1 00:00:02,202 --> 00:00:08,141 (はな)このままだと ジュリエットの役 降ろされますよ。 2 00:00:08,141 --> 00:00:11,278 舞台に立てなくなっても いいんですか? 3 00:00:11,278 --> 00:00:13,213 (蓮子)いいえ。 4 00:00:13,213 --> 00:00:17,618 じゃあ これ 読んで下さい。 徹夜で書き上げた脚本です。 5 00:00:17,618 --> 00:00:21,955 私なりに脚色も加えました。 6 00:00:21,955 --> 00:00:26,660 これを読んで やるかどうか 決めて下さい。 7 00:00:34,968 --> 00:00:41,308 (醍醐)はなさん。 あっ 醍醐さん おはよう。 8 00:00:41,308 --> 00:00:47,648 はなさんは どっちを選ぶの? は…? 9 00:00:47,648 --> 00:00:51,518 徹夜で書き上げた原稿を あの方に読ませるなんて…。 10 00:00:51,518 --> 00:00:58,992 私より葉山様の事が好きなの? 11 00:00:58,992 --> 00:01:25,953 ♬~ 12 00:01:25,953 --> 00:01:30,290 どっちかなんて そんなの 選べる訳ないじゃないですか。 13 00:01:30,290 --> 00:01:34,628 「ロミオとジュリエット」を成功させるために 2人とも大切な人です。 14 00:01:34,628 --> 00:01:38,966 そういう事じゃなくて! えっ? 15 00:01:38,966 --> 00:01:41,668 もういい! 16 00:01:43,303 --> 00:01:48,976 私は はなさんに ジュリエットをやってほしいの。 17 00:01:48,976 --> 00:01:52,846 それは無理! だって 私 緊張すると 声 裏返っちゃうし。 18 00:01:52,846 --> 00:01:54,848 じゃあ 誰が ジュリエットをやるの? 19 00:01:54,848 --> 00:01:58,852 葉山様は ちっとも 稽古にいらっしゃらないし。 20 00:02:01,254 --> 00:02:05,926 (白鳥)分かりました。 私が一肌脱ぎましょう。 21 00:02:05,926 --> 00:02:08,595 (はな 醍醐)白鳥様…。 22 00:02:08,595 --> 00:02:11,498 そんなに困っているなら➡ 23 00:02:11,498 --> 00:02:16,937 ジュリエット役は この白鳥が お引き受けしても よくってよ。 24 00:02:16,937 --> 00:02:21,608 ますます 暗雲が立ちこめる 「ロミオとジュリエット」。 25 00:02:21,608 --> 00:02:27,481 無事に公演まで こぎ着ける事が できるのでしょうか? 26 00:02:27,481 --> 00:02:30,283 ♬「これから はじまる」 27 00:02:30,283 --> 00:02:33,186 ♬「あなたの 物語」 28 00:02:33,186 --> 00:02:37,624 ♬「ずっと長く 道は続くよ」 29 00:02:37,624 --> 00:02:42,295 ♬「虹色の雨 降り注げば」 30 00:02:42,295 --> 00:02:47,968 ♬「空は 高鳴る」 31 00:02:47,968 --> 00:02:52,839 ♬「眩しい笑顔の奥に」 32 00:02:52,839 --> 00:02:58,311 ♬「悲しい音がする」 33 00:02:58,311 --> 00:03:03,917 ♬「寄りそって 今があって」 34 00:03:03,917 --> 00:03:11,258 ♬「こんなにも 愛おしい」 35 00:03:11,258 --> 00:03:15,929 ♬「手を繋げば 温かいこと」 36 00:03:15,929 --> 00:03:22,269 ♬「嫌いになれば 一人になってくこと」 37 00:03:22,269 --> 00:03:26,940 ♬「ひとつひとつが あなたになる」 38 00:03:26,940 --> 00:03:31,645 ♬「道は 続くよ」 39 00:03:39,953 --> 00:03:42,622 「おお ロミオ様!➡ 40 00:03:42,622 --> 00:03:47,294 どうして あなたは ロミオなんでしょう?➡ 41 00:03:47,294 --> 00:03:49,963 ロミオ・モンタギュー!➡ 42 00:03:49,963 --> 00:03:53,300 あなたの家と 私の家は…」。 43 00:03:53,300 --> 00:03:57,971 あの衣装 どうしたのかしら? やる気満々ですよ。 44 00:03:57,971 --> 00:04:01,842 どうするのよ? どうするって…。 45 00:04:01,842 --> 00:04:05,545 お願い! 畠山さん 断ってきて。 (畠山)えっ…。 46 00:04:07,581 --> 00:04:13,453 「ロミオ様。 どうしたら 私たちは 運命に打ち勝ち➡ 47 00:04:13,453 --> 00:04:18,759 永遠の愛を手にする事が できるのでしょう?」。 48 00:04:21,928 --> 00:04:24,831 醍醐さん あなた ロミオでしょう?➡ 49 00:04:24,831 --> 00:04:27,801 何 見てるんですか? 早く お稽古 始めましょう! 50 00:04:27,801 --> 00:04:30,504 すいません…。 51 00:04:36,276 --> 00:04:43,950 では 第三幕 四場 キャピュレット家のバルコニーと庭園。 52 00:04:43,950 --> 00:04:47,621 「おお 愛するジュリエット…」。 53 00:04:47,621 --> 00:04:51,291 もっと 気持ち入れて! 54 00:04:51,291 --> 00:04:54,294 (ドアが開く音) 55 00:05:07,240 --> 00:05:09,910 何しに来たんですか? 56 00:05:09,910 --> 00:05:12,579 あなたは もう とっくに 降りたはずでしょう。 57 00:05:12,579 --> 00:05:16,917 私 降りません。 絶対に。 58 00:05:16,917 --> 00:05:18,852 蓮子さん…。 59 00:05:18,852 --> 00:05:21,254 お稽古も 今日から ちゃんと参りますので➡ 60 00:05:21,254 --> 00:05:24,157 よろしくお願い致します。 61 00:05:24,157 --> 00:05:26,927 また そんな無責任な事 おっしゃって➡ 62 00:05:26,927 --> 00:05:30,630 これ以上 私たちを振り回さないで下さい! 63 00:05:35,602 --> 00:05:40,307 脚本 最後まで読みました。 64 00:05:41,942 --> 00:05:45,278 率直に感動致しました。 65 00:05:45,278 --> 00:05:50,150 シェークスピアが こんなに 面白かったなんて知らなかった。 66 00:05:50,150 --> 00:05:56,289 あなた やっぱり 翻訳力だけは 大したものだわ。 67 00:05:56,289 --> 00:06:00,160 蓮子さん…。 68 00:06:00,160 --> 00:06:03,463 (茂木)やっと 本気になってくれましたね。 69 00:06:13,240 --> 00:06:15,575 (ふじ)吉太郎! 吉太郎! 70 00:06:15,575 --> 00:06:19,446 ところで ふじは こんなに慌てて どうしたのでしょう? 71 00:06:19,446 --> 00:06:22,249 (リン)ふじちゃん…。 吉太郎! 72 00:06:22,249 --> 00:06:25,151 (吉太郎)おかあ。 どうしただ? 73 00:06:25,151 --> 00:06:31,258 おまん 軍隊に入りたがってるって 本当け。 74 00:06:31,258 --> 00:06:33,193 (周造)てっ! 75 00:06:33,193 --> 00:06:36,596 今 地主さんとこで 聞いてきただよ。 76 00:06:36,596 --> 00:06:41,468 事もあろうに 宴会に乗り込んで 連隊長に直訴しただとう? 77 00:06:41,468 --> 00:06:43,937 (もも)てっ! 兄やん 兵隊さんになるだけ。 78 00:06:43,937 --> 00:06:46,239 もも やめろし! 79 00:06:48,608 --> 00:06:55,315 キチ どういうこんだ。 80 00:06:56,950 --> 00:06:59,853 おじぃやんと おかあには➡ 81 00:06:59,853 --> 00:07:05,558 折を見て ちゃんと言おうと思ってただよ。 82 00:07:05,558 --> 00:07:08,561 おら 兵隊になる。 83 00:07:11,431 --> 00:07:13,900 ええ加減な気持ちじゃねえ。 84 00:07:13,900 --> 00:07:17,570 いつか 軍隊に入って 立派に お国の役に立って➡ 85 00:07:17,570 --> 00:07:21,274 みんなに楽さしてやりてえだ。 86 00:07:27,580 --> 00:07:35,922 ほれと 同じこん うちの人も言ってただ…。➡ 87 00:07:35,922 --> 00:07:38,591 そう言って➡ 88 00:07:38,591 --> 00:07:44,931 おらが止めるのも聞かんで 行っちまって…➡ 89 00:07:44,931 --> 00:07:49,269 戻ってこなんだ。 90 00:07:49,269 --> 00:07:56,576 あんな思えすんのは おら一人で たくさんだ…。 91 00:08:03,550 --> 00:08:13,226 (泣き声) 92 00:08:13,226 --> 00:08:16,896 (周造) リンの亭主が戦死した時にゃあ➡ 93 00:08:16,896 --> 00:08:22,235 朝市は まだ 乳飲み子だったからな。 94 00:08:22,235 --> 00:08:30,110 朝市から聞いただ。 日清戦争で戦死しただって。 95 00:08:30,110 --> 00:08:35,815 ほんでも おら お国のために死ねるじゃ本望だ! 96 00:08:37,584 --> 00:08:42,255 このまま ここで くすぶってちゃ 死んでると同じこんだ! 97 00:08:42,255 --> 00:08:56,603 ♬~ 98 00:08:56,603 --> 00:08:58,938 「ロミオ・モンタギュー。➡ 99 00:08:58,938 --> 00:09:02,542 あなたの家と 私の家は 互いに憎しみ合う宿命。➡ 100 00:09:02,542 --> 00:09:06,413 その忌まわしいモンタギューの名前を あなたが捨てて下さるなら➡ 101 00:09:06,413 --> 00:09:10,884 私も 今すぐ キャピュレットの名を捨てますわ」。 102 00:09:10,884 --> 00:09:13,553 「名前が何だというのであろう。➡ 103 00:09:13,553 --> 00:09:16,890 ロミオの名前を捨てたところで 私は 私だ!」。 104 00:09:16,890 --> 00:09:21,761 「ええ。 バラは たとえ ほかの どんな名前でも 香りは同じ。➡ 105 00:09:21,761 --> 00:09:26,566 名前が 何だというのでしょう」。 そうかな…。 106 00:09:26,566 --> 00:09:32,906 どうしたの? はなさん。 ここ どうしても気になるんです。 107 00:09:32,906 --> 00:09:36,776 「バラは たとえ ほかの どんな名前でも 香りは同じ」と➡ 108 00:09:36,776 --> 00:09:38,778 シェークスピアは 言ってますが➡ 109 00:09:38,778 --> 00:09:42,916 もし バラが アザミとかキャベツなんて名前だったら➡ 110 00:09:42,916 --> 00:09:46,586 あんな すてきに 感じられるかしら? 111 00:09:46,586 --> 00:09:51,925 私のおとうが 吉平ではなく ゴンベエっていう名前だったら➡ 112 00:09:51,925 --> 00:09:54,594 おかあは 好きになってるかしら…。 113 00:09:54,594 --> 00:09:58,465 つまり はなさんは 何が言いたいの? 114 00:09:58,465 --> 00:10:02,469 やっぱり 名前は 大切ですよね。 115 00:10:02,469 --> 00:10:06,206 あの… ここのセリフ 変えたいんですけど…。 116 00:10:06,206 --> 00:10:09,943 はなさん。 悪いけど そんな時間は ないわ。➡ 117 00:10:09,943 --> 00:10:12,946 このまま いきましょう。 118 00:10:15,815 --> 00:10:19,953 分かりました。 119 00:10:19,953 --> 00:10:24,257 では 今のところから もう一度。 120 00:10:28,628 --> 00:10:31,297 「名前が 何だというのであろう。➡ 121 00:10:31,297 --> 00:10:35,602 ロミオの名前を捨てたところで 私は 私だ!」。 122 00:10:38,171 --> 00:10:42,909 「ロミオ様 それは どうでしょうか。➡ 123 00:10:42,909 --> 00:10:47,847 もし バラが アザミやキャベツという名前だったら➡ 124 00:10:47,847 --> 00:10:51,317 同じように 香らないのではありませんか?➡ 125 00:10:51,317 --> 00:10:55,021 やはり 名前は 大事なものです」。 126 00:10:56,990 --> 00:10:59,893 勝手に セリフ変えないで下さい! 127 00:10:59,893 --> 00:11:02,795 そのセリフの方が ずっといいわ! 128 00:11:02,795 --> 00:11:05,598 前より 意味が深まって聞こえます。 129 00:11:05,598 --> 00:11:10,603 そうね。 じゃあ それでいきましょう。 130 00:11:17,944 --> 00:11:22,615 さっきは すてきな即興のセリフ ありがとうございました。 131 00:11:22,615 --> 00:11:26,286 シェークスピアのセリフに けちをつけるなんて➡ 132 00:11:26,286 --> 00:11:30,957 はなさんも 相当ひねくれてるわね。 133 00:11:30,957 --> 00:11:33,660 そうですね…。 134 00:11:35,295 --> 00:11:39,632 はなさんのお父様とお母様は 好き合って結ばれたの? 135 00:11:39,632 --> 00:11:45,505 ええ まあ。 行商で甲府に来た父が ブドウ畑で倒れて➡ 136 00:11:45,505 --> 00:11:47,974 母に助けられたんです。 137 00:11:47,974 --> 00:11:51,844 父は 母に 旅先での話を いろいろしてくれて➡ 138 00:11:51,844 --> 00:11:56,316 母は もっと話が聞きたいと思って 結婚したんです。 139 00:11:56,316 --> 00:12:00,620 そう…。 140 00:12:05,592 --> 00:12:08,494 はなは 思いました。 141 00:12:08,494 --> 00:12:11,264 もしかすると 蓮子様は➡ 142 00:12:11,264 --> 00:12:16,936 望まない相手と 結婚させられたのかもしれない。 143 00:12:16,936 --> 00:12:20,640 まるで ジュリエットのように。 144 00:12:25,278 --> 00:12:28,948 もし 私が ジュリエットのように➡ 145 00:12:28,948 --> 00:12:35,255 親が決めた 望まない相手との 結婚を迫られたら…。 146 00:12:36,823 --> 00:12:43,296 はなは 子どもの頃のように 想像の翼を広げました。 147 00:12:43,296 --> 00:12:46,633 (吉平)はな。 148 00:12:46,633 --> 00:12:52,505 はなは あの男と一緒になるだ。 149 00:12:52,505 --> 00:12:57,977 はな。 涙をのんで辛抱してくりょう。 150 00:12:57,977 --> 00:13:02,248 これで みんな 腹いっぺえ食えるだよ。 151 00:13:02,248 --> 00:13:06,919 こりゃあ おまんの運命じゃん。 152 00:13:06,919 --> 00:13:11,791 あっ 婿殿が おいでになっただ。➡ 153 00:13:11,791 --> 00:13:15,495 婿殿! 154 00:13:25,605 --> 00:13:29,275 (武)はな。 おらの嫁になってくりょう。 155 00:13:29,275 --> 00:13:31,210 武…。 156 00:13:31,210 --> 00:13:34,947 はなたれ! おらの嫁にしてやるじゃん! 157 00:13:34,947 --> 00:13:37,950 嫌~! 158 00:13:44,290 --> 00:13:46,959 (綾小路)大きな声を出して…。 159 00:13:46,959 --> 00:13:54,967 脚本の事で 根を詰め過ぎたのね。 少し 頭を休めた方がいいわ。 160 00:14:03,242 --> 00:14:10,116 「お兄上様。 来る5月16日 午後2時より➡ 161 00:14:10,116 --> 00:14:17,590 修和女学校 講堂にて 大文学会開催の運びと相成り候。➡ 162 00:14:17,590 --> 00:14:24,464 兄上様には 必ず 必ず おいで下さるべく候。➡ 163 00:14:24,464 --> 00:14:29,202 おいで候わば 理由お分かりと存じ候。➡ 164 00:14:29,202 --> 00:14:33,206 かしこ。 蓮子」。 165 00:14:38,277 --> 00:14:45,585 いやはや まあ まるで 果たし状のような招待状ですこと。 166 00:14:47,286 --> 00:14:51,991 ごきげんよう。 さようなら。