1 00:00:02,102 --> 00:00:20,354 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:20,354 --> 00:00:59,159 ♬~ 3 00:01:02,029 --> 00:01:05,832 <自分のけがに対する 松浪の陰の働きを➡ 4 00:01:05,832 --> 00:01:09,503 知ってか知らずか やっと歩ける足で➡ 5 00:01:09,503 --> 00:01:15,175 弘次郎が 松浪を訪ねて 集会場に来たのです> 6 00:01:15,175 --> 00:01:19,046 (松浪)それで 私に お話とは? 7 00:01:19,046 --> 00:01:21,515 (弘次郎)武術は 何をやりますか? 8 00:01:21,515 --> 00:01:24,551 …え? おととい 腕をつかまれて➡ 9 00:01:24,551 --> 00:01:26,853 不覚にも 動けなかった。 10 00:01:26,853 --> 00:01:31,525 けがをしていたからと 言い訳はしたくない。 11 00:01:31,525 --> 00:01:36,863 武芸一般 かなりの腕と見受けるが 何を修められた? 12 00:01:36,863 --> 00:01:41,535 何の お話かと思えば…。 もう 昔のことは 忘れました。 13 00:01:41,535 --> 00:01:45,038 忘れて ヤソに入られたのか。 そうです。 14 00:01:45,038 --> 00:01:47,541 なぜ! 15 00:01:47,541 --> 00:01:52,045 なぜ 武士の魂を捨てて ヤソなぞに? 16 00:01:52,045 --> 00:01:56,383 武士の魂を 捨ててはおりません。 17 00:01:56,383 --> 00:02:01,822 キリストの教えと 武士道の精神は 通ずるものがあると思いました。 18 00:02:01,822 --> 00:02:03,857 そんなバカな! 19 00:02:03,857 --> 00:02:07,627 人を斬るばかりが 武士道では ありますまい。 20 00:02:07,627 --> 00:02:09,696 我が身を盾として➡ 21 00:02:09,696 --> 00:02:15,836 正義と 他の人々の幸せを守るのが 武士道の根本精神とするなら➡ 22 00:02:15,836 --> 00:02:23,010 キリスト教の 「すべての人を愛し 己に厳しく 他人の罪を許し➡ 23 00:02:23,010 --> 00:02:26,046 貧しさに喜びを見いだす」。 24 00:02:26,046 --> 00:02:29,516 この精神と 武士道の精神とは➡ 25 00:02:29,516 --> 00:02:32,552 まことに 相通ずるものがあるのです。 26 00:02:32,552 --> 00:02:34,688 都合のよい解釈だ。 27 00:02:34,688 --> 00:02:38,025 武士道の根本精神の 一番大きなものを忘れている。 28 00:02:38,025 --> 00:02:43,530 仕えている主人… 君主に対する 忠誠は どこにいった? 29 00:02:43,530 --> 00:02:48,035 ヤソに 忠義 忠誠は あるまい。 30 00:02:48,035 --> 00:02:55,542 それが 神への信仰です。 キリストへの信頼です。 31 00:02:55,542 --> 00:03:03,350 人間を超えた… 人間の及びがたい 大いなるものへの忠誠です。 32 00:03:09,656 --> 00:03:14,161 橘さんは 二本松藩士として➡ 33 00:03:14,161 --> 00:03:18,331 最後まで 薩長と戦ったと 聞いておりますが…。 34 00:03:18,331 --> 00:03:22,202 橘さん 私も➡ 35 00:03:22,202 --> 00:03:27,674 徳川方の武士として 長州征伐に参加し➡ 36 00:03:27,674 --> 00:03:29,976 戦った人間なんですよ。 37 00:03:31,845 --> 00:03:35,348 長州征伐に…? 38 00:03:35,348 --> 00:03:42,522 徳川に忠誠を誓い その不滅を 信じていた若者でした。 39 00:03:42,522 --> 00:03:46,359 武道に励み 孔子の教えに親しみ➡ 40 00:03:46,359 --> 00:03:50,564 諸葛孔明に あこがれた 血の熱い少年だったんです。 41 00:03:52,866 --> 00:03:56,703 まさか その自分の目の前で➡ 42 00:03:56,703 --> 00:04:01,975 徳川三百年の歴史が 音立てて 崩れていくのを見ようとは➡ 43 00:04:01,975 --> 00:04:04,978 夢にも思いませんでしたね…。 44 00:04:07,647 --> 00:04:12,152 純粋に 心から信じて 仕えていたものが なくなり➡ 45 00:04:12,152 --> 00:04:16,022 これから どうやって 生きていったら いいのか➡ 46 00:04:16,022 --> 00:04:19,893 随分長い間 迷い悩みました。 47 00:04:19,893 --> 00:04:23,497 しかし 考えてみれば➡ 48 00:04:23,497 --> 00:04:26,333 同じ人間でありながら 上下をつけて➡ 49 00:04:26,333 --> 00:04:31,004 主人だ 家来だと言っていることが そもそも おかしい。 50 00:04:31,004 --> 00:04:35,876 一人の主人を 敬い守るために 命を投げ出すより➡ 51 00:04:35,876 --> 00:04:40,714 お互いのために お互いの幸せを守るために生きる。 52 00:04:40,714 --> 00:04:43,917 それが 本当の 人間の生き方だと思います。 53 00:04:46,486 --> 00:04:51,191 (松浪)それを教えてくれたのが キリスト教の➡ 54 00:04:51,191 --> 00:04:55,896 「神を畏れて 人をおそれず」の 精神でした。 55 00:04:58,064 --> 00:05:04,070 それを知った時 急に目の前が開ける思いがして…。 56 00:05:07,474 --> 00:05:10,977 「これで 生きていける」と 思いました。 57 00:05:23,657 --> 00:05:25,659 どうぞ。 58 00:05:27,327 --> 00:05:30,830 いや… 茶は結構です。 59 00:05:30,830 --> 00:05:32,832 そう おっしゃらず。 60 00:05:37,003 --> 00:05:40,340 我田引水ですが 私のいれた茶は➡ 61 00:05:40,340 --> 00:05:43,176 外国の ご婦人方にも なかなか 評判がいいんですよ。 62 00:05:43,176 --> 00:05:48,014 もっとも 私の学校の 先生方ですがね。 63 00:05:48,014 --> 00:05:50,050 あなたの学校では➡ 64 00:05:50,050 --> 00:05:53,887 男が異人の女に 茶坊主のまねを するわけですか。 65 00:05:53,887 --> 00:05:55,889 茶坊主というわけでなく➡ 66 00:05:55,889 --> 00:05:59,526 手が すいている者が だれでも 茶をいれることに なっています。 67 00:05:59,526 --> 00:06:03,330 ヤソの女学校というのは そういう所ですか。 68 00:06:07,334 --> 00:06:12,172 ああ! …いや まことに端的な ご指摘を頂いて➡ 69 00:06:12,172 --> 00:06:16,810 私は 今更のごとく 気がつきました。 70 00:06:16,810 --> 00:06:19,479 おっしゃるとおりです。 71 00:06:19,479 --> 00:06:23,817 ただし 「キリスト教精神を 基本として」という➡ 72 00:06:23,817 --> 00:06:27,687 1条を加えねばなりません。 73 00:06:27,687 --> 00:06:30,690 正しく申し上げるなら➡ 74 00:06:30,690 --> 00:06:34,995 「人間として 互いに思いやり 助け合い➡ 75 00:06:34,995 --> 00:06:38,331 正しく生きていくための 知恵を学ぶ」。 76 00:06:38,331 --> 00:06:45,005 これが 我が東北女学校の 建学の精神です。➡ 77 00:06:45,005 --> 00:06:48,842 男子に比べて 今まで おろそかに されていた女子の教育を➡ 78 00:06:48,842 --> 00:06:51,511 そういう精神で行っています。 79 00:06:51,511 --> 00:06:54,547 子供を産み育てる女性に➡ 80 00:06:54,547 --> 00:06:57,851 男子に劣らない 豊かな教養を つけてもらいたいという➡ 81 00:06:57,851 --> 00:07:03,623 願いを込めて 幅広く厳しい教育を 行っていますから➡ 82 00:07:03,623 --> 00:07:06,126 いいかげんな気持ちで 入学した者は➡ 83 00:07:06,126 --> 00:07:08,461 自分から脱落していくんです。 84 00:07:08,461 --> 00:07:14,267 そういう学校です。 分かっていただけますか? 85 00:07:32,485 --> 00:07:36,156 ああ 肝心のことを 忘れていた。 86 00:07:36,156 --> 00:07:39,059 私の不注意から出来た この傷のために➡ 87 00:07:39,059 --> 00:07:42,829 いろいろ ご面倒をかけ まことに かたじけなかった。 88 00:07:42,829 --> 00:07:47,167 改めて 御礼申し上げる。 ご存じでしたか。 89 00:07:47,167 --> 00:07:51,671 余計なことをして また ご気分を 害されたのではないかな。 90 00:07:51,671 --> 00:07:55,508 おりんさんには 黙っている ようにと 言っておいたのですが。 91 00:07:55,508 --> 00:07:58,345 そのくらいのことの察しが つかぬようでは…。 92 00:07:58,345 --> 00:08:03,049 それに うちには 大声で ないしょ話をする女がいますから。 93 00:08:05,618 --> 00:08:07,921 邪魔をしました。 94 00:08:19,132 --> 00:08:24,804 <3月。 みちのくにも やっと 春の気配が漂いはじめました。➡ 95 00:08:24,804 --> 00:08:28,975 …が 東北女学校受験のために 出発する日が➡ 96 00:08:28,975 --> 00:08:30,910 目前に迫ってきても➡ 97 00:08:30,910 --> 00:08:33,813 やはり 父親は りんに口もきかず➡ 98 00:08:33,813 --> 00:08:37,817 りんの決意も また 変わりませんでした> 99 00:08:39,619 --> 00:08:42,822 (りん)もう これっきり お願いはしません。 100 00:08:42,822 --> 00:08:47,127 試験を受けることだけで ええがら 許してくだっしょ。 101 00:08:51,164 --> 00:08:55,001 許してもらえねくても 受験には 行きます。 102 00:08:55,001 --> 00:08:59,973 ほんでも それでは 父ちゃんに はむかってることになっから…。 103 00:08:59,973 --> 00:09:02,742 勘当されたあとは しかたねえげんと➡ 104 00:09:02,742 --> 00:09:06,613 今日は この… 今日は まだ この家の子供だもの。 105 00:09:06,613 --> 00:09:09,516 父ちゃんに 口も きいてもらえねえまま➡ 106 00:09:09,516 --> 00:09:11,718 試験受けに行くのは つらいんだ。 107 00:09:14,120 --> 00:09:19,292 試験 受けに行くこと… そのことだけで ええがら➡ 108 00:09:19,292 --> 00:09:22,128 許してやるって 言ってくだっしょ。 109 00:09:22,128 --> 00:09:25,832 なぇ 何か 言ってくだっしょ 父ちゃん! 110 00:09:28,635 --> 00:09:31,137 (やえ)おとっつぁん! 111 00:09:50,824 --> 00:09:54,527 おりん。 やっぱり行くかぇ? 112 00:09:56,996 --> 00:09:59,666 そうかぇ…。 113 00:09:59,666 --> 00:10:02,001 ここまで 意地 張っつまったんだから➡ 114 00:10:02,001 --> 00:10:05,672 もう しようねえな。 気がすむまで 張ってみな。 115 00:10:05,672 --> 00:10:09,008 ほんで お前が不幸せになったって➡ 116 00:10:09,008 --> 00:10:11,511 母ちゃん もう 知らねぇ。 117 00:10:11,511 --> 00:10:18,017 お前が自分で決めて するんだから 覚悟決めて 気張ってこさんしょ。 118 00:10:18,017 --> 00:10:21,054 なあに 相馬の はね駒だ。 119 00:10:21,054 --> 00:10:23,823 思いっきり はねて 相馬女の元気なとこ➡ 120 00:10:23,823 --> 00:10:26,726 みんなさ 見せてやれ。 母ちゃん…。 121 00:10:26,726 --> 00:10:29,629 ほんとのこと言うとなぇ➡ 122 00:10:29,629 --> 00:10:34,367 母ちゃんも 娘っこの時 ただ 嫁っこになっちまうのは嫌で➡ 123 00:10:34,367 --> 00:10:37,203 親に だだ こねたこと あったんだ。 124 00:10:37,203 --> 00:10:42,041 ほんでもハァ おとっつぁんの顔見たら➡ 125 00:10:42,041 --> 00:10:49,215 まあ 嫁っこさ行ってもええかな なんて 考え変わっちまって。 126 00:10:49,215 --> 00:10:53,720 母ちゃんは 意地が足んねかった。 127 00:10:53,720 --> 00:10:58,892 お前は 父ちゃん似だわ。 128 00:10:58,892 --> 00:11:03,730 似た者同士で 困ったもんだなぇ。 129 00:11:03,730 --> 00:11:08,568 たくさん入ってねえげんと お前が仕立物の内職やってっ時➡ 130 00:11:08,568 --> 00:11:11,337 母ちゃんも 下で 一緒にやってたんだ。 131 00:11:11,337 --> 00:11:15,842 母ちゃんだけの金だから 大威張りで 持っていきな。 132 00:11:15,842 --> 00:11:19,178 母ちゃん…。 それから これ。 133 00:11:19,178 --> 00:11:23,516 母ちゃんのお金では これぐらいの ものしか 買ってやれねえげんと➡ 134 00:11:23,516 --> 00:11:26,853 これ履いて 元気に はねてこさんしょ。 135 00:11:26,853 --> 00:11:29,889 お前が いつもやってるの やってみっか。 136 00:11:29,889 --> 00:11:32,692 明日 天気に なあれ! 137 00:11:35,028 --> 00:11:38,531 あ~ 晴れだわぁ。 138 00:11:38,531 --> 00:11:40,867 いがったな おりん。 139 00:11:40,867 --> 00:11:44,871 旅立ちが晴れで いがったなぇ…。 140 00:11:52,879 --> 00:11:55,915 母ちゃん! 何だぇ。 141 00:11:55,915 --> 00:12:00,620 自分で 行ぎたくて行ぐくせに 何 泣くことあんだぃ。 142 00:12:00,620 --> 00:12:05,625 ほら 泣いては 分がんねえべ。 泣ぐな! 143 00:12:08,361 --> 00:12:10,363 泣ぐな! 144 00:12:10,363 --> 00:12:21,074 ♬~ 145 00:12:42,195 --> 00:12:45,531 体に気ぃつけるんだぞぃ おりん。 (みつ)帰ってきてよ 姉ちゃん。 146 00:12:45,531 --> 00:12:49,035 試験できなくても 帰ってきてよ! なぇ 姉ちゃん! 147 00:12:56,175 --> 00:13:01,681 元気出すんだ おりん。 姉ちゃん 行ってこさんしょ。 148 00:13:22,368 --> 00:13:24,871 (みつ)姉ちゃ~ん! 149 00:13:31,511 --> 00:13:35,214 姉ちゃん! 姉ちゃん! 150 00:13:43,122 --> 00:13:49,062 母ちゃん… おみつ…! 151 00:13:49,062 --> 00:13:53,766 (やえ)元気でな~! はい はい! 152 00:14:10,149 --> 00:14:14,821 ♬~ 153 00:14:14,821 --> 00:14:17,123 父ちゃん…。 154 00:14:20,159 --> 00:14:23,496 父ちゃ~ん! 155 00:14:23,496 --> 00:14:37,043 ♬~ 156 00:14:37,043 --> 00:14:41,347 <何も言わずとも 父と娘の心は➡ 157 00:14:41,347 --> 00:14:44,851 冷たい川風の中に 温かく通い合い➡ 158 00:14:44,851 --> 00:14:47,754 そして 離れていきました。➡ 159 00:14:47,754 --> 00:14:52,759 りんの青春への旅立ちでした>