1 00:00:02,202 --> 00:00:04,938 ある日の事。 2 00:00:04,938 --> 00:00:11,812 小鳩書房の小泉が 社長を連れてやって来ました。 3 00:00:11,812 --> 00:00:14,615 ♬「これから はじまる」 4 00:00:14,615 --> 00:00:17,517 ♬「あなたの 物語」 5 00:00:17,517 --> 00:00:22,289 ♬「ずっと長く 道は続くよ」 6 00:00:22,289 --> 00:00:26,960 ♬「虹色の雨 降り注げば」 7 00:00:26,960 --> 00:00:32,299 ♬「空は 高鳴る」 8 00:00:32,299 --> 00:00:37,170 ♬「眩しい笑顔の奥に」 9 00:00:37,170 --> 00:00:42,943 ♬「悲しい音がする」 10 00:00:42,943 --> 00:00:47,848 ♬「寄りそって 今があって」 11 00:00:47,848 --> 00:00:55,989 ♬「こんなにも 愛おしい」 12 00:00:55,989 --> 00:01:00,260 ♬「手を繋げば 温かいこと」 13 00:01:00,260 --> 00:01:06,600 ♬「嫌いになれば 一人になってくこと」 14 00:01:06,600 --> 00:01:11,271 ♬「ひとつひとつが あなたになる」 15 00:01:11,271 --> 00:01:16,276 ♬「道は 続くよ」 16 00:01:27,287 --> 00:01:31,158 (花子)門倉社長 ごきげんよう。 (門倉)どうも。 17 00:01:31,158 --> 00:01:34,161 「アンクル・トムズ・ケビン」の時は お世話になりました。 18 00:01:34,161 --> 00:01:37,297 こちらこそ。 (小泉)村岡先生は➡ 19 00:01:37,297 --> 00:01:40,634 翻訳や講演のお仕事で 大層お忙しいと言ったんですが➡ 20 00:01:40,634 --> 00:01:44,504 社長が ご意見だけでも 伺いたいと言うので。 21 00:01:44,504 --> 00:01:46,506 何でしょう? 22 00:01:46,506 --> 00:01:48,508 少し前に 弊社では➡ 23 00:01:48,508 --> 00:01:51,979 「風と共に去りぬ」の復刊本を 出しまして。 24 00:01:51,979 --> 00:01:54,648 ああ 大ベストセラーですね。 25 00:01:54,648 --> 00:01:57,317 あれは 翻訳もすばらしかったです。 26 00:01:57,317 --> 00:02:00,587 弊社としては 「風と共に去りぬ」に続くような➡ 27 00:02:00,587 --> 00:02:04,925 女性読者をつかむ新しい作品を 探しているんです。 28 00:02:04,925 --> 00:02:08,795 まだ 日本に紹介されていなくて➡ 29 00:02:08,795 --> 00:02:13,934 村岡先生が「これだ!」と 思うものは ないですか? 30 00:02:13,934 --> 00:02:18,805 新しい作品ですか。 はい。ええ。 31 00:02:18,805 --> 00:02:22,509 ちょっとお待ち下さい。 32 00:02:35,956 --> 00:02:40,827 (美里)お母様。 それ 前にも 小鳩書房さんに見せて➡ 33 00:02:40,827 --> 00:02:44,631 断られたんじゃなかったっけ? ええ…。 34 00:02:44,631 --> 00:02:48,301 ほかの出版社にも さんざん断られたし➡ 35 00:02:48,301 --> 00:02:53,173 駄目でもともと。 36 00:02:53,173 --> 00:02:55,976 6年間 花子は➡ 37 00:02:55,976 --> 00:02:59,312 出版してくれるところを 探し回りましたが➡ 38 00:02:59,312 --> 00:03:04,017 いまだに どこも見つかっていないのでした。 39 00:03:07,587 --> 00:03:09,923 これは! 40 00:03:09,923 --> 00:03:15,796 「ANNE of GREEN GABLES」。 「緑の切り妻屋根のアン」です。 41 00:03:15,796 --> 00:03:19,266 (小泉) 主人公のアンが魅力的だったので よく覚えています。 42 00:03:19,266 --> 00:03:22,936 ああ… まだ 出版されてなかったんですね。 43 00:03:22,936 --> 00:03:26,606 ええ。 日本では 知られていない作家だから➡ 44 00:03:26,606 --> 00:03:30,477 皆さん 冒険したがらなくて。 45 00:03:30,477 --> 00:03:38,218 「ANNE of GREEN GABLES」? 覚えてませんか? 46 00:03:38,218 --> 00:03:40,620 終戦後すぐに 村岡先生から➡ 47 00:03:40,620 --> 00:03:45,292 「アンクル・トム」と一緒に ご提案頂いたものですよ。 48 00:03:45,292 --> 00:03:49,162 ただ 新しいものでは ないんですよ。 49 00:03:49,162 --> 00:03:53,166 原作が書かれたのは 40年以上も前の話ですし➡ 50 00:03:53,166 --> 00:03:58,305 「風と共に去りぬ」のように ドラマチックな展開もありません。 51 00:03:58,305 --> 00:04:03,143 けど アメリカやカナダでは 大変 人気のある作家なんです。 52 00:04:03,143 --> 00:04:05,912 いや~ 僕は 大変面白いと思いました。 53 00:04:05,912 --> 00:04:08,248 どうですか 社長? 54 00:04:08,248 --> 00:04:12,252 今なら 冒険する余裕も あるじゃないですか。 55 00:04:19,259 --> 00:04:23,597 本当に そんなに面白いの? 56 00:04:23,597 --> 00:04:25,932 えっ? (小泉)社長! 57 00:04:25,932 --> 00:04:30,270 ひょっとして 読まずに断ったんですか? 58 00:04:30,270 --> 00:04:36,143 いや~… おわびしなきゃいけないですね。 59 00:04:36,143 --> 00:04:40,147 実は 読んでないんですよ。 60 00:04:43,617 --> 00:04:47,487 あのころは 知名度の低い作家に 手を出すほど➡ 61 00:04:47,487 --> 00:04:51,291 うちも余裕がなかったんです。 62 00:04:51,291 --> 00:04:54,961 タイトルも パッとしないじゃないですか。 63 00:04:54,961 --> 00:05:01,768 緑の屋根の家に住んでる女の子の 日常を描いた話なんでしょう? 64 00:05:01,768 --> 00:05:05,472 (戸が開く音) (美里)ひどすぎます! 65 00:05:07,908 --> 00:05:10,810 読みもせずに断っただなんて 許せないわ! 66 00:05:10,810 --> 00:05:12,779 ちょっと 美里! 67 00:05:12,779 --> 00:05:16,917 母は この原書 命懸けで翻訳したんですよ! 68 00:05:16,917 --> 00:05:19,586 それなのに 読んでない? 69 00:05:19,586 --> 00:05:21,521 本にも母にも失礼です! 70 00:05:21,521 --> 00:05:23,456 美里。 お客様に何を言うの。 71 00:05:23,456 --> 00:05:26,927 お母様。 こんな心ない人が やってる出版社に➡ 72 00:05:26,927 --> 00:05:29,829 大切な原稿を…。 ちょっと! 73 00:05:29,829 --> 00:05:32,799 いい加減になさい! でも お母様…。 74 00:05:32,799 --> 00:05:36,603 門倉社長 小泉さん 申し訳ありません。 75 00:05:36,603 --> 00:05:39,272 このように 私のしつけが なっておりませんで…。 76 00:05:39,272 --> 00:05:43,610 美里も謝りなさい。 77 00:05:43,610 --> 00:05:46,513 申し訳ありません。 78 00:05:46,513 --> 00:05:49,282 いえ。 お嬢さんが怒るのも無理ないです。 79 00:05:49,282 --> 00:05:53,620 すいません。 80 00:05:53,620 --> 00:05:57,324 社長も何か言って下さい! 81 00:06:01,895 --> 00:06:04,898 分かりました。 82 00:06:07,234 --> 00:06:13,106 読みます。 これから読みますから。 83 00:06:13,106 --> 00:06:16,576 原稿をお借りしても? 84 00:06:16,576 --> 00:06:20,247 ええ もちろん。 85 00:06:20,247 --> 00:06:24,551 本当に読んで下さいね。 美里。 86 00:06:29,256 --> 00:06:36,930 よろしくお願い致します。 確かに。 87 00:06:36,930 --> 00:06:40,934 お邪魔しました。 88 00:06:42,602 --> 00:06:45,605 お邪魔しました。 89 00:06:50,944 --> 00:07:13,566 ♬~ 90 00:07:13,566 --> 00:07:16,870 (もも)反省中? 91 00:07:20,240 --> 00:07:22,909 もも叔母様…。 92 00:07:22,909 --> 00:07:26,780 私って どうして こうなのかしら。 93 00:07:26,780 --> 00:07:32,085 カ~ッとなると 自分を 抑えられなくなってしまうの。 94 00:07:33,920 --> 00:07:41,928 お母様の大切なお客様だから ちゃんと謝らなきゃね。 95 00:07:47,267 --> 00:07:52,973 でも 許せない事は許せないわ。 96 00:07:56,276 --> 00:08:03,083 そういうとこ お姉やんそっくりだね。 97 00:08:03,083 --> 00:08:06,086 えっ? 98 00:08:06,086 --> 00:08:09,823 お姉やんも 小さい頃から➡ 99 00:08:09,823 --> 00:08:14,761 カ~ッとなると 自分を抑えられなくなって➡ 100 00:08:14,761 --> 00:08:17,897 幼なじみの朝市さんにも➡ 101 00:08:17,897 --> 00:08:25,205 「はなは 怒ると おっかねえ」って 言われてたの。 102 00:08:30,477 --> 00:08:34,447 でも…➡ 103 00:08:34,447 --> 00:08:42,455 私の本当のお母様は もも叔母様なんでしょう? 104 00:08:55,602 --> 00:08:58,938 ええ。 105 00:08:58,938 --> 00:09:04,644 生みの親は 私よ。 106 00:09:06,212 --> 00:09:13,219 でも 美里ちゃんも よく分かってるでしょう? 107 00:09:14,888 --> 00:09:23,897 お姉やんは 美里ちゃんを 心から愛してる。 108 00:09:28,902 --> 00:09:34,240 あんなに あなたの事を思ってる人は➡ 109 00:09:34,240 --> 00:09:38,945 世界中で2人だけよ。 110 00:09:43,583 --> 00:09:47,287 お母様とお父様? 111 00:09:50,457 --> 00:09:53,159 そう。 112 00:09:59,599 --> 00:10:05,305 後で お母様に ちゃんと謝らなきゃね。 113 00:10:07,273 --> 00:10:27,961 ♬~ 114 00:10:27,961 --> 00:10:32,966 あの… お母様。 115 00:10:36,970 --> 00:10:40,273 さっきは ごめんなさい。 116 00:10:42,842 --> 00:10:45,311 お母様のお客様に➡ 117 00:10:45,311 --> 00:10:50,316 あんな失礼な態度を とってしまって 反省しています。 118 00:10:54,654 --> 00:10:58,992 そうね。 いくら 頭に来たからといって➡ 119 00:10:58,992 --> 00:11:02,862 目上の人に対して ああいう態度は よくないわね。 120 00:11:02,862 --> 00:11:07,800 美里も もう大人なんだから わきまえないと。 121 00:11:07,800 --> 00:11:10,803 本当にごめんなさい。 122 00:11:16,476 --> 00:11:22,615 でも… 正直言うと 少しすっきりした。 123 00:11:22,615 --> 00:11:24,951 えっ? 124 00:11:24,951 --> 00:11:30,290 美里が怒ってくれなかったら お母様が怒ってたかもしれない。 125 00:11:30,290 --> 00:11:35,962 読まずに原稿を突き返すなんて ひどいわよね。 126 00:11:35,962 --> 00:11:39,966 お母様…。 127 00:11:44,637 --> 00:11:49,342 それからね…。 何? 128 00:11:50,977 --> 00:11:55,848 私…➡ 129 00:11:55,848 --> 00:11:59,852 お母様の娘でよかったわ。 130 00:12:03,256 --> 00:12:07,927 自分でも 困った性格だと 思う事もあるけど➡ 131 00:12:07,927 --> 00:12:13,600 私は 自分のほか 誰にもなりたくないわ。 132 00:12:13,600 --> 00:12:26,312 ♬~ 133 00:12:28,948 --> 00:12:35,288 その夜 遅くなってからの事でした。 134 00:12:35,288 --> 00:12:38,625 (英治)誰か いるみたいなんだ。 135 00:12:38,625 --> 00:12:43,930 こんな時間に? 今日は 休館日なのに…。 136 00:12:57,977 --> 00:13:00,680 誰か いるんですか? 137 00:13:06,586 --> 00:13:10,456 門倉社長… 小泉さん。 138 00:13:10,456 --> 00:13:13,159 遅くまで お邪魔して すみません! 139 00:13:14,927 --> 00:13:17,597 今まで 原稿 読んでらっしゃったんですか? 140 00:13:17,597 --> 00:13:22,602 はい…。 社長 読み始めたら 止まらなくなってしまって。 141 00:13:26,272 --> 00:13:31,944 あの… 昼間は つい カ~ッとなってしまって…。 142 00:13:31,944 --> 00:13:34,280 申し訳ありませんでした。 143 00:13:34,280 --> 00:13:37,950 いいじゃないですか! アン・シャーリーのようで! 144 00:13:37,950 --> 00:13:39,886 はっ? 145 00:13:39,886 --> 00:13:42,822 それより 僕は今 自分に腹が立って しょうがない! 146 00:13:42,822 --> 00:13:46,292 えっ? こんなに面白い物語を➡ 147 00:13:46,292 --> 00:13:49,962 何で 僕は 今まで出版しなかったんだ! 148 00:13:49,962 --> 00:13:53,299 まず 言葉がすばらしい。 149 00:13:53,299 --> 00:13:58,171 ありふれた日常を輝きに変える 言葉が ちりばめられています。 150 00:13:58,171 --> 00:14:01,908 これは 村岡先生の 優れた表現力によるところが➡ 151 00:14:01,908 --> 00:14:03,843 大きいでしょう。 152 00:14:03,843 --> 00:14:06,245 あ… ありがとうございます。 153 00:14:06,245 --> 00:14:10,583 そして アンの夢みる力が すばらしい。 154 00:14:10,583 --> 00:14:14,454 さあ 小泉君 社に戻ろう。 えっ? 155 00:14:14,454 --> 00:14:16,456 すぐ 出版の準備に 取りかかるんだよ! 156 00:14:16,456 --> 00:14:18,758 社長! 157 00:14:20,593 --> 00:14:22,528 すみません。 158 00:14:22,528 --> 00:14:24,530 すみません…。 159 00:14:26,265 --> 00:14:32,605 つまり… 出版できるという事? 160 00:14:32,605 --> 00:14:38,945 そうだよ。 お母様 よかったわね。 161 00:14:38,945 --> 00:14:42,281 ついに本になるのね。 162 00:14:42,281 --> 00:14:49,622 曲がり角の先が やっと少し 見えてきたような気が致します。 163 00:14:49,622 --> 00:14:54,327 ごきげんよう。 さようなら。