1 00:00:35,647 --> 00:00:40,284 2013年6月26日。 2 00:00:40,284 --> 00:00:45,790 世界文化遺産に登録された 富士山。 3 00:00:45,790 --> 00:00:49,661 その山頂に 明治28年➡ 4 00:00:49,661 --> 00:00:54,298 個人で費用を捻出して 観測所を造り➡ 5 00:00:54,298 --> 00:00:59,798 命を懸けて 極寒の気象観測に 挑んだ夫婦がいる。 6 00:01:02,173 --> 00:01:07,173 野中 到と その妻 千代子である。 7 00:01:09,781 --> 00:01:14,318 その美しい姿が 芙蓉の花に例えられる富士は➡ 8 00:01:14,318 --> 00:01:20,191 時に 荒々しい自然の苛烈さを むき出しにする。 9 00:01:20,191 --> 00:01:31,335 ♬~ 10 00:01:31,335 --> 00:01:34,772 愛する夫のもとへ。 11 00:01:34,772 --> 00:01:42,647 ♬~ 12 00:01:42,647 --> 00:01:47,285 皆の反対を押し切り 山頂に向かった この妻を➡ 13 00:01:47,285 --> 00:01:50,785 知る人は言う。 14 00:01:52,790 --> 00:01:56,661 彼女こそ 芙蓉の人だと。 15 00:01:56,661 --> 00:02:39,771 ♬~ 16 00:02:39,771 --> 00:02:44,642 (千代子)ねえ 園子。 富士山よ。 17 00:02:44,642 --> 00:02:49,781 お父様が 今 登ってる富士山よ。 18 00:02:49,781 --> 00:02:54,652 ほら お父様 いつも おっしゃってるでしょう。 19 00:02:54,652 --> 00:02:59,290 「天気予報が当たらないのは…」。 20 00:02:59,290 --> 00:03:03,127 (到)高所に 気象観測所がないからです。 21 00:03:03,127 --> 00:03:05,463 あなた方 新聞は➡ 22 00:03:05,463 --> 00:03:08,800 天気予報を はなから 当てにしていないようですが。 23 00:03:08,800 --> 00:03:12,303 (井岡) 「当たるも八卦 当たらぬも八卦」。 24 00:03:12,303 --> 00:03:14,806 げたを飛ばして占う方が まだ当たる。 25 00:03:14,806 --> 00:03:17,308 その記事 読みました。 26 00:03:17,308 --> 00:03:21,179 ですが 私に言わせれば 天気は 高い所から変わる。 27 00:03:21,179 --> 00:03:25,183 その気象が分からずに 天気予報が当たる訳がない。 28 00:03:25,183 --> 00:03:29,821 ご存じ 富士山は 標高3,776m。 29 00:03:29,821 --> 00:03:32,723 その頂に 気象観測所を設置して➡ 30 00:03:32,723 --> 00:03:35,626 そこで 一年中 気象観測を続ければ➡ 31 00:03:35,626 --> 00:03:38,629 天気予報は 必ず当たります。 なるほど。 32 00:03:38,629 --> 00:03:43,768 もし 当たるようになれば 災害も。 そうです。 例えば 台風。 33 00:03:43,768 --> 00:03:46,671 いつ来るのか 事前に分かれば 備えられる。 34 00:03:46,671 --> 00:03:49,640 稲作も 寒い日が続くと分かれば➡ 35 00:03:49,640 --> 00:03:52,777 田の水を深くして 稲穂を冷害から守れる。 36 00:03:52,777 --> 00:03:56,280 しかし 国が いきなり そのような観測所を建てるのは➡ 37 00:03:56,280 --> 00:03:59,784 無理があります。 まずは 民間の誰かが➡ 38 00:03:59,784 --> 00:04:02,687 厳冬期の富士山頂で 気象観測をして➡ 39 00:04:02,687 --> 00:04:05,656 その可能性を 実証してみせない事には。 40 00:04:05,656 --> 00:04:09,794 だが 真冬の富士山に登った人など 聞いた事もない。 41 00:04:09,794 --> 00:04:14,794 実際 先月 確か 5合目で 無念の下山をしたのでは? 42 00:04:16,667 --> 00:04:20,304 痛いところを突かれました。 43 00:04:20,304 --> 00:04:26,811 確かに 前回は 5合目で 鳶口が 折れてしまい 往生しました。 44 00:04:26,811 --> 00:04:31,315 靴の底に打ちつけた釘も曲がり どうにも身動きとれず…。 45 00:04:31,315 --> 00:04:34,218 (勝良) しかたない。 いまだかつて➡ 46 00:04:34,218 --> 00:04:37,755 冬の富士を制した者は いないのだから。 47 00:04:37,755 --> 00:04:41,755 壮絶です 富士は。 48 00:04:43,628 --> 00:04:48,766 上に登れば登るほど 硬い氷で覆われていて➡ 49 00:04:48,766 --> 00:04:51,669 しかも あの強風。 50 00:04:51,669 --> 00:04:54,438 まるで 暗い夜道を歩いていて➡ 51 00:04:54,438 --> 00:04:57,775 突如 何者かに突き飛ばされるような。 52 00:04:57,775 --> 00:05:03,648 (勝良)さすが 日本一の山 難攻不落という訳か。 53 00:05:03,648 --> 00:05:06,784 どうする? 次は。 54 00:05:06,784 --> 00:05:09,287 次は つるはしを 持っていくつもりです。 55 00:05:09,287 --> 00:05:12,189 靴の裏には もっと幅が広く➡ 56 00:05:12,189 --> 00:05:15,159 とがった爪のような釘を 打ちつけます。 57 00:05:15,159 --> 00:05:21,799 ♬~ 58 00:05:21,799 --> 00:05:25,303 野中 到は 慶応3年生まれ。 59 00:05:25,303 --> 00:05:30,808 あの明治維新のただなか 青春時代を過ごした。 60 00:05:30,808 --> 00:05:37,808 同い年には 正岡子規 夏目漱石 尾崎紅葉などがいる。 61 00:05:41,752 --> 00:05:46,624 お父様 今 どの辺かしら? 62 00:05:46,624 --> 00:05:51,624 でも もし 何かあったら 心配ね 園子。 63 00:06:07,778 --> 00:06:21,478 (風の音) 64 00:06:27,798 --> 00:06:29,798 ご苦労さまです。 65 00:06:58,763 --> 00:07:01,763 ≪ただいま帰りました。 66 00:07:10,775 --> 00:07:13,677 すいません 勝手申して 外出致しまして。 67 00:07:13,677 --> 00:07:16,647 (とみ子) ねえ 千代子 この間のしょうゆ。 68 00:07:16,647 --> 00:07:19,784 しょうゆ? お隣の奥様に貸した➡ 69 00:07:19,784 --> 00:07:23,654 あれ どうなりました? すぐに返すと言ってましたけど。 70 00:07:23,654 --> 00:07:27,658 さっき 出かけに会いましたけど 今のところ 何も。 71 00:07:27,658 --> 00:07:30,795 ちゃんと「しょうゆ」って顔 しましたか? はい? 72 00:07:30,795 --> 00:07:34,231 ほら 口で あれこれ言うのは はばかられるけど➡ 73 00:07:34,231 --> 00:07:36,901 さりげなく 顔で「しょうゆ」って。 74 00:07:36,901 --> 00:07:39,737 顔で「しょうゆ」…。 75 00:07:39,737 --> 00:07:44,608 いえ いいの 何でもない。 どうも落ち着かなくて。 76 00:07:44,608 --> 00:07:49,747 いいお天気でございました。 きっと 到さんは 順調に登山を。 77 00:07:49,747 --> 00:07:54,618 でも 山は登るより 下りる方が難しいからね。 78 00:07:54,618 --> 00:07:59,757 もう雪も降っているみたいだし 氷で滑らないといいけど。 79 00:07:59,757 --> 00:08:04,628 それはそうと そろそろ…。 80 00:08:04,628 --> 00:08:06,628 はい。 81 00:08:09,767 --> 00:08:15,639 到や清の時は 私も よく出たのですよ。 82 00:08:15,639 --> 00:08:20,778 ですが さすがに こうも年の離れた子となると…。 83 00:08:20,778 --> 00:08:25,616 琴子 よかったね。 お母ちゃまのお乳➡ 84 00:08:25,616 --> 00:08:29,816 ちょうど切らした時に たまたま あって。 85 00:08:31,722 --> 00:08:34,625 ごめんね。 ちょっと待っててね。 86 00:08:34,625 --> 00:08:41,732 園子は 大事な初孫だけど 琴子は おばあちゃまの娘なの。 87 00:08:41,732 --> 00:08:44,635 琴子は あなたの叔母さん。 いい? 88 00:08:44,635 --> 00:08:47,605 叔母さん。 89 00:08:47,605 --> 00:08:49,607 姪。 90 00:08:49,607 --> 00:08:54,245 だから お乳も 年功序列。 91 00:08:54,245 --> 00:08:57,748 さあ おいで。 おばあちゃまが遊んであげよう。 92 00:08:57,748 --> 00:09:29,748 ♬~ 93 00:09:36,587 --> 00:09:40,724 千代子 風呂を沸かすのかね? はい。 94 00:09:40,724 --> 00:09:43,627 ゆうべ 入ったじゃないか。 95 00:09:43,627 --> 00:09:46,627 それは そうなのですが…。 96 00:09:48,599 --> 00:09:52,599 無事に戻ってくれるといいがね。 97 00:09:59,743 --> 00:10:05,743 (風の音) 98 00:10:20,764 --> 00:10:22,764 あっ あっ…。 99 00:10:29,773 --> 00:10:36,647 はあ はあ はあ…。 100 00:10:36,647 --> 00:10:46,790 ♬~ 101 00:10:46,790 --> 00:10:49,693 食べないのか? 千代子。 102 00:10:49,693 --> 00:10:55,799 何だか この辺りが…。 駄目だな そんな事では。 103 00:10:55,799 --> 00:10:58,799 とみ子をご覧。 104 00:11:00,671 --> 00:11:04,808 千代子 食べなさい。 心配なのは 分かりますけれど➡ 105 00:11:04,808 --> 00:11:07,711 乳飲み子がいるんですから。 106 00:11:07,711 --> 00:11:13,817 到なら 大丈夫だ。 今度は きっと成功する。 107 00:11:13,817 --> 00:11:16,720 (清)えらい変わりようですね。➡ 108 00:11:16,720 --> 00:11:19,690 最初 兄さんが 観測所の話を出した時は➡ 109 00:11:19,690 --> 00:11:22,826 あんなに渋い顔をしてたのに。 (とみ子)だって 清➡ 110 00:11:22,826 --> 00:11:26,697 到は 東京大学の予備門を 中退してしまったのですよ。 111 00:11:26,697 --> 00:11:29,700 あれは どこの山だったか…。 112 00:11:29,700 --> 00:11:33,771 (清)「頂から雲を見た。 後に 雨になった。➡ 113 00:11:33,771 --> 00:11:37,641 山から見ると 天気は当たる。 俺は 観測所を造る」。 114 00:11:37,641 --> 00:11:41,645 (とみ子)そうやって さっさと 学校をやめてしまうんですから。 115 00:11:41,645 --> 00:11:45,282 「学費は 観測所の建設資金に 充てたい」なんて 勝手言って➡ 116 00:11:45,282 --> 00:11:47,318 そりゃ 怒りますよ。 117 00:11:47,318 --> 00:11:51,789 しかし あいつのすごいところは 有言実行という事だ。➡ 118 00:11:51,789 --> 00:11:57,294 論文を発表し 方々 説得して回り ついには➡ 119 00:11:57,294 --> 00:12:01,799 中央気象台の和田技師までもが 賛同して下さった。 120 00:12:01,799 --> 00:12:04,799 (和田)すばらしい計画です。 121 00:12:06,670 --> 00:12:08,672 2つです。➡ 122 00:12:08,672 --> 00:12:12,810 世界において 富士山より高い所に 観測所があるのは➡ 123 00:12:12,810 --> 00:12:17,681 南米のエル・ミスチー山と フランスのモンブラン この2つだけです。 124 00:12:17,681 --> 00:12:21,819 しかも 夏の間しか 観測をしていない。 125 00:12:21,819 --> 00:12:26,690 では もし 富士で冬季観測に成功したら…。 126 00:12:26,690 --> 00:12:29,326 実用面の功績も さる事ながら➡ 127 00:12:29,326 --> 00:12:31,762 それこそ 世界記録を作る事となり➡ 128 00:12:31,762 --> 00:12:34,665 間違いなく 世紀の快挙となるでしょう。 129 00:12:34,665 --> 00:12:39,636 ただ 残念ながら 現状 まだ 我が中央気象台が➡ 130 00:12:39,636 --> 00:12:42,773 表立って 支援できるとは言い切れない。 131 00:12:42,773 --> 00:12:46,643 だが 私自身 大いに賛成しています。 132 00:12:46,643 --> 00:12:51,643 まさに 今の日本には こういう挑戦が必要なのです。 133 00:12:53,784 --> 00:12:57,287 (勝良) 明日 もし 無事 到が帰ったら➡ 134 00:12:57,287 --> 00:13:00,791 「冬季富士山登頂成功 日本人初の快挙」と➡ 135 00:13:00,791 --> 00:13:04,661 新聞に書き立てられるだろう。 136 00:13:04,661 --> 00:13:09,800 観測所への支援の声も 更に高まるに違いない。 137 00:13:09,800 --> 00:13:13,670 もしかしたら 今日 帰ってくるかもしれませんよ。 138 00:13:13,670 --> 00:13:15,672 兄さんは もともと➡ 139 00:13:15,672 --> 00:13:18,809 不可能を可能にしようと思って やっている訳ですから➡ 140 00:13:18,809 --> 00:13:21,311 日帰り登山を やってのけるかもしれません。 141 00:13:21,311 --> 00:13:24,815 その辺に お使いに行ってる訳では ないんですよ。 142 00:13:24,815 --> 00:13:27,718 もし 山頂で日が暮れてしまったら➡ 143 00:13:27,718 --> 00:13:30,320 到さんは どうするのでしょうか? 144 00:13:30,320 --> 00:13:34,191 な~に その時は その時ですよ。 なんとかなりますよ。 145 00:13:34,191 --> 00:13:38,691 お代わり。 (とみ子)お気楽ね あなたは。 146 00:13:56,280 --> 00:14:00,280 そうよね きっと大丈夫よね。 147 00:14:15,666 --> 00:14:20,666 あの人は 昔から 足が丈夫だったもの。 148 00:14:27,811 --> 00:14:30,714 (閑哉)おお 来よったか。➡ 149 00:14:30,714 --> 00:14:33,617 しばらくぶりじゃろう 2人とも。➡ 150 00:14:33,617 --> 00:14:38,255 いとこの千代子たい。 こんにちは。 151 00:14:38,255 --> 00:14:40,757 こんにちは。 152 00:14:40,757 --> 00:14:43,427 (糸子) まあまあ 大きゅうなって。➡ 153 00:14:43,427 --> 00:14:46,330 到さんが いらしてると聞いて ご挨拶に。 154 00:14:46,330 --> 00:14:51,768 千代子。 とみ子叔母さんところの 到さんたい。 覚えとるね? 155 00:14:51,768 --> 00:14:55,639 勝良が 仕事で留守の間 うちで預かる事になったけん。 156 00:14:55,639 --> 00:14:59,643 よか機会やけ いろいろ教えよかち思とるとよ。 157 00:14:59,643 --> 00:15:01,778 そげんですか。 158 00:15:01,778 --> 00:15:07,651 到さんは 判事の息子だけれど 武士の孫でもあるとですよ。 159 00:15:07,651 --> 00:15:10,287 その心は 受け継がんとね。➡ 160 00:15:10,287 --> 00:15:14,791 伯母さんちは すぐ そこやけん いつでん遊びに来んしゃいね。 161 00:15:14,791 --> 00:15:16,791 はい。 162 00:15:19,663 --> 00:15:24,801 なあ あの山の名前ば 知っとるか? 163 00:15:24,801 --> 00:15:27,704 油山っちゅう山たい。 164 00:15:27,704 --> 00:15:31,608 その向こうに もっと高か山がある。 165 00:15:31,608 --> 00:15:35,913 背振山っちゅうたい。 到さん 登った事あるとね? 166 00:15:35,913 --> 00:15:40,751 なか。 ばってん 近くで見た事はある。 167 00:15:40,751 --> 00:15:45,622 驚くほど大きく 高か山たい。 見ただけね? 168 00:15:45,622 --> 00:15:48,625 見ただけたい。 ばってん➡ 169 00:15:48,625 --> 00:15:52,262 登ろうと思えば 今からだって 登ってくる事はできるたい。 170 00:15:52,262 --> 00:15:55,766 でも 遠くまで行ったら 日が暮れるけん。 171 00:15:55,766 --> 00:15:59,636 日が暮れたって 登ろうと思えば登れるたい! 172 00:15:59,636 --> 00:16:06,777 ♬~ 173 00:16:06,777 --> 00:16:08,712 (戸をたたく音) 174 00:16:08,712 --> 00:16:14,651 ♬~ 175 00:16:14,651 --> 00:16:18,789 奥様。 野中の大旦那様が いらしとるんですが。 176 00:16:18,789 --> 00:16:20,724 ≪(糸子)あら。 177 00:16:20,724 --> 00:16:27,798 ♬~ 178 00:16:27,798 --> 00:16:31,301 まあ まあ まあ…。 いらっしゃいませ。 179 00:16:31,301 --> 00:16:35,739 夜分に すまんのう。 到 来とらんか? 180 00:16:35,739 --> 00:16:38,642 来とりませんけど どげんしました? 181 00:16:38,642 --> 00:16:43,614 姿が見えんとよ。 夕方ごろ 1人で 山の方へ向こうとるところを➡ 182 00:16:43,614 --> 00:16:46,750 見たっちゅう者がおっての。 183 00:16:46,750 --> 00:17:09,750 ♬~ 184 00:17:16,747 --> 00:17:19,650 到さ~ん! 185 00:17:19,650 --> 00:17:21,650 到さん! 186 00:17:38,735 --> 00:17:42,735 背振山の頂上で拾うた。 187 00:17:50,747 --> 00:17:54,618 ♬~ 188 00:17:54,618 --> 00:17:57,621 (閑哉)こら 到! 189 00:17:57,621 --> 00:18:02,759 一体 どこ行っとっとか!? あちこち迷惑ばかけて➡ 190 00:18:02,759 --> 00:18:07,631 なんと無鉄砲な…。 山へ行ったとか? 191 00:18:07,631 --> 00:18:11,768 なして 1人で山へなんか…。 (泣き声) 192 00:18:11,768 --> 00:18:16,640 ん? 千代子 なして お前が泣いとるとか? 193 00:18:16,640 --> 00:18:42,733 ♬~ 194 00:18:42,733 --> 00:18:45,635 ≪(戸が開く音) 195 00:18:45,635 --> 00:19:10,761 ♬~ 196 00:19:10,761 --> 00:19:13,663 お帰りなさいませ。 197 00:19:13,663 --> 00:19:17,634 何だ 起きてたのか。 198 00:19:17,634 --> 00:19:50,734 ♬~ 199 00:19:50,734 --> 00:19:53,637 頂上で 石の一つも持ち帰りたかったが➡ 200 00:19:53,637 --> 00:19:57,240 雪が凍っていてね。 201 00:19:57,240 --> 00:20:05,749 ♬~ 202 00:20:05,749 --> 00:20:07,684 どうでした? 203 00:20:07,684 --> 00:20:12,622 ♬~ 204 00:20:12,622 --> 00:20:15,759 まあまあだね。 205 00:20:15,759 --> 00:20:32,759 ♬~ 206 00:20:45,755 --> 00:20:50,660 「提督 丁汝昌 自殺」。 事実上の降伏です。 207 00:20:50,660 --> 00:20:53,797 (勝良)おお ついに…。 208 00:20:53,797 --> 00:20:55,732 勝つぞ この戦争。 209 00:20:55,732 --> 00:20:59,732 日本が あの大国 清に…。 210 00:21:05,809 --> 00:21:08,712 (とみ子)どうして あんなに喜んでいるんでしょう? 211 00:21:08,712 --> 00:21:12,482 肝心の到の記事が 見当たらないっていうのに。 212 00:21:12,482 --> 00:21:15,318 せっかく 冬の富士登頂➡ 213 00:21:15,318 --> 00:21:19,823 世紀の大快挙を 成し遂げたっていうのにね。 214 00:21:19,823 --> 00:21:24,823 でも これで やっと 戦争が終わるんですね。 215 00:21:34,771 --> 00:21:38,642 野中さん 郵便です。 ご苦労さまです。 216 00:21:38,642 --> 00:21:52,642 ♬~ 217 00:22:00,797 --> 00:22:04,668 福岡の父から お手紙が。 あら。 218 00:22:04,668 --> 00:22:10,473 家が売れたのかもしれないね。 家? 野中の? 219 00:22:10,473 --> 00:22:14,311 お父様が あなたのおうちに お頼みになったの。 220 00:22:14,311 --> 00:22:18,815 生まれ育った家とはいえ もう 古いですしね。 221 00:22:18,815 --> 00:22:22,686 あの家が 富士山の頂上に そっくり移ったと思えば➡ 222 00:22:22,686 --> 00:22:27,824 悔やむ事もないでしょう。 では それが 観測所の資金に? 223 00:22:27,824 --> 00:22:31,824 そうですよ。 もう だいぶ前から 皆さん 動いてらしたの。 224 00:22:33,630 --> 00:22:38,768 到の観測所の話は あなたが来る ずっと前から➡ 225 00:22:38,768 --> 00:22:43,273 始まっていた事なんですよ。 観測所の資金をためる。 226 00:22:43,273 --> 00:22:46,776 そう決めてから うちは ずっと質素倹約。 227 00:22:46,776 --> 00:22:51,648 女中や書生にも 皆 辞めてもらって。 228 00:22:51,648 --> 00:22:56,786 そのころから 到といえば まるで 富士山につかれたように➡ 229 00:22:56,786 --> 00:23:01,658 1年に 2度も3度も 登るんですよ。 2度も3度も…。 230 00:23:01,658 --> 00:23:05,295 では 到さんは いよいよ 今年の夏 観測所を建てて➡ 231 00:23:05,295 --> 00:23:07,797 そこに籠もる おつもりなのでしょうか? 232 00:23:07,797 --> 00:23:11,668 そうでしょうね。 一度決めたら 聞かない子ですからね。 233 00:23:11,668 --> 00:23:14,304 でも お母様。 登る事と➡ 234 00:23:14,304 --> 00:23:18,808 頂上にとどまって観測する事とは 全然違う事のように思います。 235 00:23:18,808 --> 00:23:21,711 特に 冬となると 本当に大変な事と思います。 236 00:23:21,711 --> 00:23:24,681 それはそうですよ。 だからこそ➡ 237 00:23:24,681 --> 00:23:27,681 冬の山を見に行ったんですよ 到は。 238 00:23:29,819 --> 00:23:33,690 千代子? 239 00:23:33,690 --> 00:23:38,628 私も 一緒に行ったら ご迷惑でしょうか? 240 00:23:38,628 --> 00:23:41,765 え? 241 00:23:41,765 --> 00:23:47,637 もし… もしも 許して頂けたら 一緒に行って お手伝いしたいと。 242 00:23:47,637 --> 00:23:50,774 あなたが 富士山に? 243 00:23:50,774 --> 00:23:53,676 こんなふうに ただ待って➡ 244 00:23:53,676 --> 00:23:56,279 冬の間中 ずっと気をもんでるよりも➡ 245 00:23:56,279 --> 00:23:58,782 少しでも妻として 到さんのお力にと。 246 00:23:58,782 --> 00:24:01,684 到に話しましたか? あ いえ…。 247 00:24:01,684 --> 00:24:07,791 まずは お母様にお伺いしてからと 思ってましたから。 248 00:24:07,791 --> 00:24:10,693 そうですね。 249 00:24:10,693 --> 00:24:15,665 あなたは 女ですから。 250 00:24:15,665 --> 00:24:22,806 男の到でさえ難儀する山に 登る事は 難しいでしょうね。 251 00:24:22,806 --> 00:24:26,676 ましてや まだ 誰も 冬を越した事のない富士山に➡ 252 00:24:26,676 --> 00:24:32,615 そこに 女の身で籠もるなど とてもできる事じゃありませんよ。 253 00:24:32,615 --> 00:24:35,752 足手まといになるでしょうか? 254 00:24:35,752 --> 00:24:37,687 私が言いたいのはね➡ 255 00:24:37,687 --> 00:24:41,624 まだ そういう時期に なっていないという事ですよ。➡ 256 00:24:41,624 --> 00:24:46,763 今 到は 観測所を建てる事に 一生懸命でしょ? 257 00:24:46,763 --> 00:24:50,633 観測所を建てても 中央気象台が認めなければ➡ 258 00:24:50,633 --> 00:24:52,635 この計画自体が ご破算。 259 00:24:52,635 --> 00:24:55,772 観測所だって 一夏で建てられるか分からない。 260 00:24:55,772 --> 00:24:59,442 まずは そういった問題を 解決しなければならないのに➡ 261 00:24:59,442 --> 00:25:02,345 いきなり そんなとっぴな事を 言いだすなんて➡ 262 00:25:02,345 --> 00:25:05,315 考えが足りませんよ。 263 00:25:05,315 --> 00:25:07,317 申し訳ございません。 264 00:25:07,317 --> 00:25:12,789 女は 家を守るもの。 夫の帰りを待つものですよ。 265 00:25:12,789 --> 00:25:14,789 はい。 266 00:25:17,660 --> 00:25:22,799 (とみ子)女はね 家を守るもの。 耐えるもの。 従うもの。 267 00:25:22,799 --> 00:25:27,303 特に 姑の言う事には。 売れたか あの家が。 268 00:25:27,303 --> 00:25:30,206 それが 女の道というものですよ。 269 00:25:30,206 --> 00:25:35,745 なのに 近頃の嫁ときたら 急に たわけた事を…。 270 00:25:35,745 --> 00:25:38,648 たわけ? 千代子が言ったんですよ。 271 00:25:38,648 --> 00:25:42,619 千代子が お前を「たわけ」と? 違いますよ! 272 00:25:42,619 --> 00:25:45,619 全くもう 何も聞いてやしないんですから。 273 00:25:51,761 --> 00:25:55,632 (和田)野中君 朗報です。 気象観測装置一式を➡ 274 00:25:55,632 --> 00:25:59,636 中央気象台から 貸与する事になりました。 275 00:25:59,636 --> 00:26:02,939 ついては 正式に 気象観測を委託するという➡ 276 00:26:02,939 --> 00:26:05,775 公文書を発行するよう 働きかけます。 277 00:26:05,775 --> 00:26:08,678 我々は皆 日本男児としての➡ 278 00:26:08,678 --> 00:26:11,648 あなたの心意気に ほれ込んでいます。 279 00:26:11,648 --> 00:26:15,648 野中観測所 国を挙げて応援します。 280 00:26:17,787 --> 00:26:19,722 頑張って下さい。 281 00:26:19,722 --> 00:26:24,661 ♬~ 282 00:26:24,661 --> 00:26:27,797 ありがとうございます。 283 00:26:27,797 --> 00:28:24,280 ♬~ 284 00:28:24,280 --> 00:28:26,783 與平治さん。 285 00:28:26,783 --> 00:28:32,783 ♬~ 286 00:28:34,590 --> 00:28:37,727 いよいよです。 287 00:28:37,727 --> 00:28:41,597 いよいよ始まります。 ようやく 時が満ちました。 288 00:28:41,597 --> 00:28:44,600 與平治さんにも お礼を言わないと。 289 00:28:44,600 --> 00:28:47,737 山に登る度に こちらでお世話になって➡ 290 00:28:47,737 --> 00:28:52,608 本当に よくしてもらって。 (與平治)いや わしら そんな…。 291 00:28:52,608 --> 00:28:55,611 あ~ ご苦労さんだね。 292 00:28:55,611 --> 00:28:58,748 すいません。 お気遣いなく。 293 00:28:58,748 --> 00:29:01,651 いざ 観測所を建てる時は➡ 294 00:29:01,651 --> 00:29:05,621 こちらの宿を 拠点にするつもりです。 295 00:29:05,621 --> 00:29:12,621 だけんど 人が集まるきゃどうか。 え? 296 00:29:14,764 --> 00:29:19,635 村の者は みんな 知ってら。 山ん工事は つりゃあ。 297 00:29:19,635 --> 00:29:25,274 てっぺんとなりゃ ただ 寒いだけじゃにゃあ。 298 00:29:25,274 --> 00:29:31,714 体が えりゃあ重うなって ひでえ頭痛に 吐き気だ。 299 00:29:31,714 --> 00:29:38,588 高山病ですね。 幸い 私は それほど感じませんが。 300 00:29:38,588 --> 00:29:44,727 そりゃあ まだ 上にとどまって 長く作業してにゃあからだよ。 301 00:29:44,727 --> 00:29:49,227 先生のお体だって 心配ずら。 302 00:29:51,234 --> 00:29:56,734 大工や石工を どうするきゃだな。 303 00:29:58,741 --> 00:30:02,741 まあ どうにきゃあ考あずら。 304 00:30:05,615 --> 00:30:08,751 (清)これが 設計図。 305 00:30:08,751 --> 00:30:12,255 まずは 浅間神社の宮司さんに 見せるそうよ。 306 00:30:12,255 --> 00:30:15,255 建設の許可を頂くために。 307 00:30:22,765 --> 00:30:26,765 何だか どんどん小さくなってますね。 308 00:30:28,638 --> 00:30:32,775 理想と現実の 相違ってやつですかね。 309 00:30:32,775 --> 00:30:47,323 ♬~ 310 00:30:47,323 --> 00:30:49,792 号外 号外!➡ 311 00:30:49,792 --> 00:30:53,663 ロシア ドイツ フランスが 日本に 筋違いな要求を突きつけた。➡ 312 00:30:53,663 --> 00:30:56,299 号外 号外! 受け取っておくれ!➡ 313 00:30:56,299 --> 00:30:59,799 お~い 号外だよ 号外! 314 00:31:01,471 --> 00:31:04,307 こんなバカな話がありますか! 315 00:31:04,307 --> 00:31:07,810 なぜ あれほどまでに血を流して 手に入れた遼東半島を➡ 316 00:31:07,810 --> 00:31:13,810 返還せねばならぬのですか!? 政府も政府だ。 なんと弱腰な! 317 00:31:16,819 --> 00:31:20,690 今更 怒ったところで どうにもなりませんよ。 318 00:31:20,690 --> 00:31:24,694 問題は 今後です。 今後 どういった形で➡ 319 00:31:24,694 --> 00:31:27,830 こういった干渉を はねのけていくか。 320 00:31:27,830 --> 00:31:33,636 武力ではなく 総合的国力をいかに 上げていくかという事でしょう。 321 00:31:33,636 --> 00:31:38,774 ご維新で国が開く前は こんな気持ちにはならなかった。 322 00:31:38,774 --> 00:31:44,647 外を見るという事は 内をも見るという事なのだな。 323 00:31:44,647 --> 00:31:49,785 自分にしかできない お国のための仕事。 324 00:31:49,785 --> 00:31:56,785 それを成し遂げてこそ 男の本懐です。 325 00:31:58,794 --> 00:32:00,730 三国干渉? 326 00:32:00,730 --> 00:32:05,301 そう。 ロシア ドイツ フランスが「ちょっと待て。➡ 327 00:32:05,301 --> 00:32:09,171 占拠した遼東半島を 清に返せ」と。 328 00:32:09,171 --> 00:32:13,175 なぜです? 日本は 戦争に勝ったのですよね? 329 00:32:13,175 --> 00:32:18,814 恐らく ほかの大国が 面目を潰されたという事でしょう。 330 00:32:18,814 --> 00:32:23,686 殿方にとって 面目は 命より大事な事なんですよ。 331 00:32:23,686 --> 00:32:30,826 それで 到さんたち あんなに 怒ってらっしゃるんですね。 332 00:32:30,826 --> 00:33:17,807 ♬~ 333 00:33:17,807 --> 00:33:20,710 木造平屋建てだ。 334 00:33:20,710 --> 00:33:26,816 機械室 薪炭室 居室。 それぞれ 2坪ずつだ。 335 00:33:26,816 --> 00:33:30,686 2坪? 4畳ですか? そうだ。 336 00:33:30,686 --> 00:33:33,623 機械室には 気象観測機器を置き➡ 337 00:33:33,623 --> 00:33:37,760 百葉箱の中の温度計を 室内から読み取る。 338 00:33:37,760 --> 00:33:42,632 薪炭室には 下から上まで 薪や炭をギュウギュウに詰め込む。 339 00:33:42,632 --> 00:33:47,770 そうしたら 冬中は暖かい。 暖かい? 真冬の富士が? 340 00:33:47,770 --> 00:33:50,673 壁や床にも いろいろと工夫を凝らしたからな。 341 00:33:50,673 --> 00:33:56,779 しかも 外は 窓や玄関を除いて 全て溶岩で くるみ込んでしまう。 342 00:33:56,779 --> 00:33:59,682 中は 暗いでしょうね。 343 00:33:59,682 --> 00:34:02,652 穴蔵の中にいるような 感じだろうな。 344 00:34:02,652 --> 00:34:05,287 それに やっぱり狭そう。 345 00:34:05,287 --> 00:34:08,791 できるだけ頑丈に 小さく建てたい。 346 00:34:08,791 --> 00:34:12,662 あら お手洗いは? 造る余地はない。 347 00:34:12,662 --> 00:34:15,665 用は おまるで足すつもりだ。 348 00:34:15,665 --> 00:34:18,801 その始末は? もちろん 自分でするさ。 349 00:34:18,801 --> 00:34:22,304 富士山頂で 下界のような生活を 求めても無理だよ。 350 00:34:22,304 --> 00:34:26,175 大丈夫。 建築の専門家にも ちゃんと話を聞いた。 351 00:34:26,175 --> 00:34:28,811 けれど その専門家の方も➡ 352 00:34:28,811 --> 00:34:33,811 あなたより 富士山の事を よく ご存じないんじゃないですか? 353 00:34:39,755 --> 00:34:44,927 それにしても 大変ですね 観測所を造るというのは。 354 00:34:44,927 --> 00:34:48,764 大変だったさ。 355 00:34:48,764 --> 00:34:52,268 今までに 何度も登り 地形を見て➡ 356 00:34:52,268 --> 00:34:56,772 考えに考えた末に 出来上がったのが これだよ。 357 00:34:56,772 --> 00:35:12,788 ♬~ 358 00:35:12,788 --> 00:35:15,691 (勝良)そうか。 では また 御殿場に行くのだな。 359 00:35:15,691 --> 00:35:21,297 はい 近々。 来月にでも 滝河原の 佐藤與平治の宿を借りて➡ 360 00:35:21,297 --> 00:35:24,200 早速 大工仕事を始めようと思います。 361 00:35:24,200 --> 00:35:29,805 同時に 頂上では 人夫を雇って 地ならしをしなければなりません。 362 00:35:29,805 --> 00:35:34,643 夏になると 登ったり下ったり 大変な事でしょう。 363 00:35:34,643 --> 00:35:39,615 そんなにお忙しいようでしたら➡ 364 00:35:39,615 --> 00:35:45,755 私も 御殿場まで参ります。 きっと 何かのお役に立つでしょう。 365 00:35:45,755 --> 00:35:49,625 (勝良)おお そうだな。 人の出入りも多いし➡ 366 00:35:49,625 --> 00:35:52,628 金銭の出し入れの仕事も あるかもしれない。 367 00:35:52,628 --> 00:35:56,766 それは 名案かな。 是非 そうさせて下さいませ。 368 00:35:56,766 --> 00:36:00,636 炊事にお洗濯 何もかも お宿に頼む訳にはいきませんし➡ 369 00:36:00,636 --> 00:36:04,273 来てくれてよかったと 思われるように働きますから。 370 00:36:04,273 --> 00:36:06,776 (勝良)連れていってやれ 到。 371 00:36:06,776 --> 00:36:12,648 でも 園子は どうするのですか? 園子は 私が背負っていきます。 372 00:36:12,648 --> 00:36:16,786 家の事は 誰がやるんです? (清)ああ 僕が手伝いますよ。 373 00:36:16,786 --> 00:36:18,721 ちょうど 大学も休みですから。 374 00:36:18,721 --> 00:36:21,657 でも それじゃ この子が…。 375 00:36:21,657 --> 00:36:25,795 家を留守にする分 一生懸命働きます。 376 00:36:25,795 --> 00:36:31,600 ご不自由おかけしますが どうぞ よろしくお願い致します。 377 00:36:31,600 --> 00:36:53,600 ♬~ 378 00:36:56,759 --> 00:36:59,759 お着替え 置いておきます。 379 00:37:15,778 --> 00:37:18,278 ≪さっきの話だが。 380 00:37:20,282 --> 00:37:23,786 ≪御殿場には来るな。➡ 381 00:37:23,786 --> 00:37:26,786 お前の助けは いらない。 382 00:37:30,659 --> 00:37:33,159 ≪聞いてるか? 383 00:37:35,231 --> 00:37:37,731 どうしてです? 384 00:37:39,735 --> 00:37:42,238 ≪やはり 園子まで連れてくるとなると➡ 385 00:37:42,238 --> 00:37:45,140 かえって 向こうでの生活が 面倒になりそうだ。➡ 386 00:37:45,140 --> 00:37:49,745 第一 仕事場に 女房子どもを連れていく事自体➡ 387 00:37:49,745 --> 00:37:52,745 気乗りがしない。 388 00:37:54,617 --> 00:38:00,756 ≪それに 父上 母上には➡ 389 00:38:00,756 --> 00:38:03,659 もう十分 迷惑かけてる。 390 00:38:03,659 --> 00:38:07,630 これ以上 波風を立てたくない。 391 00:38:07,630 --> 00:38:11,630 家を守ってほしい。 392 00:38:14,770 --> 00:38:18,270 ≪そんなに お邪魔ですか? 393 00:38:22,645 --> 00:38:26,282 私じゃ お役に立てませんか? 394 00:38:26,282 --> 00:38:29,785 あなたにとって 一世一代の大仕事。 395 00:38:29,785 --> 00:38:34,623 なのに 私は 何一つ手伝えないのですか? 396 00:38:34,623 --> 00:38:39,623 ≪邪魔だ。 はっきり言って。 397 00:38:51,073 --> 00:38:56,745 あの人が あんなにわがままだとは 思いませんでしたよ。 398 00:38:56,745 --> 00:39:00,616 あなたが あんな許可をするからですよ。 399 00:39:00,616 --> 00:39:05,254 いいだろう 別に 到の手伝いぐらい。 400 00:39:05,254 --> 00:39:08,157 あなたは いいとしても➡ 401 00:39:08,157 --> 00:39:11,760 普通 千代子の方から 遠慮するものですよ。 402 00:39:11,760 --> 00:39:15,631 お前は 千代子に厳しいな。 自分の姪だというのに。 403 00:39:15,631 --> 00:39:20,269 だからこそですよ。 「身内だから甘やかす」。 404 00:39:20,269 --> 00:39:25,140 そう言われぬように きちんと 教育する。 そう決めてるんです。 405 00:39:25,140 --> 00:39:28,978 嫁というのはね 姑あっての嫁なんです。 406 00:39:28,978 --> 00:39:35,217 箸一本買うにしても 姑の意向を 伺い 従ったものです 昔なら。 407 00:39:35,217 --> 00:39:38,721 しかし もう 御殿場行きは 決まっているのだから。 408 00:39:38,721 --> 00:39:42,591 あなたが承知したとしても 私は まだ承知していませんよ。 409 00:39:42,591 --> 00:39:48,731 第一 千代子に行かれたら 琴子は どうなるのです? お乳は? 410 00:39:48,731 --> 00:39:53,602 千代子は 乳母ではない。 琴子には 牛乳を飲ませたらいい。 411 00:39:53,602 --> 00:39:57,740 牛乳? 牛の乳? 412 00:39:57,740 --> 00:40:02,611 人の子に けだものの乳を 飲ませるのですか? 413 00:40:02,611 --> 00:40:06,749 どうするんですか? そんな事をして 琴子が➡ 414 00:40:06,749 --> 00:40:09,651 牛のように よだれを垂らすような 子になってしまったら…。 415 00:40:09,651 --> 00:40:11,620 そんなのは 迷信だ!➡ 416 00:40:11,620 --> 00:40:15,758 西洋では ずっと昔から 牛乳で子どもを育てている。 417 00:40:15,758 --> 00:40:21,263 最近は 日本でも 牛乳を 子どもに与えているではないか。 418 00:40:21,263 --> 00:40:24,767 私が心配しているのは その事だけじゃありませんよ。 419 00:40:24,767 --> 00:40:28,270 いざ 千代子が御殿場に行ったら➡ 420 00:40:28,270 --> 00:40:32,770 何だか それだけじゃ 済まないような気が…。 421 00:41:00,803 --> 00:41:04,673 兄さん さすがですね。 ぴったり2時間。 422 00:41:04,673 --> 00:41:08,677 これを 一日12回ですか。 そうだ。 423 00:41:08,677 --> 00:41:13,816 定時に 小刻みに記録しないと 正確な観測はできない。 424 00:41:13,816 --> 00:41:18,687 しかも それを 一冬。 普通だったら 倒れますよ。 425 00:41:18,687 --> 00:41:24,827 だが だいぶ 体も慣れてきた。 この調子なら なんとかなる。 426 00:41:24,827 --> 00:41:27,329 まあ 兄さんは普通じゃないですから➡ 427 00:41:27,329 --> 00:41:29,832 不可能を 可能にしてくれるでしょう。 428 00:41:29,832 --> 00:41:32,734 何だ その言い方? ひどい言い方だな。 429 00:41:32,734 --> 00:41:35,637 (清)褒めてるんですよ。 430 00:41:35,637 --> 00:42:46,637 ♬~ 431 00:43:16,271 --> 00:43:20,809 女の子だから➡ 432 00:43:20,809 --> 00:43:24,809 優しく 素直に育てばいいな。 433 00:43:28,684 --> 00:43:33,755 きっと 園子なら 大丈夫だ。 434 00:43:33,755 --> 00:43:36,658 しかし それだけでは駄目だ。 435 00:43:36,658 --> 00:43:42,764 これからの子は 学問にも励まないと。 436 00:43:42,764 --> 00:43:46,268 なぜ そんな…。 437 00:43:46,268 --> 00:43:51,773 望むなら 大学まで勉強するのもよい。 438 00:43:51,773 --> 00:43:57,773 でも 家の事も しっかりやれる子に…。 439 00:44:04,786 --> 00:44:07,786 お前みたいに。 440 00:44:09,658 --> 00:44:21,803 ♬~ 441 00:44:21,803 --> 00:44:25,803 何を好きになるのだろう? 442 00:44:27,676 --> 00:44:33,749 どんな人を好きになって どんな妻になるのだろう? 443 00:44:33,749 --> 00:44:41,623 ♬~ 444 00:44:41,623 --> 00:44:43,623 やめて下さい。 445 00:44:45,761 --> 00:44:48,761 見届けてくれ。 446 00:44:51,633 --> 00:44:55,633 「帰ってくる」と言って下さい。 447 00:44:59,775 --> 00:45:03,645 どうか… 「帰ってくる」と。 448 00:45:03,645 --> 00:46:07,645 ♬~ 449 00:46:50,752 --> 00:46:55,252 これを お持ちになって下さい。 450 00:46:58,627 --> 00:47:26,655 ♬~ 451 00:47:26,655 --> 00:47:29,791 では 行ってくる。 452 00:47:29,791 --> 00:47:34,629 ♬~ 453 00:47:34,629 --> 00:47:37,599 皆に伝えてくれ。 454 00:47:37,599 --> 00:47:40,735 「必ず 成し遂げる」と。 455 00:47:40,735 --> 00:47:47,609 ♬~ 456 00:47:47,609 --> 00:47:53,748 私は 10日ほどたってから参ります。 457 00:47:53,748 --> 00:47:58,253 え? 今 一緒に行ったら➡ 458 00:47:58,253 --> 00:48:01,756 あなたのお仕事に ご迷惑がかかりますから➡ 459 00:48:01,756 --> 00:48:05,627 私は 落ち着いた頃に参ります。 しかし その話は もう…。 460 00:48:05,627 --> 00:48:11,766 まだ時間はあります。 せめて 御殿場までは。 461 00:48:11,766 --> 00:48:20,275 ♬~ 462 00:48:20,275 --> 00:48:23,778 どうしても来るのか? 463 00:48:23,778 --> 00:48:27,649 どうしても行きます。 464 00:48:27,649 --> 00:48:32,587 どこまでも あなたの後に ついていきます。 465 00:48:32,587 --> 00:48:40,729 ♬~ 466 00:48:40,729 --> 00:48:43,632 しょうがない女だ。 467 00:48:43,632 --> 00:49:02,751 ♬~ 468 00:49:02,751 --> 00:49:05,751 (とみ子)千代子。 469 00:49:08,623 --> 00:49:11,123 ねえ 千代子。 470 00:49:13,261 --> 00:49:15,761 千代子。 471 00:49:35,584 --> 00:49:37,584 お母様。 472 00:49:39,721 --> 00:49:42,721 千代子 あなた…。 473 00:49:48,730 --> 00:49:52,601 お願いします 御殿場に行かせて下さい。 474 00:49:52,601 --> 00:49:56,605 これを 御殿場に 持っていくつもりですか? 475 00:49:56,605 --> 00:50:01,743 はい。 どうしようか 悩んでいましたが➡ 476 00:50:01,743 --> 00:50:05,743 やはり 持っていく事に決めました。 477 00:50:08,617 --> 00:50:13,755 でも これを着る時があるのかしらね。 478 00:50:13,755 --> 00:50:16,658 着なくてもいいのです。 479 00:50:16,658 --> 00:50:21,630 その着物は お母様に頂いた 大事な着物ですし➡ 480 00:50:21,630 --> 00:50:24,766 私の一番好きな着物です。 481 00:50:24,766 --> 00:50:30,639 そばに置いて 時々 眺めるだけでもいいんです。 482 00:50:30,639 --> 00:50:34,275 滝河原は 随分へんぴな所だそうですから。 483 00:50:34,275 --> 00:50:38,146 いい加減になさい。 あなた 一体どういう了見で…。 484 00:50:38,146 --> 00:50:40,782 行かせて下さい お願いします。 485 00:50:40,782 --> 00:50:44,782 そんな身勝手 許される訳ありませんよ。 486 00:50:48,657 --> 00:50:54,796 お母様 前に こうおっしゃってました。 487 00:50:54,796 --> 00:50:59,668 「殿方にとって 面目は 命よりも大事」と。 488 00:50:59,668 --> 00:51:02,303 (とみ子)それが何ですか? 489 00:51:02,303 --> 00:51:05,807 では 女は? え? 490 00:51:05,807 --> 00:51:11,680 女にとって 命よりも大事なのは 家族じゃありませんか? 491 00:51:11,680 --> 00:51:15,316 夫や子どもじゃありませんか? 492 00:51:15,316 --> 00:51:19,821 その夫が 今 一世一代の大仕事に 出ようとしてるんです。 493 00:51:19,821 --> 00:51:21,756 命を削るんです。 494 00:51:21,756 --> 00:51:24,693 死んでも やり遂げる気です。 495 00:51:24,693 --> 00:51:27,696 力になりたいんです。 496 00:51:27,696 --> 00:51:32,767 僅かでも 支えになりたいんです。 497 00:51:32,767 --> 00:51:39,641 ♬~ 498 00:51:39,641 --> 00:51:47,641 それに 到さんのそばに いたいのです。 499 00:51:50,785 --> 00:51:57,659 生まれて初めて好きになって 夫となった人です。 500 00:51:57,659 --> 00:52:00,659 そばに いたいのです。 501 00:52:05,800 --> 00:52:11,673 申し訳ありません。 お母様 到さんのお仕事のため➡ 502 00:52:11,673 --> 00:52:14,809 どうか この千代子を 御殿場に やって下さいまし。 503 00:52:14,809 --> 00:52:17,712 お願いします! 504 00:52:17,712 --> 00:52:22,684 必ず… 必ず お役に立ちます。 505 00:52:22,684 --> 00:52:26,684 どうか 到さんのそばに…。 506 00:52:28,823 --> 00:52:31,726 お願いします! 507 00:52:31,726 --> 00:52:42,771 ♬~ 508 00:52:42,771 --> 00:52:45,673 到を頼みますよ。 509 00:52:45,673 --> 00:52:52,781 ♬~ 510 00:52:52,781 --> 00:52:56,651 ありがとうございます。 511 00:52:56,651 --> 00:53:03,651 まあ 琴子の事は 昔と違って 今は 牛乳というものがありますから。 512 00:53:06,795 --> 00:53:14,669 本当に わがままばかり申し上げて すみません。 513 00:53:14,669 --> 00:53:19,808 ≪(琴子と園子の泣き声) 514 00:53:19,808 --> 00:53:21,743 琴子も園子も➡ 515 00:53:21,743 --> 00:53:25,680 けんか相手がいなくなって 寂しくなるでしょうね。 516 00:53:25,680 --> 00:53:38,760 ♬~ 517 00:53:38,760 --> 00:53:42,630 はいはい ただいま ただいま。 518 00:53:42,630 --> 00:53:59,781 ♬~ 519 00:53:59,781 --> 00:54:03,651 (勝良)「富士山頂気象観測所設立 野中 到」。 520 00:54:03,651 --> 00:54:07,651 本当だ。 勇ましい事が書いてある。 521 00:54:11,793 --> 00:54:14,696 どうしました? 母上。 522 00:54:14,696 --> 00:54:18,666 あの着物… 私が買ってやった。 え? 523 00:54:18,666 --> 00:54:21,803 あれを持っていくという事は➡ 524 00:54:21,803 --> 00:54:25,673 やはり 千代子は 到と一緒に富士に。 525 00:54:25,673 --> 00:54:30,311 姉さんが 富士山に? 考え過ぎだ とみ子。 526 00:54:30,311 --> 00:54:33,748 あの子 里に帰るつもりなんですよ。➡ 527 00:54:33,748 --> 00:54:36,651 嫁入りした娘が 帰る時 着ていくのは➡ 528 00:54:36,651 --> 00:54:39,621 婚家からもらった着物ですもの。 529 00:54:39,621 --> 00:54:43,258 あれを着て 千代子は 福岡の実家に戻って➡ 530 00:54:43,258 --> 00:54:47,762 園子を預けて 到の後を追って富士に。 531 00:54:47,762 --> 00:54:51,266 そう… きっとそうですよ。 532 00:54:51,266 --> 00:54:54,769 そんなバカな…。 死んでしまいますよ。 533 00:54:54,769 --> 00:55:01,643 思い過ごしだよ。 冬の厳しい山に 女の身で 登って 暮らすなど➡ 534 00:55:01,643 --> 00:55:04,643 できる訳がない。 ハハハハ…。 535 00:55:06,381 --> 00:55:26,701 ♬~ 536 00:55:26,701 --> 00:55:31,306 あの~ 野中先生の奥さんだらか? はい。 537 00:55:31,306 --> 00:55:34,742 ああ 佐藤與平治でございます。 538 00:55:34,742 --> 00:55:39,614 主人がお世話になっております。 野中千代子です。 539 00:55:39,614 --> 00:55:45,753 娘の園子です。 ああ お嬢ちゃん よう来たずら。 540 00:55:45,753 --> 00:55:48,753 さあ 荷物。 すみません。 541 00:55:51,626 --> 00:55:56,764 奥さん 馬に乗ってくんにゃあか。 いえ 歩きます。 542 00:55:56,764 --> 00:56:00,635 歩くだ? 滝河原みゃで 1里もあるずら。 543 00:56:00,635 --> 00:56:04,635 たったの1里でしょ? 私は 歩いた方が気が楽です。 544 00:56:06,774 --> 00:56:08,710 へえ。 545 00:56:08,710 --> 00:56:19,787 ♬~ 546 00:56:19,787 --> 00:56:23,787 ねえ 園子。 富士山よ。 547 00:56:27,662 --> 00:56:31,733 お父様とお母様が登る山よ。 548 00:56:31,733 --> 00:56:41,733 ♬~ 549 00:57:01,729 --> 00:57:09,771 ♬「涙のような 雨が降れば」 550 00:57:09,771 --> 00:57:17,645 ♬「私が傘を 差しかける」 551 00:57:17,645 --> 00:57:26,788 ♬「風が泣いて 寒い夜は」 552 00:57:26,788 --> 00:57:34,595 ♬「あなたが 抱きしめてくれる」 553 00:57:34,595 --> 00:57:43,738 ♬「共に歩み 共に生きて」 554 00:57:43,738 --> 00:57:51,612 ♬「ここまで 来たけれど」 555 00:57:51,612 --> 00:57:56,751 ♬「二人で いられたから」 556 00:57:56,751 --> 00:58:00,621 ♬「怖いものは なかった」 557 00:58:00,621 --> 00:58:08,763 ♬「運命で 結ばれた愛」 558 00:58:08,763 --> 00:58:13,267 ♬「二人を 分かつ時が」 559 00:58:13,267 --> 00:58:17,772 ♬「たとえ 巡り来ようと」 560 00:58:17,772 --> 00:58:24,772 ♬「永遠に 生き続ける愛」