1 00:01:27,231 --> 00:01:31,101 2 00:01:31,101 --> 00:01:36,106 (捕り方たち)御用だ! 御用だ! 御用だ! 御用だ! 御用だ! 3 00:01:36,106 --> 00:01:42,112 ・~ 4 00:01:42,112 --> 00:01:46,116 (佳代)今日のお漬物 ちょっと 漬けすぎたみたいなんですけど 5 00:01:46,116 --> 00:01:52,122 ・~ 6 00:01:52,122 --> 00:01:56,126 (江藤)ほどほどにせい ほどほどに (ゆい)分かってますよ 7 00:01:56,126 --> 00:01:59,129 ・~ 8 00:01:59,129 --> 00:02:02,132 (妙) あっ 円之助 あっち あっち見て 9 00:02:02,132 --> 00:02:15,145 ・~ 10 00:02:15,145 --> 00:02:18,148 (鳥蔵)親分! 出てきました! 11 00:02:18,148 --> 00:02:20,150 (政吉)ごちそうさん 12 00:02:20,150 --> 00:02:36,150 ・~ 13 00:02:38,102 --> 00:02:41,105 (江藤) <ありがたいものでございます> 14 00:02:41,105 --> 00:02:44,108 <この月が出ませんと・ 15 00:02:44,108 --> 00:02:48,112 江戸の夜は それこそ 真っ暗闇でございましてな> 16 00:02:48,112 --> 00:02:51,115 <幽霊や妖怪どもが動き回る・ 17 00:02:51,115 --> 00:02:55,115 それは 恐ろしい世界でございました> 18 00:02:59,123 --> 00:03:02,126 (小室) 見ろ! 美しい月じゃ! アハハ… 19 00:03:02,126 --> 00:03:07,131 まるで 我が妻のように美しい! (狩谷)ハハハ… 20 00:03:07,131 --> 00:03:10,134 (杉山)歯の浮いたようなことを… どう思う? 狩谷 21 00:03:10,134 --> 00:03:13,137 いや! 小室の気持ちは分からんでもない 22 00:03:13,137 --> 00:03:18,142 こういう月を見ると 俺も 佳代の面影を重ねてみとうなる 23 00:03:18,142 --> 00:03:22,146 けっ! 女房持ちとは つきあいきれない! 24 00:03:22,146 --> 00:03:26,150 ハハハ! 妬くな 妬くな (杉山)誰が妬くか 25 00:03:26,150 --> 00:03:29,086 そこへいくと 独り身は哀れじゃのぅ 26 00:03:29,086 --> 00:03:35,092 人肌が恋しゅうはならんのか? (杉山)恋しい恋しい! 27 00:03:35,092 --> 00:03:38,092 かぐや姫でも降ってこんかのぅ 28 00:03:43,100 --> 00:03:45,102 なあ かぐや姫か? 29 00:03:45,102 --> 00:03:53,110 ・~ 30 00:03:53,110 --> 00:03:58,115 (杉山)まだ 息があるようだな (小室)助からんか? 31 00:03:58,115 --> 00:04:01,115 背中から 心の臓をひと突きだ 32 00:04:06,123 --> 00:04:08,123 店の者は? 33 00:04:10,127 --> 00:04:13,130 誰もおらんのか? 34 00:04:13,130 --> 00:04:15,130 お前ひとりか? 35 00:04:17,134 --> 00:04:22,134 小室 番屋まで ひとっ走り頼む うん? ああ… 36 00:04:25,142 --> 00:04:34,084 ・~ 37 00:04:34,084 --> 00:04:39,084 へえ… これで ずぶりか 38 00:04:41,091 --> 00:04:44,094 下手人は 女だっつったよな? 39 00:04:44,094 --> 00:04:48,098 はい 年のころは47~48 名は菊江 40 00:04:48,098 --> 00:04:53,103 現場となりました 「おかめ」という 小料理屋の下働きをしてる女です 41 00:04:53,103 --> 00:04:56,106 …で その殺された男の身元は? 42 00:04:56,106 --> 00:05:01,111 深川界隈を根城にする ごろつきで 仙蔵と申す男だそうです 43 00:05:01,111 --> 00:05:04,114 別れ話を持ち出されて つい カッとなって・ 44 00:05:04,114 --> 00:05:09,119 店の包丁で刺し殺したと 菊江は申しております 45 00:05:09,119 --> 00:05:15,125 別れ話? 仙蔵のほうが 持ち出したのか? はい 46 00:05:15,125 --> 00:05:17,127 (杉山) 何かご不審が おありですか? 47 00:05:17,127 --> 00:05:21,131 いやいや… 不審というほどでもないがな 48 00:05:21,131 --> 00:05:24,134 ごろつきどもにとって 女は小遣いの種だ 49 00:05:24,134 --> 00:05:28,071 何人抱えてたって 不都合はない 50 00:05:28,071 --> 00:05:34,077 別れ話など 普通 男のほうからは 持ち出さないもんだがなぁ 51 00:05:34,077 --> 00:05:36,079 (杉山)賛成 (江藤)あぅっ! 52 00:05:36,079 --> 00:05:39,082 いや その点は わたしも 53 00:05:39,082 --> 00:05:44,087 仙蔵は屈強な男です それに けんかにも慣れとったでしょう 54 00:05:44,087 --> 00:05:48,091 あのような女ひとりに… 55 00:05:48,091 --> 00:05:51,094 店の者は ほかに誰もいなかったんだな? 56 00:05:51,094 --> 00:05:53,096 おきちと申す女将がおりますが・ 57 00:05:53,096 --> 00:05:56,099 ゆうべは 菊江ひとりに 店を任せて 先に帰ったそうです 58 00:05:56,099 --> 00:05:59,102 (栗原)武芸のたしなみが あったんじゃありませんか? 59 00:05:59,102 --> 00:06:02,105 飲み屋の女がか? (小室)いやぁ 分かりませんぞ 60 00:06:02,105 --> 00:06:08,111 昨今は 大名家の取り潰しも多い 武家の子女といえども 流れ流れて 61 00:06:08,111 --> 00:06:11,114 どのような境遇にあるのか 計り知れませんぞ 62 00:06:11,114 --> 00:06:15,118 まあ そりゃそうだが… しかし まさかなぁ 63 00:06:15,118 --> 00:06:19,122 それに 菊江という名前 飲み屋の女には似合いません 64 00:06:19,122 --> 00:06:22,125 なにやら 武家の女房ふうじゃありませんか 65 00:06:22,125 --> 00:06:26,129 いや だけどな 武家の女なら どんなに落ちぶれても・ 66 00:06:26,129 --> 00:06:28,065 持って生まれた 品格ってもんがあるだろうが 67 00:06:28,065 --> 00:06:31,068 とてもじゃないけど あの女の荒れすさんだ様子からは 68 00:06:31,068 --> 00:06:36,073 そのようには見えん (小室)うーん 確かになぁ 69 00:06:36,073 --> 00:06:41,078 いや まったく とんだ かぐや姫で 血にぬれた包丁をぶら下げて・ 70 00:06:41,078 --> 00:06:45,082 月の光の中を こう ゆらゆら 歩いてくるさまを見たときには・ 71 00:06:45,082 --> 00:06:50,087 この小室玄蔵 身の毛がよだちましたわ アハハ… 72 00:06:50,087 --> 00:06:53,090 (江藤)狩谷 はい 73 00:06:53,090 --> 00:06:59,096 その菊江と申す女 年ごろは 47~48と申したな? 74 00:06:59,096 --> 00:07:01,096 さようでございます 75 00:07:04,101 --> 00:07:07,101 (杉山) お心当たりが おありですか? 76 00:07:09,106 --> 00:07:11,108 うん? あっ いやいや! 77 00:07:11,108 --> 00:07:16,113 ちと存じ寄りの者かなと思ったが まさかな まさかな 78 00:07:16,113 --> 00:07:18,115 (笑い声) 79 00:07:18,115 --> 00:07:20,117 (小室) その まさかでござりまするよ 80 00:07:20,117 --> 00:07:25,122 1滴も飲めんおやじどのが 飲み屋の女などと そんなそんな… 81 00:07:25,122 --> 00:07:28,058 (笑い声) 82 00:07:28,058 --> 00:07:31,061 <胸騒ぎがいたしましてな> 83 00:07:31,061 --> 00:07:35,065 <いや うかつにも 初めのうちは 気がつきませんでしたが・ 84 00:07:35,065 --> 00:07:41,071 菊江と申す女 それが もしも 武家の出であるとするならば・ 85 00:07:41,071 --> 00:07:44,074 わたしには 忘れようとて忘れられぬ・ 86 00:07:44,074 --> 00:07:48,074 ひとりの女の思い出が 重なるのでございますが…> 87 00:07:50,080 --> 00:07:54,084 (牢番)これはこれは 江藤どの 88 00:07:54,084 --> 00:07:57,087 何か? (江藤)うん… 89 00:07:57,087 --> 00:08:01,091 今朝方 入牢した菊江なる女… (牢番)はあ 90 00:08:01,091 --> 00:08:07,097 ちと あらためたいことがあってな (牢番)はっ ただいま 91 00:08:07,097 --> 00:08:27,050 ・~ 92 00:08:27,050 --> 00:08:47,070 ・~ 93 00:08:47,070 --> 00:08:54,070 ・~ 94 00:08:56,079 --> 00:08:59,082 (おきち) もう まったく嫌んなっちまうよ! 95 00:08:59,082 --> 00:09:02,085 いくら洗い流したって 血のにおいが消えないんだからね 96 00:09:02,085 --> 00:09:06,089 商売にも何も なりゃしないよ! 97 00:09:06,089 --> 00:09:09,092 なんとかしてくれませんかね? お奉行所のほうで 98 00:09:09,092 --> 00:09:11,094 そこまで 面倒 見きれるか 99 00:09:11,094 --> 00:09:14,097 騒ぎを起こしたのは そっちの勝手じゃないか? 100 00:09:14,097 --> 00:09:19,102 仙蔵みたいなごろつきを 野放しに しておくからいけないんですよ 101 00:09:19,102 --> 00:09:22,105 女と見ると まるで 見境がないんだから 102 00:09:22,105 --> 00:09:25,108 あたしゃね 菊江さんにも 随分 言ったんですよ 103 00:09:25,108 --> 00:09:28,044 あんな男と かかわりあっちゃいけないって 104 00:09:28,044 --> 00:09:31,047 いけねえたって 菊江のほうが 惚れちまってんだから・ 105 00:09:31,047 --> 00:09:34,050 どうしようもねえじゃねえか (おきち)そうなんですよね 106 00:09:34,050 --> 00:09:37,053 あんな男の どこがいいんだか? 107 00:09:37,053 --> 00:09:40,056 たったひとりの娘を放ってまで 入れあげることはないんだよ 108 00:09:40,056 --> 00:09:42,058 おい 娘がいるのか? 109 00:09:42,058 --> 00:09:47,063 ええ! とってもいい娘さんでね お鈴ってんですよ 110 00:09:47,063 --> 00:09:49,065 でも 追ん出しちまって! 111 00:09:49,065 --> 00:09:52,065 娘より 男のほうが 良かったんでしょうよ! 112 00:10:08,084 --> 00:10:10,086 御免 113 00:10:10,086 --> 00:10:12,086 (佐吉)いらっしゃいまし 114 00:10:15,091 --> 00:10:18,094 食いつきゃしねえから そう おっかながんな お前は? 115 00:10:18,094 --> 00:10:22,098 はい 手前は 手代の佐吉と申します 116 00:10:22,098 --> 00:10:26,102 この店に 鈴と申す 住み込みの女中がいるはずだが 117 00:10:26,102 --> 00:10:29,039 はい おります 話がしたい 118 00:10:29,039 --> 00:10:34,044 あまり人には聞かれたくない話だ その辺りまで出向いてもらいたい 119 00:10:34,044 --> 00:10:36,044 はい ただいま すぐに 120 00:10:39,049 --> 00:10:43,053 (お鈴)おっ母さんが人殺しを? 殺されたのは・ 121 00:10:43,053 --> 00:10:46,056 この界隈をのたくってる 仙蔵というごろつきだ 122 00:10:46,056 --> 00:10:48,056 知ってるかい? 123 00:10:50,060 --> 00:10:52,062 母ひとり子ひとりだそうだな 124 00:10:52,062 --> 00:10:56,062 おっ母さんと 仙蔵の仲についちゃ どの程度 知ってんだい? 125 00:10:58,068 --> 00:11:02,072 どうした? お前 黙っちまうことはねえだろう 126 00:11:02,072 --> 00:11:07,077 あたし 知りません (杉山)知らねえ? 127 00:11:07,077 --> 00:11:10,080 あたしを捨てた おっ母さんが・ 128 00:11:10,080 --> 00:11:14,084 どんな男と どんなふうに つきあってたかなんて・ 129 00:11:14,084 --> 00:11:17,087 そんなこと 知りたくもないから (杉山)いや だってよ… 130 00:11:17,087 --> 00:11:21,091 おっ母さんが悪いんです! 仙蔵なんて奴は・ 131 00:11:21,091 --> 00:11:24,094 飲んだくれの博打打ちの どうしようもない悪なんです! 132 00:11:24,094 --> 00:11:28,098 そんな奴とつきあってた おっ母さんが悪いんです! 133 00:11:28,098 --> 00:11:32,102 お前 相当の跳ねっ返りだな 134 00:11:32,102 --> 00:11:37,107 おっ母さんは今 北町奉行所の仮牢の中にいる 135 00:11:37,107 --> 00:11:40,107 会いたかったら 俺が段取りつけてやるぜ 136 00:11:44,114 --> 00:11:51,121 あたしと おっ母さんの間には もう親子の情愛なんかないんです 137 00:11:51,121 --> 00:11:54,121 今更 会ったって しかたがない 138 00:11:56,126 --> 00:11:59,129 おい… 139 00:11:59,129 --> 00:12:01,131 ひでえもんだな 140 00:12:01,131 --> 00:12:06,136 自業自得かもしれないけど 獄門 磔 間違いねえってのに・ 141 00:12:06,136 --> 00:12:09,139 実の娘から あんな言い方されたんじゃ… 142 00:12:09,139 --> 00:12:12,142 死んでも死にきれねえな おっ母さん うむ… 143 00:12:12,142 --> 00:12:31,094 ・~ 144 00:12:31,094 --> 00:12:34,097 旦那さま… 145 00:12:34,097 --> 00:12:36,097 旦那さま! 146 00:12:38,101 --> 00:12:42,101 おお ゆいか… どうした? 147 00:12:44,107 --> 00:12:48,111 何をしてらっしゃるんです? こんな所で おひとりで 148 00:12:48,111 --> 00:12:56,119 おお いや… ちょっとな… 月を見ておったのだ 149 00:12:56,119 --> 00:13:02,119 お月さまを? フフッ… お珍しいこと 150 00:13:05,128 --> 00:13:12,135 あら… まあ 本当に きれいなお月さま! 151 00:13:12,135 --> 00:13:16,139 まるで かぐや姫がいらっしゃるみたい 152 00:13:16,139 --> 00:13:18,139 かぐや姫… 153 00:13:21,144 --> 00:13:24,144 かぐや姫なぁ… 154 00:13:34,090 --> 00:13:37,093 なあ ゆい (ゆい)はい? 155 00:13:37,093 --> 00:13:44,100 わしは変わったか? (ゆい)何がでございます? 156 00:13:44,100 --> 00:13:51,107 いや… 20年前 お前と出会うたころから比べて・ 157 00:13:51,107 --> 00:13:53,107 わしは変わったか? 158 00:13:57,113 --> 00:14:02,118 お年をお召しになりました それに 白髪も随分 159 00:14:02,118 --> 00:14:08,124 うむ… 悲しいことだのぅ 160 00:14:08,124 --> 00:14:11,127 歳月は 人を変える 161 00:14:11,127 --> 00:14:16,132 いや… 外見ばかりではない 162 00:14:16,132 --> 00:14:21,137 かぐや姫のように 美しかった人をも・ 163 00:14:21,137 --> 00:14:26,137 時の流れは 血に染まった夜叉にする 164 00:14:30,080 --> 00:14:33,080 人も殺せる女になぁ 165 00:14:37,087 --> 00:14:43,093 一体 何があったのか… どんな道をたどったのか… 166 00:14:43,093 --> 00:14:47,097 どなたのことを 話していらっしゃるんですか? 167 00:14:47,097 --> 00:14:51,101 うん? いやいや… どなたというわけではない 168 00:14:51,101 --> 00:14:54,104 お鼻の穴が膨らんでおります (江藤)うん? 169 00:14:54,104 --> 00:14:58,104 嘘をついてる証拠でございます (江藤)そうか? 170 00:15:02,112 --> 00:15:04,112 はい 飴玉 171 00:15:13,123 --> 00:15:18,128 女が変わるのには 訳がございます 172 00:15:18,128 --> 00:15:24,134 今の暮らしが幸せならば なんで女が変わりましょう 173 00:15:24,134 --> 00:15:31,134 まして 血に染まった夜叉になど 誰が すき好んで変わるものですか 174 00:15:36,079 --> 00:15:41,079 お力になって差し上げて くださいまし その悲しいお方の 175 00:15:44,087 --> 00:15:49,087 ただし 私が やきもちを妬かぬ程度に 176 00:15:51,094 --> 00:15:54,094 ああ… そうだな 177 00:16:05,108 --> 00:16:08,111 女仮牢の鍵をくれ (牢番)はっ 178 00:16:08,111 --> 00:16:12,111 ・(鍵を開ける音) 179 00:16:17,120 --> 00:16:19,120 邪魔をする 180 00:16:41,077 --> 00:16:44,077 江藤十兵衛と申す 181 00:16:47,083 --> 00:16:52,083 この度は 実は 御用の筋ではない 182 00:16:57,093 --> 00:17:03,093 菊江どの… この顔に見覚えはござらぬか? 183 00:17:10,106 --> 00:17:17,113 ござらぬか… いや… さもあろう 184 00:17:17,113 --> 00:17:24,113 あのころの菊江どのにとっては それがしなどは… 185 00:17:26,122 --> 00:17:33,122 目の端にも… 覚えておらろうはずがなかろう 186 00:17:37,066 --> 00:17:46,075 20年前 それがしは 池之端の 小堀道場へ通う行き帰り… 187 00:17:46,075 --> 00:17:50,079 いつも遠回りをしては・ 188 00:17:50,079 --> 00:17:56,079 下谷練塀小路の 寺内左門どのの屋敷の前を通った 189 00:17:59,088 --> 00:18:05,088 菊江どの… あなたの顔を見るためだ 190 00:18:08,097 --> 00:18:13,102 わたしは あなたに あこがれていた 191 00:18:13,102 --> 00:18:17,102 片ときも忘れたことはなかった 192 00:18:20,109 --> 00:18:24,113 美しく気高く 清楚なあなたの面影に・ 193 00:18:24,113 --> 00:18:30,113 若き日のわたしは 狂おしいほど恋をしていた 194 00:18:32,055 --> 00:18:36,059 1~2度 道で出会うて 頭を下げたこともあるが・ 195 00:18:36,059 --> 00:18:39,059 それも 覚えてはおられまいのぅ 196 00:18:45,068 --> 00:18:49,072 このような見てくれでござるゆえ 是非もない 197 00:18:49,072 --> 00:18:55,078 それに 一介の町方同心に過ぎぬ身が・ 198 00:18:55,078 --> 00:18:59,082 150石の旗本の ご息女に懸想したとて・ 199 00:18:59,082 --> 00:19:02,085 どうなるものでもない 200 00:19:02,085 --> 00:19:05,088 手の届かぬ… 201 00:19:05,088 --> 00:19:13,096 さよう… かぐや姫に 恋をしたようなものでござった 202 00:19:13,096 --> 00:19:20,103 あの日… 忘れもせぬあの日… 203 00:19:20,103 --> 00:19:29,045 それがしは そのかぐや姫が 月の世界へ旅立つのを見申した 204 00:19:29,045 --> 00:19:35,051 同じ旗本の磯野平左衛門と申す 男に嫁がれたということを・ 205 00:19:35,051 --> 00:19:39,055 それがしは あとから聞いた 206 00:19:39,055 --> 00:19:43,059 あとにも先にも それがしにとって・ 207 00:19:43,059 --> 00:19:51,067 あれほど美しく また 悲しい光景を見たことはござらん 208 00:19:51,067 --> 00:19:54,070 それから 2年ほどして・ 209 00:19:54,070 --> 00:20:00,076 風の噂に 磯野家が 改易になったことを知った 210 00:20:00,076 --> 00:20:07,083 主人 平左衛門の 酒の上での狼藉がもとだという 211 00:20:07,083 --> 00:20:15,091 そののち 時折 思い出しては 身の上を案じておったのだが… 212 00:20:15,091 --> 00:20:21,097 このような場所で このようなかたちで出会おうとは 213 00:20:21,097 --> 00:20:24,097 思いもよらぬことでござった 214 00:20:26,102 --> 00:20:34,043 菊江どの… あれから20年の間 いろいろなことがあったと思う 215 00:20:34,043 --> 00:20:37,046 しかし それを いちいち詮索しようとは思わぬ 216 00:20:37,046 --> 00:20:41,046 ただ わたしは 力になりたいのだ 217 00:20:43,052 --> 00:20:47,056 お上にも お慈悲がある 218 00:20:47,056 --> 00:20:50,059 この度の一件について・ 219 00:20:50,059 --> 00:20:54,059 詳しい いきさつを 話してはくださらぬか? 220 00:20:58,067 --> 00:21:00,067 菊江どの… 221 00:21:03,072 --> 00:21:08,072 (笑い声) 222 00:21:13,082 --> 00:21:18,087 (菊江)いきさつは 言ったとおりさ あたしが殺したんだよ 223 00:21:18,087 --> 00:21:21,090 ほかに訳なんかありゃしない 224 00:21:21,090 --> 00:21:25,094 あたしが この手で 仙蔵を殺したんだよ! 225 00:21:25,094 --> 00:21:27,096 いや しかし… 226 00:21:27,096 --> 00:21:33,102 改まって 何の話かと思いや 惚れてた? 昔のあたしに? 227 00:21:33,102 --> 00:21:36,105 フン! おあいにくだね 228 00:21:36,105 --> 00:21:40,109 今のあたしは 昔のあたしとは違うんだよ 229 00:21:40,109 --> 00:21:44,113 ご覧のとおりの人殺しさ 230 00:21:44,113 --> 00:21:47,116 男から男へ渡り歩いて・ 231 00:21:47,116 --> 00:21:50,119 体も心も汚れちまった あばずれだよ (江藤)菊江どの 232 00:21:50,119 --> 00:21:56,125 黙んな! 子供じゃあるまいし そんな話 聞いて・ 233 00:21:56,125 --> 00:21:59,128 あたしが うれしがるとでも思ったのかい? 234 00:21:59,128 --> 00:22:05,128 泣いて喜ぶとでも思ったのかい? 冗談じゃないよ 235 00:22:10,139 --> 00:22:14,139 昔のことは夢さ 236 00:22:16,145 --> 00:22:18,147 夢なんだよ 237 00:22:18,147 --> 00:22:24,153 後生大事に抱いてたって 何の役にも立ちゃしない 238 00:22:24,153 --> 00:22:27,153 1文の銭にもならないじゃないか 239 00:22:33,095 --> 00:22:39,101 何しに来たんだよ こんなとこへ あたしは もう覚悟はできてんだ 240 00:22:39,101 --> 00:22:42,104 磔になろうと 獄門になろうとかまやしない 241 00:22:42,104 --> 00:22:44,104 それなのに… 242 00:22:46,108 --> 00:22:51,108 それなのに なんで昔のことなんか しゃべりに来るんだよ! 243 00:22:54,116 --> 00:22:59,121 帰っとくれ! さあ とっとと出ておいきよ! 244 00:22:59,121 --> 00:23:11,121 ・~ 245 00:23:28,084 --> 00:23:33,089 どうしたのよ 閉めきっちゃって (佐吉)お前 店を抜けてきたのか? 246 00:23:33,089 --> 00:23:35,091 だって あんたが 店 休んでるから… 247 00:23:35,091 --> 00:23:38,091 夕飯の 支度もできないだろうと思ってさ 248 00:23:49,105 --> 00:23:51,107 お前さん 包丁は? 249 00:23:51,107 --> 00:23:53,109 ああ ちょっとな 研ぎに出したんだよ 250 00:23:53,109 --> 00:23:56,112 あの… 不精したせいで さびが きちまってよ 251 00:23:56,112 --> 00:23:59,112 ふ~ん なんだ 252 00:24:13,129 --> 00:24:20,136 鈴… なあ おっ母さんが 捕まっちまってんだ しばらくは・ 253 00:24:20,136 --> 00:24:23,139 行き来しないようにしようって 言ったばかりじゃないか 254 00:24:23,139 --> 00:24:28,139 なあ 鈴… 言うこと聞くんだよ 255 00:24:33,082 --> 00:24:35,084 どうしたんだよ? 256 00:24:35,084 --> 00:24:39,084 あたしが嫌いになったのね (佐吉)ええ・ 257 00:24:41,090 --> 00:24:44,093 あたしから逃げたいんだ 258 00:24:44,093 --> 00:24:49,098 あんな目に遭った女だから 愛想が尽きたんだ 259 00:24:49,098 --> 00:24:54,103 ち… 違うよ わたしの気持ちは変わっていない 260 00:24:54,103 --> 00:24:59,108 ただ おっ母さんのことがあるから もう少しほとぼりが冷めるまで… 261 00:24:59,108 --> 00:25:01,110 嘘! 嘘! 262 00:25:01,110 --> 00:25:04,113 おっ母さんのことなんか どうして そんなに気にするのさ 263 00:25:04,113 --> 00:25:07,113 あんなに嫌ってたくせに 264 00:25:09,118 --> 00:25:14,123 どんなおっ母さんでも 娘を思わない親はいないんだよ 265 00:25:14,123 --> 00:25:18,127 うちのおっ母さんは別なんだ 本当の親子じゃないからね 266 00:25:18,127 --> 00:25:20,129 旗本だった家がつぶれて・ 267 00:25:20,129 --> 00:25:24,129 酒浸りになったお父っつぁんが よその女に産ませた子供よ 268 00:25:28,070 --> 00:25:33,075 それっきり お父っつぁんは行き方知れず 269 00:25:33,075 --> 00:25:36,078 そんな子供を 無理やり押しつけられて・ 270 00:25:36,078 --> 00:25:39,081 かわいいなんて 思うはずがないじゃないか! 271 00:25:39,081 --> 00:25:43,085 そうじゃないよ 鈴! 決して そうじゃない 272 00:25:43,085 --> 00:25:45,087 お前のおっ母さんの気持ちは… 273 00:25:45,087 --> 00:25:48,087 もういい! おっ母さんのことなんか 274 00:25:55,097 --> 00:25:58,100 鈴… 275 00:25:58,100 --> 00:26:01,103 逃げよう 276 00:26:01,103 --> 00:26:03,105 えっ・ 277 00:26:03,105 --> 00:26:07,109 逃げよう 2人で… 誰も分からねえ所へ行って・ 278 00:26:07,109 --> 00:26:14,116 別の人間になって そこで静かに暮らそう 279 00:26:14,116 --> 00:26:17,119 佐吉さん? 280 00:26:17,119 --> 00:26:22,124 それがいいんだ お店も辞める 281 00:26:22,124 --> 00:26:28,063 おっ母さんのことも 仙蔵のことも忘れる 282 00:26:28,063 --> 00:26:34,063 今までの暮らしは全部捨てて 一からやり直すんだ 283 00:26:36,071 --> 00:26:39,071 そうしよう! なあ 鈴! そうしよう! 284 00:26:51,086 --> 00:26:53,086 ・(物音) 285 00:27:01,096 --> 00:27:05,096 (男性)ほらぁ ひとり勝ちだい 286 00:27:07,102 --> 00:27:09,102 (男性)おい 287 00:27:11,106 --> 00:27:15,110 酒くせえなぁ 288 00:27:15,110 --> 00:27:18,113 ここが仙蔵のたまり場か 289 00:27:18,113 --> 00:27:21,116 (男性)ハハ… なんでい なんでい 八丁堀か 290 00:27:21,116 --> 00:27:24,119 (男性)それにしちゃ 随分 頼りなさそうな じじいじゃねえか 291 00:27:24,119 --> 00:27:26,121 (笑い声) 292 00:27:26,121 --> 00:27:29,058 博打は 天下のご法度だぞ! 293 00:27:29,058 --> 00:27:31,060 脅しをかけようってのかい? 294 00:27:31,060 --> 00:27:35,064 こちとら ちゃんと お目こぼしをいただいてるんだい 295 00:27:35,064 --> 00:27:37,066 なめるんじゃねえよ! 296 00:27:37,066 --> 00:27:40,069 ほざくな! (男性)痛っ! 297 00:27:40,069 --> 00:27:44,073 御用の筋だ 無宿人 仙蔵の一件で 聞きたいことがある 298 00:27:44,073 --> 00:27:47,076 ここへ 控えおろう! (男性)ふざけんな! 299 00:27:47,076 --> 00:27:49,078 十手を見せりゃ恐れ入るとでも 思ってやがんのか・ 300 00:27:49,078 --> 00:27:53,082 (亭主) 待ちな みんな 待たねえかよ 301 00:27:53,082 --> 00:27:56,085 御用の筋だって おっしゃってるじゃねえか 302 00:27:56,085 --> 00:27:58,087 ええ! おとなしくしろい 303 00:27:58,087 --> 00:28:02,091 亭主か? (亭主)へい さようで 304 00:28:02,091 --> 00:28:05,094 では 聞くがな 仙蔵のな… 305 00:28:05,094 --> 00:28:08,097 オラーッ! (亭主)旦那! 306 00:28:08,097 --> 00:28:11,100 ウウッ… 307 00:28:11,100 --> 00:28:14,103 て… てめえら 八丁堀の旦那に なんてことしやがる! 308 00:28:14,103 --> 00:28:16,105 おい 逃げろ! 309 00:28:16,105 --> 00:28:27,105 ・~ 310 00:28:29,051 --> 00:28:32,054 たった1人で乗り込んで きたってのかい? へい 311 00:28:32,054 --> 00:28:37,059 そうなんでい ところが 奴ら とんでもねえ連中で… 312 00:28:37,059 --> 00:28:41,063 まあ こんなことに… 313 00:28:41,063 --> 00:28:44,066 妙な話じゃのぅ 314 00:28:44,066 --> 00:28:48,070 いつもは 決して危ない所へ 近づこうとはせぬお方が・ 315 00:28:48,070 --> 00:28:51,073 しかも 我々には内緒で… 316 00:28:51,073 --> 00:28:54,076 功名 手柄を立てようと 思ったんじゃありませんか? 317 00:28:54,076 --> 00:28:57,079 いいとこ見せようと思って 318 00:28:57,079 --> 00:29:02,084 年寄りの冷や水だ 見ろ このざま 319 00:29:02,084 --> 00:29:07,089 おやじどのが調べようとしたのは 多分 菊江という女のことだ 320 00:29:07,089 --> 00:29:10,092 その女が 仙蔵を 殺したってのは知ってるな? 321 00:29:10,092 --> 00:29:12,094 へい そりゃもう 322 00:29:12,094 --> 00:29:18,100 でもね 訳知りの連中は こっそり こんなこと言ってますぜ 323 00:29:18,100 --> 00:29:22,104 ありゃ 菊江さんが敵討ったんだってね 324 00:29:22,104 --> 00:29:24,106 敵? 325 00:29:24,106 --> 00:29:28,043 誰の敵だよ? (亭主)娘のです 鈴っていう 326 00:29:28,043 --> 00:29:32,047 仙蔵の奴は 待ち伏せして 手込めにしやがったんでさぁ 327 00:29:32,047 --> 00:29:38,053 それを また うちの店へ来て 自慢たらしく吹聴しやがった 328 00:29:38,053 --> 00:29:41,056 殺された その日のことですがね 329 00:29:41,056 --> 00:29:45,060 しかし 菊江は そんなことは ひと言も言わんぞ 330 00:29:45,060 --> 00:29:51,066 言うはずはねえ 大事な娘の 恥になることですからね 331 00:29:51,066 --> 00:29:54,069 大事な娘… 追ん出しといてもか? 332 00:29:54,069 --> 00:29:58,073 そりゃ 仙蔵から引き離すためだ 333 00:29:58,073 --> 00:30:05,080 ガキのときなら心配は要らねえが 年ごろになったら そうはいかねえ 334 00:30:05,080 --> 00:30:09,084 狼の鼻先へ 餌ぶら下げて おくようなもんだからね 335 00:30:09,084 --> 00:30:12,087 仙蔵が どんな野郎だったか・ 336 00:30:12,087 --> 00:30:15,090 菊江って人は よく分かってたはずだ 337 00:30:15,090 --> 00:30:19,094 いなくなった亭主が残した 博打の借金の形に・ 338 00:30:19,094 --> 00:30:24,099 仙蔵の野郎 無理やり 己の女にしてしめえやがった… 339 00:30:24,099 --> 00:30:30,039 はぁ… きれいな お人だったそうでござんすねえ 340 00:30:30,039 --> 00:30:36,045 10年以上前の話だがね 野郎 威張ってやしたぜ 341 00:30:36,045 --> 00:30:39,048 「手の届かねえ 京人形みてえな武家の女房・ 342 00:30:39,048 --> 00:30:43,052 てめえの女にしてやったぁ」ってね 343 00:30:43,052 --> 00:30:46,055 じゃ それ以来 仙蔵は今まで 344 00:30:46,055 --> 00:30:49,058 ああ 小遣いの種だからね 345 00:30:49,058 --> 00:30:52,058 すっぽんみたいに 食らいついてまさぁ 346 00:30:54,063 --> 00:31:01,070 菊江って人は 自分のことは あきらめてるんでしょう 347 00:31:01,070 --> 00:31:07,070 だけど このうえ 娘まで… 348 00:31:09,078 --> 00:31:11,080 ああ 旦那方 ここにいらしたんですかい? 349 00:31:11,080 --> 00:31:14,083 どうしたんだ? (政吉)娘の鈴を張ってたんですが 350 00:31:14,083 --> 00:31:16,085 どうやら あの娘 351 00:31:16,085 --> 00:31:19,088 みなと屋の手代の佐吉って男と 駆け落ちをやらかすつもりですぜ 352 00:31:19,088 --> 00:31:24,093 なんだ・ 佐吉ってのは 鈴の男だったのか? (政吉)へい 353 00:31:24,093 --> 00:31:26,095 あの野郎 しれっとした顔しやがって 354 00:31:26,095 --> 00:31:29,098 しかし なぜ駆け落ちだい? 互いに独り身だろう? 355 00:31:29,098 --> 00:31:34,103 誰にも遠慮は要らんではないか? さあ そこら辺は あっしにも… 356 00:31:34,103 --> 00:31:37,106 佐吉の奴 妙に追い詰められた様子で・ 357 00:31:37,106 --> 00:31:40,109 しきりに「逃げよう 逃げよう」って 言ってやがったんで 逃げる? 358 00:31:40,109 --> 00:31:43,112 へい (杉山)気に入らねえな 359 00:31:43,112 --> 00:31:45,114 気に入らねえことが もうひとつ 360 00:31:45,114 --> 00:31:48,117 佐吉の家から 包丁が 消えておりやす なに・ 361 00:31:48,117 --> 00:31:51,120 おい! (栗原)おやじどの けがは? 362 00:31:51,120 --> 00:31:55,124 菊江どのは… いや… 菊江は… 363 00:31:55,124 --> 00:31:59,128 店の包丁で仙蔵を 刺し殺したって そう言ったな? 364 00:31:59,128 --> 00:32:02,131 ああ 確かに吟味与力さまの前でも そう申しております 365 00:32:02,131 --> 00:32:08,131 はぁ よし行こう! 行こう! ああ いや… 366 00:32:10,139 --> 00:32:13,142 (一同)おやじどの (江藤)わしはな えい わしは行く 367 00:32:13,142 --> 00:32:16,145 おやじどの… (杉山)おやじどの 368 00:32:16,145 --> 00:32:19,148 どうだい? 見覚えねえかい? 369 00:32:19,148 --> 00:32:22,151 そんなことおっしゃったって どこにでもある包丁だから 370 00:32:22,151 --> 00:32:27,089 この店の物ではないんだな? (おきち)うちに包丁は4丁 371 00:32:27,089 --> 00:32:32,094 みんな そろってますよ ほれ 372 00:32:32,094 --> 00:32:34,096 ねえ 人を刺した包丁なんか・ 373 00:32:34,096 --> 00:32:37,096 気味悪いから 持ってってくださいよ 374 00:32:39,101 --> 00:32:42,104 どうやら 読めてきましたな 375 00:32:42,104 --> 00:32:52,114 ・~ 376 00:32:52,114 --> 00:33:06,114 ・~ 377 00:33:11,133 --> 00:33:14,133 まず これを返すぜ 378 00:33:16,138 --> 00:33:21,138 仙蔵を刺した包丁だ お前の物だな? 379 00:33:24,146 --> 00:33:31,086 よし それじゃ 話してもらおうか お前が仙蔵を殺した いきさつを 380 00:33:31,086 --> 00:33:35,090 佐吉さんが仙蔵を・ 嘘よ! どうして? 381 00:33:35,090 --> 00:33:38,093 どうして 佐吉さんが そんなことを? 382 00:33:38,093 --> 00:33:42,093 その訳は お前が いちばん よく知ってんじゃねえのか? 383 00:33:44,099 --> 00:33:49,104 佐吉は仕返しをしたんだよ 384 00:33:49,104 --> 00:33:53,104 お前が 仙蔵から むごい目に 遭わされた… その仕返しをな 385 00:33:55,110 --> 00:33:59,114 佐吉さん… そうだったんだ 386 00:33:59,114 --> 00:34:03,114 「逃げよう」なんて言うから 変だとは思ったけど 387 00:34:06,121 --> 00:34:09,124 おっ母さんが あたしのためなんかに・ 388 00:34:09,124 --> 00:34:13,128 人を殺すはずがないもの 389 00:34:13,128 --> 00:34:17,132 そんなおっ母さんじゃない 390 00:34:17,132 --> 00:34:20,135 あたしのために 何かしてあげようなんて… 391 00:34:20,135 --> 00:34:23,138 そんな人並みな おっ母さんじゃないんだもの 392 00:34:23,138 --> 00:34:25,138 お黙んなさい! 393 00:34:27,075 --> 00:34:31,079 「そんなおっ母さんじゃない」とは どういう意味だ? 394 00:34:31,079 --> 00:34:34,082 どういう意味だ・ 395 00:34:34,082 --> 00:34:39,087 おっ母さんはな 「自分が仙蔵を殺した」と言ってる 396 00:34:39,087 --> 00:34:45,087 死罪も覚悟して 今も冷たい牢獄の中にいる 397 00:34:47,095 --> 00:34:50,098 誰のためなんだ? 398 00:34:50,098 --> 00:34:52,098 誰のためなんだ・ 399 00:34:58,106 --> 00:35:06,106 そうなんだよ 鈴… 旦那のおっしゃるとおりなんだ 400 00:35:08,116 --> 00:35:12,116 あの日 お前は 仙蔵に ひどい目に遭わされて… 401 00:35:15,123 --> 00:35:18,123 泣きながら わたしの家へ来たよね 402 00:35:25,133 --> 00:35:31,073 お前は ただ 泣きじゃくるばかりだった 403 00:35:31,073 --> 00:35:33,073 腹が立ったよ わたしは 404 00:35:35,077 --> 00:35:39,081 自分で 自分が どうにもならないほど・ 405 00:35:39,081 --> 00:35:42,084 腹が立ったんだ 406 00:35:42,084 --> 00:36:01,103 ・~ 407 00:36:01,103 --> 00:36:05,107 エーイ! (仙蔵)ウワーッ! 408 00:36:05,107 --> 00:36:08,110 (佐吉)覚悟はできてたんだ 409 00:36:08,110 --> 00:36:12,110 もう どうにでもなれって いう気分だった 410 00:36:14,116 --> 00:36:20,122 獄門になろうと 縛り首になろうとかまやしない 411 00:36:20,122 --> 00:36:23,125 だけど… 412 00:36:23,125 --> 00:36:29,064 わたしの口から 初めて事情を聞いた菊江さんは・ 413 00:36:29,064 --> 00:36:33,064 自首して出ようっていう わたしを止めた 414 00:36:35,070 --> 00:36:40,070 「自分が身代わりになる」って 言うんだよ 415 00:36:43,078 --> 00:36:45,080 佐吉さん 416 00:36:45,080 --> 00:36:52,087 あんた 鈴にとって誰よりも大事な人 417 00:36:52,087 --> 00:36:56,091 掛けがえのない人なんだよ 418 00:36:56,091 --> 00:37:01,096 あんた いなくなったら あの子 この先 生きちゃいけない 419 00:37:01,096 --> 00:37:05,100 それくらいの人なんだよ 420 00:37:05,100 --> 00:37:07,102 あたしゃ もういい 421 00:37:07,102 --> 00:37:13,108 この先 生きてたって 何の望みもありゃしない 422 00:37:13,108 --> 00:37:19,114 こんな 仙蔵みたいな男につけ込まれて・ 423 00:37:19,114 --> 00:37:28,056 鈴が… そんな目に遭ったのは あたしのせいだ 424 00:37:28,056 --> 00:37:37,065 佐吉さん あたしは 喜んで あんたの身代わりになるんだよ 425 00:37:37,065 --> 00:37:40,068 今まで 生きてくのに精一杯で・ 426 00:37:40,068 --> 00:37:43,071 あの子のために 何もしてやれなかった 427 00:37:43,071 --> 00:37:50,071 だけど やっと 初めて 親らしいことがしてやれる 428 00:37:52,080 --> 00:37:54,082 このことは 誰にも言っちゃいけないよ 429 00:37:54,082 --> 00:37:57,085 あの子にもね 430 00:37:57,085 --> 00:38:02,090 あんた… 何にもしなかったんだよ 431 00:38:02,090 --> 00:38:07,095 幻だったんだよ 今夜のことは 432 00:38:07,095 --> 00:38:12,100 さあ 早くお帰り! 誰にも見られないうちに 433 00:38:12,100 --> 00:38:15,103 何もかも忘れるんだよ! 434 00:38:15,103 --> 00:38:19,107 その代わり 鈴を… 435 00:38:19,107 --> 00:38:25,107 鈴を幸せにしてやっておくれ 436 00:38:31,052 --> 00:38:37,052 なあ おっ母さんの 気持ちが分かったかい? 437 00:38:43,064 --> 00:38:49,064 (泣き声) 438 00:38:51,072 --> 00:38:57,078 お解き放ちである この度の仙蔵殺しの一件 439 00:38:57,078 --> 00:39:01,082 みなと屋手代 佐吉が 下手人であることが判明いたした 440 00:39:01,082 --> 00:39:07,088 一体 何言うんだい・ そりゃ何かの間違いだよ 441 00:39:07,088 --> 00:39:10,091 仙蔵は あたしが殺ったんだ 442 00:39:10,091 --> 00:39:15,096 佐吉なんて人 知らないね 聞いたこともないよ 443 00:39:15,096 --> 00:39:17,098 覚悟はできてんだ さあ! 444 00:39:17,098 --> 00:39:23,104 わたしを磔なり獄門なりに 早くしておくれよ さあ 早く! 445 00:39:23,104 --> 00:39:29,044 菊江どの! それはならぬ あくまで罪は罪 446 00:39:29,044 --> 00:39:34,044 娘夫婦に 生涯 あなたへの 贖罪の思いを抱かせるつもりか? 447 00:39:41,056 --> 00:39:49,064 心配は要らぬ 仙蔵の罪状の数々は明白 448 00:39:49,064 --> 00:39:51,066 佐吉が殺害に及んだ事情も・ 449 00:39:51,066 --> 00:39:55,066 それをかばおうとした あなたの気持ちも よく分かっとる 450 00:39:57,072 --> 00:40:04,072 遠山さまのお裁きも 必ずや温情のあふれたものになる 451 00:40:07,082 --> 00:40:12,082 鈴どのが迎えに見えておる (菊江)鈴… 452 00:40:14,089 --> 00:40:18,093 鈴が あたしを? 453 00:40:18,093 --> 00:40:23,098 さよう あなたを 454 00:40:23,098 --> 00:40:26,101 母を迎えにな 455 00:40:26,101 --> 00:40:32,040 (泣き声) 456 00:40:32,040 --> 00:40:38,046 さあ お召し替えをなさるがよい 457 00:40:38,046 --> 00:40:41,049 血が付いた物では なんだと申してな 458 00:40:41,049 --> 00:40:47,049 粗末な物だが これは それがしの 奥が用意した物でござる 459 00:40:50,058 --> 00:40:53,061 奥さまが… 460 00:40:53,061 --> 00:41:05,073 ・~ 461 00:41:05,073 --> 00:41:12,080 若き日 あなたは わたしに・ 462 00:41:12,080 --> 00:41:15,083 生涯で一度の・ 463 00:41:15,083 --> 00:41:19,083 女人へのあこがれの思いを 思い抱かせてくれた 464 00:41:23,091 --> 00:41:28,096 それがしの 身勝手な独り善がりではござった 465 00:41:28,096 --> 00:41:37,105 しかし わたしにとっては 掛けがえのない大切な思い出 466 00:41:37,105 --> 00:41:42,105 その思い出の中の あなたを汚されたくなかった 467 00:41:44,112 --> 00:41:49,112 なんとしても 守り通したかったのでござる 468 00:41:52,120 --> 00:41:55,120 お許しくだされ 469 00:41:58,126 --> 00:42:00,126 うれしい… 470 00:42:04,132 --> 00:42:11,139 あのころの わたしを 覚えていてくださる… 471 00:42:11,139 --> 00:42:18,139 その思いを 今も大切にしていてくださる 472 00:42:20,148 --> 00:42:26,148 昔の夢は 消えていなかった 473 00:42:28,089 --> 00:42:33,089 懐かしい… うれしい… 474 00:42:36,097 --> 00:42:43,097 子供のように 大声を上げて泣きたい 475 00:42:45,106 --> 00:42:48,109 うれしゅうございます 476 00:42:48,109 --> 00:42:54,115 (泣き声) 477 00:42:54,115 --> 00:43:09,130 ・~ 478 00:43:09,130 --> 00:43:12,133 おっ母さん! 479 00:43:12,133 --> 00:43:32,086 ・~ 480 00:43:32,086 --> 00:43:41,095 ・~ 481 00:43:41,095 --> 00:43:46,100 何か変じゃねえか? 何がだい? 482 00:43:46,100 --> 00:43:48,102 おやじどののご様子だ 483 00:43:48,102 --> 00:43:52,106 近ごろの妙な張り切り具合は 尋常じゃなかったぞ 484 00:43:52,106 --> 00:43:54,108 私も そう思います 485 00:43:54,108 --> 00:43:57,111 殊に あの鈴と申す娘を どなりつけたときなど・ 486 00:43:57,111 --> 00:44:01,115 別人かと思いました (小室)惚れていたのではないか? 487 00:44:01,115 --> 00:44:05,115 誰に? (小室)無論 あの菊江どのにだ 488 00:44:07,121 --> 00:44:09,123 あのご面相だぞ 489 00:44:09,123 --> 00:44:13,127 好いた腫れたとは 一切 無縁のお生まれのお方だ 490 00:44:13,127 --> 00:44:16,130 ハハ… (小室)でも そうか? 491 00:44:16,130 --> 00:44:21,135 いやいや 分からんぞ 人には皆 時日の輝くような一瞬がある 492 00:44:21,135 --> 00:44:25,139 その残り火がだな 時を経て 再び 燃え上がることだってあるだろう 493 00:44:25,139 --> 00:44:30,078 馬鹿 言え あのご面相だぞ ハハハ… 494 00:44:30,078 --> 00:44:34,082 俺や栗原なら ともかくな あのお方に限って 一切それはない 495 00:44:34,082 --> 00:44:37,082 なあ 行こう 行こう ないない 496 00:44:39,087 --> 00:44:41,087 それはない 497 00:44:44,092 --> 00:44:47,092 お先に失礼します 498 00:44:50,098 --> 00:44:52,098 (くしゃみ) 499 00:44:54,102 --> 00:44:59,107 かぐや姫は また月にお帰りになったんですね 500 00:44:59,107 --> 00:45:02,107 うん? ああ… 501 00:45:04,112 --> 00:45:08,112 幸せになってくれればよいがのぅ 502 00:45:10,118 --> 00:45:15,123 私も 一度 お顔を拝見してみたかった 503 00:45:15,123 --> 00:45:21,123 おお… そなたの小紋 喜んでおったぞ 504 00:45:23,131 --> 00:45:27,068 旦那さまの 大切なお方のためですもの 505 00:45:27,068 --> 00:45:31,072 な… なんだ それ フッフッフ… 506 00:45:31,072 --> 00:45:35,076 でも ほんの少し悔しいから・ 507 00:45:35,076 --> 00:45:39,080 私も初恋の人のお話 いたしましょうか? 508 00:45:39,080 --> 00:45:45,086 うん? そなたにも そのような男がおったのか? 509 00:45:45,086 --> 00:45:49,090 そりゃ 私だって女ですもの 510 00:45:49,090 --> 00:45:52,093 ああ… ああ うん 511 00:45:52,093 --> 00:45:57,098 そりゃ当然だ 至極当然だ 512 00:45:57,098 --> 00:46:00,098 私の初恋の方はね… 513 00:46:02,103 --> 00:46:08,109 色が黒くって 顔が長くって・ 514 00:46:08,109 --> 00:46:12,113 私の大好きなお酒が 1滴も飲めなくって・ 515 00:46:12,113 --> 00:46:16,117 どこから見ても 風采の上がらないお方 516 00:46:16,117 --> 00:46:19,120 ゆい… 517 00:46:19,120 --> 00:46:24,120 でも 心根が優しくって 温かくって… 518 00:46:26,127 --> 00:46:29,063 私は大好きになりました 519 00:46:29,063 --> 00:46:49,083 ・~ 520 00:46:49,083 --> 00:47:09,103 ・~ 521 00:47:09,103 --> 00:47:18,103 ・~ 522 00:47:26,120 --> 00:47:29,057 (藤吉) <若… 止めねえでくださいまし> 523 00:47:29,057 --> 00:47:32,060 <危険だってことは 十分 おいら 分かっておりやす> 524 00:47:32,060 --> 00:47:37,065 <けど どうしても返さなきゃ ならねえ恩があるんでさぁ> 525 00:47:37,065 --> 00:47:41,069 <おいら 命を懸けております> 526 00:47:41,069 --> 00:47:43,069 <どうか お許しを>