1 00:00:01,235 --> 00:00:10,277 ♬~ 2 00:00:10,277 --> 00:00:13,080 (精一)あ 出た。 (少女)時間は? 3 00:00:13,080 --> 00:00:17,284 11時30分。撮るね。 (シャッター音) 4 00:00:17,284 --> 00:00:20,120 ほとんど 直角に反り返っています。 5 00:00:20,120 --> 00:00:23,790 体を揺すりながら 少しずつ抜け出そうと。 6 00:00:23,790 --> 00:00:25,726 (フラッシュの音) あ! 7 00:00:25,726 --> 00:00:31,999 今 光ったよね? あっちの方? 8 00:00:31,999 --> 00:00:33,934 何にもないよ…。 9 00:00:33,934 --> 00:00:37,037 そんなことより観察 続けよう。 うん。 10 00:00:39,439 --> 00:00:41,408 やった! 11 00:00:41,408 --> 00:00:45,812 7年かけて 大空を飛び回れるようになります。 12 00:00:45,812 --> 00:00:50,651 本人も どんなにか感激しているでしょう。 13 00:00:50,651 --> 00:00:53,420 感激なんかしないよ セミだもん。 14 00:00:53,420 --> 00:00:56,123 夢がない人。 (フラッシュの音) 15 00:00:56,123 --> 00:00:59,927 わっ! まただ。 16 00:00:59,927 --> 00:01:03,797 何! 何なの? 確かめてきて。 17 00:01:03,797 --> 00:01:08,101 えっ 分かったよ…。 18 00:01:08,101 --> 00:01:10,704 あっ! 19 00:01:10,704 --> 00:01:13,073 待って! おお。 20 00:01:13,073 --> 00:01:15,475 しがみつかないで 歩きにくい。 21 00:01:18,579 --> 00:01:21,481 (フラッシュの音) キャッ。わっ! 22 00:01:21,481 --> 00:01:23,450 フラッシュだ! 23 00:01:23,450 --> 00:01:26,787 誰だ? つまんない いたずらをするの。 24 00:01:26,787 --> 00:01:29,089 (浅野)邪魔だ。 出ていってくれ。 わっ! 25 00:01:30,657 --> 00:01:34,394 出ていくのは お前の方だ。 ここは おじいちゃんの山なんだぞ。 26 00:01:34,394 --> 00:01:37,631 おじいさんの? 27 00:01:37,631 --> 00:01:40,934 ふ~ん。 喜左衛門さんは元気かい? 28 00:01:40,934 --> 00:01:42,869 おじいちゃんを知ってるの? 29 00:01:42,869 --> 00:01:48,208 まだ生きているなら伝えてくれ。 浅野の孫が帰ってきたってな。 30 00:01:48,208 --> 00:01:51,111 ユメカゲロウの幻を追って…。 31 00:01:51,111 --> 00:01:56,717 帰るぜ。 これだけ踏み荒らされちゃ 見込みないもんな ほら。 32 00:02:00,754 --> 00:02:04,191 ねえ ユメカゲロウって? 33 00:02:04,191 --> 00:02:06,226 知らないよ。 34 00:02:06,226 --> 00:02:14,301 ♬~ 35 00:02:14,301 --> 00:02:18,271 (少女の母)非常識にも程がありま…。➡ 36 00:02:18,271 --> 00:02:22,809 女の子が真夜中に…。 すみません。 誘ったのは俺で…。 37 00:02:22,809 --> 00:02:25,078 いや セミを見たいって私が…。 38 00:02:25,078 --> 00:02:27,881 (ため息) おやすみなさい。 39 00:02:31,852 --> 00:02:33,787 (少女の父)同級生? 40 00:02:33,787 --> 00:02:38,191 そう 深山田精一君。 「虫博士」って呼ばれてて➡ 41 00:02:38,191 --> 00:02:42,629 すっごく詳しくて 標本も甲虫目だけで30種類も…。 42 00:02:42,629 --> 00:02:44,731 いいから寝なさいっ! 43 00:02:46,500 --> 00:02:49,036 は~い…。 44 00:02:49,036 --> 00:02:53,940 どうして あんなに昆虫に夢中なの⁉ 女の子なのに。 45 00:02:53,940 --> 00:02:56,743 (少女の父) こっちに越してきて物珍しいのさ。➡ 46 00:02:56,743 --> 00:03:01,548 都心では ハエかゴキブリくらいしか いなかったし…。(ため息) 47 00:03:09,022 --> 00:03:12,292 早く! こっち。 うん。 48 00:03:12,292 --> 00:03:15,228 パパ ユメカゲロウって知ってる? 49 00:03:15,228 --> 00:03:21,234 ユメカゲロウ? 何かで読んだな。 え~っと…。 50 00:03:22,936 --> 00:03:25,939 そうそう これこれ! ほれ。 51 00:03:28,208 --> 00:03:30,610 (少女の父)「かげろう長者」といって➡ 52 00:03:30,610 --> 00:03:35,382 ある若者がクモの巣にかかった きれいな虫を助けた。➡ 53 00:03:35,382 --> 00:03:40,787 その夜 若者の夢の中に女の人が現れて…➡ 54 00:03:40,787 --> 00:03:44,958 「私は ユメカゲロウでございます」と。➡ 55 00:03:44,958 --> 00:03:50,230 そうして 若者は お告げどおり長者になったという。 56 00:03:50,230 --> 00:03:53,066 何目何科の昆虫なの? 57 00:03:53,066 --> 00:03:58,038 ハハハ。 ユメカゲロウなんているもんか。 空想だよ。 58 00:03:58,038 --> 00:04:00,040 えっ⁉ 59 00:04:03,710 --> 00:04:16,323 (虫の鳴き声) 60 00:04:16,323 --> 00:04:19,493 あ とれた! 61 00:04:19,493 --> 00:04:24,331 ここは網を振るたびに何かとれる。 62 00:04:24,331 --> 00:04:26,700 うん? 63 00:04:26,700 --> 00:04:30,303 うわ~ 何? 気持ちわる! 64 00:04:30,303 --> 00:04:34,975 わっ こっちも! もう…。 65 00:04:34,975 --> 00:04:39,312 なんだ 君か。 えっ…。 66 00:04:39,312 --> 00:04:42,816 せっかくのトラップが台なしだ。 67 00:04:42,816 --> 00:04:46,486 君たちは なんで邪魔ばっかりするんだ? 68 00:04:46,486 --> 00:04:51,291 別に邪魔しようってわけじゃなくて…。 69 00:04:51,291 --> 00:04:54,060 あの… このネバネバは? 70 00:04:54,060 --> 00:04:55,996 だから ユメカゲロウを…。 71 00:04:55,996 --> 00:04:58,064 ユメカゲロウ! やっぱり! 72 00:04:58,064 --> 00:05:05,438 どんな虫? 色は? 大きさは? きっと夢みたいに きれいな虫なんだ…。 73 00:05:05,438 --> 00:05:09,643 へえ~。 こんなに簡単に信じてくれた人は 君が初めてだよ。 74 00:05:09,643 --> 00:05:13,346 あっ 興味ある? ありますとも! 75 00:05:13,346 --> 00:05:18,218 (喜左衛門)何⁉ 浅野に孫がいただと? 76 00:05:18,218 --> 00:05:22,556 うん。 ユメカゲロウの幻を 追いにきたとか何とか…。 77 00:05:22,556 --> 00:05:25,392 孫の代まで そんなことを言っておるのか! 78 00:05:25,392 --> 00:05:31,998 ったく あの一族は取りつかれておる。 79 00:05:34,768 --> 00:05:37,003 はい。 どうも。 80 00:05:37,003 --> 00:05:41,408 もともとは 僕のじいさんが ユメカゲロウに興味があって…。 81 00:05:43,310 --> 00:05:48,815 じいさんは村の小学校の先生で 傍ら 昆虫研究に夢中で➡ 82 00:05:48,815 --> 00:05:52,752 民間の学者としても かなりの業績があったんだ。 83 00:05:52,752 --> 00:05:55,589 あ あったあった。 84 00:05:55,589 --> 00:05:59,025 あ これ 同じ…。 85 00:05:59,025 --> 00:06:03,830 じいさんは 複数の民話に出てくる ユメカゲロウの形や習性など➡ 86 00:06:03,830 --> 00:06:05,899 どれも正確に一致することに気付いて➡ 87 00:06:05,899 --> 00:06:08,335 実在するんじゃないかと考えていた。 88 00:06:08,335 --> 00:06:11,771 もちろん 学者たちは取り合わなかった。 89 00:06:11,771 --> 00:06:15,742 ところが…➡ 90 00:06:15,742 --> 00:06:19,246 じいさんは採取しちゃったんだ。 実物を…。 91 00:06:19,246 --> 00:06:21,781 うお。 あ~ ごめんなさい。 92 00:06:21,781 --> 00:06:25,118 じゃあ 本当にいるんだ ユメカゲロウ。 93 00:06:25,118 --> 00:06:27,153 これが そのスケッチで…。 94 00:06:27,153 --> 00:06:32,859 あ~ 大発見だ。 95 00:06:32,859 --> 00:06:38,465 新聞 雑誌が騒ぎ立てて 偉い先生方まで調査に来ることになった。 96 00:06:38,465 --> 00:06:41,268 当時 村長だった深山田のおじいさんは➡ 97 00:06:41,268 --> 00:06:45,772 記者を大勢呼び集めて 世紀の大公開ときたもんだ。 98 00:06:48,375 --> 00:06:53,179 ところが いざ 記者団の前で➡ 99 00:06:53,179 --> 00:06:57,183 僕のじいさんが箱を開いて見せたら…。 100 00:06:59,619 --> 00:07:02,422 空っぽ? なんで? 101 00:07:02,422 --> 00:07:05,325 (喜左衛門)知るもんか。 102 00:07:05,325 --> 00:07:07,294 ユメカゲロウは消えていた。 103 00:07:07,294 --> 00:07:10,463 煙のように。 そんな…。 104 00:07:10,463 --> 00:07:15,035 最初から疑いの目で見ていた学者たちは インチキと断定して引きあげ➡ 105 00:07:15,035 --> 00:07:19,039 じいさんを やれ ホラふきだ ペテン師だと。 106 00:07:21,174 --> 00:07:25,745 浅野を信じた わしが バカだったんだ。 107 00:07:25,745 --> 00:07:30,150 じいさんは村にもいづらくなって 学校もやめて…➡ 108 00:07:30,150 --> 00:07:32,485 それでも ユメカゲロウを追い続けて➡ 109 00:07:32,485 --> 00:07:37,590 ついに 果たせないまま 亡くなってしまった。 110 00:07:39,259 --> 00:07:43,129 それで あなたが引き継いで…。 111 00:07:43,129 --> 00:07:48,969 一生かかっても やり遂げたいと思ってる。 112 00:07:48,969 --> 00:07:52,706 私に お手伝いできることがあれば なんなりと…。 113 00:07:52,706 --> 00:07:54,641 フフッ。 114 00:07:54,641 --> 00:07:58,011 あんなインチキ野郎と つきあうのはやめろって! 115 00:07:58,011 --> 00:08:00,613 浅野のじいさんは この村を 日本中の笑いものにしたんだぞ! 116 00:08:00,613 --> 00:08:04,017 でも ユメカゲロウは実在した! スケッチもあった。 117 00:08:04,017 --> 00:08:06,019 空想のスケッチなんて誰にでも描ける! 118 00:08:06,019 --> 00:08:09,322 浅野さんは そんな人じゃない! 119 00:08:09,322 --> 00:08:13,026 うん…。 ふん! 120 00:08:13,026 --> 00:08:15,428 あいつのインチキを認めさせてやる。 121 00:08:18,965 --> 00:08:24,170 この辺りの昆虫は集め尽くしたんだ。 ユメカゲロウはいない。 絶対に! 122 00:08:24,170 --> 00:08:26,239 発見されない理由は いろいろ考えられるよ。 123 00:08:26,239 --> 00:08:29,009 例えば 走光性が負だとしたら? 124 00:08:29,009 --> 00:08:32,379 つまり光が嫌いで 暗闇でしか活動しない。 125 00:08:32,379 --> 00:08:35,115 すると 一切 人目に触れないことになる。 126 00:08:35,115 --> 00:08:39,686 で… でも死骸ぐらいは落ちてるはず! 一種の自爆装置は? 127 00:08:39,686 --> 00:08:43,890 死ぬと同時に酵素が働いて 急速に分解されるとか。 128 00:08:43,890 --> 00:08:51,598 いや… 実は もっと大きな秘密が隠されていて…。 129 00:08:51,598 --> 00:08:54,567 想像ばっかりで証拠がないじゃないか! 130 00:08:54,567 --> 00:08:56,970 うん… うん…。 131 00:09:00,807 --> 00:09:04,110 じゃあ これは? 132 00:09:04,110 --> 00:09:07,881 森に設置されたカメラで 暗闇を撮り続けて数千枚。 133 00:09:07,881 --> 00:09:10,350 明らかに昆虫だ。 134 00:09:10,350 --> 00:09:14,053 そんな羽の形 見たことある? 135 00:09:20,126 --> 00:09:23,029 おじいちゃん! おじいちゃん! 136 00:09:23,029 --> 00:09:26,566 ユメカゲロウはいた! 本当にいたんだ! 137 00:09:26,566 --> 00:09:28,501 俺 恥ずかしいよ。 138 00:09:28,501 --> 00:09:30,437 浅野さんに償いをしなくちゃ。 139 00:09:30,437 --> 00:09:36,176 黙れっ! カゲロウ騒ぎは今日かぎりだ。 え? 140 00:09:36,176 --> 00:09:39,846 あの山林には あしたからブルドーザーが入る。 141 00:09:39,846 --> 00:09:42,449 切り開いて住宅地になるんだ。 142 00:09:42,449 --> 00:09:46,653 えっ…。 もう決まったことだ。 143 00:09:49,589 --> 00:09:55,295 (着信の音) 144 00:09:58,264 --> 00:10:03,603 うん…。 うん 分かった。 145 00:10:03,603 --> 00:10:18,885 ♬~ 146 00:10:18,885 --> 00:10:22,422 ごめんな 急に。 ううん。 こういうの大好き! 147 00:10:22,422 --> 00:10:24,357 計画を思いついたんだ。 148 00:10:24,357 --> 00:10:26,960 ほんとは もっともっと 人手が欲しいけど…。 149 00:10:28,728 --> 00:10:31,965 計画って これ? 150 00:10:31,965 --> 00:10:33,900 そう。 ここで煙をたいて➡ 151 00:10:33,900 --> 00:10:37,504 逃げてくる虫を 風下で捕まえようって作戦さ! 152 00:10:37,504 --> 00:10:40,206 こんなに燃やすの? 危険だよ! 153 00:10:40,206 --> 00:10:43,409 ユメカゲロウを捕まえるには これしかないんだ。 154 00:10:43,409 --> 00:10:46,846 でも 危ないよ! 分かってくれ。 償いなんだ。 155 00:10:46,846 --> 00:10:50,149 このままじゃ俺の気が済まないんだよ。 156 00:10:58,124 --> 00:11:00,126 (マッチをつける音) 157 00:11:04,264 --> 00:11:07,167 よし…。 158 00:11:07,167 --> 00:11:09,669 (においをかぐ音) 159 00:11:18,378 --> 00:11:22,582 山が… 燃えている。 160 00:11:24,183 --> 00:11:27,086 (燃える音) 161 00:11:27,086 --> 00:11:30,323 (荒い息遣い)浅野さん! こっちだ! 162 00:11:30,323 --> 00:11:33,192 ユメカゲロウをあぶり出そうとしたら あちこちに火が燃え移って…。 163 00:11:33,192 --> 00:11:35,194 言い訳は後だ。 とにかく逃げよう! 164 00:11:38,031 --> 00:11:41,834 煙で何も見えない。 頭を低くしろ。 165 00:11:45,438 --> 00:11:48,241 大丈夫か! 166 00:11:48,241 --> 00:11:50,843 (木が倒れる音) 167 00:11:52,445 --> 00:11:56,115 意識が薄れてきやがった。 (せき) 168 00:11:56,115 --> 00:11:58,418 一酸化炭素か…。 169 00:12:00,687 --> 00:12:02,889 浅野さん この先も火が…。 170 00:12:04,557 --> 00:12:08,528 じいさん…。 (せき) 171 00:12:08,528 --> 00:12:13,132 こんなことになっちまった… 残念だけど。 172 00:12:13,132 --> 00:12:17,470 ごめんなさい。 僕のせいだ…。 173 00:12:17,470 --> 00:12:26,179 (せき) 174 00:12:26,179 --> 00:12:28,181 おいっ どこへ行く? 175 00:12:32,418 --> 00:12:34,420 追うぞ! 176 00:12:38,725 --> 00:12:40,727 浅野さん こっち! 177 00:12:42,395 --> 00:12:44,397 ここは火が回ってない! 178 00:12:50,536 --> 00:12:52,739 河原だ! 179 00:12:58,945 --> 00:13:01,781 君 大丈夫? 180 00:13:01,781 --> 00:13:03,850 私 夢を見てた。 181 00:13:03,850 --> 00:13:09,622 炎の中に女の人がいて 手招きするの。 182 00:13:09,622 --> 00:13:18,231 髪が長くて 紫の着物を着て とっても きれいな…。 183 00:13:18,231 --> 00:13:25,004 民話のとおりだ… 心を読み 心に語りかける➡ 184 00:13:25,004 --> 00:13:29,709 その神秘な力こそ ユメカゲロウ最大の秘密だ! 185 00:13:33,279 --> 00:13:35,281 あっ⁉ 186 00:13:40,153 --> 00:13:42,855 まさか…。 わあ~。 187 00:13:45,792 --> 00:13:51,297 ユメカゲロウ… なんて きれいなんだ。 188 00:13:56,035 --> 00:13:57,970 捕まえないで。 189 00:13:57,970 --> 00:14:00,873 分かってる。 190 00:14:00,873 --> 00:14:03,976 とったりしないよ。 191 00:14:07,180 --> 00:14:14,387 僕たちは 確かにユメカゲロウを見た。 192 00:14:14,387 --> 00:14:19,092 それだけで じいさんも満足してくれると思う。 193 00:14:19,092 --> 00:14:25,698 ♬~ 194 00:14:30,269 --> 00:14:57,263 ♬~