種差別を告発する歌だった。 90 00:15:08,741 --> 00:15:13,446 20世紀前半まで 白人による黒人のリンチは➡ 91 00:15:13,446 --> 00:15:17,884 遊び半分に日常的に行われていた。 92 00:15:17,884 --> 00:15:24,657 1880年代から1920年代 リンチによる黒人の犠牲者は➡ 93 00:15:24,657 --> 00:15:29,462 記録されているだけで 3,500人を超える。 94 00:15:31,197 --> 00:15:38,304 黒人男性は 白人女性を見つめただけで レイプする意思があると見なされ➡ 95 00:15:38,304 --> 00:15:44,110 正義の名の下に 黒人へのリンチが行われた。 96 00:15:59,192 --> 00:16:07,733 殴られ打ちのめされた黒人は 生きたまま 油をかけられて焼かれた。 97 00:16:07,733 --> 00:16:12,839 遺体の写真は 絵葉書として 販売されることもあった。 98 00:16:26,752 --> 00:16:29,055 ミーロポルの両親は➡ 99 00:16:29,055 --> 00:16:33,593 現在のウクライナ西部出身の ユダヤ人だった。 100 00:16:33,593 --> 00:16:40,800 ロシアでの迫害から逃れるため 1902年にアメリカへ移住していた。 101 00:16:42,935 --> 00:16:49,642 ミーロポルには アメリカの黒人差別は ひと事ではなかった。 102 00:17:27,079 --> 00:17:32,485 そしてビリーは 「奇妙な果実」を歌い始める。 103 00:17:32,485 --> 00:17:36,689 怒りをあえて 深く押し殺した歌声が➡ 104 00:17:36,689 --> 00:17:40,860 聴く者 すべての心に 突き刺さった。 105 00:17:40,860 --> 00:17:54,974 ♬~ 106 00:19:00,773 --> 00:19:05,244 ビリーは「奇妙な果実」を レコードにしようとしたが➡ 107 00:19:05,244 --> 00:19:07,880 過激な歌詞であることを理由に➡ 108 00:19:07,880 --> 00:19:13,019 大手のレコードレーベルから 録音を拒否される。 109 00:19:13,019 --> 00:19:17,790 録音を引き受ける人物が 一人だけ現れた。 110 00:19:17,790 --> 00:19:20,893 新しくレーベルを 設立したばかりだった… 111 00:19:23,262 --> 00:19:27,566 彼もまた ユダヤ系アメリカ人だった。 112 00:19:48,554 --> 00:19:50,856 レコードが発売されると➡ 113 00:19:50,856 --> 00:19:56,696 マスコミは「奇妙な果実」を センセーショナルに取り上げた。 114 00:19:56,696 --> 00:19:59,298 「TIME」誌は「奇妙な果実」を➡ 115 00:19:59,298 --> 00:20:04,136 黒人たちにとって 「強力なメッセージとなる音楽」と評し➡ 116 00:20:04,136 --> 00:20:07,440 ビリーの写真付きで紹介した。 117 00:20:10,309 --> 00:20:13,212 白人が主な読者であったこの雑誌で➡ 118 00:20:13,212 --> 00:20:19,318 黒人 それも女性が掲載されることは 極めてまれだった。 119 00:20:22,321 --> 00:20:28,828 「奇妙な果実」は ラジオでも放送禁止扱いを受けた。 120 00:20:28,828 --> 00:20:33,666 しかし この歌は そんな障害を物ともせず➡ 121 00:20:33,666 --> 00:20:37,670 ヒットチャートを駆け上がっていった。 122 00:20:45,144 --> 00:20:52,051 だが「奇妙な果実」は ビリーを破滅へと導いていく。 123 00:20:54,820 --> 00:21:01,227 このころ ビリーは 麻薬を手放せなくなっていた。 124 00:21:05,464 --> 00:21:12,271 ビリーに麻薬を教え込んだのは 歴代の恋人たちだった。 125 00:21:12,271 --> 00:21:16,876 売れっ子となったビリーは 男たちにたかられ➡ 126 00:21:16,876 --> 00:21:23,382 ヘロインやコカインといった 麻薬に溺れていった。 127 00:21:44,937 --> 00:21:51,110 人種差別に抗議し 社会からも 支持を得ていた黒人女性シンガーは➡ 128 00:21:51,110 --> 00:21:56,081 アメリカ政府にとって いまいましい存在だった。 129 00:21:56,081 --> 00:22:02,188 ビリーの麻薬中毒は 格好の攻撃材料となる。 130 00:22:19,572 --> 00:22:24,510 麻薬局長官のアンスリンガーは 黒人のジャズを➡ 131 00:22:24,510 --> 00:22:29,815 アメリカの秩序を乱す あしき風俗と見ていた。 132 00:22:49,301 --> 00:22:51,604 フィラデルフィアで公演中➡ 133 00:22:51,604 --> 00:22:56,208 ついにビリーは ヘロイン所持で逮捕される。 134 00:22:59,678 --> 00:23:05,084 そして 9か月にわたって収監された。 135 00:23:08,420 --> 00:23:15,160 仮出所から程なくして ビリーは カーネギーホールでコンサートを開く。 136 00:23:15,160 --> 00:23:20,766 すると 白人も黒人も観客が押し寄せた。 137 00:23:23,802 --> 00:23:30,476 通路にもステージ上にも 客席が作られた。 138 00:23:30,476 --> 00:23:35,381 チケットの売り上げは 過去最高となった。 139 00:24:08,681 --> 00:24:14,820 ビリーは その後も 麻薬をやめることはできなかった。 140 00:24:14,820 --> 00:24:23,329 若いころ90キロあったビリーの体重は 晩年には その半分まで落ち込んでいた。 141 00:25:09,942 --> 00:25:17,049 (拍手) 142 00:25:24,957 --> 00:25:30,763 これは ビリーが亡くなる 4か月前に出演したテレビ番組。 143 00:25:30,763 --> 00:25:35,200 「奇妙な果実」を歌う 唯一の映像である。 144 00:25:35,200 --> 00:25:40,639 貴重な映像をフルに紹介する。 145 00:25:40,639 --> 00:26:19,845 ♬~ 146 00:26:45,170 --> 00:28:02,881 ♬~ 147 00:28:02,881 --> 00:28:08,287 (拍手) 148 00:28:22,334 --> 00:28:27,472 ビリーの死から2年後。 149 00:28:27,472 --> 00:28:29,908 ミネソタからニューヨークへ➡ 150 00:28:29,908 --> 00:28:34,813 ミュージシャンを目指す 一人の若者がやって来た。 151 00:28:45,190 --> 00:28:51,663 ナイトクラブで弾き語りをしながら 曲を作り続ける日々を送っていた。 152 00:28:51,663 --> 00:28:57,069 ディランは幼少期から ビリー・ホリデイの歌を聴いて育った。 153 00:29:03,242 --> 00:29:07,613 ディランも ビリーのような メッセージを込めた歌で➡ 154 00:29:07,613 --> 00:29:12,317 社会を変える力になりたい という夢を描いていた。 155 00:29:40,512 --> 00:29:45,350 ディランを見いだしたのは プロデューサーのジョン・ハモンド。 156 00:29:45,350 --> 00:29:50,555 そう ビリー・ホリデイを 見いだした人物と同じだった。 157 00:29:50,555 --> 00:29:56,061 ハモンドは ディランの才能を見抜き 周囲の反対を押し切って➡ 158 00:29:56,061 --> 00:30:00,065 レコードレーベルとの契約を まとめあげた。 159 00:31:03,195 --> 00:31:07,065 1962年 ディランは➡ 160 00:31:07,065 --> 00:31:12,270 ある事件についての歌を発表する。 161 00:31:12,270 --> 00:31:21,780 ♬~ 162 00:31:21,780 --> 00:31:29,788 1955年 南部ミシシッピ州で起きた 黒人リンチ事件である。 163 00:31:31,456 --> 00:31:35,627 シカゴから 南部にいる 親戚の元を訪れていた➡ 164 00:31:35,627 --> 00:31:38,530 14歳の エメット・ティルは➡ 165 00:31:38,530 --> 00:31:43,201 食料雑貨店の 白人の女性店員に口笛を吹き➡ 166 00:31:43,201 --> 00:31:46,104 生意気な口を利いたという理由で➡ 167 00:31:46,104 --> 00:31:49,508 女性の夫たちに殺された。 168 00:31:52,310 --> 00:31:59,451 数日後 ティルの遺体は シカゴに戻り 葬儀が行われた。 169 00:31:59,451 --> 00:32:04,055 その姿は むごたらしいものだった。 170 00:32:06,992 --> 00:32:13,398 鼻は鈍器で強く殴られ 頭に銃弾を撃ち込まれていた。 171 00:32:13,398 --> 00:32:17,502 遺体を見た人が気を失うほどだった。 172 00:32:19,271 --> 00:32:23,375 母メイミーは 事件を知らしめるため➡ 173 00:32:23,375 --> 00:32:28,780 あえて遺体を4日間 公開した。 174 00:32:51,870 --> 00:32:54,606 裁判が開かれた。 175 00:32:54,606 --> 00:32:56,641 殺人容疑で起訴されたのは➡ 176 00:32:56,641 --> 00:33:01,379 女性店員の夫と兄の二人。 177 00:33:01,379 --> 00:33:04,683 弁護士は ティルが殺害されたのは➡ 178 00:33:04,683 --> 00:33:10,388 白人女性を守るという 正当な理由によるものだと主張した。 179 00:33:12,924 --> 00:33:17,762 陪審員は全員 白人だった。 180 00:33:17,762 --> 00:33:23,168 判決は 無罪だった。 181 00:33:23,168 --> 00:33:26,571 これは 無罪を妻と喜び合う➡ 182 00:33:26,571 --> 00:33:30,976 被告二人の映像である。 183 00:33:33,178 --> 00:33:41,052 ♬~ 184 00:33:41,052 --> 00:34:00,772 ♬~ 185 00:34:00,772 --> 00:34:07,879 ディランの強烈なプロテストソングに 心動かされた 黒人シンガーがいた。 186 00:34:20,625 --> 00:34:23,295 当時 ポップなラブソングで➡ 187 00:34:23,295 --> 00:34:26,698 黒人のみならず 白人のファンも数多くいた➡ 188 00:34:26,698 --> 00:34:28,900 人気シンガー… 189 00:34:47,619 --> 00:34:55,226 1964年 ディランに触発されたサムは ある曲を発表する。 190 00:35:01,466 --> 00:35:06,171 黒人差別との闘いを宣言した プロテストソングだった。 191 00:35:07,839 --> 00:35:14,713 白人のファンを失うリスクもあったが サムは録音に踏み切った。 192 00:35:14,713 --> 00:35:47,012 ♬~ 193 00:36:04,929 --> 00:36:07,365 その年の7月➡ 194 00:36:07,365 --> 00:36:15,040 公共施設や学校などでの 人種隔離を撤廃する公民権法が成立する。 195 00:36:15,040 --> 00:36:20,245 黒人の人々の願いが 一歩前進した。 196 00:36:22,914 --> 00:36:26,951 しかし 公民権法成立の5か月後➡ 197 00:36:26,951 --> 00:36:30,689 サムは ロサンゼルスのモーテルで トラブルを起こし➡ 198 00:36:30,689 --> 00:36:35,593 管理人の黒人女性に射殺された。 199 00:36:40,265 --> 00:36:45,870 5,000人が早すぎる死を悼んだ。 200 00:37:12,797 --> 00:37:19,904 ♬~ 201 00:37:22,941 --> 00:37:25,844 結局 サムは この決意の歌を➡ 202 00:37:25,844 --> 00:37:30,381 ステージで歌うことは ほとんどできなかった。 203 00:37:30,381 --> 00:37:36,921 だが この歌は サムの死後 公民権運動で繰り返し歌われ➡ 204 00:37:36,921 --> 00:37:42,427 差別と闘う人たちの勇気を支え続けた。 205 00:37:46,064 --> 00:37:49,300 それから 44年。 206 00:37:49,300 --> 00:37:54,205 サムの歌った「いつか」が ついに起こった。 207 00:37:59,911 --> 00:38:03,915 2008年 大統領選に立候補した… 208 00:38:06,451 --> 00:38:12,056 掲げたスローガンは「CHANGE」だった。 209 00:38:17,462 --> 00:38:24,068 これは オバマの支持者たちが 選挙キャンペーンで制作した映像。 210 00:38:24,068 --> 00:38:26,671 テーマ音楽として 使われたのは… 211 00:38:52,564 --> 00:38:54,499 そして オバマは➡ 212 00:38:54,499 --> 00:39:00,104 アメリカ初の黒人大統領となった。 213 00:39:00,104 --> 00:39:02,340 勝利演説でオバマは➡ 214 00:39:02,340 --> 00:39:07,946 サム・クックの歌詞を引用しながら こう語った。 215 00:39:34,339 --> 00:39:40,945 望み続けた「CHANGE」は 確かに起こったかのように見えた。 216 00:39:40,945 --> 00:39:42,947 しかし…。 217 00:39:47,552 --> 00:39:51,990 2020年 世界に吹き荒れた パンデミックが➡ 218 00:39:51,990 --> 00:39:59,497 人々が胸の奥底にしまい込んでいた ヘイト・憎しみの心を解き放った。 219 00:39:59,497 --> 00:40:03,101 Black lives matter! (一同)Black lives matter! 220 00:40:03,101 --> 00:40:06,504 白人警官に 黒人のジョージ・フロイドさんが➡ 221 00:40:06,504 --> 00:40:14,112 殺害される事件を機に 人種差別への怒りが燃え上がった。 222 00:40:17,482 --> 00:40:23,988 ♬~ 223 00:40:23,988 --> 00:40:31,095 そして ビリー・ホリデイのあの歌が 再び歌われるようになった。 224 00:40:34,999 --> 00:40:41,105 ブラック・ライブズ・マターのさなか 1本の映画が公開された。 225 00:40:45,343 --> 00:40:51,950 ビリー・ホリデイの壮絶な人生を描く 劇映画である。 226 00:40:59,691 --> 00:41:06,264 人種差別が繰り返されるたびに よみがえる 「奇妙な果実」。 227 00:41:06,264 --> 00:41:17,875 ♬~ 228 00:41:20,778 --> 00:41:24,615 ビリー・ホリデイを演じた アンドラ・デイは➡ 229 00:41:24,615 --> 00:41:28,419 こう語っている。 230 00:41:45,336 --> 00:41:52,443 2022年 一つの法案が可決された。 231 00:41:54,045 --> 00:41:59,517 人種差別によるリンチ行為を 建国以来 初めて犯罪と見なし➡ 232 00:41:59,517 --> 00:42:04,522 罰することを可能にした法律である。 233 00:42:11,996 --> 00:42:15,867 その法律には 1955年に➡ 234 00:42:15,867 --> 00:42:18,803 南部でリンチによって亡くなった少年➡ 235 00:42:18,803 --> 00:42:23,307 エメット・ティルの名が付けられた。 236 00:42:50,101 --> 00:42:54,539 これは 1959年に行われた➡ 237 00:42:54,539 --> 00:42:59,844 ジャズシンガー ビリー・ホリデイの 葬儀の映像である。 238 00:43:01,345 --> 00:43:07,351 黒人だけでなく 白人のファンの姿も見える。 239 00:43:10,788 --> 00:43:16,694 ビリーは生前 ささやかな夢を語っていた。 240 00:44:08,479 --> 00:44:26,631 ♬ For the sun to rot, for the tree to drop 241 00:44:26,631 --> 00:44:38,342 ♬ Here is a strange and bitter crop