1 00:00:02,200 --> 00:00:20,590 ・~ (テーマ音楽) 2 00:00:20,590 --> 00:00:58,760 ・~ 3 00:01:00,760 --> 00:01:04,260 (りん)兄ちゃん こんなとこさ 居ねえで 早いとこ 家さ入りな。 4 00:01:04,260 --> 00:01:07,300 父ちゃんも じいさまも 昔は 侍で強いんだから。 5 00:01:07,300 --> 00:01:10,770 (嘉助)バカ! こんな格好じゃ 親父や じいさまに会えるか。 6 00:01:10,770 --> 00:01:13,810 俺の面目 丸つぶれじゃねえかよ。 7 00:01:13,810 --> 00:01:18,110 なあ おりん お前を女と見込んで頼む。 8 00:01:18,110 --> 00:01:21,010 誰にも知られねえように 俺に あったかい着物と・ 9 00:01:21,010 --> 00:01:24,450 それから ちょっぴりでいいから 金を都合してくれねえか。 なっ。 10 00:01:24,450 --> 00:01:27,950 え~…。 頼む! 11 00:01:27,950 --> 00:01:31,620 <嘉助は 悪い人間ではないのですが・ 12 00:01:31,620 --> 00:01:34,290 なぜか 彼が現れる所には・ 13 00:01:34,290 --> 00:01:39,160 必ず こうした 波風が立つのでした> 14 00:01:39,160 --> 00:01:44,340 わたすの着物 これしかねえし 御足だって…。 15 00:01:49,770 --> 00:01:53,140 これだけ…。 ・(こと)おりん。 16 00:01:53,140 --> 00:01:56,650 何をしているのだぇ? ちょっと…。 17 00:01:56,650 --> 00:01:59,550 ちょっと わたすの引き出しの中 片づけて…。 18 00:01:59,550 --> 00:02:01,920 それは感心だこと。 19 00:02:01,920 --> 00:02:06,090 女は いつも 自分の身の回りを きちんとしておくようで・ 20 00:02:06,090 --> 00:02:09,130 なくては 家を治めていけません。 21 00:02:09,130 --> 00:02:12,600 おりんは いい嫁御になりやすな。 22 00:02:12,600 --> 00:02:18,100 はい…。 人の話を聞く時は 落ち着いて聞きなされ。 23 00:02:18,100 --> 00:02:20,140 はい。 24 00:02:20,140 --> 00:02:24,780 おりん お前が 今 欲しい物は何だぇ? 25 00:02:24,780 --> 00:02:29,610 え? 二本松へ迎えに来てくれて・ 26 00:02:29,610 --> 00:02:32,950 じいさまも ばあさまも ほんとに うれしかった。 27 00:02:32,950 --> 00:02:36,820 だから お前が欲しい物を 何か言うてみさんしょ。 28 00:02:36,820 --> 00:02:40,130 ばあさまに 叶えてあげられる物があれば…。 29 00:02:40,130 --> 00:02:42,960 ほんなら わたす 今 御足が欲しい! 30 00:02:42,960 --> 00:02:46,300 御足? わたす 今 御足が欲しい。 31 00:02:46,300 --> 00:02:50,170 まあ 御足をどうして…。 何を買うのだえ? 32 00:02:50,170 --> 00:02:52,640 買うんでないんです。 買うんでねくて・ 33 00:02:52,640 --> 00:02:56,470 御足なら もし 困った人が出てきた時に・ 34 00:02:56,470 --> 00:02:59,810 ボッとして 役に立つかもしんねえなと思って。 35 00:02:59,810 --> 00:03:04,250 誰か困った人でもいるのかい? はい… あっ。 36 00:03:04,250 --> 00:03:07,090 今は いねえけんども ボッとして そういう人が・ 37 00:03:07,090 --> 00:03:11,260 出てきた時のために…。 その時のために… はい。 38 00:03:11,260 --> 00:03:17,730 そうかい。 そういうこと。 そういうこと… はい。 39 00:03:21,270 --> 00:03:23,300 母ちゃん 何すんの!? 40 00:03:23,300 --> 00:03:25,600 (やえ) ちょっくら 薪 取りに来たんだ。 いいって。 41 00:03:25,600 --> 00:03:28,270 母ちゃんしねくたって わたすが すっから! 42 00:03:28,270 --> 00:03:31,180 ほんでも せっかく ここまで来たんだから…。 43 00:03:31,180 --> 00:03:37,780 いいって! なんだ むきになって。 よす ほんなら わたすも…。 44 00:03:37,780 --> 00:03:39,750 いいって! 45 00:03:43,290 --> 00:03:47,160 父ちゃんも 母ちゃんも じいさまも ばあさまも・ 46 00:03:47,160 --> 00:03:49,630 みんな 兄ちゃんのこと 心配してたんだよ。 47 00:03:49,630 --> 00:03:52,530 父ちゃんなんて 口には出さないけんど・ 48 00:03:52,530 --> 00:03:57,300 兄ちゃんの話が出たあとは いつも うんと お酒 飲むんだ。 49 00:03:57,300 --> 00:04:01,070 みんな 兄ちゃんのこと 待ってんだよ。 50 00:04:01,070 --> 00:04:04,410 分かってる 分かってる。 分かっててもな・ 51 00:04:04,410 --> 00:04:06,340 男が こうと決めた以上・ 52 00:04:06,340 --> 00:04:09,580 行かなきゃならねえ 道があるんだよ。 53 00:04:09,580 --> 00:04:13,920 なあ おりん。 もう少し 目 つぶって 待っててくれ。 54 00:04:13,920 --> 00:04:19,090 そのうち 海の向こうの ハイカラ土産 山ほど抱えて帰ってきて・ 55 00:04:19,090 --> 00:04:21,760 おとっつぁんも おっかさんも 土産づけにしてやっから。 56 00:04:21,760 --> 00:04:25,630 なっ 楽しみに待ってろ。 57 00:04:25,630 --> 00:04:31,270 そうかぇ。 ほんじゃ 楽しみにしてっから。 ああ。 58 00:04:31,270 --> 00:04:35,140 兄ちゃん これ…。 59 00:04:35,140 --> 00:04:39,610 海の向こうに行ぐには ちょっと 足んねえべ。 60 00:04:42,280 --> 00:04:47,250 これ お前の金か? 61 00:04:49,050 --> 00:04:55,530 だから これっぽっちしかねえけど 安心して使っていいよ 兄ちゃん。 62 00:05:05,240 --> 00:05:09,740 ありがとよ おりん。 兄ちゃん この金を元手にして・ 63 00:05:09,740 --> 00:05:12,580 必ず 商売で 成功さしてみせっから。 64 00:05:12,580 --> 00:05:16,910 そして 大きな家 建てて みんな 呼んでやっから。 65 00:05:16,910 --> 00:05:20,390 約束するよ。 66 00:05:24,420 --> 00:05:29,190 頑張ってな 兄ちゃん。 67 00:05:31,200 --> 00:05:34,130 それじゃ 俺は…。 68 00:05:34,130 --> 00:05:39,440 兄ちゃん。 …と言っても こんな格好じゃ・ 69 00:05:39,440 --> 00:05:43,610 まだ明るいうちは 目立っちまって 追っ手に とっ捕まっちまうな。 70 00:05:43,610 --> 00:05:47,280 暗くなるまで ここさ いた方がいいよ。 71 00:05:47,280 --> 00:05:49,780 夜になってから 出ていけばいいから。 72 00:05:49,780 --> 00:05:52,280 ・(やえ)おりん! おりん! 73 00:05:52,280 --> 00:05:55,190 呼ばってる。 74 00:05:55,190 --> 00:05:57,160 ここさ いてよ。 75 00:05:57,160 --> 00:06:00,390 牛飼いの松吉爺っつぁんが・ 76 00:06:00,390 --> 00:06:02,730 この前 べこっこ 送らんかったこと・ 77 00:06:02,730 --> 00:06:05,230 甥っ子に 手紙で知らしてやりたいんだと。 78 00:06:05,230 --> 00:06:07,570 書いてやってくなんしょ。 母ちゃん・ 79 00:06:07,570 --> 00:06:11,240 薪 もう それで足りっかえ? もう 納屋の方 用事ないかえ? 80 00:06:11,240 --> 00:06:14,070 ないよ。 ほれより 早く 手紙 書いてやって。 81 00:06:14,070 --> 00:06:16,740 爺っつぁん 待ってんだよ。 82 00:06:18,740 --> 00:06:21,650 (松吉) べこを送っぺぇと思えども・ 83 00:06:21,650 --> 00:06:25,250 べこは 郵便では送らねえつうから…。 84 00:06:25,250 --> 00:06:27,520 待って…。 85 00:06:29,590 --> 00:06:43,770 「牛は 郵便にては 送りかね申し候由にて…」。 86 00:06:43,770 --> 00:06:53,780 え~と 次は…。 今は すかたなく おら家の納屋の中で 「モーモー」と…。 87 00:06:53,780 --> 00:07:07,730 「今は 詮方なく 我が家の 納屋の中で 悶々と…」。 88 00:07:07,730 --> 00:07:10,060 悶々でねえ 「モーモー」だ。 89 00:07:10,060 --> 00:07:14,230 間違えた。 悶々は兄ちゃんの方だ。 え? 90 00:07:15,870 --> 00:07:27,650 (いびき) 91 00:07:55,640 --> 00:07:58,610 (やえ)何してんだ? 92 00:08:01,210 --> 00:08:05,180 そだに 慌てて 押し込むことねえのに。 93 00:08:10,890 --> 00:08:14,730 あのなぇ 晩ごはんの食べ方 少し足んねかったの。 94 00:08:14,730 --> 00:08:18,400 お茶わん 洗ってたら なんだか 急に 腹 へってきて…。 95 00:08:18,400 --> 00:08:23,070 ほだべと思ってなえ ほれ…。 何 これ? 96 00:08:23,070 --> 00:08:26,940 大きく握っといたから これだけあれば 足りっぺ。 97 00:08:26,940 --> 00:08:31,410 梅干しも入れといたから 明日まで大丈夫だわ。 98 00:08:31,410 --> 00:08:35,580 母ちゃん…。 女の着物では みっともねえから。 99 00:08:35,580 --> 00:08:40,920 え~と 汽車には乗れっぺよ。 100 00:08:40,920 --> 00:08:43,590 母ちゃん… 母ちゃん 知ってたの? 101 00:08:43,590 --> 00:08:46,420 知らねえよ 何も。 したって…。 102 00:08:46,420 --> 00:08:49,760 知られたくねえから あたとこさ いるんだべ。 103 00:08:49,760 --> 00:08:53,930 母ちゃん 何にも知らねえよ。 母ちゃん 兄ちゃんはね…。 104 00:08:53,930 --> 00:08:56,830 何も言わねくてええがら。 105 00:08:56,830 --> 00:09:02,370 兄ちゃんのことは 兄ちゃんの 口から 聞かしてもらうから。 106 00:09:02,370 --> 00:09:09,710 表から 胸張って帰ってきて 父ちゃんに ちゃんと挨拶して・ 107 00:09:09,710 --> 00:09:15,520 みんなの前で 大威張りで 我がことを語ってくれる時まで・ 108 00:09:15,520 --> 00:09:20,220 母ちゃん 何にも知らねえで 待ってっから。 109 00:09:20,220 --> 00:09:23,900 姿見せて くどくどと 我がことを語らねえだけ・ 110 00:09:23,900 --> 00:09:26,930 あの子は親孝行だわ。 111 00:09:26,930 --> 00:09:29,700 「何にも知らねえで 親たちは 待ってるから」って・ 112 00:09:29,700 --> 00:09:33,400 そう言ってくんつぇ。 113 00:09:33,400 --> 00:09:38,580 母ちゃん…。 「体だけは 気をつけろ」って。 114 00:09:38,580 --> 00:09:43,920 「すぐ 腹びり起こすから 生水だけは気をつけろ」ってなぇ。 115 00:09:43,920 --> 00:09:51,660 なんだか 顔が やせたようだけど ちゃんと 食ってんだべか…。 116 00:09:51,660 --> 00:09:59,460 「これから 風が冷たぐなっから 外出る時は のどさ 布 巻け」って。 117 00:09:59,460 --> 00:10:05,200 童の時は いつも 今ごろ・ 118 00:10:05,200 --> 00:10:10,040 げぼげぼ げぼげぼ 咳ばあしして・ 119 00:10:10,040 --> 00:10:22,020 夜中じゅう わたすが抱いて 背中 さすってたっけ…。 120 00:10:24,960 --> 00:10:30,730 おりん 納屋さいる人に 言ってくんつぇ。 121 00:10:33,300 --> 00:10:41,640 「何してもいいから 死ぐのだけは だめだ。・ 122 00:10:41,640 --> 00:10:45,510 死ぬまで 頑張ることはねえから・ 123 00:10:45,510 --> 00:10:52,280 辛くなったら いつでも ここさ 帰ってこう。・ 124 00:10:52,280 --> 00:10:57,820 この家は いつでも お前を待ってるから」って。 125 00:10:57,820 --> 00:11:05,000 「今日も よく ここさ 帰ってくれたなぇ」って…。 126 00:11:08,770 --> 00:11:12,270 母ちゃん…。 127 00:11:12,270 --> 00:11:15,610 母ちゃん! おりん お前・ 128 00:11:15,610 --> 00:11:19,780 人さ だます時は もっと うまくやってくなんしょ。 129 00:11:19,780 --> 00:11:21,810 あだな むきになって 押し返したら・ 130 00:11:21,810 --> 00:11:26,120 誰だって おかしいと思うべした。 131 00:11:26,120 --> 00:11:57,650 ・~ 132 00:11:57,650 --> 00:12:01,620 今 どの辺り歩いてんだべ 兄ちゃん…。 133 00:12:01,620 --> 00:12:06,090 (集配人)いい あんばいだなぇ。 あっ どうも ご苦労さんです。 134 00:12:06,090 --> 00:12:10,430 今日は これ 頼みやす。 ああ それから・ 135 00:12:10,430 --> 00:12:14,770 ここの家さ こいつ 来てたぞぇ。 136 00:12:14,770 --> 00:12:18,940 ごめんなんしょ。 ごめんなんしょ。 137 00:12:18,940 --> 00:12:23,270 兄ちゃんにだ…。 「きよ」? 138 00:12:23,270 --> 00:12:30,780 「御足 足りた。 心配なし。 また来てね。 きよ」…。 139 00:12:30,780 --> 00:12:35,650 「御足 足りた。 心配なし。 また来てね。 きよ」。 140 00:12:35,650 --> 00:12:42,130 二本松の遊郭の。 じゃあ 兄ちゃん 逃げなくても…。 141 00:12:47,800 --> 00:12:52,770 (新之助)おりんちゃん。 おりんちゃん! 142 00:12:55,970 --> 00:12:59,310 え~っ! 兄ちゃんが 新之助さんとこに? 143 00:12:59,310 --> 00:13:03,180 昨夜 表で ひょっこり会って 話 聞いたら・ 144 00:13:03,180 --> 00:13:07,420 追っ手がかかってるって言うから おら もう びっくりして・ 145 00:13:07,420 --> 00:13:11,090 おら家の蔵ん中さ 内緒で隠したんだ。 146 00:13:11,090 --> 00:13:13,760 ウッタ~。 147 00:13:13,760 --> 00:13:18,600 (嘉助)そうなんだよなぁ。 考えてみたら 俺の持っていった・ 148 00:13:18,600 --> 00:13:25,770 上海土産の服やら布やら。 それに 俺の横浜の外人仕立ての洋服。 149 00:13:25,770 --> 00:13:29,640 あれ みんな ひっくるめたら 女郎の玉代より高くつかぁな。 150 00:13:29,640 --> 00:13:31,940 なにも 逃げ出すことなかったんだよ。 151 00:13:31,940 --> 00:13:34,850 失敗 失敗。 ハハハハ…。 152 00:13:34,850 --> 00:13:39,680 これから もう一度 遊びに 戻っかなぁ。 兄ちゃん! 153 00:13:39,680 --> 00:13:46,120 ハハハ 冗談だよ。 よし! 胸張って 横浜 帰って…。 154 00:13:46,120 --> 00:13:51,300 おりん お前に約束したとおり もう一度 パ~ッと 商売当てて・ 155 00:13:51,300 --> 00:13:54,330 みんな 呼びに来っから 待ってろ。 156 00:13:54,330 --> 00:13:57,970 いろいろ世話になったね。 ありがとう。 157 00:13:57,970 --> 00:14:03,240 あにさん どうか 体に気をつけて。 158 00:14:03,240 --> 00:14:07,910 「あにさん」か…。 いいねえ。 159 00:14:07,910 --> 00:14:14,080 おい! おりんを頼むぜ。 160 00:14:14,080 --> 00:14:17,120 あにさん ご心配なく。 161 00:14:17,120 --> 00:14:24,090 おりん。 おとっつぁん おっかさん 大事にしろよな。 162 00:14:24,090 --> 00:14:26,760 じゃ あばよ! 163 00:14:26,760 --> 00:14:29,230 兄ちゃん! 164 00:14:36,770 --> 00:14:39,680 じゃ。 165 00:14:39,680 --> 00:14:44,650 (新之助)あにさ~ん。 また来てくなんしょ~。 166 00:14:48,790 --> 00:14:52,660 [ 心の声 ] こんで また 祝言 早くなるんでねえべか。・ 167 00:14:52,660 --> 00:14:55,630 なじょすっぺぇ…。