1 00:01:28,103 --> 00:01:33,108 (捕り方たち)御用だ! 御用だ! 御用だ! 御用だ! 御用だ! 2 00:01:33,108 --> 00:01:53,128 ・~ 3 00:01:53,128 --> 00:02:13,148 ・~ 4 00:02:13,148 --> 00:02:33,101 ・~ 5 00:02:33,101 --> 00:02:36,101 ・~ 6 00:03:13,141 --> 00:03:17,141 (狩谷)ああ 面倒くせえな もう 7 00:03:23,151 --> 00:03:34,095 ・~ 8 00:03:34,095 --> 00:03:39,100 きつねか? たぬきか? 9 00:03:39,100 --> 00:03:43,104 (江藤)<きつねか たぬきか> 10 00:03:43,104 --> 00:03:47,108 <とにかく 夜の江戸には 化け物が うろうろ> 11 00:03:47,108 --> 00:03:52,113 <このおひざもとの八丁堀一帯を 騒がせた奇妙な事件も・ 12 00:03:52,113 --> 00:03:56,117 得体の知れぬひとりの女が 始まりでした> 13 00:03:56,117 --> 00:04:00,121 (江藤) なに? あの駄菓子屋の女が? 14 00:04:00,121 --> 00:04:03,124 (杉山)はい (江藤)駄菓子屋というのは… 15 00:04:03,124 --> 00:04:06,127 (杉山) 金六町にできたあの小店です 16 00:04:06,127 --> 00:04:09,130 おう あの かりんとうが うまい… 17 00:04:09,130 --> 00:04:12,133 いや うまいというほどでは ありませんが とにかく 女がいい 18 00:04:12,133 --> 00:04:14,135 (せき) 19 00:04:14,135 --> 00:04:17,138 お風邪ですか? ご老体 (江藤)いや… 20 00:04:17,138 --> 00:04:24,138 おう… わしも なんだ あの店は贔屓にしておる 21 00:04:26,147 --> 00:04:31,085 ああ もう 銀打ちだろうが! (栗原)はっ 22 00:04:31,085 --> 00:04:36,090 ああ… ただし 別に 女がいいからではないぞ うん 23 00:04:36,090 --> 00:04:40,094 あそこの かりんとうはな… (杉山)あの女が まもなく来ます 24 00:04:40,094 --> 00:04:42,096 あの女が? (杉山)来ます 25 00:04:42,096 --> 00:04:45,099 どうして? どうして そんなことが分かる? 26 00:04:45,099 --> 00:04:49,103 あの女 旦那持ちです (栗原)旦那持ちです 27 00:04:49,103 --> 00:04:53,107 おお まあ そうだろう そのぐらいは分かっとる 28 00:04:53,107 --> 00:04:57,111 旦那が来るのは5の日です (江藤)5の日? 29 00:04:57,111 --> 00:05:03,117 今日は 月端の5日 だから あの女は必ず朝湯に来ます 30 00:05:03,117 --> 00:05:06,120 あの白い玉の肌を・ 31 00:05:06,120 --> 00:05:11,125 ぬか袋で隅から隅まで つるっつるに磨き上げる 32 00:05:11,125 --> 00:05:14,128 ご老体 目の保養です 33 00:05:14,128 --> 00:05:17,131 これを 拝まずに帰る手はありません 34 00:05:17,131 --> 00:05:22,136 なるほど 目の保養か 35 00:05:22,136 --> 00:05:28,136 悪くはないな うん… 悪くは… ないな うん 36 00:05:35,083 --> 00:05:38,086 (政吉)どうしました? 今日は馬鹿に ごゆっくりで 37 00:05:38,086 --> 00:05:41,089 いや なに つい 仕事の話に身が入ってな 38 00:05:41,089 --> 00:05:43,091 よろしいんですか? こんなとこで油売ってて 39 00:05:43,091 --> 00:05:46,094 表じゃ 万河岸に 死人が流れ着いたって・ 40 00:05:46,094 --> 00:05:48,096 大騒ぎでございますがね 41 00:05:48,096 --> 00:05:51,096 なんだと・ (杉山)万河岸だ? 42 00:05:57,105 --> 00:05:59,107 橋から下りちゃいかんぞ! いかんぞ! 43 00:05:59,107 --> 00:06:01,109 橋から下りちゃいかんぞ! 44 00:06:01,109 --> 00:06:03,111 (小室)見かけねえ顔だ 45 00:06:03,111 --> 00:06:06,114 そこらで 「むしろ」抱いて 客引いてる女なら・ 46 00:06:06,114 --> 00:06:08,116 ひと目で分かるんだが 47 00:06:08,116 --> 00:06:11,119 いや そんな素性の女じゃねえぞ 48 00:06:11,119 --> 00:06:15,123 地味に見せかけてるが 着てる物に銭かかってる 49 00:06:15,123 --> 00:06:19,127 ひょっとして 料亭の女将か それとも… 50 00:06:19,127 --> 00:06:23,127 大店の内儀か まあ んなとこだ 51 00:06:33,074 --> 00:06:37,078 (杉山)来てますよ (江藤)うん? 誰が? 52 00:06:37,078 --> 00:06:40,081 (杉山)かりんとう (江藤)うん? 53 00:06:40,081 --> 00:06:43,081 (杉山)金六町の囲い者 (江藤)どこ? 54 00:06:47,088 --> 00:06:56,097 ・~ 55 00:06:56,097 --> 00:06:59,100 とにかくだ! ああーっ? 56 00:06:59,100 --> 00:07:02,103 八丁堀に浮かんだ仏さまをな こうやって いつまでも お前・ 57 00:07:02,103 --> 00:07:05,106 吹きっさらしに置いとくわけには いかねえんだよ ああーっ? 58 00:07:05,106 --> 00:07:08,109 一刻も早く下手人を挙げて 成仏してもらう 59 00:07:08,109 --> 00:07:10,111 これが俺たちの務めだろう 60 00:07:10,111 --> 00:07:14,115 ええ? そうじゃねえか? だろう? 61 00:07:14,115 --> 00:07:16,117 あの女… 62 00:07:16,117 --> 00:07:36,070 ・~ 63 00:07:36,070 --> 00:07:49,083 ・~ 64 00:07:49,083 --> 00:07:52,086 (政吉)山王さまと ちょうど背中合わせの角店で・ 65 00:07:52,086 --> 00:07:55,089 舞阪屋っていうんで 66 00:07:55,089 --> 00:07:58,092 あんな色っぽい女房が あの酒問屋にいたのか 67 00:07:58,092 --> 00:08:01,095 なんでも 胸を患ってるとかで あんまり表には・ 68 00:08:01,095 --> 00:08:03,097 顔を 出さなかったそうですが とにかく 69 00:08:03,097 --> 00:08:07,101 あそこのお内儀に間違いねえって 奴がおりますもんで… 70 00:08:07,101 --> 00:08:09,101 よし… 71 00:08:13,107 --> 00:08:16,110 (太兵衛)女房でございますか? 72 00:08:16,110 --> 00:08:20,114 おえんは ただいま 浦安の在所に行っておりますので 73 00:08:20,114 --> 00:08:25,119 在所っていうと? (太兵衛)女房の実家でございます 74 00:08:25,119 --> 00:08:27,055 体が弱いものですから 近ごろは・ 75 00:08:27,055 --> 00:08:32,060 里のほうで 養生することが多いもので 76 00:08:32,060 --> 00:08:37,065 誰かを連れて? (太兵衛)いえ 1人でございます 77 00:08:37,065 --> 00:08:40,068 通い慣れた舟でござりますので・ 78 00:08:40,068 --> 00:08:43,071 気楽に 行ったり来たりしておりますが 79 00:08:43,071 --> 00:08:46,074 すまないが ちょいと そこまで 顔貸してくれんか? 80 00:08:46,074 --> 00:08:48,076 どちらへです? 81 00:08:48,076 --> 00:08:52,080 呉服橋のご番所だ 拝んでもらいたい仏がある 82 00:08:52,080 --> 00:08:54,080 私に? ああ… 83 00:08:56,084 --> 00:08:58,084 (太兵衛)おえん… 84 00:09:00,088 --> 00:09:03,088 どうしたんだ・ おえん 85 00:09:05,093 --> 00:09:10,098 お前さんたち これは 一体 どういうことだ? えっ? 86 00:09:10,098 --> 00:09:16,104 おえん… おえん! おえんーっ! 87 00:09:16,104 --> 00:09:22,110 (泣き声) 88 00:09:22,110 --> 00:09:27,048 おえん おえん… 89 00:09:27,048 --> 00:09:31,052 (子供たち)おいら! おいら! (江藤)ああ 順番だから 順番 順番 90 00:09:31,052 --> 00:09:34,055 (江藤)菓子に触るんじゃない! (おぬい)いいんですよ 91 00:09:34,055 --> 00:09:36,057 みんな うちのお得意さんなんですから 92 00:09:36,057 --> 00:09:40,061 はい ありがとう くまちゃんは何だった? 93 00:09:40,061 --> 00:09:42,063 (男の子)餡子玉 (おぬい)餡子玉? じゃ 1枚 94 00:09:42,063 --> 00:09:45,066 はい! (おぬい)はい 待って おまけ 95 00:09:45,066 --> 00:09:47,068 ありがとう 96 00:09:47,068 --> 00:09:51,072 しかし なんだな この店が出来てから・ 97 00:09:51,072 --> 00:09:54,075 なんとなく この辺りが明るくなったな 98 00:09:54,075 --> 00:09:56,077 町に活気が出てきた 99 00:09:56,077 --> 00:09:58,079 おじさん! (江藤)うん? 100 00:09:58,079 --> 00:10:03,084 おじさん おばさんのお父さん? (江藤)いや わたしはな… 101 00:10:03,084 --> 00:10:07,088 いつも ごろごろしてるけど… (おぬい)フフ… こら! 102 00:10:07,088 --> 00:10:10,088 へっ 何を言うか お前 103 00:10:15,096 --> 00:10:19,100 駄目よ なま言っちゃ はい 104 00:10:19,100 --> 00:10:22,100 ちょっと待っててね 105 00:10:28,042 --> 00:10:32,046 あの女が? (政吉)へい あの女です 106 00:10:32,046 --> 00:10:36,050 あれが 舞阪屋太兵衛の 囲い者のおぬいです 107 00:10:36,050 --> 00:10:56,070 ・~ 108 00:10:56,070 --> 00:11:05,079 ・~ 109 00:11:05,079 --> 00:11:07,081 おぬいさんか? はい 110 00:11:07,081 --> 00:11:10,084 すまんな こんなとこに呼び出したりして 111 00:11:10,084 --> 00:11:14,084 いいえ 何か? 112 00:11:18,092 --> 00:11:24,098 お前さん 俺に見覚えはないか? いいえ 113 00:11:24,098 --> 00:11:27,101 そうか 見覚えはないか 114 00:11:27,101 --> 00:11:30,104 はい 申し訳ございません 115 00:11:30,104 --> 00:11:36,110 いやいや それなら それでいい ゆんべ お前さん どこにいた? 116 00:11:36,110 --> 00:11:40,114 ゆうべでございますか? ああ 117 00:11:40,114 --> 00:11:47,114 金六町の家におりました 誰と? 118 00:11:49,123 --> 00:11:53,127 1人でか? いいえ 旦那さまと 119 00:11:53,127 --> 00:11:58,132 舞阪屋の太兵衛 そうだな? はい 120 00:11:58,132 --> 00:12:03,137 舞阪屋が来たのは? 六つでした 121 00:12:03,137 --> 00:12:07,141 六つの鐘が鳴って すぐでした 122 00:12:07,141 --> 00:12:12,146 雨が降りだした 小ぬか雨 123 00:12:12,146 --> 00:12:18,152 あれは いつごろだった? 日が暮れてから まもなくでした 124 00:12:18,152 --> 00:12:20,154 ひと晩中 125 00:12:20,154 --> 00:12:23,157 雨の間 一度も外に出なかったか? はい 126 00:12:23,157 --> 00:12:26,157 2人とも? はい 127 00:12:29,096 --> 00:12:31,096 もう一度 よく見ろ 128 00:12:34,101 --> 00:12:40,107 南茅場町の亀島の通りだ 雨の中で 俺に会わなかったか? 129 00:12:40,107 --> 00:12:47,114 いいえ どなたか 人違いではないでしょうか? 130 00:12:47,114 --> 00:12:52,119 わたしは 旦那さまと 静かな雨の音を聞きながら・ 131 00:12:52,119 --> 00:12:58,119 ひと晩中 家におりました 間違いございません 132 00:13:00,127 --> 00:13:05,127 そうか ひと晩中か… 133 00:13:07,134 --> 00:13:11,134 呼び出して悪かったな 御免 134 00:13:18,145 --> 00:13:22,149 (江藤) いや それはない それはないぞ 135 00:13:22,149 --> 00:13:28,089 あのおぬいを疑うなんて そりゃ おぬし 少し考え過ぎだ 136 00:13:28,089 --> 00:13:32,093 (ゆい)おぬいさんって あの金六町の駄菓子屋さんの? 137 00:13:32,093 --> 00:13:37,098 そうだ… それが どうした? 138 00:13:37,098 --> 00:13:40,101 (ゆい)何が どうしたんですか? 139 00:13:40,101 --> 00:13:43,104 (江藤)おかしいじゃないか なんだか そうやって・ 140 00:13:43,104 --> 00:13:46,107 奥歯に物の挟まった言い方を しとるじゃないか 141 00:13:46,107 --> 00:13:48,109 いいえ 別に 142 00:13:48,109 --> 00:13:51,112 あっ そのかりんとう たくさん召し上がれ 143 00:13:51,112 --> 00:13:55,116 まだまだ買い置きが たくさんありますから… ねっ 144 00:13:55,116 --> 00:13:57,118 (江藤) 熱い! ちょっと熱い! 熱いぞ! 145 00:13:57,118 --> 00:13:59,120 ごめんなさい (江藤)あちちち… 146 00:13:59,120 --> 00:14:03,124 はいはい (江藤)あーっ! …たく もう! 147 00:14:03,124 --> 00:14:08,129 あー 熱い とげがあるんだ とげが! うん? 148 00:14:08,129 --> 00:14:11,132 すぐに絡んでくんだ かりんとうの話になると 149 00:14:11,132 --> 00:14:13,134 まったく! 女というものは 150 00:14:13,134 --> 00:14:17,138 女のやきもちは灰になるまで 151 00:14:17,138 --> 00:14:21,142 死んだ母親が よーく そう申しておりました 152 00:14:21,142 --> 00:14:25,146 立派な母親であったな! 153 00:14:25,146 --> 00:14:31,085 あ… とにかくな 狩谷 うん? おう お前も一緒に聞いとけ 154 00:14:31,085 --> 00:14:34,088 わしらが仕事をする中で いちばん大切なことは・ 155 00:14:34,088 --> 00:14:40,094 気を読むということだ 分かるか? 「気を読む」 つまりな… 156 00:14:40,094 --> 00:14:43,097 聞いてます 毎年 正月になると その話は聞いてます 157 00:14:43,097 --> 00:14:46,100 ああ うるさい! わしは今 狩谷に話をしとるんだ 158 00:14:46,100 --> 00:14:50,104 すいません (江藤)「気を読む」 つまりだ・ 159 00:14:50,104 --> 00:14:53,107 殺しなら殺しという ひとつの事件が起きる 160 00:14:53,107 --> 00:14:56,110 すると この事件とつながりがある者は・ 161 00:14:56,110 --> 00:15:00,114 体から この事件の気配というものがな・ 162 00:15:00,114 --> 00:15:03,117 あたかも こう 鉄瓶から湯気が立ち上るごとく・ 163 00:15:03,117 --> 00:15:06,120 ゆらゆらゆらと こう立ち上る うん 164 00:15:06,120 --> 00:15:09,123 この 目に見えない空気のようなもの・ 165 00:15:09,123 --> 00:15:12,126 これを 「気」というんだ 166 00:15:12,126 --> 00:15:16,130 あのおぬいという女に そんな気配があるか? えっ? 167 00:15:16,130 --> 00:15:20,134 人殺しと つながりがある顔に 見えるか? うん? 168 00:15:20,134 --> 00:15:23,137 いくらなんでも それはないだろう 169 00:15:23,137 --> 00:15:27,074 いや あります うん? ある・ 170 00:15:27,074 --> 00:15:32,079 はい あります だから あの女を とことん洗おうと思ってます 171 00:15:32,079 --> 00:15:37,084 いけませんか? そうかなぁ 172 00:15:37,084 --> 00:15:41,084 俺には 一向に その気は感じないが 173 00:15:43,090 --> 00:15:46,093 (江藤)そ… そうかなぁ 174 00:15:46,093 --> 00:15:50,097 (宗助)はい おぬいは ここに住んでおりました 175 00:15:50,097 --> 00:15:55,102 父親は 浅草の今戸の 瓦職人でございましたが・ 176 00:15:55,102 --> 00:15:58,105 働き者の女房に先立たれてから・ 177 00:15:58,105 --> 00:16:01,108 すっかり やる気をなくして ぶらぶらしておりました 178 00:16:01,108 --> 00:16:07,114 そうなると もう あとは借金だらけの火の車 179 00:16:07,114 --> 00:16:12,119 3人もいた弟や妹のために かわいそうに… 180 00:16:12,119 --> 00:16:15,122 女衒に手を引かれて ここを出てったのが・ 181 00:16:15,122 --> 00:16:20,127 もう かれこれ4年前でございます 182 00:16:20,127 --> 00:16:25,127 おぬいが身売りしたのは どこだ? 馬道辺りの岡場所だったようで 183 00:16:28,068 --> 00:16:33,068 そうか… 馬道か 184 00:16:43,083 --> 00:16:48,088 ♪(念仏太鼓) 185 00:16:48,088 --> 00:16:57,097 ♪~ 186 00:16:57,097 --> 00:17:03,103 (お類)いい子だったねぇ 本当に気立てのいい子だった 187 00:17:03,103 --> 00:17:07,107 ちょっと あんないい子って見たことないね 188 00:17:07,107 --> 00:17:11,107 母親がなかったせいか 人一倍 きょうだい思いで 189 00:17:14,114 --> 00:17:16,116 旦那! 聞いてんのかね? 190 00:17:16,116 --> 00:17:19,116 本当に いい子だったんだから うんうん… 191 00:17:21,121 --> 00:17:24,124 (おぬい)もったいないわ 白いご飯 余すなんて 192 00:17:24,124 --> 00:17:26,126 わたしなんか 生まれてから このかた・ 193 00:17:26,126 --> 00:17:30,064 お腹いっぱいご飯食べたの ここに来てから初めてなのよ 194 00:17:30,064 --> 00:17:33,067 うちの弟や妹なんか 今だって3度のご飯を・ 195 00:17:33,067 --> 00:17:36,070 おなかいっぱい食べたこと ないんだから 196 00:17:36,070 --> 00:17:38,072 わたしは幸せだわ 197 00:17:38,072 --> 00:17:41,075 だって 毎日 ここで白いご飯が 食べられるんですもの 198 00:17:41,075 --> 00:17:43,075 ありがとうございます 199 00:17:45,079 --> 00:17:47,081 (お類) そんなこと言いながら いつも・ 200 00:17:47,081 --> 00:17:51,085 あたしたちの食べ残したご飯を 弟たちに持たせてやって 201 00:17:51,085 --> 00:17:56,085 とにかく 一生懸命だった 明るい子でねえ 202 00:18:00,094 --> 00:18:06,100 ぶらぶら病の父親ってのは? つい この間 亡くなってさ 203 00:18:06,100 --> 00:18:11,105 ねえ 旦那 遊んできなさいよ お安くしとくから 204 00:18:11,105 --> 00:18:13,107 いや まあ それは それとしてだ 205 00:18:13,107 --> 00:18:17,111 南茅場町の舞阪屋太兵衛っての 知ってるか? 206 00:18:17,111 --> 00:18:19,113 知ってるどころじゃありませんよ 207 00:18:19,113 --> 00:18:23,117 あたしが おぬいちゃんの身請け話 まとめたんだから 208 00:18:23,117 --> 00:18:25,117 お前さんが? 209 00:18:27,054 --> 00:18:31,058 (お類) それもね もともとの頼み人は・ 210 00:18:31,058 --> 00:18:34,061 舞阪屋の女将さんなんですよ 211 00:18:34,061 --> 00:18:38,065 (おえん) おぬいさん この話はね・ 212 00:18:38,065 --> 00:18:41,568 わたしから旦那さまに お願いした話なんですよ 213 00:18:41,568 --> 00:18:46,073 わたしは 女でありながら女じゃない 214 00:18:46,073 --> 00:18:51,078 子供も産めず 旦那さまの お相手もできない体だから・ 215 00:18:51,078 --> 00:18:55,082 夜になると 旦那さまが どんなに寂しい思いをしているか 216 00:18:55,082 --> 00:18:58,085 よく分かるんです 217 00:18:58,085 --> 00:19:00,087 ですからね おぬいさん・ 218 00:19:00,087 --> 00:19:04,091 あなたは 誰にも 遠慮なんかすることはない 219 00:19:04,091 --> 00:19:09,096 思い切り旦那さまに甘えて かわいがってもらいなさい 220 00:19:09,096 --> 00:19:14,101 いいですね? かわいがってもらうんですよ 221 00:19:14,101 --> 00:19:17,101 分かりましたね? 222 00:19:21,108 --> 00:19:26,113 えー これで めでたし しゃんしゃんと 223 00:19:26,113 --> 00:19:30,050 (お類)おぬいさん もう 天にも昇るような気持ちで 224 00:19:30,050 --> 00:19:34,054 困ったわ 困ったわ お正月にはね・ 225 00:19:34,054 --> 00:19:37,057 これを着て お店に ごあいさつに 来なさいって言うのよ 226 00:19:37,057 --> 00:19:40,060 わたし 怖くて こんな着物 一生着れない! 227 00:19:40,060 --> 00:19:42,062 触っただけで体が震えちゃう 228 00:19:42,062 --> 00:19:47,067 でもね 旦那さまも奥さまも まるで神さまみたいな人 229 00:19:47,067 --> 00:19:51,071 わたしね 茅場町の女将さんには 一生 足を向けて眠れない 230 00:19:51,071 --> 00:19:54,074 お不動さまにもね そう お約束したの 231 00:19:54,074 --> 00:19:57,074 触らないで 触らないで 232 00:20:02,082 --> 00:20:05,085 それで? 旦那 おぬいちゃんが どうかしたんですか? 233 00:20:05,085 --> 00:20:09,085 うん おぬいは どうってことねえが… 234 00:20:12,092 --> 00:20:16,096 ちょっと 中 通してもらうぜ えーっ・ ちょ… ちょいと! 235 00:20:16,096 --> 00:20:19,099 旦那! 旦那! 236 00:20:19,099 --> 00:20:23,103 (房吉)上がったのかい? 今 ここにいた中廻り 237 00:20:23,103 --> 00:20:26,106 どこへ消えた? そいつは俺のことかい? 238 00:20:26,106 --> 00:20:29,042 ウワーッ! 239 00:20:29,042 --> 00:20:32,045 てめえ なんだって 俺を付け回すんだ? ええ・ 240 00:20:32,045 --> 00:20:37,050 おい 誰に頼まれた? ウワー… アア… 241 00:20:37,050 --> 00:20:39,052 吐け この野郎! アーッ! 242 00:20:39,052 --> 00:20:43,052 アア… なんでえ なんでえ 243 00:20:45,058 --> 00:20:47,060 舞阪屋を? 244 00:20:47,060 --> 00:20:50,063 とりあえず しょっ引く しょっ引いて 俺が預かる 245 00:20:50,063 --> 00:20:52,065 何か つかんだのか? ああ 246 00:20:52,065 --> 00:20:54,067 何を? 証人を見つけたんです 247 00:20:54,067 --> 00:20:59,072 あの夜 舞阪屋を ある所で 見かけたという確かな証人を 248 00:20:59,072 --> 00:21:02,075 そうか… 分かった 249 00:21:02,075 --> 00:21:07,075 舞阪屋に踏み込むなら 俺も手を貸そう 250 00:21:20,093 --> 00:21:22,095 取り次げ 251 00:21:22,095 --> 00:21:25,098 (たたく音) (鳥蔵)舞阪屋さん! 252 00:21:25,098 --> 00:21:30,103 舞阪屋さん? 鳥蔵でございます 旦那は おいででございますか? 253 00:21:30,103 --> 00:21:34,107 (たたく音) 舞阪屋さん! 254 00:21:34,107 --> 00:21:37,110 (杉山) 御用の者だ! 舞阪屋を呼べ! 255 00:21:37,110 --> 00:21:39,112 (手代)だ… 旦那さまは 今 留守でございます 256 00:21:39,112 --> 00:21:41,114 (杉山)そんなはずねえだろうが! (手代)本当でございます 257 00:21:41,114 --> 00:21:45,118 (杉山)どけ! (手代)お待ちください 258 00:21:45,118 --> 00:21:47,118 (悲鳴) 259 00:21:49,122 --> 00:21:51,122 (杉山)どけ! 260 00:21:56,129 --> 00:21:58,129 おおっ! 261 00:22:06,139 --> 00:22:08,141 お前さん… 262 00:22:08,141 --> 00:22:15,148 舞阪屋の留守をお預かりして おります ぬいと申します 263 00:22:15,148 --> 00:22:18,151 舞阪屋は どこだ? どこに隠れた? 264 00:22:18,151 --> 00:22:21,154 旦那さまは 亡くなられた女将さんの・ 265 00:22:21,154 --> 00:22:25,158 在所にまいりました 千葉の浦安でございます 266 00:22:25,158 --> 00:22:27,094 あー 逃げられたか! (栗原)くそっ! 267 00:22:27,094 --> 00:22:31,098 いいえ! 旦那さまは 逃げも隠れもいたしません 268 00:22:31,098 --> 00:22:33,100 なんだ? 269 00:22:33,100 --> 00:22:41,108 ・~ 270 00:22:41,108 --> 00:22:47,108 こちらの女将さんを殺したのは この私でございます 271 00:22:49,116 --> 00:22:51,118 お前が? 272 00:22:51,118 --> 00:22:56,123 はい… 申し訳ないことをいたしました 273 00:22:56,123 --> 00:23:05,132 ・~ 274 00:23:05,132 --> 00:23:08,135 <長い八丁堀暮らしで・ 275 00:23:08,135 --> 00:23:13,140 大抵のことには びくともしませんが・ 276 00:23:13,140 --> 00:23:18,140 いやぁ こればかりは驚きました> 277 00:23:23,150 --> 00:23:26,150 本当なんですか? 278 00:23:28,088 --> 00:23:30,090 うん? 279 00:23:30,090 --> 00:23:34,094 本当に あのおぬいさんが 人殺ししたんですか? 280 00:23:34,094 --> 00:23:39,099 ああ 本当だ 281 00:23:39,099 --> 00:23:42,102 本当に殺したんだ 282 00:23:42,102 --> 00:23:46,106 わたしは 女将さんが憎かったんです 283 00:23:46,106 --> 00:23:50,110 憎くて憎くて たまらなかったんです 284 00:23:50,110 --> 00:23:54,114 舞阪屋の旦那に 女らしい務めもできないくせに・ 285 00:23:54,114 --> 00:23:58,118 わたしという女を金で買って 身代わりにしようとした 286 00:23:58,118 --> 00:24:02,122 そのことが たまらなく悔しかったんです! 287 00:24:02,122 --> 00:24:05,125 女将さんさえいなかったら・ 288 00:24:05,125 --> 00:24:09,129 あの女さえ この世から消えてくれたら・ 289 00:24:09,129 --> 00:24:14,134 わたしが あの女に代わって 舞阪屋のお内儀にだってなれる 290 00:24:14,134 --> 00:24:19,139 そうなれば 弟や妹も 一生 安穏に暮らせる 291 00:24:19,139 --> 00:24:25,139 そう思って刺し殺したんです お許しください! 292 00:24:30,083 --> 00:24:33,086 (江藤)お白洲で お奉行の前で・ 293 00:24:33,086 --> 00:24:37,086 自分の口から はっきり そう言ったんだ 294 00:24:39,092 --> 00:24:42,095 わしはなぁ… 295 00:24:42,095 --> 00:24:48,101 お前も知ってるとおり 何の取り柄もない役立たずの男だ 296 00:24:48,101 --> 00:24:53,106 それでも こと十手に絡んだら・ 297 00:24:53,106 --> 00:24:58,111 今どきの若い連中には 負けないだけの場数は踏んでいる 298 00:24:58,111 --> 00:25:03,116 こいつが白か黒か その目をじっと見つめれば・ 299 00:25:03,116 --> 00:25:07,120 たちどころに見破るだけの力は・ 300 00:25:07,120 --> 00:25:14,127 まだまだ 杉山や狩谷よりは 上だと信じていた 301 00:25:14,127 --> 00:25:21,127 それがなぁ それが こう見事に外れるとなぁ 302 00:25:25,138 --> 00:25:28,075 気を読みましょう (江藤)うん? 303 00:25:28,075 --> 00:25:32,079 目を閉じて… 304 00:25:32,079 --> 00:25:37,084 おぬいさんの顔を 心に思い浮かべ… 305 00:25:37,084 --> 00:25:42,084 本当に この人が 下手人なのかどうか… 306 00:25:44,091 --> 00:25:52,091 おぬいさんの背中から立ち上る 空気のようなものを読むと… 307 00:26:04,111 --> 00:26:07,114 (江藤)何か読めたか? 308 00:26:07,114 --> 00:26:11,114 はい (江藤)どう読んだ? 309 00:26:13,120 --> 00:26:18,125 この事件 まだまだ これからと読みました 310 00:26:18,125 --> 00:26:21,128 これから? 311 00:26:21,128 --> 00:26:24,128 はい (江藤)うむ… 312 00:26:29,069 --> 00:26:32,069 そうか そうか 313 00:26:41,081 --> 00:26:46,086 分からねえ どうも なにか すとんと落ちねえ 314 00:26:46,086 --> 00:26:50,090 何か この辺につっかえてる 舞阪屋は どうしてますんで? 315 00:26:50,090 --> 00:26:52,092 今は店に戻ってる 316 00:26:52,092 --> 00:26:56,096 杉山と栗原が かなり厳しく 締め上げたようなんだが・ 317 00:26:56,096 --> 00:26:59,099 何も出なかったそうだ でも あの夜・ 318 00:26:59,099 --> 00:27:02,102 舞阪屋を見かけたって生き証人が いたそうじゃねえですか ああ… 319 00:27:02,102 --> 00:27:06,106 それが船頭相手に商売してる おせんという夜鷹でな 320 00:27:06,106 --> 00:27:09,109 あっ おせんですか ありゃ駄目だ 当てになりません 321 00:27:09,109 --> 00:27:12,109 酒浸りの飲み過ぎでね ハハッ 322 00:27:20,120 --> 00:27:30,063 ・~ 323 00:27:30,063 --> 00:27:33,066 俺を付け回していたのは あの船頭だ 324 00:27:33,066 --> 00:27:37,066 あいつの周りを洗ってみてくれ へい! 325 00:27:43,076 --> 00:27:47,080 (江藤)上役方も 八丁堀で起きた事件だけに・ 326 00:27:47,080 --> 00:27:51,084 早々の解決に ご満足の様子と伺っておる 327 00:27:51,084 --> 00:27:54,087 ご苦労であった (杉山)はっ 328 00:27:54,087 --> 00:27:59,092 わたしにしてみれば けがの巧名でありまして… 329 00:27:59,092 --> 00:28:03,096 ところで 杉山 (杉山)はっ? 330 00:28:03,096 --> 00:28:10,103 おぬいの首は… お前さんに頼む 331 00:28:10,103 --> 00:28:14,107 首? (江藤)そうだ 332 00:28:14,107 --> 00:28:19,112 あの女の首を わたしが斬るのですか? 333 00:28:19,112 --> 00:28:21,114 そうだ 334 00:28:21,114 --> 00:28:25,118 何か 腑に落ちぬことでもあるか? (杉山)いや… いや… 335 00:28:25,118 --> 00:28:28,054 牢屋敷の首斬り役は・ 336 00:28:28,054 --> 00:28:33,059 もともと 我々同心の 持ち役と定められておる 337 00:28:33,059 --> 00:28:39,065 ここ数年は 石出帯刀さま配下の 山田浅右衛門どのが・ 338 00:28:39,065 --> 00:28:42,068 新しい刀の 試し斬りをなさるため・ 339 00:28:42,068 --> 00:28:47,073 なかなか首を斬る機会に 恵まれなかったが・ 340 00:28:47,073 --> 00:28:50,076 久々に その役目が こちらに回ってきた 341 00:28:50,076 --> 00:28:57,083 ご老中の採決が下りしだい 直ちに刑を執り行わなねばならぬ 342 00:28:57,083 --> 00:29:01,083 そのつもりで支度に取りかかれ 343 00:29:03,089 --> 00:29:08,094 なお 改めて申し渡すまでもないが 344 00:29:08,094 --> 00:29:17,094 首斬り役には 金二分の金子が 刀の研ぎ代として支給される 345 00:29:21,107 --> 00:29:28,107 首を斬り終えたら その旨 勘定方に申し出て 受け取るように 346 00:29:35,055 --> 00:29:38,058 (遠藤) 誠にもって珍しい女ですなぁ 347 00:29:38,058 --> 00:29:41,061 とにかく評判がいい みんなに好かれる 348 00:29:41,061 --> 00:29:44,064 そりゃあ 地獄の沙汰も金次第で・ 349 00:29:44,064 --> 00:29:49,069 牢内には 蔓と呼ばれる小遣い銭を どのぐらい ばらまくかで・ 350 00:29:49,069 --> 00:29:54,074 評判が決まるんですが あの女は それだけじゃない 351 00:29:54,074 --> 00:29:57,077 人の嫌がることを 何でも引き受けるし・ 352 00:29:57,077 --> 00:29:59,079 弱い女や困ってる女には・ 353 00:29:59,079 --> 00:30:03,083 物惜しみしないで 何でもくれてしまう 354 00:30:03,083 --> 00:30:11,091 いやまったく あの女が人殺しとは とても信じられませんな 355 00:30:11,091 --> 00:30:14,094 舞阪屋から差し入れがあるのか? 356 00:30:14,094 --> 00:30:18,094 ええ… そりゃもう たんまりと 357 00:30:21,101 --> 00:30:24,101 妙な話だな はっ? 358 00:30:27,040 --> 00:30:34,047 自分の女房を殺した女に 差し入れなど するもんかな? 359 00:30:34,047 --> 00:30:41,054 いや それだけ 舞阪屋は おぬいに惚れていたのでは? 360 00:30:41,054 --> 00:30:46,054 そうかな? そういうもんかな? 361 00:30:50,063 --> 00:30:55,068 決まりましたか? ああ 362 00:30:55,068 --> 00:31:00,068 先程 お奉行が戻られてな いつです? 363 00:31:02,075 --> 00:31:05,078 明日だ 364 00:31:05,078 --> 00:31:08,081 明日… 365 00:31:08,081 --> 00:31:19,092 ・~ 366 00:31:19,092 --> 00:31:25,098 (江藤)何か この世に思い残すことはないか? 367 00:31:25,098 --> 00:31:28,098 何でもいい 申してみろ 368 00:31:30,103 --> 00:31:35,108 最期の望みとあれば 何事でも叶えられるのが・ 369 00:31:35,108 --> 00:31:37,108 ここのしきたりだ 370 00:31:39,112 --> 00:31:41,114 言ってみなさい 371 00:31:41,114 --> 00:31:46,114 思い残すことは 何ひとつございません 372 00:31:48,121 --> 00:31:54,127 ただ… (江藤)うん? 何だ? 373 00:31:54,127 --> 00:31:58,131 舞阪屋の旦那さまにいただいた 晴れ着の袖に・ 374 00:31:58,131 --> 00:32:02,135 まだ 一度も手を通しておりません 375 00:32:02,135 --> 00:32:06,139 もし 願いが叶うなら・ 376 00:32:06,139 --> 00:32:10,139 その晴れ着を着て あの世へまいりたいと思います 377 00:32:18,151 --> 00:32:20,151 おぬい… 378 00:32:22,155 --> 00:32:25,158 何を隠してる? 379 00:32:25,158 --> 00:32:31,097 何をかばっている? そんなに死に急ぐのは なぜだ? 380 00:32:31,097 --> 00:32:34,100 なぜなんだ・ 381 00:32:34,100 --> 00:32:37,103 おぬいさん… 382 00:32:37,103 --> 00:32:41,107 死ぬことは怖くありません 383 00:32:41,107 --> 00:32:50,107 むしろ 生きていることのほうが わたしには恐ろしかったのです 384 00:32:52,118 --> 00:33:11,118 ・~ 385 00:33:32,091 --> 00:33:37,091 (惣次) おぬいの首が転がってからじゃ 手遅れなんですよ 386 00:33:39,098 --> 00:33:42,101 (惣次)だって そうだろう? 387 00:33:42,101 --> 00:33:46,105 おぬいが この世から消えちまったら・ 388 00:33:46,105 --> 00:33:50,105 舞阪屋の奴 何とだって言い逃れができる 389 00:33:55,114 --> 00:33:59,118 (笑い声) 390 00:33:59,118 --> 00:34:03,118 やるなら今夜だね 391 00:34:10,129 --> 00:34:16,135 (政吉) あれが芝口の惣次って遊び人で 殺されたおえんの隠し男です 392 00:34:16,135 --> 00:34:19,138 おえんは浦安の実家に 帰るって言っちゃ・ 393 00:34:19,138 --> 00:34:22,141 あの男と船宿にしけ込んで 394 00:34:22,141 --> 00:34:28,081 舞阪屋に おぬいを押しつけたのも 自分が遊びたい一心からなんで 395 00:34:28,081 --> 00:34:32,085 よし 行くぞ 店の者たちをおとなくしさせとけ 396 00:34:32,085 --> 00:34:34,085 へい! 397 00:34:42,095 --> 00:34:47,100 誰だ? うん? 貴様! 398 00:34:47,100 --> 00:34:50,103 (惣次)そうよ! 芝口の惣次よ! 399 00:34:50,103 --> 00:34:53,103 ウワッ! 放せ! 400 00:34:58,111 --> 00:35:01,114 (惣次)旦那も運の強いお方だ 401 00:35:01,114 --> 00:35:06,119 てめえの女房を殺しておきながら お縄を逃れなすった 402 00:35:06,119 --> 00:35:10,123 お見事ですよ 403 00:35:10,123 --> 00:35:14,127 あのおぬいという女も あきれた玉でございますね 404 00:35:14,127 --> 00:35:21,134 ええ? 旦那の身代わりになって 首を差し出そうなんて 405 00:35:21,134 --> 00:35:27,073 女運の強いお方だ あたしなんざぁ 歯が立ちゃしねえ 406 00:35:27,073 --> 00:35:30,076 そりゃ おえんって女・ 407 00:35:30,076 --> 00:35:33,079 お前さんの かみさんかもしれねえけど・ 408 00:35:33,079 --> 00:35:36,082 俺にとっちゃ 大事な女だったのよ! 409 00:35:36,082 --> 00:35:44,090 実は あいつが殺されて 金の出どころに困っちまったのよ 410 00:35:44,090 --> 00:35:46,092 ほら! 411 00:35:46,092 --> 00:35:52,098 旦那 あたしゃ はっきり見てたんですよ 412 00:35:52,098 --> 00:35:56,098 おえんを川に ざぶんとね (太兵衛)なに? 413 00:35:58,104 --> 00:36:00,106 どうだろう? 旦那 414 00:36:00,106 --> 00:36:06,112 あたしも旦那のしたことは 見て見ぬふりを通しますから・ 415 00:36:06,112 --> 00:36:10,116 どうだろう? 2000両ばかり 用立ててもらえねえかな? 416 00:36:10,116 --> 00:36:13,119 殺せ! 殺せるもんなら殺してみろ! 417 00:36:13,119 --> 00:36:17,123 お前なんかに びた一文 渡せるもんか! 418 00:36:17,123 --> 00:36:19,125 そうかい! (太兵衛)殺せ! 419 00:36:19,125 --> 00:36:23,129 分かったよ じゃ 殺してやろうじゃねえか 420 00:36:23,129 --> 00:36:26,132 斬れ! よし! それまでだ! 421 00:36:26,132 --> 00:36:29,068 てめえ なんだ・ 待て 待てい! 422 00:36:29,068 --> 00:36:31,070 こんなところで 死人は出したくない 423 00:36:31,070 --> 00:36:34,073 命が惜しい者は さっさと消えうせろ! 424 00:36:34,073 --> 00:36:37,076 お前には残ってもらうぞ (惣次)黙れ! 425 00:36:37,076 --> 00:36:57,096 ・~ 426 00:36:57,096 --> 00:37:07,106 ・~ 427 00:37:07,106 --> 00:37:11,106 おい 太兵衛! お前にも一緒に来てもらうぞ! 428 00:37:22,121 --> 00:37:26,125 あっ あの お奉行は? お奉行は まだ お帰りになりませんか? 429 00:37:26,125 --> 00:37:29,125 まだまだ (江藤)「まだまだ」… 430 00:37:33,065 --> 00:37:37,069 まったく… どうすりゃいいんだ? これは 431 00:37:37,069 --> 00:37:39,071 どうすりゃいいんだ! 432 00:37:39,071 --> 00:37:46,078 南無妙法蓮華経 433 00:37:46,078 --> 00:37:54,086 南無妙法蓮華経 434 00:37:54,086 --> 00:38:00,092 ・ 南無妙法蓮華経 435 00:38:00,092 --> 00:38:07,099 ・ 南無妙法蓮華経 436 00:38:07,099 --> 00:38:15,107 ・ 南無妙法蓮華経 437 00:38:15,107 --> 00:38:17,107 ・ 南無妙… 438 00:38:23,115 --> 00:38:26,118 (小室)死罪は死罪だ 439 00:38:26,118 --> 00:38:30,056 一度決めたことを 俺たちが 勝手に覆すわけにはいかん 440 00:38:30,056 --> 00:38:32,058 やるしかないぞ 441 00:38:32,058 --> 00:38:35,061 しかしな 首を落としたあとで・ 442 00:38:35,061 --> 00:38:39,065 死罪取り消しとなったら どうする? 誰が責任取る? 443 00:38:39,065 --> 00:38:41,067 (栗原)狩谷さん (杉山)お奉行 どうした? 444 00:38:41,067 --> 00:38:44,070 お城から戻られましたか? いや まだだ 445 00:38:44,070 --> 00:38:47,070 おぬいは やっぱり… 446 00:38:49,075 --> 00:38:53,079 おぬいは 舞阪屋の内儀を殺してはいない 447 00:38:53,079 --> 00:38:57,083 殺したのは亭主の太兵衛だ 448 00:38:57,083 --> 00:39:02,088 太兵衛は 女房のおえんが男を 寝間に引き入れたのを知っていた 449 00:39:02,088 --> 00:39:04,090 知ってはいたが・ 450 00:39:04,090 --> 00:39:07,093 自分も おぬいという女を 囲ってる弱みがある 451 00:39:07,093 --> 00:39:10,093 見て見ぬふりをしようとしたが… 452 00:39:12,098 --> 00:39:14,100 アッ! 453 00:39:14,100 --> 00:39:17,100 アッ! アァ… ア… 454 00:39:21,107 --> 00:39:24,110 おえんが蔵の金を 持ち出そうとしたのを見て・ 455 00:39:24,110 --> 00:39:30,110 逆上のあまり おえんを刺し殺し そして 川へ流した 456 00:39:35,054 --> 00:39:38,057 太兵衛の奴 まさか そこに・ 457 00:39:38,057 --> 00:39:41,060 遊び人の惣次が 見ていたとも知らず・ 458 00:39:41,060 --> 00:39:43,062 おぬいの家に急いだ 459 00:39:43,062 --> 00:39:48,067 おえん殺しの 後始末をしたのが おぬいだ 460 00:39:48,067 --> 00:39:50,069 1人で舞阪屋に行き・ 461 00:39:50,069 --> 00:39:53,072 おえん殺しの現場を きれいに始末して・ 462 00:39:53,072 --> 00:39:57,076 そのまま 太兵衛を自分の家にかくまった 463 00:39:57,076 --> 00:40:01,080 あとは知らぬ存ぜぬで 押し通すつもりだったが・ 464 00:40:01,080 --> 00:40:04,083 太兵衛にお縄がかかると聞いて・ 465 00:40:04,083 --> 00:40:08,087 自分から罪を背負って 首を差し出そうとした 466 00:40:08,087 --> 00:40:12,091 まったく どうしようもねえ 阿呆鳥だもんな 467 00:40:12,091 --> 00:40:15,094 そこまで惚れてんのかよ あの太兵衛に 468 00:40:15,094 --> 00:40:20,099 いや 太兵衛は おぬいの父親が死んだとき・ 469 00:40:20,099 --> 00:40:24,103 長屋の連中がたまげるような 立派な弔いを出してくれた 470 00:40:24,103 --> 00:40:29,041 その上 残された弟や妹が 先行き心配のないように・ 471 00:40:29,041 --> 00:40:32,044 しっかりと面倒見てくれた 472 00:40:32,044 --> 00:40:35,047 その恩返しをするためには・ 473 00:40:35,047 --> 00:40:40,052 自分の命を投げ出すよりないと 思い定めたのだ 474 00:40:40,052 --> 00:40:44,052 おぬいってのは そういう女なんだ 475 00:40:57,069 --> 00:41:02,074 まもなく 牢奉行の 石出さまがお出ましになります 476 00:41:02,074 --> 00:41:05,074 支度は よろしいですか? 477 00:41:16,088 --> 00:41:18,088 どうされました? 478 00:41:22,094 --> 00:41:25,097 責任は俺が取る 479 00:41:25,097 --> 00:41:27,099 狩谷! (栗原)狩谷さん! 480 00:41:27,099 --> 00:41:30,102 (小室)狩谷! 上さまのお裁きに逆らうのか! 481 00:41:30,102 --> 00:41:32,104 誰が あの女の首を斬れる・ 482 00:41:32,104 --> 00:41:35,104 一体 誰が あの女の首を斬れるんだ? 483 00:41:42,114 --> 00:41:49,121 (囚人たち)南無妙法蓮華経 484 00:41:49,121 --> 00:41:56,128 南無妙法蓮華経 485 00:41:56,128 --> 00:42:03,135 南無妙法蓮華経 486 00:42:03,135 --> 00:42:10,142 南無妙法蓮華経 487 00:42:10,142 --> 00:42:18,150 ・ 南無妙法蓮華経 488 00:42:18,150 --> 00:42:26,158 ・ 南無妙法蓮華経 489 00:42:26,158 --> 00:42:30,096 お仕置きは取りやめだ 490 00:42:30,096 --> 00:42:33,099 沙汰があるまで そのまま控えろ 491 00:42:33,099 --> 00:42:37,099 お奉行! お待ちください! お奉行! 492 00:42:39,105 --> 00:42:43,109 (遠山)十兵衛! 腹切るか? (江藤)はっ? 493 00:42:43,109 --> 00:42:47,113 お城は お前 ひっくり返るような騒ぎだ 494 00:42:47,113 --> 00:42:50,116 死罪 遠島の採決を下すのは 上さまのお役目だ 495 00:42:50,116 --> 00:42:53,119 その上さまに 死罪相当と進言申し上げたのは・ 496 00:42:53,119 --> 00:42:56,122 俺とご老中方だ 497 00:42:56,122 --> 00:43:00,126 一度 下された上さまのご採決を ひっくり返す以上・ 498 00:43:00,126 --> 00:43:04,130 その責任を誰かが取って 腹を切らねばならんというのが・ 499 00:43:04,130 --> 00:43:06,132 ご老中方の意見だ 500 00:43:06,132 --> 00:43:13,139 どうだ 十兵衛 事件の 担当者として腹を切るか? あ? 501 00:43:13,139 --> 00:43:16,142 ああ… はい は… 502 00:43:16,142 --> 00:43:20,146 …とはいうものの お前さん1人ってわけにはいかん 503 00:43:20,146 --> 00:43:23,149 上司としての責任上 俺も一緒に腹切る 504 00:43:23,149 --> 00:43:27,086 えっ お奉行も? 505 00:43:27,086 --> 00:43:33,092 ただし 俺の上役としての ご老中方にも おつきあいいただく 506 00:43:33,092 --> 00:43:39,098 「どなたが腹をお召しになるか?」 そう脅かしたら・ 507 00:43:39,098 --> 00:43:42,101 なんとなく うやむやになって 良きに計らえと・ 508 00:43:42,101 --> 00:43:48,107 まあ こういうことになったよ (笑い声) 509 00:43:48,107 --> 00:43:50,109 (江藤)お奉行 510 00:43:50,109 --> 00:43:54,113 頼むぜ 二度と こんなことは御免だぜ 511 00:43:54,113 --> 00:43:58,113 ええ! 十兵衛さんよ! (江藤)はい 512 00:44:13,132 --> 00:44:17,136 <結局のところ 舞阪屋太兵衛は・ 513 00:44:17,136 --> 00:44:22,141 おえんという不埒者を女房にした 不運を勘案してのお情けでしょう> 514 00:44:22,141 --> 00:44:26,145 <罪一等を減じて 八丈に島流し> 515 00:44:26,145 --> 00:44:30,082 <おぬいは 嘘の申し立てをして ご公儀を愚弄したとして・ 516 00:44:30,082 --> 00:44:36,088 きつくお叱りのうえ 佃島の女寄せ場に送られて・ 517 00:44:36,088 --> 00:44:39,088 今は あそこでも みんなの人気者とか…> 518 00:44:41,093 --> 00:44:44,096 (佳代)あ… 兄上が・ 519 00:44:44,096 --> 00:44:47,099 うん 寸でのところで あの女の首を落とすとこだった 520 00:44:47,099 --> 00:44:51,103 やだ! そんなこと 嫌! (杉山)いや 嫌って言ってもな 521 00:44:51,103 --> 00:44:55,107 それが我らの務めと いうもんですな やむをえん 522 00:44:55,107 --> 00:44:59,111 狩谷さんも そんなことなさるんですか? 523 00:44:59,111 --> 00:45:02,114 うむ… 仕事とあればなぁ 524 00:45:02,114 --> 00:45:06,118 嫌だ! そんなお仕事は 小室さんに頼めばいいんです 525 00:45:06,118 --> 00:45:11,123 そうね この中では やっぱり 小室さんが いちばんお似合いね 526 00:45:11,123 --> 00:45:14,126 フフフ… (小室)ま… まいったなぁ 527 00:45:14,126 --> 00:45:17,129 いやぁ しかし 危なかったなぁ 528 00:45:17,129 --> 00:45:21,133 もし間違って あの女の首を落としていたら・ 529 00:45:21,133 --> 00:45:25,137 今ごろ こうやって かりんとう なんか 食ってらんなかった 530 00:45:25,137 --> 00:45:29,074 いい人だったそうですね 531 00:45:29,074 --> 00:45:33,078 (江藤)ああ いい女だった 532 00:45:33,078 --> 00:45:37,082 それにしても 一度 見たかったな 533 00:45:37,082 --> 00:45:41,086 うん? 何を? 534 00:45:41,086 --> 00:45:43,088 あの晴れ着を着て・ 535 00:45:43,088 --> 00:45:49,094 土壇場の花の散る下を歩く おぬいの姿を 536 00:45:49,094 --> 00:46:09,114 ・~ 537 00:46:09,114 --> 00:46:29,068 ・~ 538 00:46:29,068 --> 00:46:49,088 ・~ 539 00:46:49,088 --> 00:47:09,108 ・~ 540 00:47:09,108 --> 00:47:17,108 ・~ 541 00:47:24,123 --> 00:47:30,062 <拙者 北町奉行所 同心の 江藤十兵衛と申します> 542 00:47:30,062 --> 00:47:32,064 <私のもとには・ 543 00:47:32,064 --> 00:47:35,067 優秀な定町廻り同心が 6名おりますが・ 544 00:47:35,067 --> 00:47:39,071 これがまた… こ奴らのやることなすこと・ 545 00:47:39,071 --> 00:47:43,075 まったくもって 冷や汗の連続でございましてな> 546 00:47:43,075 --> 00:47:46,078 <…とはいえ それも これも正義のため> 547 00:47:46,078 --> 00:47:51,078 <我ら同心の繰り広げます… 『八丁堀捕物ばなし』 お楽しみに>