1 00:00:02,169 --> 00:00:05,839 (梶原)ああ 君か。 2 00:00:05,839 --> 00:00:10,177 今日から ひとつき 臨時で働いてもらう事になった➡ 3 00:00:10,177 --> 00:00:13,180 小間使いさんだ。 (はな)花子と呼んで下さい。 4 00:00:13,180 --> 00:00:16,183 よろしく 小間使いさん。 よろしく。よろしく。 5 00:00:16,183 --> 00:00:22,856 はなは 臨時雇いの小間使いとして 出版社で働く事になりました。 6 00:00:24,524 --> 00:00:26,860 (醍醐)大変 大変! どうしたの? 7 00:00:26,860 --> 00:00:28,862 ほら あそこ。 8 00:00:28,862 --> 00:00:31,532 そんな ある日の事。 9 00:00:31,532 --> 00:00:36,536 編集長と富山先生のあいびきを 目撃してしまったのです。 10 00:00:36,536 --> 00:00:41,208 てっ! 編集長…。 11 00:00:41,208 --> 00:00:44,211 ♬「これから はじまる」 12 00:00:44,211 --> 00:00:46,880 ♬「あなたの 物語」 13 00:00:46,880 --> 00:00:51,551 ♬「ずっと長く 道は続くよ」 14 00:00:51,551 --> 00:00:56,223 ♬「虹色の雨 降り注げば」 15 00:00:56,223 --> 00:01:01,395 ♬「空は 高鳴る」 16 00:01:01,395 --> 00:01:06,833 ♬「眩しい笑顔の奥に」 17 00:01:06,833 --> 00:01:12,172 ♬「悲しい音がする」 18 00:01:12,172 --> 00:01:17,177 ♬「寄りそって 今があって」 19 00:01:17,177 --> 00:01:24,851 ♬「こんなにも 愛おしい」 20 00:01:24,851 --> 00:01:29,856 ♬「手を繋げば 温かいこと」 21 00:01:29,856 --> 00:01:36,196 ♬「嫌いになれば 一人になってくこと」 22 00:01:36,196 --> 00:01:40,534 ♬「ひとつひとつが あなたになる」 23 00:01:40,534 --> 00:01:45,505 ♬「道は 続くよ」 24 00:01:53,880 --> 00:02:00,220 あの真面目な富山先生が 編集長と…。 25 00:02:00,220 --> 00:02:03,156 (蓮子)白昼堂々と あいびきなさってたそうね。 26 00:02:03,156 --> 00:02:06,493 えっ… 蓮様 どうして それを? 27 00:02:06,493 --> 00:02:09,830 とっくに 皆さん ご存じよ。 28 00:02:09,830 --> 00:02:13,834 それでね 富山先生のあいびきの 相手に 心当たりはないか➡ 29 00:02:13,834 --> 00:02:17,504 富山先生と同級生だった いとこに 聞いてみましたの! 30 00:02:17,504 --> 00:02:20,507 (竹沢)それで? 富山先生は 高等科の学生時代➡ 31 00:02:20,507 --> 00:02:25,512 ある青年と大恋愛をなさって 2人は 永遠の愛を誓い合ったの。 32 00:02:25,512 --> 00:02:28,515 (どよめき) ある青年? 33 00:02:28,515 --> 00:02:34,187 だけど 家同士の複雑なご事情から その恋は 実らなかったの。 34 00:02:34,187 --> 00:02:36,523 (大倉)まるで ロミオとジュリエットね…。 35 00:02:36,523 --> 00:02:38,859 (畠山) まさか 富山先生のロミオ様も➡ 36 00:02:38,859 --> 00:02:41,194 毒をあおって 死んでしまった訳じゃ…。 37 00:02:41,194 --> 00:02:44,865 いいえ。 彼は なんと 富山先生を捨てて➡ 38 00:02:44,865 --> 00:02:50,203 親が決めた裕福な財閥のお嬢様と 結婚してしまったのよ! 39 00:02:50,203 --> 00:02:52,873 (竹沢)昨日 あいびきしていた方が その ひどいロミオ? 40 00:02:52,873 --> 00:02:56,877 ええ。 富山先生の昔の恋人に 間違いないわ。 41 00:02:56,877 --> 00:03:00,814 彼の方も 財閥の娘とは とっくに離婚されたそうだし➡ 42 00:03:00,814 --> 00:03:05,152 富山先生と再会して 再び燃え上がったのよ! 43 00:03:05,152 --> 00:03:10,824 ちょ… ちょっと待って 醍醐さん。 そこまで決めつけなくても…。 44 00:03:10,824 --> 00:03:12,826 (ベル) いとこの話だと➡ 45 00:03:12,826 --> 00:03:16,496 彼は 昔から文学青年で 出版の仕事をされてるって。➡ 46 00:03:16,496 --> 00:03:20,834 ねっ? 間違いないでしょう。 47 00:03:20,834 --> 00:03:24,171 (富山)始業のベルが 聞こえなかったんですか? 48 00:03:24,171 --> 00:03:26,506 早く席に着きなさい。 49 00:03:26,506 --> 00:03:33,180 (ざわめき) 50 00:03:38,185 --> 00:03:41,188 そんなに騒ぐ事かしら? 51 00:03:41,188 --> 00:03:45,525 富山先生は 教師である前に 一人の女性なんですから。 52 00:03:45,525 --> 00:03:47,527 何の事ですか? 53 00:03:47,527 --> 00:03:51,198 あいびきくらい なさって 当然ですよね。 54 00:03:51,198 --> 00:04:09,382 ♬~ 55 00:04:09,382 --> 00:04:16,656 はなは つい よからぬ想像の翼を 広げてしまいました。 56 00:04:19,159 --> 00:04:21,828 「僕が バカだった。➡ 57 00:04:21,828 --> 00:04:26,166 君のいない人生なんて 何の意味もない。➡ 58 00:04:26,166 --> 00:04:31,171 まるで 香りのないバラと同じだ」。 59 00:04:31,171 --> 00:04:34,508 「そんな事おっしゃっても もう遅いわ」。 60 00:04:34,508 --> 00:04:38,512 「もう一度 僕を信じてくれ。➡ 61 00:04:38,512 --> 00:04:42,182 二度と 君を離さない!」。 62 00:04:42,182 --> 00:04:44,518 「梶原さん…」。 63 00:04:44,518 --> 00:04:47,187 何? 小間使い君。 64 00:04:47,187 --> 00:04:50,524 てっ! てっ! 編集長。 65 00:04:50,524 --> 00:04:54,528 どうしたの? 大丈夫? 66 00:04:54,528 --> 00:04:57,864 はあ…。 (英治)おはようございます。 67 00:04:57,864 --> 00:05:01,468 編集長 原稿を頂きに参りました。 68 00:05:01,468 --> 00:05:03,803 あっ。 69 00:05:03,803 --> 00:05:10,810 う~ん… ここ 百科事典とはいえ 分かりにくいですよね…。 70 00:05:10,810 --> 00:05:13,813 うん… 偉い学者に翻訳頼んだんだが➡ 71 00:05:13,813 --> 00:05:18,485 この先生 文体が硬すぎるんだよな。ええ。 72 00:05:18,485 --> 00:05:21,822 失礼します。 あっ すいません。 73 00:05:21,822 --> 00:05:25,158 あっ どうも。 74 00:05:25,158 --> 00:05:30,130 ありがとう。どうぞ。 小間使い君 これ 読んでみて。 75 00:05:41,841 --> 00:05:43,844 意味 分かる? 76 00:05:43,844 --> 00:05:46,813 さっぱり分かりません。 77 00:05:48,515 --> 00:05:53,186 君 英語できるんだよね? はあ…。 78 00:05:53,186 --> 00:05:55,522 ちょっと ここ座って。 79 00:05:55,522 --> 00:06:00,694 あのね これの ここ ちょっと読んでみて。 80 00:06:00,694 --> 00:06:04,130 「The body structure of camels➡ 81 00:06:04,130 --> 00:06:08,468 is well suited for living in desert conditions」。 82 00:06:08,468 --> 00:06:12,806 あっ こっちは よく分かります。 83 00:06:12,806 --> 00:06:17,477 あの 試しに このお嬢さんに 訳してもらったら どうでしょう? 84 00:06:17,477 --> 00:06:23,817 そうだな。 君 このページ 訳してみてくれるかな? 85 00:06:23,817 --> 00:06:28,488 私がですか? 急いで。はい! 86 00:06:33,493 --> 00:06:37,497 ここから ここまで。 はい。 87 00:06:37,497 --> 00:06:55,181 ♬~ 88 00:06:55,181 --> 00:06:58,518 あの方 どなたなんですか? 89 00:06:58,518 --> 00:07:02,122 村岡印刷の2代目だ。 2代目? 90 00:07:02,122 --> 00:07:07,093 (梶原)うん。 昔から うちに出入りしている印刷屋だよ。 91 00:07:17,470 --> 00:07:21,808 (茂木)あの方が 離婚なさっていたなんて➡ 92 00:07:21,808 --> 00:07:24,477 分からないものね。 93 00:07:24,477 --> 00:07:29,482 今更 そんな事を言われても どうしたらいいのか…。 94 00:07:29,482 --> 00:07:34,487 私は 富山先生を見直しました。 95 00:07:34,487 --> 00:07:36,489 いつぞやは➡ 96 00:07:36,489 --> 00:07:40,493 恋愛経験が乏しいなどと 失礼な事を申し上げて➡ 97 00:07:40,493 --> 00:07:43,163 すみませんでした。 98 00:07:43,163 --> 00:07:46,833 あなたは 失礼な事しか 言わないじゃありませんか。 99 00:07:48,501 --> 00:07:51,838 蓮子さんも お茶をいかが? 100 00:07:51,838 --> 00:07:55,842 スコット先生の焼いたクッキーも ありますのよ。 101 00:07:55,842 --> 00:07:58,812 恐れ入ります。 102 00:08:06,019 --> 00:08:08,988 富山先生。 103 00:08:10,790 --> 00:08:14,461 私は 愛のない結婚をして➡ 104 00:08:14,461 --> 00:08:20,467 こんなに ひねくれた女に なってしまいました。 105 00:08:20,467 --> 00:08:26,139 ですから 失礼ながら言わせて頂きます。 106 00:08:30,477 --> 00:08:33,813 本当に その方が好きなら➡ 107 00:08:33,813 --> 00:08:41,154 過去にこだわらず 愛を貫くべきです。 108 00:08:41,154 --> 00:08:56,503 ♬~ 109 00:08:56,503 --> 00:08:59,506 出来ました! 110 00:08:59,506 --> 00:09:04,110 村岡君! はい。 111 00:09:04,110 --> 00:09:09,082 どう? 拝読します。 112 00:09:10,784 --> 00:09:16,122 あのね 翻訳とは 原文との距離感が大事なんだ。 113 00:09:16,122 --> 00:09:18,458 原文に引きずられて➡ 114 00:09:18,458 --> 00:09:21,795 直訳や不自然な日本語になっても いかんし➡ 115 00:09:21,795 --> 00:09:25,131 読みやすさを重視して はしょり過ぎても いかん。 116 00:09:25,131 --> 00:09:28,134 その制約の中の勝負なんだ。 はい。 117 00:09:28,134 --> 00:09:35,475 …で 君の翻訳だけど どう? 118 00:09:35,475 --> 00:09:40,146 これは バカが読んでも分かりますね。 119 00:09:40,146 --> 00:09:42,482 えっ バカ? 120 00:09:42,482 --> 00:09:46,152 あっ いや あなたがバカだと 言ってる訳じゃないんです。 121 00:09:46,152 --> 00:09:49,155 褒めたんです。 最上級の褒め言葉だね。 122 00:09:49,155 --> 00:09:51,157 (英治)言いかえると➡ 123 00:09:51,157 --> 00:09:55,829 とても素直で きれいで 読みやすい翻訳だと思います。 124 00:09:55,829 --> 00:09:59,499 (梶原)小間使い君。 本気で やってみないか? 125 00:09:59,499 --> 00:10:01,501 えっ? 126 00:10:01,501 --> 00:10:07,173 これを たたき台にして 手を入れれば使い物になりそうだ。 127 00:10:09,509 --> 00:10:11,845 こぴっと頑張ります! 128 00:10:11,845 --> 00:10:16,115 「こぴっと」? それ どこの国の言葉? 129 00:10:17,851 --> 00:10:20,520 小間使いから翻訳者に昇格ね。 130 00:10:20,520 --> 00:10:23,189 おめでとう。 ありがとう。 131 00:10:23,189 --> 00:10:29,195 でも 忘れないで。 最初に あなたの才能を認めたのは 私よ。 132 00:10:29,195 --> 00:10:33,867 ええ。 もちろん 忘れませんとも。 133 00:10:33,867 --> 00:10:36,870  回想 率直に感動致しました。 134 00:10:36,870 --> 00:10:42,542 あなた やっぱり 翻訳力だけは 大したものだわ。 135 00:10:42,542 --> 00:10:45,545 蓮子さん…。 136 00:10:45,545 --> 00:10:48,882 これからは 女も自分の才能を伸ばして➡ 137 00:10:48,882 --> 00:10:53,553 仕事をして 男の人や権力に寄りかからずに➡ 138 00:10:53,553 --> 00:10:57,223 自分の足で歩いていける時代が 来ると思うの。 139 00:10:59,893 --> 00:11:06,065 それって… 仕事一筋で生きるっていう事? 140 00:11:06,065 --> 00:11:11,070 ブラックバーン校長や富山先生のように。 141 00:11:11,070 --> 00:11:17,510 私は 仕事はしたいけれど 一人で生きていく覚悟はないの。 142 00:11:17,510 --> 00:11:21,514 結婚もしたいし 子どもも欲しいわ。 143 00:11:21,514 --> 00:11:25,184 うちのおかあみたいに。 144 00:11:29,522 --> 00:11:33,526 両方やればいいじゃないの。 145 00:11:33,526 --> 00:11:36,196 えっ? 146 00:11:36,196 --> 00:11:38,197 与謝野晶子をご覧なさい。 147 00:11:38,197 --> 00:11:42,535 鉄幹と結婚して 精力的に仕事を続けながら➡ 148 00:11:42,535 --> 00:11:47,540 子どもを何人も産んでるのよ。 へえ~! 149 00:11:47,540 --> 00:11:51,211 そういえば はなちゃんは➡ 150 00:11:51,211 --> 00:11:53,546 花子と呼ばれたいって 言ってたわよね。 151 00:11:53,546 --> 00:11:55,548 ええ。 152 00:11:55,548 --> 00:11:59,886 世に自分の作品を出す時に その名前を使えばいいじゃないの。 153 00:11:59,886 --> 00:12:02,855 ペンネームね! 154 00:12:17,837 --> 00:12:22,108 うん。 悪くないわ。 155 00:12:25,845 --> 00:12:30,516 こぴっと やる気が出てきたわ。 156 00:12:30,516 --> 00:12:33,186 頑張って。 157 00:12:33,186 --> 00:12:39,859 蓮様の夢は 燃えるような本物の恋ですよね。 158 00:12:39,859 --> 00:12:45,198 ええ。 そして 恋の歌をたくさん作るの。 159 00:12:45,198 --> 00:12:48,868 これが 私のペンネーム。 160 00:12:52,872 --> 00:12:57,210 白蓮? すてき! 161 00:12:57,210 --> 00:13:01,381 蓮子は はなと過ごしながら➡ 162 00:13:01,381 --> 00:13:08,388 失われた青春の時間を 取り戻していました。 163 00:13:08,388 --> 00:13:14,827 そして このキラキラした時間が ず~っと続いてほしいと➡ 164 00:13:14,827 --> 00:13:17,830 蓮子も はなも 思っておりました。 165 00:13:17,830 --> 00:13:19,832 これにて。 166 00:13:19,832 --> 00:13:25,171 花子先生。 では ごきげんよう。 167 00:13:25,171 --> 00:13:48,861 ♬~ 168 00:13:48,861 --> 00:13:53,533 (ノック) 失礼します。 169 00:13:58,538 --> 00:14:01,140 (葉山)蓮子。 170 00:14:01,140 --> 00:14:06,813 お兄様 どうなさったんですか? 171 00:14:06,813 --> 00:14:12,485 例の縁談の事で…。 それは お断りしたはずです。 172 00:14:25,498 --> 00:14:30,169 頼む。 助けてくれ。 173 00:14:32,505 --> 00:14:34,841 お兄様? 174 00:14:34,841 --> 00:14:40,113 この縁談を受けて 葉山の家を救ってくれ。 175 00:14:41,848 --> 00:14:44,183 運命の歯車は➡ 176 00:14:44,183 --> 00:14:49,188 蓮子の知らないうちに 回り始めていたのです。 177 00:14:49,188 --> 00:14:53,159 ごきげんよう。 さようなら。