1 00:00:02,202 --> 00:00:05,606  心の声  (花子)「曲がり角を曲がった先に➡ 2 00:00:05,606 --> 00:00:08,508 何があるのかは 分からないの。➡ 3 00:00:08,508 --> 00:00:12,946 でも それは きっと…。➡ 4 00:00:12,946 --> 00:00:18,285 きっと 一番よいものに 違いないと思うの」。 5 00:00:18,285 --> 00:00:23,624 (空襲警報) 6 00:00:23,624 --> 00:00:27,494 平和になる時を 待っているのではなく➡ 7 00:00:27,494 --> 00:00:31,498 今 これが私のすべき事なのだ。 8 00:00:31,498 --> 00:00:38,171 その思いに突き動かされ 翻訳を始めた花子でした。 9 00:00:38,171 --> 00:00:41,975 (空襲警報) 10 00:00:41,975 --> 00:00:43,911 (爆撃音) 11 00:00:43,911 --> 00:00:48,315 空襲の町を逃げながら 花子は 祈りました。 12 00:00:48,315 --> 00:00:55,188 生きた証しとして この本だけは訳したい! 13 00:00:55,188 --> 00:00:57,658 ♬「これから はじまる」 14 00:00:57,658 --> 00:01:00,928 ♬「あなたの 物語」 15 00:01:00,928 --> 00:01:05,265 ♬「ずっと長く 道は続くよ」 16 00:01:05,265 --> 00:01:09,603 ♬「虹色の雨 降り注げば」 17 00:01:09,603 --> 00:01:15,275 ♬「空は 高鳴る」 18 00:01:15,275 --> 00:01:20,614 ♬「眩しい笑顔の奥に」 19 00:01:20,614 --> 00:01:25,953 ♬「悲しい音がする」 20 00:01:25,953 --> 00:01:31,291 ♬「寄りそって 今があって」 21 00:01:31,291 --> 00:01:38,966 ♬「こんなにも 愛おしい」 22 00:01:38,966 --> 00:01:43,637 ♬「手を繋げば 温かいこと」 23 00:01:43,637 --> 00:01:49,509 ♬「嫌いになれば 一人になってくこと」 24 00:01:49,509 --> 00:01:54,281 ♬「ひとつひとつが あなたになる」 25 00:01:54,281 --> 00:01:59,653 ♬「道は 続くよ」 26 00:01:59,653 --> 00:02:10,263 ♬「風が運ぶ 希望の種」 27 00:02:10,263 --> 00:02:20,574 ♬「光が 夢のつぼみになる」 28 00:02:27,614 --> 00:02:30,517 (直子)おめめが痛いよ。 29 00:02:30,517 --> 00:02:32,953 (美里)目が痛い。 30 00:02:32,953 --> 00:02:36,623 (もも)大丈夫。 大丈夫よ。 大丈夫。 31 00:02:36,623 --> 00:02:40,494 もう少しだから歩こう。 32 00:02:40,494 --> 00:02:46,633 甲府に疎開させていた直子が 東京に帰ってきたやさきの➡ 33 00:02:46,633 --> 00:02:49,336 空襲でした。 34 00:03:05,118 --> 00:03:09,589 (旭)あっ… 直子! もも! 35 00:03:09,589 --> 00:03:12,259 お父さん! 旭さん! 36 00:03:12,259 --> 00:03:16,129 (英治)美里! 花子さん! (美里)お父様! 37 00:03:16,129 --> 00:03:18,832 英治さん。 38 00:03:22,269 --> 00:03:24,604 みんな無事でよかった。 39 00:03:24,604 --> 00:03:28,608 恐ろしかっただろう? ええ。 40 00:03:30,277 --> 00:03:32,212 かよさんは? 41 00:03:32,212 --> 00:03:35,949 分からないの…。 ここには来てないのね。 42 00:03:35,949 --> 00:03:40,287 うん…。 僕らも さっき なんとか たどりついたところで。 43 00:03:40,287 --> 00:03:44,291 工場が爆撃されて お義兄さんと逃げてきたんです。 44 00:03:54,835 --> 00:04:00,907 お姉やんの大切な部屋が こんな事になるなんて…。 45 00:04:00,907 --> 00:04:06,246 でも 燃え広がらなくて よかったわ。 46 00:04:06,246 --> 00:04:09,583 もし 火が広がっていたら どうなっていたか…。 47 00:04:09,583 --> 00:04:14,287 大事な本を 防空壕に隠しておいて よかった。 48 00:04:17,457 --> 00:04:20,227 かよ…。 49 00:04:20,227 --> 00:04:22,929 かよ! 50 00:04:22,929 --> 00:04:27,267 かよ姉やん! 無事だったのね。 よかった…。 51 00:04:27,267 --> 00:04:29,202 (かよ)お姉やん…。 52 00:04:29,202 --> 00:04:31,938 かよ? 53 00:04:31,938 --> 00:04:36,276 私の店… 焼けてしまったの。 54 00:04:36,276 --> 00:04:41,982 あの辺は 全部 燃えて 何にも残ってない。 55 00:04:45,619 --> 00:04:48,288 お姉やん…。 56 00:04:48,288 --> 00:05:13,246 ♬~ 57 00:05:13,246 --> 00:05:17,551 (富士子)配給 また おいも? 58 00:05:20,587 --> 00:05:24,457 (蓮子)お母様は おいも好きよ。 59 00:05:24,457 --> 00:05:30,263 おいもにはね お父様との思い出があるの。 60 00:05:30,263 --> 00:05:34,134 お父様と一緒になった頃➡ 61 00:05:34,134 --> 00:05:38,939 よく お父様が 焼きいもを 買ってきて下さったのよ。 62 00:05:38,939 --> 00:05:41,608 (ため息) 63 00:05:41,608 --> 00:05:47,280 私は 何でもいいから おなかいっぱい食べたい。 64 00:05:47,280 --> 00:05:50,951 富士子…。 65 00:05:50,951 --> 00:05:57,257 お兄様は ちゃんと 食べていらっしゃるかしら。 66 00:06:01,228 --> 00:06:03,930 (戸が開く音) 67 00:06:07,901 --> 00:06:11,605 あなた! お父様。 68 00:06:14,241 --> 00:06:19,112 (龍一)よかった…。 無事だったか。 69 00:06:19,112 --> 00:06:24,818 空襲がひどいと聞いて 心配して戻ってきた。 70 00:06:28,588 --> 00:06:30,924 お帰りなさい。 71 00:06:30,924 --> 00:06:33,627 ただいま。 72 00:06:41,568 --> 00:06:49,276 そうか…。 純平は 出征したのか。 73 00:06:49,276 --> 00:06:52,612 はい。 74 00:06:52,612 --> 00:06:59,286 つい この間 一度だけ 特別休暇で帰ってきたんです。 75 00:06:59,286 --> 00:07:06,092 お父様がいて下さったら お兄様 喜んだでしょうに。 76 00:07:06,092 --> 00:07:11,865 私がいても➡ 77 00:07:11,865 --> 00:07:18,171 あいつを喜ばせるような事は 何一つ言ってやれない。 78 00:07:21,541 --> 00:07:25,912 私もです。 79 00:07:25,912 --> 00:07:32,252 送り出す前の晩 純平に言われてしまいました。 80 00:07:32,252 --> 00:07:36,556 「笑顔で送り出してくれ」と。 81 00:07:45,598 --> 00:07:49,469 せっかく翻訳した原稿が…。 82 00:07:49,469 --> 00:07:54,941 原稿は また書き直せばいいのよ。 83 00:07:54,941 --> 00:07:58,945 この原書と辞書がある限り 大丈夫。 84 00:08:00,547 --> 00:08:08,421 何十回 爆弾を落とされようと 私 この翻訳を完成させるわ。 85 00:08:08,421 --> 00:08:12,425 私にできる事は これだけだから。 86 00:08:24,571 --> 00:08:31,244 蓮子や醍醐は… みんなは 無事だろうか。 87 00:08:31,244 --> 00:08:36,249 花子は 祈るような気持ちで 翻訳を続けました。 88 00:08:38,918 --> 00:08:42,789 (美里)今夜も 空襲が来るんじゃないかしら。 89 00:08:42,789 --> 00:08:46,793 (かよ)いつになったら ゆっくり寝られるのかな。 90 00:08:46,793 --> 00:08:53,266 どんなに不安で暗い夜でも 必ず 朝がやって来る。 91 00:08:53,266 --> 00:08:55,935 アンも言ってるわ。 92 00:08:55,935 --> 00:08:59,806 「朝は どんな朝でも美しい」って。 93 00:08:59,806 --> 00:09:03,209 お母様 アンのお話して。 94 00:09:03,209 --> 00:09:05,512 いいわよ。 95 00:09:07,080 --> 00:09:09,082 「『ゆうべは まるで➡ 96 00:09:09,082 --> 00:09:12,886 この世界が 荒野のような気がしましたが➡ 97 00:09:12,886 --> 00:09:17,223 今朝は こんなに日が照っていて➡ 98 00:09:17,223 --> 00:09:19,893 本当にうれしいわ。➡ 99 00:09:19,893 --> 00:09:24,764 でも 雨降りの朝も大好きなの。➡ 100 00:09:24,764 --> 00:09:29,569 朝は どんな朝でも よかないこと?➡ 101 00:09:29,569 --> 00:09:32,472 その日に どんな事が起こるか➡ 102 00:09:32,472 --> 00:09:36,242 分からないんですもの。➡ 103 00:09:36,242 --> 00:09:40,246 想像の余地があるから いいわ』」。 104 00:09:41,915 --> 00:09:49,589 生と死が紙一重の中で 花子は 翻訳を続けました。 105 00:09:49,589 --> 00:09:51,925 「What’s your name?」。 106 00:09:51,925 --> 00:09:55,595 「『名前は 何ていうの?』。➡ 107 00:09:55,595 --> 00:09:58,932 子どもは ちょっと ためらってから➡ 108 00:09:58,932 --> 00:10:03,603 『私を コーデリアと 呼んで下さらない?』と➡ 109 00:10:03,603 --> 00:10:07,273 熱心に頼んだ。➡ 110 00:10:07,273 --> 00:10:10,944 『それが あんたの名前なのかい?』。➡ 111 00:10:10,944 --> 00:10:14,280 『いいえ。 あの…➡ 112 00:10:14,280 --> 00:10:17,183 私の名前って訳じゃ ないんですけれど➡ 113 00:10:17,183 --> 00:10:20,620 コーデリアと呼ばれたいんです。➡ 114 00:10:20,620 --> 00:10:24,491 すばらしく 優美な名前なんですもの』。➡ 115 00:10:24,491 --> 00:10:29,629 『何を言っているのか さっぱり分からないね。➡ 116 00:10:29,629 --> 00:10:35,502 コーデリアというんでないなら 何という名前なの?』。➡ 117 00:10:35,502 --> 00:10:40,640 『アン・シャーリー』」。 118 00:10:40,640 --> 00:10:46,312 (鐘の音) 119 00:10:46,312 --> 00:10:49,215 アンって 私に よく似てる…。 120 00:10:49,215 --> 00:10:54,988 てっ? なにょう言ってるでえ。 おらに似てるずら。➡ 121 00:10:54,988 --> 00:10:57,657 グッド イブニング! 花子。 122 00:10:57,657 --> 00:11:01,928 てっ…。 あ… あなた 私? 123 00:11:01,928 --> 00:11:03,863 …はな? 124 00:11:03,863 --> 00:11:07,600 はなじゃねえ。 おらの事は 花子と呼んでくりょう。 125 00:11:07,600 --> 00:11:11,304 てっ! やっぱり 私だ。 126 00:11:12,939 --> 00:11:16,609 その本 面白そうじゃんけ! 127 00:11:16,609 --> 00:11:20,480 ええ。 すごく面白いわよ。 128 00:11:20,480 --> 00:11:23,950 おらも読みてえ。 ちょっこし 読ましてくれちゃあ。 129 00:11:23,950 --> 00:11:26,252 ええ。 130 00:11:27,820 --> 00:11:30,823 てっ! 英語じゃん! 131 00:11:30,823 --> 00:11:36,296 全部 英語じゃんけ! 花子は これ 全部 読めるだけ? 132 00:11:36,296 --> 00:11:38,965 ええ 読めるわ。 133 00:11:38,965 --> 00:11:41,868 あなたが 修和女学校にいる時➡ 134 00:11:41,868 --> 00:11:44,837 こぴっと頑張って 英語を勉強してくれたおかげで➡ 135 00:11:44,837 --> 00:11:48,308 私 今 翻訳の仕事をしているの。➡ 136 00:11:48,308 --> 00:11:52,645 村岡花子という名前で。 137 00:11:52,645 --> 00:11:55,548 村岡花子…。 138 00:11:55,548 --> 00:12:00,453 おらも頑張ったけんど 花子も頑張ったじゃん! 139 00:12:00,453 --> 00:12:03,590 ありがとごいす。 140 00:12:03,590 --> 00:12:07,460 この本 どんな話か 教えてくれちゃあ! 141 00:12:07,460 --> 00:12:10,763 ええ。 142 00:12:12,599 --> 00:12:17,937 物語の舞台は カナダのプリンス・エドワード島。 143 00:12:17,937 --> 00:12:23,610 主人公は赤毛で そばかすだらけの 女の子 アン・シャーリー。 144 00:12:23,610 --> 00:12:28,481 生まれて間もなく両親を亡くして 孤児院へ預けられたアンは➡ 145 00:12:28,481 --> 00:12:30,483 ふとした間違いで➡ 146 00:12:30,483 --> 00:12:35,955 男の子を欲しがっていた マシュウとマリラという兄妹のおうちへ➡ 147 00:12:35,955 --> 00:12:37,890 やって来るの。➡ 148 00:12:37,890 --> 00:12:42,295 マシュウは 働き者で無口な おじいさんなんだけれど➡ 149 00:12:42,295 --> 00:12:44,964 アンの事が とっても気に入ってしまって➡ 150 00:12:44,964 --> 00:12:47,634 マリラに こう言われるの。 151 00:12:47,634 --> 00:12:53,306 「マシュウ。 きっと あの子に 魔法でもかけられたんだね。➡ 152 00:12:53,306 --> 00:12:56,976 あんたが あの子を このうちに 置きたがっているって事が➡ 153 00:12:56,976 --> 00:12:59,879 ちゃ~んと 顔に書いてありますよ」。 154 00:12:59,879 --> 00:13:06,586 「そうさな。 あの子は ほんに面白い子どもだよ」って。 155 00:13:06,586 --> 00:13:09,922 てっ。 おじぃやんみてえ。 156 00:13:09,922 --> 00:13:12,258 そうなの。 157 00:13:12,258 --> 00:13:17,597 マシュウは「Well, now…」っていうのが 口癖なんだけど➡ 158 00:13:17,597 --> 00:13:19,532 日本語で訳すと➡ 159 00:13:19,532 --> 00:13:23,469 おじぃやんの口癖だった あの言葉が ぴったりなの。 160 00:13:23,469 --> 00:13:27,273  回想  (周造)そうさな。 161 00:13:27,273 --> 00:13:31,611 あなたとアンは 似ているところが たくさん あるの。 162 00:13:31,611 --> 00:13:33,946 アンは 11歳の時に➡ 163 00:13:33,946 --> 00:13:36,849 一人で プリンス・エドワード島に やって来るんだけど…。 164 00:13:36,849 --> 00:13:39,819 おらが 修和女学校に入った時みてえに? 165 00:13:39,819 --> 00:13:45,558 そう。 その日から アンの運命は 大きく変わっていくの。 166 00:13:45,558 --> 00:13:49,962 て~っ。 アンって 本当に おらにそっくりじゃん。 167 00:13:49,962 --> 00:13:53,833 本当に私たちにそっくりなの。 168 00:13:53,833 --> 00:13:57,837 花子! このお話は いつ 本になるでえ? 169 00:13:57,837 --> 00:14:03,242 それは… 分からないの。 170 00:14:03,242 --> 00:14:06,145 本に出来るかどうかも 分からないわ。 171 00:14:06,145 --> 00:14:11,584 ほれなのに 花子は どうして翻訳なんしてるでえ? 172 00:14:11,584 --> 00:14:16,456 それはね 私の中にアンが住み着いていて➡ 173 00:14:16,456 --> 00:14:19,926 絶えず 私を励ましてくれるから。➡ 174 00:14:19,926 --> 00:14:23,262 先の見えない不安な時でも➡ 175 00:14:23,262 --> 00:14:27,133 アンは 決して希望を見失わずに こう言うの。 176 00:14:27,133 --> 00:14:33,606 「曲がり角を曲がった先に 何があるかは分からないの。➡ 177 00:14:33,606 --> 00:14:39,946 でも きっと 一番よいものに 違いないと思うの」って。 178 00:14:39,946 --> 00:14:43,649 曲がり角の先…。 179 00:14:48,955 --> 00:14:54,660 ごきげんよう。 さようなら。