1 00:00:22,898 --> 00:00:25,598 (拍手と歓声) 2 00:00:39,581 --> 00:00:46,722 2013年 その名称で世界文化遺産に 登録された富士山は➡ 3 00:00:46,722 --> 00:00:52,594 自然科学の分野でも さまざまな研究対象となった。 4 00:00:52,594 --> 00:00:58,734 明治28年 この富士山の頂上で 観測を続ければ➡ 5 00:00:58,734 --> 00:01:03,605 正確な天気予報が得られる。 そう訴え➡ 6 00:01:03,605 --> 00:01:08,744 極寒の気象観測に 挑んだ夫婦がいる。 7 00:01:08,744 --> 00:01:12,744 野中 到と その妻 千代子である。 8 00:01:15,617 --> 00:01:21,256 この夏 いよいよ 到は 観測所建設に着手。 9 00:01:21,256 --> 00:01:26,762 その本拠地が ここ 御殿場に作られたのである。 10 00:01:26,762 --> 00:01:32,200 (千代子)いかがですか? 富士山は 夏になると 人で大変でしょう? 11 00:01:32,200 --> 00:01:38,707 (與平治)何しろよ 日本中の人が 汽車で やって来るもんだからよ。 12 00:01:38,707 --> 00:01:43,579 雪が消えるのは いつですか? あ~ 7月の初めずら。 13 00:01:43,579 --> 00:01:47,716 では 観測所の建設は それからですね。 14 00:01:47,716 --> 00:01:53,589 思うように 人が集まんにゃあだよ。 え? 15 00:01:53,589 --> 00:01:57,225 みんな 稼ぎ時だもんだからよ➡ 16 00:01:57,225 --> 00:02:01,730 観測所の方に 人は来にゃあだ。 17 00:02:01,730 --> 00:02:05,601 では 主人は 今…? 18 00:02:05,601 --> 00:02:07,601 う~ん…。 19 00:02:11,740 --> 00:02:15,611 [ 回想 ] (到)壮絶です 富士は。 20 00:02:15,611 --> 00:02:19,247 頂上で 石の一つも持ち帰りたかったが➡ 21 00:02:19,247 --> 00:02:21,747 雪が凍っていてね。 22 00:02:23,752 --> 00:02:27,623 到さんのお仕事のため どうか この千代子を➡ 23 00:02:27,623 --> 00:02:30,626 御殿場に やって下さいまし。 お願いします! 24 00:02:30,626 --> 00:02:34,696 (とみ子)そんな身勝手 許される訳ありませんよ。 25 00:02:34,696 --> 00:02:37,599 どうしても来るのか? 26 00:02:37,599 --> 00:02:42,571 どこまでも あなたの後に ついていきます。 27 00:02:42,571 --> 00:03:05,661 ♬~ 28 00:03:05,661 --> 00:03:08,661 (けさ)ありがとさん 気ぃ付けてな。 29 00:03:13,735 --> 00:03:18,735 旦那さんにゃあ ここの離れ 使ってもらってるだ。 30 00:03:22,744 --> 00:03:25,744 さあさあ 入ってくんな。 31 00:03:29,251 --> 00:03:31,186 おっ! あっ! 32 00:03:31,186 --> 00:03:34,690 到さん。 何だ 着いたのか。 33 00:03:34,690 --> 00:03:39,690 「何だ」って もう…。 無事に着きました。 34 00:03:54,710 --> 00:04:00,582 やはり あまり 人が集まっていないようですね。 35 00:04:00,582 --> 00:04:07,723 お山開きが近くなりゃ 石室小屋が 一斉に開くずら。 36 00:04:07,723 --> 00:04:14,596 大工や石工を入れて この冬 壊れたとこを修理するずら。 37 00:04:14,596 --> 00:04:18,734 だもんで みんな 今 稼いでるずら。➡ 38 00:04:18,734 --> 00:04:23,605 盛りの頃は 大変だ 山は。 39 00:04:23,605 --> 00:04:28,744 では その大変な時期に…。 40 00:04:28,744 --> 00:04:33,515 観測所を 建てようっちゅうこんだよ➡ 41 00:04:33,515 --> 00:04:35,550 旦那さんは。 42 00:04:35,550 --> 00:04:50,699 ♬~ 43 00:04:50,699 --> 00:04:53,699 必ず 成し遂げてみせる。 44 00:04:58,573 --> 00:05:04,713 観測所を建てるのだ あのてっぺんに。 45 00:05:04,713 --> 00:05:17,726 ♬~ 46 00:05:17,726 --> 00:05:21,229 (つる)じゃあ これ 何だら? (園子)うさぎちゃん。 47 00:05:21,229 --> 00:05:24,733 当たり。 よう分かったなあ。 48 00:05:24,733 --> 00:05:26,668 次は…。 49 00:05:26,668 --> 00:05:31,239 すいません つるさんに お相手して頂いて。 50 00:05:31,239 --> 00:05:35,739 いや うちの子が 遊んでもらってるようだで。 51 00:05:39,681 --> 00:05:44,553 (與平治) この近くに住みよる百姓ずら。➡ 52 00:05:44,553 --> 00:05:52,694 勝又熊吉 西藤鶴吉。 山ん仕事も 時々は やるずらが➡ 53 00:05:52,694 --> 00:05:56,565 強力と呼ばれんのが 嫌あなやつらなもんで。 54 00:05:56,565 --> 00:05:59,568 それは なぜですか? 55 00:05:59,568 --> 00:06:03,705 ただの銭目当てで 登山客に 吹っかけるような➡ 56 00:06:03,705 --> 00:06:06,208 にわか強力のまねは しにゃあ。➡ 57 00:06:06,208 --> 00:06:08,710 それが こいつらの信念ずら。➡ 58 00:06:08,710 --> 00:06:13,582 ちゃんとしたとこの紹介があって この人のためなら➡ 59 00:06:13,582 --> 00:06:17,219 案内してやらあ 荷ぃ担ぎ上げてやらあと思や➡ 60 00:06:17,219 --> 00:06:19,721 この2人は 動く。 61 00:06:19,721 --> 00:06:24,226 すると 熊吉さんも鶴吉さんも 私の仕事を手伝ってやろうと➡ 62 00:06:24,226 --> 00:06:27,729 そう思ったから 来てくれた訳ですね。 63 00:06:27,729 --> 00:06:34,536 おお そうずら。 そういう仕事なら 喜んで。 なっ。 64 00:06:34,536 --> 00:06:39,674 ♬~ 65 00:06:39,674 --> 00:06:44,546 お茶 お持ちしました。 女房です。 66 00:06:44,546 --> 00:06:53,688 ♬~ 67 00:06:53,688 --> 00:06:59,194 「お父様 お母様。 7月になり 雪も消えて➡ 68 00:06:59,194 --> 00:07:02,694 建築資材の荷揚げが 始まりました」。 69 00:07:04,699 --> 00:07:08,570 (清)姉さんから 手紙ですか? (勝良)ああ。 70 00:07:08,570 --> 00:07:10,570 頂きます。 71 00:07:13,208 --> 00:07:15,710 読まないんですか? 母上。 72 00:07:15,710 --> 00:07:18,613 知りませんよ。 家の事 ほったらかして➡ 73 00:07:18,613 --> 00:07:22,584 長滞在している 不義理な嫁の事など。 ねえ。 74 00:07:22,584 --> 00:07:25,220 ご自分で許したくせに。 75 00:07:25,220 --> 00:07:28,723 (勝良)おお 荷揚げ作業 順調だと。 76 00:07:28,723 --> 00:07:31,626 鶴吉 熊吉という若者が来てから➡ 77 00:07:31,626 --> 00:07:36,626 急に 仕事が はかどるようになったそうだ。 78 00:07:38,533 --> 00:07:44,172 「建築資材は 山の麓 滝河原で荷造りされ➡ 79 00:07:44,172 --> 00:07:50,672 2合目までは 馬。 それから上は 人の背によって運ばれます」。 80 00:07:52,347 --> 00:07:55,016 「頂上に 荷物が運ばれると➡ 81 00:07:55,016 --> 00:08:01,690 到様が 日付や荷物の量 強力の名前などを記帳」。 82 00:08:01,690 --> 00:08:06,561 ついでに これ 女房に 渡してもらえますか? ええ。 83 00:08:06,561 --> 00:08:11,700 「下山後 私が その伝票を受け取ります」。 84 00:08:11,700 --> 00:08:16,571 あ あと これ 旦那さんからずら。 ありがとうございます。 85 00:08:16,571 --> 00:08:25,213 ♬~ 86 00:08:25,213 --> 00:08:28,116 (清)「私は 会計係のほか➡ 87 00:08:28,116 --> 00:08:31,086 冬籠もり用の食料を 任されています。➡ 88 00:08:31,086 --> 00:08:34,656 皆様には ご不自由をおかけします。➡ 89 00:08:34,656 --> 00:08:38,526 とりわけ お母様には 勝手回り煩わせ➡ 90 00:08:38,526 --> 00:08:40,996 誠に申し訳ありません。➡ 91 00:08:40,996 --> 00:08:45,696 その分 到様のお世話に 励みます。 かしこ」。 92 00:08:50,171 --> 00:08:53,074 冬籠もり用の食料か。 93 00:08:53,074 --> 00:08:56,678 重要な任務を任されているな 千代子は。 94 00:08:56,678 --> 00:08:59,581 兄さん よく言ってましたね。 95 00:08:59,581 --> 00:09:02,550 「お山にいると 食欲が からっきし なくなる」と。 96 00:09:02,550 --> 00:09:05,687 とにかく 野菜や果物が必要ですよ。 97 00:09:05,687 --> 00:09:08,590 体が資本なんですから うんと食べなければ。 98 00:09:08,590 --> 00:09:11,559 甘い物が 喉を通るようですよ。 99 00:09:11,559 --> 00:09:16,031 小豆とか あめとか 氷砂糖とか あと 梅干しとか。 100 00:09:16,031 --> 00:09:20,702 それに 主食。 米や味噌は やはり 大事だろう。 101 00:09:20,702 --> 00:09:23,605 でも それだけで 一冬 越せるでしょうか? 102 00:09:23,605 --> 00:09:26,574 大事ですよ 食料は。 103 00:09:26,574 --> 00:09:32,574 千代子は ちゃんと考えて 目利きできてるのかねえ…。 104 00:09:35,650 --> 00:09:39,154 大体 こんなもんで そろっただらか? 105 00:09:39,154 --> 00:09:42,657 あの あと お米をもう一俵 追加して下さい。 106 00:09:42,657 --> 00:09:45,560 もう一俵かよ。 ありがとさんです。 107 00:09:45,560 --> 00:09:49,531 できるだけ 早く届けんでな。 お願いします。 108 00:09:49,531 --> 00:09:52,667 ♬~ 109 00:09:52,667 --> 00:09:58,667 お米でしょ? お味噌 乾物 調味料。 110 00:10:00,341 --> 00:10:04,179 今日で 大体 めぼしい物は買えましたね。 111 00:10:04,179 --> 00:10:08,683 1人分にしちゃあ 量が多かったようだけんど。 112 00:10:08,683 --> 00:10:11,586 念のためです。 113 00:10:11,586 --> 00:10:17,586 奥さん 馬に乗んにゃあかね。 いいえ お気遣いなく。 114 00:10:19,694 --> 00:10:22,197 奥さん…。 115 00:10:22,197 --> 00:10:25,700 こんなこん わしが言うこんじゃ にゃあけんど➡ 116 00:10:25,700 --> 00:10:30,700 奥さんは 何か隠していにゃあかね? 117 00:10:37,712 --> 00:10:40,212 與平治さん。 118 00:10:42,217 --> 00:10:48,723 私は 主人の後を追って 富士山に登るつもりです。 119 00:10:48,723 --> 00:10:52,594 主人を 一人で山の中に 置いておくような事はできません。 120 00:10:52,594 --> 00:10:56,231 このあと 福岡の実家に行って 園子を預け➡ 121 00:10:56,231 --> 00:11:01,736 そちらで用意を調えて また こちらに戻ってくるつもりです。 122 00:11:01,736 --> 00:11:09,611 でも この事を 今 主人に 言ってもらっては困ります。 123 00:11:09,611 --> 00:11:15,250 どうか 與平治さんの胸の奥だけに しまっておいて下さいませ。 124 00:11:15,250 --> 00:11:18,153 だけんどよ…。 とにかく 今は➡ 125 00:11:18,153 --> 00:11:21,653 観測所の完成を待たないと。 126 00:11:24,759 --> 00:11:47,715 ♬~ 127 00:11:47,715 --> 00:11:51,586 (徳三)あっ おみゃあ! (将太)また倒れただ! 128 00:11:51,586 --> 00:11:54,589 大丈夫ですか!? 129 00:11:54,589 --> 00:11:57,725 石室に運びましょう。 おう。 130 00:11:57,725 --> 00:12:26,725 ♬~ 131 00:12:40,702 --> 00:12:45,202 かってえな~。 無理だら 地面が凍ってるだ。 132 00:12:54,716 --> 00:12:57,619 (将太)駄目だ。 俺はやめた! 133 00:12:57,619 --> 00:13:02,590 いくら お国のためと言ってもよ こんなつらあ仕事 あるもんか! 134 00:13:02,590 --> 00:13:04,726 (徳三)待てってばよ! 135 00:13:04,726 --> 00:13:07,629 やめた やめた! 136 00:13:07,629 --> 00:13:10,598 俺も やめるだ。 137 00:13:10,598 --> 00:13:14,736 待って下さい。 138 00:13:14,736 --> 00:13:18,606 待って下さい 皆さん! 139 00:13:18,606 --> 00:13:21,609 どうか お力を! 140 00:13:21,609 --> 00:13:23,609 お願いします! 141 00:13:28,249 --> 00:13:30,749 お願いします。 142 00:13:39,360 --> 00:13:41,396 (鶴吉)いくべ~! 143 00:13:41,396 --> 00:13:43,596 (熊吉)お~! 144 00:14:12,727 --> 00:15:12,720 ♬~ 145 00:15:12,720 --> 00:15:15,623 おおっ…。 146 00:15:15,623 --> 00:16:14,623 ♬~ 147 00:16:22,223 --> 00:17:15,209 (風の音) 148 00:17:15,209 --> 00:17:17,209 皆さん…。 149 00:17:26,220 --> 00:17:29,123 どうも ありがとう。 150 00:17:29,123 --> 00:17:33,027 ♬~ 151 00:17:33,027 --> 00:17:39,166 よ~し。 万歳! (一同)万歳! 152 00:17:39,166 --> 00:17:45,039 (熊吉)万歳! (一同)万歳! 万歳! 万歳! 153 00:17:45,039 --> 00:17:51,679 (熊吉)万歳! 万歳! 万歳! 万歳! 154 00:17:51,679 --> 00:17:55,182 (熊吉)万歳! (一同)万歳! 155 00:17:55,182 --> 00:19:08,689 ♬~ 156 00:19:08,689 --> 00:19:13,561 ≪(和田)野中観測所 完成 おめでとうございます。 157 00:19:13,561 --> 00:19:19,200 和田先生 そして 中央気象台の 皆さんのご尽力のおかげです。 158 00:19:19,200 --> 00:19:21,702 今度は 大きく出ています。 159 00:19:21,702 --> 00:19:26,574 「野中 到 富士山頂に観測所を設立。➡ 160 00:19:26,574 --> 00:19:31,512 冬季も定住できるとの確信を得て 私財を投じ貢献」。➡ 161 00:19:31,512 --> 00:19:36,150 私も 近日中に 富士山に向かう予定です。 162 00:19:36,150 --> 00:19:41,650 この冬 いよいよ歴史を作る到君を 激励するために。 163 00:19:47,662 --> 00:19:50,662 おいしいか? うん。 164 00:19:55,536 --> 00:19:59,173 明日は 浅間神社の本社へ 夏のお礼かたがた➡ 165 00:19:59,173 --> 00:20:02,076 冬籠もりの挨拶へ行ってくる。 166 00:20:02,076 --> 00:20:07,048 私は 東京に帰ろうかと思います。 167 00:20:07,048 --> 00:20:14,655 もう 私の仕事は そうありませんから。 そうか。 168 00:20:14,655 --> 00:20:17,655 長い間 ご苦労だったな。 169 00:21:04,739 --> 00:21:09,739 月末には 観測所に籠もるつもりだ。 170 00:21:18,753 --> 00:21:22,623 よく ここまで来てくれた。 171 00:21:22,623 --> 00:21:25,623 後は 留守を頼む。 172 00:21:27,762 --> 00:21:30,664 家を守ってくれ。 173 00:21:30,664 --> 00:21:35,664 園子や 父上 母上も。 174 00:21:40,708 --> 00:21:44,578 俺の事は 心配するな。 175 00:21:44,578 --> 00:21:48,582 な~に 春になったら➡ 176 00:21:48,582 --> 00:21:52,720 ひげだらけになって お山から下りてくる。 177 00:21:52,720 --> 00:21:55,720 待っていてくれ。 178 00:22:05,733 --> 00:22:08,636 泣くな。 179 00:22:08,636 --> 00:22:11,636 大丈夫だ。 180 00:22:13,607 --> 00:22:18,746 はい。 お待ちしてます。 181 00:22:18,746 --> 00:23:02,223 ♬~ 182 00:23:02,223 --> 00:23:05,125 すぐに行きますから➡ 183 00:23:05,125 --> 00:23:08,095 待っていて下さい。 184 00:23:08,095 --> 00:23:16,737 ♬~ 185 00:23:16,737 --> 00:23:19,640 では 行ってきます。 186 00:23:19,640 --> 00:23:25,746 福岡までは 長旅ずら。 どうぞ 気ぃ付けて。 187 00:23:25,746 --> 00:23:30,618 與平治さんには 何と言って お礼を申し上げたらいいか。 188 00:23:30,618 --> 00:23:35,556 今度 会う時は 奥さんが 山ん登る時ずら。 189 00:23:35,556 --> 00:23:41,556 どうか それまでによ…。 はい。 足を鍛えておきます。 190 00:23:44,698 --> 00:23:46,634 ちょっと すいません。 191 00:23:46,634 --> 00:24:00,180 ♬~ 192 00:24:00,180 --> 00:24:03,717 「お母様。➡ 193 00:24:03,717 --> 00:24:09,590 間もなく 到様は 観測所へと お籠もりになります。➡ 194 00:24:09,590 --> 00:24:14,728 もう既に お気付きかと存じます。➡ 195 00:24:14,728 --> 00:24:22,603 この冬 私は 到様と共に 富士山の観測所に籠もります。➡ 196 00:24:22,603 --> 00:24:27,741 園子は 福岡の実家に預けます。➡ 197 00:24:27,741 --> 00:24:30,644 ご心配には及びません。➡ 198 00:24:30,644 --> 00:24:34,181 勝手に後を追うのですから➡ 199 00:24:34,181 --> 00:24:39,053 到様からも お叱りを受けるかと思います。➡ 200 00:24:39,053 --> 00:24:44,692 野中家の皆様に ご心配 ご迷惑を おかけします事➡ 201 00:24:44,692 --> 00:24:48,562 甚だ 心苦しく感じております。➡ 202 00:24:48,562 --> 00:24:54,702 けれど 今度ばかりは 思いとどまる事はできません。➡ 203 00:24:54,702 --> 00:24:58,702 どうか お許し下さい。 千代子」。 204 00:25:00,574 --> 00:25:03,711 ごめんくださいませ。 205 00:25:03,711 --> 00:25:05,711 千代子です。 206 00:25:08,582 --> 00:25:11,585 (糸子)まあ 千代子! 207 00:25:11,585 --> 00:25:15,723 千代子 一体 どげんしたとか? 208 00:25:15,723 --> 00:25:19,593 お父様も お母様も なんて変な顔ば なさっとるの? 209 00:25:19,593 --> 00:25:23,230 ばってん 千代子 あなた 嫁いで以来➡ 210 00:25:23,230 --> 00:25:27,735 初めて帰るとですよ。 知らせるでしょう? 普通は。 211 00:25:27,735 --> 00:25:31,235 訳あって お願いしたい事があるの。 212 00:25:33,173 --> 00:25:36,677 おお この子が 園子ね。 213 00:25:36,677 --> 00:25:41,181 園子。 おじいちゃまと おばあちゃまですよ。 214 00:25:41,181 --> 00:25:43,684 こんにちは。 215 00:25:43,684 --> 00:25:48,684 アハハハハハ… いい子だ。 さあさあ ほら 上がらんか。 216 00:25:50,557 --> 00:25:54,194 (只圓)お前がか? 到さんと 富士へ? 217 00:25:54,194 --> 00:25:58,065 妻が 夫を手伝うのは 当たり前の事ですけん。 218 00:25:58,065 --> 00:26:02,703 そげんか。 なかなか 勇ましか事たい。 219 00:26:02,703 --> 00:26:07,574 でも まあ 本当に よう決心したものたいね。 220 00:26:07,574 --> 00:26:12,713 それこそ 誠の婦道の鑑というものたい。 221 00:26:12,713 --> 00:26:15,616 園子の事は 心配せんでよか。 222 00:26:15,616 --> 00:26:19,586 ちゃんと面倒ば 見てやるけん。 なっ。 223 00:26:19,586 --> 00:26:21,722 ありがとうございます。 224 00:26:21,722 --> 00:26:25,592 でも 到さんが よう承知したものたいね。 225 00:26:25,592 --> 00:26:30,731 あの人は 私たちは 東京に 帰ったものと思っています。 226 00:26:30,731 --> 00:26:35,569 私が山に登ると言ったら 駄目だと言うに決まってます。 227 00:26:35,569 --> 00:26:39,540 東京のお母様には 御殿場から 手紙ば出しておきました。 228 00:26:39,540 --> 00:26:43,177 あなた 到さんに 黙って来たとね? 229 00:26:43,177 --> 00:26:46,080 千代子も なかなか やるじゃなかか。 230 00:26:46,080 --> 00:26:48,048 では とみ子…➡ 231 00:26:48,048 --> 00:26:51,051 あちらのお母さんには 手紙だけね? 232 00:26:51,051 --> 00:26:56,190 お父様。 私 山に登る練習ば したいのですけれど➡ 233 00:26:56,190 --> 00:27:00,694 誰か よか案内人が おらんかしら。 そうだな…。 234 00:27:00,694 --> 00:27:05,566 ああ 以前 奉公してた源造にでも 頼んでみるたい。 235 00:27:05,566 --> 00:27:10,204 山に登る練習って…。 足ば鍛えるためですわ。 236 00:27:10,204 --> 00:27:16,543 だって 私 あの日本一の山 富士山に登るとですから。 237 00:27:16,543 --> 00:27:19,446 千代子が富士に…。 238 00:27:19,446 --> 00:27:22,416 では やはり 母上が懸念したとおり。 239 00:27:22,416 --> 00:27:25,719 ですから 言ったのですよ。 240 00:27:25,719 --> 00:27:30,591 女の身で 冬山など 死にに行くようなものだ。 241 00:27:30,591 --> 00:27:34,528 どうします? 242 00:27:34,528 --> 00:27:37,664 糸子姉さんは ああ見えて➡ 243 00:27:37,664 --> 00:27:40,567 案外 見えっ張りなところが ありますから➡ 244 00:27:40,567 --> 00:27:44,538 「さすが 千代子 これぞ 婦道の鑑」なんて言って➡ 245 00:27:44,538 --> 00:27:49,676 賛成するかもしれない。 私から 手紙を書いて➡ 246 00:27:49,676 --> 00:27:53,347 許可しないように 念を押しておきましょう。 247 00:27:53,347 --> 00:27:56,683 (糸子)男物の服装? 248 00:27:56,683 --> 00:28:00,554 千代子 あなた 男装ばして山に登るというとね? 249 00:28:00,554 --> 00:28:06,193 そうよ 到さんと同じように。 まず 真綿のズボン下。 250 00:28:06,193 --> 00:28:10,697 その上に 木綿のズボン下。 更に その上に ズボン。 251 00:28:10,697 --> 00:28:15,202 肌着には メリヤスシャツ。 その上に 水夫が着る毛糸編みのシャツ。 252 00:28:15,202 --> 00:28:18,705 その上に 真綿のチョッキ。 チョッキ? 253 00:28:18,705 --> 00:28:24,578 いい加減にせんね 千代子! そげな事 許しません 絶対に。➡ 254 00:28:24,578 --> 00:28:28,215 女が 男のなりばする などという事は➡ 255 00:28:28,215 --> 00:28:32,653 もう 女ではなかよと 人様に 宣言するようなものたい。 256 00:28:32,653 --> 00:28:36,523 そげな事が 新聞にでも 載ってごらんなさい。 257 00:28:36,523 --> 00:28:41,161 「梅津の糸子さんは 娘ば あげなふうに育てたのか」と➡ 258 00:28:41,161 --> 00:28:45,666 人様に言われます。 そげな事になったら➡ 259 00:28:45,666 --> 00:28:48,702 もう本当に 私は 死んでしまいたくなるけん! 260 00:28:48,702 --> 00:28:52,539 ここまで来て お母様に反対されたら➡ 261 00:28:52,539 --> 00:28:55,676 一体 どげんしたら よかとでしょう? 262 00:28:55,676 --> 00:28:58,579 まあ そげん目くじら立てんで➡ 263 00:28:58,579 --> 00:29:02,549 女が 男の服装ばしてはいけない って事ではなかし➡ 264 00:29:02,549 --> 00:29:08,689 冬の富士山に登るという 目的があっての事だけん。 265 00:29:08,689 --> 00:29:12,559 そうよ お母様。 分かっとる? 富士山は寒いとよ。 266 00:29:12,559 --> 00:29:15,562 下から 強い風が吹き上げてくるとよ。 267 00:29:15,562 --> 00:29:18,699 普通の着物では駄目なんです。 寒か雪国で➡ 268 00:29:18,699 --> 00:29:21,602 女が 男の服装ばしとりますか? 269 00:29:21,602 --> 00:29:24,571 やはり 女は 女らしい服装ばしとるでしょう。 270 00:29:24,571 --> 00:29:28,208 では お母様。 私は もんぺをはいて登ります。 271 00:29:28,208 --> 00:29:31,645 もんぺ…。 もんぺなどというものは➡ 272 00:29:31,645 --> 00:29:35,515 れっきとした士族の娘が 身に着けるものではなか! 273 00:29:35,515 --> 00:29:39,519 では ドロースは? 何ね そのドロースというものは? 274 00:29:39,519 --> 00:29:43,657 西洋婦人が使う下ばきです。 何ば言いよるとね 千代子!➡ 275 00:29:43,657 --> 00:29:49,529 お前は 士族 梅津只圓の娘であり 士族 野中 到の妻ですよ! 276 00:29:49,529 --> 00:29:54,668 女は 身分相応のなりばしないと 人様に笑われます。 277 00:29:54,668 --> 00:30:00,540 あなたばかりでなく 私も… とみ子だって 笑われますけん。 278 00:30:00,540 --> 00:30:04,678 外国では どげんであろうとも 日本では 形が大切です。 279 00:30:04,678 --> 00:30:07,581 ちゃんとした形が 整うとらんかったら➡ 280 00:30:07,581 --> 00:30:11,551 何ばしたところで 意味のなか事です。 281 00:30:11,551 --> 00:30:14,688 (只圓)ばってん 冬の富士山たい。 282 00:30:14,688 --> 00:30:17,591 あれもでけん これもでけんて言ったら➡ 283 00:30:17,591 --> 00:30:20,193 千代子は 登る事ができなくなるたい。 284 00:30:20,193 --> 00:30:24,193 だったら 登らんでもよろしい! 285 00:30:30,704 --> 00:30:35,208 疲れとるので もう休ませて頂きますけん。 286 00:30:35,208 --> 00:30:39,713 失礼します。 あ 千代子…。 287 00:30:39,713 --> 00:30:41,648 千代子…。 288 00:30:41,648 --> 00:31:08,742 ♬~ 289 00:31:08,742 --> 00:31:13,613 郵便ですけん。 まあまあ ご苦労さま。 290 00:31:13,613 --> 00:31:21,613 ♬~ 291 00:31:42,609 --> 00:31:47,581 今日も 千代子は 伏せったままか。 292 00:31:47,581 --> 00:31:53,581 あなた…。 これ とみ子から。 ああ。 293 00:32:07,734 --> 00:32:11,734 ≪(糸子)千代子 入りますよ。 294 00:32:22,749 --> 00:32:27,621 富士山の着物の事だけれど➡ 295 00:32:27,621 --> 00:32:32,192 いろいろ お父様とも 相談してみたとばってん➡ 296 00:32:32,192 --> 00:32:36,696 とにかく寒いのだから 下着などは ある程度➡ 297 00:32:36,696 --> 00:32:41,568 男物ば使わんとならんでしょうね。 298 00:32:41,568 --> 00:32:46,706 でも 私は 士族の娘で 士族の妻です。 299 00:32:46,706 --> 00:32:49,609 そんな はしたない事していいの? 300 00:32:49,609 --> 00:32:53,213 下着が しっかりしとったら 上に着るのは➡ 301 00:32:53,213 --> 00:32:56,716 普通の綿入れの着物で よかでしょう? 302 00:32:56,716 --> 00:33:02,589 そして 一番上には 西洋の婦人が着るような➡ 303 00:33:02,589 --> 00:33:08,728 ほら 襟に毛皮ばついた ラシャの外套ば着たら どげんかしら。 304 00:33:08,728 --> 00:33:12,599 もし 千代子が それでよかと言うのなら➡ 305 00:33:12,599 --> 00:33:16,236 私は 今日中にでも 洋服屋ば呼んで➡ 306 00:33:16,236 --> 00:33:19,236 作らせようと思うてます。 307 00:33:21,107 --> 00:33:26,746 ありがとうございます お母様。 308 00:33:26,746 --> 00:33:29,649 あとは 履物たいね。 309 00:33:29,649 --> 00:33:35,555 実は その事で さっき お父様が 靴屋さんに出かけていきました。 310 00:33:35,555 --> 00:33:38,692 靴屋さんへ? 311 00:33:38,692 --> 00:33:42,562 お父様はね 「少しでも寸法が違うてたら➡ 312 00:33:42,562 --> 00:33:46,199 足にマメが出来て 途中で歩けんごとなるから➡ 313 00:33:46,199 --> 00:33:50,070 今から履き慣らしておかんと でけん」とおっしゃっていました。 314 00:33:50,070 --> 00:33:54,708 本当に ご面倒かけて すみません。 315 00:33:54,708 --> 00:34:00,213 でも… 急に どげんしたんです? 316 00:34:00,213 --> 00:34:04,718 あんなに反対してらしたのに。 317 00:34:04,718 --> 00:34:09,718 東京から 手紙が来たけん。 318 00:34:28,742 --> 00:34:32,612 (とみ子) 「この度の事 誠に残念です。➡ 319 00:34:32,612 --> 00:34:37,551 私は 最初から 嫌な予感がしておりました。➡ 320 00:34:37,551 --> 00:34:40,186 けれど まさか 嫁という立場で➡ 321 00:34:40,186 --> 00:34:43,089 千代子が そこまで勝手する訳がない。➡ 322 00:34:43,089 --> 00:34:46,589 そう 自分に 言い聞かせておりました」。 323 00:34:49,696 --> 00:34:52,599 (清)母上。 324 00:34:52,599 --> 00:34:55,569 あれから考えたのですが➡ 325 00:34:55,569 --> 00:34:58,705 もし 姉さんが 兄さんを手伝いたいと言うなら➡ 326 00:34:58,705 --> 00:35:01,207 むしろ 支援してはどうでしょうか? 327 00:35:01,207 --> 00:35:04,110 千代子はね 母親なのよ。 328 00:35:04,110 --> 00:35:09,716 到にとって 何より気がかりなのは まだ幼い園子の事のはず。 329 00:35:09,716 --> 00:35:14,588 そばに 母親がいるからこそ 安心して 大仕事に臨めるのです。 330 00:35:14,588 --> 00:35:18,725 それなのに 千代子ときたら➡ 331 00:35:18,725 --> 00:35:22,596 園子を預けて 自分も登るだなんて…。 332 00:35:22,596 --> 00:35:28,735 園子を一番に思わない そんな母親がありますか? 333 00:35:28,735 --> 00:35:33,735 私は それが悲しいし 情けないのです。 334 00:35:37,544 --> 00:35:40,680 (糸子) 「どうしても行くというのなら➡ 335 00:35:40,680 --> 00:35:43,583 今すぐ 園子を こちらへ よこしなさい。➡ 336 00:35:43,583 --> 00:35:47,554 それが できぬというのなら 一緒に帰るよう➡ 337 00:35:47,554 --> 00:35:52,554 千代子に お伝え下さい」。 そげん書いてあるわ。 338 00:35:57,697 --> 00:36:02,569 千代子。 あなた 覚悟はあるとね? 339 00:36:02,569 --> 00:36:07,569 まだ乳離れもせん我が子ば 置いていく覚悟。 340 00:36:09,709 --> 00:36:15,582 世間は 言うでしょうね 「なんて母親だ」と。 341 00:36:15,582 --> 00:36:19,582 それでも あなたは 夫の後ば追う気ね? 342 00:36:23,723 --> 00:36:28,723 あの人は 死ぬ気ですけん。 343 00:36:30,597 --> 00:36:36,670 たとえ 死んでもよか。 そう思うてるはずです。 344 00:36:36,670 --> 00:36:43,670 何が何でも この冬 気象観測を やり遂げてみせると。 345 00:36:45,679 --> 00:36:48,581 私は 嫌です。 346 00:36:48,581 --> 00:36:53,553 将来 この子に 「お母様は 何もできなかった。➡ 347 00:36:53,553 --> 00:36:57,691 あなたの面倒 見るしかなかったからよ」と➡ 348 00:36:57,691 --> 00:37:01,561 そげなふうに言うのは。 349 00:37:01,561 --> 00:37:04,564 それよりも➡ 350 00:37:04,564 --> 00:37:09,202 「お母様は お父様と一緒に闘ったのよ」と➡ 351 00:37:09,202 --> 00:37:12,105 「あなたのもとに帰るため➡ 352 00:37:12,105 --> 00:37:16,076 また 家族で一緒に暮らすために 闘ったの」と➡ 353 00:37:16,076 --> 00:37:19,576 そう この子に言いたい。 354 00:37:22,215 --> 00:37:28,088 園子を捨てていく。 そげん思われても構いません。 355 00:37:28,088 --> 00:37:32,659 私は 到さんを この子の父親を➡ 356 00:37:32,659 --> 00:37:36,529 なんとしても うちに連れて帰ります。 357 00:37:36,529 --> 00:37:41,167 生きて 連れて帰ります。 358 00:37:41,167 --> 00:37:52,679 ♬~ 359 00:37:52,679 --> 00:37:57,550 そげなふうに言うだろうと 思うてました。 360 00:37:57,550 --> 00:38:03,690 よか。 山に登る練習ば 始めなさい。 361 00:38:03,690 --> 00:38:07,560 でも この手紙は…? 362 00:38:07,560 --> 00:38:11,564 とみ子には 私から 一筆書くけん。 363 00:38:11,564 --> 00:38:16,703 あなたの決意ば きちんと伝えましょう。 364 00:38:16,703 --> 00:39:03,683 ♬~ 365 00:39:03,683 --> 00:39:05,683 源造さん。 366 00:39:08,555 --> 00:39:12,692 お久しぶりです。 (源造)こりゃ お嬢様! 367 00:39:12,692 --> 00:39:17,530 ああ いや 今は 立派な若奥様で。 368 00:39:17,530 --> 00:39:20,567 すんましぇん。 頂戴致します。 369 00:39:20,567 --> 00:39:24,567 こちらこそ お世話になります。 こちらこそ。 370 00:39:29,709 --> 00:39:32,612 大旦那様から お手紙ば頂きました。 371 00:39:32,612 --> 00:39:36,516 到様と 富士山に お登りになるそうで。 372 00:39:36,516 --> 00:39:41,654 いや~ お国のためとは言いながら それはそれは えらい事ですたい。 373 00:39:41,654 --> 00:39:45,158 これから10日ほど お世話になります。 374 00:39:45,158 --> 00:39:48,061 どげなつらい事でも 我慢しますけん➡ 375 00:39:48,061 --> 00:39:51,030 人並みに歩けるようにして下さい。 376 00:39:51,030 --> 00:39:54,167 もし 山歩きのコツのようなもんが あったら➡ 377 00:39:54,167 --> 00:39:57,670 それも教えて下さいね。 378 00:39:57,670 --> 00:40:23,696 ♬~ 379 00:40:23,696 --> 00:40:28,568 若奥様 今日は もう戻りましょう。 380 00:40:28,568 --> 00:40:32,705 ♬~ 381 00:40:32,705 --> 00:40:35,608 ありゃ~ こりゃ 痛かばい。 382 00:40:35,608 --> 00:40:38,578 お~い おい 焼酎 焼酎! はい。 383 00:40:38,578 --> 00:40:41,578 よう我慢なすったなあ。 384 00:40:44,717 --> 00:40:48,717 ちいとばかし しみますけんが。 385 00:40:51,591 --> 00:40:53,726 こらえてな。 386 00:40:53,726 --> 00:40:59,599 若奥さんの柔らかい足にゃあ こん男物の靴は 合わんですたい。 387 00:40:59,599 --> 00:41:04,737 いっその事 雪沓ば履いてみちゃ どげんやろかね? 388 00:41:04,737 --> 00:41:09,609 雪沓? この辺で 手に入るとね? ああ。 389 00:41:09,609 --> 00:41:14,747 この辺もね たまにゃあ どか雪が降りよるですたい。 390 00:41:14,747 --> 00:41:19,619 雪沓ん事ば この辺じゃ「しんでえ」 と呼びよるとばってんが➡ 391 00:41:19,619 --> 00:41:25,758 ほれ うちの親父が残してくれた しんでえが 2足 ございますけん。 392 00:41:25,758 --> 00:41:29,629 ありがとうございます 源造さん。 393 00:41:29,629 --> 00:41:50,717 ♬~ 394 00:41:50,717 --> 00:41:56,222 (徳三)先生。 いよいよ お籠もりずらか? 395 00:41:56,222 --> 00:41:59,125 はい 行ってきます。 396 00:41:59,125 --> 00:42:29,756 ♬~ 397 00:42:29,756 --> 00:42:33,626 ここが 背振山の頂上か。 はい。 398 00:42:33,626 --> 00:42:39,565 ほら あのずっと向こうに 見えようとが 玄界灘ですたい。 399 00:42:39,565 --> 00:42:51,711 ♬~ 400 00:42:51,711 --> 00:42:54,614 それは 何ですの? 401 00:42:54,614 --> 00:42:57,583 昔 もろうたんです。 402 00:42:57,583 --> 00:43:06,726 ♬~ 403 00:43:06,726 --> 00:43:09,629 [ 回想 ] 背振山の頂上で拾うた。 404 00:43:09,629 --> 00:43:45,629 ♬~ 405 00:43:55,708 --> 00:43:58,611 ちいと急ぎますばい。 406 00:43:58,611 --> 00:44:00,611 はい。 407 00:44:04,717 --> 00:44:09,589 まあ~ こげんなこつになって! 408 00:44:09,589 --> 00:44:13,726 もう履き潰してしまったわ。 フフフフフフ…。 409 00:44:13,726 --> 00:44:19,599 若奥さん お疲れさんで。 明日から わらじですたい。 410 00:44:19,599 --> 00:44:23,236 ばってんね 足の軽すぎたらいかんけんが➡ 411 00:44:23,236 --> 00:44:27,740 これば この鉛棒ば こうやって かましますたい。 412 00:44:27,740 --> 00:44:29,675 はい。 413 00:44:29,675 --> 00:45:26,732 ♬~ 414 00:45:26,732 --> 00:45:28,668 あ~ いやいやいや…。 415 00:45:28,668 --> 00:45:31,571 もう 若奥さんの足には かないません。 416 00:45:31,571 --> 00:45:36,542 だいぶ コツが分かってきました。 足と呼吸ば どう合わせるのか。 417 00:45:36,542 --> 00:45:42,682 ばってんが 冬の富士登山は 命ば 落とす危険がありますけんが➡ 418 00:45:42,682 --> 00:45:45,585 どうか お気を付けて。 419 00:45:45,585 --> 00:45:57,697 ♬~ 420 00:45:57,697 --> 00:46:01,567 園子は? (糸子)今 お昼寝中たい。 421 00:46:01,567 --> 00:46:04,203 よくしたものたいね。 422 00:46:04,203 --> 00:46:07,707 あなたがおらんと 私に すっかり慣れて➡ 423 00:46:07,707 --> 00:46:10,610 時々は 寂しそうな顔ば するばってん➡ 424 00:46:10,610 --> 00:46:16,716 今朝などは もう お乳の事は すっかり忘れたようでしたわ。 425 00:46:16,716 --> 00:46:19,619 そう。 よかった。 426 00:46:19,619 --> 00:46:23,589 園子に お乳ば 思い出させるような事はせんでね。 427 00:46:23,589 --> 00:46:26,589 お互い つらくなるだけやけん。 428 00:46:28,728 --> 00:46:33,728 そういえば 洋服屋から 外套が出来てきたけん。 429 00:46:41,674 --> 00:46:44,674 なかなか似合うとるわ。 430 00:47:30,723 --> 00:47:33,626 お母様とのお別れたい。 431 00:47:33,626 --> 00:47:53,679 ♬~ 432 00:47:53,679 --> 00:47:57,550 お水ば ついでやらんと。 433 00:47:57,550 --> 00:48:28,214 ♬~ 434 00:48:28,214 --> 00:48:31,650 今度は 園子が飲む番たい。 435 00:48:31,650 --> 00:48:57,676 ♬~ 436 00:48:57,676 --> 00:49:00,579 よう でけました。 437 00:49:00,579 --> 00:49:17,579 ♬~ 438 00:49:22,701 --> 00:49:26,701 園子 いらっしゃい。 439 00:49:33,646 --> 00:49:38,517 どうしたの? 最後に お母様と お話ししましょう。 440 00:49:38,517 --> 00:49:40,517 さあ。 441 00:49:47,660 --> 00:49:51,163 園子! もうよか。 442 00:49:51,163 --> 00:49:54,667 園子は まだ小さか。 443 00:49:54,667 --> 00:49:58,537 さあ 今のうちに出らんか。 444 00:49:58,537 --> 00:50:02,541 ばってん このままでは 千代子だって…。 いえ。 445 00:50:02,541 --> 00:50:05,541 よかとです。 446 00:50:08,681 --> 00:50:13,552 私 行きます。 447 00:50:13,552 --> 00:50:17,552 よかとです これで。 448 00:50:30,703 --> 00:50:39,712 ♬~ 449 00:50:39,712 --> 00:50:43,582 達者でおらんと でけんぞ。 はい。 450 00:50:43,582 --> 00:51:00,733 ♬~ 451 00:51:00,733 --> 00:51:03,636 (園子)お母様! 452 00:51:03,636 --> 00:51:10,743 ♬~ 453 00:51:10,743 --> 00:51:13,646 お母様! 454 00:51:13,646 --> 00:51:19,752 ♬~ 455 00:51:19,752 --> 00:51:21,687 止めて下さい! 456 00:51:21,687 --> 00:51:41,073 ♬~ 457 00:51:41,073 --> 00:51:43,075 園子。 458 00:51:43,075 --> 00:51:55,588 ♬~ 459 00:51:55,588 --> 00:51:59,088 鶴さん あげる。 460 00:52:09,735 --> 00:52:12,638 ありがとう。 461 00:52:12,638 --> 00:52:17,610 帰ってきたら また 折ってあげる。 462 00:52:17,610 --> 00:52:21,747 とんぼも 捕まえに行こう。 463 00:52:21,747 --> 00:52:27,620 また あのくしで 髪も きれいにしてあげる。 464 00:52:27,620 --> 00:52:32,691 園子の好きな こんぺいとうも いっぱい買ってくるから➡ 465 00:52:32,691 --> 00:52:35,691 待っててね。 466 00:52:45,704 --> 00:52:49,575 園子は 暑がりだから 冬でも 汗かくの。 467 00:52:49,575 --> 00:52:52,211 夜 見てあげて。 468 00:52:52,211 --> 00:52:54,146 大丈夫たい 千代子。 469 00:52:54,146 --> 00:52:56,715 布団も すぐに 剥いでしまうから。 470 00:52:56,715 --> 00:52:59,218 (糸子)隣で ちゃんと見とるけん。 471 00:52:59,218 --> 00:53:01,720 お風呂も嫌がって 泣いてしまうけど➡ 472 00:53:01,720 --> 00:53:04,623 だっこして入れば 大丈夫だから。 473 00:53:04,623 --> 00:53:11,730 鈴の柄の手拭いが好きだから 寂しがったら 持たせてあげて。 474 00:53:11,730 --> 00:53:16,568 暗い所が苦手だから 夜 ちゃんと お話ししてあげて。 475 00:53:16,568 --> 00:53:19,238 手もつないでね。 476 00:53:19,238 --> 00:53:21,738 それから 朝は…。 千代子。 477 00:53:29,748 --> 00:53:34,748 園子… ごめんね。 478 00:53:37,556 --> 00:53:42,695 ごめんなさい… 園子。 479 00:53:42,695 --> 00:53:53,706 ♬~ 480 00:53:53,706 --> 00:53:57,376 さあ もう行かんね。 481 00:53:57,376 --> 00:54:00,279 ♬~ 482 00:54:00,279 --> 00:54:03,248 (糸子)千代子。➡ 483 00:54:03,248 --> 00:54:09,722 あなたの気持ちは よう分かるけん。 484 00:54:09,722 --> 00:54:17,596 実の娘と離れる そのつらさ 身ば切られるような…。 485 00:54:17,596 --> 00:54:19,796 よう分かっとります。 486 00:54:21,734 --> 00:54:25,604 (千代)だからこそ 行かんね。 487 00:54:25,604 --> 00:54:30,743 母が ここで あなたば引き止める前に。 488 00:54:30,743 --> 00:54:37,549 ♬~ 489 00:54:37,549 --> 00:54:40,552 行かんね。 490 00:54:40,552 --> 00:55:09,581 ♬~ 491 00:55:09,581 --> 00:55:14,720 必ず お迎えに来ますからね。 492 00:55:14,720 --> 00:55:34,673 ♬~ 493 00:55:34,673 --> 00:55:37,576 行ってまいります。 494 00:55:37,576 --> 00:56:34,576 ♬~ 495 00:57:01,693 --> 00:57:09,568 ♬「涙のような 雨が降れば」 496 00:57:09,568 --> 00:57:17,709 ♬「私が傘を 差しかける」 497 00:57:17,709 --> 00:57:26,718 ♬「風が泣いて 寒い夜は」 498 00:57:26,718 --> 00:57:34,526 ♬「あなたが 抱きしめてくれる」 499 00:57:34,526 --> 00:57:43,669 ♬「共に歩み 共に生きて」 500 00:57:43,669 --> 00:57:51,543 ♬「ここまで 来たけれど」 501 00:57:51,543 --> 00:57:56,682 ♬「二人で いられたから」 502 00:57:56,682 --> 00:58:00,552 ♬「怖いものは なかった」 503 00:58:00,552 --> 00:58:08,694 ♬「運命で 結ばれた愛」 504 00:58:08,694 --> 00:58:13,198 ♬「二人を 分かつ時が」 505 00:58:13,198 --> 00:58:17,703 ♬「たとえ 巡り来ようと」 506 00:58:17,703 --> 00:58:24,703 ♬「永遠に 生き続ける愛」