1 00:01:58,092 --> 00:02:03,097 (捕り方たち)御用だ! 御用だ! 御用だ! 御用だ! 御用だ! 2 00:02:03,097 --> 00:02:23,117 ・~ 3 00:02:23,117 --> 00:02:43,137 ・~ 4 00:02:43,137 --> 00:03:03,090 ・~ 5 00:03:03,090 --> 00:03:06,090 ・~ 6 00:03:18,105 --> 00:03:21,108 (悲鳴) 7 00:03:21,108 --> 00:03:34,121 ・~ 8 00:03:34,121 --> 00:03:38,125 (江藤)<このころ 江戸市中には 何者かが徒党を組み・ 9 00:03:38,125 --> 00:03:41,128 商家を襲うという事件が 相次いでおりました> 10 00:03:41,128 --> 00:03:44,131 <我々 町方同心どもは無論のこと・ 11 00:03:44,131 --> 00:03:48,135 この探索に躍起に なっとったわけでございますが・ 12 00:03:48,135 --> 00:03:51,138 そのような 大騒動のさなかにさえ・ 13 00:03:51,138 --> 00:03:53,140 茶汲み女に入れあげて・ 14 00:03:53,140 --> 00:03:59,140 広小路辺りの水茶屋に通い詰める 不埒な輩がおりましてな> 15 00:04:11,091 --> 00:04:16,091 ・(笑い声) ・(女性)もう旦那ったら… 16 00:04:31,111 --> 00:04:36,116 (お葉)すましたって駄目! 見てたでしょう? 17 00:04:36,116 --> 00:04:40,120 (杉山)だって 遅えんだもん 18 00:04:40,120 --> 00:04:43,123 ちょっと! 虎の旦那! 19 00:04:43,123 --> 00:04:47,123 いや! やめて! くすぐったいから う~ん! 20 00:04:52,132 --> 00:04:57,070 ・(杉山)よいしょ! ・(お葉)アハハ… 痛い 21 00:04:57,070 --> 00:05:07,080 ・~ 22 00:05:07,080 --> 00:05:18,091 ・~ 23 00:05:18,091 --> 00:05:21,094 (女中)お邪魔しますよ 24 00:05:21,094 --> 00:05:23,094 ハッ! 25 00:05:27,100 --> 00:05:31,104 アアッ! アッ… 26 00:05:31,104 --> 00:05:33,106 (男性)心中だ! 27 00:05:33,106 --> 00:05:36,106 (男性)おい! 心中だー! 28 00:05:38,111 --> 00:05:41,111 騒々しいな (お葉)何だろうね? 29 00:05:47,120 --> 00:05:51,124 はい どいたどいた! 御免よ御免よ どいた! 道 開けて 30 00:05:51,124 --> 00:05:53,124 (政吉)道 開けろ 31 00:05:56,129 --> 00:05:58,065 まずい… 32 00:05:58,065 --> 00:06:01,065 ちょっと… 旦那? 33 00:06:07,074 --> 00:06:10,077 ・ 見せ物じゃねえぞ ほら! ・ ほら 帰った帰った 34 00:06:10,077 --> 00:06:14,081 見せ物じゃねえんだ ほら! 下がった下がった 35 00:06:14,081 --> 00:06:18,085 行って行って ほら行って 36 00:06:18,085 --> 00:06:21,088 ・(栗原)杉山さん! (杉山)あっ いたっ… 37 00:06:21,088 --> 00:06:24,091 杉山さんでしょう? 何やってんですか? 38 00:06:24,091 --> 00:06:26,093 おう! (狩谷)どうした? 39 00:06:26,093 --> 00:06:29,096 杉山さんがいるんです おう! 40 00:06:29,096 --> 00:06:33,100 いやな 例の盗賊一味探索のため この辺りを巡回中・ 41 00:06:33,100 --> 00:06:37,104 突如として この店より 悲鳴が聞こえて何事かと思いな 42 00:06:37,104 --> 00:06:40,107 (お葉)虎の旦那! 43 00:06:40,107 --> 00:06:43,110 忘れ物 44 00:06:43,110 --> 00:06:46,113 なるほど それは お役目ご苦労さまでござる 45 00:06:46,113 --> 00:06:51,118 ハァ… 何事もな 日ごろの心構えが大切ゆえ… 46 00:06:51,118 --> 00:06:53,120 うん うん… 47 00:06:53,120 --> 00:07:01,061 左耳の下から左首にかけて 傷の深さ およそ1寸 48 00:07:01,061 --> 00:07:05,065 (栗原)男が女の持っていた 剃刀を使って まず女を殺し・ 49 00:07:05,065 --> 00:07:09,069 そのあとで 自分の首を かき切ったということでしょうか 50 00:07:09,069 --> 00:07:12,069 まずは そんなふうだな 51 00:07:14,074 --> 00:07:19,079 この店の女に間違いないか? (店主)はい おりんと申します 52 00:07:19,079 --> 00:07:26,086 気立ての良い優しい娘でしたのに どうして こんなことに… 53 00:07:26,086 --> 00:07:28,088 相手の男は? 54 00:07:28,088 --> 00:07:31,091 さぁ… このところ・ 55 00:07:31,091 --> 00:07:37,097 何度か通ってみえたお方らしゅう ございますが お名前までは… 56 00:07:37,097 --> 00:07:39,099 侍には違えねえようでござんすね 57 00:07:39,099 --> 00:07:44,104 うん この面連れを見ればな 若いが相当な使い手らしい 58 00:07:44,104 --> 00:07:48,108 しかし 剣ひと筋のお侍が こんな水茶屋風情の女と… 59 00:07:48,108 --> 00:07:51,108 世も末でござんすね 60 00:07:53,113 --> 00:07:56,116 しかし 妙じゃねえか? 61 00:07:56,116 --> 00:08:00,053 侍なら なんで てめえの刀 使わねえんだ? 62 00:08:00,053 --> 00:08:03,056 なにも女の剃刀なんかで… 63 00:08:03,056 --> 00:08:07,060 (栗原)いや やはり 道に外れたことゆえ・ 64 00:08:07,060 --> 00:08:10,063 武士の魂を使うのは 気がとがめたんでしょう 65 00:08:10,063 --> 00:08:13,066 だって 死んじまうんだぞ 面子もくそもあるか 66 00:08:13,066 --> 00:08:15,068 (政吉)面子も くそもねえから・ 67 00:08:15,068 --> 00:08:18,071 剃刀でも かまわなかったんじゃ ねえんですかい? 68 00:08:18,071 --> 00:08:29,082 ・~ 69 00:08:29,082 --> 00:08:36,082 ・(行商)栗~ 茄子~ 小松菜 70 00:08:43,096 --> 00:08:45,098 (佳代)えい! 71 00:08:45,098 --> 00:08:47,100 だれ・ 72 00:08:47,100 --> 00:08:50,103 うん… (佳代)兄上 73 00:08:50,103 --> 00:08:52,105 ああ… 74 00:08:52,105 --> 00:08:55,108 どうしたのです? こんな所で 75 00:08:55,108 --> 00:08:58,045 お前に閉め出されたんじゃねえか 76 00:08:58,045 --> 00:09:02,049 そんな… だって どうせ また お泊りかと思ったんですもの 77 00:09:02,049 --> 00:09:04,051 いいんだ いいんだ 78 00:09:04,051 --> 00:09:09,051 女ひとりな 戸締りは ちゃんとしなきゃ 79 00:09:17,064 --> 00:09:22,069 佳代… お前 変な男とくっつくんじゃねえぞ 80 00:09:22,069 --> 00:09:27,074 なぁに? いきなり (杉山)笑い事じゃねえよ 81 00:09:27,074 --> 00:09:33,080 ゆうべ 心中の死体 見てきた 惨めなもんだぞ 82 00:09:33,080 --> 00:09:37,084 ろくでもねえ男と くっつくと そういうことになる 83 00:09:37,084 --> 00:09:39,086 わたしは心中なんかいたしません 84 00:09:39,086 --> 00:09:42,089 (杉山)分かるもんか 85 00:09:42,089 --> 00:09:45,092 第一 お前に その気がなくたって 無理心中ってのがある 86 00:09:45,092 --> 00:09:48,095 寝首かかれたら どうしようもねえからな 87 00:09:48,095 --> 00:09:51,098 じゃ… ろくでもない男でなければ いいんですか? 88 00:09:51,098 --> 00:09:55,102 馬鹿! 男ってものは みんな ろくでもねえんだ 89 00:09:55,102 --> 00:09:57,037 俺が言ってんだから間違いねえ 90 00:09:57,037 --> 00:10:00,040 兄上のおっしゃること 聞いてたら・ 91 00:10:00,040 --> 00:10:03,040 わたしは いかず後家になってしまいます 92 00:10:06,046 --> 00:10:09,049 おい! どこ行くんだ? 93 00:10:09,049 --> 00:10:12,052 おすそ分け おいしく漬かったから狩谷さまに 94 00:10:12,052 --> 00:10:14,054 言ってるはなから… おい 待て! 95 00:10:14,054 --> 00:10:17,057 なんで お前が 狩谷に 漬物 届けなきゃいけねえんだ! 96 00:10:17,057 --> 00:10:21,061 だったら 兄上が お持ちに なりますか? (杉山)俺が? 97 00:10:21,061 --> 00:10:23,063 ええ… (杉山)んな みっともない真似… 98 00:10:23,063 --> 00:10:26,066 でしょう? だから わたしが持っていきます 99 00:10:26,066 --> 00:10:28,068 おい 佳代! 100 00:10:28,068 --> 00:10:31,068 俺の漬物 出てねえじゃねえか 101 00:10:38,078 --> 00:10:47,078 (江藤)淡路屋 港屋 肥前屋と 102 00:10:49,089 --> 00:10:54,094 この3つの大店を襲ったのは 同じ下手人どもだったんだな? 103 00:10:54,094 --> 00:10:58,031 はい 侵入の手口 家人を容赦なく殺害する残虐さは 104 00:10:58,031 --> 00:11:01,034 いずれも似通っております 105 00:11:01,034 --> 00:11:04,037 また 生き残った家人たちの申し状も・ 106 00:11:04,037 --> 00:11:10,043 賊は皆 一様に覆面で顔を 覆った侍であったとのことです 107 00:11:10,043 --> 00:11:12,045 侍が盗っ人の真似するのか? 108 00:11:12,045 --> 00:11:17,050 (小室)いや 侍と申しても どうせが食い詰めた浪人ども 109 00:11:17,050 --> 00:11:19,052 腹を減らした野良犬どもが・ 110 00:11:19,052 --> 00:11:22,055 ごみ箱をあさってるようなもので ござりましょう 111 00:11:22,055 --> 00:11:26,059 今の世の中 禄を失った そのような手合い・ 112 00:11:26,059 --> 00:11:29,062 ごろごろしておりますからな (江藤)いやいやいや 113 00:11:29,062 --> 00:11:32,065 しかしな そういった連中が 徒党を組んだとなると・ 114 00:11:32,065 --> 00:11:35,068 こりゃ 尋常ならざる事態だぞ 115 00:11:35,068 --> 00:11:40,073 3件続いたからには 捨て置けば 4件目 5件目が出る 116 00:11:40,073 --> 00:11:44,077 火付盗賊改方のほうでも 内密に 動きだしたもようでございます 117 00:11:44,077 --> 00:11:48,081 我らとしても より一層 市中の警護を固め・ 118 00:11:48,081 --> 00:11:51,084 これ以上の被害を 食い止めねばなりません 119 00:11:51,084 --> 00:11:53,086 杉山さん! 120 00:11:53,086 --> 00:11:55,088 うん? 121 00:11:55,088 --> 00:11:59,092 どうした? 病気か? (杉山)いえ 122 00:11:59,092 --> 00:12:03,096 杉山どのは こないだの心中事件が気になって 123 00:12:03,096 --> 00:12:05,098 なんとなく落ち着かんのです おいおい… 124 00:12:05,098 --> 00:12:10,103 心中と言うなよ 「相対死に」と言え 125 00:12:10,103 --> 00:12:15,108 あのな 心中という字はな・ 126 00:12:15,108 --> 00:12:20,113 「忠義」の「忠」という字を 2つに分けて 逆さにしたもの 127 00:12:20,113 --> 00:12:22,115 けしからぬと こう仰せられてな 128 00:12:22,115 --> 00:12:27,120 8代将軍 吉宗公が お考えになったお言葉だ 129 00:12:27,120 --> 00:12:31,124 ほぅ… 相対死に そうですか 130 00:12:31,124 --> 00:12:34,127 その男の身元は分かったのか? 131 00:12:34,127 --> 00:12:36,129 はっ そちらのほうも まあ・ 132 00:12:36,129 --> 00:12:40,133 手分けして当たっておりますが まだ なんとも… 133 00:12:40,133 --> 00:12:43,136 あれこれ忙しいからって 適当にやってるんじゃあるめえな 134 00:12:43,136 --> 00:12:45,138 いえいえ とんでもない 135 00:12:45,138 --> 00:12:49,142 おい 虎! お前 そっちのほう 専任に当たってみるか? 136 00:12:49,142 --> 00:12:51,144 よろしいのですか? (江藤)おお 狩谷 137 00:12:51,144 --> 00:12:53,146 はい お前も ちょっと手ぇ貸してな・ 138 00:12:53,146 --> 00:12:55,148 早いとこ 片つけてやってくれ… なっ! 139 00:12:55,148 --> 00:12:58,084 あと 浪人組の大事件を 控えておきながら・ 140 00:12:58,084 --> 00:13:01,087 ああやって ぽっとされてたんじゃ お前 話にならん 本当に 141 00:13:01,087 --> 00:13:03,089 無理もありません 142 00:13:03,089 --> 00:13:06,092 虎どのは 偶然 現場に居合わせられたのだから 143 00:13:06,092 --> 00:13:11,097 表通りを巡回中に… なぁ? うん 144 00:13:11,097 --> 00:13:15,101 一方では盗っ人 一方では心中か… 145 00:13:15,101 --> 00:13:18,104 侍の暮らしも よほど極まったとみえるな 146 00:13:18,104 --> 00:13:20,106 せちがらい世の中じゃ 147 00:13:20,106 --> 00:13:22,108 (小室)おやじどの (江藤)うん? 148 00:13:22,108 --> 00:13:25,111 相対死にでござりまするぞ 149 00:13:25,111 --> 00:13:29,115 おっ おお… 相対死に うん 150 00:13:29,115 --> 00:13:32,115 相対死にだぞ (一同)はい 151 00:13:35,121 --> 00:13:37,121 (政吉)おっ 旦那 152 00:13:40,126 --> 00:13:42,128 亀戸の木村道場? 153 00:13:42,128 --> 00:13:45,131 …と いいやしても ちっぽけな町道場でござんしてね 154 00:13:45,131 --> 00:13:48,134 土地のごろつきや やくざ連中に 「やっとう」を教えてるんでさぁ 155 00:13:48,134 --> 00:13:50,136 その道場の 指南の1人だったってことか? 156 00:13:50,136 --> 00:13:52,138 (徳次郎)へい! 157 00:13:52,138 --> 00:13:55,141 たまたま あっしのダチ公の1人が そこに通ってるんでござんす 158 00:13:55,141 --> 00:13:57,077 3人ばっかりの先生のうちの1人が 159 00:13:57,077 --> 00:14:01,081 2~3日前から ばったり 姿を見せねえそうなんです 160 00:14:01,081 --> 00:14:08,088 でね その消えちまったって訳が どうやら女絡みらしいんで… 161 00:14:08,088 --> 00:14:10,090 その男の名前は? 162 00:14:10,090 --> 00:14:12,092 相崎富次郎 163 00:14:12,092 --> 00:14:16,096 7~8年前 お取り潰しになった 肥前の小さな藩の侍だったそうで 164 00:14:16,096 --> 00:14:19,099 そいつの身寄りは? (徳次郎)兄貴が1人 165 00:14:19,099 --> 00:14:23,103 体が弱いらしくて 柳島妙見堂の 裏辺りのしもた屋で・ 166 00:14:23,103 --> 00:14:28,108 2人 細々と暮らしていたんでさぁ (杉山)柳島妙見堂… 167 00:14:28,108 --> 00:14:30,110 (政吉)いやいや どこへ? 168 00:14:30,110 --> 00:14:33,113 決まってんじゃねえか その兄貴の家だよ (政吉)えっ? 169 00:14:33,113 --> 00:14:36,116 俺は道場のほう当たってみる あっ 旦那! 170 00:14:36,116 --> 00:14:39,119 亀戸の木村道場だったな 171 00:14:39,119 --> 00:14:41,121 あっ ああ… 172 00:14:41,121 --> 00:14:45,125 なんだ? どうしたんだ? (政吉)えっ? いや あのぅ… 173 00:14:45,125 --> 00:14:48,128 旦那方の行き先を 取っ替えたほうが良かったんじゃ 174 00:14:48,128 --> 00:14:51,131 どっちが どっち行ったって 同じことじゃねえか 175 00:14:51,131 --> 00:14:53,133 いや そりゃ そうなんですけどね ちょっと… 176 00:14:53,133 --> 00:14:56,136 ちょっと 何なんだ? (徳次郎)いや その兄貴の・ 177 00:14:56,136 --> 00:14:59,072 惣一郎っていうのがですね 一度 会ったことがあるんですが・ 178 00:14:59,072 --> 00:15:02,075 相当に強情な変わった野郎でして (杉山)だから 何なんだよ 179 00:15:02,075 --> 00:15:05,078 いやいや あの… 杉山の旦那 気が短えでしょう? 180 00:15:05,078 --> 00:15:08,081 先方と けんかするんじゃねえかと思って 181 00:15:08,081 --> 00:15:11,084 馬鹿言ってんじゃないよ お前 (政吉)えっ? 182 00:15:11,084 --> 00:15:14,087 んなことで いちいち腹立ってたら この稼業 務まんねえだろうが 183 00:15:14,087 --> 00:15:16,087 何年やってると思ってんだ? 184 00:15:18,091 --> 00:15:20,093 ・(杉山) いいかげんにしろ この野郎! 185 00:15:20,093 --> 00:15:23,096 行方知れずの弟のことで わざわざ足運んで聞いてるのが… 186 00:15:23,096 --> 00:15:25,098 旦那! 187 00:15:25,098 --> 00:15:27,100 待てい! あいさつの しようがあるだろうが! 188 00:15:27,100 --> 00:15:29,102 何とか言え さんぴん! ええ? 189 00:15:29,102 --> 00:15:33,106 ちょっと待て なに黙ってんだ? 聞こえねえのか? この野郎 190 00:15:33,106 --> 00:15:35,108 うんとかすんとか言ってみろ! おい! 191 00:15:35,108 --> 00:15:39,112 (惣一郎)弟ではない (杉山)なに・ 192 00:15:39,112 --> 00:15:42,115 弟は心中などせん 193 00:15:42,115 --> 00:15:44,117 面白いじゃねえかよ! 194 00:15:44,117 --> 00:15:46,119 だったら お前の弟 出してもらおうじゃねえか! 195 00:15:46,119 --> 00:15:48,121 どこで何やってんだ? 生きてんだろう? ええ? 196 00:15:48,121 --> 00:15:51,124 そんな弟は わたしにはおらん 197 00:15:51,124 --> 00:15:54,127 馬鹿野郎! 調べはついてる (徳次郎)ちょっと旦那… 198 00:15:54,127 --> 00:15:56,129 ちょっと待て! (政吉)旦那! 199 00:15:56,129 --> 00:15:59,065 おい! 大きな声出すぞ こら! (徳次郎)旦那 行きましょう! 200 00:15:59,065 --> 00:16:03,065 ・(杉山) 分かったから離せ 分かった 201 00:16:09,075 --> 00:16:15,075 ・(掛け声) 202 00:16:22,088 --> 00:16:32,088 (掛け声) 203 00:16:42,108 --> 00:16:45,111 (木村)相崎富次郎… 204 00:16:45,111 --> 00:16:51,117 いや 確かに彼ならば 当道場の指南を願っておりますが 205 00:16:51,117 --> 00:16:53,119 何か? 206 00:16:53,119 --> 00:16:58,057 実は 下谷広小路の いち村と申す水茶屋で・ 207 00:16:58,057 --> 00:17:04,063 相対死にを遂げた侍がござってな 相対死に? 208 00:17:04,063 --> 00:17:09,068 その死んだ侍が 富次郎どのだと申されるのか? 209 00:17:09,068 --> 00:17:13,072 いや そうと はっきりしたわけではござらん 210 00:17:13,072 --> 00:17:15,074 うむ… 211 00:17:15,074 --> 00:17:19,078 富次郎どのは ここ数日 姿を見せられんそうですな 212 00:17:19,078 --> 00:17:21,080 うむ… 213 00:17:21,080 --> 00:17:26,085 何の連絡もないので 心配しておったのだが… 214 00:17:26,085 --> 00:17:31,090 相手の女というのは その… いち村の茶汲み女でござるか? 215 00:17:31,090 --> 00:17:34,090 さようです うむ… 216 00:17:36,095 --> 00:17:42,101 いや しかし これは恐らく 富次郎どのに間違いはあるまい 217 00:17:42,101 --> 00:17:48,107 茶汲み女との話は 前々から聞いておりましたからな 218 00:17:48,107 --> 00:17:53,112 困窮し 仕官の夢もままならず・ 219 00:17:53,112 --> 00:17:57,050 自暴自棄となったうえでの ことでござろう 220 00:17:57,050 --> 00:18:01,054 その気持ちは よく分かる 221 00:18:01,054 --> 00:18:04,057 しかし 彼の思いもさることながら・ 222 00:18:04,057 --> 00:18:09,062 兄 惣一郎どのの気持ちも思えば 更に また… 223 00:18:09,062 --> 00:18:12,065 兄のお気持ちでござるか? 224 00:18:12,065 --> 00:18:18,071 さよう 富次郎どのの兄上は 惣一郎どのと申されてな 225 00:18:18,071 --> 00:18:24,077 剣の腕も立ち 軍学にも深く 精進された立派な人物でござる 226 00:18:24,077 --> 00:18:27,080 お家が没落したのち・ 227 00:18:27,080 --> 00:18:31,084 兄弟で縁故を頼って この江戸へ出てこられたのだが・ 228 00:18:31,084 --> 00:18:35,088 不運にも 程なく 肺の病に倒れられた 229 00:18:35,088 --> 00:18:38,091 それ以来 ご自身の仕官の道はあきらめて・ 230 00:18:38,091 --> 00:18:44,091 ただひたすら 弟 富次郎どのに 己の夢を託してこられたのだ 231 00:18:46,099 --> 00:18:50,103 その富次郎どのを 亡くされたとあっては・ 232 00:18:50,103 --> 00:18:53,106 心底 いかばかりであろうか… 233 00:18:53,106 --> 00:18:55,108 いや しかし こうしたことは・ 234 00:18:55,108 --> 00:18:59,045 なにも相崎どのご兄弟に 限ったことではござらん 235 00:18:59,045 --> 00:19:03,049 主家を失った浪々の者たちは皆・ 236 00:19:03,049 --> 00:19:08,054 多かれ少なかれ 似たような境遇でござる 237 00:19:08,054 --> 00:19:12,058 それがしが この貧乏道場を開き・ 238 00:19:12,058 --> 00:19:16,062 こうした浪々の者たちを 雇い入れておるのも・ 239 00:19:16,062 --> 00:19:20,066 少しでも 彼らの暮らしの 支えになればと思うてのこと 240 00:19:20,066 --> 00:19:23,069 言わせてもらえば・ 241 00:19:23,069 --> 00:19:31,077 彼らの苦境に対し 何の救済策も 立てようとはせぬ幕府へ対しての 242 00:19:31,077 --> 00:19:35,077 せめてもの抵抗でござるよ 243 00:19:41,087 --> 00:19:44,090 なるほどな… 244 00:19:44,090 --> 00:19:51,097 まあ 同情すべき点は 多々あるが… う~ん… 245 00:19:51,097 --> 00:19:56,102 といってな わしらの力じゃ いかんとも し難い 246 00:19:56,102 --> 00:20:03,042 まあ… 相対死にの一件は これにて落着だな 247 00:20:03,042 --> 00:20:06,045 一応 身元も判明しましたので… 248 00:20:06,045 --> 00:20:09,048 一応? 一応も二応もあるまい 249 00:20:09,048 --> 00:20:15,054 身元が分かれば それで しまいだ これ以上 何を調べることがある? 250 00:20:15,054 --> 00:20:18,057 うん それは そうなんだけどな… 251 00:20:18,057 --> 00:20:23,062 剃刀のことか? (杉山)それもあるんだけどな… 252 00:20:23,062 --> 00:20:26,065 なんだよ お前 はっきりしねえな 253 00:20:26,065 --> 00:20:30,069 さぁ どうぞ 白玉 召し上がってくださいな 254 00:20:30,069 --> 00:20:35,074 まあ 好きなだけやらせてあげれば よろしいじゃございませんか 255 00:20:35,074 --> 00:20:38,077 虎どのにとっては ひと事ではないのですから 256 00:20:38,077 --> 00:20:40,079 どうぞ (杉山)どうも 257 00:20:40,079 --> 00:20:43,082 あの それはどういう意味ですか? (ゆい)うん? 258 00:20:43,082 --> 00:20:50,089 茶屋の女に入れあげて 魂を吸い取られた男の末路… 259 00:20:50,089 --> 00:20:53,092 気をつけんと 虎も そうなるという意味だ 260 00:20:53,092 --> 00:20:56,095 馬鹿野郎! ご新造 そこまで言ってるかよ? 261 00:20:56,095 --> 00:21:00,032 そうですよ これから言うつもりでしたけど 262 00:21:00,032 --> 00:21:03,035 いやいや 杉山さんが気にしてるのは・ 263 00:21:03,035 --> 00:21:05,037 惣一郎と申す兄のことなんです 264 00:21:05,037 --> 00:21:08,040 まあ いろんなことが気になる奴だな 265 00:21:08,040 --> 00:21:12,044 しかし 確かに 引っ掛かります その道場主の言葉どおりであれば 266 00:21:12,044 --> 00:21:16,048 惣一郎にとっては 掛けがえのない弟のはず 267 00:21:16,048 --> 00:21:18,050 その弟のことだというのに・ 268 00:21:18,050 --> 00:21:21,050 実に つっけんどんな 態度だったらしゅうございまして 269 00:21:23,055 --> 00:21:25,057 恥じておるのではないか? 270 00:21:25,057 --> 00:21:28,060 あ~ 武士に あるまじき死に方をしたことを 271 00:21:28,060 --> 00:21:34,060 うん… そうかもしれん それにしてもな… 272 00:21:36,068 --> 00:21:38,070 狩谷 はい 273 00:21:38,070 --> 00:21:41,073 その道場主ってのは 信用できるのか? 274 00:21:41,073 --> 00:21:47,079 人格者のようです 世の中を憂い 浪々の者たちの苦境を・ 275 00:21:47,079 --> 00:21:50,082 我がことのように 思い悩んでる様子でございました 276 00:21:50,082 --> 00:21:56,088 ふ~ん ああ 立派なもんだな 277 00:21:56,088 --> 00:21:59,091 さよう 頭が下がります 278 00:21:59,091 --> 00:22:03,095 爪の垢でも煎じて 飲みたいほどですな 279 00:22:03,095 --> 00:22:20,112 ・~ 280 00:22:20,112 --> 00:22:25,112 (木村)富次郎のこと 聞いたぞ 281 00:22:32,124 --> 00:22:36,128 返す返すも残念なことだ 282 00:22:36,128 --> 00:22:44,136 同心どもが心中だと申すからには 心中に違いあるまい 283 00:22:44,136 --> 00:22:51,143 しかし こうなったのは 一体 誰のせいだ? 284 00:22:51,143 --> 00:22:55,143 こうまで富次郎を迷わせたのは? 285 00:22:57,083 --> 00:23:02,088 奴は 我らと志を一にしておった 286 00:23:02,088 --> 00:23:06,092 腕も立ち 頼もしい味方だった 287 00:23:06,092 --> 00:23:09,095 その富次郎が変節したのは・ 288 00:23:09,095 --> 00:23:13,099 あながち 女のためばかりではあるまい 289 00:23:13,099 --> 00:23:17,103 家を再興するという ちっぽけな夢のために・ 290 00:23:17,103 --> 00:23:21,103 貴様が 富次郎を追い詰めたのだ 291 00:23:26,112 --> 00:23:30,116 貴公に何が分かる? 292 00:23:30,116 --> 00:23:34,120 甘言を弄して仲間に引き入れ・ 293 00:23:34,120 --> 00:23:41,127 その心の迷いにつけ込んで 我が弟を思うさま 引き回した… 294 00:23:41,127 --> 00:23:45,131 貴公に何が分かる? (木村)黙れ! 295 00:23:45,131 --> 00:23:47,133 俺たちの やっていることは世直しだ 296 00:23:47,133 --> 00:23:51,137 天下のためにやっているのだ 297 00:23:51,137 --> 00:23:56,142 俺たちにくみした富次郎とて その一途な思いはあった 298 00:23:56,142 --> 00:23:58,142 それが支えだった 299 00:24:00,079 --> 00:24:05,084 その支えを失い それがために道に迷い 300 00:24:05,084 --> 00:24:11,090 ついには 侍として 恥ずべき死を遂げたのだ 301 00:24:11,090 --> 00:24:29,108 ・~ 302 00:24:29,108 --> 00:24:31,110 忘れるな! 303 00:24:31,110 --> 00:24:36,115 富次郎を殺したのは貴様だぞ 304 00:24:36,115 --> 00:24:56,115 ・~ 305 00:25:21,093 --> 00:25:24,093 なんか やりきれねえな 306 00:25:27,099 --> 00:25:29,099 なぁ お葉 307 00:25:31,103 --> 00:25:36,108 男がよ 一生懸命 頼み込んだら・ 308 00:25:36,108 --> 00:25:40,108 女は 一緒に死んでやろうって 気になるもんか? 309 00:25:42,114 --> 00:25:45,117 優しい子だったからね おりんちゃんは 310 00:25:45,117 --> 00:25:48,117 ほろりとしたんだろう 311 00:25:50,122 --> 00:25:54,126 それじゃ まるで観音さまじゃねえか 312 00:25:54,126 --> 00:25:58,064 そんなふうだったよ おりんちゃん 313 00:25:58,064 --> 00:26:04,070 それに あの男の人は おりんちゃんにとっては・ 314 00:26:04,070 --> 00:26:08,074 まるっきり ほかの客とは違う感じだったから 315 00:26:08,074 --> 00:26:13,079 初めて店に来たときも おりんちゃんは… 316 00:26:13,079 --> 00:26:18,084 ううん あの男の人も そうだったけど・ 317 00:26:18,084 --> 00:26:22,088 まるで雷にでも打たれたふうで 318 00:26:22,088 --> 00:26:25,091 雷か… (お葉)そう 319 00:26:25,091 --> 00:26:28,091 一目惚れしたみたいに… 320 00:26:30,096 --> 00:26:35,101 でもね あたし こんなこと言うの なんだけど・ 321 00:26:35,101 --> 00:26:41,107 あの2人が心中したなんて とっても信じられないんだよ 322 00:26:41,107 --> 00:26:44,110 どうしてだ? 323 00:26:44,110 --> 00:26:49,115 だって おりんちゃんは あの人と一緒になるんだって 324 00:26:49,115 --> 00:26:51,117 そりゃ うれしそうに 325 00:26:51,117 --> 00:26:54,120 やっと幸せになれるんだって・ 326 00:26:54,120 --> 00:26:58,120 その日が来るのを 指折り数えて待ってたんだよ 327 00:27:00,059 --> 00:27:03,062 本当に おりんちゃんは・ 328 00:27:03,062 --> 00:27:07,066 あの人と会ってから 人が変わったようで… 329 00:27:07,066 --> 00:27:09,066 明るくなって… 330 00:27:12,071 --> 00:27:17,076 あたし 一度だけ2人でいる部屋を のぞいたことがあるんだよ 331 00:27:17,076 --> 00:27:20,079 悪気はなかったんだよ 332 00:27:20,079 --> 00:27:26,085 ただ 廊下を歩いてたら 歌が聞こえてきたもんだから 333 00:27:26,085 --> 00:27:28,087 ・(おりんと富次郎の笑い声) 334 00:27:28,087 --> 00:27:34,093 ・♪(おりん)ゆきや こ~ろ 335 00:27:34,093 --> 00:27:40,099 ・♪(富次郎)あられや こ~ろ 336 00:27:40,099 --> 00:27:47,106 ♪(2人)天竺橋の橋の下 337 00:27:47,106 --> 00:27:52,111 ♪ 烏が3匹とまった~ 338 00:27:52,111 --> 00:27:55,114 (笑い声) 339 00:27:55,114 --> 00:28:15,067 ♪~ 340 00:28:15,067 --> 00:28:19,071 ♪~ 341 00:28:19,071 --> 00:28:25,077 本当に楽しそうに 幸せそうに… 342 00:28:25,077 --> 00:28:27,079 まるで… 343 00:28:27,079 --> 00:28:33,079 子供のころに戻ったみたいにして 歌ってるんだよ 2人で 344 00:28:36,088 --> 00:28:41,093 ねえ 旦那! そんな2人が死んじまうかい? 345 00:28:41,093 --> 00:28:45,093 急に心中だなんて… そんなことするかい? 346 00:28:47,099 --> 00:28:49,099 (ため息) 347 00:28:52,104 --> 00:29:00,045 相崎! 相崎! 俺だ 話がある 開けてくれ 348 00:29:00,045 --> 00:29:02,045 ・ 相崎! 349 00:29:04,049 --> 00:29:06,049 開いてるぞ 350 00:29:13,058 --> 00:29:19,064 弟のことは聞いた 気持ちは分かる 悪いようにはせん 351 00:29:19,064 --> 00:29:22,067 今後のことについて よく話し合おうではないか 352 00:29:22,067 --> 00:29:24,069 ウワーッ! 353 00:29:24,069 --> 00:29:34,079 ・~ 354 00:29:34,079 --> 00:29:47,092 ・~ 355 00:29:47,092 --> 00:29:49,094 召し捕れ (政吉)へい 356 00:29:49,094 --> 00:29:52,097 大丈夫か? 傷は? 357 00:29:52,097 --> 00:29:55,100 いや… 358 00:29:55,100 --> 00:29:59,100 旦那! 舌を噛み切りやした 359 00:30:04,043 --> 00:30:07,043 どういうことか 聞かしてもらうぞ 360 00:30:10,049 --> 00:30:13,052 死ぬはずねえ… 361 00:30:13,052 --> 00:30:17,056 確かに 死ぬはずねえよな 362 00:30:17,056 --> 00:30:20,056 そんな2人が死ぬわけがねえ 363 00:30:24,063 --> 00:30:34,073 ・~ 364 00:30:34,073 --> 00:30:36,073 (お葉)どうしたの? 365 00:30:38,077 --> 00:30:40,077 なぁ お葉 366 00:30:43,082 --> 00:30:48,087 この帯揚げな 襦袢に締めたりするか? 367 00:30:48,087 --> 00:30:50,089 ないと思うけど… 368 00:30:50,089 --> 00:30:55,094 慌てて しごきが 見つからなかったりすれば 369 00:30:55,094 --> 00:30:58,094 慌てて 心中なんかするかよ 370 00:31:03,035 --> 00:31:10,035 しごきじゃなかった… 帯揚げだったんだな 371 00:31:13,045 --> 00:31:16,048 分かった 372 00:31:16,048 --> 00:31:21,048 ざまあみろ! 分かった! (お葉)ちょっと… 旦那! 373 00:31:28,060 --> 00:31:34,066 こいつらの面には見覚えがある 木村道場の連中だ 374 00:31:34,066 --> 00:31:39,071 それが どうして おぬしを襲わなきゃならんのだ? 375 00:31:39,071 --> 00:31:42,074 どうしたんでい? 殺されかけたんだぜ 376 00:31:42,074 --> 00:31:45,077 なにも 義理立てすることはあるめえ 377 00:31:45,077 --> 00:31:50,077 誰をかばってる? 弟か? 378 00:31:52,084 --> 00:31:56,088 富次郎も あの道場の師範の1人だったな? 379 00:31:56,088 --> 00:31:59,088 …となると つながりは ひとつだ 380 00:32:01,093 --> 00:32:04,093 あの道場には 何かがあると にらんでた 381 00:32:06,098 --> 00:32:11,103 富次郎の相対死にも どうやら それと かかわりがあるらしいな 382 00:32:11,103 --> 00:32:14,106 違う 383 00:32:14,106 --> 00:32:16,106 何が違う? 384 00:32:20,112 --> 00:32:23,115 富次郎は勝手に死んだんだ 385 00:32:23,115 --> 00:32:28,120 この兄の期待を裏切り 女におぼれて… 386 00:32:28,120 --> 00:32:33,120 そんな男は… そんな男は もはや弟ではない 387 00:32:40,132 --> 00:32:44,132 富次郎は 俺の夢だった 388 00:32:47,139 --> 00:32:49,139 だから あの日… 389 00:32:53,145 --> 00:32:56,145 (女性)やめてくださいよ 390 00:33:00,085 --> 00:33:06,091 (惣一郎)富次郎 分からぬか この兄の気持ちが 391 00:33:06,091 --> 00:33:12,097 いや この思いは 兄だけのものではない 392 00:33:12,097 --> 00:33:17,102 亡き父上も そして母上も お前の手で・ 393 00:33:17,102 --> 00:33:22,102 今一度 相崎の家を立て直すことを 望んでいるはずだ 394 00:33:24,109 --> 00:33:28,113 お前に その夢を託したのだ 395 00:33:28,113 --> 00:33:35,113 そのために これまでの辛苦を耐えてきた 396 00:33:37,122 --> 00:33:45,122 その夢を捨てることは 父も母も捨てることだぞ 397 00:33:48,133 --> 00:33:52,137 そして この兄もな 398 00:33:52,137 --> 00:33:59,137 分かるか? 分かるか? 富次郎 399 00:34:03,081 --> 00:34:07,085 馬鹿め 馬鹿者め 400 00:34:07,085 --> 00:34:13,091 かつて ただの一度もこの兄に 背いたことのなかった富次郎が・ 401 00:34:13,091 --> 00:34:20,098 たかが女のために しかも 心中などと… 402 00:34:20,098 --> 00:34:31,109 ・~ 403 00:34:31,109 --> 00:34:34,112 相崎 俺は こう思う 404 00:34:34,112 --> 00:34:39,117 富次郎は やけになって 女におぼれたわけじゃない 405 00:34:39,117 --> 00:34:43,121 ようやく 安息の場所を見つけたんだ 406 00:34:43,121 --> 00:34:46,124 やっと てめえに戻れたんだよ 407 00:34:46,124 --> 00:34:48,126 なに? 408 00:34:48,126 --> 00:34:51,126 おぬしの言った 仕官の夢ってやつ 409 00:34:53,131 --> 00:34:58,070 そいつは富次郎にとっちゃ 大変な重荷だったんじゃねえか? 410 00:34:58,070 --> 00:35:02,074 おぬしは そうやって お題目を唱えてりゃいいが・ 411 00:35:02,074 --> 00:35:05,077 当人は そうはいかん 412 00:35:05,077 --> 00:35:12,084 今のご時世 どこの大名も 苦しい台所を抱えてるからな 413 00:35:12,084 --> 00:35:15,087 少々 腕が立とうが 学問ができようが・ 414 00:35:15,087 --> 00:35:21,087 新規にお召し抱えになる道 なんてのは開けるはずもない 415 00:35:23,095 --> 00:35:27,095 つらかったろうぜ 富次郎は 416 00:35:31,103 --> 00:35:34,106 それに たかが女って言うけどな・ 417 00:35:34,106 --> 00:35:38,106 富次郎にとっちゃ それが救いだったんだ 418 00:35:40,112 --> 00:35:43,115 ほっとしたんだぜ 富次郎は きっと… 419 00:35:43,115 --> 00:35:49,121 行き場を失って さまよっていた地獄から・ 420 00:35:49,121 --> 00:35:53,125 やっと広い世界に抜け出したんだ 421 00:35:53,125 --> 00:35:59,064 生きていく望みも 見つけだしたに違いない 422 00:35:59,064 --> 00:36:02,067 そうは思わんか? 423 00:36:02,067 --> 00:36:06,071 それならば なぜ死ぬ? 424 00:36:06,071 --> 00:36:12,077 生きる望みを見いだしたと いうならば なぜ生きん? 425 00:36:12,077 --> 00:36:14,079 確かに富次郎は・ 426 00:36:14,079 --> 00:36:21,086 侍を捨てて 女と所帯を 持ちたいと言っておった 427 00:36:21,086 --> 00:36:26,086 なぜ そうせぬ? なぜ心中などと… 428 00:36:28,093 --> 00:36:31,096 さて そこだ 429 00:36:31,096 --> 00:36:34,099 俺にも もうひとつ分からんのだが・ 430 00:36:34,099 --> 00:36:39,104 何かあるとすれば 道場のことしかない 431 00:36:39,104 --> 00:36:41,106 道場? 432 00:36:41,106 --> 00:36:44,106 道場で 富次郎は何をやっていた? 433 00:36:47,112 --> 00:36:53,112 連中と徒党を組んで 弱い者を いたぶってたんじゃねえのか? 434 00:36:55,120 --> 00:36:59,057 てめえらに 都合のいい理屈をつけて・ 435 00:36:59,057 --> 00:37:03,057 罪のない人間を 殺してたんじゃねえのか? 436 00:37:06,064 --> 00:37:11,064 市中を荒らし回ってんのは 木村道場の連中だな? 437 00:37:13,071 --> 00:37:18,076 相崎! まだ隠すつもりか・ 438 00:37:18,076 --> 00:37:22,076 ・(雷鳴) 439 00:37:34,092 --> 00:37:39,097 相崎 おぬしが しゃべりたくない気持ちは分かる 440 00:37:39,097 --> 00:37:42,100 弟の名誉を 守りたい気持ちは分かる 441 00:37:42,100 --> 00:37:45,103 しかし そいつは間違ってるぜ 442 00:37:45,103 --> 00:37:48,103 今のままじゃ 富次郎は かえって浮かばれんぞ 443 00:37:50,108 --> 00:37:53,111 きれいにしてやれ 444 00:37:53,111 --> 00:38:00,111 何もかもぶちまけて きれいな体にして眠らせてやれ 445 00:38:04,055 --> 00:38:10,061 そうすりゃ 富次郎は きっと喜んでくれる 446 00:38:10,061 --> 00:38:29,061 ・~ 447 00:38:31,082 --> 00:38:46,097 ・~ 448 00:38:46,097 --> 00:38:49,100 (杉山)相崎! 449 00:38:49,100 --> 00:38:51,102 相崎! (政吉)虎の旦那! 450 00:38:51,102 --> 00:38:53,104 一体 どうしたんでえ? 451 00:38:53,104 --> 00:38:55,106 政吉 お前 なんで ここにいんだよ 452 00:38:55,106 --> 00:38:57,042 いや あっしゃ 狩谷の旦那と… (杉山)狩谷もいるのか・ 453 00:38:57,042 --> 00:38:59,044 たった今 道場のほうへ (杉山)呼び戻せ 454 00:38:59,044 --> 00:39:01,046 えっ? (杉山)いいから すぐに呼んでこい 455 00:39:01,046 --> 00:39:04,049 この野郎のからくり 見破ったんだ 456 00:39:04,049 --> 00:39:06,051 弟とおりん殺ったのは こいつだよ (政吉)旦那… 457 00:39:06,051 --> 00:39:08,053 いいから! 狩谷 すぐ呼んでこい! 458 00:39:08,053 --> 00:39:10,053 分かりました 459 00:39:14,059 --> 00:39:18,063 心中なんかじゃねえ 心中に 見せかけて お前が殺したんだ! 460 00:39:18,063 --> 00:39:20,065 いいか? 461 00:39:20,065 --> 00:39:24,069 長襦袢 着てたおりんはな しごきじゃなくて帯揚げ結んでた 462 00:39:24,069 --> 00:39:26,071 あれは おりんが結んだんじゃねえ 463 00:39:26,071 --> 00:39:29,074 おりんが間違えるはずねえ! 誰か ほかの者がやったんだよ 464 00:39:29,074 --> 00:39:33,078 なに・ 真か? それは間違いないか? 465 00:39:33,078 --> 00:39:36,081 とぼけたこと言ってんじゃねえよ この野郎 466 00:39:36,081 --> 00:39:39,084 富次郎は いっぱしの 使い手だったはずじゃねえか 467 00:39:39,084 --> 00:39:41,086 それが 殺されようっていうのに 刀も抜いてねえ 468 00:39:41,086 --> 00:39:43,088 手向かいひとつ してねえじゃねえか 469 00:39:43,088 --> 00:39:46,091 したくても 手向かいできなくって 黙って殺されたんだ! 470 00:39:46,091 --> 00:39:48,093 いいか そんなふうになっちまう相手は・ 471 00:39:48,093 --> 00:39:51,096 お前しかいねえだろう? そうだろう? 472 00:39:51,096 --> 00:39:53,098 富次郎さん! 473 00:39:53,098 --> 00:39:55,100 (富次郎)放せ! 放さぬかー! 474 00:39:55,100 --> 00:39:59,100 ウッ ウ… ウッ! 475 00:40:02,040 --> 00:40:04,042 富次郎… 476 00:40:04,042 --> 00:40:07,042 神妙にしろい! 477 00:40:11,049 --> 00:40:13,051 相崎! ウウッ… 478 00:40:13,051 --> 00:40:33,051 ・~ 479 00:40:52,090 --> 00:40:54,090 遅いな 480 00:40:58,029 --> 00:41:01,032 まさか しくじったのではあるまいな 481 00:41:01,032 --> 00:41:05,032 (今井)加来 お前 行ってこい (加来)はっ 482 00:41:11,042 --> 00:41:14,045 ・(悲鳴) 483 00:41:14,045 --> 00:41:16,045 アァー! 484 00:41:18,049 --> 00:41:25,056 ・~ 485 00:41:25,056 --> 00:41:27,058 相崎… 486 00:41:27,058 --> 00:41:34,065 国之進 富次郎を殺したのは貴様だな? 487 00:41:34,065 --> 00:41:39,070 我らが同志から離れた者は 死あるのみだ 488 00:41:39,070 --> 00:41:43,074 だが 我らが 手にかけたことが分かれば・ 489 00:41:43,074 --> 00:41:47,078 貴様は秘密をほかへ漏らすだろう 490 00:41:47,078 --> 00:41:55,086 そう思うたが 今となっては 無駄な手間であったのぅ 491 00:41:55,086 --> 00:41:58,089 貴様… 492 00:41:58,089 --> 00:42:08,099 ・~ 493 00:42:08,099 --> 00:42:11,102 (木村)斬れい! (浪人)ダーッ! オォーッ! 494 00:42:11,102 --> 00:42:31,122 ・~ 495 00:42:31,122 --> 00:42:51,142 ・~ 496 00:42:51,142 --> 00:43:11,096 ・~ 497 00:43:11,096 --> 00:43:29,114 ・~ 498 00:43:29,114 --> 00:43:31,114 ウウッ! 499 00:43:33,118 --> 00:43:35,118 アア… 500 00:43:45,130 --> 00:43:48,133 ウウ… アア… 501 00:43:48,133 --> 00:43:50,133 ウウッ! 502 00:44:12,090 --> 00:44:14,092 アーッ! (惣一郎)アァ… 503 00:44:14,092 --> 00:44:16,094 ウーッ! 504 00:44:16,094 --> 00:44:18,094 ウゥ… 505 00:44:20,098 --> 00:44:22,100 ウッ! (惣一郎)ウゥ… 506 00:44:22,100 --> 00:44:24,100 アア… 507 00:44:29,107 --> 00:44:31,107 アァ… 508 00:44:38,116 --> 00:44:41,119 相崎! 509 00:44:41,119 --> 00:44:45,123 神妙にしろ! ヤーッ! 510 00:44:45,123 --> 00:44:48,123 手向かう者は斬る ヤーッ! 511 00:44:52,130 --> 00:44:54,130 (政吉)この野郎ー! 512 00:44:57,068 --> 00:44:59,068 ヤーッ! 513 00:45:04,075 --> 00:45:07,075 トオーッ! ウアーッ! 514 00:45:27,098 --> 00:45:31,098 ンン! ウッ… 515 00:45:38,109 --> 00:45:40,109 相崎! 516 00:45:42,113 --> 00:45:45,116 なぜ ひとりでやった! 517 00:45:45,116 --> 00:45:49,120 弟の話は聞いた 518 00:45:49,120 --> 00:45:52,123 俺は貴公を信じてるぞ! 519 00:45:52,123 --> 00:46:04,068 ・~ 520 00:46:04,068 --> 00:46:06,070 相崎! 521 00:46:06,070 --> 00:46:20,084 ・~ 522 00:46:20,084 --> 00:46:23,087 <今の世の中・ 523 00:46:23,087 --> 00:46:27,091 食い詰めた浪人たちは 江戸中にあふれております> 524 00:46:27,091 --> 00:46:30,094 <そうした連中は いわば やっかい者で・ 525 00:46:30,094 --> 00:46:33,097 時たま 手に負えぬ事件を引き起こして・ 526 00:46:33,097 --> 00:46:36,100 面倒をかけたものでございます> 527 00:46:36,100 --> 00:46:38,102 <しかし 考えてみれば・ 528 00:46:38,102 --> 00:46:43,107 彼らとて それぞれの過去には それぞれに哀れな運命の糸が・ 529 00:46:43,107 --> 00:46:46,110 あやなされていたので ありましょう> 530 00:46:46,110 --> 00:46:49,113 <そう 例えば・ 531 00:46:49,113 --> 00:46:55,119 相崎惣一郎と富次郎の 兄弟のように> 532 00:46:55,119 --> 00:46:59,057 ・(雷鳴) 533 00:46:59,057 --> 00:47:19,077 ・~ 534 00:47:19,077 --> 00:47:39,097 ・~ 535 00:47:39,097 --> 00:47:48,097 ・~ 536 00:47:53,111 --> 00:47:56,114 <大掃除に大わらわな年の瀬に・ 537 00:47:56,114 --> 00:47:59,050 3人の子供が かどわかされましてな> 538 00:47:59,050 --> 00:48:02,053 <金を手にしても 賊は 1人の子供だけを・ 539 00:48:02,053 --> 00:48:06,057 返さないのでございます 奴らの本当のねらいとは…> 540 00:48:06,057 --> 00:48:08,059 <我々同心は めでたく・ 541 00:48:08,059 --> 00:48:11,059 正月を迎えることが できますのでしょうか>