1 00:00:01,140 --> 00:00:19,390 ・~ (テーマ音楽) 2 00:00:19,390 --> 00:00:58,190 ・~ 3 00:01:01,060 --> 00:01:04,870 <自分のけがに対する 松浪の陰の働きを・ 4 00:01:04,870 --> 00:01:08,540 知ってか知らずか やっと歩ける足で・ 5 00:01:08,540 --> 00:01:14,210 弘次郎が 松浪を訪ねて 集会場に来たのです> 6 00:01:14,210 --> 00:01:18,080 (松浪)それで 私に お話とは? 7 00:01:18,080 --> 00:01:20,550 (弘次郎)武術は 何をやりますか? 8 00:01:20,550 --> 00:01:23,590 …え? おととい 腕をつかまれて・ 9 00:01:23,590 --> 00:01:25,890 不覚にも 動けなかった。 10 00:01:25,890 --> 00:01:30,560 けがをしていたからと 言い訳はしたくない。 11 00:01:30,560 --> 00:01:35,900 武芸一般 かなりの腕と見受けるが 何を修められた? 12 00:01:35,900 --> 00:01:40,570 何の お話かと思えば…。 もう 昔のことは 忘れました。 13 00:01:40,570 --> 00:01:44,070 忘れて ヤソに入られたのか。 そうです。 14 00:01:44,070 --> 00:01:46,580 なぜ! 15 00:01:46,580 --> 00:01:51,080 なぜ 武士の魂を捨てて ヤソなぞに? 16 00:01:51,080 --> 00:01:55,420 武士の魂を 捨ててはおりません。 17 00:01:55,420 --> 00:02:00,860 キリストの教えと 武士道の精神は 通ずるものがあると思いました。 18 00:02:00,860 --> 00:02:02,890 そんなバカな! 19 00:02:02,890 --> 00:02:06,660 人を斬るばかりが 武士道では ありますまい。 20 00:02:06,660 --> 00:02:08,730 我が身を盾として・ 21 00:02:08,730 --> 00:02:14,870 正義と 他の人々の幸せを守るのが 武士道の根本精神とするなら・ 22 00:02:14,870 --> 00:02:22,050 キリスト教の 「すべての人を愛し 己に厳しく 他人の罪を許し・ 23 00:02:22,050 --> 00:02:25,080 貧しさに喜びを見いだす」。 24 00:02:25,080 --> 00:02:28,550 この精神と 武士道の精神とは・ 25 00:02:28,550 --> 00:02:31,590 まことに 相通ずるものがあるのです。 26 00:02:31,590 --> 00:02:33,720 都合のよい解釈だ。 27 00:02:33,720 --> 00:02:37,060 武士道の根本精神の 一番大きなものを忘れている。 28 00:02:37,060 --> 00:02:42,570 仕えている主人… 君主に対する 忠誠は どこにいった? 29 00:02:42,570 --> 00:02:47,070 ヤソに 忠義 忠誠は あるまい。 30 00:02:47,070 --> 00:02:54,580 それが 神への信仰です。 キリストへの信頼です。 31 00:02:54,580 --> 00:03:02,350 人間を超えた… 人間の及びがたい 大いなるものへの忠誠です。 32 00:03:08,690 --> 00:03:13,200 橘さんは 二本松藩士として・ 33 00:03:13,200 --> 00:03:17,370 最後まで 薩長と戦ったと 聞いておりますが…。 34 00:03:17,370 --> 00:03:21,240 橘さん 私も・ 35 00:03:21,240 --> 00:03:26,710 徳川方の武士として 長州征伐に参加し・ 36 00:03:26,710 --> 00:03:29,010 戦った人間なんですよ。 37 00:03:30,880 --> 00:03:34,380 長州征伐に…? 38 00:03:34,380 --> 00:03:41,560 徳川に忠誠を誓い その不滅を 信じていた若者でした。 39 00:03:41,560 --> 00:03:45,400 武道に励み 孔子の教えに親しみ・ 40 00:03:45,400 --> 00:03:49,600 諸葛孔明に あこがれた 血の熱い少年だったんです。 41 00:03:51,900 --> 00:03:55,740 まさか その自分の目の前で・ 42 00:03:55,740 --> 00:04:01,010 徳川三百年の歴史が 音立てて 崩れていくのを見ようとは・ 43 00:04:01,010 --> 00:04:04,010 夢にも思いませんでしたね…。 44 00:04:06,680 --> 00:04:11,190 純粋に 心から信じて 仕えていたものが なくなり・ 45 00:04:11,190 --> 00:04:15,060 これから どうやって 生きていったら いいのか・ 46 00:04:15,060 --> 00:04:18,930 随分長い間 迷い悩みました。 47 00:04:18,930 --> 00:04:22,530 しかし 考えてみれば・ 48 00:04:22,530 --> 00:04:25,370 同じ人間でありながら 上下をつけて・ 49 00:04:25,370 --> 00:04:30,040 主人だ 家来だと言っていることが そもそも おかしい。 50 00:04:30,040 --> 00:04:34,910 一人の主人を 敬い守るために 命を投げ出すより・ 51 00:04:34,910 --> 00:04:39,750 お互いのために お互いの幸せを守るために生きる。 52 00:04:39,750 --> 00:04:42,950 それが 本当の 人間の生き方だと思います。 53 00:04:45,520 --> 00:04:50,230 (松浪)それを教えてくれたのが キリスト教の・ 54 00:04:50,230 --> 00:04:54,930 「神を畏れて 人をおそれず」の 精神でした。 55 00:04:57,100 --> 00:05:03,110 それを知った時 急に目の前が開ける思いがして…。 56 00:05:06,510 --> 00:05:10,010 「これで 生きていける」と 思いました。 57 00:05:22,690 --> 00:05:24,690 どうぞ。 58 00:05:26,360 --> 00:05:29,870 いや… 茶は結構です。 59 00:05:29,870 --> 00:05:31,870 そう おっしゃらず。 60 00:05:36,040 --> 00:05:39,380 我田引水ですが 私のいれた茶は・ 61 00:05:39,380 --> 00:05:42,210 外国の ご婦人方にも なかなか 評判がいいんですよ。 62 00:05:42,210 --> 00:05:47,050 もっとも 私の学校の 先生方ですがね。 63 00:05:47,050 --> 00:05:49,090 あなたの学校では・ 64 00:05:49,090 --> 00:05:52,920 男が異人の女に 茶坊主のまねを するわけですか。 65 00:05:52,920 --> 00:05:54,920 茶坊主というわけでなく・ 66 00:05:54,920 --> 00:05:58,560 手が すいている者が だれでも 茶をいれることに なっています。 67 00:05:58,560 --> 00:06:02,370 ヤソの女学校というのは そういう所ですか。 68 00:06:06,370 --> 00:06:11,210 ああ! …いや まことに端的な ご指摘を頂いて・ 69 00:06:11,210 --> 00:06:15,850 私は 今更のごとく 気がつきました。 70 00:06:15,850 --> 00:06:18,510 おっしゃるとおりです。 71 00:06:18,510 --> 00:06:22,850 ただし 「キリスト教精神を 基本として」という・ 72 00:06:22,850 --> 00:06:26,720 1条を加えねばなりません。 73 00:06:26,720 --> 00:06:29,730 正しく申し上げるなら・ 74 00:06:29,730 --> 00:06:34,030 「人間として 互いに思いやり 助け合い・ 75 00:06:34,030 --> 00:06:37,370 正しく生きていくための 知恵を学ぶ」。 76 00:06:37,370 --> 00:06:44,040 これが 我が東北女学校の 建学の精神です。・ 77 00:06:44,040 --> 00:06:47,880 男子に比べて 今まで おろそかに されていた女子の教育を・ 78 00:06:47,880 --> 00:06:50,550 そういう精神で行っています。 79 00:06:50,550 --> 00:06:53,580 子供を産み育てる女性に・ 80 00:06:53,580 --> 00:06:56,890 男子に劣らない 豊かな教養を つけてもらいたいという・ 81 00:06:56,890 --> 00:07:02,660 願いを込めて 幅広く厳しい教育を 行っていますから・ 82 00:07:02,660 --> 00:07:05,160 いいかげんな気持ちで 入学した者は・ 83 00:07:05,160 --> 00:07:07,500 自分から脱落していくんです。 84 00:07:07,500 --> 00:07:13,300 そういう学校です。 分かっていただけますか? 85 00:07:31,520 --> 00:07:35,190 ああ 肝心のことを 忘れていた。 86 00:07:35,190 --> 00:07:38,090 私の不注意から出来た この傷のために・ 87 00:07:38,090 --> 00:07:41,860 いろいろ ご面倒をかけ まことに かたじけなかった。 88 00:07:41,860 --> 00:07:46,200 改めて 御礼申し上げる。 ご存じでしたか。 89 00:07:46,200 --> 00:07:50,710 余計なことをして また ご気分を 害されたのではないかな。 90 00:07:50,710 --> 00:07:54,540 おりんさんには 黙っている ようにと 言っておいたのですが。 91 00:07:54,540 --> 00:07:57,380 そのくらいのことの察しが つかぬようでは…。 92 00:07:57,380 --> 00:08:02,080 それに うちには 大声で ないしょ話をする女がいますから。 93 00:08:04,650 --> 00:08:06,960 邪魔をしました。 94 00:08:18,170 --> 00:08:23,840 <3月。 みちのくにも やっと 春の気配が漂いはじめました。・ 95 00:08:23,840 --> 00:08:28,010 …が 東北女学校受験のために 出発する日が・ 96 00:08:28,010 --> 00:08:29,950 目前に迫ってきても・ 97 00:08:29,950 --> 00:08:32,850 やはり 父親は りんに口もきかず・ 98 00:08:32,850 --> 00:08:36,850 りんの決意も また 変わりませんでした> 99 00:08:38,650 --> 00:08:41,860 (りん)もう これっきり お願いはしません。 100 00:08:41,860 --> 00:08:46,160 試験を受けることだけで ええがら 許してくだっしょ。 101 00:08:50,200 --> 00:08:54,040 許してもらえねくても 受験には 行きます。 102 00:08:54,040 --> 00:08:59,010 ほんでも それでは 父ちゃんに はむかってることになっから…。 103 00:08:59,010 --> 00:09:01,780 勘当されたあとは しかたねえげんと・ 104 00:09:01,780 --> 00:09:05,650 今日は この… 今日は まだ この家の子供だもの。 105 00:09:05,650 --> 00:09:08,550 父ちゃんに 口も きいてもらえねえまま・ 106 00:09:08,550 --> 00:09:10,750 試験受けに行くのは つらいんだ。 107 00:09:13,160 --> 00:09:18,330 試験 受けに行くこと… そのことだけで ええがら・ 108 00:09:18,330 --> 00:09:21,160 許してやるって 言ってくだっしょ。 109 00:09:21,160 --> 00:09:24,870 なぇ 何か 言ってくだっしょ 父ちゃん! 110 00:09:27,670 --> 00:09:30,170 (やえ)おとっつぁん! 111 00:09:49,860 --> 00:09:53,560 おりん。 やっぱり行くかぇ? 112 00:09:56,030 --> 00:09:58,700 そうかぇ…。 113 00:09:58,700 --> 00:10:01,040 ここまで 意地 張っつまったんだから・ 114 00:10:01,040 --> 00:10:04,710 もう しようねえな。 気がすむまで 張ってみな。 115 00:10:04,710 --> 00:10:08,040 ほんで お前が不幸せになったって・ 116 00:10:08,040 --> 00:10:10,550 母ちゃん もう 知らねぇ。 117 00:10:10,550 --> 00:10:17,050 お前が自分で決めて するんだから 覚悟決めて 気張ってこさんしょ。 118 00:10:17,050 --> 00:10:20,090 なあに 相馬の はね駒だ。 119 00:10:20,090 --> 00:10:22,860 思いっきり はねて 相馬女の元気なとこ・ 120 00:10:22,860 --> 00:10:25,760 みんなさ 見せてやれ。 母ちゃん…。 121 00:10:25,760 --> 00:10:28,660 ほんとのこと言うとなぇ・ 122 00:10:28,660 --> 00:10:33,400 母ちゃんも 娘っこの時 ただ 嫁っこになっちまうのは嫌で・ 123 00:10:33,400 --> 00:10:36,240 親に だだ こねたこと あったんだ。 124 00:10:36,240 --> 00:10:41,080 ほんでもハァ おとっつぁんの顔見たら・ 125 00:10:41,080 --> 00:10:48,250 まあ 嫁っこさ行ってもええかな なんて 考え変わっちまって。 126 00:10:48,250 --> 00:10:52,760 母ちゃんは 意地が足んねかった。 127 00:10:52,760 --> 00:10:57,930 お前は 父ちゃん似だわ。 128 00:10:57,930 --> 00:11:02,770 似た者同士で 困ったもんだなぇ。 129 00:11:02,770 --> 00:11:07,600 たくさん入ってねえげんと お前が仕立物の内職やってっ時・ 130 00:11:07,600 --> 00:11:10,370 母ちゃんも 下で 一緒にやってたんだ。 131 00:11:10,370 --> 00:11:14,880 母ちゃんだけの金だから 大威張りで 持っていきな。 132 00:11:14,880 --> 00:11:18,210 母ちゃん…。 それから これ。 133 00:11:18,210 --> 00:11:22,550 母ちゃんのお金では これぐらいの ものしか 買ってやれねえげんと・ 134 00:11:22,550 --> 00:11:25,890 これ履いて 元気に はねてこさんしょ。 135 00:11:25,890 --> 00:11:28,920 お前が いつもやってるの やってみっか。 136 00:11:28,920 --> 00:11:31,730 明日 天気に なあれ! 137 00:11:34,060 --> 00:11:37,570 あ~ 晴れだわぁ。 138 00:11:37,570 --> 00:11:39,900 いがったな おりん。 139 00:11:39,900 --> 00:11:43,910 旅立ちが晴れで いがったなぇ…。 140 00:11:51,910 --> 00:11:54,950 母ちゃん! 何だぇ。 141 00:11:54,950 --> 00:11:59,660 自分で 行ぎたくて行ぐくせに 何 泣くことあんだぃ。 142 00:11:59,660 --> 00:12:04,660 ほら 泣いては 分がんねえべ。 泣ぐな! 143 00:12:07,400 --> 00:12:09,400 泣ぐな! 144 00:12:09,400 --> 00:12:20,080 ・~ 145 00:12:41,230 --> 00:12:44,570 体に気ぃつけるんだぞぃ おりん。 (みつ)帰ってきてよ 姉ちゃん。 146 00:12:44,570 --> 00:12:48,070 試験できなくても 帰ってきてよ! なぇ 姉ちゃん! 147 00:12:55,210 --> 00:13:00,720 元気出すんだ おりん。 姉ちゃん 行ってこさんしょ。 148 00:13:21,400 --> 00:13:23,910 (みつ)姉ちゃ~ん! 149 00:13:30,550 --> 00:13:34,250 姉ちゃん! 姉ちゃん! 150 00:13:42,160 --> 00:13:48,100 母ちゃん… おみつ…! 151 00:13:48,100 --> 00:13:52,800 (やえ)元気でな~! はい はい! 152 00:14:09,180 --> 00:14:13,860 ・~ 153 00:14:13,860 --> 00:14:16,160 父ちゃん…。 154 00:14:19,190 --> 00:14:22,530 父ちゃ~ん! 155 00:14:22,530 --> 00:14:36,080 ・~ 156 00:14:36,080 --> 00:14:40,380 <何も言わずとも 父と娘の心は・ 157 00:14:40,380 --> 00:14:43,890 冷たい川風の中に 温かく通い合い・ 158 00:14:43,890 --> 00:14:46,790 そして 離れていきました。・ 159 00:14:46,790 --> 00:14:51,790 りんの青春への旅立ちでした>